転生者は平穏を望む   作:白山葵

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はい、分かってます! 

閑話ではなくて、本編進めなくてはと、分かっちゃいるんです!!
でも、一日遅れてしまったけど、この手のイベント関係を書きたかったんです!
思いつきで即興…本編、PINK両方の執筆途中で止めて…時期もの書いてみました。


…………ちょっと未来のお話



【閑話】 ~乙女の男子会です!~

『もう~♪ いくつ寝るとぉ♪ …ば~レ~ん…タ………イン…』

『……』

『……』

 

『…死にたい』

 

『…さて、そろそろ帰るわ。お邪魔したな尾形』

『そうだな。来たばっかだけどな』

 

『聞けっ! 聞くんだ! 特に尾形!』

『 ヤ ダ 』

『お前に教えて欲しいんだ!』

『ヤダって、言ってんだろ』

『来月、バレンタインだろう?』

『そうだな、だからなんだ』

 

『バレンタインでチョコ貰えるって…どんな気分?』

『……』

『……』

 

 

『 唐突にお前、何言ってんの? 』

 

 

『あ、お前はいい。中村は言うな。普通に死にたくなるから』

『人様の家に来て、第一声がソレか?』

『いや、だってよ、中村。普通に興味沸かね?』

『お前こそ俺の話を聞け。それに興味? 別に沸かねぇよ』

『尾形の性格…人間関係上…どんなバレンタインを送ってきたか』

『……む』

『俺は、もう…こいつに嫉妬はしない。そう…去年の糞みたいなゲームで思い知った。よって…いや、むしろ…』

『…………』

『こいつの修羅場エピソードを楽しむ事に専念したいんだ! あんな面白いバラエティは、他に無いだろう!?』

『…俺は、お前のそういう腐った所、結構好きだぞ?』

『キサマラ』

 

『さっ!? どうだ、尾形っ!!??』

 

『無えわ!! なんで、修羅場前提の話なんだよっ!』

『うるせぇ!! モテない俺の心の砂漠に、オアシスをボランティアで設置しやがれ!!』

 

『よし、ちょっと待ってろ。ベコ、換装フル装備で着てくるから』

 

『ベコ、兵器になりかけてるじゃねぇか』

 

『いや…なんか、愛里寿が、どんどん機能を付け始めてな…この前…AI搭載して…もう、訳が分からない仕様になってんだ…』

『あぁ、お前の親戚の…あの天才少女か。なんだよ、機能って…AI? ただの着ぐるみだろ…』

『なんか自分の名前付けたみたいでな…「ALICE」って、システムなんだけど………気が付くと着ぐるみの動き、乗っ取られてる』

『勝手にって…普通に怖いぞ。どこのセンチネルだよ』

 

『んな事、どうでもいいんだよっ!!!』

 

『チッ…』

『チッ…』

 

『ダー様とか、ノンナさんとか!! あのメンツのマジモン本命チョコってのが、どんなのか知りてぇんだよぉぉ!!』

『ふむ…なるほど。それは、興味あるな。尾形、どうなんだ?』

『中村……あっさり手の平、返しやがって…』

『どんな表情で渡すとか! 渡し方とかも知りたいっ!!』

『うるせぇなっ! 昔っから…青森の時も、あんまり縁なんてなかったわ』

『嘘つくなっ!!』

『マジでバレンタインなんぞ、縁がなかったんだよ。時期的には…まぁ、カチューシャとか、ノンナさん達とは出会ってたけど…その頃、ノンナさんには特に嫌われてたしな』

『あ~…なるほど。それに聖グロ連中とは、4月、5月頃だっけか? 出会ったの』

『そうそう。オペ子が入学してからだしな。むしろ…バレンタインは、掻き入れ時だったな』

『掻き入れ時?』

 

『学校の女子共に頼まれて、有料でチョコを俺が作ってた』

 

『『 …… 』』

 

『バイト先の取材記事でな? 変にそっち方面で有名だったから…まぁ、頼まれる事、頼まれる事…ラッピング含めて全て込みで、結構稼がせてもらったな』

 

『『 …… 』』

 

『既製品と間違われる程のクオリティを出す事に、心血を注いだ。包装リボン作る姿を見て、バイト先の客連中に、気持ち悪いを連呼されたけどな』

『あぁ…お前、変な所、器用だったな…というか、商売すんな。金のやり取り、嫌いじゃなかったか?』

『いや…有料にしたら、諦めるかと思って言ってみたんだけどな? …迷いもなくほぼ全員、了承しやがってなぁ…引くに引けなくなった』

『…女子って』

『…後、制作にバイト先の店を借りていたからな…カチューシャに、哀れみの目で見られたのは、忘れない…』

『『…………』』

 

『ノンナさんには、ゴミを見る目で見られた…』

『ご褒美かな?』

『ご褒美だろ』

 

『クッ…! ま、まぁ…かと言って、金取るからには、手は一切抜かなかったけどな…。あ、因みにフェイク用のチョコで、男子連中にも頼まれたな』

『気持ちが……わかるぅ…』

『林田…』

『よって、貰った事なんぞないわ。特に本命なんて有り得ん』

『…そのチョコをもらった野郎共が不憫だな…』

『待てっ! 待て、中村! 一つ忘れてるぞ!?』

『……あ、なるほど…………西住姉妹っ!!』

『あ? あ~…そういや、転校してからも、毎年送られて来たな』

『『 ………… 』』

『なんだよ』

『死ねッ!! しっかり、貰ってるじゃねぇか!』

『いや…まぁ、普通に、義理だと思ってたし…』

 

《 ド ン ッ ! ! 》

 

『なんだ、今の音』

『……』

『中村?』

『…今この家、お前しかいないんだよな?』

『お? そうだな。というか、だからお前ら来たんだろ?』

『…まぁ、流石に俺らも、其処ら辺には気を使っ…じゃない。とにかく居ないんだろ?』

『あぁ。まほちゃん遊びに来て…そんでクリス連れて、皆でどっかに出かけて行ったな』

『因みに…この居間の横の部屋って?』

『俺の部屋だ』

 

『…………』

 

『中村どうした? 壁なんか見て』

『…もしかして、全員…まだ家にいるんじゃね?』

 

《ガサガサッ!!》

 

『……』

 

『何を……あぁ、さっきの音か。んなら、多分違うから気にすんな』

『違う?』

『俺一人でいる時が多いんだけどな? この家、たまにラップ音するからソレだろ』

 

『『ちょっと待て』』

 

『引っ越してきた当初、少々居ちゃダメなもん居たから、その名残だろ。気にすんな。ただの怪奇現象だ』

 

《ゴトッ! ガタッガタッ!》

 

『お、久しぶりに今日は元気だな。…まぁ、麻子に言うと、取り乱しそうだから言ってないがな? まぁ、もう大丈夫そうだし、無害だ、ほっとけ』

『…元気って』

『…ほっとけって…』

 

『…それ以上に怖いモノ、見てきたからな…この程度、何ともないし、どうでもいい』

『『…………』』

 

『…因みに、尾形。毎年、最低2個は確保できる尾形』

『林田…何故、二回言った』

『さすが林田。空気を読まない』

『彼女達のチョコってどんなの?』

『は? いや…まぁ、普通?』

『そぉのぉ! 普通が分からねぇんだよっ!!』

『林田、お得意の妄想すれば?』

『……妄想って』

『そうだな…例えばっ!! 西住さん』

 

『『 どっちのだ 』』

 

『可愛い方』

『両方だろ…?』

『…本気で言いやがった、コノヤロウ』

 

『んじゃ、エロい方』

『みほか』

『…即座に判別しやがった』

 

『そうそう妹さん。あの妹さんなら…まぁ、うん。結構、ファンシーなの用意しそう』

『あぁ~…まぁ、そうだな。ボコが好きなんだっけ? …容易に想像できるな…ボコのチョコか…』

『…普通に会話に交じるな中村』

『彼女、購入派か、手作り派か…どっちだろう』

『手作り派に一票。ボコのチョコなんぞ売ってないだろ?』

『ボコチョコ確定で言ってるな…まぁ、毎年…クオリティが、やたらと上がっていったな』

『普通に毎年とか言いやがった』

 

『…そんでもって…』

 

 歩く二人…合わない歩幅…。並んで歩いていたのに、気が付けば立ち止まっていた。

 俯く彼女…。無言の時間。呼びかけにすら応えなかった彼女が…漸く小さな決意をした…。

 

「 …こ…これっ!! 」

 

『…とか、耳まで真っ赤にして、渡して即去って行きそう!!』

『いや、まぁ、取り敢えず、林田の妄想がキメェ。なんだそのキャッチコピーみたいなの』

『あぁっ!! すっげぇ、分かるわ! 絶対、モジモジして渡しそうだな!!』

『…中村』

『朝から、一日中そわそわして…渡すタイミングを何度も逃しそうだよなっ!』

『うっわ…すげぇ簡単に想像できる…。結局、渡し倦ねて…放課後まで引っ張ったりしそう…』

『あ~…まぁ、うん。中学の時はそうだった。学校の帰りとかに貰ったな』

『『 …… 』』

『あと…なんか、まほちゃんと話している時とか、やたらと間に入ってきたな』

『『 …… 』』

『その日に限って、やたらと校内で出会ったんだけど…毎回毎回、顔赤くして、なんかモジモジして…何もしないで去っていったな。そうか…あれ、そうだったのか…』

『『 …… 』』

 

『…妹さんが、不憫だ…』

『容易に想像できるのが、また彼女の魅力だろうか…めちゃくちゃ可愛いと思うのだけど…』

『いや、取り敢えず…二人揃っていきなりアクセル全開だな…。俺だけじゃなくて、中村も吐けよ』

『…コジラセタ女性の好意の…文字通りのその塊は、猛毒にもなるんだよ。聞くな。思い出したくない』

『…あ、はい』

 

《 》コッチミロ、イモウト。オネエチャント、オハナシヲシヨウ。

 

『……』

『…どうした、中村。また壁見て。ナニモイナイダロ?』

『いや…まぁ…気づかない振りするのが、優しさか…』

『はい?』

 

『それよりも…』

『林田?』

『めちゃくちゃ綺麗なお姉さんは、どうなんだ…まったく想像できん…』

『まほちゃん?』

『めちゃくちゃ、高価そうなチョコ用意しそうだ…』

『購入派にしか思えんな…。その中身も、すげぇ大人っぽいのチョコで』

 

『まほちゃんの? 手作りだったぞ?』

 

『『 はっ!? 』』

『お…おぉ。やたらとハートとかの多い可愛めのチョコが多かったな。…どうにも、菊代さん…あぁ、西住家の人な? その人に教えて貰いながらとか、何とか言ってた』

『『 …… 』』

『確かに、包は黒い箱に、赤い十字で巻いたリボン付けただけのシンプルな奴だったけど…中身とのギャップが結構凄かったぞ?』

『…殺意しか沸かねぇ…』

『…こいつ、シレッ…と』

『ただ…』

『あ? なんだよ死ね』

『シンプルな殺意だな、林田』

『彼女、普通に…いや、確かに放課後とかだったけど…全員が見ている前で…』

『……』

 

「 隆史、バレンタインだな 」

「 …そ…そっすね、西…まほ先輩 」

「 隆史は何故、学校だと先輩と、敢えて呼ぶんだ…。呼び捨ててくれて良いと言っているのに…まったく。…次は……ナイゾ? 」

「  」

 

『…ってな? 何故か彼女、昔から西住先輩って呼ぶと怒るんだ。まほ先輩でも、怒るし…』

『話の腰を折るなっ! んで!?』

『俺は、理解した。…彼女、分かっていて公衆の面前で、渡す気だ』

 

「 そら…()()の分だ 」

「 あ、うん。ありが…と……おぅっ!!?? 」

「 菊代さんに、頼んで…教えて貰って……まぁ、少し…私なりに努力をしてみた 」

「 はいっ!! はいっ!? 」

「 そ…その。見て、不格好なモノでも…笑わないで…くれると嬉しい… 」

「 っ!? っっ!!?? 」

 

『…と、全校生徒…男女共に含めて、一心の殺意を向けられる受託式が、その年も行われました…とさ…』

『税金みたいなモンだろ。当然だ』

『…林田』

『まほちゃん、ファンクラブとかも有ったから、その後、数ヶ月は下駄箱一杯に、不幸の手紙が届くんだ…』

『このご時世に…また、古風な…』

『俺も一筆、認めて良いか?』

『…虚しくなるから、やめておけ林田』

『はっ! もう遅いっ! …すでに俺のライフは、0だっ!』

『はぁ…涙目で言うなよ…』

 

『あぁぁ…尾形との繋がりで、義理チョコくらい、来年は貰えるかなぁ…』

『…切実だな。俺繋がりでって…誰にだよ』

『誰でも構わんっ! …敢えて言うなら…』

『言うなら?』

 

『武部さんだ』

 

『…まさかのあんこうチーム。いや、お前の趣向どストレートだな…。お前、ノンナさんのファンじゃなかったか?』

『身近な人の方が、リアリティがあるだろ!?』

『お前に限っては、無いな』

『無い』

 

『彼女、絶対に手作り派だろ!!』

 

『聞け。俺達の話を聞け』

『まぁ…容易に分かるよな。彼女ならそこら辺、滅茶苦茶凝りそうだよな』

『…中村よぉ。頼むから、あっさりと裏切るのやめてくれ。はぁ…まぁいい。乗ってやる』

『それに彼女なら! 絶対に友チョコとかも大量に作りそうだろ!? 戦車道の履修者全員に配るほどに! その中の一つ!! 一つ、ぎぶみーちょぉぉこ!!』

『…ま、まぁ…そうだな。彼女、そういうイベント、好きそうだしな…』

『味の心配も、まったく無いのも魅力だな』

『ピンクと、赤のど派手な包装しそうだけどな…。まぁ、武部さんらしいけど』

 

 教室…席の机の上。コトンッ…と、彼女は置いた。

 

「 はぁい、チョコね! 」

 

 皆に言うように、明るい笑顔…ただ、振り向き…去り際に言うセリフだけが、自分だけは特別だと感じさせてくれた。

 

「 …ちゃんと…本命だよ♪ 」

 

『とか、言われてぇぇぇ!!!!』

『…いや、林田。いい加減、マジできめぇぞ』

『絶対に、最初フランクに言うんだっ!! んで、最後に真顔か、照れ顔で、一瞬マジ声で言ってくれるんだっ!!』

『…林田。戻ってこ~い……って、尾形? どうした』

『……』

『尾形?』

『…想像しちまった…。なんだその破壊力…』

『だろぉ!? 彼女らしいだろ!?』

『…尾形に、林田の毒が回ってきたな…』カベノムコウガ、サワガシイ…

『なんだろう…そういった経験がないからか…まずい…俺も林田と変わらないのか…?』

『あぁ……例のゲームの時でもそういや、そうだったな。ケイさんと小山先輩…結構、アレだったし…お前、結構そういったテンプレ好きなんだな…』

『……割と』

 

《 ガサガサッ!! 》

 

『……』

『中村?』

『あ、いや、気にするな…。あぁもう…俺も馬鹿になった方が、いいのか?』

 

『さぁぁてっ! エンジン温まってきましたよっ!!』

『…だから、なんでお前は、そんなに秋山さんの真似が上手いんだよ』

 

『んじゃぁ、その秋山さんでいってみようか!!』

『優花里か? あ~彼女は、購入派っぽいよな。いや? 戦車型のチョコとか、作りそうだしな…』

『いつの間にか、妄想大会になってる…。はっ…もういいや…俺も乗る』

『よしよし、中村も同じ穴の狢になったな』

『…俺からすると…彼女は両方だな』

『ほぅ…? その心は?』

 

『一生懸命、作ってはみようと思うが、失敗しまくって、結局既製品を渡すタイプかと』

 

『…これもまた、容易に想像できるな』

『ん~…優花里がねぇ……』

『無難作取ってきそうだよな。中村、経験があるかの様な言い方だな』

『まぁ…結構いるからな、そういった子。俺は普通に既製品貰ったけど…尾形ならどうすんだ?』

『……』

『尾形?』

『ん? ぁ~…そうだな。どうせなら、失敗したの食ってみたいとか、思うかもな』

『あ、よくあるジゴロヤロウの言葉。そういって、不味くても美味いって、言ってタラシ込む気だな!?』

『何故そうなる。俺は、不味い物を、お世辞でも美味いとは、死んでも言わんぞ? 不味かったら不味いと、正面から本人に言う』

『…お、ちょっと意外だ。あからさまに不味いと分かっているのも食うのか?』

『それが、ちゃんと頑張ったモンならな。頑張ったのなら、その頑張った過程を、ちゃんと知っておいてやりたいと、俺は思うがね』

『…尾形が、真顔だ…。こいつ、食物に関してだけ、変に誠実だな…』

『うるせぇな。食品扱ってた立場だと、こうなるんだよ。ま、不味かったとしても、次に上手く作れるように、手伝ってやれる事はあるだろ? だから改善点を…って、まずは食して模索してきたんだ』

『……ん? してきた?』

『なんだよ』

『…その言い方だと、秋山さんが作ったの…食った事ある様な言い方だな』

『何度か、あるな』

 

『『 ………… 』』

 

『優花里、結構努力するタイプだからな。失敗したとしても、全部食って……って、どうした』

『経験済じゃねぇかっ!! ふざけんなっ! 女の子の手料理!? はぁぁ!?』

『い…いや、みほもその事は、知ってるし…。色々あって…まぁ、手料理っていや、確かにそうだけど…』

 

『知ってりゃ良いってもんじゃねぇよっ!!!』

『林田、今日は輝いてるなぁ…』

『普通に、戦車道関連で食った事がある…て、聞いてねぇなこりゃ…』

 

 片手で渡すチョコ…。後ろ手に隠す、もう片方の手…。その手には幾つもの、絆創膏が巻かれていた…。

 その手を見せないように、少し寂しそうな笑顔で…

「 ど…どうぞ。ちょっと、頑張ってはみたのですが…今年は…コレで… 」

 

『みたいな事だろ──!?』

『なんでチョコ作るのに、指切る程、包丁使うんだよ』

『その妄想だと、秋山さん、既製品を渡すのには、躊躇しないのな』

『突っ込みは、いらないっ!!』

 

『…あのさ、尾形』

『なんだよ、林田。というか、テンションいきなり下げるな』

 

『お前の浮気相手って、秋山さんか?』

 

 

《 ゴドンッ!!! 》

 

 

『してねぇよっ!! 段階すっ飛ばして、浮気相手特定しようとするな!』

 

『…あ~…俺も何となく、林田が聞いた事、理解するわ』

『何がだよ!!』

 

『だって最近、彼女すげぇ身だしなみに気をつけてね?』

『…は?』

『髪だって、アレ、完全に手を加えてるだろ。家が床屋だからって、去年まではまったく、その傾向なかったのにオカシイヨナ?』

『ま…まぁ…聞いても適当に誤魔化される気が…。そういうや…私服もスカート履いてるのが、増えた気が…』

『基本的に、ボーイッシュな服装、多かったのにな』

『……』

『…何故クラスメイトの私服を、貴様らはさも当然の様に、知ってんだよ』

 

『後…そうだな、西住妹さん』

『…みほか?』

『あれ…髪の毛、伸ばし始めてるだろ』

『…お…おぉ。流石に肩まで伸びてるから、気がついてるわ。…聞いた事あるけど…はぐらかされた』

 

『お前の事だから、何かアッサリと言ったんだろ。お前自身、気がついてなくてもな? 女子って、言われた何気ない一言でも、結構何時までも覚えてるぞ?』

『………』

『他の3人は、あんまり変わらないのにな。どうして、その二人だけ、変化があったんだろうなぁ?』

『…………グッ』

『はっはっは。…少しは、自分の発言に気をつけるこったな』

『くっそ、何も言えない…』

 

『はぁい、では次行きまぁす!!』

『林田…だから、少しは空気を…』

『お前ら、俺の話無視するから、俺も無視しまぁす』

『はぁ…いや、私服を知ってるのは、俺も尾形も、戦車道の…』

 

『 次は生徒会長!! 』

 

『購入派!!』

『尾形!?』

 

『え~…でも、生徒会長って、料理上手そうだよな?』

『そうだな。和食とか、すげぇ作るの上手そう』

『あぁ、だからか? 洋菓子って苦手なのかね』

『でも、基本的にチョコって、湯煎して、溶かして…後は形を整えるだけだろ? 苦手も何もないだろ』

 

『…いいか、お前ら。…あまり、人の事を悪く言うのは気が引けるが…』

『あん?』

『華さんは、ダークマターを作製できるお方だ』

 

『『 ………… 』』

 

『俺は、砂糖と塩…。ナチュラルに間違える人、初めて見た』

 

『『 ………… 』』

 

『切る事は、ある程度出来る様になったのに…。何故、そこでアレンジするんですか…? なんで、煮汁が紫色してんですか…? 適度に味見してください…』

 

『…尾形が遠い目をし始めた』

『帰ってこい、尾形』

 

『…はっ!!』

 

『よし、帰ってきたな…では、尾形』

『秋山さんの時に言ったセリフ、もう一度、言ってみろ』

 

『…………』

 

『…食ってるさ…』

『…何?』

『全部、食ってるさっ!! 遠まわしだけど、正直に言ってるさ!!』

『…お前』

『また、あの人! 滅茶苦茶前向きだから、めげないんだよっ!! だから、俺が投げ出す訳には、いかないだろ!?』

『…………』

『次、頑張ります! …の一言が、またすっげぇ~…いい笑顔で言うもんだから…。俺も諦めない…頑張る…頑張りますから…』

『あ…うん。頑張れ…』

『この尾形は、初めて見るな…』

 

『包丁持ってる時にあんまり、近づかないで下さい……胸押し付けるのやめて下さい…危ないですからっ!!』

 

『…ほっとこう』

『…楽しそうだしな』

『はぁー…はぁー…ち…違う…落し蓋は、豚肉を上から落とす事じゃない…』

 

『さて林田。彼女、結局どっちだと思う?』

『…………』

『林田?』

『彼女の場合…本当にテンプレをしてくれそうで…手作り派』

『…何のテンプレだよ』

『ほら!! 良くあるだろ!?』

『は?』

『全裸でっ!! リボンだけ体に巻いて!! 赤っ!! 赤いのをっ!!』

『…あ、なるほど。後、谷間か?』

『そうだっ!! 挟むなり、置く!! そしてぇ!! シーツの上でぇ!!』

 

「 私と一緒にどうぞ♪ 」

 

『──の!! 一言だけの破壊力っ!!』

『はっはっは。…いやぁ…引くわぁ。お前も童貞特有のテンプレだな。』

『あの生徒会長なら、やってくれるっ!!』

『…いや…たまにはと思って、黙って聞いてりゃ…何言ってんだよ、お前。あの華さんだぞ? んな事する訳がない…………と、オモウゾ?』

『最後、なんで濁した』

『うるせぇムッツリッ!! 尾形だって……』

『あ、馬鹿、林田!』

 

『彼女が、やってくれりゃ嬉しいだろ!?』

『うむ』

『……』ア~…バカヤロウ…

 

『ほれみろっ!! 即答じゃねぇか!』

『しまったっ!!』

 

《  ゴドンッッ!!!!  》

 

『……』

『…な…なんだ? 滅茶苦茶、背筋に悪寒が走った…』

『お…俺もだ…』

『林田お前、来月…家に来い…せめて、匿ってやるから…』

『…何から?』

『な…え? 風邪ひいたかな?』

『尾形は知らん。自業自得だ、自分で何とかしろ』

『…は?』

 

『まぁ…いいや。さ、んじゃ最後か…冷泉さん』

『麻子かぁ…』

『えっと、彼女の場合…』

『ちょっと待て、林田。お前、彼女で想像できるのか?』

『え? なんで?』

『……いや、お前…オレンジペコさんの時と、大分違うな…』

『???』

『いや…もう、いいや。ぶっちゃけた話、彼女胸ないぞ?』

 

『はっはー。いいか? 中村』

『尾形の真似をするな、真似を…で?』

 

『貧ヌーは、尊いのデス』

 

『…は?』

 

『女性を胸の大きさで評価スルナド……イケナイコトデスヨ?』

 

『…林田が、壊れた…どうしたっ!? 何か辛い事でもあったか!?』

『……林田…お前…』

『よ、よしっ! 今度奢ってやるから、話してみろ! な!?』

 

『巨ヌー……アレハ、シボウノ、カタマリデス、ムダナニクナノデス』

 

『……』

『目に光が…ないな…』

『…林田。お前……姉さんに、何か言っただろ』

 

『  』ビクッ!!

 

『…やっぱりな。姉取り扱い説明書を渡してやったのに…お前、目を通さなかったな?』

『は…? お前ら何言ってんの?』

 

『 オネエサマハ、オヤサシイカタデシタヨ? 』

 

『…………』

『……ま、いい。その内に治るだろ。はい、マコニャンの番だな』

『なんなの、お前ら…目が死んでるぞ?』

 

『で? 中村はどう思う?』

『いや、彼女は…購入派だろ…どう見ても』

『まぁーな。でも、なぁ…麻子、俺には黙っているけど……料理、普通に作れたみたいだぞ?』

『そうなのか?』

『あぁ、麻子のお婆さんに聞いた。和食オンリーらしいけど……どうにも、嫁入り修行って事で、昔から仕込んでいたみたいだ』

 

《 ガタッ!! 》オバァ!!

 

『へ…へぇ…意外だな』

『俺も初めは、沙織さんが麻子の生命線だと思っていたんだけどな? …普段は、サボってるだけだな、ありゃ…。今度、婆さんに相談してみるか…』

 

《 ガタガタッ 》マコッ! ドコイクノッ!

 

『…………』

『どうした、中村』

『…い…いや』

 

 

 なんの変哲もない…ただの板チョコ…。

 開封され…半身を出したソレを、顔に近づけて来た…。

 

 

『…お、復活したか』

『いや…どうだろう』

 

 

「 食べろ 」ポツリと呟いた言葉に従い、小気味良い音と共に、その角を一口齧る。

 すると、すぐに差し出していた…そのチョコを引っ込める。齧られて掛けた場所を、今度は彼女自身が口にし…また小気味良い音がした。

 冷静を保った顔のまま…それでも、耳は赤く…そして一言。

 

「 来月…期待するからな… 」

 

 

『おかえり、キモイノ!』

『いやぁ…想像以上に、きめぇな! あ、お前の事だぞぉ?』

『うるせぇなっ!!』

『いやいや、褒めてるんだぞ☆』

『どこがだよ!! ウインクするなっ!』

 

『まぁ…確かに、彼女は購入派だとは思うけど…板チョコはないだろ…』

『イメージ的に、なんかしっくり来たんだよ!』

『ふむ…俺が思うに…』

『お、なんだ兄弟』

『…兄弟は、やめろ』

『…そうか。お前ら、もう親戚だったな…で? 尾形的には、彼女はどうだ?』

『いや…作った物じゃなく、購入した物なら…なんだろう…一緒になって食べそうな気がする』

『あ~…それもすぐに想像つくな…あの状態で甘えてきそう…』

『麻子は、クーデレだしな』

『異論はない』

『そうだな』

 

《 ドンッ!! 》シャー!

 

 

『…なんだ、今の』

『はっはっは。尾形』

『なんだ?』

『……もう、俺にフォローは無理だ』

『…?』

 

 

 

 ▼

 

 

 

『さ、散々話してきたけど…。結局、尾形は最低2個は、毎年確保していたと確認が取れました』

『なぁにが、青森でも……だ。しっかり確保してるじゃねぇか! 死ね!』

 

『……』

 

『…どうした、尾形』

『あ、お前…もしかして、2個じゃないのか!? はぁ!?』

 

『い…いや、まぁ…青森にいる時もそうだけど…。大変ありがたい事に…毎年4個は、頂いておりました…』

 

《 !? 》

 

『…誰にだよ。現地妻にか?』

『その言葉はやめろ!!』

『チッ…まぁ、俺らが知らない子だったら、ツッコミ様がない…。せめて西住さんにチクるか…』

『やめろっ! 後ろめたくはないが、なんか怖いからやめて!!』

 

『…………』

 

『中村?』

『尾形…その様子だと…西住姉妹が知ってる人物だろ』

 

『………』ビクッ!

 

『…誰だ。悪い事は言わん。今の内に言っておけ』キイテイルダロウシ

『……』

『下手に隠すのは、為にならんぞ? マジでナ? 今なら、フォローしてやる……まだ、できるぞ?』

『ま…まぁ、お前が言うならそうなんだろうが…』

『あっさり…。この手の話で、尾形の中村に対する、信頼度がすげぇな』

 

『えっと…な? みほ達には、言うなよ?』

『その言葉で、大体想像が付いたけど…誰だ?』

 

『いや…幼馴染だけど…。あ、みほともそうだ』

『死ねっ!!』

『林田、まだ早い』

『そのフレーズが出ただけで、殺意が沸くわ!! バレンタイン+幼馴染!!! ナニコノ最強装備!!』

『それはそれで、意味が分からんが、理解はできる』

『できるのかよ…』

『しかしそれ…彼女、怒るか? 幼馴染なら、逆に知ってるんじゃね?』

『いや…なつーか…な? ドイツから、態々送って来てくれてな…? それ言っていいもかどうか…』

『……』

『流石に…とも思って、ホワイトデーで、なに気に一番気を使ったのを…送ってたとか…言ったら怒りそうだろ?』

『…今、お前は非常に、高水準濃度の「余計な事」を言った』

『?』

 

『あ…ひょっとして…前に試合した、ベルウォール学園の子か!?』

『………そう』

『中村…なんでその情報だけで、特定できた』

 

『たしか…なか…な…そうそう、中須賀って子か?』

『いや…だから、何故分かる』

『いいか、林田。直接俺は、その場に居たから分かるのだがな? 他にも尾形の幼馴染の子が、2人いた』

『…は? はぁっ!?』

『どうにも、西住さんを応援している様な感じだから、外れる…よって、その娘にしか当て嵌らないんだよ。お前も一度、会ってるぞ?』

『…き…記憶に…どの子だ?』

 

『ツイテの巨乳』

『あぁっ!! 蟲を見る目を俺に向けてきた、あの乳!!』

『……』

『……』

『あ、ごめん尾形…今のセリフは、彼女に言わんでくれ…また毟られる…』

『何されたんだ、お前…』

 

『はぁ…まぁ、いい。あの子なら、何とかなりそうだ…。西住さんも分かってくれるだろ……んで、次』

『あぁ…まぁ、もう一人は、大丈夫そうだしな…えっとな?』

『誰だ。今度は、どこの幼馴染だ』

『誰だ。今度は、どこの戦車道乙女だ』

『偏ってるなぁ…いや、普通だ。普通に…』

 

『 しほさん 』

 

『……』

『……』…サンハイ

 

 

《 ゴドンッ!!! 》

 

 

『いや、まぁ、まほちゃんとみほと一緒に、毎年貰ってたよ?』

『…お前、家元との事語る時、なんでそんなに嬉しそうなんだよ…』

『別に、おかしくないだろ。幼馴染のお母さんに貰うのって…変か?』

『いや…まぁ、大人の女性だし…含みも何もないんだろうけど…』

『そうだな。テンプレ通りの義理チョコだったな!』

『まぁ…それは、そうだろうけど…。彼女達からすれば、複雑だろうな…』

 

『……』

 

『林田?』

『なぁ、尾形…一昨日、秋山さんの店の前でさ…誰かと何か、話してたよな?』

『ん? なんだよ、いきなり。まぁ、ちょっと立ち話したけど…あぁ、あの人が優花里のお母さんだ!』

『…ふむ、なるほど…。何話してたのか聞いていいか?』

『いや、本当に唐突だな…別に優花里の学校での事、聞かれたから話しただけだよ』

『…普段から、あぁやって話すのか?』

『は? まぁ…あんな感じだけど…なんだよ、急に』

 

『…………』

 

『中村』

『今度は、俺か? なんだよ』

『…尾形…秋山さんのお母さんから、甘い物好きかとか…聞かれてたぞ』

『この時期にか?』

『この時期にだ』

『邪推…ではなさそうだな…』

『後で、会話内容教える。…どう考えても、同級生の母親との会話じゃなかったから…』

 

《 カリカリカリカリ 》ユカリンッ! ミポリンモッ!!

 

『…え…普通に話してるだけぞ?』

 

『もういい、尾形っ! 飯食いに行くぞ!!』

 

『は? なんだよ、急にお前まで。飯なら俺が…』

 

『いいからっ!! たまには、どっかの店で食うぞっ!!』

 

『いや…まぁいいけど…』

 

 

 

 

 

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 

 

 

「西住殿♪ 本日は一度帰りますね♪ …バリケード作りたいので」

 

「あ、私も手伝います」

 

「ふむ、ならば、私はトラップを仕掛けるとしようか」

 

「ありがとうございます!!」

 

「…みぽりん……お姉さん…」

 

「…違う…デレてない…デレてない…私は、デレてない…」

 

「あらぁ…。麻子さん、重症ですねぇ」

 

「五十鈴さんは、なんでそんなに冷静なんだ…。あんな妄想、聞かされて…普通に引いたぞ…男というのは、あぁなのか?」

「私? えぇ、大丈夫ですよ? それに…」

「それ…に…?」

 

 

 

「とても良い……ヒントを頂きましたから♪」

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

ツヅカヌ…。

次回からは、おとなしく本編進めます

ありがとうございました

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