《 解析が完了しました 》
無機質な声が、また頭の中に響く。
どこかで、聞いた声…。
いつか、聞いた声…。
《 新たな、世界線の変動を確認 》
あぁ…そうだ。最初に聞いた、あの時の…。
目を開く前、脳内で響いたその声。
その声が言い終わるやいなや…。
《 んな訳で、いらっさっっっい!!! 》
「……」
暗い、何もない空間…。
地面が、どこからか当たる光で分かるくらい…。
冷静になって見渡すと、結構細かい部分もあるのだな。
地面には白と黒。正方形のオセロ模様が刻まれていた。
前に来た時は、余裕なんて何もなく…ただ、驚くばかりだ。
結構、気づかないものなんだな。
《 ちょっと!! 無視しないでよ!! 》
他にも何かないものだろうか?
奥まで続く、何も無い空間。
地面は続いているのだから、進んでみたら、何かあるかもしれない。
《 ガン無視!? 泣くわよ!! 結構、無視って堪えるんだから!! ほら! 泣くわよ!! 》
「…………………………」
椅子が二つ…向かい合って置かれている。
そこにだけスポットライトが当たっている為、とても目立つ。
装飾の細かい…金と…
《 うわぁーーーーーん!!!! 隆史が無視するぅ!! 》
…。
はぁ…鳴き声が…脳内に響いて、本気でうるせぇ。
「わかったよ!! マジで泣き始めるなよ!!」
《 どうでもいい事、意味ありげにぃー!!! 露骨に無視するぅぅ!!! 》
うっわ…グスグス、言ってるのが聞こえる…。
本気で泣いてやがった…。
…まったく。
何も無い空間。
そこに一人、ポツーンと、佇んでいる。
早くないか? 何か分かったら云々言ってはいたけど…。
まさか、こんな早く呼び出されるとは思わなかった。
…呼び出されるって言っている時点で、どうかとは思うが…。
《 スンスン… 》
「悪かった…悪かったって!! はぁ…今回は何の用だよ」
《 グス…世界線の解析が完全に終わったの… 》
「あぁ…因果律がどうの言ってたな? その先の世界線って事か?」
《 ふぅ……そうよ!!!!!! 》
…立ち直り、早いな…。
「んで? それだけで、俺呼び出されたの?」
《 今回は、アンタの為じゃないのよ。そっちの子の為!! 》
「んぁ?」
……。
そっちの子。
それを言われた時、特に方向を指示された訳でも無いのだけど、誘導される様に顔を動かしてしまった。
向けた瞬間、視界に現れた。
いつの間に、気づいたら…先程からそこにいたかの様に…。
「む…隆史? …ここは……ん?」
「…まほちゃん」
《 はい、いらっしゃい 》
「…なんだこの格好は…。隆史…何故嬉しそうなんだ?」
黒森峰の制服…ではなく、何故かしほさんと同じ。
西住流家元が何時も着ているスーツ…らしき物を着ていた。
いやぁ…これはこれで…いいな!!!
まほちゃんは、スーツが異様に似合うな!!
《 はいはい。そこのド変態は、置いておいて…今回は西住 まほさんの為に、この場を設けました!! 》
「私の為?」
《 そうよ!! 》
…はい、駄女神さん。
聞かれる事に答えるのは良いのだけど、説明が無い。
今回は、エリス様は、いないのか?
あの人の方が、話が早く進んで良いのだけど…。
《 おっ!! 遅くなりました!! 》
あ…。
もう一人声が響いた。
何か息を切らしている様にも感じる声。
《 …チッ 》
《 あぁ! もう始まってる! ダメじゃないです先輩! 私がいない時に進めては! 私、先輩の監視役なんですよ!? 》
《 いらないわよぉ。私、もう真面目にやるって決めたから。だから帰っていいわよ? 》
《 …前回の五十鈴 華さんで、懲りましたか? 》
《 か…関係ないわねぇ? 》
《 …… 》
《 なによ、その目は。アンタ、露骨に現界してた癖に! そもそも簡単に戻って来れる…は…ず…。あぁ、そうか…そこの世界線にいるのか… 》
《 …な…なんの事でしょう? 》
《 古今東西、神が動物の姿で現界するってのは…まぁ多いけど……ふぅぅん。そっちの趣味があんの《 ありませんよ!!! 》 》
《 どうだか…ねぇ? 》
《 ……呼びましょうか? 33歳の五十鈴 華さん 》
《 やめて!!! ほんとにやめて!!! 》
……。
女神同士盛り上がってないで…説明…。
「…女神。いい加減にしろ」
あ、我慢出来なかったのか、俺よりも先にまほちゃんが口を開いた。
若干、イライラしているのか、腕を組んで、少し眉を傾けている。
…あぁ、ここ…感情出やすいから…。
エリカとの件で、まだイライラしてるのか…。
《 ごめんなさい。今回はですね? 因果律が変わったせいで作られた、新たな未来の世界線が出たんです 》
《 そーそ。ぶっちゃけ因子は、もう関係が無いのだけどね。まぁ…前回が前回だったから… 》
「どういうことだ? 未来の行き先が変わったんだったら…」
《 元になる隆史さんに、伴侶となる方の因子と、未来お子様の因子がもう混じっているので、その伴侶となる方との世界線でしたらもう大丈夫です 》
《 世界線毎に、こんな事してたら私達、過重労働で死ぬわよ 》
「よくわからんが…前回済ませた、まほちゃんとなら、どの世界線ならもう大丈夫って事か?」
《 そうそう。あれは、西住 みほさんの世界線だったけど、その世界線にいた西住 まほさんの子供からも因子を貰ってるからね 》
「…では何故、私は今回呼ばれたんだ?」
あー…イライラしてるぅ。
前回の最後みたいに、変に俺に絡んでこないし…すっごい不機嫌オーラが…。
《 あぁ…前のある意味で失敗しちゃったからね…私が。だから、もう一つの世界線を見せたげよう! って事ね 》
「…もう一つ?」
《 はい…流石に浮気相手になっている未来しか…というのは、申し訳ないので…… 》
「……むっ!」
《 今回は、ちゃんと隆史との世界線よ!! 浮気じゃ無いわよ!! 選んだわよ!!! 》
「……」
あ…急にソワソワし始めた…。
傾いた眉が、別の角度に変わったぁ。
オーラの色が、多分変わったなぁ…。
《 今回も、子供と手を繋いだ時点で、その子は帰っていくからね!! んじゃ、早速呼ぶわねぇ 》
「待て。待ってくれ女神様」
…様が、ついた。
《 なに? 》
「一つ、お願いがあるんだ」
…俺も言う。
待て。待ってくれ!!
まほちゃんが、ドヤ顔した!! ロクな事を言わないのが確定した!!
《 なんでしょう? 》
「 みほとエリカを呼んでくれ 」
「 」
《 え? 別に良いけど… 》
《 …………………… 》
《 エリス…アンタ、なんで顳かみ押さえてんの? 》
《 ……いや…あの… 》
なんで!? この場になんで態々、みほ達呼ぶの!?
「まほちゃん!? 呼ぶ意味なんて無いよね? なんで態々呼ぶ《 まぁいいや。呼ぶわね!! よっっと!! 》
駄女神ーーーーーー!!!!!!
「……」
「……」
「ふむっ! これで役者が揃ったな!」
いや…例の如く、一瞬。
気がついたら、そこにいた…。
が、マネキンの様に動かない。
少しすると…二人の目玉が、ギョロッと動き…俺をその視線で射抜く…。
というか…怖いよ!!
「…隆史。なんで私達呼ばれたのよ。前回、済んだわよね? エリナからも報告を聞いたわよね?」
「……いや、その…まほちゃんが…ね?」
「えぇっ!! 今、聞いたわ!! 説明聞いたわよ!!」
じゃあ、なんで改めて俺に聞いたんだろ…。
「…隆史君」
「はい!!!」
「これ…多分、お姉ちゃんのあてつけ…だよね?」
先程までの動きが停止していたのは、エリス様だな。うん…エリス様が説明してくれていたのだろう。
エリカとみほは、その説明を聞いたのだろうけど。
眼球運動のみで、こちらを見たみほの顔と…すでに違っていた。
口元に指を曲げて添えて…。
「ウフフ…お姉ちゃん……可愛いね?」
……。
こっっっわっっ!!!!
笑った!? この場面で、何故笑う!?
すげぇ穏やかな笑顔のみほが、ここまで…。
「…涼香さんの言った通りだぁ…覚悟決めると、結構……うんっ」
あのくっそ姉貴の影響かぁ!!!
その二人を、何故か笑みで見守っているまほちゃん!!??
両手を上げて、天に叫ぶように…
「さぁ、もういいぞ! 呼んでくれ!」
《 ……あ、はい 》
《 先輩…今更何したか気がついたんですか? 》
《 …… 》
「早くしてくれ!!」
…催促したよ。
《 よ…呼びます… 》
もはや止められない…。
安心できるのは、現実世界に戻れば、ここでの記憶は無くなる事くらいだ…。
…。
何故だろうか? 気休めにしか聞こえない…。
……
…………。
「…あれ?」
俺とまほちゃんの間。
少し離れた所に、一人の少女が現れた。
髪は短く、幼い顔立ち。
現れたその子は、みほとの世界線の子供…かほと年齢も違うのだろう。
いくつ位だろうか?
酷く無表情な顔で、こちらをじ…っと、見つめる子供は小学生程にも見える。
…大人びた顔立ちもあり、中学生にも…。
「…そうか。あの子か」
まぁ…うん。
今回は対象は一人しかいないからな。
しかし…。
「あの子が隊長の子供…。前回のかほ、だったかしら? 子供とは…雰囲気が違うわね」
「う…うん。すごく警戒してる…」
「……アンタには話してないわよ」
「そうですか。でも、私はエリカさんに話してますよ?」
「…チッ」
…みほが…少々変わったな。
エリカとのやり取りを、積極的取り始めた。
…何かあったの……ん?
目があった。
その娘と目が。
瞬間。
俺とまほちゃんを交互に、目の動きだけで見ていた彼女の顔が、パッと綻んだ。
「 お父様ぁ~!! 」
「!?」
両手を上げて、パタパタと満面の笑みで走り寄って…っぶ!?
「 お父様だぁ! 若い、お父様だぁ!! 」
ず…頭突きで、腹に突っ込んでくるのは、やめなさい…。
何故今、飛んだんだ? 結構身長差があるんだけど…良い跳躍力ですね。
取り敢えず、両脇に手をいれて、同じ目線までこの子を抱き上げる。
真正面に顔を見合わせると、先程までの警戒心をどこへやったのか…すっごい笑顔だ。
うん…まほちゃん似だ。
本当に、昔のまほちゃんそっくりだ。
俺の遺伝子、どこへやら…。
…まほちゃん。すげぇいい笑顔ですね。
その笑顔を何故、みほとエリカに向けているのでしょうか?
それを笑顔で返すみほが、怖い!
「まず…名前と歳を教えてくれ…るかな?」
子供に向けての言葉使いが良くわからない…。
その言葉に、特に疑問を持つ事もなく、彼女は答えた。
「西住 かほっ! 9歳!!」
…そうか。
嬉しそうにしている子供見て思う。
…この世界でも、かほと…そう名付けるのか。
ただ、性格が真反対…すごく活発そうな娘だった。
ふむ…では最初に、これだけは聞かないとな。
この態度なら、大丈夫だと思うが…
「かほ…」
「なぁに?」
…。
うん。
「パパンの事、好き?」
「…隆史君」
「…アンタ」
「……隆史」
見えません!! 哀れみの視線なんて感じません!!
大事な事です!!
これは非常に大切な事何です!!
さぁ!! どうだ!!
「 大好き!! 」
……。
…………。
「…隆史君」
「はぁ…泣く程の事?」
「初めて普通に言われたモノだからか…」
「華さんとの子供の時も、言われたけど…あれは…」
「あの娘は少々、特殊過ぎたからな」
はい!! 抱きしめてます!! 抱きしめられてます!!
外野!! うっさい!!!
ここに来て!!
ここに来てぇ!! 初めてっっ!!!
『 補足しましょう…か? 』
「あれ? 女神様」
「…来たの?」
『 多少、心配でしたので…不足の事態にも対応出来る様にと… 』
『 本当は、逃げたかったけど…下手したら、更に酷くなりそうだったしね… 』
エリス様の姿が見えたが、今は娘を天高く掲げて、グルグルと俺の体を回して遊ぶ事に忙しい!!!
キャッキャ喜んでくれるので、更に回すよォォ!!!
「た…隆史がはしゃいでる…」
「隆史君のここまでの笑顔は、見た事ない…」
「…ふっふふ……」
「なんで、お姉ちゃんが喜んでいるんだろう?」
『 ええと…補足どうします? やめますか? 』
「お願いする!!!」
「お姉ちゃん…」
「隊長……」
『 えっと…この世界では…その…澤 梓さんと同じね…。要は、別れた直後…掻っ攫ったわ。しかも初回で 』
「姉が、泥棒猫って事ですか?」
「みほ!?」
「おい、妹」
『 …で…その…一度、そういった関係になったら。後はもう…言わなくとも分かるんじゃない? ……自分達の母親の事なら 』
「「 …… 」」
きこえなーい。なにもきこえませーん。
かほが、可愛くて仕方ありませーん!
「でも、前回の世界線での話ですと…問題が発生したんじゃないのですか?」
『…今回はなかったの。寧ろ歓迎ムードだったみたいでね 』
「どういう事だ? 死にぞこないの老害共が黙って見ていたとは、考えられんが…」
「…隊長」
『 少しはあったようですけど…隆史さんは、どうも西住 まほさんと共謀…とでも言うのでしょうか? なんとかしてしまったみたいです 』
「共謀って…」
『 隆史の実績って奴が、結構すごかったみたいでね…有無を言わさなかったみたい 』
『 そうですね。高校生時代からもそうです。…大洗学園の廃校阻止…そこから、成人になってからも、有力選手の排出…後に… 』
「ちょっと待ってください」
『 なんでしょう? 』
「は…廃校阻止? どういう事ですか? え? 前回も言っていましたけど…え?」
『 あぁ…この世界線はね? 大洗学園の廃校が阻止された世界線なのよ 』
「……」
『 その一旦を担ったのが、アレ。まぁ、その事件のおかげで、貴女も物凄く有名になっちゃったけどね 』
「有名…」
『 詳しくは言えないけど…まぁ? そういった未来も出来てきたのよ 』
「……」
『 あまり深く考えないでくださいね? その事件の主役は、貴女でしたし… 』
「事件……私…」
『 あ、ちなみにあのクソ女っ隆史ね? 日本戦車なんたらの組織運営に就職……スカウト業みたいな事してるわよ? 』
「「「……」」」
『 まぁ…はい。ご想像の通りだと思います…。すごい敏腕らしいですよ? …後、西住 みほさん、逸見 エリカさん。二人共、西住流師範となっていますね。…皆さん熊本を中心に活動してます 』
「…今私達の事、誤魔化す様に言わなかった?」
『 き…気のせいです! 』
「…で、私は家元を継ぐのだな」
『 そうね!! 』
「……」
『 この世界線。最後…形は変われど、結局は隆史さんの夢見、描いた未来になりましたよ… 』
「「 …… 」」
「ん? どういう…」
「…みほは…しっかりと、考える事だ。今この場にいる、この4人が…隆史の夢見る未来だと…女神様言ったんだ」
「…え?」
「……チッ」
『 …… 』
楽しい!! めっちゃ楽しい!!!
はっはー! 肩車!? したらぁ!! 父ちゃん、何でもしたる!!
「「「 …… 」」」
『 …今回、隆史の奴…すごい緩みっぱなしの顔してるわね。きもちわるぅぅ 』
「こちらの話…なんにも聞いてなかったわね…アレ」
「……」
なに? なにがぁ!?
知らねぇ!! 知ったこっちゃねぇ!!
▼
「ふむ…まぁいい。では、私も
「「……」」イラッ
『 …あー…全部聞く前に行っちゃったわね 』
「何がですかぁ?」
「何がよ」
『 え…笑顔で睨まないでよ…。いやね? 基本順風満帆なんだけどね? 』
「「 …… 」」
『 睨まないで!! 』
「まぁいいわ…なによ」
『 …あの子ね? 』
まほちゃんが、こちらに歩いてきた。
お話は終わったのでしょうかねぇ?
そういや、この娘と一言も喋ってないからね。
自身の娘だ…少し、話したのだろう。
「隆史」
少し良いか? と、目の前まで来た。
視線は、かほに向けられている。
そのかほは、抱き上げる様にした俺の曲げた腕に乗り、肩を手で掴み近づいたまほちゃんを見つめている。
「…お母様」
「んっ…」
親子の会話? だろうか?
言葉少なく、何か意思疎通をするかの様に…差し出された まほちゃんの手を見る かほ。
『 戦車道界では、過去類を見ない天才らしいのですが…それこそ、島田 愛里寿さんを遥かに凌駕する程の… 』
「あの化物みたいな天才少女を?」
『 練習試合ですが、成人の現役選手にすら、何度か勝利した事があるようです。ほら…門下生とかいらっしゃるでしょ? 』
「…あの子、さっき9歳って言ってなかった!?」
「そうか…戦略に歳は関係ないもんね…」
「だからって!!」
『 …どうにも隆史さんのお子様って、どの子も、戦車道に関しては、イロイロとその…まぁ有るみたいでして…。まぁそれは置いておいて、問題は… 』
聞こえてくる、エリス様の補足。
ウチの子なんすよ、ソレ!!
俺の娘なんすよ!!
…いやいや。今は目の前ですね。
近づくまほちゃんの腕。
それを見続ける かほ。
そして…一言。
「 嫌っ!! 」
「」
あ…まほちゃんが、固まった。
「 お母様は嫌っ!! 嫌い!! 」
「 」
…え?
はい?
まほちゃんの、ここまでの何とも言えない顔は…初めて見る。
すっごい、ショックを受けてますね…。
えっと…えーーと!! ふぉろー!!!
「えっと…かほ? その…なんというか…お母様…嫌いなの?」
「嫌い!! 大っきらい!!」
「 」
……。
フォローが出来ない程の、即答な拒絶…。
そのお母様、泣きそうだけど?
「お小言ばっかりだし!! にしずみりゅうが、どうのうるさいし!! 鉄臭いし!! 油臭いし!!」
「 」
「 何より、戦車に乗せようとするから嫌い!! 」
「 」
『 …彼女……戦車道が…というよりも、戦車が大嫌いみたいで… 』
「「 …… 」」
聞こえてきた、エリス様の補足…。
それを聞いて…まほちゃんが、遂に崩れ落ちた。
「に…西住流の跡継ぎが…戦車嫌い…」
「そう! それ!! なんでも跡継ぎとか言うの嫌なの!!! もう嫌なの!! 鉄臭いのヤッ!!」
『 …なまじ、才能が凄まじいのもアリ…まぁ…察してやって下さい 』
「…そりゃあ無理もないわね。乗せようとするでしょうね。そんな才覚があって…西住流家元跡継ぎなら…余計に」
「お母さん以上にしつこそう…」
う~ん…。
周りからも言われてそうだよな…。
練習試合とはいえ、大人相手に勝ってしまう程の技量。
それこそ、家以外でも言われ続けるだろう。
…そりゃあ息が詰まりそうになるだろうなぁ…しかも9歳。
「隆史ぃ…」
泣きそうな目で見上げてくるまほちゃん。
なんか…すげぇ縋るような…。まぁうん。
「ま…まぁ? こんな感じじゃ、外でもイロイロと圧迫されてそうだし…家でくらい、多めに見てやれば?」
「…しかし…跡継ぎが……これでは…」
「嫌いだって言ってるんだし…無理にやらせるのも、かほの為にならないだろよ。もう少し、大きくなってからでも…」
「…なる程」
「色々な、体験させて…それからでも…」
「……なる程な!! 分かったぞ!! そうかっ!! お前が甘やかしているんだな!!」
「いやいやいや!!」
元気よく、立ち上がりましたね!!
「経験!? それはそれで、必要な事だろうがなっ!! だが、それは別問題だ!!」
「いやぁ? そうかぁ? 戦車嫌いな一端は、周りからの事もあるんじゃないのか? だったら他の事でガス抜きを…なぁ?」
「そうだよ!! お父様! 色々連れってくれるし! 遊んでくれるから大好き!! ……お母様、戦車の事ばっかり言うから嫌ぁぁい」
「なっ!?」
……。
『 あ…。そろそろまずい 』
………………。
「ほっ…ほらぁ!! かほも喜んでるし!! 子供は遊ぶのも仕事の内だと思うんだ!!」
「た…隆史が、何時もそうやって甘やかすから!! 西住流家元の子にしては、些かオテンバだと思ったのも…結局は、あなたがっ!!」
「い…いやぁ? 違うと思う…けど? ほっほら! みほも昔はっ!!」
「…みほは今、関係ない」
「みほ叔母ちゃんは、優しいから好きィ」
「……ミホ」
「まっ!? お姉ちゃん!? 本気で睨まないでよ!!」
「ちなみに隣の、エリカはどうだ?」
「……あの人、戦車ばかりに乗せようとするから嫌い」
「あの人!?」
…めっちゃ他人行儀…。
「お母様と殆ど変わらないし…お父様に、すっごい近づいて…何かにつけてベタベタ触るから……すっごい嫌い」
「…なっ!?」
「「 …… 」」
「…そうか。やはりか。…どうにも最近、みほだけじゃなく、エリカも怪しいと思っていたが……そうか」
「何が!? それよりも、今のかほの発言が、どう聞いても9歳児じゃないよな!? あれぇ!?」
「誤魔化すな!! 昔からこうだろうが!! …あなたは、どうにも…みほとエリカに対してだけは、結婚してからもあまり態度が変わらないのが…物凄く……こう……ものすごぉぉく…」
「ま…まって!! まほ!? なんで手をコキコキ鳴らしてんの!?」
『 …… 』
「「 …… 」」
『 さて、そろそろ帰しましょうか? 』
『 そうね! 流石に今回はしっかりと、消しておきましょう!! もう…因果律改変は…嫌…』
「りほはっ!? りほが、成長してからでも、西住流を継ぐ継がないは、それからでも良くないか!?」
「…誤魔化すな。今は浮気の類いを言っている。それに りほもあなたが甘やかすから、そんなに変わらないっ!!」
「……そ…そんな事はない……よぉ?」
「……」
「……」ガタガタ
「おいっ! 女神!!!」
『 はいっ!? 』
「…一つ教えてくれ」
『 な…なに? 』
「私の夫は、現行で浮気をしているか?」
「まほ!?」
『 し…してないわ。貴女と結婚してからは、してない… 』
「ほっ…ほらっ!! してな「 し て か ら は ? 」」
「 」
「さぁ…夫。いつだ……そして誰だ?」
「 」
「……みほか……エリカか……どっちだ?」
「アクアッ!! お前っ!! 余計な事をっっぉぉ!!??」
かほが…スルッと降りて…その場を走り去っていった。
一定の距離を取って、スッと座った…。
慣れてる!!
「 ……まさか…あの女神……カ? 」
『 ヒィ!? 違うわよ!! こっちを巻き込まないで!!! 怖っ!! なにその圧はっ!!?? この前の五十鈴 華さんが可愛く見える!!! 』
「結婚する前もしてなっ…アクアッ! お前、何時も言い方考えろって言ってるだろうが!!!」
「イツモ…? 妻でも無いのに……オマエ?」
「 勘弁してくれ!! 」
『 収集がつかなくなりましたので…もう帰ってもらっていいですか? 西住 かほさん 』
「え? …はい、分かりました。若い二人を見られましたので…大変満足しました」
「「 !!?? 」」
「では、みほ叔母様。エリカ師範。これで私は失礼致します」
『 …変な所、隆史さんと似たようでして…彼女、外と中では態度がガラリと変わるのです 』
「言い方を悪くすれば…外面と言う物ですね。お嬢様…と、良く言われますが…正直、肩が凝って仕方有りませんよ。お父様とお母様位しか、気が抜けませんしね…はぁ…」
「…あの…とても9歳児には、見えないのですけど…」
「では…最後に…………みほ叔母さんは、もう少し自重してね!!」
「!?」
「エリリン師範は、いい加減しやがってねっ!!!」
「なっ!?」
『 で…では……帰しますね…… 』
「 ばいびーーー!!!!!
……。
…………………。
後ろで会話は聞こえ来ていたが、一瞬目の前が真っ白に光った。
そして…俺の意識はなくなった。
◆
『 …つ…疲れた……。本気で疲れた……今回が一番だったわ… 』
「…あの…隆史君も強制送還したんですか?」
『 アレがいなくなったら、すぐに解決するでしょうが!! 』
「そうね…隊長も強制送還よね…今回」
『 怖いじゃない!!! 』
……
『 怖いよねッ!!!?? 』
「なんで、ひと呼吸置いたのよ…」
『 ま…まぁまぁ… 』
「呼び出した本人達が消えて…なんで私達は、まだいるのよ」
『 一応…聞いておこうかと思いまして 』
「何です?」
「は?」
『 貴女方も、この世界線の未来…は、見たいですか? 前回の世界線に比べると…結構、皆さんお幸せそうでしたので…どうかと思いまして 』
「見たいです!!」
「……」
『 即答ね…ま、まぁ西住 みほさんは、そうよね。前回…結局浮気されてる未来だし 』
「そうです!!!」
『 わかったわ。んじゃ、解析しとく。そっちの逸見 エリカさんは? 』
「見たいわね。えぇ……見たいわ!」
「……」
『 おや以外。てっきり片意地張って、拒否するかと思ったのに 』
「そういうのはね…もう…やめたのよ」
『 ふ~~ん。まぁいいけど 』
「……」
『 それでは、お二人共に解析をしておきます。他に何か質問ござますか? 』
「はい!!」
『 …どうぞ 』
「最後、未来の隆史君がいっていた「りほ」って…」
『 あぁ、妹よ。西住 かほさんの 』
「…妹」
『 …ちなみに…先祖帰りとでもいうのかしら? 西住流家元……西住 しほさんにそっくりよ 』
「「 」」
『 大丈夫大丈夫!! マジで、違うから。本当に先祖帰り 』…コノセカイセンハネ
「そうだよねっ! 未来のお姉ちゃんが…その事に触れてなかったし…」
「……」
『 ただ一時…西住 みほさんが、本気でDNA鑑定を考えていたわ 』
「「 ………… 」」
『 さぁて…そろそろ次の人……準備しないと… 』
「次?」
『 そうです。今回の件、因子は本当にまったく関係ありませんからね。ただの先輩の恐怖に駆られた行動です 』
『 ……アンタ 』
「き…聞いていいかしら?」
『 なんでしょう? 』
「相手……当然いるんでしょ? 次は誰よ」
『 それを聞いてどうする……はぁ……まぁ気になりますよね? 』
「……」
『 えっと…先輩? 』
『はいはい…えっと次はね……3人いるわ!! ……前回の9人より大分……ましよね』
「……さん…」
『 ダージリンさん…と、オレンジペコさん……そして… 』
「 …… 」
『 ノンナさんね!! 』
閲覧ありがとうございました