転生者は平穏を望む   作:白山葵

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閑話【 未来編 】~夢のつづき~ その5

 

 

《 解析が完了しました 》

 

 

 

 無機質な声が、また頭の中に響く。

 

 どこかで、聞いた声…。

 

 いつか、聞いた声…。

 

 

《 新たな、世界線の変動を確認 》

 

 

 あぁ…そうだ。最初に聞いた、あの時の…。

 目を開く前、脳内で響いたその声。

 その声が言い終わるやいなや…。

 

 

 

《 んな訳で、いらっさっっっい!!! 》

 

 

「……」

 

 暗い、何もない空間…。

 

 地面が、どこからか当たる光で分かるくらい…。

 冷静になって見渡すと、結構細かい部分もあるのだな。

 地面には白と黒。正方形のオセロ模様が刻まれていた。

 

 前に来た時は、余裕なんて何もなく…ただ、驚くばかりだ。

 結構、気づかないものなんだな。

 

《 ちょっと!! 無視しないでよ!! 》

 

 他にも何かないものだろうか?

 奥まで続く、何も無い空間。

 地面は続いているのだから、進んでみたら、何かあるかもしれない。

 

 

《 ガン無視!? 泣くわよ!! 結構、無視って堪えるんだから!! ほら! 泣くわよ!! 》

 

 

 

「…………………………」

 

 

 椅子が二つ…向かい合って置かれている。

 そこにだけスポットライトが当たっている為、とても目立つ。

 装飾の細かい…金と…

 

 

《 うわぁーーーーーん!!!! 隆史が無視するぅ!! 》

 

 

 …。

 

 はぁ…鳴き声が…脳内に響いて、本気でうるせぇ。

 

「わかったよ!! マジで泣き始めるなよ!!」

 

《  どうでもいい事、意味ありげにぃー!!! 露骨に無視するぅぅ!!! 》

 

 うっわ…グスグス、言ってるのが聞こえる…。

 本気で泣いてやがった…。

 

 …まったく。

 

 何も無い空間。

 そこに一人、ポツーンと、佇んでいる。

 早くないか? 何か分かったら云々言ってはいたけど…。

 まさか、こんな早く呼び出されるとは思わなかった。

 

 …呼び出されるって言っている時点で、どうかとは思うが…。

 

《 スンスン… 》

 

「悪かった…悪かったって!! はぁ…今回は何の用だよ」

 

《 グス…世界線の解析が完全に終わったの… 》

 

「あぁ…因果律がどうの言ってたな? その先の世界線って事か?」

 

《 ふぅ……そうよ!!!!!! 》

 

 

 …立ち直り、早いな…。

 

 

「んで? それだけで、俺呼び出されたの?」

 

《 今回は、アンタの為じゃないのよ。そっちの子の為!! 》

 

「んぁ?」

 

 ……。

 

 そっちの子。

 

 それを言われた時、特に方向を指示された訳でも無いのだけど、誘導される様に顔を動かしてしまった。

 向けた瞬間、視界に現れた。

 いつの間に、気づいたら…先程からそこにいたかの様に…。

 

「む…隆史? …ここは……ん?」

 

「…まほちゃん」

 

《 はい、いらっしゃい 》

 

「…なんだこの格好は…。隆史…何故嬉しそうなんだ?」

 

 黒森峰の制服…ではなく、何故かしほさんと同じ。

 西住流家元が何時も着ているスーツ…らしき物を着ていた。

 いやぁ…これはこれで…いいな!!!

 

 まほちゃんは、スーツが異様に似合うな!!

 

《 はいはい。そこのド変態は、置いておいて…今回は西住 まほさんの為に、この場を設けました!! 》

 

「私の為?」

 

《 そうよ!! 》

 

 …はい、駄女神さん。

 聞かれる事に答えるのは良いのだけど、説明が無い。

 今回は、エリス様は、いないのか?

 あの人の方が、話が早く進んで良いのだけど…。

 

《 おっ!! 遅くなりました!! 》

 

 あ…。

 もう一人声が響いた。

 何か息を切らしている様にも感じる声。

 

《 …チッ 》

 

《 あぁ! もう始まってる! ダメじゃないです先輩! 私がいない時に進めては! 私、先輩の監視役なんですよ!? 》

 

《 いらないわよぉ。私、もう真面目にやるって決めたから。だから帰っていいわよ? 》

 

《 …前回の五十鈴 華さんで、懲りましたか? 》

 

《 か…関係ないわねぇ? 》

 

《 …… 》

 

《 なによ、その目は。アンタ、露骨に現界してた癖に! そもそも簡単に戻って来れる…は…ず…。あぁ、そうか…そこの世界線にいるのか… 》

 

《 …な…なんの事でしょう? 》

 

《 古今東西、神が動物の姿で現界するってのは…まぁ多いけど……ふぅぅん。そっちの趣味があんの《 ありませんよ!!! 》 》

 

《 どうだか…ねぇ? 》

 

《 ……呼びましょうか? 33歳の五十鈴 華さん 》

 

《 やめて!!! ほんとにやめて!!! 》

 

 ……。

 

 女神同士盛り上がってないで…説明…。

 

「…女神。いい加減にしろ」

 

 あ、我慢出来なかったのか、俺よりも先にまほちゃんが口を開いた。

 若干、イライラしているのか、腕を組んで、少し眉を傾けている。

 

 …あぁ、ここ…感情出やすいから…。

 エリカとの件で、まだイライラしてるのか…。

 

《 ごめんなさい。今回はですね? 因果律が変わったせいで作られた、新たな未来の世界線が出たんです 》

 

《 そーそ。ぶっちゃけ因子は、もう関係が無いのだけどね。まぁ…前回が前回だったから… 》

 

「どういうことだ? 未来の行き先が変わったんだったら…」

 

《 元になる隆史さんに、伴侶となる方の因子と、未来お子様の因子がもう混じっているので、その伴侶となる方との世界線でしたらもう大丈夫です 》

 

《 世界線毎に、こんな事してたら私達、過重労働で死ぬわよ 》

 

「よくわからんが…前回済ませた、まほちゃんとなら、どの世界線ならもう大丈夫って事か?」

 

《 そうそう。あれは、西住 みほさんの世界線だったけど、その世界線にいた西住 まほさんの子供からも因子を貰ってるからね 》

 

「…では何故、私は今回呼ばれたんだ?」

 

 あー…イライラしてるぅ。

 前回の最後みたいに、変に俺に絡んでこないし…すっごい不機嫌オーラが…。

 

《 あぁ…前のある意味で失敗しちゃったからね…私が。だから、もう一つの世界線を見せたげよう! って事ね 》

 

「…もう一つ?」

 

《 はい…流石に浮気相手になっている未来しか…というのは、申し訳ないので…… 》

 

「……むっ!」

 

《 今回は、ちゃんと隆史との世界線よ!! 浮気じゃ無いわよ!! 選んだわよ!!! 》

 

「……」

 

 あ…急にソワソワし始めた…。

 傾いた眉が、別の角度に変わったぁ。

 オーラの色が、多分変わったなぁ…。

 

《 今回も、子供と手を繋いだ時点で、その子は帰っていくからね!! んじゃ、早速呼ぶわねぇ 》

 

「待て。待ってくれ女神様」

 

 …様が、ついた。

 

《 なに? 》

 

「一つ、お願いがあるんだ」

 

 …俺も言う。

 

 待て。待ってくれ!!

 

 まほちゃんが、ドヤ顔した!! ロクな事を言わないのが確定した!!

 

《 なんでしょう? 》

 

 

 

 

 

「  みほとエリカを呼んでくれ   」

 

 

 

 

「 」

 

 

 

《 え? 別に良いけど… 》

 

《 …………………… 》

 

《 エリス…アンタ、なんで顳かみ押さえてんの? 》

 

《 ……いや…あの… 》

 

 なんで!? この場になんで態々、みほ達呼ぶの!?

 

「まほちゃん!? 呼ぶ意味なんて無いよね? なんで態々呼ぶ《 まぁいいや。呼ぶわね!! よっっと!! 》

 

 

 駄女神ーーーーーー!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「ふむっ! これで役者が揃ったな!」

 

 いや…例の如く、一瞬。

 気がついたら、そこにいた…。

 が、マネキンの様に動かない。

 

 少しすると…二人の目玉が、ギョロッと動き…俺をその視線で射抜く…。

 というか…怖いよ!!

 

「…隆史。なんで私達呼ばれたのよ。前回、済んだわよね? エリナからも報告を聞いたわよね?」

 

「……いや、その…まほちゃんが…ね?」

 

「えぇっ!! 今、聞いたわ!! 説明聞いたわよ!!」

 

 じゃあ、なんで改めて俺に聞いたんだろ…。

 

「…隆史君」

 

「はい!!!」

 

「これ…多分、お姉ちゃんのあてつけ…だよね?」

 

 先程までの動きが停止していたのは、エリス様だな。うん…エリス様が説明してくれていたのだろう。

 エリカとみほは、その説明を聞いたのだろうけど。

 

 眼球運動のみで、こちらを見たみほの顔と…すでに違っていた。

 口元に指を曲げて添えて…。

 

 

「ウフフ…お姉ちゃん……可愛いね?」

 

 

 ……。

 

 

 こっっっわっっ!!!!

 

 笑った!? この場面で、何故笑う!?

 すげぇ穏やかな笑顔のみほが、ここまで…。

 

「…涼香さんの言った通りだぁ…覚悟決めると、結構……うんっ」

 

 あのくっそ姉貴の影響かぁ!!!

 その二人を、何故か笑みで見守っているまほちゃん!!??

 両手を上げて、天に叫ぶように…

 

「さぁ、もういいぞ! 呼んでくれ!」

 

《 ……あ、はい 》

 

《 先輩…今更何したか気がついたんですか? 》

 

《 …… 》

 

「早くしてくれ!!」

 

 …催促したよ。

 

《 よ…呼びます… 》

 

 

 

 もはや止められない…。

 安心できるのは、現実世界に戻れば、ここでの記憶は無くなる事くらいだ…。

 

 …。

 

 何故だろうか? 気休めにしか聞こえない…。

 

 

 ……

 

 …………。

 

 

「…あれ?」

 

 

 俺とまほちゃんの間。

 少し離れた所に、一人の少女が現れた。

 

 髪は短く、幼い顔立ち。

 

 現れたその子は、みほとの世界線の子供…かほと年齢も違うのだろう。

 

 いくつ位だろうか? 

 酷く無表情な顔で、こちらをじ…っと、見つめる子供は小学生程にも見える。

 …大人びた顔立ちもあり、中学生にも…。

 

「…そうか。あの子か」

 

 まぁ…うん。

 今回は対象は一人しかいないからな。

 しかし…。

 

「あの子が隊長の子供…。前回のかほ、だったかしら? 子供とは…雰囲気が違うわね」

 

「う…うん。すごく警戒してる…」

 

「……アンタには話してないわよ」

 

「そうですか。でも、私はエリカさんに話してますよ?」

 

「…チッ」

 

 …みほが…少々変わったな。

 エリカとのやり取りを、積極的取り始めた。

 …何かあったの……ん?

 

 目があった。

 その娘と目が。

 

 瞬間。

 

 俺とまほちゃんを交互に、目の動きだけで見ていた彼女の顔が、パッと綻んだ。

 

 

「 お父様ぁ~!! 」

 

「!?」

 

 両手を上げて、パタパタと満面の笑みで走り寄って…っぶ!?

 

「 お父様だぁ! 若い、お父様だぁ!! 」

 

 ず…頭突きで、腹に突っ込んでくるのは、やめなさい…。

 何故今、飛んだんだ? 結構身長差があるんだけど…良い跳躍力ですね。

 

 取り敢えず、両脇に手をいれて、同じ目線までこの子を抱き上げる。

 真正面に顔を見合わせると、先程までの警戒心をどこへやったのか…すっごい笑顔だ。

 

 うん…まほちゃん似だ。

 

 本当に、昔のまほちゃんそっくりだ。

 俺の遺伝子、どこへやら…。

 

 …まほちゃん。すげぇいい笑顔ですね。

 その笑顔を何故、みほとエリカに向けているのでしょうか?

 それを笑顔で返すみほが、怖い!

 

「まず…名前と歳を教えてくれ…るかな?」

 

 子供に向けての言葉使いが良くわからない…。

 その言葉に、特に疑問を持つ事もなく、彼女は答えた。

 

「西住 かほっ! 9歳!!」

 

 …そうか。

 嬉しそうにしている子供見て思う。

 

 …この世界でも、かほと…そう名付けるのか。

 ただ、性格が真反対…すごく活発そうな娘だった。

 

 ふむ…では最初に、これだけは聞かないとな。

 この態度なら、大丈夫だと思うが…

 

「かほ…」

 

「なぁに?」

 

 …。

 

 うん。

 

 

「パパンの事、好き?」

 

 

「…隆史君」

「…アンタ」

「……隆史」

 

 見えません!! 哀れみの視線なんて感じません!!

 

 大事な事です!!

 

 これは非常に大切な事何です!!

 さぁ!! どうだ!!

 

「 大好き!! 」

 

 

 ……。

 

 …………。

 

「…隆史君」

「はぁ…泣く程の事?」

「初めて普通に言われたモノだからか…」

「華さんとの子供の時も、言われたけど…あれは…」

「あの娘は少々、特殊過ぎたからな」

 

 はい!! 抱きしめてます!! 抱きしめられてます!!

 外野!! うっさい!!!

 

 ここに来て!!

 

 ここに来てぇ!! 初めてっっ!!!

 

『 補足しましょう…か? 』

 

「あれ? 女神様」

「…来たの?」

 

『 多少、心配でしたので…不足の事態にも対応出来る様にと… 』

『 本当は、逃げたかったけど…下手したら、更に酷くなりそうだったしね… 』

 

 エリス様の姿が見えたが、今は娘を天高く掲げて、グルグルと俺の体を回して遊ぶ事に忙しい!!!

 

 キャッキャ喜んでくれるので、更に回すよォォ!!!

 

「た…隆史がはしゃいでる…」

「隆史君のここまでの笑顔は、見た事ない…」

「…ふっふふ……」

「なんで、お姉ちゃんが喜んでいるんだろう?」

 

『 ええと…補足どうします? やめますか? 』

 

「お願いする!!!」

「お姉ちゃん…」

「隊長……」

 

『 えっと…この世界では…その…澤 梓さんと同じね…。要は、別れた直後…掻っ攫ったわ。しかも初回で 』

 

「姉が、泥棒猫って事ですか?」

「みほ!?」

「おい、妹」

 

『 …で…その…一度、そういった関係になったら。後はもう…言わなくとも分かるんじゃない? ……自分達の母親の事なら 』

 

 

「「 …… 」」

 

 

 きこえなーい。なにもきこえませーん。

 かほが、可愛くて仕方ありませーん!

 

 

「でも、前回の世界線での話ですと…問題が発生したんじゃないのですか?」

 

『…今回はなかったの。寧ろ歓迎ムードだったみたいでね 』

 

「どういう事だ? 死にぞこないの老害共が黙って見ていたとは、考えられんが…」

 

「…隊長」

 

『 少しはあったようですけど…隆史さんは、どうも西住 まほさんと共謀…とでも言うのでしょうか? なんとかしてしまったみたいです 』

 

「共謀って…」

 

『 隆史の実績って奴が、結構すごかったみたいでね…有無を言わさなかったみたい 』

 

『 そうですね。高校生時代からもそうです。…大洗学園の廃校阻止…そこから、成人になってからも、有力選手の排出…後に… 』

 

「ちょっと待ってください」

 

『 なんでしょう? 』

 

「は…廃校阻止? どういう事ですか? え? 前回も言っていましたけど…え?」

 

『 あぁ…この世界線はね? 大洗学園の廃校が阻止された世界線なのよ 』

 

「……」

 

『 その一旦を担ったのが、アレ。まぁ、その事件のおかげで、貴女も物凄く有名になっちゃったけどね 』

 

「有名…」

 

『 詳しくは言えないけど…まぁ? そういった未来も出来てきたのよ 』 

 

「……」

 

『 あまり深く考えないでくださいね? その事件の主役は、貴女でしたし… 』

 

「事件……私…」

 

『 あ、ちなみにあのクソ女っ隆史ね? 日本戦車なんたらの組織運営に就職……スカウト業みたいな事してるわよ? 』

 

「「「……」」」

 

『 まぁ…はい。ご想像の通りだと思います…。すごい敏腕らしいですよ? …後、西住 みほさん、逸見 エリカさん。二人共、西住流師範となっていますね。…皆さん熊本を中心に活動してます 』

 

「…今私達の事、誤魔化す様に言わなかった?」

 

『 き…気のせいです! 』

 

「…で、私は家元を継ぐのだな」

 

『 そうね!! 』

 

「……」

 

『 この世界線。最後…形は変われど、結局は隆史さんの夢見、描いた未来になりましたよ… 』

 

「「 …… 」」

 

「ん? どういう…」

 

「…みほは…しっかりと、考える事だ。今この場にいる、この4人が…隆史の夢見る未来だと…女神様言ったんだ」

 

「…え?」

 

「……チッ」

 

『 …… 』

 

 

 楽しい!! めっちゃ楽しい!!!

 はっはー! 肩車!? したらぁ!! 父ちゃん、何でもしたる!!

 

 

「「「 …… 」」」

 

『 …今回、隆史の奴…すごい緩みっぱなしの顔してるわね。きもちわるぅぅ 』

 

「こちらの話…なんにも聞いてなかったわね…アレ」

 

「……」

 

 なに? なにがぁ!?

 知らねぇ!! 知ったこっちゃねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

「ふむ…まぁいい。では、私も()と、少し戯れてくるか…」

「「……」」イラッ

『 …あー…全部聞く前に行っちゃったわね 』

 

「何がですかぁ?」

「何がよ」

 

『 え…笑顔で睨まないでよ…。いやね? 基本順風満帆なんだけどね? 』

 

「「 …… 」」

 

『 睨まないで!! 』

「まぁいいわ…なによ」

『 …あの子ね? 』

 

 

 まほちゃんが、こちらに歩いてきた。

 お話は終わったのでしょうかねぇ? 

 そういや、この娘と一言も喋ってないからね。

 自身の娘だ…少し、話したのだろう。

 

「隆史」

 

 少し良いか? と、目の前まで来た。

 視線は、かほに向けられている。

 そのかほは、抱き上げる様にした俺の曲げた腕に乗り、肩を手で掴み近づいたまほちゃんを見つめている。

 

「…お母様」

 

「んっ…」

 

 親子の会話? だろうか? 

 言葉少なく、何か意思疎通をするかの様に…差し出された まほちゃんの手を見る かほ。

 

『 戦車道界では、過去類を見ない天才らしいのですが…それこそ、島田 愛里寿さんを遥かに凌駕する程の… 』

 

「あの化物みたいな天才少女を?」

 

『 練習試合ですが、成人の現役選手にすら、何度か勝利した事があるようです。ほら…門下生とかいらっしゃるでしょ? 』

 

「…あの子、さっき9歳って言ってなかった!?」

「そうか…戦略に歳は関係ないもんね…」

「だからって!!」

 

『 …どうにも隆史さんのお子様って、どの子も、戦車道に関しては、イロイロとその…まぁ有るみたいでして…。まぁそれは置いておいて、問題は… 』

 

 聞こえてくる、エリス様の補足。

 

 ウチの子なんすよ、ソレ!!

 俺の娘なんすよ!!

 

 …いやいや。今は目の前ですね。

 

 近づくまほちゃんの腕。

 それを見続ける かほ。

 

 そして…一言。

 

「 嫌っ!! 」

 

「」

 

 あ…まほちゃんが、固まった。

 

「 お母様は嫌っ!! 嫌い!! 」

 

「 」

 

 …え?

 

 はい?

 まほちゃんの、ここまでの何とも言えない顔は…初めて見る。

 すっごい、ショックを受けてますね…。

 

 えっと…えーーと!! ふぉろー!!!

 

「えっと…かほ? その…なんというか…お母様…嫌いなの?」

 

「嫌い!! 大っきらい!!」

 

「  」

 

 ……。

 フォローが出来ない程の、即答な拒絶…。

 そのお母様、泣きそうだけど?

 

「お小言ばっかりだし!! にしずみりゅうが、どうのうるさいし!! 鉄臭いし!! 油臭いし!!」

 

「  」

 

 

 

「 何より、戦車に乗せようとするから嫌い!! 」

 

「   」

 

『 …彼女……戦車道が…というよりも、戦車が大嫌いみたいで… 』

 

 

「「 …… 」」

 

 聞こえてきた、エリス様の補足…。

 それを聞いて…まほちゃんが、遂に崩れ落ちた。

 

「に…西住流の跡継ぎが…戦車嫌い…」

 

「そう! それ!! なんでも跡継ぎとか言うの嫌なの!!! もう嫌なの!! 鉄臭いのヤッ!!」

 

『 …なまじ、才能が凄まじいのもアリ…まぁ…察してやって下さい 』

 

「…そりゃあ無理もないわね。乗せようとするでしょうね。そんな才覚があって…西住流家元跡継ぎなら…余計に」

「お母さん以上にしつこそう…」

 

 う~ん…。

 周りからも言われてそうだよな…。

 練習試合とはいえ、大人相手に勝ってしまう程の技量。

 それこそ、家以外でも言われ続けるだろう。

 …そりゃあ息が詰まりそうになるだろうなぁ…しかも9歳。

 

「隆史ぃ…」

 

 泣きそうな目で見上げてくるまほちゃん。

 なんか…すげぇ縋るような…。まぁうん。

 

「ま…まぁ? こんな感じじゃ、外でもイロイロと圧迫されてそうだし…家でくらい、多めに見てやれば?」

 

「…しかし…跡継ぎが……これでは…」

 

「嫌いだって言ってるんだし…無理にやらせるのも、かほの為にならないだろよ。もう少し、大きくなってからでも…」

 

「…なる程」

 

「色々な、体験させて…それからでも…」

 

「……なる程な!! 分かったぞ!! そうかっ!! お前が甘やかしているんだな!!」

 

「いやいやいや!!」

 

 元気よく、立ち上がりましたね!!

 

「経験!? それはそれで、必要な事だろうがなっ!! だが、それは別問題だ!!」

 

「いやぁ? そうかぁ? 戦車嫌いな一端は、周りからの事もあるんじゃないのか? だったら他の事でガス抜きを…なぁ?」

 

「そうだよ!! お父様! 色々連れってくれるし! 遊んでくれるから大好き!! ……お母様、戦車の事ばっかり言うから嫌ぁぁい」

 

「なっ!?」

 

 

 ……。

 

 

『 あ…。そろそろまずい 』

 

 

 ………………。

 

 

「ほっ…ほらぁ!! かほも喜んでるし!! 子供は遊ぶのも仕事の内だと思うんだ!!」

 

「た…隆史が、何時もそうやって甘やかすから!! 西住流家元の子にしては、些かオテンバだと思ったのも…結局は、あなたがっ!!」

 

「い…いやぁ? 違うと思う…けど? ほっほら! みほも昔はっ!!」

 

「…みほは今、関係ない」

 

「みほ叔母ちゃんは、優しいから好きィ」

 

「……ミホ」

 

「まっ!? お姉ちゃん!? 本気で睨まないでよ!!」

 

「ちなみに隣の、エリカはどうだ?」

 

「……あの人、戦車ばかりに乗せようとするから嫌い」

 

「あの人!?」

 

 …めっちゃ他人行儀…。

 

「お母様と殆ど変わらないし…お父様に、すっごい近づいて…何かにつけてベタベタ触るから……すっごい嫌い」

 

「…なっ!?」

 

「「 …… 」」

 

 

「…そうか。やはりか。…どうにも最近、みほだけじゃなく、エリカも怪しいと思っていたが……そうか」

 

「何が!? それよりも、今のかほの発言が、どう聞いても9歳児じゃないよな!? あれぇ!?」

 

「誤魔化すな!! 昔からこうだろうが!! …あなたは、どうにも…みほとエリカに対してだけは、結婚してからもあまり態度が変わらないのが…物凄く……こう……ものすごぉぉく…」

 

「ま…まって!! まほ!? なんで手をコキコキ鳴らしてんの!?」

 

 

 

『 …… 』

「「 …… 」」

『 さて、そろそろ帰しましょうか? 』

『 そうね! 流石に今回はしっかりと、消しておきましょう!! もう…因果律改変は…嫌…』

 

 

「りほはっ!? りほが、成長してからでも、西住流を継ぐ継がないは、それからでも良くないか!?」

 

「…誤魔化すな。今は浮気の類いを言っている。それに りほもあなたが甘やかすから、そんなに変わらないっ!!」

 

「……そ…そんな事はない……よぉ?」

 

「……」

 

「……」ガタガタ

 

「おいっ! 女神!!!」

 

『 はいっ!? 』

 

「…一つ教えてくれ」

 

『 な…なに? 』

 

「私の夫は、現行で浮気をしているか?」

 

「まほ!?」

 

『 し…してないわ。貴女と結婚してからは、してない… 』

 

「ほっ…ほらっ!! してな「  し て か ら は ?  」」

 

「 」

 

「さぁ…夫。いつだ……そして誰だ?」

 

「  」

 

「……みほか……エリカか……どっちだ?」

 

「アクアッ!! お前っ!! 余計な事をっっぉぉ!!??」

 

 かほが…スルッと降りて…その場を走り去っていった。

 一定の距離を取って、スッと座った…。

 

 慣れてる!!

 

「 ……まさか…あの女神……カ? 」

 

『 ヒィ!? 違うわよ!! こっちを巻き込まないで!!! 怖っ!! なにその圧はっ!!?? この前の五十鈴 華さんが可愛く見える!!! 』

 

「結婚する前もしてなっ…アクアッ! お前、何時も言い方考えろって言ってるだろうが!!!」

 

「イツモ…? 妻でも無いのに……オマエ?」

 

「 勘弁してくれ!! 」

 

 

 

『 収集がつかなくなりましたので…もう帰ってもらっていいですか? 西住 かほさん 』

 

「え? …はい、分かりました。若い二人を見られましたので…大変満足しました」

 

「「 !!?? 」」

 

「では、みほ叔母様。エリカ師範。これで私は失礼致します」

 

『 …変な所、隆史さんと似たようでして…彼女、外と中では態度がガラリと変わるのです 』

 

「言い方を悪くすれば…外面と言う物ですね。お嬢様…と、良く言われますが…正直、肩が凝って仕方有りませんよ。お父様とお母様位しか、気が抜けませんしね…はぁ…」

 

「…あの…とても9歳児には、見えないのですけど…」

 

「では…最後に…………みほ叔母さんは、もう少し自重してね!!」

 

「!?」

 

「エリリン師範は、いい加減しやがってねっ!!!」

 

「なっ!?」

 

『 で…では……帰しますね…… 』

 

 

「 ばいびーーー!!!!! 

 

 

 

 ……。

 

 …………………。

 

 

 後ろで会話は聞こえ来ていたが、一瞬目の前が真っ白に光った。

 

 

 

 そして…俺の意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

『 …つ…疲れた……。本気で疲れた……今回が一番だったわ… 』

 

「…あの…隆史君も強制送還したんですか?」

 

『 アレがいなくなったら、すぐに解決するでしょうが!! 』

 

「そうね…隊長も強制送還よね…今回」

 

『 怖いじゃない!!! 』

 

 ……

 

『 怖いよねッ!!!?? 』

 

「なんで、ひと呼吸置いたのよ…」

 

『 ま…まぁまぁ… 』

 

「呼び出した本人達が消えて…なんで私達は、まだいるのよ」

 

『 一応…聞いておこうかと思いまして 』

 

「何です?」

「は?」

 

『 貴女方も、この世界線の未来…は、見たいですか? 前回の世界線に比べると…結構、皆さんお幸せそうでしたので…どうかと思いまして 』

 

「見たいです!!」

「……」

 

『 即答ね…ま、まぁ西住 みほさんは、そうよね。前回…結局浮気されてる未来だし 』

 

「そうです!!!」

 

『 わかったわ。んじゃ、解析しとく。そっちの逸見 エリカさんは? 』

 

「見たいわね。えぇ……見たいわ!」

 

「……」

 

『 おや以外。てっきり片意地張って、拒否するかと思ったのに 』

 

「そういうのはね…もう…やめたのよ」

 

『 ふ~~ん。まぁいいけど 』

 

「……」

 

『 それでは、お二人共に解析をしておきます。他に何か質問ござますか? 』

 

「はい!!」

 

『 …どうぞ 』

 

「最後、未来の隆史君がいっていた「りほ」って…」

 

『 あぁ、妹よ。西住 かほさんの 』

 

「…妹」

 

『 …ちなみに…先祖帰りとでもいうのかしら? 西住流家元……西住 しほさんにそっくりよ 』

 

 

 

 

「「            」」

 

 

 

『 大丈夫大丈夫!! マジで、違うから。本当に先祖帰り 』…コノセカイセンハネ

 

「そうだよねっ! 未来のお姉ちゃんが…その事に触れてなかったし…」

 

「……」

 

『 ただ一時…西住 みほさんが、本気でDNA鑑定を考えていたわ 』

 

 

「「 ………… 」」

 

 

『 さぁて…そろそろ次の人……準備しないと… 』

 

「次?」

 

『 そうです。今回の件、因子は本当にまったく関係ありませんからね。ただの先輩の恐怖に駆られた行動です 』

 

『 ……アンタ 』

 

「き…聞いていいかしら?」

 

『 なんでしょう? 』

 

「相手……当然いるんでしょ? 次は誰よ」

 

『 それを聞いてどうする……はぁ……まぁ気になりますよね? 』

 

「……」

 

『 えっと…先輩? 』

 

 

『はいはい…えっと次はね……3人いるわ!! ……前回の9人より大分……ましよね』

 

 

「……さん…」

 

 

 

『 ダージリンさん…と、オレンジペコさん……そして… 』

 

 

「 …… 」

 

 

 

 

『 ノンナさんね!! 』

 

 

 




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