転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第12話 愛してるゲームでタイマンです! 後編

『中村さん…』

『……』

 

『会場中が、静寂に包まれております…。全員が逸見選手を驚愕の表情で見つめています』

『私……尾形選手。もはや、ただの馬鹿なんじゃねぇの? って、感想しかありません…』

『尾形選手、完全に呆けております…チーンって音が聞こえてきそうですねぇ…』

 

『あぁ…昔の自分を見ているかの様で…少々、感傷的になっております…』

『私だけモテません!! しかし、なんでしょう!! …今の尾形選手を見ると、微塵も羨ましいとは思えません!』

『しかし…逸見選手…。顎を上げながら、腕を組み、足も組んで……尾形選手を見下ろしていますねぇ…』

 

 

「ねぇ、そこの変態」

 

『ヘン……ど…どちらでしょう?』

 

「あら、ごめんなさい。二人と……いえ、3人いたわね」

 

『『「 …… 」』』

 

「誰でもいいわね…。私も後攻でいいわ。リスクも承知」

 

「 」

 

『『 …… 』』

 

「早く始めて」

 

「 」

 

『…下手な事、言わない方が吉だよな……』

『それで正解だ。…この際、尾形の自業自得だろ。見捨てよう!!』

『そうだな!! よし! テンション戻ってきたぁ!』

 

『では…。逸見選手!! すっごい余裕の表情!! でもなぁ…こういうのに限って、即堕ちすんだよなぁ』

『馬鹿野郎! 余計な事言うな! …さ……さぁ、どうでしょうか? では! 試合開始です!!』

 

「……」

 

「……」

 

『さぁ、尾形選手!! 頭を抱えております! ザマァ!!』

『ん? 尾形選手!! こちらを睨んでおります!! 俺らに当たるな!!』

 

「…ほら、時間ないわよ?」

 

「……ぐっ…」

 

「ゲームよ? げーむぅ。気楽にやれば?」

 

「……」

 

「…私は、とても気楽になんて、言えなかったけどね」

 

「  」

 

『…あいつを神社に連れて行って、おみくじ引かせたいな』

『凶だろうが、大吉だろうが、絶対に女難の相が出そうだよな』

『その神社の信憑性が分かるな』

 

「くっ! …エ……エリ……」

 

『おっ!? やっと、尾形選手が動きました!』

『さぁ、どんな言い訳…じゃない、どんな愛を囁くのか!?』

 

「エ…エリリ「エリリン禁止」」

 

「 」

 

『おぉぉと! いきなり初手を潰されたぁ!!』

『尾形選手得意の、お茶を濁す作戦がいきなり終わりかぁ!?』

 

「エ…エリちゃ「その呼び方、やめるんじゃなかったの?」」

 

「  」

 

『……』

『……』

『俺…尾形が口で、圧倒されるの初めて見た』

『俺もだ…』

 

「……」

 

「ふ……ふぅー…よしっ」

 

『尾形選手! オレンジペコ選手の時にも見せた、深呼吸!』

『覚悟が決まったかあ!?』

 

「 エリカ 」

 

「なによ」

 

「あ…愛してる」

 

「………………」

 

『言った!! 一言だけど言ったァ!!』

『よく、あの空気で言えましたねぇ!! 意地を見せたかぁ!?』

『顔が! すげぇ青いです! 赤いのもキメェが、青いのもキメェ!!』

『さぁ、逸見選手の反応は!? チョロイか!? チョロイのかぁ!?』

 

 

 

「どもった。40点」

 

 

「  」

 

 

『真顔!? 表情の色すら変えない!! あっさり、言葉を受け流したァ!』

『即堕ちは、免れましたねぇ…。逸見選手、防衛成功! 続いてエリカ選手のターンです』

 

「…………」

 

「はぁー…はぁ…」

 

 

『おっとぉ!? 逸見選手、だんまりです! 尾形選手の息切れしか聞こえません!!』

『尾形選手、息切れするほどでしたか!!』

『これは意外!! ひどく辛そうです!! しかし、なぜしょうか!? 先程から司会者席は、笑いが耐えません!』

 

 

「……」

 

「……」

 

 

『同じ格好で、微動だにせず、息切れの激しい、尾形選手を見下ろしてますねぇ…しかし…言わない!!』

『彼女、特に恥ずかしがる訳でもなく…普通に、だんまりですね…』

 

 

「……」

 

 

『あ…あれ? 逸見選手? 貴女の番ですよ?』

 

 

「……」

 

 

『逸見選手~? 時間がありませんよぉ?』

 

 

「…そうね」

 

 

『……』

『中村さん?』

 

「……」

 

『まだ、だんまり…って、どうした中村』

『…いや…』

 

 

 

 ピピピピッ!! ピピピピッ!!

 

 

 

『おっと! ここでアラーム!! 時間切れです!! 尾形選手へ、攻撃権が移ります!』

『……』

『ここに来て照れでしょうか!? 逸見選手攻撃のチャンスをモノにできませんでした!!』

 

 

「さっ…隆史の番ね? どうぞ」

 

「!?」

 

 

『攻撃ができずに終わった、逸見選手!! 余裕の表情!!』

『…では、尾形選手のターン』

 

 

「う…ぐっ……よ…よし!」

 

「……っ」

 

 

『今回はすぐに動きそうですねぇ…尾形選手、真剣な表情!! まっすぐ逸見選手を見ています!』

『お、これは逸見選手も少し動揺しましたね』

 

 

「逸見 エリカ…」

 

「……」

 

 

「 君を、愛してる 」

 

「……」

 

 

『尾形選手! 作戦を変えてきました!! フルネーム呼び!!』

「普段、ヘラヘラして馴れ馴れしい尾形選手! 突然の真剣な愛の言葉! さぁ! これはどうだぁ!?」

 

 

「…胡散臭い。45点」

 

「   」

 

 

『胡散臭い!? 確かに!! 逸見選手! 余裕の表情!!』

『尾形選手! 結構、気合が入ったセリフだったのでしょう!! あっさり弾かれて、ヘコんでます!!』

『しかし…逸見選手の表示に、一切の変化がありませんねぇ…というか、目がすげぇ冷たい』

『……』

『中村さん?』

『…いや。次で分かる。では!! 逸見選手の攻撃です!!!』

 

 

「……」

 

 

『……』

『……』

 

 

「……」

 

 

『あの…逸見選手?』

『やっぱりか…』

『中村さん?』

『林田さん。すでに何人かは気がついてますよ? いやぁ…怖いですねぇ……』

 

 

「はい! 一時ちゅうだ~ん!」

 

「……チッ」

 

 

『会長?』

 

 

「ちょ~~と、それはずるいんでない?」

 

「……」

 

「エリリンちゃぁん?」

 

「…エリリンって言うな」

 

 

『ずるい? え…えっと、どういう…』

『俺は分かった』

『え? 何が?』

 

『林田。要はな? …攻撃側が3分の時間制限有り…って事は、黙っていれば時間切れで、愛してるなんて、小っ恥ずかしいセリフを言わなくて済む…』

『え? あぁまぁ…』

『そうすれば、毎回毎回、尾形の攻撃を一方的に受ける事ができるんだよ』

『そうすれば? できる?』

『しかも…今回は、攻撃側がテレても負けにならないルール…』

『言い換えれば、彼女からすれば…何度も尾形から、愛してるって言ってもらえる…って事だな』

『え~でも、それってリスクが…』

『ま、自信があったんだろ。それよりも、毎回毎回、自分を照れさせる積りで、あんなセリフを態々考えて、尾形が言ってくれる…って、そこじゃね?』

 

「…思ったより、早く気づかれたわね」

 

『…逸見選手が、すげぇ悔しそうな表情』

『………………ダージリン選手が、すげぇ爪を噛んでる…』

『多分、最初に気づいたのって彼女だろうな…』

 

 

「そんな訳で、この攻撃からは、彼女に関してのみ時間制限は無し…って、事で続行ね!」

 

「続行? …結構、甘いわね。即退場だと思ったけど?」

 

「そだね。退場させないと…周りの子達が納得しないかもしれない…」

 

「はっ。なら、さっさと…」

 

「 で も 」

 

「…なによ」

 

「んん~? だって、エリリンちゃぁん。…隆史ちゃんからの言葉に、組んでいる腕を、力いっぱい握り締めてるよね?」

 

「!!」

 

「我慢してるのバレバレだよねぇ。ずっこい事したし、隆史ちゃんに言われっぱなしで、逃げ得みたいな事させないよぉ?」

 

「……」

 

「ちゃぁんと、同じく恥ずかしい思いしてもらわないとねぇ……私が納得しない」

 

「…………チッ」

 

「はぁぁい! そんな訳で、司会者! 続行ね!!」

 

『え?』

 

「ぞ・つ・こ・う」

 

『……』

『……』

 

『『 ……らーじゃ 』』

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

『はぁぁい!!!! んな訳で、逸見選手からの再度攻撃です!!!!』

『強引にテンション上げていきましょう!!!!』

『時間は無制限!!』

『理由はどうあれ!!2回も尾形選手の攻撃に、あそこまで耐えてきた彼女です!!』

『今度は、どこまで続くでしょうか!? ではッ!! あたっくちゃんす!!』

 

「……チッ。まぁいいわ。負けなければいい事だし」

 

「……」

 

「…さて。隆史?」

 

「はい」

 

『……中村さん』

『はい、林田さん』

『尾形選手の雰囲気が変わりましたね』

『はい。会長の話も、黙って聞いてましたしね』

 

 

「……隆史」

 

「……」

 

 

『おっとぉ!? また膠着状態か!? しかし、今回は時間制限はありません!!』

『逸見選手!! プルプルと震えだしました!!』

 

 

「…た……たかっ……たっ!!」

 

「……」

 

 

『『 …… 』』

 

 

『…中村さん』

『はい、林田さん』

 

 

「あっ……あいっ!! してっ! あい!?」

 

「……」

 

 

『人間…仮面が外れるとモロいものですね…もう、結果が分かりました』

『そうですね』

『噛ませですねぇ~。典型的な』

『ある意味、彼女らしいといえるでしょう』

『はぁい、ちゃんと言ってくださぁい』

 

 

「うっっさいわね!!」

 

「……」

 

「あっ…あいっ……ぐっっ! 愛しちてるわよ!!!」

 

「……」

 

「ぁぁあああ!?」

 

 

『噛んだぁぁ!! ここ一番! 今までのやり取りは、なんだったんでしょう!?』

『言えば良いってもんでは、ありませんよね!!』

『いやぁぁ!! ここに来て、顔が真っ赤です!! 2重の理由で顔がすげぇ色をしてます!!』

『いいですねぇ!! 普段ツンツンしまくっている、彼女のこの恥辱にまみれた、あの表情!!!』

『周りの隊長達も、すっごいニヤニヤしてますね!!』

 

 

「うっ…うるさいわね!! ちゃんと言ったんだから、いいじゃない!!」

 

 

『噛みましたけどね』

『噛みましたね』

 

 

「ぶっっ殺すわよ!!??」

 

 

『いやぁ…あの表情で言われても、アレはもはや、一種のご褒美ですね』

『今回の報酬がアレだと思うと、納得できますね』

 

 

「こ…この変態共…」

 

 

『では! 尾形選手の反応は!?』

 

 

「………………そうか」

 

「 」

 

 

『はぁぁい!! 来ました!! 言い捨てる様な一言!!』

『先程とは打って変わり、完全に冷静さを取り戻した様です!! 怒ってはいなさそうですが…』

『ありゃ、完全に躊躇がなくなった顔ですね!!』

『尾形選手の防衛成功!! では、後は止めですね!!』

『もはや死体蹴りにしか見えませんが、尾形選手の攻撃です!!!』

 

 

「く…大丈夫よ。耐えればいいだけ……今までも耐えたんですもの…大丈夫」

 

 

『振りですかね?』

『振りですね』

 

 

「だから、うるさいのよ!!」

 

 

「 エ リ カ 」

 

 

「ヒッ!?」

 

 

『愛を囁かれるのに、悲鳴ですね』

『愛を囁かれるのに、怯えてますね』

『完全に尻込みしてますねぇ』

 

 

「…な…なによ」

 

 

 

「 昔 か ら 」

 

「 ──―っ!!?? 」

 

 

 

「 愛 し て る 」

 

 

 

『はい! 尾形選手!! 今度は躊躇なく言ったァ!!!』

『逸見選手、机に頭を打ち付けました!!! 隊長と一緒です!!! 本当に何だったんでしょう!? 先程までの工程は!!!』

『逸見選手、チョロイ!!』

『メッキが剥がれたら、即堕ち!!! 期待を裏切りません!!』

『ゴッツンゴッツン、音がしますねぇ!!!』

 

 

「ぁ……か……」

 

 

『はぁい!!! 隊長様と同じですね!! 虫の息です!!!』

『その隊長さんは、すっげぇ深い溜息!! 何か呟きましたね!?』

『エグイ? 何が!? まぁどうでもいいです!!』

 

 

「む……か……」

 

 

『さぁぁて!!! 例の衣裳決めの時もそうでしたが、変に逸見選手には甘い尾形選手!!』

『罰ゲームですよ!? ゲーム!!』

『林田さん、誰の真似でしょう!? リボンが本体の人でしょうか!? ぶっちゃけキモかったですが、確かにそうです!! 罰ゲーム!!』

『さぁ! 尾形選手、発表しやがれ!! ここで生温いと、ダー様がブチギレちゃうぞ!?』

 

 

「……」

 

 

『…はぁ…疲れた。急にテンション上げるモノじゃないな…』

『急にテンション下げるな、中村』

『んお? 尾形、やっぱり躊躇してるか?』

『黙っちゃったな』

 

 

「な…なによ!? 好きな格好、させればいいでしょ!? 何!? 脱げばいいの!? 脱ぎゃいいんでしょ!?」

 

「…本来なら、罰ゲームでやらせる事じゃないのだけどな」

 

「何!? バニーガールの事!? メイド!?」

 

「少々、危険だけど…」

 

「危険!? はっ! アンタの事ですからぁ!? 無駄に露出の高い、ナースとか水着とかかしらねぇ!?」

 

 

 ……

 

 

「…………チガイマス」

 

 

『あ、一瞬迷ったな』

『目を逸らしたしな』

『しかし、逸見選手…もうダメだな』

『完全に泣いちゃったな。うん』

『……』

『……』

『…下手な事言うと、尾形がキレそうだから、やめておこう』

『そうだな』

 

 

 

「…エリカ」

 

「だから、なによ!!」

 

「エキシビジョンが、始まる前に…一度」

 

「うぅぅ!? 」

 

 

 

 

「みほと、デートしてこい」

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

『な…なんでしょう? 中村さん』

『…これは、流石に俺にも分からんぞ?』

『なんで…え? デート? 西住さんと、逸見選手が? え?』

『完全に真顔になってしまいましたね…逸見選手…。腕組んで、そっぽ向いてる…。西住さんは、いつもと違ってオロオロしてねぇし…』

『………』

『ちょっと不貞腐れた顔してるなぁ…珍しい。西住選手は、何故か嬉しそうだし…』

『デート………これは、ひょっとして…アレか?』

『ん? なんだ?』

 

『 百 合 展 開 』

 

『はぁぁぁい!! 続いては、我らが学園の生徒会長!!!』

『聞け』

 

「はいさぁ!!」

 

『細いツイテを武器にして、やって来ました、やって来た! 今、着席のと……き……って、小山先輩?』

『いやな? だから、聞いて?』

 

「会長、今…事務の方からですが…」

 

「んあ? なに?」

 

「会長にお客様がみえられているらしくて、至急来て欲しいそうです。ですから、会長の番は中止です」

 

「お客様? 今!? …後、小山。最後…」

 

「他の学校の方が、いらっしゃっている様で…ですから、会長の番は取りやめです」

 

「いや…ちょっと待ってもら…」

 

「ダメです。至急と言ったじゃないですか。行って来て下さい。…ですから、会長の番は、未定です」

 

「いやいや! 私じゃなくても…あぁ! んじゃ、小山。私の代わりに行ってき「  嫌です  」」

 

 

『『 …… 』』

 

 

「桃ちゃん」

 

「!?」

 

「…これは、お仕事なの。会長、連れて行って。なにか、イベントの関係らしくて…」

 

「いや…あの……」

 

 

「  ハ ヤ ク  」

 

 

「…ハイ」

 

「か~しま!? 小山!?」

 

「ソウソウ…持ち上げれば、運べるから…」

 

「 」

 

「会長…諦めてください…分かりますよね」

 

「こ…小山が裏切ったぁ…」

 

「人聞きの悪い事を言わないでください! お仕事です!!」

 

「んなら、小山も!「 有休使います 」」

 

「んなもん、無いよ!!」

 

「使います」

 

「だから、無いよ!! そもそも、学校!?」

 

「マジノ女学院の方です。どうやら、隊長自らお出で下さっていますので、学校の代表が直接会わないのは失礼ですよ?」

 

「!」

 

 

『…林田さん』

『えぇ、中村さん』

『一瞬、尾形の肩が跳ね上がったな…』

『…あいつ、どんだけ外に知り合い居るんだよ』

 

 

「…マジノ女学院? 大会前に、練習試合した?」

 

「そうです。しかも…」

 

「しかも?」

 

「…真っ先に、隆史君の名前を出したそうです」

 

 

 

《 ……………… 》

 

 

 

『はい、かくてーい』

『死刑もかくてーい』

 

「分かった。ちょっと行ってくる…」

 

「はいっ♪ お仕事お願いします!」

 

「行ってくるね……たかぁしちゃぁん?」

 

「……イッテラッサイ」

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

「まだ、いましたね…ダージリン様」

「他校にまで来て、そこの代表ではなくて、個人名を先に出した……何の御用か知りませんが…ま。そういう事でしょう」

「…おっきい人でしょうか…」

「……ソコ?」

「そういえば、先程からアッサム様が大人しい…」

 

 

「姐さん。マジノ女学院って…」

「大会の一回戦の対戦相手だったな」

「……」

「カルパッチョ?」

「…隊長……確か…」

「……」

「…アンチョビ姐さん」

「うん、最近カルパッチョが、遠い国の人に思えてきた…」

 

 

「み…みほ」

「…なに? 隆史君」

「会長が、大会前の練習試合って言ってたけど…俺…ソレ知らない…」

「……」

「はぁ…。マジノ女学院の方々とね? 全国大会が始まる前に、一度練習試合をしてるの。…ダージリンさん達の負けてた後にね」

「いや、本当に知らないや…何時? 」

 

「…隆史君は、例の如く!!! お母さんの所に、行っちゃってた時だよ!!」

 

「 」

 

 

『中村さん。そろそろ避難しておきましょうか?』

『良いですねぇ、林田さん。判断が素晴らしく早いです』

 

 

「…そういば、隆史が一度、大会前に実家に来ていたな。随分とお母様が嬉しそうだったが…」

「何時の…え……?」

「…隆史君の青森での事、夜通し聞いた日、覚えてる? …次の日から、開会式まで2.3日出かけちゃったよね?」

「青森…。あぁ!! みぽりんが、女豹のポ 痛ぁぁぁ!!!」

「もうっ!」

 

『…ここまでは、ただイチャついているだけにしか、見えませんねぇ』

『大丈夫ですよ、林田さん。尾形選手は、俺らの期待を裏切りません!!』

 

 

「えっとね? 隆史君。西住さんと会長と話して、内緒にしようって事になっていたの」

「ゆ…柚子先輩? …なんでまた」

 

『はぁぁい!! ここで、各学校から一斉の溜息!!』

『全員が全員、納得の顔です!!』

 

「な…なに!?」

 

 

「…タラシ様だからじゃないですか?」

「オペ子さん!?」

 

「タラシさんでしょう?」

「……」ダー

 

「タラシだしね!!」

「……」ケーネエサン

 

「タラーシャ…やっぱり、しっくり来ない…」

「無理に合わせるな、カチューシャ…」

 

「タラシさんですしね」

「……」ノンナサーン

 

「タラシ君だし…」

「オイ…カノジョ…」

 

「タラシらしいしな!!!」

「まぽりーん…」

 

 

 

「はぁ…だから、隆史でいいだろうに…」

 

 

「チヨミン!!!!!」

 

 

「わっ! わっ!! 席を立つな!! 髪で遊ぶな!!!」

 

 

《 …… 》

 

 

「卑怯者!? だから、なんでぇ!?」

 

 

『中村…大人しいと思ったら…。いつの間にか、ケイ姐さんが帰還してますね』

『……』

 

 

「ベコ殿!!」

「西さん!?」

「僭越ながら!! ベコ殿は、タラシ殿なんですか!?」

「あの…西さん、無理に空気読まなくていいです…意味わからず言ってるでしょ!?」

 

「……で? なんで、隆史君は…エクレールさんを知っているの?」

 

「ぐっ…か…彼女は、優花里と同じで…」

 

「優花里さんと?」

 

「ネット上だけの知り合いだったんだけど…決勝戦会場で、探索中に初めて顔を合わせたんだ」

 

「ネット上…決勝戦会場…」

 

「彼女とは、どうにも馬が合ってね…簡単に言うと…」

 

「言うと?」

 

「彼女とは…胃痛仲間です。すごいぞ彼女! 胃薬常備してるし、胃薬のみだけど、知識量が半端じゃない!!!」

 

「胃痛って…なんで、そこは嬉しそうなの?」

 

「あと…」

 

「まだ何かあるの?」

 

 

「彼女は…………しほさんの大ファン」

 

 

《 ………… 》

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

『はい! そんな訳で、会長は棄権となりました!!』

『長いインターバルでしたねッ!!』

『…やめよう…もう、考えるの…』

『そうだな…うん。尾形、お前いい加減にしろ』

 

『はぁぁい!! 気を取り直して行ってみましょう!!!』

 

『よし!! ではっ!! 次の挑戦者!!!』

 

『対プラウダ用、決戦兵器!! 大洗学園きっての核弾頭!!』

『我ら副会長!! 小山選手の入場です!!!』

 

 

「やっと私の番だね!」

 

「げ…元気いいっすね…」

 

「あ、そういえば、隆史君にもお客様来てるよ?」

 

「は? 俺に? …あのハゲかな……んじゃ、ちょっと行ってきますね」

 

「ん? いいよ別に。待ってもらってるから」

 

「…え」

 

 

 

「 待 っ て も ら っ て る か ら 」

 

 

 

《 …… 》

 

「わ…分かりました」

 

 

『うむ! 学習してるな、尾形!!』

『…小山先輩に逆らうのは、やめたみたいだ…』

『では! これがラストですけねっ!?』

『そうですね!! 余計な事がなければ、これで終わりです!!』

『はぁい!! では、小山先輩のお願い!!』

 

 

 

『 お 姉 ち ゃ ん と 呼 ん で 』

 

 

 

「 」

 

『……』

 

《……》

 

 

 

『 そ し て 甘 え て 』

 

 

 

「くれてもいいのよ? 遠慮しないで!!」

 

「………あの…柚子先輩?」

 

「……」

 

『2段構え…。小山先輩…意味が分かりません…』

『良くわからないのですが、試合直前で、お願い事を変更してきました…ケイ選手が、涼しい顔をしています!! 目だけ笑ってねぇ!!!』

『いや…甘えるって…どうやって…。まぁ? 小山先輩なら、余裕でできそうだけどな! 赤ちゃんプ『 だから、ブレーキ。林田 』

 

「ぬ……ん?」

 

「うふふ…」

 

『尾形選手、小山先輩のお願いが、マジで意味が分からない…欲が有るのか無いのか…そんな顔です』

『欲だらけだと、俺は察する』

『俺からすれば、羨ましいだけだけどな!!』

『はぁぁい!! では、試合開始ですぅ!! 小山選手のターン!!』

 

 

「んん~。やっぱり、いざ言うとなると、ちょっと恥ずかしいよね?」

 

「俺は、散々言わされてきましたが…」

 

「えっと…隆史君は、「無になる」って、言っていたっけ?」

 

「ソウデスネ。大体…言った後で、すげぇ嫌な顔されると思って、言ってました!!」

 

「…それはもはや、鈍感とかの問題じゃ無いと思うよ」

 

 

『小山先輩…会話は良いのですが…時間…』

 

 

「あっ! ごめんなさい! では…」

 

「……」

 

「…ん? いけないっ! 靴紐解けてる…ちょっと先に結んでおくね」

 

「え…あぁ、は……いっ!?」

 

 

《 ……………… 》

 

 

『はい、靴紐が解けていましたので、彼女は結ぶ為に、座ったまま前屈みになりましたねぇ』

『はい、尾形選手、顔ごと背けましたねぇ…真っ赤になってますが、これは無効です。裏山死ね』

『彼女が、こういう手を使うとは思いもしませんでした』

『はい、真正面にいるのに、普通に前に屈みましたね。えぇ顔は背けましたが、まぁ見るでしょう。横目ですげぇ見てますねぇ。男らしくない!! 男なら男らしくガン見しろ!!』

『ヤケクソですねぇ、林田さん』

 

 

《 ………… 》

 

 

『その体制から、すっごい、上目使いで尾形選手を見ています』

『あれは、破壊力ありそうですね裏山死ね』

『しかし、ここで問題発生!!』

『はい!! そうですね!!』

『靴紐と仰言いましたね!!』

『はい! 靴紐です!!』

 

『しかし、私達の学校指定の靴は、ローファーです!!』

 

 

「あ、そうだったね。うっかり」

 

 

《 ………… 》

 

 

『 あ ざ と い ! 』

 

『ふっるい作戦ですが、男は基本的に馬鹿です!! すっごい有効な手段!!』

『えへへ~と、笑っている小山先輩が、カワイイ!! 揺れる!! が、これも愛してるゲームに関係がないので無効!!!』

 

 

「分かってやってる分…タチが悪いです…不潔デス」

 

 

『…オレンジペコ選手。急に黒くなりましたねぇ…疲れないのでしょうか?』

『しかし…小山先輩、こんな事する人だったかなぁ…』

 

 

「あ、時間が無いかぁ…急がないとね!」

 

「あ……はい…」

 

「では……はぁ……ふぅ…」

 

 

『小山選手、精神統一の為でしょうか!? 深呼吸を繰り返しております!! がぁ!!!』

『…あの人、ただの深呼吸が、なんであそこまでエロいの?』

『深呼吸する度に、揺れる…』

 

 

 

「 隆史君 」

 

「…あ、はい」

 

「……」

 

「!!??」

 

 

『髪を解いた!!??』

『うわぁぁ…』

 

 

 

「私は、貴方を…す……違った」

 

「!!??」

 

 

 

「私は、貴方を………愛してます♪」

 

 

 

『はにかんで言ったぁぁ!!! 小首傾げて言ったぁぁ!!』

『この人、どんどん、あざとい手段!! どこで覚えたのか!! 素直にカワイイ!! 年上だけど、可愛い!!』

『髪を解く辺り、特にそう思いました!!』

『あれは、一種の変身です!!』

 

 

「……っっ!!!」

 

 

『尾形選手が、ダウーン!!』

『机に肘をつき、頭を抑えたぁぁ!! 真っ赤です!! きめぇぇぇ!!』

『これは有効打撃!! こいつ、負ける時はアッサリ負けやがって!!』

 

 

「あら…勝っちゃった…」

 

 

『何故か残念そう! 小山選手!!』

『尾形選手のターンが、ないからでしょうか!?』

 

 

「ぐっ…ず…ずるい…」

 

 

『髪を解く所でしょうが、ずるい? どの口が、言うのでしょうか!?』

『はぁぁい!! 勝負ありです!!』

 

『んな訳でっ!! 小山選手の勝利!!!』

 

 

「まぁいいか…。じゃあ隆史君」

 

「」ビクッ!

 

「みんなの前じゃ、アレでしょうし…今度、約束通り…後日でいいから、しっかりと…呼んでね?」

 

「………………ハイ」

 

「甘えてねぇ?」

 

「……いや、それは……」

 

「アマエテネ?」

 

「……ハイ」

 

 

『……なぁ中村』

『分かってる…。尾形を気遣うのと同時に、二人で会う約束を取り付けたな…』

『…女って変わるんだな』

『打算的な女になったみたいな言い方、してやるな…怖いけど』

 

「ウフフ…」

 

『ケイ選手が笑ってる…』

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

『はいっ!! 愛してるゲーム! 全ての参加者が終了しました!』

『意外にも勝者は二人!! お姉ちゃんズですね!! ケイさんが、非常に嬉しそうです!!!』

『では尾形選手! 感想をどうぞ!!』

 

 

「オマエラ……オボエトケヨ」

 

 

『はぁぁい!! お楽しみ頂けたようです!!』

『満身創痍ですね!! ざまぁみろ!!』

 

『では、西住 みほ選手へのインタビューです!! どうでしたか、このゲーム!!!』

 

 

《 ……………… 》

 

 

『すげぇな、林田…よく彼女に聞けるな…。他の選手がドン引きしてるぞ…。お前、そんなんだから……』

 

『いや、敢えて聞いてやれよ。ここまで自分の彼氏が、他の女にポンポン「愛してる」なんて言ってるの、見させられたんだぞ? ゲームだって割り切らせてやらねぇと、可哀想だろ』

 

『……ハ?』

 

『怒るにしろなんにしろ、ケイ選手の時もそうだけど…区切りをつけてやらねぇと、何時までも引きずるぞ?』

 

 

《 !? 》

 

 

『なぁ、林田?』

『なによ』

 

『 お前は、尾形と同類だ 』

 

『失礼な奴だなっ!! お前は!!』

『お前、普段からそのキャラでいろよ。多分、彼女くらい作れるぞ?』

『なんでっ!?』

『はぁ…まったく…では、愛してるゲームこれにて終了だな。尾形、お前いつまで席に座って…る……』

『…………』

『尾形…いや、尾形選手!! 顔が、真っ青です』

 

 

 

「   」

 

 

 

「随分と、面白い事をしていらっしゃいましたね? はしたないです、ずりぃいです!!」

「ずりぃいって…五十鈴殿…。色々とツッコミは、しませんよ!?」

 

「あの…いつからそこに…いらっしゃったのでしょう? お二人共…」

 

 

「アマエテネ? からですね」

「アマエテネ? からです!」

 

「 」

 

「師匠!!!」

「あら、オレンジペコさん。師匠はやめて下さいね?」

「ペコ!? 師匠!?」

「だから、私はツッコミませんよ?」

 

「…なんでいらっしゃるのでしょう、お二人様」

 

「あ、タラシ殿! クリスちゃん、連れてきちゃダメでしょう!? …尻尾振ってますけど」

 

「あの…聞いて?」

 

「私は会長に頼まれていた事がありましたし…五十鈴殿は、午前中に用事は済みましたけど、お客様が見えるという事で、学校へ残っていただけですよ?」

 

「……」

 

「……華さんの顔見て、誰か分かった…あの、親父殿か…」

 

「なんか…まぁ、現状のタラシ殿のお家……って事で、お分かりになりますよね? 親なら、当然かと思いますが…」

 

「そ…それで、渋々残っていた…と…」

 

「…また、余計な事をされては、堪りませんからね」

 

「華さん…」

 

「で。向かっている最中にコレですよ。外まで聞こえますよ?」

 

「  」

 

 

『ここで、我らがクラスメートの秋山選手!! そして、駆逐戦艦・五十鈴選手が乱入!!』

『林田!? 急になんだ!?』

『んな、家庭の事情はどうでもよろしい!! 新たな参加者が現れましたっ! ていうか、参加しましょう!?』

 

 

「あら、いいのですか?」

 

 

『はぁい!! もうとことん、やりましょう!! 尾形は色々と、痛い目を見ろ!!!』

『…いや、いいけど……。まぁ…うん……よし!! では、お二人共、こちらへ一度来てください! ルールを説明します!!』

 

「わぁい!」

「わぁい! じゃ、ないですよ…。五十鈴殿、お父上殿がお見えになっているって…」

 

「私の父は、遠い国で他界しております」

 

「…ハナサン」

「いえ…まぁ、私は構いませんが…。そのお父上殿が、会長とお話になるんですよね?」

 

「……」

 

「あ・の…会長と…。今、他の方とお話されているみたいですが…いいんですか? 会長とお会いする前に、釘を刺しておかなくて…」

 

「…………」

 

 

『…五十鈴さんの目がヤベェ』

『尾形なんて、完全に外見てるなぁ…哀愁が漂ってくる程…』

 

 

「…分かりました。非常に口惜しいですが…あぁ…本当にあの元・父。邪魔しかしない…」

 

「ワー…」

 

「では、即アレの……を、止めてきます」

 

「何をですか!?」

 

「では、優花里さん。後で感想、お聞かせて下さいね?」

 

「…え。えぇ!? 私!? 参加しませんよ!! こんなゲー…「みほさん」」

 

「はい!?」

 

「沙織さん、食材買いに戻りましたけど、後でご相談があるそうです」

 

「食材…あぁ! はい、分かりました」

 

「ではぁ……」

 

「五十鈴殿ぉ!?」

 

『秋山さんに…有無を言わさず出て行ったな…』

『…相変わらず、嵐の様なお人だ』

『そういや残り二人がいないな』

『そういえば…あぁ、はい。では、秋山さん。おこしやすぅ』

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

『はぁぁい!! そんな訳で、番外編!!!』

『我らがクラスメ──トォ!! …秋山さんです』

『急にテンション下げるな』

『いや…やりずれぇ…』

『散々、渋っていた割に、なんでもお願いって所で、参加を即決めたな』

 

 

「…タラシ殿。こんなゲームして…何考えてるんですか。まぁどうせ、会長の仕業でしょうが」

 

「察して頂いて、ありがとうございます…」

 

 

『えっと…彼女の、尾形選手へのお願いは…』

『書いてないな…。自分で言うのでしょうね!!』

 

 

「そういや、沙織さんとマコニ…麻子は?」

 

「武部殿達なら、クリスちゃんのご飯開発の為に、食材を買いに行きましたよ?」

 

「あぁ…みほ言い出した奴か」

 

「ドックフードだけじゃ、味気ないですからね!」

 

「なる程、それで後で、みほと相談か…ありがたいな」

 

 

『あの…そろそろ…』

『今は、日常会話は、やめてください』

『お願いを発表して、試合開始してください』

 

「あ、はい。というか…中村クンと林田クンは…夏休みに一体、何をしているんですか…」

 

『…クラスメートとしての発言は、極力控えてください!!』

『折れそうです!! 心が折れそうになりますから!!』

 

「はぁ…まぁ、いいですけど…三人共、女子達の間で、良い噂を聞きませんから、変な事しないで下さいよ?」

 

「えっ!? 俺も!?」

 

「悲しくなりますが、私…仲の良い方、余りいませんが…。それでも、女子同士の会話と言うか噂って、どうしても耳に入ってくるんです。この前の登校日の日にも、散々聞きましたし…」

 

 

『『「 ………… 」』』

 

 

「な…何を?」

 

『馬鹿、尾形! 女子同士の噂を聞くな!! 立ち直れなくなるぞ!?』

『開始!!! 試合を開始して下さい!!!』

 

「取り敢えず、タラシ殿は…どうも例の島田流との事が、一般に流れたらしく………あのガタイで、ロリコン」

 

「  」

 

「中村クンは…なんていうか……戦車道決勝戦会場で、女性を侍らせていたとか…」

 

『してない!! マジでして…あああぁぁ!!! 大洗のテントでの事かっ!? ここにいる人達の事じゃないか!! 尾形の関係者だろ!? 意味が違う!!』

 

「林田クンは………………。はい! 強く生きてください!!」

 

『何!? なんなの!?』

 

 

 

『『「 ………… 」』』

 

 

「一般の方は、詳細なんて分かりませんからねぇ…えっと。では、いいですか?」

 

 

『はい…結構でございます…』

『お願いを、どうぞ…』

 

「はい! …それでは…って、隆史殿! 聞いていますか!?」

 

「  っは!!」

 

「ちゃんと聞いてくださいよ!? 私が勝ったら…ですねぇ…」

 

「意識が飛んでた…なに?」

 

 

 

「 消して下さい 」

 

 

 

「…はい?」

 

「 消して下さい! 」

 

「…えっと…何を?」

 

「態々、遠まわしに言っているのですけど? はっきり言いますか? この方達の前で」

 

「……」

 

「隆史殿のレート倍率は、こちらのお願いに対しての倍率。なら、負けたとしても、大した事ないでしょう! ダメ元です!!」

 

 

『…お前、クラスメートに何したんだよ』

『どうせ、如何わし…………なんだ!? 尾形が一瞬で臨戦態勢に入った!?』

『何の事か分かったんだろ』

 

 

「なっ!? なんで、そんなに気合入れてるんですか!!」

 

「優花里…。君は、自分を過小評価しすぎだ」

 

「なっ!? えっ!?」

 

 

 

「………本気で行く」

 

 

 

『尾形選手!! 目がマジです!!』

『これは楽しみになってきましたぁ!!』

『ではっ!!! 秋山さんのターン!!』

 

「……」

 

「……」

 

「……あ…」

 

「……」

 

「あい……あ……あああああいいいっ!!??」

 

「……」

 

「なっ!? えっ!! はず…これは、恥ずかしいです!! ただ言うだけだと思ったのに!!」

 

「……」

 

「まぅぅぅ……まっすぐ見ないでください!! あっち向いて!!」

 

 

『尾形選手、マジで容赦しないようです!! 先程も使った手を駆使しています!!』

『しかし、秋山選手!! 考えが足りなさすぎです!! 自分が言うというリスクがスッポリ抜けていた模様!!』

 

 

「ふっ…ふー!!! 私も覚悟を決めたはず…よ……よし!!」

 

「……」ジー

 

「隆史殿!!」

 

「……ハイ」

 

 

『おぉ!! 行くか!? 思いの他、早く動いたっ!!』

『なんでしょう、中村さん!! クラスメートが、真っ赤になって涙目です!! なに、この背徳感!!』

『それは、言っちゃダメでしょう!! 私も我慢していたのに!!!』

 

 

「愛してっ!!」

 

「……」

 

「まっ!!」

 

「……」

 

「す……ぅ……」

 

「……」

 

「……ぅ……ぅうううあぁうあうあ!!」

 

「……」

 

「ダメですっ!! やっぱり、恥ずかしいです!! 皆さん、よくコレ言えましたね!!」

 

「……」

 

「なんでまだ、見てるんですかぁ!?」

 

 

『はぁぁい、秋山選手。頭を両手で掴み、振り回しておりますカワユス』

『完全に、墓穴を掘った結果になりましたねぇカワユス』

『はぁぁい、彼女がここに来た意味、あったのでしょうか?』

『ただ、犠牲者が増えただけに思えますねぇ』

『罰ゲーム…あいつ何にする気だろう…』

『お願いの意味が、俺達には分かりかねるから、予想もつかねぇな』

『あ、忘れてた。はいはい、尾形選手の攻撃です』

 

 

「なっ!! なんで、終わった気になってるんですか!!」

 

 

『…フッ』

『…フッ』

《 ……ハァ 》

 

「なんですか、その同情したような目は!! っていうか、皆さんもぉ!?」

 

「…優花里」

 

「ひゃい!?」

 

 

 

「 優花里 」

 

 

「 」

 

《 !!?? 》

 

 

 

『…尾形選手。本気で秋山選手を潰しにかかってる…』

『なんだ、あの声…』

 

 

「な…なんで呼び直し…それより、その声やめて下さい!!」

 

「 俺は、秋山 優花里を… 」

 

「 」

 

「 愛してます 」

 

 

「   」

 

 

 

 

『はぁい、勝負ありぃ。つか…あれ、秋山さん大丈夫か?』

『信じられない程、赤い顔してるけど…』

 

 

「はわっ! あぁわぁぁぁぁ!!!」

 

 

『あーあ…髪の毛、ガシガシしちゃってまぁ…』

『まぁ分かってはいたけど……はいっ!! では、尾形選手の勝利です!!』

『では、時間もないので、罰ゲームをどうぞ!!!』

 

 

「そうだなぁ…そんじゃ、優花里」

 

「ひゃぁぁぁぁああ!!!」

 

「あの…優花里さん?」

 

「ずるいです、隆史殿!!」

 

「…え…何が?」

 

「前回もそうでしたが、なんで私の時だけ、その声出すんですか!!?? 他の方の時、出してませんよね!?」

 

「 優花里 」

 

「!!??」

 

「これ?」

 

「そ…そうです!!」

 

「あぁ、これは優花里専用。だから他の人には使ってないな」

 

「 はい!? 」

 

《 !!?? 》

 

「ちなみに、みほ専用も有るな。笑われそうだから、使わないけど」

 

「隆史君!! つ…使って!!! 今度、使って!!」

 

「え…。あぁ良いけど…」

 

「やったぁ!!」

 

 

『……アイツ…馬鹿だろ。だから、なんでそういう事を全員の前で言うんだよ…』

『嫉妬という名の怨念が…拡がってゆく…。特に黒森峰がヤベェ…』

 

 

「んじゃ、優花里」

 

「んですかぁ? もう…」

 

「今度は、Xね?」

 

「…………は?」

 

「前回が、びぃくとりぃだったから、今度は、えっっっくすね? サテライトだよ?」

 

「な…え……」

 

「ええっとねぇ…こういうの」

 

『尾形選手…携帯を取り出して、秋山選手に見せ「  っっった、紐じゃないですかぁ!!!!!     」』

 

『『 …… 』』

 

「ちがいますぅ。れっきとした…「ここにいる、全員に言いますよ!?」」

 

「あ…ダメだ……被害者が増えますぅぅぅ…」

 

 

ダージリンは、約束守るぞ?

 

 

「…だ……から……その声ぇぇ…って、えぇ!? ダージリン殿!!??」

 

 

 

 

「はい、けって──い」

 

 

 

「なぁぁぁ!!??」

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

『はい、ではプチ女子会で~す。私達は、少し休憩デース…』

『はぁぁぁ…マジで疲れた…』

 

 

「ダージリン殿!! というか、皆さん!! あのタラシ殿に、何を言われたんですか!?」

「え…何を…って、水着を着て欲しいと言われましたが?」

 

「  」

 

「私は…というか、私達はバニーガール…らしいな」

「私も…」

 

「西住殿も!?」

 

「そうですわね。確かに水着と言われましたが、少し大胆な……まぁ、頑張ったのでしょう? 私にビキニ水着を指定してきました」

 

「 ビ キ ニ !!?? 」

 

「何を驚いて…。少々露出が有りますが…まぁいいでしょう。頑張りますわ」

「私はメイドです!! …あれ? アッサム様がいない…」

 

「ふむ…ダージリンもそうだが…まぁ、隆史の事だ。本気で着させる様な事は、しないだろう」

「ふふ…すぐにドキマギしますからね。そもそも、水着は兎も角、バニーガールなんて衣裳…簡単に用意できる物では無いでしょうし…」

「そうだな。私はカードの撮影の時と言われたが…まぁ、場所も限られるだろうし…」

 

 

 

「 甘いです!!! 」

 

 

 

「やると言ったら、やりますよ、あの男!!!」

「優花里さん!?」

「どこに依頼するか、分かりませんが!! 衣裳! 場所! 機材!! 全て揃えて、万全の態勢で、やりやがりますよ!!??」

「なんか、格好良さげに言ってるけど…ロクな事じゃないよね…」

 

 

《 …… 》

 

 

「彼女の西住殿!! よく考えてください!! アレは!! タラシ殿ですよ!?」

 

「 ………… 」

 

「しかも!! それプラス、飲酒なんてされたら、本当に……それにダージリン殿!!!」

「な…何かしら?」

「ビキニ水着と仰言いましたね…。どんな水着か見せてもらいましたか!?」

「いえ…。罰ゲーム決定としか…」

 

「………お可哀想に」

 

「!!??」

 

「 ユ カ リ 」

 

「!!!」

 

「被写体…増やそうか?」

 

「ぐっっっ!!!」

 

 

《 …… 》

 

 

 

 

『え…あ、はい。それは結構ですが…』

『マジですか? あの惨状見て、まだやりますか?』

『…まぁ…いいですが…では、皆さん呼びましょうか』

 

『 はい、皆さん!!! 』

 

 

 

「…っっ! びっくりしましたわ…」

 

「オブ…司会者の方! 突然、大きな声を出さないでくださ…………アッサム様!?」

 

「……」

 

 

『 またまた、乱入者!! 新たな挑戦者です!! 』

『 もう一度、皆さん! 観客席に戻ってください!! 』

『 おぅら、尾形選手。死刑台へ上がれ 』

 

「…オマエラ……」

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

『これが最後!! 本当のラストバトル!!! 時間がない!! もう帰りたい!!!』

『はぁぁぁい!! 最後の元気を振り絞って行きますよぉぉ!!』

 

『もはや、何を着ても、バニガッ!! ウサ耳装備のお嬢様!! アッサム選手!!!』

 

「ふふ…やっと、データが揃いました」

 

「…アッサム様…随分と静かだと思ったら…」

 

「虎視眈々と…」

 

「当たり前です。こういった事は、最初か最後。どちらかの一番が、それこそ一番有利なのです」

 

「では、アッサム。貴女には、勝算があるとでも言うのかしら?」

 

「…今までの対戦相手で、隆史さんの出方は全て把握しました。ダージリン? オレンジペコ? 貴女達もよ?」

 

 

「「…………」」

 

 

「それに勝算? そんなもの…決まってましてよ?」

 

 

 

『では、アッサム選手!! 入場という名の着席をお願いします!!』

 

 

「はい、分かりました…。まず司会者さん」

 

 

『はい? なんでしょうか?』

『後攻にします? また…』

 

 

「いえ…ただの確認です。これで…私で本当に、最後ですね?」

 

 

『はい! もう、次の乱入者は、会長でも認めません!!』

『ただ、切実に思っております!! 帰りたい!! と!!!』

 

 

「…結構。では、始めましょう」

 

 

『では、お願いを発表してください!!』

『…昔の事もあるし…何を言うのだろう?』

 

 

「隆史さん」

 

「…はい」

 

「例のカード衣裳選考時の盗撮…その事を踏まえてお聞きします」

 

「…ぬ?」

 

「西住 みほさん。…交際(仮)を、していらっしゃいますが…どうにも隆史さんは、彼女とプラトニックな関係らしいですわね?」

 

「…………ソウデスネ」

 

『…中村さん。今、交際と言った後ろに、なにか漢字が見えたのですが…』

『そですね林田さん…。彼女もかぁ…堅実にハーレム構築してくなぁ…尾形』

『…もう尾形に嫉妬しねぇ…。ここまで来ると、執念じみてコワイ』

 

 

「では、私のお願いはこうです…隆史さん」

 

「は……はい!!??」

 

 

「 「西住 みほさん」と、()()()を、して下さる? 」

 

 

「なっ!!??」

 

 

《 !!?? 》

 

 

「プラトニック…そう仰言いましたよね? 手を繋ぐ…くらいでしょうか?」

 

「……ソ……ソッスネ…」

 

「手を繋ぐ!! その位でしたら、西住 みほさんも、お許しになって頂けるのでは?」

 

「   」

 

「では……始めましょう?」

 

「     」

 

 

「嘘がお嫌いな… 隆 史 さ ん ?」

 

「       」

 

 

『こ…これは、面白い事になったぁぁ!! 不利です!! 尾形選手!! 明らかに不利!!!』

『はぁぁい!! 尾形選手!! 顔が土気色になりました!!』

『では、アッサム選手の攻撃!!』

 

「では……んんっ!!」

 

「 」

 

「……」

 

「……」

 

「…な…なる程。これは…恥ずかしい…いざ言おうとしても、言葉が出てきませんわね…」

 

「……ふぅっ……」

 

 

『アッサム選手が、躊躇している間に、尾形選手! 調子を整えつつあります!!』

『ある意味で、これは絶対に負けられない戦いです!!』

『アッサム選手…試合開始前に、勝算がどうの言っておりましたが…どうでしょうか!?』

『…スマホを見て、なんかを確認していますね…』

 

 

「まぁ…こうですわね」

 

「………」

 

「隆史さん」

 

「……はい」

 

 

「私は……貴方を…愛して………も……もう一度行きます!!」

 

 

『失敗!!! しかし、まだ言い切ってない!! 無効!!』

『さぁ態勢を整えたアッサム選手…すでに顔が赤い!! このゲーム! 本来のルールなら、殆ど初手で決着がついてましたね…』

『まぁたスマホを操作!! 何かのデータを見ているのでしょうか!?』

『余り意味を成さない行為と思いますが…』

 

 

 

 

「わ…私は……貴方を、愛して……います?」

 

「……ん?」

 

 

『聞いたー!!?? 聞いちゃったぁ!!!』

『完全にミスですね!! アッサム選手のやっちまった感がすっごいです!!』

『誰かさんと同じです!! 別の意味で顔が真紅へ燃え上がっております!! 何あの人!! 年上だけど、かーいー!!』

 

 

「く…無様な…」

 

「……」

 

『しかし、言葉を言い切ってしまった為に、これは有効!』

『尾形選手!! 無傷!!』

『では、続いて尾形選手の攻撃です!!』

 

 

「ふぅっ……」

 

「あ、隆史さん」

 

「え…はい?」

 

「リクエスト良いですか?」

 

「リク……え?」

 

 

『なんか言い出しましたけど…』

『リクエスト? 何をでしょうか?』

 

 

「ダージリンや、オレンジペコの時の様に…名前を言って頂けます? カナラズ」

 

「え…えぇはい。構いませんが…」

 

「では、どうぞ♪」

 

「や…やりづらい…」

 

 

「……」

 

「…………」

 

 

 

「アッサム…さん。いや…」

 

「……」

 

 

「 アッサム 」

 

「!!」

 

 

 

「 お前を…愛してる 」

 

「──!!!」

 

 

『尾形選手!! お前呼ばわり!!』

『大打撃!! アッサム選手、のたうち回りそうです!! いやぁ…ここまで普段冷静な人が、取り乱すかぁ…』

『素直にすげぇと思えるな…尾形』

『我慢しているのでしょう!! 下唇を思いっきり噛んで、耐えてます!! がっ!! すでに顔が真っ赤!!』

 

『これは痛恨!! 勝負アリです!! 尾形選手の……』

 

 

 ピロリンッ♪

 

 

『……』

『……なに、今の電子音』

 

 

「っか!! はぁ──!! はぁ──ー!!!」

 

「あの…大丈夫ですか? アッサムさん…」

 

「た…隆史さんに呼び捨てられるのが、こんなに堪えるなんて…」

 

「あぁ…すいません」

 

「はぁー…はぁ……ダージリン。ずるい…。お前呼び…良かった…」

 

「…ずるいって…」

 

「まぁ、いいですわ。隆史さん、これからは呼び捨てて頂いて結構です。というか、さん付け禁止」

 

「えー…」

 

「お姉さんの言葉は聞きなさい」

 

「…はい」

 

 

『…一瞬、小山先輩が反応したな……』

『何を張り合って…というか、どこで張り合ってんだろ…』

 

 

「まぁ、大きな収穫がありましたし…満足です」

 

「収穫?」

 

「…えぇ…」

 

『…アッサム選手…先程から手元に置いてあるスマホを持ち上げま……分かった…アッサム選手の狙い…なる程…スゲェ』

『は?』

 

「後半の雑音は、編集で消しましょう…。再生っと…」

 

「は?」

 

 

『 アッサム オマエヲ…アイシテル 』

 

 

「  」

 

 

「はい、保存。あぁ…ネットに保存もしておきましょうねぇ」

 

「なぁ!? 消してくだ……優花里さん!? なんで睨むの!?」

 

「アッサム!!!」

「アッサム様!! ずるい!!!」

 

「姦しいわね、二人共? あぁ最初、ダージリンが言っていたわね…勝算だったかしら?」

 

「!?」

 

 

 

「 勝算なんて、あるわけ無いでしょ 」

 

 

「「 ………… 」」

 

 

「私が最後。えぇ最後よ? 誰も真似なんて出来ないでしょう?」

 

「アッサムゥゥ…」

「アッサム様…だから最後に…」

 

「全てはデータから導き出した作戦…無理に勝たなくとも、私は良かったのよ。ただ、真似されるのは癪ですからねぇ…」

 

「「 くぅっ!! 」」

 

 

『…全選手が、打ちひしがれてるな…でも、罰ゲームをするの前提の作戦だろ、アレ』

『…そうだな。だからこそだろ』

『は?』

『彼女のお願い…思い出してみろ…』

『………………あっ』

 

 

『な? 女って怖いだろ?』

 

 

「さっ。罰ゲームですわね? どうします? 隆史さん」

 

「 」

 

「ちゃぁぁんと、私は従います…よ?」

 

 

『彼女が初手で、勝ったとして…プラトニックしろ、そうでないにしろ…彼女には…』

『 』

『負けたら、負けたで…西住さんとの進行状況が周りにバレる。本当にプラトニックな関係ならば、そんな大きな罰ゲームなんて言われないと踏んだのだろうよ…』

 

『   』

 

『あぁ…西住さんが、すげぇ赤くなってる…』

 

 

 

「さっ! どうしますぅ? 隆史さん?」

 

「…………」

 

「バニー。着ます? それとも…」

 

「分かりました。んじゃ罰ゲーム」

 

「あら、結構お早い決断」

 

 

『はい、その罰ゲームの比重で、現彼じ……あ、すいません!! マジですいません!!! ずぅぅと、彼女の!! 西住さんとの進行具合が判明しますね!!!!』

『……』

『さぁ尾形!!! 吐け!!!!』

『簡潔に言ったなぁ…』

 

 

「アッサムさん」

 

「   ハ?   」

 

「ア…アッサム…」

 

「はい?♪」

 

 

『……』

『…あぁ、いい。続けろ尾形。ちょっとお前に同情し始めてるから…』

 

 

「はぁ……うん! アッサム!!」

 

「はい?」

 

「…過去の事…教えてくれ」

 

「…はい?」

 

「記憶が飛んだ……北海道での合同合宿…。その事を…というか、俺って何したんですか!?」

 

「…………チッ。はい。 わ か り ま し た ぁ」

 

 

『尾形選手!! うまく誤魔化したぁぁ!!』

『なる程!! これは、レートが分かり辛い!!! アッサム選手! 舌打ち!!』

 

 

「ま、それならば、二人きりの方がよろしいですわね」

 

「…え」

 

「人前で話す事では、ございません」

 

「   」

 

《 ………… 》

 

 

『『 …… 』』

 

 

『は…はぁぁぁぁい!!』

『これにて、全過程が終了しました!!! というか、終わらせて!!!』

 

 

「私は、この後でも構いませんが…ただ、二人きりの状況を作れるか…」

 

「なにしたの!? 俺、一体なにしたの!!??」

 

 

『終わりだって言ってんでしょ!!!』

『全員退室して下さい!! あっ尾形!!』

 

「……?」

 

『お前、客が来てるって言われてただろ!? そっちに行け!!』

 

「え……いや……」

 

『(逃げろっつってんだよ!! 理由が有るんだから行け!!!)』

「(お…おぉぉ!!!)」

 

 

『はぁぁい!! では!!!』

 

 

 

『愛してるゲーム!! これにて終了です!!! おつかれ────ーしたぁ!!!』

『後は各々、ホームで、やってくれ!!! 出ってください!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 地獄だった…。

 

 なんだったんだ、あのゲーム。

 

 先程とは打って変わり…人の気配が無い廊下を、一人で歩く。

 

 結構、来客の人を待たせてしまった…まったく。

 

 しかし、誰だろう…エクレールさんは、会長と面談してたみたいだし…それとは別…。

 戦車道連盟の関係者か? ハゲとは違うと言っていたし…。

 

 …。

 

『 元・お父様!! 余計な事をしないでください!! 』

『 いやいやいや!!! これは、お前の事を思ってだな… 』

『 冗談じゃありません!!! もういいから、ほっといてください!! 何処ぞの女性の所にでも転がりこんでいればよろしいでしょう!? 』

『 だからなっ!? そういった… 』

『 いい加減になさらないと、ちょん切りますよ!? 』

『 何を!!?? 』

 

 

 たまたま通りがかった…だけだと信じたい…。

 来客が来ている部屋の隣…すげぇな…華さん。結構大きな声で…というか、夏休みで良かったね…廊下まで丸聞こえですよ…

 まぁ、親子の問題だ。俺が口を挟む……いや、挟んだ方が言いのだろうな…。

 多分、責任は俺にもあるのだろうし…。

 

 華さんのお母さんは、正直俺は苦手だ。

 ヒステリー気味で、感情的になりすぎる女性は、話しても基本無駄。

 あの親父様の方が、まだ話自体は聞いてくれるだろうよ…。

 

 ……。

 

 筋肉で会話をするの一種のコミュニケーションだ。

 

 華さんに言ったら、怒られたけどな…。

 

 ま、何時までもお客様を待たせるのも失礼だ…。

 先に俺の方を片付けようか…。

 

 3回程、見慣れた木製の扉をノックすると、即座に返事が帰ってきた。

 

「はい、どうぞ」

 

 …と。

 

 さてと…誰だ?

 

 ドアノブを掴み、捻り…開ける…。

 横からはまだ、華さんの元気の良い声が聞こえてくる…。

 来客に聞かれては無いだろうけど、バツが悪いなぁ…。

 

 扉を開け、すぐに入室すると、即座にドアを閉める。

 当たり前だ…響く声を聞かせたくない。

 

 入室したら、来客用のソファーに座っている人物が目に入った。

 そう、知らない人物だったから、特に気になった。

 

 どちら様…でしょうか?

 

「あぁ…すいませんね。お忙しいところ…」

 

 若い男だった。

 20代前半…くらいだろうか?

 

「尾形…隆史君…かな?」

 

 う…。

 

 男性用だろうが、キッツイ匂い。

 この男性自身は、香りと思っていそうだが……臭い。

 つけすぎだ…ホストじゃねぇんだぞ? 高校に来る類の人物に見えない。

 

 軽薄…第一印象はそんな感じ。

 

 見た目…整った顔立ち…手入れしているであろう、眉毛…がちょっと、気持ち悪い。

 まぁイケメンの部類に入るのだろうが…なんだろう。

 

 胡散臭い。

 

 営業マン。

 

 そんな感じの…マネキンの様な笑顔が印象的だった。

 政治家とかに、多数いそうな…。

 目玉を動かすな。全体を見ろ。

 

 

「こんにちは。はい、尾形です!」

 

 

 …警戒度を上げる。

 

 表情に出すな。

 態度に出すな。

 

 ただし…友好的な態度で…。

 

 見た…。

 

 何度も見た。

 

 何度も何度も何度も。

 

 

 以前に腐るほど見た。

 

 

 先ほどの死にたくなる様なゲーム、それを幸せだと感じろ。

 

 思い出せ。

 

 …思い出せ。

 

「どうも! 僕に何か、御用でしょうか?」

 

 

 冷静になれ。

 

 相手は…俺の全体を見ている。

 すでに警戒されている。

 それを感じろ…。

 

 その成金趣味の、やたらと豪華な服装…格好。

 目の奥で、明らかに俺を見下している。

 

「散々お待たせしてしまし、申し訳ありませんでした! えぇと、どちら様でしょうか?」

 

「あぁ! 名乗ってもいなかったね」

 

 白々しい…。

 

 典型的な…詐欺師。

 

 そんな感じだな。

 俺全体を見て、対応を変えようとでも思ったのか…目線でバレバレなんだよ…。

 舐める様に見やがって…。

 

「僕はね? といっても…まぁアレか…」

 

 いきなりだな。

 

 年上だから…といった、態度に変更してきた。

 

 敵対心を見せるな。

 ただの高校生として接しろ。

 馬鹿になれ。

 

「うん! そうだね! 名刺…でも良いけど、ちゃんと名乗ろうか!? 僕はね?」

 

 誰だ?

 そもそも、何でいきなり、ここまで思考が…。

 

 ここまでの警戒心を持った? 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は、西住 渉。…君の大好きな、西住流…その分家の人間だよ」

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

ある意味で、アッサムさんの一人勝ち

次回……過去編

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