転生者は平穏を望む   作:白山葵

121 / 141
閑話【 未来編 】~夢のつづき~ その6 ダージリン編

 

『 エリス、何やってんのよ。そろそろ来るわよ? 』

 

 

『 先輩。あの…西住 まほさんの未来…辿りつく事は、できます…。…………が、よくあの未来を引っ張ってこれましたね 』

 

『 いきなりなによ。…前回の事? 』

 

『 えぇ…世界線の不安定な状態が…すごいのに… 』

 

『 まっ…最後、隆史にちゃんと話してあげるんでしょ? 』

 

『 少しでも覚えていてくれると良いのですが… 』

 

『 無理ね 』

 

『 …そういった、はっきりした所。私は、結構好きですよ? 』

 

『 し…真相意識には、残る可能性はあるんだけどねぇ…そこに期待すれば? 』

 

『 …… 』

 

『 ま、ソレがクリアできれば、『 運命 』が、補修補強…全てを一つの流れに変えてくれるから…それを聞けば、隆史も頑張ってくれるんじゃない? 』

 

『 くれる…というか、死に物狂いになりそうですよ… 』

 

『 …… 』

 

『 …殺さないと良いけどね 』

 

『 …そうですね。その場合では、収束はしてくれませんでしたから 』

 

『 人物自体が、エラー…しかも二人……めんどくさい事になったわよね 』

 

『 …… 』

 

『 でもある意味で、分かりやすいかしら? …0か100ってとこが… 』

 

『 はぁ…この事、先輩が言ってくださいよ 』

 

『  絶 対 に 嫌  』

 

『 …… 』

 

『 ……私はある意味で、馬鹿やってるだけの方が良いのよ。そういった事は、アンタに任せる 』

 

『 先輩、体良く逃げていませんか?』

 

『 逃げるわよ? 当たり前じゃないっ!! 学習してるのっ!! あのもう一人の馬鹿とさんっざん… 』

 

『 あ… 』

 

『 ちっ…もう来た。はぁ…んじゃ、お仕事しましょうか 』

 

『 …そうですね。なんて言おう… 』

 

 

『 はい…んじゃ、んな訳で……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無機質な声が、また頭の中に響く。

 

 どこかで、聞いた声…。

 

 いつか、聞いた声…。

 

 

《 新たな、世界線の変動を確認 》

 

 

 あぁ…そうだ。最初に聞いた、あの時の…。

 目を開く前、脳内で響いたその声。

 その声が言い終わるやいなや…。

 

 

 

 

 

 

 

《 んな訳で、いらっさっっっい!!! 》

 

 

 

「あー…うん。前回と、同じやりとりしている時点で気づいてくれ…というか、察してくれ」

 

《 いや、もう…貴方もそろそろ、慣れなさいよね…私は諦めた… 》

 

「…慣れてないじゃねぇか」

 

 黒く、何処までも続く空間に響く、すでに聴き慣れてしまったその声。

 響いてくる声主を探す為に見渡してみるが、やはり何処までも続く空間が、広がっているだけで、その主は見当たらない。

 見当たらないが、それでも一方的に聞こえてくる声が、耳を刺す。

 

《 さぁっ! 今回は、救済措置の続きよっ!! テンション上げていきましょうっ!! 》

 

「続き?」

 

《 そうよっ! アンタが無節操に、私達の仕事を増やし続けてくれたおかげでねッ!? 終わりが…わからないの… 》

 

「…自業自得だろう」

 

《 さて、今回は…あ~…どうなのかしら? まぁ…いいや。取り敢えず呼ぶわね? 》

 

「聞け。俺の話を聞け」

 

 都合の悪い事は聞こえない、そんな都合良い耳なのだろうな。

 聞けと言った、俺の言葉を無視し、パチンッ!っと、指…だろうか?

 指を鳴らした様な音が響いた。

 

 

『 だから、勝手に始めないでくださいっ!!! 』

 

「うっわっ!?」

 

 鳴らした直後、いきなりの怒号。

 真後ろから、もう一つの聴き慣れた声で、思いっきり叫ばれた…。

 驚きながらも振り向けば、もう一人の女神が、そこに立っていた。

 青を基調した、ファンタジーな衣装。シスター帽? …見たな物まで被って…。

 いやぁ…白く長い髪と良くニアイマス。

 

 さぁ、現実を直視しよう。

 

「……」

 

 えっと…本気で?

 

《 …なんで、アンタが召喚されるのよ 》

 

『 なっ!? し…召喚されてませんっ!! 先輩も此方に来てくださいよ!』

《 嫌よっ!!! 》

 

 すっごい即答…且つハッキリとした意見だな。

 

『 たっ…隆史さんも、なんて顔しているんですかっ! 違いますよ!? 私は自ら来ましたよっ!? 』

 

 そ…そりゃそうか。

 びっくりしたぁ…。

 

『 今回は…そこの女性達です… 』

 

 …達。

 真正面に立っている、可愛らしい女神様から、目配せをされもうした。

 

『 ハイ、「達」ですからね? 』

 

 一瞬見せた、焦った様な顔は既に引っ込んでおり、少し青筋を立てながら微笑みましたね…。

 

 ……。

 

 じっ…と、微笑んだ顔で見つめてくる、エリス様。

 さっさと、後ろを向きやがれと、無言の圧でお知らせしてくれていますね…はい。

 うん…いるね。後ろに何人か…気配はするので気がついてはおります。

 おりますが…目の当たりにする事実が、怖くて仕方ありません…。

 

「ここは…? ん…カチューシャは、見当たりませんね」

「……」

「何も御座いませんわね? まぁ…取り敢えず…隆史さん?」

 

 あ、はい。

 真後ろから聞こえて来た、その声で解りました。

 役一名、息遣いしか聞こえませんけどね…

 

 

「 こ~んな、言葉を知っていて? 」

 

 

 聴き慣れたセリフ…。

 

 

 もう、腹を括ろう…。

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

「事情の大体はお聞きしていますが…本当に、この様な事があるのですね…」

 

 はい、物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回す、見慣れた制服姿のノンナさん。

 

「女神…様…ですか。俄かには、信じられませんでしたが、まぁ…えぇ…みほさん達の映像を魅せられたましたし…納得するしか御座いませんわね?」

 

 はい…早速、言い始めた格言を、即! …潰したので、少々ご機嫌斜めな、制服姿のダージリンさん…。

 

 …ん?

 

「みほ…達の……映像? えっ!?」

「前回、行われた、女神様達の救済措置とやらを、先程拝見しました」

「はい、私も見ました。…あんな直接脳内に現れる映像…。少々気味が悪かったですね」

「あ…あ~…な…なる程…ね」

「……」

 

 ダージリンだけではなく、ノンナさんも見たのか…。

 まぁ、アレ見せれば一発だろうしな…しっかし、映像って…あぁ、エリス様が怖い笑顔を向けている…。

 

「でもなぁ…。アレ見たからって、よく協力してくれる気になったな…ダージリン」

「まぁ…!? わわわ…私にも!? 縁が合ったと言う事ですし? し…少々……。いえ…こんな場です。正直に白状しますわね?」

「…お…おぉ」

 

 目を逸らし、声が上ずったぞ、ダージリン。

 正直に白状って…無理しなくとも…

 

「大変…興味が、ありますわ」

「ぐ…」

 

 いきなり冷静にならないでくれ…。

 俺としても…って、なんだ? 目を細めた…。

 

「ダージリンさんの仰る事も最もです。…自分達の未来の事ですよ? 気にならないはずがないでしょう? 隆史さん」

「ま…まぁ、そりゃそうかもしれんけど…」

「何よりも、隆史さんの生命の危機となれば、致し方ありませんわ」

「最優先ですね」

 

「あ…ありがとうございます…」

 

 い…胃が…。

 今回、みほがいないのが、救いといえば、救いか…お互いに…。

 

『 お呼びしましょうか? 』

「やめてくださいっ!!」

 

 

「まぁ? 一抹の不安もございますが…ね?」

「えぇ、ありますね。事実として、「ソノ未来」が、存在し…有ったわけですから」

 

 何故だろう…ノンナさんとダージリンが、アイコンタクトでも会話している…気がしてならない。

 こんなに、仲良かったっけ!?

 

「…ん? ソノ未来? 存在した?」

 

 なんだろう、ちょっとノンナさんの言い方に、トゲが…

 

 

「 みほさんと、まほさんの件 」

 

 

「 」

 

 

「「  こ の 浮 気 者  」」

 

 

「    」

 

 

 う…ぁぁ…すっごい真っ直ぐ見てきますね…。

 直立不動で…真っ直ぐ射抜くように…。

 二人揃ってっ!!

 言い回しも何もなく…あのダージリンですら、詰る事もしないでザ・シンプル…な一言…。

 あの様子では、多分…あの状況を理解してでの発言だろうなぁ…。

 すごく…あぁ、とても楽しそうに、言い放ったからなぁ…あぁ、胃が痛い。

 

 

「 隆 史 様 」

 

 っっ!!??

 

 び…ビックリしたぁ…。

 先程から、一言も喋らないオペ子さんが、俺の真横から服の裾を引っ張った。

 あ…今回俺、制服着とる。

 いやいやっ! んな事より、オペ子だ。

 

 見下ろすと、彼女…は…。

 

「……」

 

 顔を俯かせ、目元が影になって見えない…。

 そして…まったく動かない…。

 

「あ…あの…オペ子…さん?」

 

 そんな状態だけど、名前を呼んだら応えてくれた。

 その俯かせた顔を上げ…俺の顔を見上げたその顔は…。

 

「オペ子!?」

 

 

 …満面の笑みだった。

 

 

「…フフ…フ……ウフフ…」

 

 

 笑みだけではない…小さく笑いが聞こえてくる…。

 

 

「…ペコ? だ…大丈夫?」

 

 余りに場違い。

 会話の流れからしても、この真っ黒い異常な空間にからしても、その笑顔は余りに不自然…。

 浮気者呼ばわりされたのもあるし、オペ子の事を知っているダージリンからしても、心配して思わず名前を呼ぶ程の…。

 

 そして、その口から放たれた言葉…。

 絞り出す様に、歓喜に満ちた口調…そして、声色。

 

「…ぃ……フ…フフッ…じゃ……せん…ありま…せん」

 

 こ…怖っっ!!

 

 混じりけない、本気の笑顔で、その笑いは怖いっ!!

 

 どうしちゃったのっ!?

 

「…な…ない? 何が…」

 

 俺から言えたのはコレくらい…。

 が、その問いに、オペ子が更なる笑顔で答えた。

 

 

 

 

「私っ! 司会じゃありませんっ!!!」

 

 

 

 ……。

 

 

 

 は?

 

 

「やっとですっ!! 漸くですっ!!! 待ちに待ちましたっ!!!!」

 

 ……。

 

「私の番っ!! 私の番ですっ!!!」

 

 はい?

 

「散々っ!! あんな訳のわからない番組やらされてっ!! ただ眺めているだけの傍観者から、漸くこの場に立てましたっ!!」

 

 あ…あの…オペ子さん?

 

「この空間なら、本当に記憶って蘇るんですねッ!! いないっ!! 今回は、愛里寿さんがいないっ!! ちゃんと私の物語っ!!!」

 

「愛里寿? 愛里寿がなんで今…」

 

「はぁぁいっ!! 司会のオレンジペコ……って、セリフじゃないっ!! 私、今っ!! 司会者じゃないっ!! こんな発言も許されてますっ!!!」

 

 な…オペ子が、なにを言っているのか、分からない…。

 

 司会者? え?

 

「ペ…ペコ? オレンジペコ?」

「ダージリン様っ!? 浮気っ!? あんなの、私がやり続けさせられた時間! 散々、見させられきた物に比べれば! どーー……でもっ! いいですっ!! 終わった事ですっ!!」

 

 オペ子さんが、本気で喜んでいる…。

 先程のは、逆上した笑いではなく、本気の笑い…。

 

「もう、茶番は結構ですっ!! 早く始めましょうっ!! 青い女神様っ!! 青いのっ!!」

 

 な…何を? って、オペ子は駄女神が、青いのって知ってるのか?

 アレ?

 

 

《 隆史…隆史… 》

 

「なんだよ…」

 

 脳内に響く、駄女神の声…俺にだけって聞かせているのだろう。

 はしゃぐオペ子に、本気でたじろいでいるダージリンが見える…ノンナさんですら、どうしていいか分からない様だ。

 

《 この空間って、全ての世界線の交わりを、度外視する場所なのよね…前回の映像とかそうでしょ? 》

「映像? …あれか? ちほ、かほと…エリナとの映像同士の会話…の事か?」

『 そうです…。ある程度は、大丈夫なんですけど…今のオレンジペコさん…少し、別の世界線の記憶が、入って来てますね… 』

「エリス様?」

《 余程、強く願ったりしないと、無理なんだけど…可哀想に… 》

「可哀想? え?」

『つ…つまりですね? オレンジペコさんは…』

「オペ子は?」

 

 

《『 かなり溜まっていた…のでしょう…』んでしょうね? 》

 

 

「????」

 

 

 

「女神様っ!! 買収されない女神様っ!!」

 

『 え…私ですか? 』

《 …… 》

 

 …買収?

 

「因子譲渡後、私ちょっと……こう……」

 

 ん? 慣れた様に、オペ子がエリス様にゴニョゴニョと、耳打ちをしている。

 

『 …え。ですが、それですと後々… 』

 

「いいじゃないですかぁ…前例があるのですからぁ……」

『 いや…あれは証人として…それに、一応ですね? 規則としましては… 』

「…………」

 

 オペ子が、グリンッと…ちょっと怖い動きで、頭だけ俺に向けてきた。

 そして、明るい笑顔で…。

 

「あ、隆史様っ!! ペットを飼われ始めたとか?」

『 !? 』

「ん? あぁ、子犬を飼い始めたんだけど…」

「…そうですか。今度、見てみたいですっ!」

「ん? あぁ、いつでもいいぞ? …って、どうしたんだ? いきなり」

 

 エリス様と話していたと思ったら、急に俺に会話を振ってきた。

 クリスの事を聞いたと思ったら、すぐにエリス様に顔を向けてしまったな。

 今の……なんだったんだ?

 

「で? どうでしょう。なんとかお願いできませんか? ね? ね? ……ネェ…?」

『いえ…あの…』

 

「 ネ!? い・ぬ・の! ……女神様? 」

 

 

『  』

 

 

「…あれ? エリス様って、幸運の女神だった気が…犬?」

『 …… 』

「駄女神? いつの間に来てたんだ?」

『 あの世界線の彼女…よっぽど溜まってたのね… 』

「は?」

『 ある意味で、私達にとってジョーカーになっちゃった…。いえ、あの立場でしょうし…嫌でも全体を把握しているのだから……同等… 』

「お前、何言ってんの?」

 

 

「では、開始しましょうっ!! ……今の私を還した所で、後日わかリますからね?」

 

『 ……は…はい 』

 

 

「なぜ、オレンジペコさんが仕切っているのでしょう?」

「え…えぇ、何故かある程度の事を、把握している感じですわね…」

 

『 ダペ子……。ブペ子とは違う…。これがダペ子… 』

 

 エリス様?

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

「さて…。未来の子供を、呼び出される前に…一つ、よろしくて?」

 

『 えっと、なにかしら? 』

 

 すでに、何時もの様に、どこか余裕を持った雰囲気へと戻ったダージリンが、駄女神に質問。

 

「ここでの事は、全て記憶から無くなるのですよね?」

『 えぇ、綺麗さっぱり無くなるわっ!! それは、隆史でも例外じゃないわねっ!!』

「隆史さんでも………結構」

 

 自慢げに胸を張る、駄女神。

 一瞬、オペ子の眉がピクッと動いたけどな…。

 しかし、ダージリンの、質問の意図が分からん。

 記憶が無くなるって事の確認を取ると、少し嬉しそうな顔をした。

 

「でもな? ダージリン、記憶を無くしても、ここを経由し…って、どうした?」

 

 俺と向かい合わせになると、人差し指を曲げ、口を元に添えた。

 とても真剣な眼差し…とも言える、目を俺に向けてきた。

 

「隆史さん、少々、お手をお借りしてもよろしいかしら?」

「手?」

 

 手…って、比喩的な事ではなくて、物理的な事なのか?

 手と言われて、思わず上げた俺の手を、逃がさない…といった感じで、即座に両手を添えてきた。

 

 なんだろう…ここまで、俺に触れてくると言った事は、今までなかったので少々驚いた。

 ノンナさんとオペ子も、露骨に俺に接近、そして手を取ったダージリンに対して、訝しげな表情を向ける。

 

「な…なに?」

「……」

 

 添えられた手から、ダージリンの体温。

 目の前に掲げる様にされている自分の手。

 細く長い…そして真っ白な指が添えられている。

 

「ふ…ふふ……き、記憶が無くなるのでしたら…と、思いましてね…ね?」

「な…なにが? どうしたんだ、いきなり。ここまで…」

「えぇ…これは、はい、チャンス? とも違いますが、しかし…これならば? この状況ですので…」

 

 俺の手を持つダージリンの顔が、段々と赤く染め上げられていく…いや、恥ずかしいなら何で、こんな事したんだよ…。

 先程から、ブツブツと自分に言い訳をする様な内容の一人事を繰り返している。

 

「…」ギリギリ

「…」ガリガリ

 

 ……。

 

 う…後ろからの視線…が、痛い…。

 何かあるのだろうか? と、その二人も特に邪魔をする事もなく、俺達をガン見しとりますね。

 いや…まぁ、俺が離れれば良いのだろうけど、ここまでしてくるダージリンが、少々珍しく、何の目的か気になる。

 

「あの…ダージリン? 一体、何がした…」

「え? 手を握りたかっただけですわ」

 

「…………」

 

「「 ………… 」」

 

 胃が…胃が…。

 

「多少? 大胆な真似をしても、後々記憶が無くなるのでしたら…そうです。旅の恥はかき捨て…といった言葉もあるくらいですし? 多少…私も…」

 

 ……。

 

 目を逸らして、赤い顔を更に赤くした…。

 

 …………。

 

 や…ば…、え? 純…というか、奥手なのは知っていたけど…え?

 

「えぇ…隆史さんは、鈍感ですからね。この様な場でないと、とてもとても…」

「鈍感、関係なくないか…? 普通わからんぞ…手を握りたいだけとか…」

 

「…私が…この私が、異性の手に触れたいと、思わせられる殿方が、何を言っているのでしょう? 本当に、この場の意図がお分かりになりませんか?」

 

「   」

 

「将来、結ばれる可能性がある相手…。そのお相手…が…こ…この私では…そ…その、何か、ご不満が…ございますか?」

 

「   」

 

 

 な…え……はい?

 あの…

 なぜ、俺の手を胸元に抱きしめたのでしょう?

 なぜ、顔を埋める様に、すっごい俯いたのでしょう!?

 

「ぅ…ぅぅう…」

 

 ちっさ…。

 ダージリンの体って、こんなに小さかったか?

 体を縮こまらせ、更には少し、震えだした…。

 

 握る手。

 そこから物凄く熱い…それこそ火傷でもしそうな程の体温が伝わってくる…。

 

「ま…まぁ!? タラシさんは、タラシさんですからっ!? この様な手を握るられる位、今更かもしれませんねっ!!」

「あの…ダージリン?」

「わ…私は、それこそ顔から火が出るかもしれませんのにね…」

「……」

 

 な…なぜ、今…このタイミングで…こんな事を…そして、そんな事を…。

 

「っっ!!」

 

 ダージリンの手が動いた…。

 俺の手を誘導させる為に、その手を動かした…。

 

 ダージリンの顔へと…。

 

「ほ…ほら…」

 

 

 手の平から、別の体温が…。

 

「あ…熱い…でしょう?」

 

 

 …俺の手の平が、ダージリンの頬を包む様に添えられた。

 

 

 目の前の彼女の顔を…頬を持つ様な形。

 

 顔を上げ、俺の顔を見上げるられた。

 

 熱っぽい…彼女の顔もこれで確認が取れた…。

 

 涙が滲む…いや、うるませた熱っぽいダージリンと、視線が絡んだ。

 

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 

 

「 …相変わらず、子供の前でいちゃつくのは、止めてくれよ 」

 

 

 

「っっ!!??」

「っっ!!??」

 

 

 

 

 

 

 > ダージリンの場合 <

 

 

 

 

 

 

「はぁーー!! はぁーー!!!」

 

 突然、声を掛けられ…俺から飛び下がる様に、高速で離れたダージリンさん。

 肩から息をされてますね…。

 いや…先程まで彼女の顔に触れていた手に目を落とす。その手の平には、まだ体温が残っている様に感じる。

 

『 やめて…この空間で、マジのラブコメは勘弁してっ!! 背筋がむず痒いっ!! 』

『 はぁ~い…では、最初は彼女からですねぇ… 』

 

「はぁー…。はぁはぁ…はぁ…」

「……………………」

「……………………」

 

 …悶え苦しむ駄女神と、ジト目をダージリンへと向けている…役2名。

 何故か、エリス様の声が冷たかった…。

 

「はぁ…はぁ…。ひ…人前で…ワタクシ…人前デ…ここまでする気は…なかったのですが…」

 

 あ…うん。

 なんだろう…ダージリンが一瞬、別の女性の様に見えてしまった…。

 あれが…素という、奴なんだろうか…?

 

 最後には流石に……彼女が何を言いたいか、分かったけど…。

 

『 よ…よく我慢できたわね。私でも途中でわかったわよ? 』

「まぁ…ダージリンさんのお気持ちは、理解できます…」

「…アレは、邪魔しては駄目でしょうしね…。流石に野暮過ぎます」

『 空気を読んだのね… 』

「まぁ、限界は近かったですが」

「ノンナさん、決壊寸前でしたね? 私もですが…」

『 …… 』

 

 な…なにを言っているのかな?

 

「 あれ? 俺は、放置っすか? 」

 

 おっと…忘れてた…。

 ダージリンと俺の真横から、急に声を掛けてきたこの……。

 

 この…え?

 

『 では最初の子供ねっ!! 』

 

「え? やっと息が……私との…えぇっと…」

「…不本意ですが、ダージリンさんとの……え…」

「…わぁ…」

 

 全員の視線が、漸く自分に向けられたと、自覚したのだろう。

 放置され、座って待っていたのだろう。…その腰を上げて、立ち上がった。

 

 ……。

 

 幾つだ……今回の子供…。

 

『 あ、自己紹介してください 』

「 んぁ? あぁそうか、俺の事は知られてないのか…めんど… 」

『 あの… 』

 

「 はいはい。尾形 一隆…11歳 」

 

 ……。

 

「カズタカ…さん。…11歳」

「あの…とても見えませんね」

「一瞬、中学生かと思いました…ある意味で少し…安心しました…年齢的な意味で」

 

 …………。

 

 体は細いが、明らかに俺の子供だと、分かる風貌…容姿…。

 立ち上がったその子供は…かんっぜんに…ガキの頃の俺だった。

 

 但し、ダージリンの子供でもある為、少し違う。

 

 ……金髪碧眼……。

 

 背が高く、明らかに似合わないとか、間違えらるととかの理由で、ランドセルをしないだろう想像がつく程の小学生が…そこにいた。

 

「ひゃぁー…隆史様、そっくりですねぇ」

「ここまで…しかし、いぇ…」

「………」

 

「えぇと…一隆…さん?」

「ん? なに? 若いお母様」

 

「」

 

 その息子をダージリンが、呆然と見つめていたが、お母様と呼ばれた直後、完全に固まった…。

 いや? 何故か、小さくガッツポーズを取っている。

 

「「 ………… 」」

 

 う…ノンナさんと、オペ子が俺と息子を見比べている…。

 

 しっかし…ダージリン。

 

 嬉しそうだなぁ…すっげぇ笑顔だなぁ…。

 俺としては…いや…まぁ、先程までの空気というか、雰囲気が消し飛んだので、もういいっす…。

 というか、その外見でお母様って…なんか俺…マザコンぽっくって、イヤダナァ…。

 

 え? 胃? 別に痛くないよ? 麻痺してんじゃね?

 

 …ってくらいに思わないと、多分そろそろ、本気で穴空く…。

 

 

「ダージリンさんの未来は気になりますね…。やはり補足をお願いしたいのですが…」

「そうですね。11歳って事は、22歳の時…ほぼ大学卒業して、すぐじゃないですか…」

 

「 おっ!? ノンナさんっ!? オペ子さんっ!? 若いっ!! 可愛いっ!! すっげぇー!! 」

 

「っ!?」

「っ!?」

 

 …俺の息子にしては……軽い……軽すぎる…。

 隆成もそうだけど、息子連中は、何故に毎回テンションが高いのだろうか?

 

「 いや? でも、オペ子さんは、あんまり変わらないなぁ…すごいな、ずっと若いって」

「そ…そうなんですか?」

 

 …なに?

 

「 いやぁ…ノンナさん、この頃から相変わらず…」

「ん? 何がでしょう?」

 

 おい、息子。どこ見てる。

 

 目線で結構、バレるモノだぞ? バレるんだよ、バレたんだ。

 

 ヤメテオケ。

 

「…オペ子さん。睨まないでください」

「言い回しまで、隆史様そっくりですね…」

 

 よし、やはり隆成と同じノリか。

 ほら…オペ子が、すっごい顔しただろうが。

 やはり、俺経由とこの頃からの付き合い…特にオペ子は、将来的にも交友関係が続いていくのだな。

 俺の真似をしての、オペ子呼び…だろうな? ノンナさんも、それは同じなのだろうな。

 

 しかし…隆成と同じでは、多分またオカシナ流れになりそうだ…。

 一言先制をしておくか…。

 

「よし、一隆」

 

「 んだよ、親父 」

 

「「「 ………… 」」」

 

 ……。

 

 すげぇ、ぶっきらぼうに言われた…。

 なんだ、このダージリンとの差。

 

「ちょっと待て、お前。ダージリンはお母様で、俺は親父呼ばわりか?」

 

「 スキンヘッドの父親を、お父様と呼びたくねぇ 」

 

「  待  て  」

 

 マ テ

 

 マ ッ タ

 

「 見た目完全にヤクザだし…そんな相手にお父様なんて呼んでるの見られたら、何を言われるか分からないだろ? 」

 

「…………」

 

 待てと言うのに…。

 本当に嫌そうに言い捨てやがった。

 なまじ俺の顔で言うから、本気で嫌だ。

 

 なんかもう…色々と…。

 

 

「エリス様……補足…お願いします…」

『 あ…はい 』

 

 ダージリンは、何故かまだ浮ついていて、熱っぽい顔をしているので…なんかダメそうだっ!!

 

『 ダージリンさんは、イギリス留学後…まぁ色々とありまして… 』

 

「色々って…」

 

『 あのね? 彼女…癖が強いでしょ? かんたすろん? とか言う競技を含めて…戦車道界自体を、大学在学中から引っ掻き回したみたいでね? 』

『 少々度が過ぎた様でして…ほとぼりが冷めるまで、大人しくしていろという、名目で…ご両親が、その…お見合い話を…その… 』

「…お母様ですね」

『 あ…はい。戦車道界には、それこそ革新的な事だったらしいのですが…どうにも目立ち過ぎたらしく…』

「はぁ………」

 

 あ、ダー様。

 大きな溜息と共に復活。

 

「どうせ、保守的なお母様の事です。身を固めて一度落ち着けとか…その様な事を、仰しゃたのではございません?」

『 あ…はい。そうですね…概ね… 』

「はぁ…まったく…」

 

「オレンジペコさん。…ほとぼりが冷めるまで、身を潜めておけって事ですよね? 結婚までさせようとして……何をしたのでしょう?」

「そうですね…ダージリン様の事ですから、無茶をしたとは思いますが……そこまで両親から言われる程とは…なんでしょう? 想像もつきません…」

 

『 あ、なんかね? 「おーびー会」ってのに、喧嘩売って回ったみたい 』

 

「「……」」

 

『 あぁ、えぇと…ダージリンさんのご実家は、資産家ですよね? ですから…えっと、チャーチル会? そこへの所属は簡単みたいでした 』

「ダージリン様…OGとして、チャーチル会へ、所属はしていたんですね」

「オレンジペコさん?」

「それで、喧嘩売って回ったとか…」

「なる程…大体、将来私の考えが分かりましたわ」

「…獅子身中の虫」

「ま、そういう事ですわね」

 

 あ、そもそも…この世界線って、どちらの世界線なんだろ……。

 大洗学園の廃校か…在校か…。

 少し退屈そうにしている一隆を見てみる。

 ……ぬ。筋肉が足りない。

 

『 え…えぇ、何故か全OG会の解散…しかし、資金援助はストップさせない…その様にしていましたね 』

「近年、そのOG会の学生戦車道への横槍が、ものすごいですからね…。1年の私でも、例年と比べれば分かるくらいに…」

『 そこの卑怯者と結託して、文字通り潰したみたいよ? 』

 

「「 …… 」」

 

 おーい、一隆。ちょっとこっち来い。

 嫌な顔するなよ、お父やんやで?

 うん…二つの視線は気にするな。…な?

 

『 私利私欲で寄付金を餌に口を出し、学生すらも駒として扱い私物化している…と、全国メディアを利用し謳いまして… 』

「……ダージリン様」

「ま、概ね間違いではございませんね」

 

 

 ちょっと腕に思いっきり力入れてみて? 

 そうそう。

 おとん、上腕二等筋掴んでるからさぁ…。

 

「権力や圧力が、どこかで絡んで来そうですから、言うほど簡単ではないと思うのですが…。寄付をして頂いている方も、あっさり流される程、愚かではないでしょう?」

「そうですよねぇ…。ちょっとご都合主義っぽいです」

『 はぁ……あまり言いたくありませんが… 』

「なんですか?」

「なんです?」

 

『 本気のダージリンさんと、本気の隆史さんが起こした事ですよ?  』

 

「「 …… 」」

 

『 一部に物凄く恨まれたようで…そこからでしょう 』

 

「「 …… 」」

 

『 下準備中に、目を付けられた…ってトコでしょうね? で…お見合いなどの縁談を持ってこられてる中…内緒で付き合っていた彼を両親に紹介… 』

『 …ちなみに、ダージリンさんが隆史を謀って、いきなり両親に会わせたわ。サプライズがどうの言って… 』

『 物凄い顔してましたね…。お父様が、殺気しか放っていなかった様で… 』

『 面白い顔してたわよっ!!?? 』

 

「「 …… 」」

 

『 で…そんな場所で、近状のお見合い話等を薦められて、強引に結婚させられそうだと、初めてそこで隆史に暴露 』

『 …ま、あの男の事だし、後は想像できるでしょ? 』

 

「「 ………… 」」

 

『 まぁ…直前で、ダージリンさんも余りに強引な方法だったから、尻込みしてしまったのですけどね…そこでまた… 』

『 あんなのただの、泣き落しよね? 実際、そうだと断言できそうだったし… 』

『 え…えぇ。しかし、隆史さんの性格なら…と言いますか、例の無線前で皆さんにハッキリと言ってましたよね? その時は、西住 みほさんが対象でしたけど… 』

『 はい、ダージリンさんの勝利 』

 

「あら、素敵ですわね」

 

「「 …… 」」

 

『 あ、ちなみに…ダージリンさん 』

「なんでしょう?」

『 貴女の母親って、美人よね? 実年齢よりも、大分若く見られる程の 』

「ま…まぁ…。今でもたまに姉妹と間違われますが…」

 

 

 

『 隆史と異常に仲が良いから気をつけてね? 』

 

 

「「「 …… 」」」

 

 

『 保守的と先程、おっしゃられていましたが、そこら辺の感覚が、どうにも隆史さんと合った様で…つまり… 』

 

「「「 …… 」」」

 

「…ち…ちなみに、それはいつ頃からでしょう?」

 

『 出会った時くらい? 即、気に入られた見たいね。…父親とは、犬猿の仲だけど… 』

 

「……」

「…ダ…ダージリン様?」

「凄まじく青い顔しましたね…」

「ちなみに…ダージリン様のお母様って、おいくつ…なのでしょう?」

「……」

「…ダージリンさん?」

 

 

「こ…今年で…35歳になります…」

 

 

「「 」」

 

「…えぇ、ペコ…ノンナさん。お父様を軽蔑しても構いませんわ…」

 

「……」

「……」

「そ…そうすると、22歳の時に出会う……」

「…」

 

『 そうね。今の西住流家元さんと、同年齢ね 』

 

「 隆史さん、此方にいらしてください 」

「 隆史様、此方にどうぞ 」

「 隆史さん…Иди сюда 」

 

 

 ん? お話終わったな?

 あれ? なんで揃って、手招きしてるんだろう?

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

「……ふぅ。落ち着きました」

 

 なぜ俺は、怒られたのだろう…。

 一体、何対して怒られたんだろう…。

 しかも三人に…。

 

 

「所で…みほさんは…」

「……」

「あっ! そうですっ!!」

 

 ……。

 

 なんでこう…畳み掛けるように…。

 いやまぁ…俺も気になるけど…。

 

『 え? あぁ…この世界線だと、隆史が振られるわよ? 』

 

「……」

 

『 まぁ、澤 梓さんの時と同じパターンですね。ダージリンさん、留学していても、隆史さんとの交流は続けていたみたいですから。狙いすました様に、ダージリンさんが掻っ攫いましたね 』

 

「  」

 

『 フリーになったとたん、他の女性と、くっつくとか…クズよねクズ 』

 

「駄女神…よぉぉぉ!!」

 

『 ちなみに、この世界線だと、西住 みほさん…弁護士になってるわ…… 』

 

「「「「 ………… 」」」」

 

 み…みぽりん、色々と才能があるんですね…。

 多種多様な職業にオツキデスネ…。

 

「さて…あまり、時間を掛けられないからね? 聞きたい事、他にある? 直接、その子供に聞いてみたら?」

 

 一隆は、完全に飽きてしまったのか…ボケーっと、俺らを眺めていた。

 俺らの視線に気がつき、こちらに顔を向けた。

 その子供に、ダージリンが、妙に緊張した口調で話しかけた。

 

「んんっ!! では、一隆さん」

「 なに? 」

 

 咳払いを一つ…。

 やはり聞きたい事があったのだろう。

 ダージリンが、少し興奮気味に一隆に詰め寄る。

 

「未来の隆史さん…そ…その、お…おおお父様は、どのような感じ…なのでしょう!?」

 

「 親父? え? ハゲだけど? 」

 

「………………」

 

 よし、さっきも言っていたが、今度は間髪入れずに即答しやがったな。ハゲつったなっ!!

 すげぇ事、すげぇ普通に言ったけど!! ダージリンが聞きたい事って、そうじゃねぇだろ、多分ッ!!

 ちょっと、腰を落ち着けて、話を聞こうか? ん?

 

「ハ……え?」

「 まぁ、お母様が浮気対策って事で、剃らしているみたいだけどね。髭だけは好きに伸ばさせてるけど… 」

 

「…なる程」

「…なる程」

「…Нару-э」

 

 

 ……。

 

 …………またか。

 

「 あ、親父 」

「…なんだ?」

「 涼香叔母さんに、言ってくれない? 」

「…姉さんに? 未来の事だから、未来の俺に言えよ…まぁいいや、何を?」

 

「 俺を2Pカラーって呼ぶのやめてくれって… 」

「…………」

 

 いや…確かに、ガキの頃の俺の生き写しだけどさ…。

 言い方…。

 

「 ちなみに、一隆。…姉さんとダージリンって、仲は…」

「 良いと思う? 」

 

 

 

「…思わない」

 

 一隆が、静かに頷いた…

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

『 ほ…補足を続けるわっ!!! 』

 

『 将来の隆史さん。婿入りはしませんでしたが、ダージリンさんのお父様から、お仕事の一つを任されてまして…結構裕福なご家庭ですよ? 』

『 逆玉には、違いないけどねっ!! しねっ!! 』

「裕福って…俺が? 何しているんですか?」

『 …無視された 』

「…で?」

 

『 えぇ…と、サラリーマンですね 』

 

「…は?」

 

『 ダージリンさんのお父様の経営している会社で、一から働いてましたね 』

『 娘の相手として、相応しくさせるって、息巻いてるわ。隆史も負けじと働いてるみたいだけどね 』

 

「ふ…ふ~ん…」

 

 なんにも言えない…。

 多分、親父さんに色々と言われたのだろうが…まぁ、うん。

 

『 後は…オレンジペコさん。貴女もお見合いで…ですが、ご結婚をされています 』

「わ…私ですか」

『 もちろん、隆史達との友人関係は続いてるわ。…ま、もう流石に、吹っ切れてるみたいね。良い思い出として隆史の事は、消化してるわ 』

「…ふ…複雑ですね」

『 酔わなければ… 』

「え…」

『 オレンジペコさん。お酒は飲まない様にしてくださいねぇ…この頃には自覚がありますから、一切口にしてませんけどねぇ 』

「はいっ!? えっ!?」

『 はい、つぎぃ。ノンナさん 』

「ちょっと、待ってくださいっ!! そこまで言って…」

『 知らない事が、良い事もあるのよ? 』

「…………」

 

『 はい、納得してもらった所で、ノンナさん 』

「………………お酒」

「オレンジペコさん…」

 

『 ノンナさん。貴女も結婚はされてます。33歳では海外移住してますね…まぁ、ロシアだけど 』

「あ……はい」

『 隆史との交流は、もちろん続けてるわ。あ、貴女は… 』

 

「…もう結構です」

 

『 ノンナさん? 』

「そちらの話は、聞きたくありません。現状の…今の私のゴールを目指すだけです」

『 …… 』

 

「違う未来の話は、私には不要な異物です」

 

『 …おーう、言うわね 』

『 初めてですね…拒否されたのは… 』

「 なるほどねぇ 」

 

「流石…ランクSS+…」

「ランク?」

「あ…いえ、こちらの事です」

「?」

 

 …あ、はい。俺に発言権はないと思うのです。

 

「…………」

 

 うっ…。

 どこか楽しそうに、ノンナさんから、流し目を送られた…。

 お…?

 ダージリンが、なんかむくれてる…。

 眉を斜めに、俺とノンナさんの視界の間に立った。

 そしてそのまま、会話を切り替える様に、すぐさま一隆へと話しかけた。

 

「所で…一隆さん」

「 ん? なに? 」

「お父…いえ、貴方のお父様と、お祖父様…仲はよろしいかしら? 少々、そこが心配…」

「 親父とお祖父様? あぁ~…すげぇ、仲悪いよ? お祖母様とは、すっげぇ仲いいけど 」

「…………」

 

 な…なんで、目を見開いてこっちを見たんだろう…。

 

「 俺にはお祖父様、すげぇ優しいんだけどさ。親父にだけ、すげぇ態度冷たい。まぁ、親父も大概だけど…会う度に喧嘩してる 」

「……」

「 まぁ、なんか楽しそうだけど。喧嘩も何故か、ほとんど腕相撲で白黒つけてるみたいだしな 」

 

 でも、楽しそう? どういう事だ?

 それを言っている一隆も、どこか楽しそうにしてるし…。

 

「 お祖父様、親父に負けない為とか何とか…いい歳してジム通いだしたりな? 最終的に、親父と一緒に同じジム通ってるし… 」

「……まったく、仲が良いのか、悪いのか」

「 良いんじゃない? ただ…二人揃って、俺にも薦めるのやめてほしいけど…俺、まだ小学生だぞ? 」

「 ………はぁ 」

 

 何か、想像がつくのか…大きく溜息を吐きましたね、ダー様。

 まぁ彼女の父親だ。何か理解が出来る所が、あるのだろうな。

 

「 問題は、お母様 」

「え…? 私?」

 

 …お、流れが更に変わった。

 矛先が、ダージリン…そうだな、彼女の将来も気になる。

 

「 聖グロに進学を薦めるの止めてくれよ 」

「え…」

「聖グロリアーナか?」

「そうそう、親父ん時は、知らないけどさ。今は中等部があって、そこに進学させようとお母様、躍起になってるんだよ」

 

 心底嫌そうに、ため息をついた一隆。

 ダージリンって、結構、そういったの気にするタイプなのかな?

 自分の通っていた学校に薦めるとか…まぁ、たまにいるよな

 

 

「 俺さ…どうせ学園艦に入艦するなら黒森峰に入りたいって、言ってるんだけど聞いちゃくれねぇんだ 」

 

 ……。

 

 いや、小学生で親に反発してまで、将来の進路まで考えている。

 そこまで考えられるってのは、ある意味すごいけど…ここで黒森峰? は?

 

「 あ、そうか…親父ん時は、違うのかな? 黒森峰高校って、今は共学なんだよ 」

 

 黒森峰……高校…?

 共学になった?

 

「…黒森峰?」

 

「そうっ!! 西住流家元っ!!」

 

「……」

 

 なんだ…一隆が、すげぇ嬉しそうな顔した…。

 俺と同じで、子供っぽくない見た目だから、それこそ苦労しているだろうとは、思う。

 が、ここで子供らしい…非常に子供らしい、嬉しそうな顔をしたな…。

 

 確かに黒森峰は、西住流のお膝元。

 そう、西住流の…。

 

 …だけど、お前……家元って、はっきり言ったな。

 

「か…一隆さんは、戦車道に興味がお有り?」

「 そりゃ、嫌いじゃないよ。男だから戦車できねぇけど。親父に連盟本部とかに、連れて行ってもらう位には好きだよ 」

「…え…本部?」

「 親父、一応仕事しながら、連盟に所属してるしね 」

「あら」

 

 ……まさか…。

 

「…一隆」

「 なに? 」

「お前の言う、西住流家元って、まほちゃん…いや、「西住 まほ」か?」

 

「 そう!! まほさんっ!!! 」

 

 

「「「 ……………… 」」」

 

 

「 まだ、次期ってのが、付くらしいけどね。親父と本部行くと、大体いるよねっ!! 」

 

 

「「「 ……………… 」」」

 

 

 静寂…。

 

 呼吸の音すらしない、そんな静寂…。

 

 あ、ダージリンが、目を閉じて顔を顰めている。

 …ず…頭痛かな?

 

 

『 あ、うん。ちなみね 』

「…だ…駄女神?」

 

『 その連盟本部? とかに行く時は、隆史がその子連れて行くっていうよりか、ダージリンさんが、絶対にその子を連れて行かせてるってのが、正確ね 』

 

「「「 ……………… 」」」

 

「はぁ…ダージリンさん。気持ちは理解致します」

「ノンナさん…ありがとう…。未来の私の事ですが、痛いほど納得がいきますわね」

「……」

 

 ここで漸く、ため息の漏れた音…。

 

「 ただなぁ…戦車道やってる子、一杯いるだろ? ちょっと、そこは嫌だなぁ… 」

「あら、どうしてかしら? 一隆さん、戦車道はお好きなんでしょう?」

「 戦車道はね? でもなぁ…戦車道してる女の子って…どうにも… 」

「私もペコも、ノンナさん。皆、戦車道を…」

「 あ、違う違う。同い年位の女の子が、苦手なんだ 」

「苦手? あぁ、一隆位の年齢の男の子って、女の子が苦手な奴多いな。思春期が近づいてきている証拠だよ」

「隆史さん? そういうモノですか? …ふむ」

「 なんかさ、俺って親父とそっくりらしくて…その…見た目以外に、行動というか、なんというか…良くわからないけど 」

「そっくり?」

「……」

「ノンナさん?」

「 普通の子は大丈夫なんだけど…戦車道してる子とかと、少し仲良くなると…」

 

「…まさか」

「……」

「……」

 

 な…何?

 なんで、いきなり俺を見たの?

 

「 やたらと、ベタベタしてきて嫌 」

 

 

「「「 ………… 」」」

 

 

「 なんか知らんところで、あっちこっちの女子と…って、すぐに噂たてられるし…まほさん一筋なのに… 」

 

 

「「「 ………… 」」」

 

 

「 親父、戦車道乙女キラーって言われてたんだろう? それの息子か…とか、すっげぇ詰られるから嫌 」

 

「 」

 

「 だから、まほさんが良いっ!! 」

 

 西住流キラーなら、呼ばれた事ありましたけど…それはない…。

 

「親子…揃ってぇぇ…」

「遺伝って…すごいですね」

「隆史様と、同じ行動とかとそっくり…無意識に…」

「父親の背中を見て…とは、良く言いますが…まったく…」

「挙句……西住流家元…」

「まったく…」

「はぁ…まったく…」

 

「  」

 

 

 ……。

 

 あ…すっげぇ見られてる…すっげぇジト目で見れてる…。

 いやな? お前も見られてるんだぞ? 一隆。

 

「…ん?」

 

 一隆が何か聞きたそうな顔で、俺を見上げてきた。

 あ~…うん。

 

「どうした?」

「 なぁ、親父 」

「ん…なんだ?」

 

 

「 若いまほさんも、あんなに可愛いの? 」

「可愛いなっ!!」

 

 

「「「 ……………… 」」」

 

 

「よしよし、まほちゃんを、綺麗だとか凛々しいとか言わない辺り、お前も分かってるな」

「 当たり前だろっ!! 俺みたいな小学生でもわかるくらいなのにっ!! みんな揃ってなぁっ!! 馬鹿だよなぁ 」

「だよなぁ!!」

「 髪はっ!? 今みたいに長いのっ!? 」

「その今が、俺には分からん…というか、伸ばすのか…」

「 親父っ!! 」

「え…? あぁ、短いぞ? ショートカットだ。長いのも似合いそうだけどなぁ…」

「 似合うよっ!! 似合わないハズがないだろっ!? 」

「だよなぁ!!」

「 戦闘力は!? 」

「すっごいぞっ!!」

 

 

「「「 ……………… 」」」

 

 

「 みほさんは、あんな美人なのに…どうしてこう、姉妹のイメージが違うんだろ… 」

「み…みほ…?」

「 そうそう、まほさんと同じで、髪の毛長いのに、すっごい印象が違うんだ 」

「そ…そう……か…」

「 職業柄、凛々しいってイメージが強んだよねぇ…厳しいっていうか…。その割には父ちゃんには、優しいのに… 」

「そ……う、ですか…」

「 …う~ん 」

「ど…どうした、一隆」

「 いやね? なんでだろうなぁ…って 」

「…何が?」

 

 

「 なんで親父、お母様と結婚したの? 」

 

 

 ……。

 …………。

 

 

「お…おまっ…! お前…」

 

 

「 いや、だってさぁ…。まほさんと、結婚できたかもしんねぇんだろ? まほさん言ってた 」

 

 

「  」

 

 

 空気が…死んだ。

 

 何度目だよっ!!

 

 キョトーン…とした顔で見上げてくんなよっ!!

 

 痛い痛い痛いっ!!!

 ダージリンさんっ!? なんで抓るの!?

 俯いてるから、顔色わっかんねっ!!

 

 

「色々と、大人にはあんだよっ!!」

「 そうそう、そうやって大人って言葉使って、いっつも誤魔化すんだよなぁ…みほさんともそうだったんだろ? 聞いたら、すげぇ顔したけど… 」

「いや…子供って残酷だな…。お前、結構まともに会話出来るから、忘れそうになるくらいなのに…」

 

 みほにまで聞いたのか…。

 

 な…なんか…。

 なんかないかっ!?

 えっとっ!!

 

「綺麗な母ちゃんいいじゃないかっ!! ダージリン、美人だろっ!?」

「っっ!?」

「 まぁ…そりゃ…。子供の俺から見ても思うけど…結構、友達から羨ましがられるし 」

「じゃあ、いいじゃねぇかっ!! 父ちゃん、母ちゃんが、好きだから結婚したんだよっ!! そういうもんなんだよっ!!」

「っっ!!??」

 

「 まほさんよりも? 」

「そ…そうだよっ!!」

 

「 みほさんよりも? 」

「そうだよっ!! 二人よりダージリンの方が、好きだったんだよっ!! 」

「  」

「 ふ~~~ん。そういうもんか… 」

「そういうもんだよっ!! 納得してくれよっ!! 頼むからっ!!」

 

 怖い…子供怖い…。

 

 すっごい遠慮なく、ぶっ込んできます…。

 

「 お母様…結構、面倒臭い性格してると思うのになぁ… 」

「…おい、息子」

 

 やっと…渋々だが、納得してくれた様だ…。

 そういや、抓られていた部分が、痛くない。

 

 …代わりに、服を下へと引っ張られている。

 

「ダージリン? …ダージリンッ!!??」

 

「………っ…ぁう…」

 

 どうした、ダージリンッ!! ちょっとキャラ違うぞっ!?

 泣きそうな…って、いや、すっげぇ顔色赤いなっ!!

 縋り付くように顔を上げたダージリンが、過去例を見ない程に真っ赤っかっ!!

 

「…ノンナさん」

「え…えぇ、我慢です、我慢」

「………」

「………」

 

 目を見てくれない…すっごい逸らしながら…両手で手を握られた…。

 

 あの…。

 

 

「 そうそう、後ソレ。子供の前で、ベタベタするのやめて 」

 

「 」

 

 

 ……えっと。

 

「 お母様、親父を尻に敷いてる様に見えるんだけど、あくまで見えるだけ…もう、なんか…キモイ 」

「きも…」

「 親父のどこかを、そうやって、大体指で掴んでんの。服の端だったり、なんだり…言葉と態度だけなんだよ…親父に対して横柄なの… 」

「っっ!?」

「 いや、あからさますぎて…子供に気を使わせちゃ、ダメだろ… 」

 

『 子供に見透かされてますね… 』

『 …そうね。あの様子じゃ、仕方ないか 』

「どういう事です?」

「それは、キニナリマス」

 

『 将来ね? これまでの鬱憤を晴らすかの様に、ダダ漏れになります 』

『 逸見 エリカ(33)さんに、匹敵する程ねっ!! 』

 

「なっ!? アレと一緒ですかっ!?」

「アレとか言いましたね…」

 

 あの…話してないで、ダージリン何とかしてください…。

 完全に動かなくなりましたけど…あの…そろそろ手を離してもらえると…。

 

『 あぁ。今のそんな感じですね。人前以外は、基本的にダダ漏れね 』

 

 ん…

 

「ダダ漏れって、何がよ…取り敢えずだな…この状態を…」

 

『『 ………… 』』

「「 …… 」」

 

「え…何?」

 

 まとめて、信じられないモノを見る目で見られた…。

 ただ、単純な質問をしただけなのに…。

 

「隆史様…いえ…それが、隆史様ですが…。想像つきませんか?」

「え? 想像?」

「アレだけ普段から、ダージリンさんの態度から、漏れていると言うのに…」

「えぇ…まさに現在進行形の様に…」

 

 えっと…

 

「何が?」

 

 

『『 ………… 』』

「「 …… 」」

 

 あ…あれ? 黙っちゃった。

 

『 あぁっ!! もうっ!! めんどくさいっ!!! この男!! 面倒っ!! 』

『 …これが、将来まで続くのですよね… 』

 

「いや…だから…」

 

 なんでお前が憤慨してんだよ…。

 

『 良いっ!? しっかり聞きなさいっ!! 』

 

「んぁ? なんだよ。指差すな」

 

 ビシッ! って、感じで片手を腰に添え、俺に対して指を突き刺してきた、駄女神。

 

 

『 言い切っても良いわっ!! この、ダージリンさん!! アンタに甘えたくて仕方がないのよっ!!! 』

「っっ!?」

 

 お、ダー様が意識を取り戻した…か?

 一瞬、肩が跳ね上がったな。

 

「…は? ダージリンが?」

 

『 この娘、結構溜め込む癖があるのよっ!! 隊長としてとかっ!! あんなお嬢様学校出し? その周りの目とかっ!! OG連中からの圧力とかっ!!! 将来もそんな事ばっかりで、すっごい事になってるのよっ!! 』

「あー…うん。ストレスとか凄そうとかは、何となく分かるな。結構、参ってる時とかも…」

 

『 も~~っ!!! 面倒っ!! 本当に馬鹿じゃないのっ!!?? 分かってんなら、分かりなさいよっ!!』

「意味がわからん…」

 

『 他にもあるでしょっ!? 見た目のイメージとか周りの目とかっ!! 何よりこの娘のプライドもあるでしょっ!!?? 素直になれないってテンプレが通りじゃないっ!! ググりなさいよっ!!』

「ググれって…いや? 素直?」

 

 

 

 

 

 

『 この娘めちゃくちゃ、オレンジペコさんが、羨ましくて仕方ないって顔してるじゃないの!!! 』

 

 

「  」

 

 

 

 オペ子…? 羨ましい?

 あ…ダージリンが離れた…お…おい。

 

『 あんなに、素直に甘えられたらとかっ!! 同じ様に膝の上に座りたいとかっ!! 午後のティータイムを、あんたの膝の上でしたいとか、思ってるわよっ!!! 』

 

「  」

 

「…え…えっと…え?」

 

 取り敢えず、フラフラとした足取りで、駄女神へと歩いていくダージリン。

 両手をゾンビの様に、前に上げて…。

 

『 お茶請けのお菓子とか、食べさて欲しいとか…こう…手とか繋いで見たいけど、恥ずかしすぎて無理だから…せめて小指だけでも…とか、思ってもそれすら無理だと、顔赤らめたりっ!! 』

 

「   」

 

『 あそこまで青森の時から、ダダ漏れ全開…言いえて妙ね…。まぁ良いわっ!! あの時散々、我慢して気づいたらアンタは、転校っ! そしてなんか女できとるっ!! でもどうにか出来ないかしらっ!? 少々大胆に…でも、流石にっ…とか、ヤキモキしてっ!! 』

 

「   」

 

『 例の頭のおかしいゲームでも、頑張って執事依頼したら、アンタあっさり勝っちゃうしっ!! 馬鹿なのっ!? 馬鹿なんでしょっ!? 負けろよっ!! 負けたげなさいよっ!! 』

 

「   」

 

『 将来、付き合ってからもそうよっ!! 彼女が、奥手すぎるの重々承知でしょうがっ!!! 日中はプライドが邪魔してるかも知れないけどっ!! 』

 

「     」

 

『 漸く結婚して、家族の前位なら、いいかなぁ~♪ とか、思って、それでも頑張ってっ!! 少しくっつく位は、許してあげなさいよっ!! 』

 

「      」

 

『 わかぁぁっったかっ!! このクソ女っ隆史っ!! 』

 

「あ…はい」

 

 

『 …はぁ…はぁ…はぁ… 』

 

「        」

 

『 はぁ…はぁ……ふぅー… 』

 

「           」

 

「あ…うん。いえ、はい。わかりました」

 

 すっごい勢いで、それこそマシンガンの様に喋り…もとい暴露し始めた、駄女神様。

 肩で息をして、汗だくなりながら、ダージリンを庇護…したのだろう…本人的には…。

 

『 はぁ~…まぁ、後そうね。彼女、別のアレは、すっごいから…まぁ…アンタと性格的にもガッツリ当てはまるから… 』

 

「…は?」

 

『 ストレス解消…してあげなさいよっ! 』

 

 親指立てて、ウィンクされた…。

 いや…まぁ…うん。

 

 

 ああっ 駄女神さまっ

 

 

 いろんな意味で、お疲れ様です。

 お前も結構、ストレスあったんだな…ちょっと優しくしてあげよう…。

 

 

『 なにを呆然としてるの…よ… 』

 

 あ、はい。

 

 すっ……パーーーン!! って、ちょっと懐かしい音がしましたね。

 

 

「…女神…と、仰言いましたわね?」

 

『  』

 

 

「 暴露…えぇ、暴露……お覚悟…あっての事ですよね? 」

 

『   』

 

 あ、うん。呂律が回ってないな、ダー。

 

「…えぇ、流石ですわ…。ほんっとぅぅに…見事に言い当てててたぁがぁるぁ!!」

 

『   』

 

 駄女神さまっ…の肩に、手を落としたダージリン。

 ギリギリと、こちらまで音が出そうな位、手に力が入っているのが分かるな…あ~…。

 泣きそうな…いや、泣きながらこっち見るな、駄女神。

 

 

「よ…りにも…よって…ペコの前で、ペコの…ぉぉぉおお!!!」

 

『  』

 

 

 ほらぁ…ダー様、真っ赤になって…すげぇ顔してるな…美人が台無しだぞ?

 照れてるのか、怒ってるのか…うん、全部だろう…。

 腹から声を出してますね…はい。

 

『 だがっ…だがじ…ざまぁ… 』

 

 あ~…うん。怖いのは理解する。

 今のダージリンには、俺でも近づきたくない。

 

 はぁ…仕方ねぇな…。

 なんでだろう…色々と、普段なら焦るのだけど、何故か冷静でいられた。

 ダージリンの本心…と、いうか、あるんだな…ダージリンにも、人を羨ましいと思う事が。

 

「ダージリン? そこの駄女神も…な? ダージリンの為を思って……といか、俺が大体悪いんだと思うけど…」

 

 俺が声をかけると、完全に涙目で俺を見上げた…。

 肩から手を離さず…。

 

「ぅぅぅぅ…」

 

「……」

 

 真っ赤ですね…。

 

 さぁ…どうしようか?

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

「 …お母様、青い女神さんが言った通り、すっげぇ親父にベッタリだしなぁ…。この頃は違うのか…段々変わって行ったんだなぁ…ふ~ん。なるほど、なるほど… 」

 

 腕を組んで、何度も頷いてるけどさ…。

 今、君のお母様が大変ですよ?

 

「 んじゃ…ほれ。親父 」

 

 いきなり、手を差し出された。

 

「なんだ?」

 

「 いや…この場合なら、さっさと終わらせた方が良いだろ? 」

 

 よく見てみると、すでにダージリンの手を握っていた一隆。

 俺達の横に立ちながら、何度か左右に首を振り、俺とダージリンを見比べている。

 

「 因子ねぇ…。良くわからないけどさ 」

 

 自分の手を握っている息子に、ダージリンも漸く気がついた。

 握られた自分の手と、一隆の顔を何度も交互に見ている。

 

 …そして、この隙に駄女神が、カサカサと逃げ出した。

 

「 はぁ…これで終わるか。さっさと、終わらせた方が良かった気もするけど… 」

 

「…お前、言動や言い方が、小学生じゃねえぞ…」

 

「 は? 誰の息子だと思ってんの? 」

 

 それ、関係あるか?

 

 カッと、少し笑い…低い声で呟いた。

 

「 親父が倒れた時の、お母様の取り乱し方が、すごかったしな 」

 

「取り乱した? ダージリンが?」

 

「 いや…ちょっと違うかな? 親父、俺達と一緒にいる時に倒れたんだけどな? 病院に一緒に行ってからが凄かったんだよ 」

 

「病院…」

 

「 ずっと震えてた。椅子に座り込んだら、立てなくなるくらいに…そのまま横にいた俺を抱きしめて、ずっと動かなくて…ずっと震えてんだよ 」

 

 一隆が、俺の手を取った。

 呆然としてしまっていた、中途半端に出された手を。

 ダージリンが、何か言おうとしたが…押し黙って一隆の話を聞いていた。

 

「 で、いきなりその夢の中でコレだろ? 」

 

「…」

 

「 まぁ、半信半疑だったけどね。青い女神さん、胡散臭いし。でもまぁ…このままだと、明日死ぬとか言われちゃあなぁ… 」

 

 話しながらも、自分の体の様子を確認していた。

 光りだした体が、ゆっくりと広がっていく。

 繋がれた手から、子供の体温が段々と熱くなっていった。

 

「 面白い体験できたから、別に良いけどね 」

 

「はっ…面白いか」

 

「面白いよ。俺、別に親父が死ぬとか信じてないし。…車に跳ねられても無事だったんだぜ?」

 

 ……。

 

 息子が産まれると、俺は車に撥ねられるのか?

 

 まったく…。

 

 ここで漸く自我を取り戻してくれた、ダージリンは黙って一隆をじっ…と、見つめている。

 

「 ほんと…隆史さん、そっくり… 」

 

「お母様?」

 

「くれぐれも、えぇ、くれぐれも! 女性の扱いに注意して下さいね? お父様と同じになってはいけませんよ? 」

 

 ……。

 

 あ、うん。

 

 シリアスになりきれない…。

 

「 はっはー。それは毎回、小言と一緒に言われてるから、大丈夫っ 」

 

 チラチラと、目だけで俺と一隆を何度も、何度も見ているダージリン。

 いつもだったら、最後まで二人と話そうと思うのだが…すでにもう遅い。

 

 そして、何度か体験した…消える直前の最大の光。

 一隆の体が、光に包まれ、その強さが最高潮に至った。

 

「…これで、私も。記憶がなくなってしまうのが、惜しくて仕方がありませんわね」

 

 ……。

 

 

「 んじゃな、お父様。お母様 」

 

 

 最後の声が聞こえ…手から伝わる息子の体温が…なくなった……。

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ!?」

 

「え…」

 

「なんで…いるの? ダージリン」

 

「あら…消えていませんわね」

 

 同じく呆然と立ちすくむ、ダージリンが正面にいた。

 本来なら、ここで消えて元の場所へと、意識が戻るはずなのだけど…何故か消えていない。

 

「えっと…エリス様」

 

 責任者に詳細を聞こうとすると…。

 

『 …… 』

 

 えっと…。

 何故か顔を横に逸らされた。

 

「あ…あの?」

 

『 こ…今回は、特別です 』

 

「特別?」

 

「はいっ! そうですっ! 隆史様っ!!」

 

「オペ子?」

 

 なんでオペ子が答えるのだろう?

 いや…別に事情を知っているのなら、教えてほしいのだけど。

 

「っっ!?」

 

 な…なにっ!?

 スッ…と、突然オペ子の表情が消えた…。

 そして…物凄い棒読みで…。

 

 

「  散々、見せつけられたのですから、今度はコチラが見せつける番だと思うのです  」

 

 

 え…っと…え? 何が?

 怖いよ? 顔。

 

『 ねぇねぇ、オレンジペコさん!! ちょーっと、私…いい事思いついたんだけどぉ 』

「…なんでしょう? 今、私は隆史さんとお話を…」

『 まぁまぁ、聞いてよ。…こんな……に……って、できるけど…どお? 』

「なっ!?」

『 まぁ、さすがにノンナさんの時にもしないとフェアじゃないけどね。ダージリンさんは…時間的に申し訳ないけど、諦めてもらうしかないけどね 』

「い…」

『 あのノンナさんの、ポーカーフェイス…すっごい崩して見たくない? 次、貴女だけど…その時も呼んで上げるからさぁ… 』

「いいですねっ!! すっごくそれは良いですっ!!! お願いしますっ!!」

『 で…でねぇ? それで、なんだけどぉぉ… 』

「報酬ですね。前回と同じので良いですか?」

『 ありがとうっ!!! 私、頑張るわっ!! 』

「是非頑張ってくださいっ!!」

 

 

 

 …不穏な空気が漂いだしたな。

 

 …。

 

 

 それよりも。

 

 非常に気になる事がある。

 

 …さすがに…な。先程は聞けなかったけど…。

 

 

「……なぁエリス様」

 

『 あ…はい、なんでしょう… 』

 

 ……。

 

 なんて生気の無い目をされてるのでしょう。

 

 ま…まぁ…いいや。

 

「まほちゃんと、みほ。二人の将来の事なんですけどね…相手って…」

 

 そう…それが一番気になったこと。

 

 前までは、知らなかった為に、ここまで不安にはならなかったが…出会っている。

 

 出会ってしまった……。

 

 あのクソ野郎に。

 

『 あ……あぁ、なるほど。大丈夫ですよ? 』

 

「…大丈夫?」

 

『 隆史さん以外との未来は、他の方との恋愛結婚です。お見合い…というのもありますが、皆さんお幸せですよ? 』

 

「…そうですか。…良かった」

 

 笑顔で答えてくれるエリス様に、少し安心した…。

 でもな…。

 そんな俺の不安な気持ちを汲み取ってか、ハッキリと言ってくれた。

 

『 あの分家…ですよね? 』

 

「……」

 

 そう…あいつが、どうにも引っ掛かる。

 

『 あの方が、西住姉妹との…と、いう未来はありません 』

 

「…………」

 

 全ての世界線の彼女達を守りたいと思うのが、傲慢なのだろうか?

 

 しかし…枝分かれした未来なら、それがありうる未来…といのも、あるのではないのだろうか?

 

 …胸糞悪い未来も…あるのではないのだろうか?

 

 

『 ありえない未来。どう足掻いても、どうにもならない未来というのは存在します 』

 

「それは…さすがに」

 

 ご都合主義すぎるのではないか?

 

 …俺の疑問を遮って、よく聞くフレーズを口にした。

 

 

『 それを『 運命 』といいます 』

 

「…胸糞悪い言葉が、出てきましたね」

 

 その運命とやらは、どうやら俺の都合のいい未来へと導いてくれている最中らしい。

 その為に、あの分家は、あの姉妹と一緒になる事がない…と。

 

 世界線何やら、枝分かれして、多種多様な未来を魅せられている最中にソレか。

 

「隆史さん…?」

 

 ノンナさんが、声を掛けてきた。

 …また俺は、顔に出ていたのだろうか?

 少し心配そうな顔をしている。

 

「あ…いや、大丈夫です。今行きます」

 

 まぁ、運命論者でも…否定派でも何でも無いが、人の努力を根底から覆す、運命って言葉は大嫌いだ。

 

 あぁ…努力に至る全ても、運命とやらからの差金かと思うと、反吐が出る。

 

 

『 隆史さん 』

 

「あ、はい」

 

『 …よく聞いて下さい? あの姉妹がアレと一緒になる…という、未来は無いです。が、無いだけです 』

 

 …。

 

 少し…鳥肌が立った。

 

「…どういう事だ」

 

 無いだけ…無い…。

 一緒なる事がない…だけ。

 

『 私はあくまで傍観者。貴方に対して何も出来ないし、してはいけない。貴方が拒否しましたからね 』

 

 嫌味にも似たセリフで、返された。

 

『 が、私は意地を通します。ダメ元でも、記憶が無くなるとしても、アドバイス…位はいいでしょう? 』

 

「…ぐ」

 

 一瞬、力がこもった声がしたが、すぐに緩め…笑った。

 …笑ったけど…それは…少し…寂しい笑い方だった。…それをさせてしまった。

 

『 因果律…いいですか? 最大の分岐点が訪れます 』

 

「分岐点?」

 

『 大洗学園の廃校…廃艦。そんなの貴方にとって、そんな事どうでもよいと思える程の…そんな分岐点 』

 

「どうでも…いい?」

 

『 エキシビジョンマッチ…いよいよ明日…始まりますね? 』

 

「え…あ…あぁ、はい。そうです…ね」

 

 いきなり話題を変えらた…? いや違うな。

 確かに明日は、エキシビジョンだけど…いきなり?

 

『 …私達は、大洗学園の在校、廃校が分岐点かと思っていましたが…違いました 』

 

「…え…は?」

 

 どういう事だ?

 

 明らかにソレの様な…いや、それしか無いみたいな…。

 

『 …… 』

 

「…エリス様?」

 

『 いえ…今回の事が全て終えたらにしましょう。さすがに彼女達に、申し訳ありませんから… 』

 

「…」

 

『 だから、今はあの残りの二人の為に、集中して上げてください 』

 

「え…はい」

 

 何を言おうとしたから分からないが、彼女達に申し訳ないと言われてしまったら仕方ない。

 確かに彼女達からすれば…未来の事を、俺の為に来てくれている状態。

 

 心、ここにあらず…では、余りに失礼だ。

 

「ま、今は切り替えます。後で、一応教えてくれるんでしょ?」

 

『 えぇ、間違いなく 』

 

「…分かりました」

 

 笑顔で返してくれたエリス様。

 ならば、今は彼女達の事…。

 んじゃ…行きますか。

 

 




閲覧ありがとうございました

次回後半、オペ子とノンナさん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。