「 モモチャン 」
「 」
柚子先輩が、先程からものすごい至近距離から、桃先ぱ…桃チャンをガン見している。
うん、あれ完全に鼻先が、彼女の頬を押し込んでいるね。
いやぁ…百合はあんまり趣味じゃないんだけどなぁ……うん。
でも、あれはあれで…。
「…隆史ちゃん、なんで? え? かーしまと、そんなに仲良かったっけ? え?」
うん…で、会長は俺を、同じようにガン見している。
身長差あるでしょうよ…。
各学校の隊長さん達が集まる、会議室へと到着いたしました。
その隅っこ…書記だし、ホワイトボードへ書き込む作業くらいは、しようと思っていたのですが…その我が校のTOP様に阻害されてますがな。
ホワイトボードの横に用意されていた、パイプ椅子に座らせて頂いている為、身長差はカバー。
現在、そういった訳で、桃チャンと同じ様に鼻先でサクッと、頬を刺されている訳です。
左側ですねぇ。まいったねぇ…頬に息が…。
はい…後ね?
《 ……………… 》
現行して全員の視線が…痛い…。
「漸く来たと思ったら…隆史君。何かしたの?」
「い…いや? 特に思い当たる節は、無いけど…」
はい。
そんな俺を見て、みぽりんは怒るわけでもなく、ただ呆れております。
はい。
いるよね…貴女、隊長様ですしね…。
「西住ちゃん」
「はい?」
「隆史ちゃんが、かーしまを、いきなり桃チャンって呼び出した」
「…………」
はい…右頬も刺され始めました。
……。
痛い!!
プラウダと、聖グロリアーナの視線が痛い!!
「 モモチャン 」
「 」
桃チャンが、泣きそうな程、目に涙を貯めて…って、殆ど白目剥いているじゃないか…。
その真っ白い目をこちらに向けた。
…いや。無理っす。
俺にはどうしようもござんせん。
「 モモチャン…アイコンタクト? 」
「 」
あ…こりゃ完全にダメだ…。
怯えきっちゃってる…。
「あの…会長。そろそろ始めないと…」
「大丈夫。まだ後、3分程時間があるから。こういった事は、時間を厳守しなくっちゃねぇ…」
「」
お昼休み…というか、食事休憩。
全員が食べ終えたであろう…学校が用意した、仕出しの弁当が入っているであろう、ダンボールに目が行った。
あ…結構、いい所のだ…。
いやぁ…うん。
そういや、俺まだ飯食ってねぇや。
会議をみたいと言う事で、許可をもらったとされる方々は、一番隅っこの席に鎮座しております。
特に口を挟む気もないのでしょうけど…なんで俺をガン見してんだろ。
…サンダースからは、ケイさん。
あんれ、一人だけだ…珍しい。
会議室へ入室した瞬間、一番最初に俺の頭の上のクリスへ反応を示したのは彼女だった。
いやぁ…すっげぇ、輝く目になりました。
犬好きなんですねぇ…。
貴女、ゴールデンレトリバーとか一緒にいるとすげぇ絵になりますしね!
いつまでも、クリスを頭に乗せて置いても仕方がないので、彼女にクリスを預けている状態。
…俺のこの状況を、クリスとじゃれながら、笑顔で見ている。
はい! では、黒も…………はい。
まほちゃん…腕組んで、すっごい見てくる…。
今現在、我が家にて宿泊中の方ですね…。
今は客間へお泊りですが、初日はまだ、引越しの準備が完全に終えていなかった為に、物置の様になっていた。
ですから、その日に限って…みほのお部屋へお泊りしました。
……。
その日…というか、その夜って一体姉妹で、どんな話をしたのでしょうか?
朝…黒い私服着てた…。いや? 特に意味はないのですけどね!? なんか…目が怖かった。
翌日の朝食…例の雪国コンビがいらっしゃいましたので、もう…すごい空気でしたよ…。
いやぁ…和気あいあいと、明るく楽しい食卓でしたね!
だから、結構実感しました!
…胃って…案外丈夫なんですね…。
そういや、ベコの開発元…というか、発案者って内科のお医者さんだっけか?
…今度、見てもらおうか?
消化器内科もやってるみたいだし…。
……。
え…りぃ……りん……。
腕を組んで、顔だけ背け…すっごい興味なさそうに…部屋の窓から、外を眺めている…。
その横顔は、ごく普通…視線も野外へと固定されている。
……様に見える。
が、エリカと目線を合わせると…眼球だけ…見下ろす様に…すっげぇ睨んでくる。
逸らすと、普通に戻る…合わせると、呪われそうな程の眼圧で睨まれる…。
はい、5回程試してみたので、間違いございませんね!!
…はぁ。
エリカは、どこぞのホテルへ現在宿泊中らしい。
一度、学園艦へ戻ったのか、一時姿を見せませんでした。
…ちょっとフリルがついた、白い服。
いやぁ…いいね。彼女も白って似合うよね!!!
……。
えー…。
うん…怖いし、埒が明かねぇや。
そもそも、呼び方変えた位で、ここまでされる謂れはないよね?
「あの…会長?」
「…なに?」
「桃チャ……桃先輩の件は…ですね?」
「……ん?」
「彼女が、俺との約束を反故いたしましたので、俺は約束をしっかりと守っている…と言いますか…」
「……」
「会長?」
「なにかなぁ?」
あれ?
俺の説明中…みほが、割って間に入ってきた。
「…会長、本当は隆史君の、河嶋先輩の呼び方なんて、どうでもいいでしょ?」
え!?
「ただ…今のこの状況を持続させたいポーズですよね?」
「……」
ん?
会長の体が、一瞬硬直したぞ?
「はい、離れてくださ~い」
「…チッ」
んん!?
至近距離だからこそ聞こえた…なんで、今舌打ちしたんだろ!
みほがそこまで言うと、目を伏せて顔を離した…のと、同時にみぽりんも離れて行った。
「あっ! やっぱりねぇ~!」
何故か、ケイさんの楽しそうな声が聞こえた。
目線を送ると…はい。クリスとずっとじゃれているますねぇ…。
「隆史君は…どうも、会長には弱いなぁ…」
みほが、すげぇ俺の目を見て言って来ました…。
言い終えると、そのまま元の席へと戻って行きました…。
なんか…姉さんが来た日から、みほの態度…というか、雰囲気が少し変わったと思うのは気のせいだろうか?
「…いい加減にして」
「もう宜しいですか? …なんでしょう、この茶番は…」
カチューシャ!? ノンナさん!?
「なんだか…隆史様、一度時間を空ける度に…なんか……こう…」
オペ子!?
「…『 短い不在は恋を活気づけるが、長い不在は恋をほろぼす 』。大丈夫。まだ短い方でしてよ? オレンジペコ」
「フランス革命 初期の中心的指導者 ミラボーですね」
ダージリン…も…。
なに!? 結構、本気で空気が悪い…。
俺のせいって…だけじゃないようなぁ…。
「小山も、もういいでしょ? 午後の会議、そろそろ始めるよぉ」
「 …… 」
「 」
先程までの不機嫌オーラは、何処へやら。
いつもの会長に、すぐに戻りましたね…みほさん曰く…ポーズ。
柚先輩は…ケロッと、普通に戻ってる。
桃チャ…やめとこう…。
桃先輩にも被害が及びそうだし…普通に呼ぼう。
たまにからかう時に呼ぶ位で、いいや。
「はい! では、会議を再開します! ここからは、生徒会書記の尾形君も参加致しますので、よろしくお願いします!」
柚子先輩の音頭と共に、全員の姿勢が少し正された。
いやぁ…柚子先輩に、苗字で呼ばれるってのは、なんか新鮮だ。
あれ…そういやぁ…彼女。
目の前…俺の一番近くの席に座っている…背筋を伸ばし、どこか緊張をした面持ちをした女性。
長い黒髪が特徴的…前髪を片方分けている。
そして…見慣れない制服。
「あ、隆史君は初めて…よね? 彼女が、知波単学園の隊長さん。西 絹代さん」
俺の目線で気がついたのか、柚子先輩が横から紹介を……と、いうか! なんで「よね?」って、疑問形だったのだろう。
柚子先輩の紹介が、終わるや否や、ガタッと音と同時に、勢いよく立ち上がった。
おでこの横に手を添えて…って、なんで敬礼?
「ごっ…ご紹介に預かりました! 知波単学園、隊長 西 絹代であります!!」
「…あ、はい」
…なんで、少し声が上ずったんだろう。
「尾形です。どうぞよろしく……」
別に握手を求めた訳ではない。
ただ、挨拶をしながら、一歩前に出ただけ。
その勢いで、少し腕が前に出ただけ…。
なのに…
「 っ!! 」
彼女は飛び退いた。
「………………」
前に出ようとして出した腕が…虚しい。
《 …… 》
体を後ろに引き…その顔は、少し引きつっていた…。
ちがう? 怯えている?
「…ちょっと、アンタ。流石にそれは失礼じゃない?」
先程から不機嫌オーラ全開のカチューシャが、そんな彼女に噛み付いた。
小さな腕を組み…西さん、だったか? その西さんを睨んでいる。
普段なら、俺に矛先が向けられるというのになぁ…。
ま た 何 か 、 や っ た の か ? と…
「あっ!! もっ…申し訳ありません!!」
「あ…いえ」
すぐに、ものすごく深いお辞儀で、謝罪をされてしまった。
いやまぁ…結構慣れているから、俺としては構わないのだけど…。
「…あの…俺、初めてお会いしてますよね? なにか…」
「い…いえっ!! 流石に今の態度は、私としましても…その…どうかと…」
段々と、意気消沈していく彼女。
よーし、カチューシャ。落ち着け。目を見開くな。
…はっ。大体、検討はつく。
「カチューシャ、怒ってくれるのは、非常に嬉しく思うが…まぁあれだ。…戦車道関係者で、俺に怯えるって事は…どうせロクな噂を聞いていないのだろうよ…」
あぁ…と、ちょっと納得の声が漏れた…。
悪い噂…。猫田さんから、初回に言われた…。
インターネット上で、囁かれている誹謗中傷…まぁうん、一度覗いてみたね。
さぁ…どれだ?
この様子だと、アレだ…触れると妊娠するとかか?
逃げられたし…。
「…いえ…そういった訳では…」
「は……ははは…。気を使われなくても良いですよ? …慣れましたか…ら…」
「いっ…いえっ!! むしろ…逆で…ありまして…」
「……は?」
逆? どういう事?
あれ? ピリッとした空気が、更に張り詰めたぞ?
んん?
「…今、知波単では空前絶後のぶーむ? と言いますか…流行りが来ていまして…」
「ブーム?」
「恥ずかしながら…少々、緊張してしまして!!」
んんん!?
なに!? 流行り!?
違うっ! なんか、先程と態度違うぞ、この人!!
「我が校の皆に、土産まで頼まれ! すでに一通りの品は、購入済です!!」
「なに!? 何が!? 土産!? 品!?」
今度は、興奮気味に手を握り締め、胸元にまで迫って来た!!
「やはり、本場!! 生徒会長殿から、お安く譲ってもらいまして!!」
「だから、何がですか!?」
「そんな折、更にご本人まで…っ!! もうっ! 嬉しく…えぇ! とても嬉しく思いまして!!」
「会話して下さい!! 嬉しい!? 何が!?」
迫る!! すげぇ!! 一直線に迫ってくる!!??
近い!! すげぇ近い!!
「 ベコ殿、ご本人とお会いできるのが!! 」
……えーと…
「 は? 」
「現在、知波単ではベコぶーむが、到来中であります!! その中、私…決勝戦の会場で購入した、この! すとらっぷを持っているいうのが、誇らしく…」
いやいや!? なに、誇らしげに掲げてんの!? その黄色いの!!
あ…
「杏会長!! 安く譲ったって……もしかして…」
「需要があったから、供給しただけだよん!」
悪びれる事もなく、笑顔で言い切った。
それ…売れなくて、捨てるしかほぼなかった商品を、ただ売りつけただけ…。
というか、ベコぶーむ!?
「あの…」
「ベコ殿、なんでしょう!?」
ベコ殿…は、やめて…。
なんてキラキラした目で…。
「貴女達…そもそも知波単って、本拠地は何処ですか?」
「千葉になります!!」
「…ローカルすぎる、アレを…千葉の方が、何で知ってるんですか?」
「ベコ殿は、戦車道界ですでに有名です!!」
……。
え?
「あの突撃は、最高でした!!」
は? 突撃?
「隆史ちゃん! 実はベコにスポンサーが、付いたんだよ」
「…杏会長……どういう事ですか」
「気が付けば、ベコはその新スポンサーと、内科の先生との共同って事になってる状況なんだ。有名になったのって…その為」
「は? いやいや。そんな事で、有名って…そもそもベコを知ってる……あ」
「……」
「まさか…新しいスポンサーって……」
「そ…そう」
え…でも、そうなると…いやいや!
「 新しいスポンサー様は……島田流の家元さん… 」
…千代さん。
また、愛里寿に母って、呼ばれますよ…?
▼
大会に参加していた知波単学園。
当然、彼女達も決勝戦会場にいたそうだ。
試合自体が終わり…帰る準備をしている最中、どうもあの現場に彼女は、居合わせたそうだ。
エリカが襲われた現場に…。
彼女は、人集がすでに出来ていたと、興奮気味に喋り始めた。
丁度、あの男が警棒を振り上げた時だったと…。
そこに、赤いマントを靡かせて、人の間を潜り抜け…その間に割って入った着ぐるみ。
ほぼ体当たりをする様に、エリカの横に止まっていた車にぶつかって体を止め、あの男の棒を受け止めた。
…ベコ。
その現場を見ていた人間が、今この場で急に話し始めた。
それは、みほを含め…杏会長達も動画でしか知らない。当然他の皆も。
知っているのは、俺と…エリカだけ。
やめて…本気で、興奮して喋らないで!! ただ恥ずかしいだけだから!!
なんで、先程までピリピリしていた空気が変わったんだよ!!
すげぇ興味深々に聞いてんの!?
エリリン、顔が赤くなって来てるけど、止めねぇの!?
所々、突撃がどうの…あの…。
「アレは、知波単魂に通じる物があります!!」
ねえよ!! なんだよソレ!!
ただ、今日は都合上、彼女だけで大洗に来たそうだが、そこ居合わせたのは彼女だけでは、ないそうで…。
その光景を、学校で同じく皆、興奮気味に話し…更には携帯で撮られていた動画を、全員で見たそうで……。
更に同じく、突撃がどうの…知波単魂がどうの……興奮は最高潮…。綺麗に皆…それにハマったそうで………。
「勘弁して!!」
「いやいや! ご謙遜なさらずに!!」
「謙遜じゃない!!」
そう…そこで、ベコのストラップ…。
何気なく買ったソレが、その着ぐるみ…。
後で気がつき取り出すと…唯一持っている、彼女が…って事らしく…。
「そういえば、いんたーねっつの活動写真では、声が良く聞こえていませんでしたが…」
…いんたーねっつ……つ? 活動写真って…。
どうにも、学園艦に住まわれている方々って、特徴的な方が多いですね…。
「凄かったです! 『 ただの犯罪者として処理されろ。俺達は、お前の事なんて忘れてやる 』『 俺は、お前が期待する事は、何一つ叶えてやらない 』など! 何か、因縁めいた物を感じました!!」
「……」
は?
「ちょっと待って。ソレ…聞こえてたんですか? 聞いていたんですかぁ!!??」
「私、耳は良いもので!!」
うっっっわ!!! 恥ずかしい!! なにそのセリフ!!! いや、俺が言ったんだけどな!!
アドレナリン出まくりで、結構変な事…
「それで、最後ですね!! アレが凄かったです!! 知波単の皆も、そこに興奮してました!! 本当に活動写真…映画の様で!!」
「…は? 待て。待ってください? それも聞こえたんですか!?」
新たな黒歴史だと、思っていたのに!? 聞かれた!? アレを!?
というか、いんたーねっつとか、活動写真とか言ってる癖に、携帯でネットからの動画引っ張ってこれるっておかしくねぇか!?
「はい! 一時一句、覚えております! 『最後に俺、個人としてお前に一言』って所ですよね!? 同い年の男性とは、思えない…すばら「 まって!! 」」
両手を前に出し…彼女に待ての合図…。
? を頭の上に出し…本気で何故? といった表情…。
アレ…マジで? あれって着ぐるみ越しだし…聞こえてた!? いやいやいや!
あれ? でも、彼女…先程から正確に…。でも…アレ? あの男位にしか聞こえない距離だっ…「なんて言ったの?」
会長!?
「『 人の女、泣かせてんじゃねぇよ 』って、言っておりました!!」
「 」
マジで一時一句、正確だな、アンタ!!!
なに、マジで嬉しそうに即答してんだよ!!!
分かる!! 顔が段々と熱を帯びていくのが、分かる!!
ただ、全員がそれを聞いて真顔になった!?
笑えよ!!
笑えばいいだろ!!
やめろよ!! 真顔はやめて!!!
…が……ぁ…。
エリリンっ!! すげぇ真顔!!!
みほ…は……?
逆にみほには、爆笑されたら、流石に…。
「……」
あ…あれ?
いない…。
先程までいた場所に、みほはいなかった。
トイレかな?
よ…良し!! 聞かれていなかったか!!??
「…おい、タラシ」
「ま…ほ…ちゃん?」
貴女も…すっごい、真顔っすね…。
「良かったな? みほは、知波単の隊長の言葉はしっかり聞いていたぞ?」
「」
何かを察するかの様に、みほの現状を説明して下さりました。
ふぅ…と、腕を組みながら、ため息を吐きましたね…。
「聞いた直後、音もなく、部屋を飛び出していったな」
「」
取り敢えず、まほちゃんに初タラシを頂きました。はい。
「俺の女を泣かすな…か。さすが…「女を助けるのが、漢であり隆史」だな?」」
「 」
昔 の 黒 歴 史 を 発 掘 サ レ マ シ タ 。
…ま……また、懐かしい事を…。
だから、女の子限定じゃ、ないって…小さい頃言わなかったか?
それにその言葉は、どこぞのマウンテンに埋めて来たのに……ヒゲはついてないのに…。
すでに顔の温度はわからない…ただ…暑い。熱い。あっつい!!!!
「あ…あの……ベコ殿。何か、私……」
この空気を察したのだろう…。
何か仕出かしてしまったと思ったのか、恐る恐る俺に聞いてきた。
だから、ベコ殿はやめて…。
(…まっ。ある意味でタノシミだよねぇ…その対象を、自分に移せるかも知れないって考えれば…)
《 !!! 》
!!??
なに!? なに!!??
会長が何か呟いたと思ったら、一斉に全員の目の色が変わった!?
ケイさんだけが、クリスと戯れながら…いや!? クリスの尻尾が脚の間に…どうした!?
「…………」
ビクッ!!
び…びっくりしたぁ……。
視界の端に…みほが映った? と思ったら、すでに席に彼女はついていた。
戻ってきたのか…。
だからさ…気配……させて。
「………………」
すっごい…真顔だけどね。
見ると…すっごい、勢いで顔を逸らすけどね!
耳が…スゲェ色になってますね!!
…。
「あの…ベコ殿」
「…はい……なんすか?」
崩れ落ちている俺に、ものすごく気を使う様に声を掛けてきましたね…。
ぶっちゃけ暴露しまくってくれた、貴女のせいなんですけどね!!
「ベコ殿は…その…そうだ! 鳥を飼っているのですかね!?」
「…は? いや? 犬は先日、飼い始めましたが…」
鳥? なんで?
すでにもう、思考回路が上手く働かない為…すげぇ素直に答えてしまいましたね…。
「いえ…ベコ殿の事を調べていくと…どうにも嫌な噂に突き当たりまして…」
「…あぁ、そうっすね」
「あの様に、ただ体一つで、人の為に突撃できるベコ殿が、不埒な事をするはずがないと思うので、信じていないのですが…」
流暢に喋るなぁ…。
彼女の話を聞きながら、周りを見渡すと…なんだ!? すげぇ、こっちを皆が見てくる!!
「…小山。アレ…やっぱり、今日やろうか。あの二人呼んでおいて」
「そうですね…私も少し、ダメージが…。校内にいるでしょうし…呼びましょうか」
何かまた不穏な事を言ってるなぁ…約2名。
はぁ…。
会議がまったく始まらない事に気がついた…。
ただただ、ダメージが蓄積していくだけだ…強引にでも…始めた方がいいかな…。
顔は熱いけど!!
「…それで、なんで鳥を飼っているかって…」
「いえ…な…何と言いますか…触ると、どうのって…」
「あぁ…触ると妊娠するって奴っすね?」
「っ!!!」
…あぁ、はい。アレですね。
ハッキリ言ってしまって申し訳ないけど…。
「ですから…飼っているのかなぁって…それであの噂が流れているのだろうか? と…」
……。
え?
まさか…。
「コウノトリを…」
・・・。
いやぁ…結構、純朴そうな方だと思っていたけど…。
だからって…。
本当にすげぇな、知波単の隊長さん。
この状態の俺を見かねて、強引に世間話を仕掛けてきたって所だろう。
うん…ペットとかの話なら、話題へと入りやすいだろう…。
でも…貴女の発言は、色々とカオスへと持って行く…。
また、はっきりと通る声で仰るものですから尚更…。
…会議はまだ始まらない。
▼
「大変申し訳ございませんでした!!」
はい、2度目の謝罪…。
全員が席に戻り…会議ができる状態に、漸く戻った。
戻った早々に、コレ。
はぁ…。
「では…はい、んじゃチーム分け。決まった? お二方さん」
もういいからと、会長が会議の開始を、決めかねていた内容を口に出すことで開始した。
そうだった。ソレで揉めていたんだっけ?
「決まりましたわ」
アレ?
「…そうね。食事しながら…なら、結構すんなり決まったわ」
「そうですね。カチューシャ」
「あらら。あんだけ、揉めていたのにねぇ」
「確かに、みほさんとのチームを組み…今後に生かすのも、宜しいかと思いましたが…」
「今回は、雪辱を晴らす事を優先したの」
…ん。ちょっと、引っかかる。
でも、その場にいたと思われる みほは、何も言わないって事は、双方納得済なのだろう。
「どういう事だ?」
「………………」
…みほに聞いてみた所。
無視された。
思いっきり、そっぽ向かれました。
…この部屋に来て、全然会話らしい会話をしていない…。
「はぁ…いい? タカーシャ」
「ん?」
「組み合わせはこう。私達、プラウダ高校と聖グロリアーナのチーム」
得意げに、指を振りながら説明してくれるカチューシャ。
…カワイイ。
相変わらずだねぇ…。
「そして、大洗学園と知波単学園のチーム…と、分かれましたわ」
カチューシャとダージリン。二人の隊長は、何故か俺に説明をした。
俺…ただの書記なんっすけど?
まぁいいや。オシゴトしましょ。
一応、簡単にホワイトボードへと、その名前を書き込む。
……。
あぁ…なる程。
雪辱を晴らすね。
その書き込んだ文字を見て、組み合わせに納得がいった。
「私達からすれば…全国大会での雪辱。大洗学園からすれば、一番最初の練習試合の雪辱…各々、それを晴らそうってワケね!」
「…なる程。西さん」
「はい! なんでしょう!? ベコ殿!!」
……。
うん……もういいや。
「貴女方は、コレで了承済?」
「はいっ!!」
…うん、いい返事。そして、何故敬礼?
ただ…俺をキラキラした目で見るの、やめて欲しい…。
「まぁ? それは私が提案したのですが…」
「ダージリンが?」
「だって…その方が、面白そうでしょう?」
「面白いって…。って、だから何で俺に言うんだよ…」
「うふふ…アッサム。説明してあげて?」
「ダージリンのその笑いは、嫌な予感しかしない…」
「尾形さん、ある意味この組み合わせは、面白いですよ?」
今まで黙って座っていた、アッサムさん。
目をまっすぐこちらに向けて…どこか嬉しそうに言ってきた。
「あら、アッサム?」
「アッサム様?」
「……」
それを横から妨害されたな。
約2名のお嬢様が。
「隆史さん、ある意味この組み合わせは、面白いですよ?」
…いや…あの…何で綺麗に言い直した?
そして約2名のお嬢様が、舌打ち…。
そんな遠まわしに言われても、分からんよ…組み合わせ?
「どうでしょう? そちらの生徒会長さん。せっかくです。チーム名…決めませんこと?」
「んぁ? チーム名? …確かにそうだねぇ。混合チームじゃ味気ないしねぇ」
「そうですわね」
…ん?
ダージリンの目が光った…様に感じた。
「んじゃ、まずは大洗は…どうする? 西住ちゃん」
「え? 私はなんでも…。あ、でも知波単学園さんもいらっしゃいますし…」
「私達は、何でもかまいません!!」
はっきり言った。
元気いいなぁ…。
「いつもみたいに、何か…まぁいっか!! んじゃ大洗と知波単は、大波さんチームって所で」
なる程ね。
確かに感じを合わせれば…大波ね。
「ふ~ん。いいのか? みほ」
「………………」
…無視…。
…声かけると、すげぇ顔赤くするけど…。
「あら、そう。では、こちらは…」
「ちょっと待って! 待ちなさいよ! チーム名!? なんでそんな大事な事、この偉大なるカチューシャ様をさしおっっムグっ!?」
!?
いつもの様…本当に、いつものカチューシャ。
ノ…ノンナさんが、そのカチューシャの発言を、物理的に止めた…。
口に手を抑えてまで…。
なんか、ダージリンに目線で訴えかけているけど…。
「……なんです? 隆史さん」
なんて鋭い眼光…。
うわぁ…この視線って、どこか懐かしく感じるのはなんでだろう…。
「あ…いや、クラーラさんが、今日はいないなぁ…って思って…」
「………………残念…デスカ?」
「いやっ!? んなことないよ!!??」
なに!? なんなの!?
今日、このセリフばっかり言ってるよ!!
「そうですわね。そちらも「大洗」なんて、土地名を入れていますし…こちらもそれに習いましょうか? ね? カチューシャ?」
「むぐぁ!! …はぁ!? 土地名!? そんなのつまらない…………あぁ、なる程。…いいわね。すっごくいいわ!!」
「 で し ょ う ? 」
「では、会長さん? 私達は…「青森チーム」で…」
「青森? まぁ…いいけど」
「なら…それで」
……。
あの…ダージリン達が、頗る楽しそうなのが、すっげぇ引っ掛る。
ノンナさんも、ニヤけているカチューシャをもう止めない。
…ん?
チーム名が決まったと同時に、オペ子がすっごい良い笑顔で、俺を見ている…。
違う…全員がすっげぇいい笑顔だけど!?
「では! …これで、会議は終了かしら?」
「思ったより早く片付いたな…俺、来た味あったのだろうか? まぁ仕事だから意味も何も無いけど…。いや…黒歴史を暴露されただけ……」
「黒…? 良く分っかんないけど、大丈夫だよ? 隆史ちゃん。むしろ…ここからだね」
ここから?
そこまで言うと、会長が椅子から立ち上がり、手を叩いた。
パンパンと小気味いい音が響く。
注目しろ…と。
「はぁい! では、今日の会議はここまで。午前中に決めた日取りで、エキシビジョンマッチを執り行うよ!!」
締めの挨拶だろうか?
でも、ここからって…。
「ふむ…あの日取りならば、もう少しいられそうだな」
「今度はアリサ達も連れてこないと」
「あぁ~んじゃ、その日までに食材準備しないとな!!」
「そうですねぇ。でも、少し時間はありますし…少し観光しませんか? ドゥーチェ」
「観光? …ふむ。いいだろう! するか! 観光!!」
「いいっすね! 土地柄的に、どんな料理がヒットするか、リサーチも兼ねての観光っすね!?」
「え…ペパロニ? は? お前、ペパロニだよな!?」
「そういうのも大事って、タカシに襲われました!!」
「「 …… 」」
「おい、アンツィオ。どういう事だ」
「まほっ!! 待て!! コイツはいつもこうだ!」
「ただの言い間違いっすよぉ」
「…最近、ペパロニは分かって言ってるんじゃないかと疑い始めましたわ」
……。
「…ミカァ。お弁当……ない」
「そうなんだ。残念だね」
「…ミッコ。ミカ、手を後ろに回してるね。カンテレ持ってないね」
「あっ! 一個隠してる!!」
「ほら! ずるいよミカ!!」
「ちがうよ? 隠してないよ? このお弁当が、恥ずかしがり屋さんなんだ」
「意味が分からないよっ!!」
……。
多分、それ俺の分…。
……というか…。
…なんで、お前らいるの?
「では…そんな訳で……一応フェアにって思ってねぇ。サンダースもいるしね!!」
良くわからない事を…フェア?
「では、ここから…少しの時間、レクリエーション…まぁ、軽いゲームだね? ちょっとそれで、皆で遊ぼうってワケなのさ」
「ゲーム?」
こんな人数…そうそう集まれない。
見学をしている学校も含め…丁度いいと、言い出した。
各学校の代表者達が、訝しげな表情…。
トントン。
軽くドアを叩く音。
その音に全員が、ドアに視線を集中させた。
「来たねぇ! どうぞぉ!」
杏会長の許しの声と共に、会議室のドアが開かれる。
今までの空気をぶった斬り…なに? 誰?
それ以前に、何が始まろうというのだろう?
ゲーム?
「失礼しま~す。何の用でしょ……う…か?」
多分、呼び出したのだろう。
何でいるかは知らないけど…予想外の人物が現れた。
入室してきた…人物。
「…………」
全員の視線を一身受け…硬直している。
俺と視線が会うと、あ、笑顔になった。
「失礼しました~~」
そのままドアを閉めて、退室しようとしたよ…。
まぁ? 後ろから来た、もう一人の人物にぶつかり、退室を妨害されたけど。
「わっ!! 馬鹿!! 逃げろ!! お前は特に逃げろ!!!」
「は? なんでだよ。小山先輩に呼ばれたんだろ!!! じゃあしっかりとあの、お……っぱ」
……。
「馬鹿野郎……」
はい、押し出される様に、見事にお二方が入室致しました。
完全に固まってしまった、お二人。
はい、…なんでいるんだよ。ここに。
「……………………」
「はいは~い。私達、やった事がないゲームだしねぇ。司会者が必要かと思って呼んだんだよ。あくまで司会者としてね!!」
逃げろ…。
今からでも遅くない…特にお前だ!!
「あの…尾形……なに? この……え?…」
「……林田。骨位は拾ってやる」
「……………………オブツ」
はい、オペ子が、すっごい目を見開きましたねぇ。
そんな表情できたんですねぇ…口元が笑っているのが、更に…。
青い瞳が、まぁ綺麗。
はい、大丈夫だ…。取り敢えず、間に立ってやったから…。
林田…流石に分かったろ? この…殺気。
「…………………………」
「 」ガタガタガタッ!
はい…中村。
良かったな…今日はアリサさん…いなくって。
わぁ…すげぇ震えてるぅ。
「隆史ちゃんの友達って事で、男の子だし…知ってるかなぁって聞いてみたら、やっぱり知ってたみたいでね?」
いや…流石にこのメンツに、こいつら呼ぶって…鬼ですか、貴女。
…あっ! そうか、知らないのか…あの現場にいたのって、大洗側じゃ桃先輩とみほだけだ!
「何を…嬉しそうに……というか、何のゲームですか」
完全に硬直状態に入った室内。
よく分からないって顔で、ニコニコしている西さんだけが異質に感じるな…。
「ちょっと、興味があってさぁ…この戦車道強豪校達で執り行う…罰ゲーム有りの…」
ニヤニヤした顔で…そして悪い顔で…。
杏会長が、俺の問いに答えてくれた。
そして思う………最悪だ。
「愛してるゲームって奴さ!!!」
閲覧ありがとうございました
西さんの本領は次回…に、したい。
というか、彼女…書いてみて結構難しい…そう思いました…。
これから…これから……
ありがとうございました