「戦車道は礼に始まって、礼に終わるの。・・・一同、礼!」
「「「「「よろしくお願いします。」」」」」
「それでは試合開始!!」
久しぶりの感覚だ。懐かしい。戦車と共に育って来た。黒森峰を離れて数ヶ月。
たった数ヶ月離れていただけで、懐かしいと感じてしまうのは妙な気分だった。
不思議と苦痛には感じなかった。ある意味彼が用意してくれた状況。
苦痛に感じなかったのは、お母さんとお姉ちゃんとも電話でなら話ができるようになっていたからだろうか。
勿論蟠りはまだある。お母さんは、決勝戦での私の行いを肯定しているわけではない。お姉ちゃんはまだよくわからない。
それでも、私が戦車に乗る事に反対はしなかった。絶対反対されると思っていたのに・・・。
お母さんとの最後の電話。
「あなたの戦車道を見せてみなさい。」
この言葉で乗ってもいいんだって思えた。相変わらす厳しい人だけど、その言葉に少し気が楽になった。うれしかった。
よし。頑張ろう。彼が、少し昔に・・・彼がいた中学生の時のように私達を戻してくれた。
『ありがとう』まだちゃんと言えてない。でもちゃんと言おう。
いつ言えるかわからないけれど、私の戦車道で答えよう。
ただ・・・。執拗に彼の心配をするお母さんもどうかと思う。会話の7割は彼の話だったような・・・。イラッ
「いよいよ攻撃開始ですねぇ~。とりあえず撃ってみます?」
「え。闇雲に撃っても・・・。」
優花里さんの声で、我に返る。いきなり撃つのは居場所を知らせる様なもの。
配置はくじ引きで決めた。みんな初めての戦車を動かすんだもの。適性がどれかわからないから良いと思った。
私は一通りやってみた事あるけど、うまく助言できるかな・・・?
「ねぇ。真っ先に生徒会潰さない?教官女の人だったんだもん!」
「まだ言ってるんですか?」
車長になった沙織さん。そんな事で生徒会を目の敵にしなくとも・・・
「はい。ではまず最初に潰しましょう。配置図を見る限り、多分川の向こうです。」
「・・・みほさん?」
「恐らく私がいる事で、皆さんから集中砲火を受ける可能性が高いですので、警戒しつつ迅速に移動するのがいいと思います。」
「・・・西住殿?」
「え。本当にいいの・・・?みほ?」
何故だろう。皆さんが意外そうに聞いてきます。
「はい。車長が決めていいんです。カイチョウタチヲマズツブシマショウ。」
そうです。隆史君には聞く事が出来ました。皆さんに戦車を体験してもらいながら、強制的に彼に聞きたい事を聞ける条件を満たしましょう。
ズガン!!
3時方向より砲撃音。さっそく狙われました。外を見て確認する。少し手前の地面に被弾痕。やはり外している。
停車中の相手に命中できないようなら、走行していれば多分当たらない。
「怖い~。逃げよぅ~。」
沙織さんの合図で戦車が動き出す。
このまま前進だ。
何だろう。ちょっと楽しい。
「おーおー。狙われとる、狙われとる。」
亜美姉ちゃんと管制塔で試合を見ていた。
何で俺を賞品(強制尋問権)に付けたのがわからないが、逃げれないので一緒に観戦していた。
勿論全員に権利があるので公表したが、みほ以外俺に興味もないだろうから褒美にもならんだろと踏んでいた。
案の定、コスプレチームは特に興味を示さなかった。当たり前だ。バーカって言ってやろうかと思ったんだが・・・。
「え?マジですか?どんな事でもですか!?」
と、一年チームとバレー部チームが食いついた。
どうもみほとの関係が、それなりに興味がある様で、そこを聞きたいみたいだ。
「なぁ。亜美姉ちゃん。みほに何であんな事言ったんだよ。ファーストキスだとか、聞く権利だとか、不自然すぎるだろ。」
双眼鏡で覗いている目をこちらに向け、真面目なトーンで答えた。
「・・・本当にわからないの?なら、結構マジでぶん殴るわよ?」
前を向き直す。・・・わかってる。
みほ・・・いや。まほちゃんとみほは、少なからず友人以上に好意を寄せてくれている。中学ぐらいからかなぁ。自覚したのは。
ただ、それは例の出会いの事件からの俺へのヒーロー像。刷り込み見たいな感じが否めない。なんか卑怯で嫌だ。
それ以前に・・・非常に申し訳ないが、高校生は子供にしか感じられない。
恋愛対象に見られない。自分ごときが・・・。ってのも正直どこかにある。
だが、彼女達姉妹からの好意は俺でもわかるくらいに高く、鈍感を装うのもそろそろ限界だ。
だからだろうか、彼女達が女性関係で怒るのが非常に怖い。コワイヨ
転生して、若い体とはいえおっさんが女子高生と恋愛する。
常識的に考えて事案だろうが。変な常識が邪魔をする。
それらは、彼女らに対して失礼に当たる。でも何をしても、子供なのに~すごい。っと頭に「子供」がついてくる。
好意を寄せられて、嬉しくないわけがない。
でも俺から見てしまえば、どうしても子供として見てしまう。
開き直って、体は若いからOKってやりたい様にやってみろ。後は猿まっしぐらだ。
やりたい様にやる。女性の好意に甘え。付け込んで、食い散らかす。・・・そんなクズ野郎を見たこともある。
正直俺も男だ。それなりに性欲は沸く。が、俺はそんなゲスになりたくない。
特に彼女らは恩人だ。この世界での道しるべになってくれた。彼女らの為なら喜んで死んでも良い。
でも。俺は現在17歳。今のもただの言い訳だ。本気でここで生きて行こうと腹をくくった。
彼女達から見れば、俺は同級生でしかない。
俺の現在の「目線」が「異常」なのだ。
昔の事を引き合いに出して、若いから。子供だからって逃げるのも卑怯だよな。
この世界で生きる覚悟が足りなかったかねぇ。そろそろ逃げるのやめて自覚するしかないか。
そう。俺は、今17歳。高校2年生。
ボソッ「・・・そろそろ逃げるのやめるかねぇ。」
「隆史君。いい加減、みほちゃん達が可哀想よ。今回は切っ掛けだけど・・・まほちゃんの事もそう。はっきりしなさい。」
「それでも今回の条件は何なんだよ。他のチームが勝ったらどうすんだよ。この組み合わせは、確実視はできねぇだろ。」
亜美姉ちゃんは、それはそれは嬉しそうに言った。
「人が困った顔って好きなのよねぇ。」
「嬉しそうに・・・。俺に彼女がいたらどうしたんだよ。」
「どっちでもいいわよ。ただ、付合うにせよ振るにせよ、はっきりしろって事なの。わかった男の子。」
めんどくせぇ。
「まぁ。今の状況も、見ている分には面白いしね。修羅場って心躍るわよねぇ。」
・・・この悪魔が。そんなんだから彼氏できても、すぐに逃げられるあばぁああぁぁ。
撃たれた。
「失礼な事考えていたでしょっ・・と。勝負ついたわね。やっぱりAチームね。」
練習試合が終わった。・・・さて。逃げるか。
「みんなグッジョブ!ベリーナイス!!初めてでこれだけガンガン動かせれば上出来よ!特にそう、Aチーム!」
「では、賞品はAチームへ!さぁ、煮るなり焼くなり好きにするがいいわ!」
蝶野教官は、何故でしょう。非常に楽しそうに、何故かボロボロの隆史さんを前に出しました。
ボソッ「やっとこの時が来た・・・。」
みほさんが、何やらひどく殺気立ってますが・・・どうかしたんでしょうか?
「あら。Aチームは何も聞いていない?今回勝ち残ったチームには、彼の生殺与奪の権利が与えられるの!」
「え・・・。質問に嘘偽りなく、それに関する事を希望のまま答えさせられる権利じゃぁ・・・。」
みほさん。ある意味それ内容によっては、生殺与奪と変わりませんよ。
「1人1回。何でも質問して。隆史君に私が吐かせる(物理)から♪」
困りました。特に聞きたい事もありません。みほさんに、何かしら教官が吹っかけたのかもしれませんが
彼と日の浅い方々は特に、興味も無いとお「ちなみに彼はファーストキスを済ませています。ねぇみほちゃん?」
ザワッ!マジデー チョットキキタイカモー ハヤクカエリタイゼヨ・・・
まあ。何だかんだで年頃の女子高生。身近なみほさんとの恋話を聞きたいと思うのも当然でしょうか?
少し色めき立ちました。一年生の子達の目の色が変わりましたね。沙織さんも好きそうですからね。この手の話は。
みほさんと、やはり彼とお付合いされているんでしょうかね・・・。・・・ゾクッ
何故でしょう。みほさんの顔に感情がありません。ナンデショウ?コノサムケハ・・・。
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「じゃあ質問行ってみようか!?まず秋山さんドゾー♪」
楽しそうな教官から、いきなり振られてアワアワしてますね。
「わ・・私は、特に聞きたい事も『秋山さん。チョット。』」
みほさんが、秋山さんに耳打ちしてます。
ヒソヒソ「いいんですかぁ本当に・・・」「秋山さんお願い♪」
「じゃ・・・じゃあ!先程、教官が仰っていた・・・ファーストキスの相手は誰ですか!?」
・・・隆史さん目が死んでますよ?直球ですね。ど真ん中です。
蝶野教官が催促するかの様に、暴動鎮圧(対暴徒)用ショットガンを隆史さんの後頭部に当てていますね。
さっき説明受けました。これもゴム弾で当たっても死にはしないそうです。ただ死ぬほど痛いそうですが・・・。
目が死んだ隆史さんが、答え出します。
「小学生の時の人工呼吸が、ぼくのファーストキスです。以上終わり。」
ザワザワ エーツマンナーイ
「・・・詳細。」ゴリッ
蝶野教官が思っていた答えと違うのが不満なのか詳細を(物理で)催促します。
「・・・みほも知っていると思うけど。あのパンチパーマの男の子。大まかに説明すれば。
その時の戦車道大会会場の観客席が、海ギリギリに階段式で建てられていたんだ。んで。変にテンション上がったその子が、
んーわかるかな。海側の客席の柵に登っちゃってな。ポールに捕まっていたんだけども、足滑らせて海側に落ちたんだ。
落ちて浮かんでこないから、俺もそこから飛び込んで救出。大会スタッフの人も救護班を呼んだばかりで、周りの大人もマゴマゴしてるし
確認したら息もしていないし、やばいと思って一応手順どうりに人工呼吸で何とかしたって話。」
「あ~あの時の事か。それ小さな欄だったけど新聞に載ったよね?・・・お母さんその時、切り抜き多分まだ持ってるよ。」
何でしょう。隆史さん昔からアクティブだったんですね。・・・ただ子供の時からその性格ですと、少々危うく感じます。
・・・?
「あの・・・秋山さん?先程から顔真っ赤ですけど、どうかしました?」
「ヘブッ!な・・・なな何でも無いでござるよ!?」
ござるって・・・。口調も変わっていますが、大丈夫でしょうか?
「つまらないから次!!!」
つまらないからって・・・この方、隆史さんには容赦ないですわね・・・。
「じゃあ。はい!」ノシ
「はい。じゃあ。みほちゃん!」
元気よく手を上げたみほさん。隆史さんの顔が土気色になっているのは気のせいでしょうか?
早くも真打登場ですか。教官のニヤニヤが止まりません。
「最後いつしたか。あと。相手の名前。フルネームで答えなさい。」
みほさんの声が本気です。すごい抑揚の無い声です。
教官と1年生辺りがすっごい良い笑顔になってますよ。
「あの、質問が2つですが・・・あ、はい!!吐きます!!」
・・・みほさんと、教官に睨まれてあっさり条件を呑みました。あの方、意外と異性関係は弱いですね。
生徒会室で見せた。あの迫力ある方はもういませんね。フゥ
「本当に言うの?」見たいな顔をするも2人の迫力に観念しました。
「いろんな意味で後悔すんなヨ・・・。・・・2週間程前。」
半月前ですか!?これはちょっと私も面白くなってきました。沙織さんはキャーキャーうっさいです。
「名前は。・・・。えーと。」ゴリッ ア、ハイ。ワリマシタヨ!
「・・・西住。」
ザワッ
一気に騒がしくなりました。やっぱりそういう関係!?とかザワザワし出しました。
バレー部の方数名がちょっと彼を睨んでますねぇ。沙織さん、少し静かにしてください。うるさい。
あれ。みほさんの顔が真っ青です。あれ。貴方じゃないのですか?すごい泣きそうな顔になってます。
ボソボソ「え?。まさか・・・お姉ちゃん?・・オカアサンデハナイトオモウケド・・・え、嘘。」
「西住・・・常夫・・・さん。」
静かですねぇ。風の音が聞こえます。
・・・。
・・・・・・誰ですか。え?男性?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お父さん?」
みほさんのお父様でしたか~そうですかー。
わー。1年生組が意外にもキラキラした目の子が、数人います。
バレー部は・・・ドン引きしてますね。それが普通の反応でしょうね。
2年の歴女組は意外にも嬉しそう。「男色はいつの時代も~」とかなんとか言ってます。
わー。教官楽しそうですね~。爆笑してますよ。
「あの・・・尾形君。え~と、君そっちの人?」
バレー部の方が、ドン引きして聞いてきます。まぁ当然の疑問でしょうか。
「違います!俺はノーマルです。そっちの気は無いです!」
ため息一つついて、みほさんに訪ねます。
「・・・みほ。熊本からの写真。常夫さんに送っただろ。」
「ふぇ!意識が飛んでた・・・。」
「・・・送っただろ。まとめて。」
「あ・・・。ついイライラして送ちゃった。」テヘッ
淡々と語りだします。今度は、隆史さんの声のトーンがおかしいですね。
「熊本での一件が片付いたから、情報源だった常夫さんへお礼を言いに行ったんだよ。
そしたらいきなり、スパナ持って追いかけられたんだよ!・・・何故だかわかるよなぁ?」
「結構マジな勢いでスパナぶん回して来るものだから、常夫さんがバランス崩して・・・そのまま
俺に重なる感じで倒れてきて・・・まぁ。はい。」
「」
みほさんの目が、すっごい勢いで泳ぎ出しました。その写真見てみたいですね。
「まぁ。そこで冷静さを取り戻した常夫さんと和解したんだけど・・・その気まずい空気というか雰囲気というかは・・・すごかったな。」アハハ・・・
人間アソコまで乾いた笑いって出るんですね~。
「えっと。ごめんね隆史君。いやホントごめんなさい。」
みほさんのお父様は整備士をされているそうですね。それでスパナを・・・。
「でもさ~隆史ちゃん。結局みんなの質問を、上手く躱しているように見えるんだよね~。」
会長が口を挟んできました。・・・そういえばそうですね。嘘は言っていないのでしょうが、質問が限定すぎるんでしょう。
ヒーヒー「つ・・・次の方質問どうぞ。あと2人ですね。」
あ。あと私と沙織さんですね。でもいい加減、隆史さんがかわいそうになって来ました。
完全におもちゃにされていますね。疲れきってますね。当たり障りの無い事でお茶を濁しましょう。
「では、隆史さんは、女性と接吻した事あるのでしょうか?」
最初からこう聞いておけば良かったんですね。
・・・ごめんなさい隆史さん。好奇心には勝てませんでした。
周りの目線が凄い事になってますね~。さすが皆さん女の子。目がキラキラしてます。
もう、隆史さんヤケになってます。
「あー・・・あるよ。はい、ありますよ。これも事故みたいなものだけどな!!」ケッ
あーやさぐれましたねぇ。あ。詳細を聞く質問をし忘れました。
キャーキャー皆さん言ってますねぇ。みほさんは、ログアウトしました。
でも、みなさんの目の色が変わりました。そのまま沙織さんを皆さんが見つめます。
この流れなら聞いてくれると思いますよね。いい連携が取れそうです。
「じゃあ、最後の質問を武部さんどうぞ。」
「えーーと。」
名前か、エピソードか。ギラギラ視線が、沙織さんを見つめます。
みほさんが、ログインしました。お帰りなさいみほさん。
「キ・・・キスってどんな味?」
「「「・・・・・・・。」」」
ヘタレやがった。
この場面で日和った。
この脳内スイーツが。ここに来てこの空気の読めなさ。
「沙織さん。それはさすがに・・・。」
「い、いや結構、恥ずかしいよ!?なんで、みんなそんなに冷静に聞けるの!?」アセアセ
・・・まぁそうかも知れません。脳内スイーツの言う通りちょっと感覚がマヒしてしまっていたかもしれません。
「それでも質問は質問。答えてもらいましょうか。」
その質問はそれはそれで面白いと教官ニヤニヤしながら答えを促します。
そうですね。それはそれで・・・。みなさんの注目を集めます。
結局皆さん、最後まで楽しんでいましたね。
隆史さんが、これでやっと終わりかと答えます。
はい。閲覧ありがとうございました。
3話冒頭くらいまでですね。今回ちょっと短いですね。
ちょっとオリジナルな展開が、この後続きます。
主人公目線だと、戦闘シーンが限られて来ますので難しい。
次回ダー様達以外の新キャラでます。
ありがとうございました。