転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第10話~転生者の戦車道スタートです!~

「おはよう秋山さん」

 

朝、教室で顔を合わせるクラスメイト兼同じ部活の秋山 優花里さん。

どうも、昨日の晒首事件から様子がおかしい。

帰り際、戦車仲間紹介の件を話そうかと思ったら反応がおかしい。なんかやったか俺。

 

「おおおーおおおおぉぉはぁぁぁあぁ!」

 

斬新な挨拶だ。

その後、逃げるように後ずさって行く。が、今回は逃がさん。どうせ行き先は同じだ。

 

「俺なんかしたか?」

 

手首を掴んで引き止める。何か元から赤かった顔が、更に赤くなる。

 

「ちょいと待て。行き先も同じだから一緒に行けば良いだろ?」

 

「ぁぅぁう。あの・・・」

 

やっと口を聞いてもらえたか。

 

「ぁの・・・尾形君は、特に何もしてないので安心してください。これは私の問題というか、なんというか・・・」

 

「正直苗字で呼ばれるのってあまり、好きじゃないんだ。名前でいいよ。呼び捨ててくれて」

 

「ぃあ!?そんないきなり・・・。ハードルガタカイデス・・・。わかりました!では私の事も名前で結構です」

 

「了解。取り敢えず遅れるから車庫まで行こう。みほ達も誘って」

 

「あ、はい!」

 

「んじゃ行こうか。優花里」

 

ピャッって何か、更に赤くなって座り込んでしまった。大丈夫ですよ~クラスメイトさん達~私何もしてませーん。

ですから不審な目を向けないでくださ~い。中村テメェは後でアイアンクローだ。

 

コレハマズイデス・・・コレハマズイデス・・・ダメージガガガガガ・・・

 

なんとか、あやして連れて行った。

 

 

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「なんだこりゃ」

 

車庫の前に一列に並んだペイントされた戦車達。真っピンクの車両やら、グラサンのロリコンが乗っていそうな車両やら・・・チンドン屋見たいな車両とか。

何故旗をつけた。バレー部さすがだ。わかりやすい。

 

「ブハ!ハハハハハハハ!なんじゃこりゃ!!なぁみほ!」

 

「戦車をこんな風にしちゃうなんて」フフフフ

 

「はー・・。笑った。変形合体とかしそうだよな~。ありゃⅢ号は胴体だな。ウン」

 

「ブフ!」

 

「パンツァァァァア!フォォォォー!!で合体だな。絶対」

 

「フ・・・グ・・タ・・隆史クン・・やめて・・・」

 

ツボに入ったようだ。よかった危険は回避した。

 

 

 

 

 

昨日の件で、すっげーーーーーーーー怒られた。

最後の質問での事でだ。「事故のようなもの」発言が特にお気に召されなかった。

 

「・・・お酒?」

 

押し殺したような一言がすっげー怖かった。正解!とか冗談で言ったら2時間正座させられた・・・。もう過去の事なのに・・・。

 

 

 

 

「尾形書記!こちらへ来い。いや・・・いい。そこで止まれ。来るな・・来るな!」ギャー

 

取り敢えず桃ちゃんで遊ぶ。みほと別れて会長の元へ、呼ばれたので行ってみる。

 

「隆史ちゃーん。あんまりいぢめないでやって。ほら。西住ちゃん睨んでるよ~」

 

遠くで崩れ落ちてハーハー言ってる桃ちゃん。

 

「まぁいいや。んじゃあ本題。勢いついていい感じなんで、このままやってみようと思うんだぁ」

 

「で・・では。連絡してまいります」

 

桃センパイがヨロヨロ立ち上がる。

 

「なんのことですか?」

 

「説明してくださいよ」

 

会長の代わりに桃センパイが説明しくれた。

 

「今回、いきなり大会出場では心許ないからな。練習試合をしようという話だ」

 

へぇ。ちゃんと考えてるんだなぁ。実戦経験に勝る経験なしっていうくらいだしな。賛成だ。

 

「でもまぁ。ウチとやってくれる高校なんてあるんですか?昔やっていたってだけで、今じゃ無名校じゃないんですか?」

 

「まぁね。心当りが一校あるんだ。今年共学になったばかりの聖グロリアーナ学院だよー」

 

・・・あー。そういえばオペ子が言ってたなぁ。

 

「あー・・・よかったら俺交渉しましょうか?・・・というか、向こうの隊長と知り合いなんで」

 

「あら。そうなの?隆史ちゃん、そっこら辺に女性の知り合いがいるねぇ」

 

ニヒヒと笑うが、結構この人さらっと凄い事いうな。んなことみほに聞か・・・れ・・た・・・・・・・ら。

 

・・・。

 

うん。見なかった事にしよう。

 

「希望の日付等教えてください。ちょっと聞いてみますので、会長達は練習に専念してください」

 

「大丈夫なのか!?尾形書記!」

 

「・・・。桃センパイもうちょっとこっちで、喋ってくださいよ。聞こえないですよ」コトワル!

 

「それでは、隆史君。お願いしますね」「お願いね~」

 

よし。皆が頑張ってる間に、俺は俺の仕事をするか。正直やる事が無くて寂しかったんだ。

 

 

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『大洗学園?戦車道を復活されたのですね。おめでとうございます。結構ですわ。受けた勝負は逃げませんの。』

 

「・・・」

 

『あら、どうかしまして?』

 

「あーまぁ。電話越しだし、わからんかなぁ。あえて携帯から電話しなかった甲斐があったな。新鮮だ」

 

『?・・・どういう事でしょう?』

 

懐かしい声が、ちょっとうれしかった。

 

「わからんかな。ダージリン。オペ子もそこにいるんだろ?」

 

「!!」

 

俺独自の呼び名で気づいてくれたようだ。

 

「共学になったの知らんかったよ。・・・久しぶり。2ヶ月ぶりくらいか?」

 

『・・・こんな格言を知ってる?「それ、うざいからいらん」』

 

『・・・・・・・・・・・・・・グスッ。』

 

「あ・・・ごめん。なんでお前、俺だとすぐ泣くんだよ。他の奴だとすっごい睨むのに!」

 

『・・・な、なんの事でしょう。まったく連絡寄越さない殿方に、嫌味の一言も言いたかっただけですわ。・・・お久しぶりですね。隆史さん。』

 

なんだよ、含みのある言い方して・・・。スンマセン

 

『しかし意外でしたわ。まさか大洗高校に『ダージリン様!隆史様って言いましたよね今!ダージリン様!!』』

 

後ろでガサガサ音がする。バキッ

 

『隆史様!?隆史様ですよね!?お久しぶりです!私です。オレンジペコです!』

 

ダージリンの電話を奪い取ったのかよ・・・。オー・・・元気いいな。ローズヒップみたいなテンションだったぞ今。

 

「ああ。久しぶり。オペ子。後でダージリンに詳しい事は聞いてくれ。また会えそうだぞ」

 

『ほんとですか!?』

 

カチューシャと懇意にしていたダージリン。カチューシャ経由でダージリン達とは知り合った。

いろいろいろいろいろいろいろあったけど。まぁ良くしてもらった。

 

練習試合か。彼女らとまた会える。それはそれで楽しみだ。

 

 

 

 

・・・楽しみだった。一本の電話が来るまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の訓練、ご苦労であった」

 

 

「「「「お疲れ様でした~。」」」」

 

夕方まで行った練習がやっと終了した。

ボーと空を見ても連絡機だろうか、ヘリが飛んでいる。

 

「で~。急ではあるが、今度の日曜日練習試合を行う事になった。相手は・・・聖グロリアーナ学院」

 

学園名すら知らん。秋山さんに寄れば、準優勝経験の強豪校らしいが。知らん。

 

「日曜は、学校へ朝6時に集合!」

 

・・・片眼鏡の生徒会役員が、非人道的な事を言った。

 

無理だ。

 

これは無理だ。

 

「やめる」

 

ハイィ?

 

「やっぱり戦車道やめる・・・」

 

沙織や西住さん達も私を止めてくれる。だが無理なものは無理だ。

 

「朝だぞ・・・。人間が朝の6時に起きれるか!」

 

 

 

「起きれるぞ」

 

ぐ・・・またこいつだ。生徒会書記が割って出てきた。事あるごとに私の言い訳を潰しにくる。

 

「少なくとも俺は、青森の時、バイトで3時半には起きてた」

 

さんっ!?・・・夜だぞそれは!朝じゃなく夜だ!!化物かこいつは!

 

「冷泉さん。6時集合ならば、遅くても5時起床だ。君がやめて抜ければ、Aチームがどういう状態になるか。賢い君なら分かるはずだ」

 

「ひ・・・人には出来る事と出来ない事がある!」

 

「じゃあ、この案件は出来る事だ。やって頂きます」

 

淡々とこいつは事務的に話す。有無を言わせない。なんだこいつ。そど子よりタチが悪い。

 

「・・・何なんだ。何なんだお前!事あるごとに正論で!私が嫌いならそう言えばいいだろ!なんで私の言うことに一々絡むんだ!」

 

「出来る事を何も考えないで、頭からやろうとしないからです。解決すら考えない思考停止はやめて下さい」

 

くそ。顔色すら変えん。沙織達がオロオロしているが、今は知らん!

 

「・・・。それに好き嫌いは関係ない。大洗が勝つ事を最優先とします。冷泉さん以上の操縦士がいるとは思えません。

君の言っていることは、はっきり言ってただの我侭だ。違いますか?」

 

「ぐぃ・・・」何も言えない。正しいと言えば、こいつは正しい。

 

 

「隆史君!その言い方は無いよ!さすがにひどいよ!?冷泉さんは私達が、お願いしてやってもらってるんだよ!?」

 

西住さんが間に入ってくれる。私以上に、怒ってくれている。

 

「・・・黙れ」

 

ビクッ「!」

 

その一言で、西住さんが黙ってしまった。何故だろう。怖くてとかではなく、ただ悲しそうに・・・泣きそうだった。

寧ろ私自身の事より、そちらの方に腹が立ってきた。

西住さんを一切見ずに、私の目を睨んでくる。

 

「なんだ・・・。最優先と言うのならば・・・私が操縦士を続ける条件で、お前が辞めろって言えば従うのか!?」

 

「わかった。冷泉さんがちゃんと役割を果たしてくれると言うのならば、それで良い。会長には今から言いに行ってくる」

 

「「「「!?」」」」

 

即答だった。

 

売り言葉に買い言葉と言うが、私としても無茶な事を言ってしまった。こいつが、大洗に来た理由を多少は沙織から聞いていたから。

ただ困らせたかった。それだけだった。

 

「今の所、俺がいるより冷泉さんがいる方が利益は高い。それでやる気になるなら従おう」

 

「え・・・。本気・・・か?」

 

思わず聞いてしまった。

 

「何だ?冗談でそこまでの条件を言うのならば、君を軽蔑するが」

 

・・・違う。沙織達から聞いていた話と全然違う。情に厚いとか沙織は珍しく語っていたが、こいつには感情が感じられなかった。

ただ淡々と結果を残す為だけに動いている。

軽蔑すると言って来るが、こいつは私をすでに軽蔑している。

 

寧ろ聞きたい。ここまで他人に嫌われる程、私が何かしたとは思えない。しかも転校したての奴に。

・・・遂に西住さんが、声を殺して泣き出してしまった。

 

ただ、不思議だった。沙織。五十鈴さん。秋山さん。

それを途中からジッと見ていた。

睨むでもなく、攻めるのでもなく。ただ真剣な顔で、あいつを見つめていた。

 

 

 

「・・・」

 

 

「・・・・・」

 

 

誰も喋らなくなった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・ああぁぁぁぁぁ!!くっっそ!!!!」

 

「やめだ!!!」

 

「クソ!!悪い!すまない!!申し訳ない!!!はぁ~・・冷泉さん」

 

「な・・何だ?」

 

頭をバリバリ掻きながら急に呼ばれ、若干引き気味に答える。

 

「まず君に八つ当たりしてしまった。みほも!悪かった!!」

 

・・・呆気に取られた。雰囲気がガラっと変わった。私に深々と頭を下げる。え・・・。

 

「はぁ・・・やっと、いつもの隆史さんに戻りましたわね。エイッ!」バチン!!!!

 

「まぁ理由はわかんないけど、しょうがないよね♪」パチン!!

 

「私もやった方がいいのでしょうか?『やってくれ。』」ペチ。

 

彼に平手打ちを順番にして行く。西住さんも私と共にポカーンとしている。

 

「あーーーーーーーーーーーーーーーー・・・よりにもよって。みほ泣かせちまった。あーーー・・・」

 

要は、西住さんを泣かせてしまったって事の平手打ちなんだろうか?ひどく項垂れている。

 

「あー・・・二人共。ついでに殴っとくか?」

 

親指を自身に向ける。随分ざっくりした性格になっていた。私も西住さんもブンブン顔を振る。

訳がわからない。

 

「隆史ちゃーん。1年若干ビビってるけど大丈夫かい?そろそろ作戦会議始めるけど~」

 

今まで静観していた生徒会長らがやって来た。普段こんな奴ではないのだろうか。

一年組が若干おびえている。怒鳴ってとか恫喝して怯えられるのではなく、事務的に対応しているこいつにビビるって・・・。

普段ならどんな奴なんだ。

 

「もー。隆史君・・・。違う人にしか見えなくって・・すごく怖かった~」

 

西住さんも復活した。

 

「冷泉さん。非常に申し訳なかった。よく話もしていないのにアレは無かった」

 

「イ・・いや・・・」

 

「・・・まぁ。現実問題。君がいる事は勝利する事への最低条件なんだ。あそこまで動かせる奴はこの学校にはいないだろう。

脅す訳じゃないが、戦車道の特典である単位取得をしとかないと、君は留年確定だぞ。きっついぞ~幼馴染を先輩と呼ぶのは」

 

「ギ・・グ・・・」

 

何だんだ。本当に何なんだ、こいつは。さっきと口調も雰囲気も全然違うゾ。本当に何なんだ

 

「そうだよ、まこ。それにちゃんと卒業できないと、お婆ちゃんメチャクチャ怒るよぉ?」

 

「お婆ぁ!!・・・・・わかった。やる・・」

 

観念した。事情を知っている沙織が結局一番厄介だった。「やる」の一言にあいつも安堵した様だった。

 

「で。俺の事なんですけど。会長」

 

「ん?何ぃ?」

 

あいつが、右腕を上げた。

 

「すいません。家庭の事情で暫く学園艦を離れます」

 

「「「え?」」」

 

「隆史ちゃん。それは、ちょっとこま・・・わかった。いいよ。家庭の事情ならしかた無いね」

 

「ありがとうございます。練習試合までには極力戻りたいと思ってます」

 

「みほも悪かったな。冷泉さんも。帰ってきたら侘びは、何かしらするから」

 

バリバリバリって先程上空にいたヘリが迫ってくる。うるさい。

迫ってくる?さっきあいつが腕を上げたのは、これのサインだったのか。

 

「何!?何ぃ!?」

 

ヘリが着陸して、あいつはそれに乗って飛び立っていってしまった。荷物全部置きっぱなしだろ。あいつ。

 

 

 

 

「西住ちゃん。なんか聞いてる?」

 

「いえ・・・全然。そんな素振りすら見せなかったです」

 

「それより会長!何故行かせたのですか??いくら家庭の事情でも!」

 

片眼鏡が喚きだす。こいつは何か苦手だ。

 

「いや~・・・。正直例の土下座より怖かったね。みんな真正面から見ていないっしょ?

私の目を見て話してる様に見えたけど、遠くを見てる目だったんだ~。私を全く見てなかった」

 

会長がちょっと寂しそうに言った。

 

「西住殿?気づきましたか?」

 

「え?」

 

「あれ・・・あのヘリ。「島田流」の家紋がついてました・・・」

 

「え。でも隆史ちゃんの母親って、西住流の師範って聞いていたけどなぁ。でもよく家紋なんて覚えてたねぇ」

 

「当然です!特に西住流と島田流の2大流派の家紋なんて、基本中の基本であります!」

 

「まぁいいや。隆史ちゃんも行っちゃったし作戦会議始めるよ。西住ちゃんは後で、隆史ちゃんの荷物持って行ってあげて」

 

「あ・・・はい。・・・隆史君」

 

いや。本当に何だったんだ。あいつは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔の私・・・といってもまだ1,2年前の私。

 

ただの泣き虫だった。

ずっと家で泣いていた。

 

私は同年代の子より、色々うまく出来た。

勉強然り、戦車の扱い然り。・・・運動はそうでもなかったけど。

それが出来すぎて、同年代どころか年上の人達よりも出来てしまった。

 

始めは、皆すごい、すごい言ってくれて褒めてくれた。

ただ段々におかしくなっていった。

勿論、褒められばうれしい。うれしいから頑張る。

その為成績はグングン上がった。

 

小学生の年長に上がった頃だった。

中学には進級しないで、大学へ進級が決まった。飛び級がすでに決定していた。

 

その為だろう。同級生に影で「化物」と言われ始めた。

 

彼らにも勿論親はいる。どうも私を引き合いに出される様だ。

挙句、彼ら親は子供に期待をしなくなる。私と比べ諦めてしまう。

それを感じ取った・・・諦められて拗ねた子供は、私を攻撃し始めた。

 

大人達から「天才」と持て囃され、子供達から「化物」と蔑まされた。

 

 

ある時、家にお客様が来るという。

お母様・・・いや。母上のお客様だった。

古い友人が訪ねて来る。子供を連れて。

 

中学生の男の子。

 

怖かった。隠れていよう。いじめられるかもしれない。

総じて近しい年齢の男子は乱暴だった。よく髪を引っ張られた。

 

引っ張られるのもそうだが、髪に触れられるのが、死ぬほど嫌だった。

 

いつもの様に家の庭先で1人でいると、そのお客様だろう。

中学生・・・には見えないが多分そうだろう。年上の男の子が来た。・・・熊じゃないよね。

私は見つからない様家に戻ろうと、隠れて移動しようとしたがすぐに見つかってしまった。

どうも親同士の会話が長すぎて逃げてきた。暇だから話をしよう。というかして下さいって土下座して頼まれた。

 

中学生にとても見えなかったので、比較的いじめられないだろうと思い了承した。土下座は初めてされた。これは一種の脅迫だと思う。

彼は話してくれた。学校の事。親の転勤の事。・・・ある姉妹との出会いの事。

一応注意しておいた。

 

「そういった事は、その子達の大切な思い出だから軽々しく人に話しちゃダメ」

 

彼は、驚いた顔をして感謝してきた。デリカシーって言葉を知っているのだろうか。

ただ彼の話は、面白かった。彼もそんなに私と会える訳でもない。これが最後だろうと話してくれたのだろう。

私には別世界に思えた。彼も友達は多くなかったが、全くいなかった私には、とても新鮮だった。

どの話辺りだろうか。私が話す番になっていた。

大人と話をしている見たいな感覚だった。不思議と全て話してしまった。

 

だからだろうか。泣いてしまった。泣いて喋っていた。

 

「天才」と呼ばれる事。自分ではそんな風に思ったことは無かった。

 

「化物」と呼ばれる事。・・・・・。

 

「いいんじゃない?別に。化物でも」

 

・・・何を言っているんだ、この男は。

 

「君は頭がいい。「天才」と呼ばれる程にね。まずそこを自覚しよう。人は皆同じじゃない・・・だけれども、だ。

君のいい所は、それでも周りと同じでいようとする事だと思うよ?合わせようとする」

 

訳がわからなかった。

この事を言えば、大体の大人は・・・母上ですら周りからの嫉妬だとか、気するなとか、強くなれば良いとか・・・そんな事を言う。

 

「いいね。化物。カッコイイじゃん」

 

「カッコイイ?」

 

「はっはー。女の子だものな。カッコイイは無いわな。今のご時世、ゲームでも漫画でも一杯いるよ。かわいいモンスター」

 

「・・・よく知らない」

 

「んじゃ、これあげよう。今日来る前に、時間が余ったんでゲーセンで取ったの」

 

「・・・ボコ」

 

怪我だらけの熊のぬいぐるみのキーホルダー。

 

「正直、俺にはそれ化物にしか見えないんだけど、さっきの言った姉妹の妹が好きでさ。かわいいってさ」

 

「・・・かわいい」

 

「いいんじゃない?人それぞれだ。君が化物っていうなら、俺にとっては君は「可愛いモンスター」だよ」

 

「ヒゥ///」

 

そして親の話が終わって彼を迎えに来た。そのまま彼は帰る事になった。

結局何も問題は解決しなかった。解決しなかった・・・が。

何かが違った。全然違った。

ただ話を聞いてもらっただけだった

彼は言った。彼にとって私は「可愛いモンスター」だと。

 

・・・それでいいと思えた。例え周りに化物と言われても。

化物でいい。あの人のモンスターでいよう。

 

帰り際、そういえば名前も知らない。私も言ってない。

最後、あの人は頭を撫でようとした。だけど手を止めた。

 

「小学生でも女の子だもんな。軽々しく触っちゃだな」

 

と、笑って言ってくれた。

 

別にいい。何故だろう。この人は寧ろ触ってもらいたかった。

 

「別に・・・いいよ。それにまだ名前聞いてない・・・」

 

お許しを得たと軽くやさしく撫でてくれた。母上が、まさに驚愕って顔をしていた。

 

「尾形 隆史。普段なら、連れられて来られる事、嫌だったけどさ母さんがチョコチョコ来るみたいだから出来るだけ俺も来るようにするよ。君がよかったらだけどね」

 

縦にブンブン頷く。そこで気がついたのだろう。私の名前を知らないのを。

「君は?」と聞いてくる。この人は、やっぱりデリカシーが足りない。

 

 

「・・・島田 愛里寿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母親は西住流戦車道の師範をしている。

海外出張から国内出張なんでも有りの派遣師範・・・みたいな事を仕事にしている。

下手な会社員より実入りは良い。かなり良い。

だから父親は専業主夫としてやっていける。

 

苗字は「尾形」。

 

・・・旧姓は「島田」

 

島田流の縁者になる。

しかし末端も末端。ちょっと血が入ってるって位の遠い親戚。

母は、高校の時に戦車道にのめり込んだ。

どうも島田流がお気に召さずあえて敵地と言える、西住流のお膝元。

熊本の黒森峰へ入学。

その後、後輩で入ってきた「西住 しほ」との出会い。

島田流派と隠していた母は、そこで本格的に西住流を知る。

どうやら、西住流の方が肌にあったようでメキメキ腕を上げていった。

しほさん曰く一種の天才だったそうだ。自分が自信を無くすほど。

性格的にもあったのだろう。大学へは進まないで本家へ入門したそうだ。

本人は戦車道ができれば、自衛隊でもなんでも良かったみたいだったけど、お誘いに乗ったそうだ。

 

当時の西住流と島田流は、ひどく仲が悪く、島田の縁者である母が、西住流に下る。

当然本家は酷くご立腹。勘当を言い渡されたそうだ。

ただ、島田家の「島田 千代」さんとは仲がよく、勘当された後でも友人同士。

知ったことじゃない。文句あるなら聞くだけ聞いてやる。って本当に聞くだけで相手にしなかった。

 

そう。勘当した本家。島田家よりのお呼び出し。

ヘリの中で母はすでに待機していた。

大洗学園艦は、近海を運航していたようですぐに到着できるとの事。

 

 

 

 

 

 

『島田流、次期家元より少々急いで来て欲しいだってさ』

 

母親からの電話。

ダージリン達との通話中、携帯に連絡が入った。

 

「何でだよ。また千代さんとこ遊びに行くのか?さすがに今学園艦だから無理だぞ」

 

千代「さん」呼びは、彼女からの希望だった。しほさんを「さん」呼びする理由を前に聞かれ、理由を言ったらコレだった。

 

「そうですか。私は、しほさんより老けて見えるのですね?」

 

って笑顔で言われたら変えるしか無いだろう・・・怖かった。マジで怖かった。

 

『違う。今回次期家元が、用があるのは私では無く隆史だそうだ』

 

今気がついた。母が千代さんを「次期家元」呼びをする時は「島田家」として扱う時のみだ。

 

「・・・なんだそれ。島田家から勘当されているなら「島田」としての俺らは関係ないだろ。千代さんの方が良く分かってると思うけど」

 

『そうだ。その千代から「元島田家」のお前に用があるそうだ。・・・「男」として』

 

嫌な予感がする。「男」としてって事は姉ちゃんはダメなんだな。

 

『つまり。お前を養子に欲しいんだと。次期家元は』

 

「・・・・・・・」

 

千代さんは、俺らの事情は知っている。知っているからこその呼び出し。

 

「わかった・・・。行く」

 

『17時頃、大洗学園艦上空に到着する。隆史の事情もあるでしょう。右腕を上げたら近づけるわね』

 

そこまで聞いて通話を無言で切った。

 

 

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「お久しぶりですね。隆史さん」

 

「はい。お久しぶりですね。千代さん」

 

いつもと違う。日本戦車道連盟会館での久しぶりの対話になった。

わざわざ迎賓館にまで通してくれた。

 

「そんな睨まないで。呼び出したのは他でもありません」

 

「養子になれって話ですか?」

 

「・・・ちょっと違うわね。今私は、非常に微妙な立場にいます。もうすぐ私が家元を襲名する件は、お母様よりお聞きですね?」

 

「はい。それに兼任というか大学戦車道連盟にも就任するとか」

 

何が言いたいのか良くわからんが、まぁ関係する話だろう。大人しく聞いておくか。

 

「・・・良いですね。話が早く進みます。もっと掴みかかってくるかと思いました」

 

俺が黙って聞いているのを汲んでくれた。

ただ非常に疲れた顔をしてる。

 

「で、ですね。ちょっと問題がありまして。現・大学戦車道連盟の理事長が問題でしてね。ここで貴方が必要なの隆史さん」

 

む。良くわからない。島田家の人間として呼ばれたのに話が明後日の方向に行っている。

 

 

「隆史さん。愛里寿を助けて下さい」

 

 

・・・は?

 

 

「なんで今、あの子の名前がでるんですか?愛里寿ちゃんを助ける?」

 

はぁ~・・・と深い溜息と指を額に当てて嘆く。

 

「今の大学戦車道連盟理事長の「島田 忠雄」という男なんですが・・・まぁ島田家の縁者です」

 

「今度の家元襲名と同時に大学戦車道連盟も兼任するんですが、まぁ「島田 忠雄」という男。色狂でも有名でしてね・・・。

島田家は正直、女系というか男性が非常に少ない。私が、家元襲名後ならどうとでもできるのですが・・・」

 

「つまり権力が強すぎると。今のままだと家元襲名にも支障が出る、と」

 

「まぁ娘の事を考えれば、そんなもの喜んで捨ててやるのですが・・・。娘の近状を知っていますか?」

 

「大学に進んだのは知ってはいますが・・・」

 

「あらあら。娘を早くに口説いた男性とは思えませんね」

 

ぐ・・・。口説いた気はないぞ。クスクス笑っている千代さん。本当に楽しそうに笑う。クソウ

 

「今娘は、戦車道。来年度開催される予定のプロリーグ。大学選抜強化チームの大隊長をしています」

 

「・・・はぇ?」

 

我ながら、間抜けな返事が出てしまった。

 

「貴方に励まされた甲斐があったのでしょう。あの後の娘は凄かったですよ。今まで抑圧されていた物が一気に出てきたというか・・・ね」

 

知らなんだ。

 

西住家でいっぱいいっぱいだったけど…何? そんな凄い事になってるの?

母が後ろでクックックって腕組んで笑ってる。クソ知ってたのに言わなかったな。

 

「えぇ。だからこそね。あのヒヒ爺。島田家は男衆が少ないのをいい事に、愛里寿を妻に寄こせと言ってきたわ」

 

「・・・は!?」

 

「婿養子でも良いって。愛里寿ちゃんの状況を知っているからこそね。いい大人の言うことか・・・」

 

母が口を出してきた。事情知ってたの!?

 

「つまり。婿養子にでもなれば、少なくとも次期家元候補の夫。大学戦車道連盟理事長の任が解かれても権力が継続して欲しいのよ。簡単に言えばね」

 

「権力欲しさに、いま現状の愛里寿を人質にしてるわけか。「大学戦車道連盟理事長」って事は・・・」

 

「バレなければ、何をしてくるかわからない。今の愛里寿の事を考えれば、こんな事で将来を奪うのは・・・」

 

島田流次期家元。大学を卒業しても一生戦車道と関わりがある。娘を取るか、お家を取るかって事か。でも千代さんが娘の幸せを考えないわけがない。

この人かなりの親バカだ。

家元関係の場合。血がどうのこうの言って、出来るだけ医学的に危険の無い、血縁者を選ぶ傾向が強い。いつの時代だ。それで・・・。

 

「俺が呼ばれた理由って・・・もしかして・・・」

 

 

コンコンっと部屋がノックされた。こちらが返事をする前に2人の男が入ってきた。

 

秘書だろうか。普通にサラリーマンって感じの七三分けのメガネ男と・・・なんだこのガマガエルは。いかにも成金って感じの親父が入ってきた。

 

「ふむ。お邪魔する」蛙が人語を喋った。

 

「こちらの返事をする前に、入ってくるのはマナー違反じゃないでしょうか?」

 

「まぁ硬い事をいうな。もしかしたら身内になるやもしれんのに」

 

ガハハと品のない笑いで応答する。なる程こいつか。

 

「なんだ。この小僧は」

 

いきなり初対面で小僧呼ばわりされたよ。オイ。・・・薄い本じゃないんだぞ。コレが愛里寿の旦那になる!?ふざけんな!

俺が呼ばれてた理由。・・・男としての「島田」ねぇ。なるほどそういう事か。

 

てっきり俺は、何かしら家元として有利になるよう、母を利用しようとしているのかと思っていた。

自分達の都合で切り捨てておいて何を今更!ってね。

この千代さんを相手にするんだ、って臨戦態勢でイライラしてた自分が馬鹿みたいだ。

千代さんにも悪かった。

 

くそっ!冷泉さんにも・・・みほにも当たってしまった。何をしてんだ…俺は。

 

この権力欲しさの爺の事だ。すでに天下り先も用意してるだろう。その他に島田流本家としての権威も欲しいのか。

いいねぇ。わかりやすくて。男の方がやりやすい。全容が見えてスッキリした。

 

さて。やってやるか。

 

「お初にお目に掛かります。私、尾形 隆史と申します」

 

苛立ちからじゃなく自身で冷静に「あの時の俺」のスイッチを入れる。

俺の口調の変わり様に、千代さんがビックリしている。母と喧嘩する時この状態になるので母は知っている。

 

「なんだ。別に紹介などいらん。今から大事な話があるのだ。席を外せ」

 

横柄な態度は変わらない。・・・典型的な小物だこいつ。わかりやすい。

 

「いえいえ。私にも関係の有るお話ですよ。大学戦車道連盟理事長の島田殿」

 

「なんだ。儂の事を知っておるのか。どういう事だ?貴様にも関係があるとは」

 

「いえいえ。どうぞお先に。島田家元にお話があったのでしょう?目上の方に先にお譲りします」

 

チッっと舌打ちし、秘書っぽい奴が自己紹介してくる。

 

「理事長は、先日の件のお答を戴きに参りました。私は丁度仕事の都合上居合わせましてね。後見人として同席させて頂きます」

 

メガネは名刺を差出す。

 

「文部科学省 学園艦教育局長 辻 廉太・・・」

 

ボソッと読み上げた千代さんの声を注意深く聞いておいた。なるほど。天下り先がそこら辺か。

 

「まぁ小僧がいるのは気に食わんが、まぁいい。そういう事だ。返事を聞きに来た」

 

この人の親バカ振りは、近しい人しか知らない。娘を犠牲にしても「島田流」を取ると踏んだのだろう。

 

「あーー。失礼。やはり私も関係がありましたね」

 

ワザとらしく乱入。「どういう事だ」と睨んでくる。怖くねぇな。

 

「そういう事でしたら、先程の自己紹介に続けさせて頂きますね」

 

 

 

「島田 愛里寿さんの「許婚」の尾形 隆史と申します」

 

 

 

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「な・・・なんだと!儂はそんな事聞いていないぞ!」

 

「ですからこう、今現在申し上げております」

 

面白いくらい慌てとるな。二人揃って。

 

「う・・・嘘だ!そんな簡単に・・・」

 

「何が嘘なものですか。現にそこに私の母も居りますし。お母様もおられます。聞かずとも明白でしょう?」

 

グググいってるよ。日本語喋れ。

 

「ふん。ならばすぐに解消するのだな。どちらが優秀な婿になるなど分かりきっておる」

 

「私ですね♪」

 

「」

 

半分からかいに入る。おかん。笑ってんなよ。

 

「いいか!儂には実績がある!常識的に考えて何も実績の無い貴様など!!」

 

「そうですか。私は今17歳です。つまり若さがあります。つまり将来性はあなたよりはあると思いますが?」

 

「若いだ『話は最後まで聞いてくださいね?』」

 

面白いくらい顔が赤くなってるな。

目の前の餌が、あっさり取られて冷静じゃ無くなってるな。こっちのペースだ。

 

「戦車道に関してもそうですね。私は、貴方と同じく男です・・・が、「島田」側の人間として言わせて頂きます。

私には少なくとも人脈はありますよ。例えば・・・西住流次期家元」

 

「「!?」」

 

「幼少より良くして頂いております。それこそ家族の様にね」(まぁスパナで追いかけられたり約1名にサレタガ)

 

「家族で・・・つまり、次期家元だけでなく、その後継者の両姉妹とも懇意にしております」

 

「グギ・・・!」

 

戦車道に関わる者ならバカでも、この名前と交友関係の意味は知っているだろう。娘までとなれば将来性も高い。

敵対していた相手との友好関係。現代なら昔と違い有益になる。

 

「つまり現、学園艦。黒森峰隊長 西住まほ選手にもね。あとは・・・」

 

継続高校のあいつはダメだ。毎回説教する羽目になったしダメだ。ウン。

あとアンツィオ高校・・・もダメだ。食いもんしか頭にない。

 

「プラウダ学園隊長カチューシャ選手。聖グロリアーナ学園隊長ダージリン選手とお二人にもね。お疑いでしたらここで電話でもしましょうか?」

 

「…将来性のみで」

 

「まぁ実績は、まだ確かにありませんがね。これから積んで行けます。まだ17です・の・で」

 

「今私は、大洗学園で戦車道に組しています。新しく新設してまでね。何故だかは分かりますよね。そこの方なら」

 

目を泳がせるメガネ。文部科学省 学園艦教育局長でピンと来た。こいつだ・・・。俺らを追い詰めているのは。目を見開いて睨んでやる。

 

「そもそも常識的に考えて下さい。親が60歳の男性に13歳の娘を嫁がせるのを良しとするでしょうか?」

 

「ふん!「お家」の事を考えればわかるだろう。歳は取ってもより良い遺伝子を残せるのは、儂の様な優秀な『今なんつった爺!?』」

 

なんだこいつ。マジか。遺伝子って言いやがった。

・・・たしか千代さん。こいつを色狂って言ってたな。「島田」に入る為とも・・・。

千代さんも狙ってんなこいつ。下衆が。ひっさしぶりに見たな~。ここまでの奴は。

 

「なるほど・・・。分かりましたよ。貴方が何を考えているのか。私も男ですので。やはり。貴方ではダメですね」

 

「・・・なんだ小僧。正義の味方気取りか・・・?」

 

 

 

「愛里寿の味方だって言ってんだよ。エロ爺」

 

 

 

コンコンッ

 

「誰です?」

 

このタイミングで、来客があった。

 

「母上。私です」

 

「あ・・・呼んでいるの忘れてた・・・」

 

家元ってどっちもどっか抜けてるのかよ!

 

「なんですか?この・・・え?隆史さん?」

 

ヤバイ、正直本人がいないからここまで言えたんだけども、本人来ちゃったー。

もういいや。最後まで行っちゃえ。

 

「やあ。久しぶり愛里寿」

 

「!?///」

 

あー普段「ちゃん」付けして呼んでいたからな~。この場面で他人行儀はまずい。あえての呼び捨て。

 

このおっさんを知っているのだろう。早々に俺の後ろの隠れてしまった。カワユス

グギギギと唸っているしか無いのかな?この牛蛙は。

 

「結局の所、両人の想いですわよ?理事長。ですので今回の件はお断りします」

 

「こ・・・この儂に恥を!!!!」

 

何か暴れ出そうとしてる。いいねぇ・・・来いや。

 

「あーちなみに、隆史さんのお母様。その方ですね。かの有名な『車外の血暴者』ですので。お暴れるになるのでしたら覚悟してどうぞ」

 

「「「!!!???」」」

 

なにその二つ名!?おかん若い頃何やったの!?「車外」ってのが、すっげー気になる!

 

「グ・・・お・・覚えていろよ小僧!」

 

「三下の名台詞ありがとうございます。ご要望には、課金が必要になりますがよろしいですか?」

 

「ぐ!」

 

無言でバタンッと逃げるように出ていった。

さて。これで俺にも戦車道大会で優勝を目指す理由が出来た。実績を積まないと。

またあいつが何かしらしてくるな。

 

 

なんか燃えてきた

 

 

 

・・・疲れた。椅子に座り込む。

 

「千代さん・・・。こういう事だったんだよな。『時間稼ぎになってくれ』と。すっげぇ疲れた」

 

「いえ、要望以上でした・・・。事がほぼ終わりました。すごいですね。全て前フリ無しで応えてくれました・・・隆史さん」

 

まぁなんとなくわかったし、鬱憤も晴らせた。

 

つまりは、愛里寿ちゃんをあの爺にやりたくない。家元就任で全て白紙にできるが、それまでの間俺を代役にして

事実上あのクソから守りたいと。そのお願いで呼び出したんだな。

 

「あーいや。置いてきぼりの愛里寿ちゃんに説明してあげて下さい。っあいた!」

 

ペチっと叩かれる。

 

「愛里寿でいい。・・・違う。愛里寿じゃなきゃ嫌」

 

ちゃん付けは止めろと。

 

「母上説明してください」

 

んー。と考える千代さん。

 

・・・ヤバイ。この千代さんはマズイ!何が?目が!!

 

「隆史さんが、愛里寿と結婚してくれるそうよ?」

 

「!!?」

 

バッバッ!と俺と千代さんを交互に見る。

 

「いやいやいや!」

 

その後、説明が大変だった。

 

 

 

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結局次の日、久しぶりに愛里寿と一日遊んだ。

呼び捨てで、良いと言うので呼ぶと顔が一々赤くなる。カワユス

確か大洗にボコランドという摩訶不思議な施設があるな。今度連れて行ってやろう。

 

その翌日が、みほ達の練習試合だった。急いで帰らないと。

しかし帰り際、携帯が見つからない。さすがに焦る。

 

「隆史さ~ん。コレナニ?」

 

「」

 

すっげぇ嬉しそうに、俺の携帯で、しほさんとまほの例の写真をスライドされて見せられてる。

え・・・。携帯指紋認証なんですけど・・・寝てる間に・・・ア・・・そっすか。

 

「WA・TA・SI・MO!!」×2

 

母子揃ってお願いされる。しょうがないと応じるしかない。多分断ると監禁される・・・。

バッシャバッシャ写真を取られる。

 

おかーーーーーーーーーーーーーーん!!なに普通に撮ってんだ!

 

千代さん近い近い!なんでしほさんと張り合うの!?耳に息やめて!!!

胸!!!胸ぇ!!!!!首舐めないで!!

 

「隆史さんは、胸大きい方がいいの?」

 

愛里寿に恐ろしい質問をされる。

 

「」

 

「母上の時、嬉しそうだった・・・」

 

「」

 

ニヤニヤ千代さんがすっごい嬉しそう。

だから真顔で答える。慈愛に満ちた顔で。

 

「いいかい愛里寿。その質問は、哲学の域だよ。おいそれと聞いてはいけないヨ」

 

勘弁してください。千代さんこういう時、すっごい生き生きしてるのなんで!?

 

「大丈夫よ。愛里寿は私の娘ですから。隆史君好みになります。がんばりましょうね」

 

何を!!??

更に怖い事を帰り際に言ってきた。

 

 

 

 

 

「あぁ。この写真。しほさんに送っておきました♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。閲覧ありがとうございました。
如何だったでしょうか。オリ設定が結構多めになってしまいました。
いろいろありますが、劇場版と時系列と合わせるとここに入れるしか無かった話です。
オリ主にとっての明確な「敵」がでました。

久しぶりに、ヘタレじゃないオリ主が書けました。オカエリ~

おかんの話も書いたら面白そうかと思いましたが、取り合えづ本編完結したら・・ですね。
下済みがやっと終わりました。

何はともあれ・・・

島田家、参戦!!

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