『 さぁっ! 張りっきって、次に行くわよっ!! 』
「……」
エリス様の元から戻ってきたら、戻ってきたで、駄女神が随分と気合を入れていた。
手を握り締め、こちらに振り向けた顔が、随分と輝いて見える。
「……」
『 何っ!? 隆史っ!! 』
「お前…また碌でもない事、企んでねぇか?」
『 …そ…そんな事ないわよぉ? 』
「…………」
お前にポーカーフェイスは無理だ。
すでに白状した様なものだな、その顔は。
オペ子と話していたのが、非常に気になるが…。
『 そ…それじゃあ、呼ぶわねぇ 』
「……」
非常にニッコニコしているオペ子が、隣にいるので…なんだろう。
チクショウ…強く追求できない。
『 んじゃあっ! 次はオレンジペコさんの番ね 』
「はいっ!!」
駄女神が杖を上げ、また何かブツブツ唱え始めた。
お前…ソレって、ただ格好つけてるだけだって、前に言ってなかったか?
さっさと…呼べばいいだろうが。
「隆史さん」
「…はい?」
ダージリンが、俺の服の袖を引っ張った。
…初めてだな、こういった行動をするの。
「先程から気になっていたのですが、あの青い女神…様には、随分と…その」
「あぁ、あの駄女神?」
「えぇ…と…」
何が言いたいんだろう?
言い淀んでいるが、いつもと変わらないその表情だから、うまく判別がつかない。
いや? 若干、顔に赤みが…。
「…そっの…んん……」
「……?」
言葉にしようとすると、何故か途中で止めてしまう。
「……」
「……」
「…っっ!!」
次の言葉を黙って待っているのだけど、黙ってしまった。
「………ぅぅ…」
「なんで、声かけておいて、顔を逸らすんだよ…」
「ぅぅう…」
目と目が合った瞬間、すっごい高速で顔を逸らされたよ…普通に傷つくぞ。
「ぎ…逆にお聞きしますが、よく先程の件の後…平然としていられますわね」
「…はい?」
「み…未来の…その…私と、隆史さんの…」
あれ? 話が変わった。
まぁいいけど…先程の件って…。
「ダージリンと俺の? あぁ、子供の事か? …一隆?」
「っっ!! …そ…そうですわ。」
……。
うぁ。真っ赤になっちまった。
小さく縮こませながら、自分の体を抱きしめてしまったな…。
う…う~ん。
ちょっと無神経な発言だったか?
「わ…私との…ここ…ド…モ……ウッ……フフ……」
……。
いや、小さく笑ってるな…特に怒ってる訳では、なさそうだけど…。
なんか…なにを言ってもダメそうだ…。頭を掻く事くらいしか、やる事がねぇ…。
あの…なんで、ゆっくりと近づいて…あの…?
「隆史さん」
「はい!?」
ノンナさんが、ちょっと強く、服引っ張ってきた。
…相変わらずの無表情。
「…チッ」
何故このタイミングで、ダージリンは舌打ちを…。
「流石は隆史さん。この状況に、随分と慣れていますね?」
「…………」
…うっ…すげぇ真っ直ぐ、目を見てくる…。
「な…慣れては…ないのですけど…」
「……」
じ──────っと、俺を見る顔…目を動かさない。
…なぜだ…? 汗が止まらんっ!
「まっ…もういいです。もう終わった事ですから」
「終わってませんわ。未来の事…で・す・の・で」
「……」
ダージリンが、復活をしたな…って! だから、タイミングが分からんっ!!
ノンナさんの発言に、間髪入れずに即答で返した。
「ダージリンさん。先程から…些か、はしたないと思うのですけど?」
「あら、そう?」
「露骨すぎではないでしょうか? まぁ、気分が高まっているは理解しますが、人前だというのをお忘れですか?」
「人前? それを言うなら、ノンナさん。準決勝戦の時の事でも思い出してみたらどうかしら? あれに比べれば…」
…あ…嫌な予感。
「私は良いのです。聖グロリアーナの隊長としての事を言っているのです」
「それは今、関係ございませんわよね?」
「……」
「……」
「あぁ…羨ましいのですね」
「いえ? まったく?」
……。
こ…。
怖っ!!!
基本的に感情が昂ぶりやすい空間だってのは、知っていたけどっ!!
双方、普段と変わらない表情と、口調だってのが、余計に怖いッ!!
いや…違う…。
ノンナさんが笑ってる……。
普段、滅多に見せなかった微笑を浮かべてる!
んでもって、ダージリンもダージリンで、すこぶる機嫌が良い時の顔してるっ!!
この状況と、セリフ! 全てにおいて、その表情はおかしいだろ!
「羨ましいと思うのでしたら、ご自分も『行動』…と、いうモノを? お起こしたら如何でしょうか? あぁ…その様な勇気は、ありませんか」
「勇気? 勇気とはまた、随分と的外れな…。いえいえ…淑女として、あの様な? はしたない真似なんて、とてもとても」
「ふっ…人前で露骨に、男性に対して体を何度も、何度も、密着させようとするのは、はしたなくないと?」
「程度の問題ですわ」
「はっ…アレのどこが…」
「……」
「……」
な…なんで、いきなり、牽制しあってんの、この人達っ!
なんか、会話の内容が、一周して回ってきてないか?
『 あっ!! やっっばっ!! 』
今度は、あっちかっ!!
駄女神が、またなんか叫んだ!?
やばっ!? 今度はなにをやらかしたっ!!
「隆史さん。なにを自分は関係ないって、顔をしているのですか?」
「隆史さん。なにを自分は関係ないって顔で、よそ見をしているのでしょう?」
こっちからも、矛先を向けられたしっ!!
「待って!! ほっ…ほらっ! 向こう向こう!!」
先程から、一切喋らないオペ子もいるしっ!!
駄女神がね? また何かやらかしたと思うしっ!!
というか、今のこの二人に絡まれたくない!!
「「チッ…」」
誤魔化す様に…いやもうっ! 白状してしまえば、誤魔化す為に、何やら騒がしい駄女神を指す。
二人も俺と同じく、変にテンションが高かったオペ子が気になるのか、すっごい目を細めながら指された方向に顔を向けた。
舌打ち付きで…。
「「 」」
と…思ったら、動きを止めてしまわれました。
駄女神…やっぱり何かしたか?
……。
…………。
召喚…されたのだろう…。
オペ子の横に、子供が立っていた。
立っていたんだよ…二人。
女の子が…二人。
▼
「タラシさん」
「タラシさん」
「 」
ノンナさんが、右。
ダージリンが、左。
…腕をロックされました。
「まっ!! いやっ! 本気で、待ってくれっ!!! 痛った!! 痛い痛い痛いっ!!!」
「…この…」
「まさか、ペコの時にまで…」
「反対方向っ!! 腕はそっちには、曲がらないからっ!!」
「…見損ないました」
「見損ないましたわ」
「 」
みほとまほちゃんの時と…同じ…。
同じ世界に、二人…。
う…怖くて、左右の二人の顔が見れない…。
エ────ー…………マジでぇ…。
俺…え? 浮気? また?
「 …… 」
そ…それと…。
この状況で、一切言葉を発さなくなった、オペ子が非常に気になる…。
少し、顔を俯かせ…目が見えない…。
電池が切れてしまったかの様に、一切…微動だにしない…。
ブツッ!
……。
何かが切れる音がした…。
…それと同時に、彼女の足もとに、何かが落ちた。
び…びっくりした…。
オペ子の堪忍袋がぶち切れた音かと思ったのだけど、どうも違うようだ…。
彼女の頭の左右…結った髪を止めていたリボンが、切れて落ちたみたいだ。
…それでも、良く音が聞こえたな。
「オ…オペ子?」
「 … 」
俺の呼びかけに何も反応しない…。
ボーとした目で、一点を見つめて動かない。
一瞬目を見開き…大きく頭を振った。
フサっと…結われていた髪が、柔らかい動きと一緒に解かれていく…。
「…さすがに、どうかと思いますが…隆史さん?」
「…あの、ペコに何かございませんの?」
…うっ。
世界線…自分達とは違うとは言え、ダージリンにとっては、大事な後輩。
ノンナさんにとっても…良い友人。
そのオペ子の未来で、コレだ…。
…俺……ゲス。
『 ん~…ま、いっか! 』
駄女神も駄女神で、自分の持っていた杖をボケーと眺めていたが、その一言で我に返ってた。
何も気にしていない、その一言…。
「良か、ねぇよっ!! またかっ!」
『 何がよ? 』
「何が…って…あぁっ!! もうっ!!」
「…そうですね。ここで、あの女神様に対して、怒ってしまえば、完全に人のせいですからね」
「呼び出す世界を間違えたとしても、その数有る未来の中に、実際に存在する世界ですしね…この……」
「「 浮気者 」」
「 」
あ…うん。
確かに、この世界は感情が昂ぶりやすいのだろう。
ここまで、敵意…というか、怒ったような顔の二人は、初めて見るヨ…。
いや…うん……何も言えない…。
『 あぁ…そういう事ですか。お二方、そちらのお子様は、確かに隆史さんとオレンジペコさんのお子様ですよ? 』
「「 …え 」」
「っ!!」
エリス様が、俺達の様子を見て仲裁をしてくれた。
そして、俺とオペ子の子供だと、はっきりと言った。
『 一度、説明しましたが、呼び出す方は、その世界線で一番若いお子様になります…年齢が同じならば、当然…… 』
「あ…」
「なる程…という事は…」
「双子か!!」
焦ってしまったが、よくよく見てみると…ある。
どちらかと言うと、二人共揃って、オペ子の面影が強い。
というかまただな…。何処へ行った俺の遺伝子…と、思えるほどに、二人ともオペ子に似ている。
よ…よかったぁっっ!! 俺、浮気! してないっ!!
「はぁ…そうですか。良かったです」
「……ま、前例がございますし…少々、驚きましたが…はぁ…」
……。
うん、漸く腕を解放してはくれたが…ここは、貝になるべき場面だネ。
しかし…。
「彼女、自分とのお子様がお二人現れても、気にする様子もありませんね」
「寧ろ…ペコが大人しいというのが、少々怖いですわ」
…。
『 ぷぅ~くすくす。隆史、焦ってんのぉ。面白い顔してたわよ? 』
こ…このヤロウ。
「じゃあ、駄女神よぉ。お前、今度は一体、何に失敗したんだよ」
『 し…失敗!? 何の事かしらっ!? 』
「何誤魔化してやがる…。思いっきり失敗したって言っていただろうが」
『 空耳じゃなぁい? 』
「……」
『 頭と顔だけじゃなくて、ついに耳までおかひぃぃぃいふぁいふぁいっ!! 頬をひっふぁらないでっ!!! 』
このまま、釣り上げてやろうか…。
駄女神の頬を、引っ張るだけの為に、オペ子の横にまでくると…ぐっ…。
目の前にいる子供達に、物凄く不信な目を向けられてしまった…。
や…やめよう。
「 まぁまぁ、そこら辺で… 」
「…オペ子?」
いつの間にか、俺の横に立っていた。
漸く声を出したと思ったら…いつもの様に…………いや? なんか…違う。
俺の顔を見上げる事もなく、腰骨付近に手を触れてきた。
「はぁ…分かった」
「 そうですよ? 子供達も見てますしね? 」
な…なんだ?
少し、寝ぼけた様な喋り方…。
「…オレンジペコさん。なんか…変ですね」
「そう…ですわね」
しかし…オペ子、結構、髪の毛が長いんだな。
何時ものヘアースタイル姿しか見た事がなかったから、非常に新鮮に感じる。
腰にまで届きそうな程の髪が、小さく揺れながら光沢を放っている。
下ろされた髪…ロングヘアーオペ子。
「 お…おぉぉ!! 父さんかっ!! 」
「 お父様…! 」
っ!?
いきなり、両足に二人の子供が抱きついてきた。
先程まで、警戒心丸出しの顔だったのに、今は…オペ子と同じ顔で、笑っている。
…あぁ、そうか。
オペ子が、俺に触れてきた事で、少し警戒心を解いた…んで、俺だと分かった。
そんな感じだな。
「なんだ? 分からなかったか?」
「 うんっ! わからなかったっ! 」
「 分からなかった…です 」
双子だしな…そっくりだ。
性格差がはっきりと分かる位に喋り方の違い。
後は、服装か…?
半ズボンを履いたコペ子と、ロングスカートを履いたコペ子…。
完全に髪が黒い、オペ子だ。
…コペ子…。妙にしっくりくるな…。
「 髪あるしッ!! 」
「 髪の毛…ありますし… 」
いやぁ…。
……。
…………うん。
「 ヒゲ無いしっ!! 」
「 お髭…ないです 」
・・・。
・・・・・・・。
「…一応聞く。なんで俺に髪がないの? 自然にハゲた…か?」
間髪入れずにある意味で、予想通りの答えが返ってくる…。
「 浮気対策って、母さん言ってたっ!! 」
「 浮気…予防って…お母様…… 」
またかよっ!!
いやぁ…すっげぇイイ顔で言ったなっ!!
「浮気対策で皆揃って、俺の髪の毛狙うのやめてくれよっ!!」
「…Не можете помочь?」
「仕方ないのでは、なくって?」
「………」
「Что вы получаете」
「自業自得です」
「……………」
す…すげぇ真顔で言われた…。
ノンナさんと、ダージリン…見事に言ってる事が同じだ…。
「 …あぁ、なる程 」
そんなやり取りに参加する事もなく、オペ子がキョロキョロと周りを見渡している。
何か納得したかの様な呟きが聞こえると、そこで初めて俺を見上げた。
……。
と…特におかしい所はないけど…なぜだ?
ちょっと、違うと思うのは…。
見上げてきたその顔は、何かを期待している様な顔。
見つめ合う様な形になってしまい…何故か気まずく感じ…自然に目を逸らしてしまった。
「し…しかし…オペ子が、髪を下ろしている姿って、何気に初めて見るな」
少し誤魔化す様に、先程の感想を口にすると、普通に喋り…返答をしてくれる。
変な違和感は、気のせい…だったのだろうか?
「 そう…ですね。お嫌いですか? 」
「すこぶる可愛いと思うけど?」
「 ふふ…ありがとうございます。あ、ポニーテールもお好きでしたよね? 変えましょうか? 」
「い…いや? 今のが新鮮だから、しばらく見ていたい…と、思うけど」
「 はい…。でしたら、このままで… 」
「あ…あぁ…」
何かを噛み締める様に、目を伏せ…静かに微笑んだ…。
というか、ポニーが好きなのって、オペ子に言ったっけ?
「…さらりと、まぁ…。可愛いなどと…女性に簡単に…ん?」
「……」
「どうしました?」
「いえ……やはり、ペコがおかしい…」
なんか…変な空気に…。
『 はぁい! はい!! んじゃ、次に行くわよっ! まずは自己紹介ねっ!! 』
能天気なその声が、手を叩く音と一緒に響いた。
そうだ…子供、頬っておく訳にもいか…
「 ノンナさんだッ!! 」
「…え、私ですか?」
半ズボンのコペ子が、その声をガン無視…。
今分かったと、ノンナさんに全速力で走って行った。
子供が知っているって事は、将来、彼女との関係も繋がっているのか。
「 わ あ あ つ !! 」
…。
…何もない所で、躓いたぞ…。
前に転びそうになった所、ノンナさんがしゃがみ込み、それを抱きとめた。
なんか…すげぇ態とらしい叫び声に聞こえたけど……。
「 はぁ………また…コレだから… 」
……。
あの…。
スカートのコペ子が、侮蔑…と、すぐに分かるようなの声で、そんな言葉を言いましたね。
「あの…大丈夫…ですか?」
「 うんっ! ありがとっ!! 」
…子供を心配して声を掛けてくれるノンナさん。
それに対して、子供らしい返事を返す、半ズボンのコペ子。
…。
なんだ…この。
「…しかし、貴女が、私の事を知っている…と言う事は…」
「 うんっ!! 母さんの友達ぃ!! 」
……。
抱き止められた状態で、会話を続ける二人…。
しかし、娘。
何故、ノンナさんの胸に顔を埋めているんだ。
抱きしめる様に、してるし…明らかに故意でやってるだろ。
「…ふむ。ちなみに、そちらの……」
「 ダージリンさんっ? 」
……。
「あぁ、やはり彼女の事も…。やはり、そうですよね」
「 はぁ…そうそう 」
…………。
「あの…もう、立ち上がっても大丈夫ですか?」
「 あ、お構いなく。コノママデ 」
………………。
「あの…」
「 はぁぁぁ…あ、オカマイナク 」
…確信した。
「いや「 オカマイナク 」」
襟首を掴んだ。
「 父さん、何すんだよっ! 」
そのまま片手で、持ち上げると…こちらを強引に向かせ、ズッ…と、顔を近づける。
…おい、なぜ目を逸らす。
「あの…隆史さん? さすがにソレは、どうかと…」
「そうですわよ? 女の子に対する持ち方では…」
……。
「 そ…そうだよ、父さん。つか、顔が怖い… 」
悪かったな、生まれつきだ。
ぶら~んと、吊るされる様にされているコペ子に対して、確認をする意味も込めて聞いておく。
「…お前、名前は」
「 や…やだなぁ、今更ァ? 」
「俺からしたら、未来の事だ。知るわけがないだろう」
「 そ…そうだけどぉ 」
なにを言い渋ってやがる。
子供らしい言い方が、逆に態とらしい。
…やっぱりお前。
「 …いい加減にして、クソ兄 」
「 あっ!! 馬鹿ッ!! 」
「「 !? 」」
……ほら…やっぱり。
スカートのコペ子が、教えてくれたな。
「 …毎回、毎回…ほんとに…死ね 」
ぶ…侮蔑だね?
…その言い方は、完全に侮蔑と言うのを込めてるね?
まぁ…それは後だ…。
「…お前…やっぱり、男か」
「 い…いやぁ… 」
……。
今日日、両手の指先を合わせて、気まずそうにするなんて、しないぞ。
なにを焦ってる。
「 お父様 」
「ん?」
スカートのコペ子が、俺のズボンを引っ張った。
「 そのクソ兄。男。…尾形 礼史。10歳。女の敵。死ね 」
…礼史…ね。
淡々と、一言一言区切る様に、説明してくれた。
そして最後に、死ねの一言。
…死ねって。
「 それで、私にソックリなのをイイ事に、私のフリして、女子更衣室とに入ろうとするクズ 」
「…………」
「 はっ…入ってないっ! まだ、入ってないっ!! 」
「…まだ?」
「 …い…いやぁ…だから、顔が怖いって!! 」
だから、生まれつきだ。
「お前……犯罪…一番、最悪な犯罪…」
「 大丈夫っ!! まだ子供だから、イタズラで済まされるんだっ!! 」
「…は?」
「 ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ!! 顔が怖いっ!! 」
この…誰に似たのか…。
顔を近づけると、必死になって逃げようとしているな。
というか、オペ子の顔で…コレはヒドイ。
ま…取り敢えず、もう一人のコペ子。
最初のビクビクした様子は、もうすでになく…吊るされた双子の兄を、ゴミを見る目で見ている。
「教えてくれてありがとなぁぁぁ…」
優しく…あぁ、本当に優しく、スカートのコペ子の頭を撫でてやる。
一応、お礼として、頭を撫でたのだが…その手に、上から小さい手を添えてきた。
「 …フフッ 」
嬉しそうに、小さく笑う声が聞こえた…。
「……」
…何故だろう。
この行動で、この世界線の子供には、嫌われていないと確信が取れたのだけど…。
かほの時の様に、はしゃぐ気分には、ならなかった。
…なぜなら。
一瞬……葵を思い出したから…。
よ…よしっ! 忘れようっ!!
まずは、目の前の事だ。
「では、礼史。…お前、ノンナさんを知ってるんだな」
「 そうっ!! 若いっ!! そして、でっかいっ!!! 」
「 …毎回毎回、ノンナさんとダージリンさんが、来ると大体アレをやる 」
「……」
「 父さん 」
「なんだよ」
「 そこにマシュマロと言う名のクッションがあるじゃろ? 」
「……」
「 あったら…行くじゃろ? 」
「お前、何言ってんだ?」
「 行くだろっ!? 行くよねっ!? 行かないわけがないっ!! 」
「お前、10歳だろっ!? 本当に何言ってんだ!!」
「なんだよ、父さんっ!! おかしいかっ!? それが男の本能って奴だろっ!? あのノンナさんだぞっ!? JKのっ!! ちくしょー!! ダージリンさんにも行きたかったのにっ!! お前が邪魔しなきゃ、JKダーさんにもっっっ!! いっつもいっつも邪魔しやがってぇっ!!」
「……」
「 死 ね 」
……。
すっごい喋る兄に対して、すっごいシンプルな一言。
あ…ノンナさん、頭を押さえてる…あ、ダー様もだ。
「…そ…そういえば…」
もう一人の子供の名前を聞いていなかった。
見下ろせば、すぐに分かったのか…すぐに教えてくれた。
…が。
「 私…尾形 凛。その汚物と同じく10歳です 」
「…あ、はい。」
「同じ…という、表現は非常に、不本意ですが」
「…………」
10歳……10歳ぃぃ…。
ダペ子と同じにしか見えない…。
というか! 俺の子供、みんな個性が強すぎるっ!!!
早熟かもしれんが、まともな子供っていたっけ!?
『 補足ができない… 』
『 今回は、楽できますね 』
『 …いや、無理でしょ 』
『 …………ですね。先輩のお陰で 』
『 …… 』
…ほんとに何やった、駄女神。
「 そりゃ、父さんは母さんと結婚したし…そっち趣味だとは思うけど… 」
「…おい、礼史」
「 俺の味方は、優おじさんしか…いない…母さんっ!? 」
「「 あぁ、あの汚物 」」
…。
あぁ…やっぱり、林田の兄貴の相手…姉さんだったか…。
いや…まぁ、突っ込みたかったんだけど、母娘の声が、被ったのが怖かった…………。
というか、いつの間にか、オペ子が隣にいた!!
「 か…母さん? なんで手を握ってるの? 」
「 ………… 」
「オペ子…さん? なんで笑ってるの? あ…」
有無を言わさず、すでに俺の手を握り締めている。
俺と、オペ子と…礼史。
要は…。
「 ちょっ!? えっ!? 待ってっ! もうちょっと、若いノンナさっ…怖っ!! 母さん、顔、すっ―
礼史の強制帰還…。
…うわぁ…。
体の発光も、いつもよりも早くて…強かった。
パッと付いて、パッと消えた…。
こんなに簡略化できるモノでした!?
「 …はっ。ざまぁみろ、クソ兄 」
……。
あの…凛さん?
「 そういった訳で…ダージリン様 」
「……」
娘が、吐き捨てる様に出した言葉に呆然としていると、オペ子が俺ではなく、ダージリンへと顔を向けていた。
釣られ、ダージリンを見てみると…あれ?
なんか…少し、笑っている。
「 娘にお名前…頂きました 」
笑った。
笑って、ダージリンへと…え? 名前?
「 しっかりと、許可は頂きましたよ? …将来…ですが 」
「あぁ…なる程」
「…今の言葉で、全て分かりました。どうりでペコの雰囲気が違うと…」
「 ふふ… 」
「…本名で呼んだ方が良いかしら? さすがに歳上…ちょっと、変な感じですわね… 」
「 いえ、ペコと呼び捨ててください。…その方が懐かしい…それに、嬉しいです 」
「分かりました」
……。
空気が和らいだ。
談笑をするかの様に、落ち着いた雰囲気…。
…いや、まぁ…。
取り敢えず、その…凛は、オペ子の手を握って、その会話を間近で聞いている。
すっげぇつまらなそうに…。
『 あ~…隆史 』
「…なんだよ」
『 さすがにもう、分かったわよね? 』
「はぁ……。まぁ、会話の流れでな」
わからいでか。
会話の流れと、妙な雰囲気のオペ子。
…繋がった。
奇妙な違和感が消え、今は大分落ち着いた。
『 本当は、33歳のアンタを呼びたかったんだけど…対象を直前で間違えちゃったっ!! 』
「…何してんのお前。というか、何をしようとしてんだよ」
『 いやぁ…オレンジペコさんに、さっき提案したんだけどさぁ…。彼女達も見いたいかなぁ…って、思って 』
「何をだよ…」
『 勝ち取った、自分だけの賞品を 』
「…は?」
『 アンタには、分からないわよねぇ~…馬鹿だから 』
「……」
なぜだろうか?
強く言い返す気にならなかった。
…納得させられるだけの、説得力が、変に楽しそうにしている駄女神から……何故かあった。
「 では…凛 」
オペ子が、娘の手を引いて、俺の下にまで連れてきた。
凛は、少し不満な顔をしているな。
「 クソ兄が、還ったんだから、私はもう少しいてもいいんじゃ… 」
クソ兄って…。
他の世界線で、娘に嫌われている俺…への感情が、礼史に向けられてる…って、感じか?
あ、後…リンとレイジ。
今更だけど、将来の俺。名前の感じを合わせたのか。
んで、俺の名字を取った…。
「 お母さん、ちょっと話があるから先に帰ってて 」
「 ぅぅ…お父様 」
う…涙目で、見上げられた…。
「 駄目です 」
う~ん。オペ子が、お母さんしてる…。
愚図る娘を、淡々と説得してるけど…なんだろう。
子供の我が儘を無視とか…も、特有だよね…。
しばらくすると、おずおずと、凛から手を挙げてきた。
握れ…という、事だろう。
「 …では 」
オペ子も、俺に向かって手を挙げてきた。
▼
「 はぁ…あの子も、父親離れ…そろそろしてもらわないと… 」
……。
「そんなに…ですか?」
「 えぇ、べったりです 」
「あら、可愛いらしく思いますが?」
「 ダージリン様は、知らないから言えるのです。いや…ちょっと、あの子…父親を見る目が、おかしいと感じる事が度々… 」
「…?」
「良くわかりませんわね…」
……あの。
「 …礼史は、いい加減に…させないと… 」
「あぁ…結構、すごいお子様でしたけど」
「 あ…はい、お恥ずかしい… 」
「でも、二人共、ペコそっくりね」
「 よく言われます 」
…あのぉ…。
「そういえば、将来の…あ、失礼。今のオレンジペコさんは…」
「 あぁ、気を使って頂かなくても、結構ですよ? 合わせますので 」
「はい。では、オレンジペコさんは、今でも戦車道は…」
「 妊娠した時に、引退しました 」
「そうですか…」
「 いえ、まぁ…色々ありましたが、まったく関わっていないって訳ではないのですよ? 」
「あら」
…えっと、え~…。
「 現在、青森の…えぇ、「魚の目」を継いで…新しく改装して、お店を新たに開いて切り盛りしております 」
「あ…結局、隆史さんは青森へと、戻ったのですね」
「しかし…ペコがあのお店で…」
「 あ、いえ。改装…というか、改築ですね。店自体を変えて、紅茶専門の喫茶店を営んでいおります 」
「…なる程。何故か納得しました」
「紅茶専門…」
「 はい、店主様達も一緒になって頑張ってます 」
「居酒屋飯処…から、紅茶専門喫茶店ですか…」
「ペコらしい…でも、ご実家…結構な、家柄でしたわよね? よく、隆史さんとの結婚をお許しになりましたわね」
「 あ、はい。反対されましたね 」
「軽くおっしゃいますね…」
「ペコ…それで、どうやって…」
「あ、はい。「駆け落ち」しました」
「「 詳しくっ!!! 」」
…あっれ~?
すげぇ無視されてるぅ。
すっごい、衝撃的な事連発してるね。
オペ子さん(32)は、普通に残ってるし…井戸端会議始めるしで…。
というか「駆け落ち」の言葉に、ノンナさんとダージリンの食い付きがすっごい…。
『 隆史、なにやってんのよ 』
『 そうですよ? なぜ、一人だけ、立っているんですか? 』
「いや…」
そうだね。
全員、懐かしいお茶会セットの椅子に座ってますね。
『 あ、これ美味しい… 』
『 あの方…入れ方一つで、ここまで味…風味が変わるものなんですねぇ 』
はい、オペ子が入れたお茶を飲みながら。
『 いやぁ…思い違いだったわ。今回、すんごい楽 』
『 そうですねぇ。嬉しい誤算ですね 』
『 あの子ちゃんと、大人をしてくれてるしねぇ…五十鈴 華さんほど、暴走しないし… 』
『 あ、はい。今度呼びますねぇ~ 』
『 なんでよっ!! 』
いや…ね?
子供を還した理由は、わかったよ? 駆け落ちとかなんだの、聞かせられんわな。
だけどね? なんで、まだいるの? 32歳、オペ子さん。
今は、将来の駆け落ち話に花を咲かせ…すげぇキャーキャー言いながら、盛り上がてるし…。
あ、うん…場所はバレていたから、本当の意味での「駆け落ち」ではないようですね。
あ…はい。おやっさん達が、味方に…あ、はい。
……。
俺…居た堪れない…。
「 まぁ、それこそ色々ありましたが…、子供が生まれた辺りで、勘当が解けましたので? 結果オーライです 」
「このオレンジペコさん…話す内容の重さと反比例して、言い方が軽いです…」
「後…何か、もう…嫉妬心も沸かきませんわ」
「 あ、なくなりましたね。おかわり入れましょうか? 」
「お願いします」
「お願いするわ。…ここまで美味しいお茶を飲めるとは思いませんでしたわ…素直に感服しました」
「 プロですから♪ 」
……。
…………。
あっ──ー!!!
ニッコニコしてる、オペ子が、非常に可愛いんだけどっ!!
なんだこの、…何!?
なんとも言えない、もどかしい気持ちが、溢れてくるっ!!
「あの…西住 みほさんは…?」
「 え? えぇ…まぁ…大変でしたけど…なんとか、勝てました 」
「…勝てた…と、言うのですから、直接…」
「 はい、流石に喧嘩などはしておりませんが…話し合って、話し合って… 」
「「 …… 」」
「 最終的に、諦めてもらいました 」
「「っっ!?」」
……。
胃……。
『 あぁん? 隆史、なんて顔してんのよ 』
『 気持ちはわかりますが… 』
『 ちなみにね? オレンジペコさんだけね。本当の意味で勝ち取ったってのは 』
「………………」
『 すごかったですよね。…二人共。隆史さんの知らない所で、もう…何度も何度も… 』
「……………………」
『 そうねぇ…殴り合いとか、罵り合いとかじゃなくて、ただ純粋に想いってのを… 』
「 」
『 まぁ、それも今じゃ、本当の意味での友人関係になっているってのが、驚きよねぇ 』
『 戦車道師範になって…たまに、隆史さんのお店に来ていましたからね 』
「 」
……。
あ、あははぁ。
なんか…口の中が、鉄臭い……。
『『 …… 』』
「……」
『 アンタ、どうしたのよ 』
『 あの…大丈夫ですか? 』
「 」
『 エリス。この量の血を吐いて、大丈夫な訳ないでしょう? 』
『 えっと…えっと…閉じた口から、ダラダラ溢れてきますね 』
『 はいはい、「ヒール」ッ! …これでいいでしょ 』
『 …… 』
「っっはぁ!!」
…い…意識が、この変な世界ですら…飛んでた…。
呼吸も止まった気がするっ!!
『 あっはっはっ! 胃に穴でも開いたんじゃない? 』
『 見せてください? あ…いえ、本当に開いたみたいですね 』
「…………」
『 現実世界でも、限界が近かったみたいね。良かったわね…私がいてっ! 治しとたわよ? 』
「……」
『 ……なによ 』
「あ…ありがとう。助かった…」
『 きっもっ!! 素直にお礼言われたっ!!?? 』
…このやろう。
……。
ついに……逝ったか……俺の胃…。
…。
かんばった……お前、がんばったよ…。
なんど、無茶しやがって…って、思ったよ…。
あぁぁ…。
「癒されたい…非常に、今現在、癒されたい…」
『 まぁ? あんたの癒し系とやらが、アレの状態だしねぇ 』
『 あはは……お話に夢中ですね。まぁ…背中向けていましたから気づかなかったのかもしれませんが… 』
「還ったら、取り敢えず…クリスに癒してもらおう…」
『 んん? アンタの飼い犬だっけ? 』
『 …… 』
「そうだけど…って、知ってるだろ?」
『 そういえば、首輪は? 買ってなかったわよね? 』
「あぁ、だからこの前買ったな。散歩用のリールに着けてあるから、家じゃ基本的に外してやってる」
『 散歩? んじゃそん時だけ? 』
「そうだな。散歩専用の首輪って感じだな。その時だけ、クリスに首輪つけて散歩に連れてく…け…って、エリス様? 顔が凄い事になってますけど…」
『 ワザとっ!! ワザとですねッ!? 』
『 っっっ!!! っっ!!! 』
『 声にならない程、笑ってるじゃないですか 』
『 いや…隆史、飼い犬の事だと、饒舌になるわねぇぇ 』
『 …次回、尾形 涼香さん呼びますよ 』
『 なぁっ!? 』
『 五十鈴 華さん(33)も、つけましょう 』
『 !!?? 』
……。
何なのだろう…?
そして、向こうは向こうで、盛り上がってるし…。
「 あ…。流石に、そろそろ時間ですね。このままだと…この身体に意識が、定着してしまいます 」
そ…そんな事まで、わかるのか…。
そのセリフって、全て理解して言えるセリフだよな…。
「意識?」
「 えぇ、今の私が消えてしまいます 」
「…それはちょっと恐ろしいですわね」
事態が、事態だ。
引き止める事もしないで、ノンナさんが最後だと一言加え、まだなんか質問を…。
「では…最後に一つ、聞いてよろしいでしょうか?」
「…ノンナさん?」
「 はい? なんでしょう? 」
「プロポーズ…されたのでしょう?」
「!!」
「 え…それは、まぁ…はい。結婚する時に…あぁ、なる程… 」
「…なんて……言われたのでしょうか?」
「…そ…それは、気になりますわね」
「 ふふ…ノンナさんも女の子ですね 」
っっ!?
「 そうですねぇ…今となっては懐かしく思いますが…一字一句、はっきりと覚えていますよ 」
「「 っっ!! 」」
「ちょっと待ってっ!!」
「なんですか、隆史さん。うるさいです」
「なんでしょうか? 隆史さん。喧しいですわ」
……。
あ、うん。
余り、このオペ子と話をしていないが…まぁそれでも、流石にその事を言われるのは恥ずかしすぎるっ!!
「お…おぺ子…。それは流石に…」
「 …… 」
「あの…オペ子?」
「 は……ぁぁ…。その呼ばれ方…とても懐かしい…。そういえば、この頃からあなたは、余り変わりませんね? 」
あ…あの。
とても長く…噛み締める様に…。
「 今のあなたも、娘が好きな男の子が出来たと言えば、対戦車ロケット担いで、カチ込みに行くのでしょうか? 」
「空気読んでっ!!! 今言うエピソードか!? ソレっ!!??」
カチ込みって言葉をなんで知ってるのっ!!
「あなたは…何か、今の私に、聞きたい事…ありますか?」
…よ…呼ばれ方。
コロコロと笑い、からかう様な表情。
話を中断させてしまったのだけど、それでもノンナさんとダージリンは、何も言わない…。
「…あの…ぐっ…やり辛い。…なんで、スキンヘッドに…将来の俺は、そんなに浮気性なのでしょうか?」
取り敢えず、一番の疑問を口にした。
そろそろと言っていたので、特に手を握る事もしていないのだが、オペ子の体が薄らと光始めていた。
「 かっこいいじゃないですかっ!! 」
だから…空気読んで。
即答で…興奮気味に…言わないで…というか、オペ子さんの趣味……って。
「 戦車道連盟のハゲとは違って、渋いんですっ!! カッコイイんですっ!! 」
あ…はい。
「 もうっ! そんな事聞きたいんですか!? 」
…いや…違う。
違うが、結構大事な事なんですよ!!
はぁ…。
「お……いや、ちゃんと呼んだ方がいいか?」
「 いえ? オペ子で宜しいですよ? いえ…オペ子が良いです 」
……。
「んじゃ、オペ子」
「 はい 」
はっきりと…先程から聞きたかった事を…。
前回、華さんには聞けなかった事を今度は聞こう。
「今のお前は…幸せだろうか?」
「 …… 」
……。
ソレだけ。
ただ単純に、ソレだけは知っておきたい。
言葉を待っていると、その……体の光が段々と、強くなっていく。
「 …カウンター 」
「カウ…ん?」
「 もう一度…と、前置きがあって…ですね? いきなりお店のカウンターへ座ってと、言われて何がなんだか、わかりませんでした。それにあのカウンター…改築してもまだ残ってるのですよ 」
なに…を…?
「…『 さて、本番も明日となりましたが、オペ子さん 』」
…あ。
「 …本番? なんの? って…思いました。ですが、すぐに分かりました。えぇ…分かりましたよ…当然じゃないですか 」
顔が…ここまで、熱く感じる事なんて、今までなかった。
わかった…俺がしたこと…。
「 と、言いますか、とても久しぶりに呼ばれました…オペ子って。ですから…まぁ…私は『 はい、何ですか? …やっぱりその愛称は、やめてくれないんですね 』…って…言いました 」
…あぁ…。
「結婚してください」
そうか…過去でも、未来でも…俺は、オペ子に…。
今度は、応えてくれた…。
しっかりと応えてくれた…。
「 『 はい 』 」
「 そう答えたのです 」
「 だから……。幸せに…決まっているじゃないですか ──―
▼
「ひゃっっぁぁ!?」
「………」
「………」
『 はぁい、んじゃ、次行くわよぉ 』
「ぁ…ぁあ……」
「………」
「………」
『 ノンナさんの番ねぇ…って… 』
「ぁ…」
「………」
「………」
『 隆史? いい加減、抱きしめるのやめたら? …死ぬわよ? 』
「ぁぁ…」
「ま…いいです。次は私の番ですから…」
「…………」
『 あ、後、オレンジペコさん。ごめんね? …間違えちゃった 』
「構いませんっ!! 報酬、ランク上げますからっ!! ありですっ!! コレはアリですっ!!」
「…どうでもいいですから、私の番ですよね? 早くっ!!」
「……」
『 んじゃ、呼ぶけど…いい? 』
「はぁぁ…もうなんでもいいです…」
「……」
「……」
「後は、好きにしてくださぁい…」
「………」
「………」
『 あの… 』
「早く…して…ください…限界……が……」
「32歳は許せましたのに…」
『 わ…わかったわっ!! 』
「…む…漸く、私の番ですね」
「……隆史さん。いい加減に…」
『 あぁっ!!! 』
『 あ……あぁ… 』
「なんですかっ!! また何か、失敗したのですかっ!?」
「…またって」
『 ノ…ノンナさん 』
「…なんでしょう?」
『 コレが、貴女にとって…当たりか、はずれ…どちらか分からないのだけど… 』
「ん?」
『 隆史が、西住 みほさんでは、なくて… 』
「…はい?」
『 隆史が……貴女を選んだ。…その未来を引き当てたわ 』
閲覧ありがとうございました
名前を頂いた…わからなかった人は、田尻と組合わえて検索!
……んな訳で整いました。
PINK編とリンク。
ルート:ノンナ
PINKの方は、挿絵…描けたら書きます。
一応、下書きは終わっとる。
…エロ絵は…いらんのでしょうか?
ありがとうございました。