転生者は平穏を望む   作:白山葵

107 / 141
はい、シリアスは一旦、ご退場下さい。


第09話 会議です!?

「 モモチャン 」

 

「 」

 

 柚子先輩が、先程からものすごい至近距離から、桃先ぱ…桃チャンをガン見している。

 うん、あれ完全に鼻先が、彼女の頬を押し込んでいるね。

 

 いやぁ…百合はあんまり趣味じゃないんだけどなぁ……うん。

 でも、あれはあれで…。

 

「…隆史ちゃん、なんで? え? かーしまと、そんなに仲良かったっけ? え?」

 

 うん…で、会長は俺を、同じようにガン見している。

 身長差あるでしょうよ…。

 

 各学校の隊長さん達が集まる、会議室へと到着いたしました。

 その隅っこ…書記だし、ホワイトボードへ書き込む作業くらいは、しようと思っていたのですが…その我が校のTOP様に阻害されてますがな。

 ホワイトボードの横に用意されていた、パイプ椅子に座らせて頂いている為、身長差はカバー。

 現在、そういった訳で、桃チャンと同じ様に鼻先でサクッと、頬を刺されている訳です。

 

 左側ですねぇ。まいったねぇ…頬に息が…。

 

 はい…後ね?

 

《 ……………… 》

 

 現行して全員の視線が…痛い…。

 

「漸く来たと思ったら…隆史君。何かしたの?」

 

「い…いや? 特に思い当たる節は、無いけど…」

 

 はい。

 そんな俺を見て、みぽりんは怒るわけでもなく、ただ呆れております。

 はい。

 いるよね…貴女、隊長様ですしね…。

 

「西住ちゃん」

 

「はい?」

 

「隆史ちゃんが、かーしまを、いきなり桃チャンって呼び出した」

 

「…………」

 

 はい…右頬も刺され始めました。

 

 ……。

 

 痛い!!

 

 プラウダと、聖グロリアーナの視線が痛い!!

 

「 モモチャン 」

 

「   」

 

 桃チャンが、泣きそうな程、目に涙を貯めて…って、殆ど白目剥いているじゃないか…。

 その真っ白い目をこちらに向けた。

 

 …いや。無理っす。

 

 俺にはどうしようもござんせん。

 

「 モモチャン…アイコンタクト? 」

 

「    」

 

 あ…こりゃ完全にダメだ…。

 怯えきっちゃってる…。

 

「あの…会長。そろそろ始めないと…」

 

「大丈夫。まだ後、3分程時間があるから。こういった事は、時間を厳守しなくっちゃねぇ…」

 

「」

 

 お昼休み…というか、食事休憩。

 全員が食べ終えたであろう…学校が用意した、仕出しの弁当が入っているであろう、ダンボールに目が行った。

 あ…結構、いい所のだ…。

 

 いやぁ…うん。

 そういや、俺まだ飯食ってねぇや。

 

 会議をみたいと言う事で、許可をもらったとされる方々は、一番隅っこの席に鎮座しております。

 特に口を挟む気もないのでしょうけど…なんで俺をガン見してんだろ。

 

 …サンダースからは、ケイさん。

 あんれ、一人だけだ…珍しい。

 会議室へ入室した瞬間、一番最初に俺の頭の上のクリスへ反応を示したのは彼女だった。

 いやぁ…すっげぇ、輝く目になりました。

 犬好きなんですねぇ…。

 貴女、ゴールデンレトリバーとか一緒にいるとすげぇ絵になりますしね!

 いつまでも、クリスを頭に乗せて置いても仕方がないので、彼女にクリスを預けている状態。

 

 …俺のこの状況を、クリスとじゃれながら、笑顔で見ている。

 

 はい! では、黒も…………はい。

 

 まほちゃん…腕組んで、すっごい見てくる…。

 今現在、我が家にて宿泊中の方ですね…。

 今は客間へお泊りですが、初日はまだ、引越しの準備が完全に終えていなかった為に、物置の様になっていた。

 ですから、その日に限って…みほのお部屋へお泊りしました。

 

 ……。

 

 その日…というか、その夜って一体姉妹で、どんな話をしたのでしょうか?

 朝…黒い私服着てた…。いや? 特に意味はないのですけどね!? なんか…目が怖かった。

 

 翌日の朝食…例の雪国コンビがいらっしゃいましたので、もう…すごい空気でしたよ…。

 いやぁ…和気あいあいと、明るく楽しい食卓でしたね!

 だから、結構実感しました! 

 

 …胃って…案外丈夫なんですね…。

 

 そういや、ベコの開発元…というか、発案者って内科のお医者さんだっけか?

 …今度、見てもらおうか?

 消化器内科もやってるみたいだし…。

 

 ……。

 

 え…りぃ……りん……。

 

 腕を組んで、顔だけ背け…すっごい興味なさそうに…部屋の窓から、外を眺めている…。

 その横顔は、ごく普通…視線も野外へと固定されている。

 

 

 ……様に見える。

 

 

 が、エリカと目線を合わせると…眼球だけ…見下ろす様に…すっげぇ睨んでくる。

 逸らすと、普通に戻る…合わせると、呪われそうな程の眼圧で睨まれる…。

 

 はい、5回程試してみたので、間違いございませんね!!

 

 …はぁ。

 

 エリカは、どこぞのホテルへ現在宿泊中らしい。

 一度、学園艦へ戻ったのか、一時姿を見せませんでした。

 

 …ちょっとフリルがついた、白い服。

 いやぁ…いいね。彼女も白って似合うよね!!!

 

 ……。

 

 

 

 えー…。

 

 うん…怖いし、埒が明かねぇや。

 そもそも、呼び方変えた位で、ここまでされる謂れはないよね?

 

「あの…会長?」

 

「…なに?」

 

「桃チャ……桃先輩の件は…ですね?」

 

「……ん?」

 

「彼女が、俺との約束を反故いたしましたので、俺は約束をしっかりと守っている…と言いますか…」

 

「……」

 

「会長?」

 

「なにかなぁ?」

 

 あれ?

 俺の説明中…みほが、割って間に入ってきた。

 

「…会長、本当は隆史君の、河嶋先輩の呼び方なんて、どうでもいいでしょ?」

 

 え!?

 

「ただ…今のこの状況を持続させたいポーズですよね?」

 

「……」

 

 ん?

 会長の体が、一瞬硬直したぞ? 

 

「はい、離れてくださ~い」

 

「…チッ」

 

 んん!?

 至近距離だからこそ聞こえた…なんで、今舌打ちしたんだろ!

 みほがそこまで言うと、目を伏せて顔を離した…のと、同時にみぽりんも離れて行った。

 

「あっ! やっぱりねぇ~!」

 

 何故か、ケイさんの楽しそうな声が聞こえた。

 目線を送ると…はい。クリスとずっとじゃれているますねぇ…。

 

「隆史君は…どうも、会長には弱いなぁ…」

 

 みほが、すげぇ俺の目を見て言って来ました…。

 言い終えると、そのまま元の席へと戻って行きました…。

 なんか…姉さんが来た日から、みほの態度…というか、雰囲気が少し変わったと思うのは気のせいだろうか?

 

「…いい加減にして」

 

「もう宜しいですか? …なんでしょう、この茶番は…」

 

 カチューシャ!? ノンナさん!?

 

「なんだか…隆史様、一度時間を空ける度に…なんか……こう…」

 

 オペ子!?

 

「…『 短い不在は恋を活気づけるが、長い不在は恋をほろぼす 』。大丈夫。まだ短い方でしてよ? オレンジペコ」

 

「フランス革命 初期の中心的指導者 ミラボーですね」

 

 ダージリン…も…。

 

 なに!? 結構、本気で空気が悪い…。

 俺のせいって…だけじゃないようなぁ…。

 

「小山も、もういいでしょ? 午後の会議、そろそろ始めるよぉ」

 

「 …… 」

 

「 」

 

 先程までの不機嫌オーラは、何処へやら。

 いつもの会長に、すぐに戻りましたね…みほさん曰く…ポーズ。

 

 柚先輩は…ケロッと、普通に戻ってる。

 桃チャ…やめとこう…。

 桃先輩にも被害が及びそうだし…普通に呼ぼう。

 たまにからかう時に呼ぶ位で、いいや。

 

「はい! では、会議を再開します! ここからは、生徒会書記の尾形君も参加致しますので、よろしくお願いします!」

 

 柚子先輩の音頭と共に、全員の姿勢が少し正された。

 いやぁ…柚子先輩に、苗字で呼ばれるってのは、なんか新鮮だ。

 

 あれ…そういやぁ…彼女。

 

 目の前…俺の一番近くの席に座っている…背筋を伸ばし、どこか緊張をした面持ちをした女性。

 長い黒髪が特徴的…前髪を片方分けている。

 そして…見慣れない制服。

 

「あ、隆史君は初めて…よね? 彼女が、知波単学園の隊長さん。西 絹代さん」

 

 俺の目線で気がついたのか、柚子先輩が横から紹介を……と、いうか! なんで「よね?」って、疑問形だったのだろう。

 

 柚子先輩の紹介が、終わるや否や、ガタッと音と同時に、勢いよく立ち上がった。

 おでこの横に手を添えて…って、なんで敬礼?

 

「ごっ…ご紹介に預かりました! 知波単学園、隊長 西 絹代であります!!」

 

「…あ、はい」

 

 …なんで、少し声が上ずったんだろう。

 

「尾形です。どうぞよろしく……」

 

 

 

 別に握手を求めた訳ではない。

 

 

 ただ、挨拶をしながら、一歩前に出ただけ。

 その勢いで、少し腕が前に出ただけ…。

 

 なのに…

 

 

「 っ!! 」

 

 

 彼女は飛び退いた。

 

 

「………………」

 

 前に出ようとして出した腕が…虚しい。

 

 

《 …… 》

 

 

 

 体を後ろに引き…その顔は、少し引きつっていた…。

 ちがう? 怯えている?

 

「…ちょっと、アンタ。流石にそれは失礼じゃない?」

 

 先程から不機嫌オーラ全開のカチューシャが、そんな彼女に噛み付いた。

 小さな腕を組み…西さん、だったか? その西さんを睨んでいる。

 普段なら、俺に矛先が向けられるというのになぁ…。

 

 ま た 何 か 、 や っ た の か ? と…

 

 

「あっ!! もっ…申し訳ありません!!」

 

「あ…いえ」

 

 すぐに、ものすごく深いお辞儀で、謝罪をされてしまった。

 いやまぁ…結構慣れているから、俺としては構わないのだけど…。

 

「…あの…俺、初めてお会いしてますよね? なにか…」

 

「い…いえっ!! 流石に今の態度は、私としましても…その…どうかと…」

 

 段々と、意気消沈していく彼女。

 よーし、カチューシャ。落ち着け。目を見開くな。

 

 …はっ。大体、検討はつく。

 

「カチューシャ、怒ってくれるのは、非常に嬉しく思うが…まぁあれだ。…戦車道関係者で、俺に怯えるって事は…どうせロクな噂を聞いていないのだろうよ…」

 

 あぁ…と、ちょっと納得の声が漏れた…。

 

 悪い噂…。猫田さんから、初回に言われた…。

 インターネット上で、囁かれている誹謗中傷…まぁうん、一度覗いてみたね。

 

 さぁ…どれだ?

 

 この様子だと、アレだ…触れると妊娠するとかか?

 逃げられたし…。

 

「…いえ…そういった訳では…」

 

「は……ははは…。気を使われなくても良いですよ? …慣れましたか…ら…」

 

「いっ…いえっ!! むしろ…逆で…ありまして…」

 

「……は?」

 

 逆? どういう事?

 あれ? ピリッとした空気が、更に張り詰めたぞ?

 

 んん?

 

「…今、知波単では空前絶後のぶーむ? と言いますか…流行りが来ていまして…」

 

「ブーム?」

 

「恥ずかしながら…少々、緊張してしまして!!」

 

 んんん!?

 

 なに!? 流行り!?

 違うっ! なんか、先程と態度違うぞ、この人!!

 

「我が校の皆に、土産まで頼まれ! すでに一通りの品は、購入済です!!」

 

「なに!? 何が!? 土産!? 品!?」

 

 今度は、興奮気味に手を握り締め、胸元にまで迫って来た!!

 

「やはり、本場!! 生徒会長殿から、お安く譲ってもらいまして!!」

 

「だから、何がですか!?」

 

「そんな折、更にご本人まで…っ!! もうっ! 嬉しく…えぇ! とても嬉しく思いまして!!」

 

「会話して下さい!! 嬉しい!? 何が!?」

 

 迫る!! すげぇ!! 一直線に迫ってくる!!??

 近い!! すげぇ近い!!

 

 

「 ベコ殿、ご本人とお会いできるのが!! 」

 

 

 ……えーと…

 

 

 

「 は? 」

 

「現在、知波単ではベコぶーむが、到来中であります!! その中、私…決勝戦の会場で購入した、この! すとらっぷを持っているいうのが、誇らしく…」

 

 いやいや!? なに、誇らしげに掲げてんの!? その黄色いの!!

 あ…

 

「杏会長!! 安く譲ったって……もしかして…」

 

「需要があったから、供給しただけだよん!」

 

 悪びれる事もなく、笑顔で言い切った。

 それ…売れなくて、捨てるしかほぼなかった商品を、ただ売りつけただけ…。 

 というか、ベコぶーむ!?

 

「あの…」

 

「ベコ殿、なんでしょう!?」

 

 ベコ殿…は、やめて…。

 なんてキラキラした目で…。

 

「貴女達…そもそも知波単って、本拠地は何処ですか?」

 

「千葉になります!!」

 

「…ローカルすぎる、アレを…千葉の方が、何で知ってるんですか?」

 

「ベコ殿は、戦車道界ですでに有名です!!」

 

 ……。

 

 

 

 え?

 

 

 

「あの突撃は、最高でした!!」

 

 

 

 は? 突撃?

 

 

「隆史ちゃん! 実はベコにスポンサーが、付いたんだよ」

 

「…杏会長……どういう事ですか」

 

「気が付けば、ベコはその新スポンサーと、内科の先生との共同って事になってる状況なんだ。有名になったのって…その為」

 

「は? いやいや。そんな事で、有名って…そもそもベコを知ってる……あ」

 

「……」

 

「まさか…新しいスポンサーって……」

 

「そ…そう」

 

 え…でも、そうなると…いやいや!

 

「 新しいスポンサー様は……島田流の家元さん… 」

 

 …千代さん。

 

 また、愛里寿に母って、呼ばれますよ…?

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 大会に参加していた知波単学園。

 当然、彼女達も決勝戦会場にいたそうだ。

 試合自体が終わり…帰る準備をしている最中、どうもあの現場に彼女は、居合わせたそうだ。

 

 エリカが襲われた現場に…。

 

 彼女は、人集がすでに出来ていたと、興奮気味に喋り始めた。

 丁度、あの男が警棒を振り上げた時だったと…。

 そこに、赤いマントを靡かせて、人の間を潜り抜け…その間に割って入った着ぐるみ。

 ほぼ体当たりをする様に、エリカの横に止まっていた車にぶつかって体を止め、あの男の棒を受け止めた。

 

 …ベコ。

 

 その現場を見ていた人間が、今この場で急に話し始めた。

 それは、みほを含め…杏会長達も動画でしか知らない。当然他の皆も。

 

 知っているのは、俺と…エリカだけ。

 

 やめて…本気で、興奮して喋らないで!! ただ恥ずかしいだけだから!!

 なんで、先程までピリピリしていた空気が変わったんだよ!!

 すげぇ興味深々に聞いてんの!?

 

 エリリン、顔が赤くなって来てるけど、止めねぇの!?

 

 所々、突撃がどうの…あの…。

 

「アレは、知波単魂に通じる物があります!!」

 

 ねえよ!! なんだよソレ!!

 

 ただ、今日は都合上、彼女だけで大洗に来たそうだが、そこ居合わせたのは彼女だけでは、ないそうで…。

 その光景を、学校で同じく皆、興奮気味に話し…更には携帯で撮られていた動画を、全員で見たそうで……。

 更に同じく、突撃がどうの…知波単魂がどうの……興奮は最高潮…。綺麗に皆…それにハマったそうで………。

 

「勘弁して!!」

 

「いやいや! ご謙遜なさらずに!!」

 

「謙遜じゃない!!」

 

 そう…そこで、ベコのストラップ…。

 

 何気なく買ったソレが、その着ぐるみ…。

 後で気がつき取り出すと…唯一持っている、彼女が…って事らしく…。

 

「そういえば、いんたーねっつの活動写真では、声が良く聞こえていませんでしたが…」

 

 …いんたーねっつ……つ? 活動写真って…。

 どうにも、学園艦に住まわれている方々って、特徴的な方が多いですね…。

 

「凄かったです! 『 ただの犯罪者として処理されろ。俺達は、お前の事なんて忘れてやる 』『 俺は、お前が期待する事は、何一つ叶えてやらない 』など! 何か、因縁めいた物を感じました!!」

 

「……」

 

 は?

 

「ちょっと待って。ソレ…聞こえてたんですか? 聞いていたんですかぁ!!??」

 

「私、耳は良いもので!!」

 

 うっっっわ!!! 恥ずかしい!! なにそのセリフ!!! いや、俺が言ったんだけどな!!

 アドレナリン出まくりで、結構変な事…

 

「それで、最後ですね!! アレが凄かったです!! 知波単の皆も、そこに興奮してました!! 本当に活動写真…映画の様で!!」

 

「…は? 待て。待ってください? それも聞こえたんですか!?」

 

 新たな黒歴史だと、思っていたのに!? 聞かれた!? アレを!?

 というか、いんたーねっつとか、活動写真とか言ってる癖に、携帯でネットからの動画引っ張ってこれるっておかしくねぇか!?

 

「はい! 一時一句、覚えております! 『最後に俺、個人としてお前に一言』って所ですよね!? 同い年の男性とは、思えない…すばら「 まって!! 」」

 

 両手を前に出し…彼女に待ての合図…。

 ? を頭の上に出し…本気で何故? といった表情…。

 

 アレ…マジで? あれって着ぐるみ越しだし…聞こえてた!? いやいやいや! 

 あれ? でも、彼女…先程から正確に…。でも…アレ? あの男位にしか聞こえない距離だっ…「なんて言ったの?」

 

 会長!?

 

 

 

「『 人の女、泣かせてんじゃねぇよ 』って、言っておりました!!」

 

 

「  」

 

 

 マジで一時一句、正確だな、アンタ!!!

 なに、マジで嬉しそうに即答してんだよ!!!

 分かる!! 顔が段々と熱を帯びていくのが、分かる!!

 

 ただ、全員がそれを聞いて真顔になった!?

 

 笑えよ!!

 

 笑えばいいだろ!!

 

 やめろよ!! 真顔はやめて!!!

 

 …が……ぁ…。

 

 エリリンっ!! すげぇ真顔!!!

 

 みほ…は……? 

 

 逆にみほには、爆笑されたら、流石に…。

 

 

「……」

 

 

 あ…あれ?

 

 

 いない…。

 

 

 先程までいた場所に、みほはいなかった。

 

 トイレかな?

 よ…良し!! 聞かれていなかったか!!??

 

「…おい、タラシ」

 

「ま…ほ…ちゃん?」

 

 貴女も…すっごい、真顔っすね…。

 

 

「良かったな? みほは、知波単の隊長の言葉はしっかり聞いていたぞ?」

 

「」

 

 何かを察するかの様に、みほの現状を説明して下さりました。

 ふぅ…と、腕を組みながら、ため息を吐きましたね…。

 

「聞いた直後、音もなく、部屋を飛び出していったな」

 

「」

 

 取り敢えず、まほちゃんに初タラシを頂きました。はい。

 

「俺の女を泣かすな…か。さすが…「女を助けるのが、漢であり隆史」だな?」」

 

 

「    」

 

 

 

 昔 の 黒 歴 史 を 発 掘 サ レ マ シ タ 。

 

 

 

 …ま……また、懐かしい事を…。

 だから、女の子限定じゃ、ないって…小さい頃言わなかったか?

 

 それにその言葉は、どこぞのマウンテンに埋めて来たのに……ヒゲはついてないのに…。

 

 すでに顔の温度はわからない…ただ…暑い。熱い。あっつい!!!!

 

「あ…あの……ベコ殿。何か、私……」

 

 この空気を察したのだろう…。

 何か仕出かしてしまったと思ったのか、恐る恐る俺に聞いてきた。

 だから、ベコ殿はやめて…。

 

(…まっ。ある意味でタノシミだよねぇ…その対象を、自分に移せるかも知れないって考えれば…)

 

《 !!! 》

 

 !!??

 

 なに!? なに!!??

 会長が何か呟いたと思ったら、一斉に全員の目の色が変わった!?

 ケイさんだけが、クリスと戯れながら…いや!? クリスの尻尾が脚の間に…どうした!?

 

 

「…………」

 

 

 ビクッ!!

 

 び…びっくりしたぁ……。

 視界の端に…みほが映った? と思ったら、すでに席に彼女はついていた。

 戻ってきたのか…。

 だからさ…気配……させて。

 

「………………」

 

 すっごい…真顔だけどね。

 見ると…すっごい、勢いで顔を逸らすけどね!

 耳が…スゲェ色になってますね!!

 

 …。

 

「あの…ベコ殿」

 

「…はい……なんすか?」

 

 崩れ落ちている俺に、ものすごく気を使う様に声を掛けてきましたね…。

 ぶっちゃけ暴露しまくってくれた、貴女のせいなんですけどね!!

 

「ベコ殿は…その…そうだ! 鳥を飼っているのですかね!?」

 

「…は? いや? 犬は先日、飼い始めましたが…」

 

 鳥? なんで?

 すでにもう、思考回路が上手く働かない為…すげぇ素直に答えてしまいましたね…。

 

「いえ…ベコ殿の事を調べていくと…どうにも嫌な噂に突き当たりまして…」

 

「…あぁ、そうっすね」

 

「あの様に、ただ体一つで、人の為に突撃できるベコ殿が、不埒な事をするはずがないと思うので、信じていないのですが…」

 

 流暢に喋るなぁ…。

 彼女の話を聞きながら、周りを見渡すと…なんだ!? すげぇ、こっちを皆が見てくる!!

 

「…小山。アレ…やっぱり、今日やろうか。あの二人呼んでおいて」

「そうですね…私も少し、ダメージが…。校内にいるでしょうし…呼びましょうか」

 

 何かまた不穏な事を言ってるなぁ…約2名。

 はぁ…。

 会議がまったく始まらない事に気がついた…。

 ただただ、ダメージが蓄積していくだけだ…強引にでも…始めた方がいいかな…。

 顔は熱いけど!!

 

「…それで、なんで鳥を飼っているかって…」

 

「いえ…な…何と言いますか…触ると、どうのって…」

 

「あぁ…触ると妊娠するって奴っすね?」

 

「っ!!!」

 

 …あぁ、はい。アレですね。

 ハッキリ言ってしまって申し訳ないけど…。

 

「ですから…飼っているのかなぁって…それであの噂が流れているのだろうか? と…」

 

 ……。

 

 え?

 

 まさか…。

 

 

「コウノトリを…」

 

 

 ・・・。

 

 いやぁ…結構、純朴そうな方だと思っていたけど…。

 だからって…。

 

 本当にすげぇな、知波単の隊長さん。

 この状態の俺を見かねて、強引に世間話を仕掛けてきたって所だろう。

 うん…ペットとかの話なら、話題へと入りやすいだろう…。

 

 でも…貴女の発言は、色々とカオスへと持って行く…。

 また、はっきりと通る声で仰るものですから尚更…。

 

 

 

 …会議はまだ始まらない。

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

「大変申し訳ございませんでした!!」

 

 はい、2度目の謝罪…。

 全員が席に戻り…会議ができる状態に、漸く戻った。

 戻った早々に、コレ。

 

 はぁ…。

 

「では…はい、んじゃチーム分け。決まった? お二方さん」

 

 もういいからと、会長が会議の開始を、決めかねていた内容を口に出すことで開始した。

 そうだった。ソレで揉めていたんだっけ?

 

「決まりましたわ」

 

 アレ?

 

「…そうね。食事しながら…なら、結構すんなり決まったわ」

 

「そうですね。カチューシャ」

 

「あらら。あんだけ、揉めていたのにねぇ」

 

「確かに、みほさんとのチームを組み…今後に生かすのも、宜しいかと思いましたが…」

 

「今回は、雪辱を晴らす事を優先したの」

 

 …ん。ちょっと、引っかかる。

 でも、その場にいたと思われる みほは、何も言わないって事は、双方納得済なのだろう。

 

「どういう事だ?」

 

「………………」

 

 …みほに聞いてみた所。

 

 

 

 

 無視された。

 

 

 

 思いっきり、そっぽ向かれました。

 

 …この部屋に来て、全然会話らしい会話をしていない…。

 

「はぁ…いい? タカーシャ」

 

「ん?」

 

「組み合わせはこう。私達、プラウダ高校と聖グロリアーナのチーム」

 

 得意げに、指を振りながら説明してくれるカチューシャ。

 …カワイイ。

 相変わらずだねぇ…。

 

「そして、大洗学園と知波単学園のチーム…と、分かれましたわ」

 

 カチューシャとダージリン。二人の隊長は、何故か俺に説明をした。

 俺…ただの書記なんっすけど?

 まぁいいや。オシゴトしましょ。

 一応、簡単にホワイトボードへと、その名前を書き込む。

 

 ……。

 

 あぁ…なる程。

 

 雪辱を晴らすね。

 

 その書き込んだ文字を見て、組み合わせに納得がいった。

 

「私達からすれば…全国大会での雪辱。大洗学園からすれば、一番最初の練習試合の雪辱…各々、それを晴らそうってワケね!」

 

「…なる程。西さん」

 

「はい! なんでしょう!? ベコ殿!!」

 

 ……。

 

 うん……もういいや。

 

「貴女方は、コレで了承済?」

 

「はいっ!!」

 

 …うん、いい返事。そして、何故敬礼?

 ただ…俺をキラキラした目で見るの、やめて欲しい…。

 

「まぁ? それは私が提案したのですが…」

 

「ダージリンが?」

 

「だって…その方が、面白そうでしょう?」

 

「面白いって…。って、だから何で俺に言うんだよ…」

 

「うふふ…アッサム。説明してあげて?」

 

「ダージリンのその笑いは、嫌な予感しかしない…」

 

「尾形さん、ある意味この組み合わせは、面白いですよ?」

 

 今まで黙って座っていた、アッサムさん。

 目をまっすぐこちらに向けて…どこか嬉しそうに言ってきた。

 

「あら、アッサム?」

 

「アッサム様?」

 

「……」

 

 それを横から妨害されたな。

 約2名のお嬢様が。

 

「隆史さん、ある意味この組み合わせは、面白いですよ?」

 

 …いや…あの…何で綺麗に言い直した?

 そして約2名のお嬢様が、舌打ち…。

 そんな遠まわしに言われても、分からんよ…組み合わせ?

 

「どうでしょう? そちらの生徒会長さん。せっかくです。チーム名…決めませんこと?」

 

「んぁ? チーム名? …確かにそうだねぇ。混合チームじゃ味気ないしねぇ」

 

「そうですわね」

 

 …ん?

 ダージリンの目が光った…様に感じた。

 

「んじゃ、まずは大洗は…どうする? 西住ちゃん」

 

「え? 私はなんでも…。あ、でも知波単学園さんもいらっしゃいますし…」

 

「私達は、何でもかまいません!!」

 

 はっきり言った。

 元気いいなぁ…。

 

「いつもみたいに、何か…まぁいっか!! んじゃ大洗と知波単は、大波さんチームって所で」

 

 なる程ね。

 確かに感じを合わせれば…大波ね。

 

「ふ~ん。いいのか? みほ」

 

「………………」

 

 …無視…。

 …声かけると、すげぇ顔赤くするけど…。

 

「あら、そう。では、こちらは…」

 

「ちょっと待って! 待ちなさいよ! チーム名!? なんでそんな大事な事、この偉大なるカチューシャ様をさしおっっムグっ!?」

 

 !?

 

 いつもの様…本当に、いつものカチューシャ。

 ノ…ノンナさんが、そのカチューシャの発言を、物理的に止めた…。

 口に手を抑えてまで…。

 なんか、ダージリンに目線で訴えかけているけど…。

 

「……なんです? 隆史さん」

 

 なんて鋭い眼光…。

 うわぁ…この視線って、どこか懐かしく感じるのはなんでだろう…。

 

「あ…いや、クラーラさんが、今日はいないなぁ…って思って…」

 

「………………残念…デスカ?」

 

「いやっ!? んなことないよ!!??」

 

 なに!? なんなの!?

 今日、このセリフばっかり言ってるよ!!

 

「そうですわね。そちらも「大洗」なんて、土地名を入れていますし…こちらもそれに習いましょうか? ね? カチューシャ?」

 

「むぐぁ!! …はぁ!? 土地名!? そんなのつまらない…………あぁ、なる程。…いいわね。すっごくいいわ!!」

 

 

「 で し ょ う ? 」

 

 

「では、会長さん? 私達は…「青森チーム」で…」

 

「青森? まぁ…いいけど」

 

「なら…それで」

 

 ……。

 

 あの…ダージリン達が、頗る楽しそうなのが、すっげぇ引っ掛る。

 ノンナさんも、ニヤけているカチューシャをもう止めない。

 …ん?

 

 チーム名が決まったと同時に、オペ子がすっごい良い笑顔で、俺を見ている…。

 違う…全員がすっげぇいい笑顔だけど!?

 

 

「では! …これで、会議は終了かしら?」

 

「思ったより早く片付いたな…俺、来た味あったのだろうか? まぁ仕事だから意味も何も無いけど…。いや…黒歴史を暴露されただけ……」

 

「黒…? 良く分っかんないけど、大丈夫だよ? 隆史ちゃん。むしろ…ここからだね」

 

 ここから?

 

 そこまで言うと、会長が椅子から立ち上がり、手を叩いた。

 パンパンと小気味いい音が響く。

 

 注目しろ…と。

 

「はぁい! では、今日の会議はここまで。午前中に決めた日取りで、エキシビジョンマッチを執り行うよ!!」

 

 締めの挨拶だろうか?

 でも、ここからって…。

 

「ふむ…あの日取りならば、もう少しいられそうだな」

「今度はアリサ達も連れてこないと」

「あぁ~んじゃ、その日までに食材準備しないとな!!」

「そうですねぇ。でも、少し時間はありますし…少し観光しませんか? ドゥーチェ」

「観光? …ふむ。いいだろう! するか! 観光!!」

「いいっすね! 土地柄的に、どんな料理がヒットするか、リサーチも兼ねての観光っすね!?」

「え…ペパロニ? は? お前、ペパロニだよな!?」

「そういうのも大事って、タカシに襲われました!!」

「「 …… 」」

「おい、アンツィオ。どういう事だ」

「まほっ!! 待て!! コイツはいつもこうだ!」

「ただの言い間違いっすよぉ」

「…最近、ペパロニは分かって言ってるんじゃないかと疑い始めましたわ」

 

 

 

 ……。

 

 

 

「…ミカァ。お弁当……ない」

「そうなんだ。残念だね」

「…ミッコ。ミカ、手を後ろに回してるね。カンテレ持ってないね」

「あっ! 一個隠してる!!」

「ほら! ずるいよミカ!!」

「ちがうよ? 隠してないよ? このお弁当が、恥ずかしがり屋さんなんだ」

「意味が分からないよっ!!」

 

 

 ……。

 

 多分、それ俺の分…。

 

 ……というか…。

 

 …なんで、お前らいるの?

 

 

 

「では…そんな訳で……一応フェアにって思ってねぇ。サンダースもいるしね!!」

 

 

 良くわからない事を…フェア?

 

 

「では、ここから…少しの時間、レクリエーション…まぁ、軽いゲームだね? ちょっとそれで、皆で遊ぼうってワケなのさ」

 

「ゲーム?」

 

 こんな人数…そうそう集まれない。

 見学をしている学校も含め…丁度いいと、言い出した。

 

 各学校の代表者達が、訝しげな表情…。

 

 

 

 

 トントン。

 

 

 

 軽くドアを叩く音。

 その音に全員が、ドアに視線を集中させた。

 

「来たねぇ! どうぞぉ!」

 

 杏会長の許しの声と共に、会議室のドアが開かれる。

 今までの空気をぶった斬り…なに? 誰?

 

 それ以前に、何が始まろうというのだろう?

 

 ゲーム?

 

 

「失礼しま~す。何の用でしょ……う…か?」

 

 

 多分、呼び出したのだろう。

 何でいるかは知らないけど…予想外の人物が現れた。

 入室してきた…人物。

 

 

「…………」

 

 

 全員の視線を一身受け…硬直している。

 

 俺と視線が会うと、あ、笑顔になった。

 

 

「失礼しました~~」

 

 

 そのままドアを閉めて、退室しようとしたよ…。

 まぁ? 後ろから来た、もう一人の人物にぶつかり、退室を妨害されたけど。

 

「わっ!! 馬鹿!! 逃げろ!! お前は特に逃げろ!!!」

 

「は? なんでだよ。小山先輩に呼ばれたんだろ!!! じゃあしっかりとあの、お……っぱ」

 

 

 ……。

 

 

「馬鹿野郎……」

 

 はい、押し出される様に、見事にお二方が入室致しました。

 完全に固まってしまった、お二人。

 はい、…なんでいるんだよ。ここに。

 

 

「……………………」

 

 

「はいは~い。私達、やった事がないゲームだしねぇ。司会者が必要かと思って呼んだんだよ。あくまで司会者としてね!!」

 

 逃げろ…。

 

 今からでも遅くない…特にお前だ!!

 

「あの…尾形……なに? この……え?…」

 

「……林田。骨位は拾ってやる」

 

 

 

 

 

 

 

「……………………オブツ」

 

 

 

 

 

 

 

 はい、オペ子が、すっごい目を見開きましたねぇ。

 そんな表情できたんですねぇ…口元が笑っているのが、更に…。

 

 

 青い瞳が、まぁ綺麗。

 

 

 はい、大丈夫だ…。取り敢えず、間に立ってやったから…。

 林田…流石に分かったろ? この…殺気。

 

 

 

 

「…………………………」

 

 

 

 

「 」ガタガタガタッ!

 

 

 はい…中村。

 

 良かったな…今日はアリサさん…いなくって。

 わぁ…すげぇ震えてるぅ。

 

 

「隆史ちゃんの友達って事で、男の子だし…知ってるかなぁって聞いてみたら、やっぱり知ってたみたいでね?」

 

 いや…流石にこのメンツに、こいつら呼ぶって…鬼ですか、貴女。

 …あっ! そうか、知らないのか…あの現場にいたのって、大洗側じゃ桃先輩とみほだけだ!

 

「何を…嬉しそうに……というか、何のゲームですか」

 

 完全に硬直状態に入った室内。

 よく分からないって顔で、ニコニコしている西さんだけが異質に感じるな…。

 

「ちょっと、興味があってさぁ…この戦車道強豪校達で執り行う…罰ゲーム有りの…」

 

 ニヤニヤした顔で…そして悪い顔で…。

 杏会長が、俺の問いに答えてくれた。

 

 

 

 そして思う………最悪だ。

 

 

 

 

 

「愛してるゲームって奴さ!!!」

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

西さんの本領は次回…に、したい。
というか、彼女…書いてみて結構難しい…そう思いました…。
これから…これから……

ありがとうございました

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。