転生者は平穏を望む   作:白山葵

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この三人の場合…前後は無理やった…。


閑話【 未来編 】~夢のつづき~ その6 オレンジペコ編

『 さぁっ! 張りっきって、次に行くわよっ!! 』

 

「……」

 

 エリス様の元から戻ってきたら、戻ってきたで、駄女神が随分と気合を入れていた。

 手を握り締め、こちらに振り向けた顔が、随分と輝いて見える。

 

「……」

 

『 何っ!? 隆史っ!! 』

「お前…また碌でもない事、企んでねぇか?」

『 …そ…そんな事ないわよぉ? 』

「…………」

 

 お前にポーカーフェイスは無理だ。

 すでに白状した様なものだな、その顔は。

 

 オペ子と話していたのが、非常に気になるが…。

 

『 そ…それじゃあ、呼ぶわねぇ 』

「……」

 

 非常にニッコニコしているオペ子が、隣にいるので…なんだろう。

 チクショウ…強く追求できない。

 

『 んじゃあっ! 次はオレンジペコさんの番ね 』

「はいっ!!」

 

 駄女神が杖を上げ、また何かブツブツ唱え始めた。

 お前…ソレって、ただ格好つけてるだけだって、前に言ってなかったか?

 さっさと…呼べばいいだろうが。

 

「隆史さん」

「…はい?」

 

 ダージリンが、俺の服の袖を引っ張った。

 …初めてだな、こういった行動をするの。

 

「先程から気になっていたのですが、あの青い女神…様には、随分と…その」

「あぁ、あの駄女神?」

「えぇ…と…」

 

 何が言いたいんだろう? 

 言い淀んでいるが、いつもと変わらないその表情だから、うまく判別がつかない。

 いや? 若干、顔に赤みが…。

 

「…そっの…んん……」

「……?」

 

 言葉にしようとすると、何故か途中で止めてしまう。

 

「……」

「……」

「…っっ!!」

 

 次の言葉を黙って待っているのだけど、黙ってしまった。

 

「………ぅぅ…」

「なんで、声かけておいて、顔を逸らすんだよ…」

「ぅぅう…」

 

 目と目が合った瞬間、すっごい高速で顔を逸らされたよ…普通に傷つくぞ。

 

「ぎ…逆にお聞きしますが、よく先程の件の後…平然としていられますわね」

「…はい?」

「み…未来の…その…私と、隆史さんの…」

 

 あれ? 話が変わった。

 まぁいいけど…先程の件って…。

 

「ダージリンと俺の? あぁ、子供の事か? …一隆?」

「っっ!! …そ…そうですわ。」

 

 ……。

 

 うぁ。真っ赤になっちまった。

 小さく縮こませながら、自分の体を抱きしめてしまったな…。

 う…う~ん。

 ちょっと無神経な発言だったか?

 

「わ…私との…ここ…ド…モ……ウッ……フフ……」

 

 ……。

 

 いや、小さく笑ってるな…特に怒ってる訳では、なさそうだけど…。

 なんか…なにを言ってもダメそうだ…。頭を掻く事くらいしか、やる事がねぇ…。

 あの…なんで、ゆっくりと近づいて…あの…?

 

「隆史さん」

 

「はい!?」

 

 ノンナさんが、ちょっと強く、服引っ張ってきた。

 …相変わらずの無表情。

 

「…チッ」

 

 何故このタイミングで、ダージリンは舌打ちを…。

 

「流石は隆史さん。この状況に、随分と慣れていますね?」

 

「…………」

 

 …うっ…すげぇ真っ直ぐ、目を見てくる…。

 

「な…慣れては…ないのですけど…」

「……」

 

 じ──────っと、俺を見る顔…目を動かさない。

 

 …なぜだ…? 汗が止まらんっ!

 

「まっ…もういいです。もう終わった事ですから」

「終わってませんわ。未来の事…で・す・の・で」

 

「……」

 

 ダージリンが、復活をしたな…って! だから、タイミングが分からんっ!!

 ノンナさんの発言に、間髪入れずに即答で返した。

 

「ダージリンさん。先程から…些か、はしたないと思うのですけど?」

「あら、そう?」

「露骨すぎではないでしょうか? まぁ、気分が高まっているは理解しますが、人前だというのをお忘れですか?」

「人前? それを言うなら、ノンナさん。準決勝戦の時の事でも思い出してみたらどうかしら? あれに比べれば…」

 

 

 …あ…嫌な予感。

 

 

「私は良いのです。聖グロリアーナの隊長としての事を言っているのです」

「それは今、関係ございませんわよね?」

 

「……」

「……」

 

 

 

「あぁ…羨ましいのですね」

「いえ? まったく?」

 

 

 

 ……。

 

 こ…。

 

 怖っ!!!

 

 基本的に感情が昂ぶりやすい空間だってのは、知っていたけどっ!!

 双方、普段と変わらない表情と、口調だってのが、余計に怖いッ!!

 

 いや…違う…。

 

 ノンナさんが笑ってる……。

 

 普段、滅多に見せなかった微笑を浮かべてる!

 んでもって、ダージリンもダージリンで、すこぶる機嫌が良い時の顔してるっ!!

 この状況と、セリフ! 全てにおいて、その表情はおかしいだろ!

 

「羨ましいと思うのでしたら、ご自分も『行動』…と、いうモノを? お起こしたら如何でしょうか? あぁ…その様な勇気は、ありませんか」

「勇気? 勇気とはまた、随分と的外れな…。いえいえ…淑女として、あの様な? はしたない真似なんて、とてもとても」

「ふっ…人前で露骨に、男性に対して体を何度も、何度も、密着させようとするのは、はしたなくないと?」

「程度の問題ですわ」

「はっ…アレのどこが…」

「……」

「……」

 

 な…なんで、いきなり、牽制しあってんの、この人達っ!

 なんか、会話の内容が、一周して回ってきてないか?

 

 

『 あっ!! やっっばっ!! 』

 

 今度は、あっちかっ!!

 駄女神が、またなんか叫んだ!?

 やばっ!? 今度はなにをやらかしたっ!!

 

「隆史さん。なにを自分は関係ないって、顔をしているのですか?」

「隆史さん。なにを自分は関係ないって顔で、よそ見をしているのでしょう?」

 

 こっちからも、矛先を向けられたしっ!!

 

「待って!! ほっ…ほらっ! 向こう向こう!!」

 

 先程から、一切喋らないオペ子もいるしっ!!

 駄女神がね? また何かやらかしたと思うしっ!!

 というか、今のこの二人に絡まれたくない!!

 

「「チッ…」」

 

 誤魔化す様に…いやもうっ! 白状してしまえば、誤魔化す為に、何やら騒がしい駄女神を指す。

 二人も俺と同じく、変にテンションが高かったオペ子が気になるのか、すっごい目を細めながら指された方向に顔を向けた。

 舌打ち付きで…。

 

「「  」」

 

 と…思ったら、動きを止めてしまわれました。

 駄女神…やっぱり何かしたか?

 

 ……。

 

 …………。

 

 召喚…されたのだろう…。

 

 オペ子の横に、子供が立っていた。

 

 

 

 立っていたんだよ…二人。

 

 

 

 女の子が…二人。

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

「タラシさん」

「タラシさん」

 

「     」

 

 

 ノンナさんが、右。

 ダージリンが、左。

 

 …腕をロックされました。

 

「まっ!! いやっ! 本気で、待ってくれっ!!! 痛った!! 痛い痛い痛いっ!!!」

 

「…この…」

「まさか、ペコの時にまで…」

 

「反対方向っ!! 腕はそっちには、曲がらないからっ!!」

 

「…見損ないました」

「見損ないましたわ」

 

「  」

 

 みほとまほちゃんの時と…同じ…。

 同じ世界に、二人…。

 う…怖くて、左右の二人の顔が見れない…。

 

 

 

 エ────ー…………マジでぇ…。

 俺…え? 浮気? また?

 

「 …… 」

 

 そ…それと…。

 この状況で、一切言葉を発さなくなった、オペ子が非常に気になる…。

 少し、顔を俯かせ…目が見えない…。

 電池が切れてしまったかの様に、一切…微動だにしない…。

 

 ブツッ!

 

 ……。

 

 何かが切れる音がした…。

 

 …それと同時に、彼女の足もとに、何かが落ちた。

 

 び…びっくりした…。

 

 オペ子の堪忍袋がぶち切れた音かと思ったのだけど、どうも違うようだ…。

 彼女の頭の左右…結った髪を止めていたリボンが、切れて落ちたみたいだ。

 …それでも、良く音が聞こえたな。

 

「オ…オペ子?」

 

「 … 」

 

 俺の呼びかけに何も反応しない…。

 ボーとした目で、一点を見つめて動かない。

 一瞬目を見開き…大きく頭を振った。

 フサっと…結われていた髪が、柔らかい動きと一緒に解かれていく…。

 

「…さすがに、どうかと思いますが…隆史さん?」

「…あの、ペコに何かございませんの?」

 

 …うっ。

 世界線…自分達とは違うとは言え、ダージリンにとっては、大事な後輩。

 ノンナさんにとっても…良い友人。

 そのオペ子の未来で、コレだ…。

 

 …俺……ゲス。

 

『 ん~…ま、いっか! 』

 

 駄女神も駄女神で、自分の持っていた杖をボケーと眺めていたが、その一言で我に返ってた。

 何も気にしていない、その一言…。

 

「良か、ねぇよっ!! またかっ!」

『 何がよ? 』

「何が…って…あぁっ!! もうっ!!」

 

「…そうですね。ここで、あの女神様に対して、怒ってしまえば、完全に人のせいですからね」

「呼び出す世界を間違えたとしても、その数有る未来の中に、実際に存在する世界ですしね…この……」

 

「「 浮気者 」」

 

「 」

 

 あ…うん。

 確かに、この世界は感情が昂ぶりやすいのだろう。

 ここまで、敵意…というか、怒ったような顔の二人は、初めて見るヨ…。

 

 いや…うん……何も言えない…。

 

『 あぁ…そういう事ですか。お二方、そちらのお子様は、確かに隆史さんとオレンジペコさんのお子様ですよ? 』

 

「「 …え 」」

「っ!!」

 

 エリス様が、俺達の様子を見て仲裁をしてくれた。

 そして、俺とオペ子の子供だと、はっきりと言った。

 

『 一度、説明しましたが、呼び出す方は、その世界線で一番若いお子様になります…年齢が同じならば、当然…… 』

 

「あ…」

「なる程…という事は…」

 

「双子か!!」

 

 焦ってしまったが、よくよく見てみると…ある。

 どちらかと言うと、二人共揃って、オペ子の面影が強い。

 というかまただな…。何処へ行った俺の遺伝子…と、思えるほどに、二人ともオペ子に似ている。

 よ…よかったぁっっ!! 俺、浮気! してないっ!!

 

「はぁ…そうですか。良かったです」

「……ま、前例がございますし…少々、驚きましたが…はぁ…」

 

 ……。

 

 

 うん、漸く腕を解放してはくれたが…ここは、貝になるべき場面だネ。

 しかし…。

 

「彼女、自分とのお子様がお二人現れても、気にする様子もありませんね」

「寧ろ…ペコが大人しいというのが、少々怖いですわ」

 

 …。

 

 

 

『 ぷぅ~くすくす。隆史、焦ってんのぉ。面白い顔してたわよ? 』

 

 こ…このヤロウ。

 

「じゃあ、駄女神よぉ。お前、今度は一体、何に失敗したんだよ」

『 し…失敗!? 何の事かしらっ!? 』

「何誤魔化してやがる…。思いっきり失敗したって言っていただろうが」

『 空耳じゃなぁい? 』

「……」

『 頭と顔だけじゃなくて、ついに耳までおかひぃぃぃいふぁいふぁいっ!! 頬をひっふぁらないでっ!!! 』

 

 このまま、釣り上げてやろうか…。

 駄女神の頬を、引っ張るだけの為に、オペ子の横にまでくると…ぐっ…。

 目の前にいる子供達に、物凄く不信な目を向けられてしまった…。

 

 や…やめよう。

 

「 まぁまぁ、そこら辺で… 」

 

「…オペ子?」

 

 いつの間にか、俺の横に立っていた。

 漸く声を出したと思ったら…いつもの様に…………いや? なんか…違う。

 俺の顔を見上げる事もなく、腰骨付近に手を触れてきた。

 

「はぁ…分かった」

「 そうですよ? 子供達も見てますしね? 」

 

 な…なんだ?

 少し、寝ぼけた様な喋り方…。

 

「…オレンジペコさん。なんか…変ですね」

「そう…ですわね」

 

 しかし…オペ子、結構、髪の毛が長いんだな。

 何時ものヘアースタイル姿しか見た事がなかったから、非常に新鮮に感じる。

 腰にまで届きそうな程の髪が、小さく揺れながら光沢を放っている。

 下ろされた髪…ロングヘアーオペ子。

 

「 お…おぉぉ!! 父さんかっ!! 」

「 お父様…! 」

 

 っ!?

 

 いきなり、両足に二人の子供が抱きついてきた。

 先程まで、警戒心丸出しの顔だったのに、今は…オペ子と同じ顔で、笑っている。

 …あぁ、そうか。

 オペ子が、俺に触れてきた事で、少し警戒心を解いた…んで、俺だと分かった。

 そんな感じだな。

 

「なんだ? 分からなかったか?」

「 うんっ! わからなかったっ! 」

「 分からなかった…です 」

 

 双子だしな…そっくりだ。

 

 性格差がはっきりと分かる位に喋り方の違い。

 後は、服装か…?

 半ズボンを履いたコペ子と、ロングスカートを履いたコペ子…。

 完全に髪が黒い、オペ子だ。

 

 …コペ子…。妙にしっくりくるな…。

 

「 髪あるしッ!! 」

「 髪の毛…ありますし… 」

 

 

 いやぁ…。

 

 ……。

 

 …………うん。

 

 

「 ヒゲ無いしっ!! 」

「 お髭…ないです 」

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・・。

 

「…一応聞く。なんで俺に髪がないの? 自然にハゲた…か?」

 

 間髪入れずにある意味で、予想通りの答えが返ってくる…。

 

「 浮気対策って、母さん言ってたっ!! 」

「 浮気…予防って…お母様…… 」

 

 またかよっ!!

 いやぁ…すっげぇイイ顔で言ったなっ!!

 

「浮気対策で皆揃って、俺の髪の毛狙うのやめてくれよっ!!」

 

「…Не можете помочь?」

「仕方ないのでは、なくって?」

 

「………」

 

「Что вы получаете」

「自業自得です」

 

「……………」

 

 す…すげぇ真顔で言われた…。

 ノンナさんと、ダージリン…見事に言ってる事が同じだ…。

 

「 …あぁ、なる程 」

 

 そんなやり取りに参加する事もなく、オペ子がキョロキョロと周りを見渡している。

 何か納得したかの様な呟きが聞こえると、そこで初めて俺を見上げた。

 

 ……。

 

 と…特におかしい所はないけど…なぜだ?

 ちょっと、違うと思うのは…。

 見上げてきたその顔は、何かを期待している様な顔。

 見つめ合う様な形になってしまい…何故か気まずく感じ…自然に目を逸らしてしまった。

 

「し…しかし…オペ子が、髪を下ろしている姿って、何気に初めて見るな」

 

 少し誤魔化す様に、先程の感想を口にすると、普通に喋り…返答をしてくれる。

 変な違和感は、気のせい…だったのだろうか?

 

「 そう…ですね。お嫌いですか? 」

「すこぶる可愛いと思うけど?」

「 ふふ…ありがとうございます。あ、ポニーテールもお好きでしたよね? 変えましょうか? 」

「い…いや? 今のが新鮮だから、しばらく見ていたい…と、思うけど」

「 はい…。でしたら、このままで… 」

「あ…あぁ…」

 

 何かを噛み締める様に、目を伏せ…静かに微笑んだ…。

 というか、ポニーが好きなのって、オペ子に言ったっけ?

 

「…さらりと、まぁ…。可愛いなどと…女性に簡単に…ん?」

「……」

「どうしました?」

「いえ……やはり、ペコがおかしい…」

 

 なんか…変な空気に…。

 

『 はぁい! はい!! んじゃ、次に行くわよっ! まずは自己紹介ねっ!! 』

 

 能天気なその声が、手を叩く音と一緒に響いた。

 そうだ…子供、頬っておく訳にもいか…

 

「 ノンナさんだッ!! 」

 

「…え、私ですか?」

 

 半ズボンのコペ子が、その声をガン無視…。

 今分かったと、ノンナさんに全速力で走って行った。

 子供が知っているって事は、将来、彼女との関係も繋がっているのか。

 

「 わ あ あ つ !! 」

 

 …。

 

 …何もない所で、躓いたぞ…。

 前に転びそうになった所、ノンナさんがしゃがみ込み、それを抱きとめた。

 なんか…すげぇ態とらしい叫び声に聞こえたけど……。

 

「 はぁ………また…コレだから… 」

 

 ……。

 

 あの…。

 

 スカートのコペ子が、侮蔑…と、すぐに分かるようなの声で、そんな言葉を言いましたね。

 

 

「あの…大丈夫…ですか?」

「 うんっ! ありがとっ!! 」

 

 …子供を心配して声を掛けてくれるノンナさん。

 それに対して、子供らしい返事を返す、半ズボンのコペ子。

 

 …。

 

 なんだ…この。

 

「…しかし、貴女が、私の事を知っている…と言う事は…」

「 うんっ!! 母さんの友達ぃ!! 」

 

 ……。

 

 抱き止められた状態で、会話を続ける二人…。

 しかし、娘。

 

 何故、ノンナさんの胸に顔を埋めているんだ。

 抱きしめる様に、してるし…明らかに故意でやってるだろ。

 

「…ふむ。ちなみに、そちらの……」

「 ダージリンさんっ? 」

 

 

 ……。

 

 

「あぁ、やはり彼女の事も…。やはり、そうですよね」

「 はぁ…そうそう 」

 

 

 …………。

 

 

「あの…もう、立ち上がっても大丈夫ですか?」

「 あ、お構いなく。コノママデ 」

 

 

 ………………。

 

 

「あの…」

「 はぁぁぁ…あ、オカマイナク 」

 

 

 …確信した。

 

 

「いや「 オカマイナク 」」

 

 

 

 襟首を掴んだ。

 

 

「 父さん、何すんだよっ! 」

 

 そのまま片手で、持ち上げると…こちらを強引に向かせ、ズッ…と、顔を近づける。

 …おい、なぜ目を逸らす。

 

「あの…隆史さん? さすがにソレは、どうかと…」

「そうですわよ? 女の子に対する持ち方では…」

 

 ……。

 

「 そ…そうだよ、父さん。つか、顔が怖い… 」

 

 悪かったな、生まれつきだ。

 

 ぶら~んと、吊るされる様にされているコペ子に対して、確認をする意味も込めて聞いておく。

 

「…お前、名前は」

 

「 や…やだなぁ、今更ァ? 」

「俺からしたら、未来の事だ。知るわけがないだろう」

「 そ…そうだけどぉ 」

 

 なにを言い渋ってやがる。

 子供らしい言い方が、逆に態とらしい。

 

 …やっぱりお前。

 

「 …いい加減にして、クソ兄 」

「 あっ!! 馬鹿ッ!! 」

 

「「 !? 」」

 

 ……ほら…やっぱり。

 スカートのコペ子が、教えてくれたな。

 

「 …毎回、毎回…ほんとに…死ね  」

 

 ぶ…侮蔑だね?

 …その言い方は、完全に侮蔑と言うのを込めてるね?

 

 まぁ…それは後だ…。

 

 

「…お前…やっぱり、男か」

「 い…いやぁ… 」

 

 ……。

 

 今日日、両手の指先を合わせて、気まずそうにするなんて、しないぞ。

 なにを焦ってる。

 

「 お父様 」

「ん?」

 

 スカートのコペ子が、俺のズボンを引っ張った。

 

「 そのクソ兄。男。…尾形 礼史。10歳。女の敵。死ね 」

 

 …礼史…ね。

 淡々と、一言一言区切る様に、説明してくれた。

 そして最後に、死ねの一言。

 

 …死ねって。

 

「 それで、私にソックリなのをイイ事に、私のフリして、女子更衣室とに入ろうとするクズ 」

 

「…………」

 

「 はっ…入ってないっ! まだ、入ってないっ!! 」

「…まだ?」

「 …い…いやぁ…だから、顔が怖いって!! 」

 

 だから、生まれつきだ。

 

「お前……犯罪…一番、最悪な犯罪…」

「 大丈夫っ!! まだ子供だから、イタズラで済まされるんだっ!! 」

 

「…は?」

 

「 ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ!! 顔が怖いっ!! 」

 

 この…誰に似たのか…。

 顔を近づけると、必死になって逃げようとしているな。

 というか、オペ子の顔で…コレはヒドイ。

 

 ま…取り敢えず、もう一人のコペ子。

 最初のビクビクした様子は、もうすでになく…吊るされた双子の兄を、ゴミを見る目で見ている。

 

「教えてくれてありがとなぁぁぁ…」

 

 優しく…あぁ、本当に優しく、スカートのコペ子の頭を撫でてやる。

 一応、お礼として、頭を撫でたのだが…その手に、上から小さい手を添えてきた。

 

「 …フフッ 」

 

 嬉しそうに、小さく笑う声が聞こえた…。

 

「……」

 

 …何故だろう。

 

 この行動で、この世界線の子供には、嫌われていないと確信が取れたのだけど…。

 かほの時の様に、はしゃぐ気分には、ならなかった。

 

 …なぜなら。

 

 

 一瞬……葵を思い出したから…。

 

 

 よ…よしっ! 忘れようっ!!

 まずは、目の前の事だ。

 

「では、礼史。…お前、ノンナさんを知ってるんだな」

「 そうっ!! 若いっ!! そして、でっかいっ!!! 」

「 …毎回毎回、ノンナさんとダージリンさんが、来ると大体アレをやる 」

「……」

「 父さん 」

「なんだよ」

「 そこにマシュマロと言う名のクッションがあるじゃろ? 」

「……」

 

「 あったら…行くじゃろ? 」

 

「お前、何言ってんだ?」

 

「 行くだろっ!? 行くよねっ!? 行かないわけがないっ!! 」

 

「お前、10歳だろっ!? 本当に何言ってんだ!!」

 

「なんだよ、父さんっ!! おかしいかっ!? それが男の本能って奴だろっ!? あのノンナさんだぞっ!? JKのっ!! ちくしょー!! ダージリンさんにも行きたかったのにっ!! お前が邪魔しなきゃ、JKダーさんにもっっっ!! いっつもいっつも邪魔しやがってぇっ!!」

「……」

 

 

 

「 死  ね 」

 

 

 

 

 ……。

 

 すっごい喋る兄に対して、すっごいシンプルな一言。

 あ…ノンナさん、頭を押さえてる…あ、ダー様もだ。

 

「…そ…そういえば…」

 

 もう一人の子供の名前を聞いていなかった。

 見下ろせば、すぐに分かったのか…すぐに教えてくれた。

 

 …が。

 

「 私…尾形 凛。その汚物と同じく10歳です 」

 

「…あ、はい。」

「同じ…という、表現は非常に、不本意ですが」

「…………」

 

 10歳……10歳ぃぃ…。

 

 ダペ子と同じにしか見えない…。

 というか! 俺の子供、みんな個性が強すぎるっ!!!

 

 早熟かもしれんが、まともな子供っていたっけ!?

 

『 補足ができない… 』

『 今回は、楽できますね 』

『 …いや、無理でしょ 』

『 …………ですね。先輩のお陰で 』

『 …… 』

 

 …ほんとに何やった、駄女神。

 

「 そりゃ、父さんは母さんと結婚したし…そっち趣味だとは思うけど… 」

「…おい、礼史」

「 俺の味方は、優おじさんしか…いない…母さんっ!? 」

 

「「 あぁ、あの汚物 」」

 

 …。

 

 あぁ…やっぱり、林田の兄貴の相手…姉さんだったか…。

 いや…まぁ、突っ込みたかったんだけど、母娘の声が、被ったのが怖かった…………。

 

 というか、いつの間にか、オペ子が隣にいた!!

 

「 か…母さん? なんで手を握ってるの? 」

「 ………… 」

「オペ子…さん? なんで笑ってるの? あ…」

 

 有無を言わさず、すでに俺の手を握り締めている。

 俺と、オペ子と…礼史。

 

 要は…。

 

 

「 ちょっ!? えっ!? 待ってっ! もうちょっと、若いノンナさっ…怖っ!! 母さん、顔、すっ―    

 

 

 礼史の強制帰還…。

 

 

 …うわぁ…。

 

 体の発光も、いつもよりも早くて…強かった。

 パッと付いて、パッと消えた…。

 こんなに簡略化できるモノでした!?

 

「 …はっ。ざまぁみろ、クソ兄 」

 

 ……。

 

 あの…凛さん?

 

「 そういった訳で…ダージリン様 」

「……」

 

 娘が、吐き捨てる様に出した言葉に呆然としていると、オペ子が俺ではなく、ダージリンへと顔を向けていた。

 釣られ、ダージリンを見てみると…あれ?

 なんか…少し、笑っている。

 

「 娘にお名前…頂きました 」

 

 笑った。

 

 笑って、ダージリンへと…え? 名前?

 

「 しっかりと、許可は頂きましたよ? …将来…ですが 」

「あぁ…なる程」

「…今の言葉で、全て分かりました。どうりでペコの雰囲気が違うと…」

「 ふふ… 」

「…本名で呼んだ方が良いかしら? さすがに歳上…ちょっと、変な感じですわね… 」

「 いえ、ペコと呼び捨ててください。…その方が懐かしい…それに、嬉しいです 」

「分かりました」

 

 ……。

 

 空気が和らいだ。

 談笑をするかの様に、落ち着いた雰囲気…。

 

 …いや、まぁ…。

 取り敢えず、その…凛は、オペ子の手を握って、その会話を間近で聞いている。

 すっげぇつまらなそうに…。

 

『 あ~…隆史 』

「…なんだよ」

『 さすがにもう、分かったわよね? 』

「はぁ……。まぁ、会話の流れでな」

 

 わからいでか。

 

 会話の流れと、妙な雰囲気のオペ子。

 …繋がった。

 奇妙な違和感が消え、今は大分落ち着いた。

 

『 本当は、33歳のアンタを呼びたかったんだけど…対象を直前で間違えちゃったっ!! 』

「…何してんのお前。というか、何をしようとしてんだよ」

『 いやぁ…オレンジペコさんに、さっき提案したんだけどさぁ…。彼女達も見いたいかなぁ…って、思って 』

「何をだよ…」

『 勝ち取った、自分だけの賞品を 』

「…は?」

『 アンタには、分からないわよねぇ~…馬鹿だから 』

「……」

 

 なぜだろうか?

 強く言い返す気にならなかった。

 

 …納得させられるだけの、説得力が、変に楽しそうにしている駄女神から……何故かあった。

 

「 では…凛 」

 

 オペ子が、娘の手を引いて、俺の下にまで連れてきた。

 凛は、少し不満な顔をしているな。

 

「 クソ兄が、還ったんだから、私はもう少しいてもいいんじゃ… 」

 

 クソ兄って…。

 他の世界線で、娘に嫌われている俺…への感情が、礼史に向けられてる…って、感じか?

 あ、後…リンとレイジ。

 今更だけど、将来の俺。名前の感じを合わせたのか。

 んで、俺の名字を取った…。

 

「 お母さん、ちょっと話があるから先に帰ってて 」

「 ぅぅ…お父様 」

 

 う…涙目で、見上げられた…。

 

「 駄目です 」

 

 う~ん。オペ子が、お母さんしてる…。

 愚図る娘を、淡々と説得してるけど…なんだろう。

 子供の我が儘を無視とか…も、特有だよね…。

 

 しばらくすると、おずおずと、凛から手を挙げてきた。

 握れ…という、事だろう。

 

「 …では 」

 

 

 オペ子も、俺に向かって手を挙げてきた。

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

「 はぁ…あの子も、父親離れ…そろそろしてもらわないと… 」

 

 ……。

 

「そんなに…ですか?」

「 えぇ、べったりです 」

「あら、可愛いらしく思いますが?」

「 ダージリン様は、知らないから言えるのです。いや…ちょっと、あの子…父親を見る目が、おかしいと感じる事が度々… 」

「…?」

「良くわかりませんわね…」

 

 ……あの。

 

「 …礼史は、いい加減に…させないと… 」

「あぁ…結構、すごいお子様でしたけど」

「 あ…はい、お恥ずかしい… 」

「でも、二人共、ペコそっくりね」

「 よく言われます 」

 

 …あのぉ…。

 

「そういえば、将来の…あ、失礼。今のオレンジペコさんは…」

「 あぁ、気を使って頂かなくても、結構ですよ? 合わせますので 」

「はい。では、オレンジペコさんは、今でも戦車道は…」

「 妊娠した時に、引退しました 」

「そうですか…」

「 いえ、まぁ…色々ありましたが、まったく関わっていないって訳ではないのですよ? 」

「あら」

 

 …えっと、え~…。

 

「 現在、青森の…えぇ、「魚の目」を継いで…新しく改装して、お店を新たに開いて切り盛りしております 」

「あ…結局、隆史さんは青森へと、戻ったのですね」

「しかし…ペコがあのお店で…」

「 あ、いえ。改装…というか、改築ですね。店自体を変えて、紅茶専門の喫茶店を営んでいおります 」

「…なる程。何故か納得しました」

「紅茶専門…」

「 はい、店主様達も一緒になって頑張ってます 」

「居酒屋飯処…から、紅茶専門喫茶店ですか…」

「ペコらしい…でも、ご実家…結構な、家柄でしたわよね? よく、隆史さんとの結婚をお許しになりましたわね」

「 あ、はい。反対されましたね 」

「軽くおっしゃいますね…」

「ペコ…それで、どうやって…」

 

 

 

「あ、はい。「駆け落ち」しました」

 

 

 

「「 詳しくっ!!! 」」

 

 

 

 …あっれ~?

 すげぇ無視されてるぅ。

 すっごい、衝撃的な事連発してるね。

 

 オペ子さん(32)は、普通に残ってるし…井戸端会議始めるしで…。

 というか「駆け落ち」の言葉に、ノンナさんとダージリンの食い付きがすっごい…。

 

『 隆史、なにやってんのよ 』

『 そうですよ? なぜ、一人だけ、立っているんですか? 』

「いや…」

 

 そうだね。

 全員、懐かしいお茶会セットの椅子に座ってますね。

 

『 あ、これ美味しい… 』

『 あの方…入れ方一つで、ここまで味…風味が変わるものなんですねぇ 』

 

 はい、オペ子が入れたお茶を飲みながら。

 

『 いやぁ…思い違いだったわ。今回、すんごい楽 』

『 そうですねぇ。嬉しい誤算ですね 』

『 あの子ちゃんと、大人をしてくれてるしねぇ…五十鈴 華さんほど、暴走しないし… 』

『 あ、はい。今度呼びますねぇ~ 』

『 なんでよっ!! 』

 

 いや…ね?

 子供を還した理由は、わかったよ? 駆け落ちとかなんだの、聞かせられんわな。

 だけどね? なんで、まだいるの? 32歳、オペ子さん。

 

 今は、将来の駆け落ち話に花を咲かせ…すげぇキャーキャー言いながら、盛り上がてるし…。

 あ、うん…場所はバレていたから、本当の意味での「駆け落ち」ではないようですね。

 あ…はい。おやっさん達が、味方に…あ、はい。

 

 ……。

 

 俺…居た堪れない…。

 

「 まぁ、それこそ色々ありましたが…、子供が生まれた辺りで、勘当が解けましたので? 結果オーライです 」

「このオレンジペコさん…話す内容の重さと反比例して、言い方が軽いです…」

「後…何か、もう…嫉妬心も沸かきませんわ」

「 あ、なくなりましたね。おかわり入れましょうか? 」

「お願いします」

「お願いするわ。…ここまで美味しいお茶を飲めるとは思いませんでしたわ…素直に感服しました」

「 プロですから♪ 」

 

 ……。

 

 …………。

 

 あっ──ー!!!

 

 ニッコニコしてる、オペ子が、非常に可愛いんだけどっ!!

 なんだこの、…何!?

 

 なんとも言えない、もどかしい気持ちが、溢れてくるっ!!

 

「あの…西住 みほさんは…?」

「 え? えぇ…まぁ…大変でしたけど…なんとか、勝てました 」

「…勝てた…と、言うのですから、直接…」

「 はい、流石に喧嘩などはしておりませんが…話し合って、話し合って… 」

「「 …… 」」

 

「 最終的に、諦めてもらいました 」

 

「「っっ!?」」

 

 

 ……。

 

 胃……。

 

『 あぁん? 隆史、なんて顔してんのよ 』

『 気持ちはわかりますが… 』

『 ちなみにね? オレンジペコさんだけね。本当の意味で勝ち取ったってのは 』

「………………」

『 すごかったですよね。…二人共。隆史さんの知らない所で、もう…何度も何度も… 』

「……………………」

『 そうねぇ…殴り合いとか、罵り合いとかじゃなくて、ただ純粋に想いってのを… 』

 

「  」

 

『 まぁ、それも今じゃ、本当の意味での友人関係になっているってのが、驚きよねぇ 』

『 戦車道師範になって…たまに、隆史さんのお店に来ていましたからね 』

「  」

 

 

 ……。

 

 あ、あははぁ。

 

 なんか…口の中が、鉄臭い……。

 

 

『『 …… 』』

 

「……」

 

『 アンタ、どうしたのよ 』

『 あの…大丈夫ですか? 』

 

「 」

 

『 エリス。この量の血を吐いて、大丈夫な訳ないでしょう? 』

『 えっと…えっと…閉じた口から、ダラダラ溢れてきますね 』

『 はいはい、「ヒール」ッ! …これでいいでしょ 』

『 …… 』

 

 

「っっはぁ!!」

 

 …い…意識が、この変な世界ですら…飛んでた…。

 呼吸も止まった気がするっ!!

 

『 あっはっはっ! 胃に穴でも開いたんじゃない? 』

『 見せてください? あ…いえ、本当に開いたみたいですね 』

「…………」

『 現実世界でも、限界が近かったみたいね。良かったわね…私がいてっ! 治しとたわよ? 』

「……」

『 ……なによ 』

「あ…ありがとう。助かった…」

『 きっもっ!! 素直にお礼言われたっ!!?? 』

 

 …このやろう。

 

 ……。

 

 ついに……逝ったか……俺の胃…。

 

 …。

 

 かんばった……お前、がんばったよ…。

 

 なんど、無茶しやがって…って、思ったよ…。

 

 あぁぁ…。

 

 

「癒されたい…非常に、今現在、癒されたい…」

 

『 まぁ? あんたの癒し系とやらが、アレの状態だしねぇ 』

『 あはは……お話に夢中ですね。まぁ…背中向けていましたから気づかなかったのかもしれませんが… 』

 

「還ったら、取り敢えず…クリスに癒してもらおう…」

 

『 んん? アンタの飼い犬だっけ? 』

『 …… 』

「そうだけど…って、知ってるだろ?」

『 そういえば、首輪は? 買ってなかったわよね? 』

「あぁ、だからこの前買ったな。散歩用のリールに着けてあるから、家じゃ基本的に外してやってる」

『 散歩? んじゃそん時だけ? 』

「そうだな。散歩専用の首輪って感じだな。その時だけ、クリスに首輪つけて散歩に連れてく…け…って、エリス様? 顔が凄い事になってますけど…」

 

『 ワザとっ!! ワザとですねッ!? 』

『 っっっ!!! っっ!!! 』

『 声にならない程、笑ってるじゃないですか 』

『 いや…隆史、飼い犬の事だと、饒舌になるわねぇぇ 』

『 …次回、尾形 涼香さん呼びますよ 』

『 なぁっ!? 』

『 五十鈴 華さん(33)も、つけましょう 』

『 !!?? 』

 

 ……。

 

 何なのだろう…?

 そして、向こうは向こうで、盛り上がってるし…。

 

「 あ…。流石に、そろそろ時間ですね。このままだと…この身体に意識が、定着してしまいます 」

 

 そ…そんな事まで、わかるのか…。

 そのセリフって、全て理解して言えるセリフだよな…。

 

「意識?」

「 えぇ、今の私が消えてしまいます 」

「…それはちょっと恐ろしいですわね」

 

 事態が、事態だ。

 引き止める事もしないで、ノンナさんが最後だと一言加え、まだなんか質問を…。

 

「では…最後に一つ、聞いてよろしいでしょうか?」

「…ノンナさん?」

「 はい? なんでしょう? 」

 

「プロポーズ…されたのでしょう?」

「!!」

「 え…それは、まぁ…はい。結婚する時に…あぁ、なる程… 」

 

「…なんて……言われたのでしょうか?」

「…そ…それは、気になりますわね」

「 ふふ…ノンナさんも女の子ですね 」

 

 っっ!?

 

「 そうですねぇ…今となっては懐かしく思いますが…一字一句、はっきりと覚えていますよ 」

「「 っっ!! 」」

 

「ちょっと待ってっ!!」

 

「なんですか、隆史さん。うるさいです」

「なんでしょうか? 隆史さん。喧しいですわ」

 

 ……。

 

 あ、うん。

 

 余り、このオペ子と話をしていないが…まぁそれでも、流石にその事を言われるのは恥ずかしすぎるっ!!

 

「お…おぺ子…。それは流石に…」

 

「 …… 」

 

「あの…オペ子?」

 

「 は……ぁぁ…。その呼ばれ方…とても懐かしい…。そういえば、この頃からあなたは、余り変わりませんね? 」

 

 あ…あの。

 とても長く…噛み締める様に…。

 

「 今のあなたも、娘が好きな男の子が出来たと言えば、対戦車ロケット担いで、カチ込みに行くのでしょうか? 」

「空気読んでっ!!! 今言うエピソードか!? ソレっ!!??」

 

 カチ込みって言葉をなんで知ってるのっ!!

 

「あなたは…何か、今の私に、聞きたい事…ありますか?」

 

 …よ…呼ばれ方。

 コロコロと笑い、からかう様な表情。

 

 話を中断させてしまったのだけど、それでもノンナさんとダージリンは、何も言わない…。

 

「…あの…ぐっ…やり辛い。…なんで、スキンヘッドに…将来の俺は、そんなに浮気性なのでしょうか?」

 

 取り敢えず、一番の疑問を口にした。

 そろそろと言っていたので、特に手を握る事もしていないのだが、オペ子の体が薄らと光始めていた。

 

「 かっこいいじゃないですかっ!! 」

 

 だから…空気読んで。

 即答で…興奮気味に…言わないで…というか、オペ子さんの趣味……って。

 

「 戦車道連盟のハゲとは違って、渋いんですっ!! カッコイイんですっ!! 」

 

 あ…はい。

 

「 もうっ! そんな事聞きたいんですか!? 」

 

 …いや…違う。

 

 違うが、結構大事な事なんですよ!!

 

 はぁ…。

 

「お……いや、ちゃんと呼んだ方がいいか?」

「 いえ? オペ子で宜しいですよ? いえ…オペ子が良いです 」

 

 ……。

 

「んじゃ、オペ子」

 

「 はい 」

 

 はっきりと…先程から聞きたかった事を…。

 

 前回、華さんには聞けなかった事を今度は聞こう。

 

 

「今のお前は…幸せだろうか?」

 

 

「 …… 」

 

 ……。

 

 ソレだけ。

 

 ただ単純に、ソレだけは知っておきたい。

 

 

 

 言葉を待っていると、その……体の光が段々と、強くなっていく。

 

 

「 …カウンター 」

 

「カウ…ん?」

 

「 もう一度…と、前置きがあって…ですね? いきなりお店のカウンターへ座ってと、言われて何がなんだか、わかりませんでした。それにあのカウンター…改築してもまだ残ってるのですよ 」

 

 なに…を…?

 

「…『 さて、本番も明日となりましたが、オペ子さん 』」

 

 …あ。

 

「 …本番? なんの? って…思いました。ですが、すぐに分かりました。えぇ…分かりましたよ…当然じゃないですか 」

 

 顔が…ここまで、熱く感じる事なんて、今までなかった。

 わかった…俺がしたこと…。

 

 

「 と、言いますか、とても久しぶりに呼ばれました…オペ子って。ですから…まぁ…私は『 はい、何ですか? …やっぱりその愛称は、やめてくれないんですね 』…って…言いました 」

 

 

 …あぁ…。

 

 

 

「結婚してください」

 

 

 そうか…過去でも、未来でも…俺は、オペ子に…。

 

 

 今度は、応えてくれた…。

 しっかりと応えてくれた…。

 

 

「 『 はい 』 」

 

 

 

「 そう答えたのです 」

 

 

 

 

 

「 だから……。幸せに…決まっているじゃないですか ──―

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃっっぁぁ!?」

 

 

「………」

「………」

 

 

『 はぁい、んじゃ、次行くわよぉ 』

 

 

「ぁ…ぁあ……」

「………」

「………」

 

『 ノンナさんの番ねぇ…って… 』

 

「ぁ…」

「………」

「………」

 

『 隆史? いい加減、抱きしめるのやめたら? …死ぬわよ? 』

 

「ぁぁ…」

「ま…いいです。次は私の番ですから…」

「…………」

 

『 あ、後、オレンジペコさん。ごめんね? …間違えちゃった 』

 

「構いませんっ!! 報酬、ランク上げますからっ!! ありですっ!! コレはアリですっ!!」

「…どうでもいいですから、私の番ですよね? 早くっ!!」

「……」

 

『 んじゃ、呼ぶけど…いい? 』

 

「はぁぁ…もうなんでもいいです…」

「……」

「……」

「後は、好きにしてくださぁい…」

「………」

「………」

 

『 あの… 』

「早く…して…ください…限界……が……」

「32歳は許せましたのに…」

 

『 わ…わかったわっ!! 』

 

「…む…漸く、私の番ですね」

「……隆史さん。いい加減に…」

 

 

『 あぁっ!!! 』

『 あ……あぁ… 』

 

「なんですかっ!! また何か、失敗したのですかっ!?」

「…またって」

 

『 ノ…ノンナさん 』

「…なんでしょう?」

『 コレが、貴女にとって…当たりか、はずれ…どちらか分からないのだけど… 』

「ん?」

 

『 隆史が、西住 みほさんでは、なくて… 』

「…はい?」

 

 

 

 

 

 

 

『 隆史が……貴女を選んだ。…その未来を引き当てたわ 』

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました
名前を頂いた…わからなかった人は、田尻と組合わえて検索!

……んな訳で整いました。

PINK編とリンク。

ルート:ノンナ

PINKの方は、挿絵…描けたら書きます。
一応、下書きは終わっとる。

…エロ絵は…いらんのでしょうか?

ありがとうございました。

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