転生者は平穏を望む   作:白山葵

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この小説始まって以来…初めてのロケハン…。
あ、これ下手に細かい事、書かないほうが良いや! と、思ったので察してください。
何とはイイマセンガ


第04話 エリカさんです! 前編

 改札前を離れ、取り敢えずと、そのまま駅を出た。

 一先ず駅前の広場まで来たのだけれど……。

 

「……」

 

 む…無言…。

 

 最初は元気だったエリリン。いや、エリちゃん。

 改札を離れた辺りから、何も喋らない。

 しかも目線を伏せている。

 たまにこちらを見上げてくるのだけど、目が合うと、また逸らしてしまう。

 

 その駅前広場に到着すると、俺の横で動かなくなってしまった。

 誰かと待ち合わせをしていて、それを二人でただ待っている……そんな構図の完成ですね。

 

 違う…いつものエリちゃんじゃない。

 どうしたんだろうか…。

 

 チラッと目だけで視線を落とすと、背の差も有り…前髪で目元が見えない。

 口元は…なんだ? なんか真一文字になってないか?

 

「ぅ……ぅぅ…」

 

 そして、なんか呻いている。

 

 初めて…でもないか。

 改めて、久しぶりに見たエリちゃんの私服…といっても、小さな子供頃に見たのが最後だった。

 成長したエリちゃんの私服…ふむ。

 

 白を基調とした、ロングスカートで…ワンピースタイプで…何て言って良いか分からん!

 まほちゃんに私服を選んでいた時も、女性の服の名称を何て、今になっても良くわからないからなぁ。

 ワンピースタイプとやらも、それだけで形が違う服がいっぱい…。

 

「…なにジロジロ見てんのよ」

 

 俺の視線に気がついたのか、久しぶりに口を開いてくれた。

 

「ん? いやいや…」

 

 だから、下手に細かく言うよりも、ただストレートに言ってやった方が良さそうだ。

 知ったかぶりすると、バレそうだしね。うん。

 はいでは。

 

「そういう服着ると、印象が随分と、変わって見えるものだなぁと、思いまして」

 

「……っ」

 

「大人の女性って感じだな!」

 

「……」

 

 あ…あれ?

 なんか、顔赤くしてまで、睨んできてる…あれぇ?

 いきなり怒らせたか…?

 

「な…何を言ってるのよ」

 

「…いやね。俺って、服装のセンスとかって恐ろしくないみたいでな…。普通に印象を変えられる程、自分自身に似合う服装選べる人ってすごいなぁ…とか、思うわけでして」

 

「……」

 

 うむ。俺にセンスは無い。

 壊滅的とまで言われた。無い!!

 

 青森でオペ子が選んでくれた服の似たような服を、ただ変え替えしている様な状況だしな!

 どこか出かける時だけ…。

 

 ……基本、Tシャツとジーパンやしね。

 

「…はっ。それが…ア、アンタが良く使う手?」

 

「使う手って…」

 

「何よ。私まで口説く気?」

 

 あらま、反対を向かれてしまった。

 

「…ただ服、褒めただけで、ここまで言われるんか」

 

「……」

 

 まほちゃんとかに選んだ時とか…他人には多少、マシなのを選べるみたいだけどね…。

 会話の突破口が欲しかっただけなんですけどねぇ…。

 そうそう。昔、まほちゃんに…。

 

「は? 隊長?」

 

 いきなり可愛いとか言うと、軽薄に感じるって言われたから、遠まわしに褒めてみたのに…。

 内面を褒めろとか…なんか色々と練習させられたっけ…まほちゃんに。

 

「……隊長、何をしているんですか…」

 

 特に、俺が転校する日付が決まってからが、凄かったなぁ…なんか、みほに隠れて毎日毎日…。

 ちょっと亜美姉ちゃんが絡んでたみたいだけど…なんだったんだ、あの日々は。

 

「・・・・・」

 

 まぁ…いいや。

 エリたんも、少し調子が戻ったみたいだし。

 

「エリたんは、やめて!! 本当にやめて!! お願いだからやめてぇ!!!」

 

「……」マタカ…

 

「…なるほど…これか…。アンタ、お酒といい…無意識の発言といい……その内、身を滅ぼすわよ?」

 

「……」

 

 酒は兎も角…この癖ってどうやったら直るんだろう…。

 今度、病院でも行ったほうがいいかなぁ…

 

「ア…アンタ…そう言えば、いつもと私に対する態度が…全然違うんだけど…なに? なんのつもり?」

 

「あぁ、エリちゃん」

 

「……な…なによ」

 

「そう、呼んでるからじゃないか?」

 

「…は?」

 

「エリリン呼びと違って、エリちゃん呼びだとね…どうしても昔呼ばれたみたいにさ。「お兄ちゃん」として、格好をつけたくなる。んな所じゃない?」

 

「……」

 

 そうそう。

 どうしてもね。

 

「そして、連想して思い出して……今になっても思う」

 

「…な…なにがよ」

 

 

 

「…今のみほ。よくぞあの性格に、変わってくれたと」

 

 

「……」

 

 

 最初は意味が分からなかった様だ。

 みほの名前を急に出した時に、一瞬眉を潜めた。

 その不可思議な色を出していたエリちゃんの顔は…青い色になり…安堵にも似たため息を吐いた。

 

「…そうね。それは私も…そう思うわ…………ある意味で、心から…」

 

 はい。昔語り。

 

 お兄ちゃんとしての、大体の役割が……大体、無茶してくる、やんちゃみぽりんから庇ってやっていた事だったからな!

 連想して、わかってくれたね。うん。

 今のみぽりん、常識がありますからね?

 あの頃の様に、無茶はもうしないよ?

 

 もう、ザリガニを投げてこないよ?

 

 もう、ヘビを首に巻こうとしないよ?

 

 もう、バケツいっぱいに、カエル取ってこないよ?

 

「……」イモウト…

 

 もう、戦車の車外に生身の子供を乗せて、全速力で疾走させないよ?

 

 もう、体に縄縛り付けて、戦車で引きずり回そうとしないよ?

 

 もう…戦車で…。

 

 もう……戦車で……戦車で…………。

 

「……お…思い出しちゃった…」

 

「…すまん」

 

 ま…まぁ、青くしてしまったエリちゃんを見て思い出す。

 

 今回の本当の目的。

 

 1つ。

 

 みほとの間を取り持ちたい。

 折角、また揃ったんだ…。

 

 …あの頃の彼女達に戻したい。

 

 戦車道チョコカードの事は、2の次。

 直接、彼女と二人きりで話す機会なんて余り無いだろうからな。

 …良い機会だろう。

 

 あ、トレードはするよ? うん。 トウゼンダロウ?

 

 2つ。

 …ある意味、これが本題…。

 それは…。

 

「ま…まぁ、いいや。何時までも、こうしていても仕方ない。少し早いけど…」

 

「……アノ、……イモウトォォォ」

 

「……あの…エリちゃん?」

 

「…クッソ、イモウトォォォ」

 

 あ…なんかスイッチ入っちゃった。

 なんか、震えとるね? うん。

 

「おーい」

 

「なに!? お兄ちゃん!?」

 

 必死な形相で、呼びかけられた事に応えてくれた。

 が…振り向いた彼女の目の色が、ちょっと違う。

 まだブツブツと、怨嗟の声を漏らしている…。

 

「す…少し早いけど、折角だ。昼飯…なんか食いに「分かったわ!!!」」イカナイカ…

 

「……」

 

 え?

 

 な…なんだ?

 

 待ってましたとばかりに、すげぇいい笑顔で了承のお返事?

 

 即答したよね…。

 

 …被せたよね?

 

 うん…それはもう…輝きすら見える笑顔じゃった。

 

「じゃ…じゃあ、ど「さぁ行くわよ!! お兄ちゃん!!」」コニイキマ…

 

 あれ?

 

 腕を引かれた。

 

 あの…なんで迷いなく、タクシープールへと行くのでしょう?

 

 車で移動すんの?

 

「ここからなら、10分程度で着くと思うから、開店前に並べるわ!!」

 

 …ん? 着く? 並ぶ?

 

 あれ?

 

 駅前だから、そこら辺に飯屋…アレ?

 

 

 

 

 

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「…いや…あの、エリちゃん?」

 

「なによ、お…尾形」

 

 変な興奮が覚めたのか…。

 呼び方が戻ってしまいました。

 

 うん…寂しい。

 

 

 それはそれとして、炭火焼…ん? はんばーぐ?

 

 連れてこられたのは、駅から少し離れた…ファミレス? っぽい、チェーン店。

 

 …なに…この行列…。

 

 到着した、そのお店…開店前なのに、すでに行列が出来ていた。

 店の前の刺された、肉々しい写真と共にフェア中とか書かれた幟。

 

 店の前には、すでに駐車場に車が停まっている。

 だから…開店前…。

 家族連れが多いのか、余計に大人数に感じる。

 並んでまで飯屋に入るのって…何年ぶりだろうか?

 

 開店時間が過ぎても、店内にすら入れなかった…まぁ…大人しく待っていよう。

 だって…エリちゃんの目の輝きが、尋常じゃねぇ。

 下手な事を言うとまた睨まれそうだし…。

 

 なんだろう…そのまま1時間近く待たされている。

 流石にそろそろ自分達の番になりそうだ。今は店内の待合ベンチに座って、大人しくその順番を待っている。

 変に興奮気味だったエリちゃんも、少しは待ち疲れたのか、先程までのキラキラ~…が弱まってるね。

 向かい合わせに座っている、若い夫婦が子供をあやしているのをボケーと眺めている。

 

「チッ…夏休みだから、人が多い…出遅れたわ」

 

 エリちゃんの呟きが聞こえた…。

 

 爪を噛む程ですか…?

 

 多分…というか、確実に此処へと、来たかったのだろう。

 あの笑顔と、躊躇が無い行動で…流石に分かった。

 タクシーまで使ったしね…高校生が。

 

「…なによ」

 

 はい、そんな彼女の横顔を見ていたら、その視線に気づいたのか、ちょっとバツが悪そうに睨んできたね。

 まぁ察して、気づかない振りをしてあげよう…うん。

 そんな訳で店内を見渡し、気づいてないですよ~? と、アピール…

 

「なに? 落ち着きがないわね。キョロキョロしないでよ、恥ずかしい」

 

 …したら、怒られた。

 

「え? あぁ、こういった店って、殆ど来ないからなぁ。ちょっと珍しくてな」

 

「…珍しいって…」

 

「殆ど自炊だしな。外食しても、殆ど蕎麦屋とか…定食屋とかだし」

 

「…ふ…ふ~ん」

 

「駅前とかだと、高確率で立ち食い蕎麦だな。早いし楽」

 

「……おっさんか」

 

 …いや、うまいよ?

 

「みほとは…その…どうなのよ」

 

 お、みほの事を話題に出した。

 なんだろうか? 少し…本当に少しは、距離が近づいているのだろうか?

 まぁ俺は、エリちゃんとみほの間…特にエリちゃんの問題に気がつき始めている。

 …その原因。

 

「…どうなの? 行かないの?」

 

 しかし…なぜそれを聞きたがる…。

 まぁ、待っている時間も暇だしいいけど。

 

「ないなぁ…。そういえば……こうやって、デート自体した事がないな」

 

「デッ!!?? だから、違っ!!」

 

 あ…立ち上がっちゃった。

 ほらぁ…注目浴びてますよぉ?

 

「大きな声を出さない…他のお客様のご迷惑になりましてよ?」

 

「アンタが、変な事…っっ!?」

 

 向かいの家族連れ、横の他のお客。

 目線に戸惑ったのか、大人しく座りましたね。

 

 それはそれとして…ふむ。みほとねぇ…忙しかったしなぁ…。

 休日も殆ど、戦車の練習だったしね。

 ここまで、新人生で一番と言っていいほどの濃い内容だったしね、

 しかし…これが…?

 

「…というか、デートと言ってしまった手前なんだけどさ。…正直、これがデートとやらに、当たるのかすら疑問だ」

 

「あんた…」

 

「…正直に言ってしまえば、デートとやらが良くわからない。今、デートちゃんと出来てる?」

 

「しらっ!! 知らないわよ!!」

 

 オペ子と服を買いに行ったのは…あれは、どうなんだろう?

 全力でノンナさんと、ダー様からは否定されたのだけど…んんっ?

 

 いや…でもこれ、デートと言った時点で、浮気にならんか?

 すげぇ…。本当にすげぇ今更だけど。

 ……いや、でも飯を食うだけだし…。

 

「二人きりで、女性と食事をする」

 

「女性っ!?」

 

 エリちゃんが、なぜか赤くなったけど…。

 これがデートに当たると、浮気になるのだろうか?

 えっと…確認してみよう。

 

「…これって、デートなの?」

 

「だ、だから、知らないわよ!! アンタが言い出したことでしょ!?」

 

「いや…だから、確認……」

 

 普通に聞いてみたのだけど、怒られた…。

 何故だろう? 

 向かいの若い夫婦が、クスクスと笑っている…。

 

「わ…私だって、こうやって男と二人でなんて…初めてなんだから、知るわけ……っっ!! 何、言わせるのよ!!!」

 

「いや…あの、何も聞いていませんけど」

 

 あ…隣に並んでいた、二人組の若い女性も、クスクス笑いだした。

 何か、面白いこと言っているのか?

 

 その笑い声に、エリちゃんが気づいたのか、顔が更に赤くなったね。

 更には小刻みに震えだしたね…。

 そもそも、俺達の事で笑ってるのか? 普通に会話してるだけだけど…。

 

 丁度その時、俺達の順番が回ってきた。

 即座に立ち上がり、そのまま顔を真っ赤にして、エリちゃんは逃げるように……店員さんに案内されて行ってしまった。

 

 ……。

 

 あれ? 置いていかれた?

 

「お兄さん、お兄さん」

 

 んぁ?

 

 その若い女性達から、肩を叩かれ…すっごい涙目で声をかけられた。

 大体呼ばれ方が、熊かオジさんだからね?…お兄さんと呼んでくれたのは、久しぶりだ…。

 まぁいいや。

 

「なんでしょう?」

 

 

 なに? その笑顔。

 なんで親指立ててるの?

 

 

 

「頑張って!!」

 

 

 

 …何を?

 

 

 

 

「おがぁ…たぁ…」

 

 

 あ、はい。

 

 先行したエリちゃんの後を、俺が着いていかなかった為に、呼びに来てくれたのだろう。

 が、なんか顔がすっごい赤い。

 んでもって、消え去りそうな声…。

 

「あの…お客様。他のお客様のご迷惑になりますので……クッ!!」

 

 …店員のお姉さんも、なんか笑いをかみ殺しているね。

 なんなのでしょう?

 

 もたついてしまい、他の並んでいるお客さんに迷惑を掛けてしまった。

 掛けてしまったのだけど…お客さん達から、引きずられるようにエリちゃんに連行されている俺を…皆が…。

 

 とても微笑ましい笑顔で、送り出してくれたのは、なんでだろう?

 

「……」

 

 なんで?

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「…お母様」

 

 黒森峰の学園艦。

 西住流家元として、この学園艦へと滞在する事は特段珍しくもない。

 

 その別荘とも言える、別宅にまだいる。

 この別宅は、執務室としての用途も兼ね備えている為に、この場所で過ごす事が多い。

 本日から長期休日に入る。練習すら無しの、珍しい日が続く。

 …だから報告へと来た、娘と向かい合わせになっている。

 

「年甲斐もなく、若い者に混じり、水着撮影までした西住流家元のお母様」

 

「…そ…それも仕事です。なぜ言い直したのですか…」

 

 …いい年をしてあの様な格好…。

 特に制服なんて…気の触れた様な格好までしたのです。

 し…死んでも喋れませんね。

 

「先日の大洗学園とのエキシビジョンマッチ依頼の件、お断りしました」

 

「…そうですか」

 

 静かに報告を聞いている。

 …他校との混合試合。益がない訳ではない。

 それも強豪校達との。

 それは、私もそうだが、まほも興味がない訳が、ないでしょう。

 

 ……が。

 

 それは私達個人の話。

 名門校として日々、練習に練習を重ね…世間様では夏休みだというのに休日など殆ど無かった。

 生徒達、普通の学生としての夏休み。

 全国戦車道大会が終わった今、漸くその残り数少ない、連休が始まる。

 …ここでまた、試合なぞ入れようものなら、士気に関わる。

 帰郷を予定していた者もいるだろう。休ませる時には休ませないといけません。

 

「そういった訳で、生徒達の予定もあるでしょうから、仕方ありません」

 

「…そうですね。前から決まっていた事ですからね。今更予定を変更する訳にもいかないでしょう」

 

 あぁ…そうだ。

 少し、親として…話をしてみるのも良いでしょう。

 …前までは、そんな考えにすら至らなかったと思います。

 

「貴女は、休日…どうしますか? まほ」

 

「私ですか? 私は…例のエキシビジョン。見学だけにでも、行こうかとは思っています。エリカ…副隊長も同行すると言っていましたので、明日か明後日にでも…」

 

「…そうですか」

 

 なる程。固い。

()()という事をしないのですね。

 これも私の…

 

「明日にでも出て…そうですね。みほの様子でも一緒に見て……どうしました?」

 

「い…いえ…」

 

 しまった。

 

 みほの…みほ達の事を、この子に言うのを忘れていた!

 

 続けて喋る、まほの言葉に、少々動揺してしまった…。

 多少、顔にでも出てしまったか…そんな私を見て、眉を潜めた娘。

 う…私譲りの鋭い眼つきで見つめられている。

 

「……」

 

「……」

 

 無言。

 探るような目が…段々と冷たく…。

 

「お母様」

 

「…な…なんでしょうか?」

 

「隆史の事なんですが。隆史が大洗に転校した際、住まいはお母様が用意したと聞きました」

 

「はい?」

 

 また…古い話を…なぜい……ま……あ。

 それも言っていませんでしたか!?

 

「…何故みほと同じ、建家の賃貸へと住まわせたのですか?」

 

「え…?」

 

「……隆史も年頃です。何か間違いが…お母様? どうしたのですか?」

 

 大洗の準決勝を見学に行った際…そこでバレたのでしたね…。

 いえ…本当に失念していました、その事も!

 

 …娘に睨まれている……。

 

「あ…あぁ、それは悪い虫対策と言いますか…なんと言いますか…」

「隆史が、その悪い虫になりましたけどね」

 

「  」

 

 そ…即答。

 いえ…私としては、悪い虫ではないのですが…。

 

「…だ…大丈夫です。みほは、引越しをしました」

 

「みほが? …引っ越した?」

 

「え…えぇ。今は前までいた賃貸アパートにはおりません」

 

「……」

 

「みほは、引っ越した。それは分かりました。では隆史は?」

 

「隆史君も…あっ」

 

「もっ? …あっ?」

 

 しまった…。

 おもむろに携帯を取り出すわが娘。

 後ろを向き…。

 

「まほっ!?」

 

 操作、操作、操作。

 

 無言で操作をはじめた…なぜでしょう…電話のコール音が聞こえます。

 なんでしょうか!? この悪寒にも似た感覚は!!

 

『 は…はい 』

 

「みほ。今、大丈夫か?」

 

『 う…うん。久しぶりでビックリしちゃった…お姉ちゃんから電話なんて 』

 

「そうか? ふふっ…そうだな。前までは、みほにいくら電話しても、出てくれなかったからな」

 

『 ぅ…ごめんなさい 』

 

 微笑ましい会話になりそう…ですが!

 横目で見てくる娘が怖い!

 こんな目をして見てくる子でしたか!?

 

「みほ」

 

『 …なに? 』

 

 

「そこに、隆史はいるか?」

 

 

『 隆史君? いないよ? 』

 

 

 よ…良かった!

 そうですよ。隆史君は本日、私に用がある言っていましたし…。

 こちらに向かっている最中なのでしょう。

 

 みほの言葉を聞いて、安堵のため息を吐く、目の前の娘の肩が下がった。

 

 

「…ふっ。そうか…それは…」

 

 

『  今は  』

 

 

「…い…ま……は?」

 

 ……。

 

『 うん、お母さんに会いに熊本まで、朝早く出かけて行っちゃった。また…お母さんだよ…うん 』

 

「……」

 

 熊本!?

 

『 あぁ…そうか、だからかなぁ? お姉ちゃんも聞いたから…その……電話、してきたんだよね? 』

 

「聞いた…? お母様にか? 何をだろう?」

 

 ……。

 

『 私も決勝戦から、大洗に帰ってきて知ったから…びっくりしちゃった… 』

 

「……」

 

 

『 まさか、隆史君と同居させるなんて…… 』

 

 

「  ド ウ キ ョ  」

 

 

 

 みほっ!!!

 

 

 

 困った様なみほの声が、携帯を通してき聞こえてきていますね…。

 えぇ…いつの間にか成長した様で…あからさまに困った声で、まほに返していますが…それは、その声は…。

 

 あぁ…困った様な……そして勝ち誇った声。

 

 

「……みほ」

 

『 なに? 』

 

「…私は明日、そちらへ行こうと思う」

 

 !?

 

『 えぇ!? 来るの!? 大洗に!? 』

 

「……なに、黒森峰の学園艦は、現在東京に停泊中だ。距離的にも問題ない」

 

『 う…うん 』

 

「すまんな。ちょっと…別に用事ができた。短いが切る」

 

 

『 わ…分かった。あれ…お姉ちゃ― 

 

 

 

 …窓辺から見える、青い空。

 カラスでしょうか? 黒い影が元気に飛び回ってますね…。

 

 えぇ…いい天気。

 

 

「と…いう訳で……私の想像をはるかに超えていた訳ですね? お母様」

 

「……」

 

「どこを向いているんですか? こっち見てください」

 

 …私の娘は、この様な気迫…と言いますか、圧を発するまでになっていたのですね…。

 

「後、なんの要件かは存じませんが、隆史は今、お母様に会いに熊本へと向かっているそうですね」

 

「え……は?」

 

 そういえば…言っていましたね…熊本へ…ん?

 

「熊本? 確か…連絡は…。学園艦にいる事と、東京に泊まる事も…ちゃんと…」

 

 …どういう事でしょう?

 大洗のホテルで…ん? い…言いませんでしたか?

 

「隆史は熊本へ、お母様に会いに…では、目の前の方は、誰なのでしょう?」

 

「ま…まほッ!?」

 

 お母さん!! お母さんですよ!?

 なぜ私は、娘に怯えて…!?

 

「更に、島田 愛里寿が、言っていました」

 

「しっ…島田…!? あの娘と連絡を取っていたのですか!?」

 

「えぇ…メールのみですが…。お互い、母親で苦労していますから」

 

「 」

 

 ち…ちよきち…。

 

 

「そうそう…こう…言っていたました…」

 

 

 

「 お母様に注意しろと 」

 

 

 

「 」

 

 娘が…近づいてくる…。

 音もなく…ゆっくり…まほっ!?

 

「では…みほの件で、これまでの経緯とお考えを……洗い浚い、全て…包隠さないで話して頂けますか?」

 

「ま…まほ? まほっ!?」

 

 

「 さぁ…吐いてください。 母 」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「ダメね…暫くの間、運行は見合わせるみたい」

 

「そうか…」

 

 現在の運行状況を見に行った、エリちゃんが帰ってきた。

 まぁ、ここで待っていろと言われたので、大人しく駅ナカの店舗並び。

 その端の店を物色して、暇を潰していた。

 

 運行状況…新幹線が止まっていた。

 先に帰りの切符を買っておこうと、駅に戻った際にこの様な状況だと知った。

 …移動が出来ない。

 まぁ俺は、レンタカーでもまた借りて移動すりゃ良いのだけど、エリちゃんはそうはいかない。

 免許を持ってきていないそうだった…。車を運転できない。

 

 そのトラブルの原因は良く分からないが、動かない物は動かないので、気にしても仕方がない。

 

「…ところで尾形。なに? アンタ、それ買うの? どんなセンスしてんのよ」

 

「……」

 

 

 北海道フェアとかでもやっているのか…隣の県であった青森でもよく見かけていたモノ。

 懐かしいと思って、手に取っている所へと帰ってきたエリちゃんでした。

 はい。

 

 黒いTシャツ。

 

 

 

 胸無部分に「熊出没注意」のイラスト…。

 

 

 

「…自己紹介して、どうすんの」

 

「……」

 

 ドン引きした目で…見られた…。

 

 …よし。

 

「お姉さん。これ、2着下さい」

 

「あ、は~い」

 

 はい、即座に店員さんを呼びました。

 買うと!!

 

「うっわ…マジで? しかも2着…」

 

「SサイズとXLサイズですね。お間違いございませんか?」

 

「お願いします。あ、分けて包んでください」

 

「かしこまりましたぁ」

 

 テキパキと、商品を包む目の前の店員さん。

 

「…Sサイズなんてアンタ着れる……あぁ……」

 

 みほのお土産にでもするのだと、思ったのだろう。

 …少し目を逸らした。

 はっはー! いくら俺でも、静岡まで来て、これをお土産にしねぇよ!!

 商品を包み終わり、お金を渡して売買完了。

 

「はいっ♪」

 

「……は?」

 

「プレゼント♪」

 

 その包装されたTシャツを、即座に! おもむろに! エリちゃんへと突き出す。

 反射的にそれを受け取った彼女は、少々呆然としましたね!!

 

「はぁ!? コレ!? よりにもよってコレ!?」

 

「はいはい、お店の前で、コレとか言わないの。店員さん笑ってるよぉ?」

 

「ちょっ!?」

 

 はい、ご迷惑になりますから、移動致しますよぉ?

 そんなに広くない通路を抜けて、また駅構内へと戻ってきた。

 

 若干、眉が釣り上がっているが、ブツブツ言いながらも、店舗並びを歩きながら着いてきてくれた。

 …しっかりと、渡された包みを持ちながら。

 

「よりも…よって……」

 

 はいはい。

 

 しかし…これが、先程までレストランにいた、同じ娘には見えねぇ…。

 キッツイ目を継続させていらっしゃいます。

 いや…んん~。

 

 いやぁ…うん。

 あのレストランは、ハンバーグの専門店みたいな店だったんだね。

 

 注文は、なんかエリちゃんが、ものすごく真剣な目をしていたから…うん。

 多分、何かしら有るのだろうと思い、彼女と同じのメニューを頼んだ。

 初めて入る店には、レギュラー品を頼むのが吉だ…と、青森港で教わった。

 

 メニューを頼んで、待っている間に…そう…トレードは恙無く終了いたしました。

 丁度良かったしね…。

 流石に中身をチラッと確認しただけで、その場で見るなんて…そんな真似はできなかった。

 しほさんは兎も角…まほちゃんは水着のカードだったしね。

 

 満足そうな、エリちゃん。

 夢にまで見た…とか言っていたのは、聞き流そう。うん……俺もそうだから、突っ込まれるのはキツイだろうと判断した。

 

 そうッ! 見たっ! 夢にまで!!

 

 カードトレードという、大きなイベントの筈が…こんな状況も相まり…麻薬の売買の様にあっさりと終わった。

 ちょっと…思い描いていたトレード会と違う。

 

「……」

 

 回想が…逸れた…。

 

 暫くすると…注文した物が運ばれて来た。

 お皿に乗せられたハンバーグ……ではなく。

 

 鉄板皿に乗せられたハンバーグ。

 なんかすげぇ、その挽肉を焼く音が聞こえてくる。

 

 はい、一つ目。ここでまず、エリたんの目が輝く。

 

 小声で、来た来た言っていたのは、聞こえました。

 なにこのカワイイノ。

 

 店員さんが、ハンバーグを真っ二つ。

 ハンバーグなのに中身はレア。

 それをナイフとフォーク? だろうか…鉄板に押し付けた。

 …といった、作業工程を目で追うエリたん。

 

 はい、二つ目。エリたんの口が、半開きになる。

 あ、オススメはオニオンソースね…はい、選ばせていただきました、エリカさん。

 

 最後に、自身で選んだソースをかける…と、鉄板皿の内側にソースが溜まり、沸騰するかの様に湯だつ…。

 あ…はい。ランチマットみたいなので、ガードすんすね…はい。分かりましたエリカさん…。

 

 はい、三つ目。エリたんが、フォークとナイフを握り締めた。

 

 あ…はい。ここではレアで食うのがディフォルトなんですね…。

 しっかり焼こうとしたら、怒られたました…。

 

 鍋奉行ではなく…ハンバーグ奉行……いや。番長…か?

 

 こういった事で、世話を焼くのも楽しいのだろう。

 睨みを効かせてくるが、その目は輝いていた。…見たことが無い表情をしていますね…。

 素直に従い、そんなエリちゃんを眺めている。

 

 ……。

 

 …………。

 

 うん…まだちょっと…いや、あるんだけど…なんかもう…終始、それを見ていた。

 この子、こういった事で、はしゃぐんだ…。

 好きなんだろ…ハンバーグが…。

 

 大体、飯屋に入ると会話が続くものだけど…なんかもう…めちゃくちゃ真剣な目だったし…。

 そこからのはしゃぎ様を見ていると…余計な事を言わない方がいいと思いました。

 

 はい、食事を終えた今は、もの凄く幸せそうな顔をしている。

 というか、食べている最中がすごかった…。もう…口に運ぶ度に唸っていた…。

 いや…この子、こんなにはしゃぐのかぁ…。

 

 

 

 …いやぁ…写真に撮りたかった…。

 

 

 

 

「アンタ…何か、とてつもなく失礼な事を考えてない?」

 

「メッソウモ、ゴザイマセン」

 

 

 

 下から睨まれていますね。はい、大丈夫です、もう慣れました。

 ……怖いけど。

 行き交う人々を二人して眺め…不意にエリちゃんが、口を開いた。

 

「…尾形、アンタ。本当は今日、トレードだけの用事で私と会ったんじゃないのよね?」

 

 いきなり本題をぶつけてきたな。

 

 駅の改札口の正面。

 柱に背を持たれ…少し睨みながら、聞いてきた。

 隠しだてする必要もないので、その問いに素直に答える。

 

「ん~。そうだな」

 

 その返答に、少し目を伏せながら、吐き捨てる様に言った。

 

「どうせ…みほの事でしょ?」

 

「そうだな」

 

 これも素直に言ってみる。

 

「…まっ。そうよね…」

 

 何か寂しそうに。

 

「もっと早く聞いてくるかと思ったのにね」

 

「……いや、あんな輝く笑顔で、はしゃいでいらっしゃったら、何も言えねぇっすよ…」

 

「は…はしゃいでない!!」

 

「ハンバーグ…お好きなんですね?」

 

「なっ!? わ…悪い!?」

 

「俺も今度、作ってやろうか? プラウダでの美味かったって言ってたろ?」

 

「…はっ。私に? なに? 喧嘩売ろうっての?」

 

 何故それが。喧嘩を売ることになる…。

 ま…なんか楽しそうになったからいいけど。

 

「…ま、エリちゃん。熊本じゃなくて、東京方面へ行くんだろ?」

 

「そうね。学園艦そっちだし」

 

「熊本方面なら、その道中同行して…そん時、話そうかなぁって思ってた」

 

「……」

 

「こりゃ暫く動きそうにないなぁ…」

 

「アンタは…先に行けばいいじゃない。家元…待ってるんでしょ?」

 

「流石に、エリちゃんを知らない土地なんかに、置き去りに出来ないなぁ……」

 

「……なによ」

 

 …ふむ。

 今度は顔を伏せてしまった。

 

「よし。ちょっと、しほさんに電話してくるわ」

 

「……」

 

「先にエリちゃん送ってく」

 

「はっ!?」

 

「コレ…本当に何時になるか分からないしな。車借りて、東京まで送っていけばいいや」

 

「……」

 

 俯いている為に、どんな顔をしているか分からない。

 黙ってしまっている為に、嫌ではないのだろうな。

 なら、話は早い。

 しほさんには、遅れる旨を伝えておこう。

 話した事、話しておきたい事は、車内で話せばいい。

 下手に畏まって話すよりも、その方が彼女も気が楽かもしれないしな。

 

 …よし。

 

 逆にエリちゃんに気を使わせてしまい、この案を否定される前にさっさと行動に…。

 

 ……。

 

 …………。

 

 き…気付かなかった…。

 いやまぁ…電源切っていたから、気付きなんてないのだけど…。

 

 初めにしほさんへと、連絡をしようと携帯を取り出した。

 そこで初めて、携帯の電源を切っていた事を思い出す…。

 

 電源を入れた携帯。

 光る画面……通知……が。

 

 携帯に夥しい数の…着信数&メール数…。

 

「みほ……12件。し…しほさん、89件、…………まほちゃん……160件……? 160ぅ!?」

 

 まさかの三桁…。

 

 呆然と自分の携帯に目を墜とす。

 

 思わず…声が…。

 

「隊長!? 56件っ!?」

 

 …エリちゃんの声が。

 同じく自身の携帯電話を確認していた。

 これもまた同じく、電源を切っていたのだろう。

 

 電源を切っていても、着信数をカウントする機能…いらね…。

 

 呆然とする二人…。

 なんだ? なにが起きているんだ?

 

「は…はい!? 隊長!?」

 

 呆然としていたエリちゃんの携帯に着信が入った様だ。

 多分…まほちゃん…連打でもしているのかの様に、かけ始めた時だったかな?

 反射的に出てしまった彼女の口が、相手を…まほちゃん。

 

「あ…いえ、そんな事は……いえっ!! え…は!?」

 

「どうした、エリちゃん?」

 

「あっ!! 馬鹿、尾形!!」

 

 あ……

 

「いやいや!! 違います!! いません!! いませんから!!! 声!? 気のせ……一緒になん…え……えっ!? 赤星が!?」

 

 ……聞こえてくるセリフから…嫌な予感しかしねぇ…。

 

「隊長!? 隊長!!?? にしっ…………」

 

 切れたであろう通話。

 持っていた携帯電話を力なく下ろすエリちゃん…。

 乾いた笑いを繰り返している…。

 

 目に光がありませぬ。

 

「……行く…行くって……尾形」

 

「はい?」

 

「アンタの所に、明日行くって言ってたわ!! 大洗に!! 私も…確認する為にって……」

 

「」

 

「まずい…。下手な事、言っちゃった…………せめて、私も大洗にいないと……他県でなんか……バレたら……」

 

 ……。

 

 …………。

 

 途切れ途切れの聞こえてくる単語…。

 

 

 恐怖しかない。

 

 

 !?

 

 こ…今度は、俺の携帯が…振動を繰り返している…。

 

 誰……だ……。

 

「はっ…はは……隊長じゃない? …口裏……合わせなさいよね…」

 

 力ない、エリちゃんの声…いや、まぁそれくらいなら…。

 

 ……。

 

 …………。

 

 は?

 

 ……え? なんで?

 

 バイブ音を繰り返す音…携帯。

 

 その画面に表示されている、見慣れた番号…と、名前…。

 

「もっ!! もしもし!?」

 

「…尾形?」

 

 血相を変えた…そんな顔をしたのだろう。

 エリちゃんが、訝しげな顔で見てきた。

 

 が! 今は! こっち!!

 

 携帯を通して聞こえてくる……懐かしい声。

 

 俺のある意味での恐怖の対象…。

 

 

『 あ、タカ君? 久しぶり』

 

 

「……あぁ…うん。久しぶり…」

 

『今、大丈夫?』

 

「大丈夫……ではない」

 

『そっか! んじゃ、一応手短に済ませるけど』

 

「……」

 

 いつもの様に…単純明快。

 脳筋の血筋…。

 ある意味で分かりやすくて楽だけど……。

 

 

『明日、タカ君の、一人暮らしをしているであろう! …お家に行くわねぇ?』

 

 

「  」

 

 

『私も今、夏休みだしぃ。あんな事件があった後だしね。一度、見に行こうと思っていたの』

 

 

「  」

 

 

『そんな訳だからね、楽しみにしててねぇ~。じゃあね~』

 

 

 本当に本題だけ言って……切られた。

 

 ……。

 

 マズイ

 

 まずいまずい!

 

「エリちゃん!」

 

「…なによ」

 

「車借りて…直接…大洗まで帰る」

 

「……」

 

「んな訳で、一緒に行くぞ…すぐに! 今すぐ!!」

 

「…えっ……はっ!?」

 

 確定事項とばかりに、彼女の手首を掴む。

 腰を落とし、彼女の顔を真正面に見る。

 

「まほちゃん…大洗に明日行くんだよな?」

 

「…そ…そう言っていたけど」

 

「俺ん家に来るんだよな!?」

 

「…えぇ…直接、本人に電話すれば?」

 

「怖いから嫌!」

 

「…あんた」

 

 俺が声をかけてしまい、それに即座に反応して名前を出してしまったエリちゃん。

 それの声を拾ったであろう…まほちゃん。

 多分…一緒にいる事が、バレたのだろう。…赤星さんは知らんが。

 

「だから、エリちゃんも大洗にいないとまずいと。まぁ大洗なら幾分まだ、言い訳が立つと!!」

 

「……ぐっ…」

 

「なら一緒に行けばいい」

 

 そこまで言うと、その細い手首を引っ張る。

 多分…大洗に来て、ある意味で初めての拉致ですな。

 

 されるのでは無く、する方の…。

 

「ちょっ! 確かにそうだけど、なによ急に!!」

 

「……」

 

 駅の近くに確かあったな。

 携帯で、レンタカーショップと…道路の渋滞状況を調べる。

 高速道路が……うっわ……すげぇ混んでる。

 

 ここから、大洗までの予測時間……。

 

「……明日の朝方になりそう」

 

「なっ!?」

 

 正確には夜中にでもつきそうだけど、エリちゃんいるから安全運転で…無理しないで行けばそのくらいか。

 よし!! ここまで調べたらもう用は無い!!

 よし!! 怖いから電源を再度OFF!!

 

「さ…流石に…明日……泊まり……」

 

「大丈夫!! 車内泊も慣れれば楽だ!」

 

 新幹線、何時になるか本当に分からないからな!!

 

「いや…さすがに…着替えないし…」

 

 車内泊にツッコミがない…。

 

「…あぁ。ゴメン…女の子だもんな…」

 

「そういう問題じゃ「そこはおっちゃんが、一式買うたる!!」」

 

「アンタは誰なのよ!!」

 

 すまんがもう、選択肢が残されていない。

 さっさと移動、朝までに家に戻らなければならない…。

 

「…細かい事情は車内で言うけど、簡単に言えば…」

 

 鉢合わせになる前に…なんとか……なんとかしないと…。

 まほちゃんと合わせるのだけは、回避しないと…いや…もう。

 本気で体張らないと…。

 

 来る…。

 

 もう一人…未だに単純な力で、勝てない相手…。

 

 

 

「姉さんが来る…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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