《 よろしくお願いします!! 》
隊長から、全車長が一列に並び、向かい合う。
大洗タワーより、少し離れた広場。
一種のお祭りの様なこの試合…色々と、初回からトラブルが続いたけど、なんとかまぁ、ここまで来たわね!
一斉の挨拶の声と、お辞儀…それが終われば、各々の戦車へと戻っていく。
まぁ、例の黒森峰の副隊長様は、ダージリンが預かるって事で、決まったのだけど…私が欲しかった。
単純な話、味方側での他校の意見というのは、トラブルの元にもなりやすいけど、作戦や戦車の運用…それらの扱いの考えが、凝り固まってしまいがちな学校では、良い刺激となる。
今回ダージリンに譲ったのは、彼女もそれなりに、苦労してそうですし? このカチューシャ様の懐の大きさは、その位なんでもないわ!
関節的にでも、味方である事は変わらないし、そこから十分に盗ませてもらいましょう!
「…って、ことよ!!」
[ 分かりました、カチューシャ可愛い ]
[ 流石です、カチューシャ様可愛い ]
……。
「日本語で喋りなさいよ! 何て言ってるか、分からないじゃないの!」
「分かりました、カチューシャ」
「理解しました、カチューシャ様」
…真顔で話すから、上手く感情が読めないわ…。
でもまぁ、分かったのなら良いのよ!
[ 得意げなカチューシャ。超可愛い ]
[ 日本に来て良かったです、生カチューシャ様超可愛い ]
「だから、日本語で喋りなさいよっ! 真顔で分かんない言葉で話されると、不安になるでしょ!?」
「了解です」
「善処します」
…このっ…。
毎度毎度…。今みたく真剣な顔して言われるから、対処困る…。
今度、そこら辺をどうするか、本気で考えましょ。
それにしても…。
「…タカーシャが味方……ね。今はテントにいるのよね?」
「そのはずです。嬉しそうですね、カチューシャ」
「……」
相変わらず、誂う様に、直球で言ってくるわね…。
自分だって、嬉しいくせに、私に先に言わせようとする辺り…意地が悪いわよ、ノンナ。
……。
青森じゃ頑なに、コチラ側の陣営に来なかった。
せっかく、カチューシャ達の活躍を、間近で見せたげようってのに、まったく…。自分は、ただの一観客だと言ってきかなかった。
学校関係者じゃないってのが、タカーシャの言い分だけど、最もな事を言っていたっけ。…隊長の私が良いって言うんだから、大丈夫なのに…。
……。
ミホーシャも関係しての、今回の参加…でしょうね。大洗を敵側から見てみたいってのも、言っていたけど…分かる。
私には分かる。…タカーシャ、私達にも気を使ってる。
流石に、今のタカーシャなら、あの頃に誘った私や…ノンナの気持ちも理解してくれているだろう…ミホーシャとの事で、ある程度は鈍感が治ったからだってのが、気に入らないけど。
戦車道関係者になったのだから、もう気にする必要はないとか何とか…言い訳地味た事も言っていたけど…そこよね。お詫び…とは、口には出さなかったけど、そういう事よね。
…馬鹿にしてる。
正直、イラッと…今更? とかも思ったけど…あの、タカーシャだしねぇ…。裏表のない素直な気持ちなのでしょう。
現在の「彼の状況」も、ダージリン達から聞いているからってのもある。
…彼の中で、何かが変わりつつあるのかしら? …と、思ってしまう…。
まぁ、いいわ!! ソレは、ソレ。コレは、コレ。今は余計な事をゴチャゴチャ考えないで、試合に集中しましょう。
ある意味で、私達のテントにいれば、大丈夫でしょう。
例のアレは、黒森峰との関係はあるけども、今回に関しては突然の発表の様なモノだし、時間もすでに過ぎている。
あのテント…聖グロリアーナも絡んでいるから、まったく関係のないアレは、近づけない。
「カチューシャ?」
「…えぇ、嬉しいわ……嬉しいわねッ! 漸く! タカーシャに私の凄さを見せつける事ができるもの!」
「あら、今日は素直ですね」
はんっ!! …素直にもなるわよ。
もう、正直…そちら方面じゃ、なりふり構っていられない。
感情を恥ずかしがらずに、少しずつでも表に出していかないと…このタカーシャを取り巻く環境から、置いていかれる…。
…何故か、直感だけど…そう確信していた。
「何よ。ノンナは、嬉しくないの?」
「嬉しいですよ? もちろんです。…引っかかる所は、多数ありますが…今は、現状を堪能しようかと思います」
「堪能ねぇ~…。まっ、特にタカーシャが何かする訳でもないけどねぇ~」
「そうですが…後ろにいてくれるというのは…存外、心強いものです」
「…はっ。否定はしないわ」
ノンナを知らない人なら、この顔は今、真顔…に、見えるでしょうが、嬉しそうに小さく口を綻ばしているのを分かる人は、限られてるでしょうね。
あの男…こういう所は、見逃さないから、困るのよねぇ…このノンナが、完全に…。
「…カチューシャ様」
「っと…なに?」
青森での事を知らないクラーラを、完全に置き去りにしてしまった…。少々悪い気もするけど、こればっかりはね。
そういえば、クラーラとタカーシャとの関係は、結局あまり教えてくれなかったわね…。
ノンナ曰く、まだ安全圏だと言っていたけど…意味分かって言ったのかしら、この子…。
そのクラーラが、後ろを振り向きながら、指を指した。
それに従い、視線を送ると…
「あれは…」
挨拶が終わり、各々戦車へと足を向けている中、一人だけその場で動かなかった。
いや…正確には二人。
ミホーシャが、逸見 エリカに向かって、何かを言いたげに佇んでいた。
逸見 エリカが、それに気がついたのか…同じくミホーシャに対峙する様に、体を正面に向けた。
…ただ、それだけ。
それだけだと言うのに、周りの子達も気がついたのだろう…何故かその場の全員が、その二人に注目していた。
ダージリン達も…大洗の車長達も……。
…私達も含めて。
「エリカさん」
「……なに? 大洗学園の隊長さん」
逸見 エリカの返事で、一瞬にしてその場の空気が張り詰めた。
敵対心を隠す事もなく、ただ冷たい返事。いや…嫌味もすごいわね。
でも…ちょっと変。
「あはは…」
「…その愛想笑い、やめなさいって前にも…まぁ良いわ。もう、私には関係ない」
「もう、癖みたいになっちゃって…確かに、昔も言われました…」
「……」
ミホーシャが、普段と変わらない。
彼処まで露骨な態度と、あからさまな嫌味を吐かれたと言うのに、それを気にもせず、話しかけている。
少し困った様な、愛想笑いも、また…いつも通りに。
「…で、何よ。この前、散々貴女に言った私が、この試合に参加する事に、不満でも言いたいのかしら?」
「あ、いえ。不満とかじゃないです」
「じゃあ、なに? というか、注目されてるけど、いいの?」
「はい。構いません」
「……ふ~ん」
あら、会話は聞いていても良いみたい。
一瞬、注目している全員に視線を泳がせたわね。
あの様子じゃ、私達、全員に聞かせたい話…でも、あるようね。
「その…この試合で、見てもらいたいんです」
「見てもらいたい?」
「はい」
…静けさ…。
誰も動こうとしないで、ただその会話を聞いている。
風と、遠くに聞こえる喧騒だけが耳に入る。
「見てもらいたい…?」
「はい!」
「一体、何を見ればいいのよ…」
「私をっ!!」
「 ……なんですって? 」
手を広げ、胸を抑える様にしたミホーシャ。
張り詰めていた空気が、今度は重くなった。
逸見 エリカの体が、硬直した…とでも言うように、力が入ったのが、遠目でも分かる。
「はい! 喫茶店で、この前にハッキリと言われて…」
「…はっ。結局は、ソレ?」
ミホーシャの言葉を途中で遮り、いかにも分かっていた…と、心底呆れた様に、小馬鹿にした表情。
「え?」
「…何が、あったか知らないけど…アンタが、少し変わったのは分かる。それを見ろ? そういう事?」
「ちっ…違っ…!」
「えぇ…そうね! 違うわよね。どうせ喫茶店で、私が言った事でしょうよ」
「違いますっ!」
「…この馬鹿女…。ここまでズレてると、怒りを通り越して、笑えてくるわ…」
違うと言うミホーシャの言葉を、逸見 エリカは聞く耳を持たない。
初めから答えは分かりきっている。此方から言ってあげましょうか? と、ミホーシャを睨みつけていた。
はぁ…ダメね、あの子。話は最後まで、まず聞くものよ…。
「要はアンタは、私が言った事に対しての答え? 『 私は、隆史君に甘えてない。頑張ってる。此処までできた、できている 』それを見ろ!? そういう事でしょう!?」
まったく…次は、分かりやすく…怒気を言葉に含めた。
◆
「…うわ」
ある意味で、恐れていた事になってしまった。
大画面には、そのやり取りが映し出されている、二人の会話が、無線を通して聞こえてくる。
試合開始前から、揉めている様に見えるんだけど…大丈夫か? コレ。
しっかし…感情的になりやすい、エリカの事だ…。試合にしてしまえば、こうなる事は目に見えていた。
彼女達を一度、本気でぶつけてやらなくてはとも、思ってはいたんだけど…。
「元気良いですわねぇ~」
「ふむ。思ったより、早く動いたな。いや、まだ、試合も始まってないと言うのに」
「……」
「む? どうした、隆史」
い…いや……。
「まず、まほちゃん…。なんで、ここにいるんだよ…」
相変わらず…だ。
気配を殺して、いつの間にか接近されていた…。
というか、すでにテント内の椅子に座り、ローズヒップが出してくれた、俺のお茶を啜っている。
流石に正装…というか、私服ではなく、黒森峰の制服姿で…だ。
「何を言っている。エリカが参加した時点で、私も完全に関係者だ。問題なかろう?」
「…ダージリンとカチューシャの許可は…?」
「無論ないな。が、大洗の生徒会長の許可は取ってある」
……。
…何も言うまい…。
「…いや……もう、なんでもいい…それよりも、何で音声が拾えてんだよ…」
そうだ…二人の会話が、設置された無線機を通して、ハッキリと分かる位にクリアに聞こえる…。
いや…流石にお金持ち学校の設備…大洗とはまったく違う、明らかに新品の様に光沢がある、立派な無線機。
みほ達が、喋る度に赤い色のランプが点滅を繰り返している。
「赤星に頼んだ」
「はっ? 赤星さん?」
「今、丁度画面に写っているだろう? ほら…みほとエリカの足元に…」
「あっ!!」
……。
まほちゃんの言った通り…みほとエリカの下…ほふく前進! …みたいに、無線気背負い…伏せながら、少し離れた位置で、マイクを少し掲げている赤星さんがいた。
いや、確かにあの無線にランドセル見たく背負うタイプだけど…結構、重くないか? というか、なにを頼んでるんだ、まほちゃん。
しかし…。
「…なんか、すげぇ楽しそうだな」
「ふむ、結構な事だ」
「ちなみに、この盗聴まがいの許可は…」
「無論、取ってある」
「こっちは、あるの!?」
「エリカには、取ったな。みほとの対戦だ。何かあるかもしれないからと、一応言っておいてよかったと思っている」
腕を組み、胸を張るまほちゃん。
「何故か、諦めた様な顔をしていたがな。…ため息混じりで、お好きにどうぞと言われた時は…少し寂しかった…」
「まほちゃん…隊長としての株…最近、どんどん落としていませんか?」
「……」
エリカと静岡より返ってきた後、どうにもエリカのまほちゃんに対する態度が変わった。
どこかよそよそしく感じているのは、気のせいではないだろうな。まほちゃんも気が付いているのか、少し寂しそうな顔するけど…今度聞いてみるか。
…って。そうそう、今は目の前のことだ。
まほちゃんは、すでに気持ちが画面向こうにあるのか、今は目を輝かせて、みほ達を見てるけど…。
続けて、その無線から音声が響く…。
>
『 お…落ち着いて下さい 』
『 はっ。戦車道じゃなく……結局は男絡みの話…? 』
『 …おと!? 』
『 私の参加許可も、どうせ隆史が出したんでしょう!? 』
『 戦車と通せば、何とかなるとか? 分かり合えるかもしれないとか!? そんな浅はかな事でも、考えてでもいたんでしょうよっ!!」
『 話を聞いてください! 』
『 それに…言うに…事欠いて……アンタがぁ…私に対して…見ろ…とかぁ 』
『 ……… 』
>
かなり感情的になってるなぁ…。
手は出さないと思うけど、エリカの何か…逆鱗にでも触れたのか…いきなり彼女の感情が爆発した。
「…………」
「あら、どうなさいましたの?」
「…いや…気にしないでくれ…」
……。
分かりやすく落ち込んだ、まほちゃんに対して、ローズヒップが声を掛けていた。
いや……まぁ、うん…。後輩に、浅はかとか、言われちゃいましたからね、お姉様。
はぁ…。
さて、これは…本格的に参ったな…。試合開始前から、コレか…。
これは失敗だったよ、まほちゃん。
お祭りムードだと言うのに、コレはなぁ…。やはり音声が客席に届いていないのが、本当に幸いだ。
でも、これ…この後、試合できるのか?
しかし、俺の心配を他所に…。
『 違います 』
突然無線機から…はっきりと。…そして強い声がした。
>
『 違う? 何が、違うのよ! 』
『 まず、エリカさんからの参加許可は、私が会長に薦めて、出してもらいました 』
『 …アンタが? 』
>
「…えっ…はっ!? そうなのか!?」
「どうした…何を驚く…」
「いや…最終決定権は、杏会長にあるけど…みほが、自らってのが…」
「そうだろうか? まぁ、聞いていろ……アサハカ…」
「…取り敢えず、まほちゃん…元気出して…な?」
「あ…浅はか……私が浅はか…」
>
『 確かに、隆史君は関係あります。…あの日…エリカさんが帰った後…ちょっと色々あって…私の中で、本当の意味での、覚悟を決めました 』
『 覚悟…ね。何度目の覚悟かしら? はっ…周りを蹴散らす覚悟でもしたの? 』
『 そうです 』
『 …… 』
>
「…ほぅ」
蹴散らす…その言葉で、まほちゃんが愉快そうに笑った。
いや、そういえば、最近…物事をハッキリと言うように変わったな。
それでも、あの乱暴な言い方は、みほらしくない。
「どうした、隆史。何を不安に思う」
俺の表情を読み取ったのか、まほちゃんが俺の様子も…また、楽しそうに言い当てた。
ただ、みほは何か…憑き物が落ちたかの様な顔…。
姉さんに言われた時の、こちらが不安になる様な…なんて言うか…黒い要素が、まったく見受けられない。
真っ直ぐにエリカの目を見て、目を逸らさないではっきりと自分の意見を口に出している。
『 もう、ごまかさない。皆さんと向き合い…そして… 』
『 そして? …はっ。やっぱり結局は、男じゃないの…そんな… 』
『 ですから、私の話を最後まで聞いてください 』
『 聞かなくても分かるわよ…。少なくとも、試合前にする話じゃないわよね? 』
『 …… 』
エリカが、みほの話も聞かないで、一方的にまくし立てている。
言葉を荒げる事はないが、その一言一言に力を入れていた…あぁ、みほの場合、あの手の言い方をされると、何も言えなくなってしまう。
ある程度、付き合いが長いエリカはそれを知っているのか、いないのか…責める言い方で、みほを攻撃する。
…その態度に みほは、俯き…手を握り締めてしまった。
言いたい事があるのに、聞いてくれない。そんな悔しさが、握り締めた拳から感じ取れた。
『 何よ。また? 』
あ、これは、本格的にまずい。
エリカも感情が暴走してしまっている。また? と、何時もの、俯いてしまった内気な みほを指しているのだろう。
全国大会の開会式。その後に寄った、戦車道喫茶でのエリカを思い出してしまった。
あの時と…。
…………って…
『 …隆史君とお揃いのティーシャツ着て、喜んでたくせに 』
『 っっ!? 』
「ふむ…エリカの石像が出来上がったな」
「 」
「……こちらの石像は、口だけは動くんだな」
画面を指差して、口をパクパクさせる事位しか、俺にはできない…。意外すぎる、みほの返し…。
俯きながらも、はっきりと聞こえる様に、大きな言葉で呟いた。いじける様に、顔を少し背け…口を尖らせて…あの…なに、その言い方…。
意外にも、意外…いきなりの発言に、エリカが硬直した…。あ、顔が段々と赤くなってく…。
あの熊出没注意の黒ティーの事だろうけど…喜んでたっけ? 一歩的に馬鹿にされてたんけど…まぁ、結局着てはくれたけど。
まほちゃん…いや、それよりも…ね? み…みほが…あのみほが…。
『 か…関係…! 今は、関係ないでしょ!? 』
『 そうかな? 』
『 そ…それにっ…よ…喜んでないっ! あんな趣味の悪い服っ! 』
『 私だってまだ…お洋服とか、買って貰った事、ないのに… 』
『 …… 』
『 …ほら、得意気な顔した 』
『 し、してないっ!! 』
……。
みほ…気にしてたのか…。素直に申し訳ない…。
後、まほちゃん。腕を抓らないでくれ。
『 喫茶店の時もそうでした。一方的すぎて、エリカさんは卑怯です。私の話を一切聞いてくれない 』
『 そ…それは、貴女が… 』
『 今もそうです。先程言おうとした事は、戦車道の試合で、今の私を…「私の戦車道」を見てもらおうってっ!! …言っておこうと思ったのに……一切合切、話を聞いてくれないじゃないですか 』
『 …… 』
『 昔の私がダメなら、今の私を…って、私の本気を…って… 』
『 ………… 』
『 そう、思ったのに… 』
『 なによ…。貴女が言う、見てほしい「私」ってのは…… 』
落とし所が見つかったのか…。エリカも、話を遮っていた事に、多少の罪悪感を感じてくれたのか…。強い口調が少し収まった…。
俯くみほに、少し近づく。やはり、どこかでエリカも、みほと話すことを…。
『 あっ。でももう、どうでもいいです。忘れてください 』
『 は!? 』
あの…みほさん?
随分、バッサリと…。
『 何が、男に固執してる…ですか。結局、男に…隆史君に固執してるの、エリカさんじゃないですか 』
『 な…なんですって… 』
『 私、知ってるもん。私達の家に来た時も、出来るだけ隆史君の横の位置をキープしようとか、細々動いてたのとか… 』
『 なっ!? 』
『 位置、視線、態度…エリカさんが、一番隆史君に甘えたいっていうのが、見え見えです 』
『 』
>
「ふっ……はっ…はは…あはは!」
まほちゃんっ!?
どうしたのか、いきなり笑いだした…いや、声を上げて笑うのって、本当に珍しい…。
「いやな…みほの奴…怒ってる。…本気で怒ってるなぁ」
「怒ってる…って…」
「何を言っている、お前も何回か、見ただろう? …相当に昔の事だけれど…な?」
あ……あぁ……そうだ…。
アレは、子供の頃……みほの性格が変わる前…。
西住家のお嬢様…。そんな姿は微塵もなく、口を尖らせただ拗ねる様な怒り方。
…子供らしいっちゃ子供らしいけど、しほさんがどうにもソレが気に食わなかった様で、必死になって治そうとしてたな。
内気になったみほは、怒ることは滅多にしないで…あ、真っ黒いオーラとか、俺に対してだけは、分かりやすく怒ってくるのに。
「…そういや、一瞬、子供見たいな言回ししたな…。あの言い方て、俺とまほちゃん位にしか言わないよな?」
知ってるもん…って、な。子供の様な言い方は、みほは基本的に他人に対して使いたがらない。
元々、童顔…というのもあるし、どこかで気にしているのか、出来るだけは避けていた。
ソレが出てしまった…言う事は、子供様に…ただ純粋な…怒り…って事か?
「まぁ、我慢の限界が来たのだろう。ある意味で、みほに取っては、今の状況は、理不尽極まりないだろうよ。隆史との事で、これだけ周りから言われ続ければな」
「……」
「そうだろう? お前が答えを出して、みほと付き合いだした…その後は、みほが優しすぎたから、周りに気を使っての泥沼の現状だろう? 私だったら…そうだな。他の女が、お前に近づくだけで威嚇する」
「……えっと…あの…」
「面白い…。みほは、最初の敵を思い出しかの様だな」
「いや、敵って…」
「何を言う。恋敵という奴だろう? アレも一種の威嚇だな。見てみろ。私は、みほが、ここまで意見を口にしているのは、久しぶりに見たぞ?」
た…確かに、そうだけど…。
『 そもそも…喫茶店で言いましたが? 何が「私を認めない」…ですか。別に、私と彼との事で、エリカさんに認めて貰う必要なんてありません 』
『 っっ!? 』
『 私と隆史君…だ・け・の、問題です。部外者が、出しゃばらないで下さい 』
『 ぶ…部外者ですって… 』
>
「ふふっ…」
……。
げ…現場が騒然となっとる…。
あ…余りに淡々と、いきなりエリカに対しての逆襲を始めたみほに対して、呆然としてしまっている…。
…ここ最近、みほの態度が、どうも変わったと思ったけど…豹変と言って良い程の変わりようだ。後ろで、あの杏会長ですら、呆然としている。あの場の全員が、完全に固まってしまい、事の成り行きを見守っている。
いや、見守るしかないのか?
俺らだって、あんなみほは、滅多に見られない。
…他の連中は、驚くだろうよ…。
「私は…やはり家族だ。何処かで、遠慮してくれていたのだろう」
「なんの事だ?」
「隆史、いいか? もう一度言うぞ?」
嬉しそうに…いや? 懐かしむ様に笑いながら…はっきりと言った。
「エリカが、みほの…最初の恋敵だ」
思わず画面を見上げてしまった。
いじけた様な感じを捨て、今度は…何かを決意したかの様に、真っ直ぐにエリカを見据えているみほ。
はっきりと、濁さないで、エリカに対して、自分の気持ちを言葉にしている。
…みほ。
『 それに私。隆史君に好きだって、ちゃんと言ってもらいました! 』
みほーー!!??
『 この女… 』
『 あの、喫茶店での後に…後…に…… 』
『 何、今更、赤くなってんのよ! 』
『 あ、後に! ちゃんと、ハッキリ好きだーって…言ってくれました! す…すごく良かった… 』
『 ぎっ!! …ぐっ…ふ…ふん。あの男の事だから、可愛いだの好きだの…軽く言って回ってるんでしょう?』
ちょっ!? エリリン! それだと、俺ただ節操ないみたいじゃないか!
「その通りじゃないか」
……まほちゃん。
『 どーせ、ソレと、似たようなモノじゃないの? 』
『 …… 』
『 私だって、言われたわよ。…それが、何の… 』
『 ハッ…負け惜しみですか。…私はエリカさんとは、立場が違うもん 』
『 あぁ!? 』
みほが、エリカに対して鼻で笑ったっ!?
『 「好き」の、意味も思いも、重さも違いますぅ! 』
『 こ…の…… 』
『 私、彼女ですし。それに事細かく、詳細に……ウッ…ウフフ… 』
『 ……ガッ… 』
>
「…何をしてる、隆史」
おもむろに立ち上がり、無線気にへと腕を伸ばそうとした所、まほちゃんに袖を掴まれた…。
「止めるんだよ!! もうありゃただの口喧嘩だっ!! 戦車道関係ないし、試合っ!!」
「何を言っている。どうせならば、ここで一度、全てを吐き出させてやればよいだろう。…そこの聖グロリアーナの一年。手伝ってくれ」
「…ほふぁっ!?」
ローズヒップ…完全に飽いて、俺の常備クーラーボックスから、勝手にプリンを取り出して食ってるし…。
いや、配る様に、作ってあったけど…。
「いや……でも、隆史さん、何故か嫌がってますし…」
「私の分のプリンもやろう」
「犬とお呼び下さいまし!!」
薔薇尻!!!
即座に腕に、しがみつくなっ!!
>
『 こ…このぉぉ…タレ目… 』
『 そうです。そのお陰で私の中で、踏ん切りが着きました。私は今の私でも、良い『 アンタの心境の変化なんて、どうでもいいわよ!! 』
『 …言葉でハッキリと言われるのって…結構大事なんだ~って、分かりました 』
『 聞きなさいよっ!! 』
『 私の性格も…何も…ほら…隆史く……か……ウフフ 』
『 ちょいちょい、中途半端なノロケを混ぜるな!! あったま来るわねっ!! 』
『 …… 』
『 はぁ、はぁ…。あぁもうっ!! あの喫茶店の後!? アンタが何時言われたかと!? そんな事どうでも良いわよ! 黙ってなさいっ!! 』
『 …い、つ? 』
『 あ、言うな。言わなくていい! 』
『 ………… 』
『 思い出すなっ!! どうでもいいって、言ってるでしょ!? 』
『 ……ぅぅ… 』
『 あ…赤くなるなぁぁっ!! 』
>
…っ!! っっ!!
「…どうだ。こう、関節を決めてしまえば、このように大の男でも拘束できる」
「お…ぉぉ…。隆史さんが、動けないでおりますわ。青森港でのリベンジが、今こう…出来るとは夢にも思いませんでしたわ…」
「 」
くっそ、完璧に関節決めやがって! それよりも!!
ど…どうしたみほっ!! いくらなんでも、おかしいだろっ!!
心境の変化!? 何にせよ、変わりすぎだっ!!
と…止める…無線機で…いや、直接…。
「…………」
くっそっ! ローズヒップ、物覚え良すぎるだろ!! まほちゃんの教えを忠実に、即再現しやがってっ!
マジで腕動かねぇっ!!!
「しかし妙だな…隆史。お前、みほに一体、何を言った? 本当に今言ってる妄言だけか?」
「言ってる事だけだよっ! だから、恥ずかしいんだろ!! というか、妹に結構辛辣だぞ!?」
「お前が、恥ずかしがるとはな…。正直に話せ。いや、吐け。本当にアレだけか?」
くっそ、中村っ!! 遠目でも分かるぞ!! 向かいのテントで、爆笑してやがってっ!!
「そ…そうだよ。みほがエリカと会った日にな…? 随分、自信というか何と言うか…大分落ち込んでいたてな?」
「……」
「俺と付き合う資格が無いだの、自分に自信がないからって、どうの言ってたから…」
「…言っていたから?」
「誤魔化し無しで…真面目に…本気で、みほに…その…好きだと、言ってみた」
「……そうか」
「んで…まぁ、余り言いたかないけどな…」
「?」
「俺の…一番、弱い部分ってのを、正直に白状した」
「…お前の…弱い部分?」
そうだ。弱っている相手に、漬け込む様な真似に感じたんだ。
ここの所、そんな感情も薄れてきて、あまり感じなくなっているが……相手は大分年下だ。
だとしても、彼女。恋人…と、言える相手。一度…包み隠さず言っておこうかと…資格とか、くだらん物なんて無いと…俺達は対等だと言ってやりたかった。
だから…俺の根底に有る…弱い部分を、みほにだけは、さらけ出した。
あの夜に…。
「まぁ…それは、昔からの事を含めだけど…な。みほは、周りを気にしすぎだ。…それを…って」
「……」
「まほちゃん?」
少しだけ、白状した。あの日にみほに言ってやった事を。
プライベートな事だ。…流石に全部…なんて言える訳は、ないだろう。
それでも、まほちゃんだけには…って、あれ?
「…隆史。それは私にも教えてくれないか?」
「い…いや…流石に、それは…俺も言えない事くらいはあるって…」
「だろうな…」
だが、それを「みほにだけ」は言った…と。まほちゃんは、俯き…そして納得したかの様に、顔を上げた。
……。
「…なる程…それで、あのみほか……やはりな。…これは、厄介な…」
「厄介って…」
「みほは、理解している。他ならぬ、お前の事だ…」
理解…? なんの事だ?
「それとは別に。…私に対して、そこまでハッキリ言うお前のデリカシーの無さに、腹が立つ!」
吐けって言われたから、吐いたのに!?
「気づかないか? あの二人を見て、真顔な者が数人いるだろう」
「え…」
言わるがままに、画面を見上げると…。
『 ほんっっとに、腹立つわ! 話しかけておいて、なんのつもりよ!! この…脳内ピンクがっ!! 』
『 のっ…!? は…始めに、人の話を遮ったのに、何言ってるんですか!! 』
『 分かり辛いのよ!! アンタは、昔っから回りクドイ!! 』
『 エリさんは、ズケズケと言い過ぎですっ!! もう少し、人の気持ちを考えた発言をして下さい!! それで大体、他の人と衝突してたじゃないですかっ!! 後でルームメイトって事だけで、私がどれだけ代わりに謝ったと思ってるんですかっ!!』
『 知らないわよっ! 私だって、アンタが毎回毎回、バレない様に作戦無視するのをどれだけ誤魔化してやったと思っての!? 継続との試合の時とか、どれだけ大変だったと思ってんよ!!』
『 私は、作戦をより良く、効率的にしようとしただけですっ!! 』
『 だから!!! まずは、隊長に打診してからにしろって、毎回毎回言ってたでしょうが!! 後先考えないで行動に移すなバカ!!』
『 バカって言わないでくださいっ!! 』
……。
真顔な人物を探すよりも先に…今にも掴みかかりそうに、接近している二人に目が入る…。
「…なぁ、まほちゃん」
「………」
「あの二人…本当は、すっごく仲良くないか?」
「はぁぁ……エリカ…みほ」
いやもう…うん。ため息しかでませんね。
あの姿は、少し懐かしくもあるのだけど…流石にどうなんでしょう、高校生。
……っと。あ…れ?
確かに、まほちゃんに言われて二人以外をも見てみると…。
ダージリン…と、ノンナさん。それと…アッサムさんが、始終真顔だった。
いや…後、杏会長。手を後ろに回し、口は苦笑をしているかの様に笑っているが…目が笑ってない…。
「なぁ…隆史。今まで、口にしなかったが、みほの弱点を知っているか?」
「…えっと、あ~…」
…思う所はあるけど…話に乗ってやろう…。
「弱点?」
「それはな…迷いだ」
「……あ、まぁ…なんとなく分かるけど…」
「戦車道に関してもそうだ。準決勝…プラウダ戦の時に見せた、迷いを捨てたみほは、凄かった…」
「……」
「…お前は本気で……私にも言えない事を、みほにだけは言ったのだろう?」
「……あぁ」
「みほは、お前の「特別」だと、確信した」
「えっと…はい? いや、そりゃ…彼女だし、特べ……ん? それが…いや、それだけで、あぁも変わるのか…?」
「馬鹿者が…女はな? 男が思っている以上に、単純な部分もある」
「…まほちゃん?」
コチラを見て、先程までの懐かしむ笑顔は消え…真剣な眼差しで、画面越しのみほを…睨んだ!?
そして、一言…今度は俺を睨みながら、言い切った。
「言葉一つで、女は化けるぞ?」
「……」
厄介だ…と、自身の妹に向かって呟いた彼女だが、何故か嬉しそうだった。
言い合いをしている二人が映る画面を見て、少し目が優しくなった。
……ん?
…あれ? さっきみほ…エリカの呼び方が…。
「隆史」
「え? あ、うん」
「あのみほを…エリカと正面からぶつかる みほを見れば…分からないか? いやまぁ、お前は分からんな…。それに気がついた数名が、真顔で警戒の色を出していると言う事だ」
「……えっと…」
「みほは…事、お前の事に関して、もう絶対に譲る気はないのだろうよ」
「…………」
「変わるモノだな……あの様子なら、みほは、変な気にもならず…今の様に真正面から、正々堂々と。私…いや、私達と対峙するつもりなんだろう…」
「まほちゃん…」
「みほから…迷いが完全に消えた」
>
『 バカにバカと言って、何が悪いのよっ!! 』
『 バカって言う方が、バカなんですっ!! 』
『 テンプレの返し方してんじゃないわよっ! 頭使え、ばーかっ! 』
『 また言ったぁ!! 』
>
「……」
「……」
…えっと…。
>
『 何度だって言ってやるわよ! バーカ!! バーーーカ!! 』
『 子供ですか!! そもそも、なんですか、その髪型!! 』
『 はぁ!? …ただ楽だから、こうしてるだけでしょ!? 』
『 普段ポニーテールになんかしないのに!! どうせ、ポニー好きの隆史君に対してですよね!? あざとい!!』
『 あざっ…!? あんたにだけは、言われたくないわよっ!!!』
『 あ、認めた。隆史君に対してって所は否定しない 』
『 …そ…そうよっ!! だから何!? 悪い!? 悔しかったら、アンタもすればいいじゃない!! 』
『 くっ…悔しくないもんっ!! 』
>
…なんだろう。
もはや話の方向が、何処に向かっているかさえ分からなくなってきたな…。
とりあえず、二人の背後に見えちゃダメなモノが見える気がする…。
迷いが消えたとか、まぁ…色々とあるのだろうけど…。
…取り敢えず、画面に指を指してみた。
「…お姉さま?」
「……こ…今回の事は、全員に対しての宣戦布告の様なモノなんだろう…」
「いや、まほお姉ちゃん。もう、無理しないでよいです。…貴女の妹さんが…子供の頃の様に、はっちゃけてますけど…」
「…すまん、隆史。色々と散々言ったが、正直、懐かしさが先攻してしまう…。あれもはや、ただの子供の喧嘩だな…」
「だよねぇ…俺も正直…ちょっと、この喧嘩は見ていたくなってきた…」
そうだな…昔よく見た、ツーショット…。
>
『 私、知ってるんですよ!? さっきエリちゃん! ベコの抱き枕用のおっきいぬいぐるみ買って嬉しそうにしてたの!! 』
『 チョッ?! はっ!? なぁぁぁぁ!!?? 』
『 ベコショップにあれ! 一体しかありませんでしたからね! なんですか!? あれ使って寝る気ですか!? やらしいっ! 』
『 やっ…やらしいってなによっ!! 抱き枕なんだから抱いて寝るのは当然でしょ!? それに買ってなんか…なっ…いぃぃ……くっっそぉぉ!! 大洗の個人情報管理どうなってんのよっ!! 』
>
「……」
「……」
…あのでっかいの買ったの、エリカですか。…そうですか。
いや…そろそろ、止めた方が良いか?
二人共、顔真っ赤だけど…。
>
『 アンタだって、人の事言えないじゃない!! どうせ!? まだお腹出して寝てるんでしょ!? 夜中に何回直してやったと思ってんの!?』
『 なっ…お腹なんて出してませんっ!! 人聞きの悪いこと言わないでくださいっ!! 』
『 その時みたいにっ!! 』
『 なんですか!? 』
『 デコだか、バコだったかしら!!?? 』
『 ……はい? 』
『 なんか包帯ぐるぐる巻の気味の悪いパンダのぬいぐるみを!! 枕元いっぱいにして、悦に浸ってんでしょうがっ!!?? 』
『 ………… 』
『 …はぁ…はぁ… 』
『 あ゛?? 』
>
「OK、止めよう」
「うむ、異論はない。そこの聖グロリアーナの一年、無線機のマイクを取ってくれ」
「えっ!? 急になんですの!?」
>
『 もう一辺…言ってみやがってください 』
『 何がよ 』
『 ワザと…ですか…ワザとですね? 』
『 は? だから何がよ! 』
『 アレだけ懇切丁寧に、ボコの良さを知ってもらおうって、頑張ったのに……。ワザと名前を間違えて言いましたね? はっ…はは…それに…ボコを…パンダ? 』
『 名前なんて覚えちゃないわよっ! むしろ! 私のカバンやら筆記用具やら私物にまでっ!! キーホルダーなり、ちょこちょこ忍ばせるのやめなさいよっ!! 』
「…赤星」
『 あ、はい、隊長…どうしましょうこれ…愉快な……いえ、困った事になり始めました… 』
「……隆史、変わってくれ。お前の方が良さそうだ」
早いな、ヘルプ…。
始めは携帯電話に掛けようかとも思ったけど、出てくれないかもしれないし…画面に映ってる手前…あまり見目麗しくない。
…今更の様な気もするけど…音声は会場には届いてないから、無線機の方が都合がいいだろう…。
『 寝ようと思ってベットに横になったら!! その天井一面に小さなアレが、びっっっ…………しりっ! 吊るされてるの見た時は、思わず悲鳴が出たわ!! 何のホラーよ! 』
『 ホラーっ!? 可愛いじゃないですかっ!! 』
『 大怪我したパンダが! 異常な数! 天井から首吊りで並んでる絵面が、可愛いとは思えるはずないでしょーが!!! 』
『 ひどいっ! パンダじゃなくて、クマさんです!! ボコがそれだけ並んでいれば、喜んでくれると思ったのに!! 』
『 あんな猟奇的なモノ見て、誰が喜ぶのよっ!! トラウマになりそうだったわよっ!! 』
「あの…赤星さん」
『 あ、害ちゅぅ……いぇ、尾形さぁん♪ 』
「ん? がい?『 彼女達、止めてもらえますかぁ? 誰も止めようとしてくれないんでぇ… 』
「あ~…んじゃ、取り敢えず無線機を、スピーカーに切り替えて貰えますか…んで」
『 はぁい 』
「よし、取り敢えず落ち着け、二人共」
『 なんで、アンタみたいなのと…さっさと別れちゃいなさいよ!! 』
『 嫌ですっ!! 絶対に別れない…っっ!! 』
「……」
会話の流れは、もはや関係ない…ただ感情的に叫び始めてるな…。
「 みほちゃん、エリちゃん、落ち着けッ!! 」
『 !? 』
『 !? 』
無線機のマイクを持ちながら、大画面を見上げる。
二人共、漸く我に帰ったのか…俺の音声が流れたであろう無線機…を、背負った赤星さんを見下ろした。
『 た…隆史君!? 』
『 隆史っ!? 』
「…まったく…周りを見てみろ…騒然としてるぞ。試合前になにやってんだよ…」
俺の言葉で、周りを素早く首を動かして確認し始めた二人…。
状況確認ができたか? …できたな。なんとも言えない程に真っ赤になっていく…。
はぁ…。
「まず…エリちゃん…」
『 な…何よ 』
「お買い上げありがとうございます」
『『 …… 』』
『 …………あ…んたねぇ… 』
「よし、冷静になったな」
『 ぐっ…がぁ… 』
はっはー。取り敢えず、これでみほを攻撃はしまい。
だった、無線機睨みながら、頭抱えてますからね。今はこの場を収める事が優先だ。
…試合が始まらねぇ。
「んで、みほ」
『 は、はい… 』
「……」
『 …ぅ… 』
「…………」
『 ……ぅぅ… 』
黙る俺に、怒られるとでも思ったのか…シュンと、肩を落とした。
しかし…流石に人前ではなぁ…。
だから、無言で伝える。…それで多分、何が言いたいか分かるだろう。
「何が言いたいか分かるな?」
『 う…うん 』
「ならいい…。寧ろ、あまり恥ずかしい事を叫んでくれるな」
『 ぅぅう!? 』
はぁ…肩を落としたいのは俺の方だってのに…。
第三者が強制的に介入したお陰で、二人の距離が少し離れた。
この子供の喧嘩が、漸く収束を…
「…隆史が話しただけで、ここまで簡単に喧嘩が収まるとはな」
「ん…?」
まほちゃんが、関心したかのように…それでも少し、複雑そうな顔をして腕を組んだ。
「……これが、正式な戦車道の試合でなくて良かった…お母様が見たら激怒していたな…」
「…怖いことを言わないでくれ」
俺達の心配を他所に、ローズヒップは4つ目のプリンへと手を伸ばしていた…。
もういいや…全部食え。
はぁ…これでお互い、二人共収まってくれただろうよ…。
……。
…………ん? 待てよ。
さっきの子供みたいな喧嘩で…。
『 えっと…隆史君 』
「ん? …なんだ?」
引っかかる…。
何かみほが…。
『 なんで最初に、エリカさんから声かけたの? 』
「 」
お…収まってなかった…。
「ふ…深い意味はないけど…」
『 ふ~…ん 』
「勘弁してくれ! …なんでいきなり、千代さんとしほさん見たいな事言い出すんだよ」
『 ……なんで今、お母さんの名前が出てくるの? 』
「 」
し…しまったぁ!!!
『 そうね、ある訳無いでしょ? なに子供みたいな事、言ってるのよ 』
『 ……エリカさんには、聞いてません。なんですか、その得意げな顔… 』
『 気のせいじゃなぁい? 』
『 …… 』コノ…
エリカッ!?
そもそも無線って、発信、受信をボタンで、切り替えないとダメなのに…すげぇ自然に会話する様に切り替えてる赤星さんがすげぇ!
また、おっぱじめそうだ…。
「みほ…エリカに当たるな。言っただろ? …意味なんて…」
『 ………… 』
「みほ?」
『 昔からそうっ!! 』
ん?
『 隆史君は、いっつもエリちゃんばっかり庇って…ずるい!! 』
「「 ……は? 」」
『 …え? 』
いじけた様に足先で、地面に円を描き出した、みほ。
思わず声を出してしまった、俺とまほちゃんと………エリカ。
言ってた…そういえば、さっきその名前で叫んでいた。
…かぶる…昔の…思い出が、映像として…かぶる…。
『 私、ばっかり悪者… 』
「ちょっと待て、みほ!」
マイクを横から奪い取り、普段の冷静さを捨てて叫ぶ、まほちゃん。
彼女も彼女なりに、真剣に考えていたから、当然だとは思うが…。
『 …なに? 』
「エリちゃんって…エリカの事を言ったのか?」
『 何を驚いてるの? お姉ちゃん? 』
「いや…みほ。エリカを…知っていたのか?」
『 お姉ちゃん? 知ってるに決まってるよ。突然どうしたの? おかしいよ? 』
「いや、違うっ! 昔馴染みだと…知って…小さな頃…」
さも当然の様に…
『 え? 当たり前だよ 』
「「 ………… 」」
呆然と…まほちゃんと二人、固まってしまった。
『 …う…嘘… 』
『 エリちゃん? あ、エリカさん…? 』
呼び方…を気づき、すぐに変えた。
それ以前に、エリカかの様子がおかしい…口を開け、後ずさりをしてしまっている。
『 アンタ…最初…会った時……私に「ハジメマシテ」って… 』
『 え? 中学の頃? それは…そうだよ。まだ確認取ってなかったし…初対面かもしれないし…思い違いで、もし同姓同名で間違えたら、は…恥ずかしいし… 』
『 …… 』
モジモジし始めた…みほ…えっと…。
え?
「い…いや、なら何時…気がついたんだ?」
『 気がついたって…言うよりか、名簿で経歴見ればすぐにわかるよね? 』
「 」
『 えっと…始めチームを組む人の出身校と、どんな戦車道をしてきたかを調べるのって、当然でしょ? 連携取れない……って、それ以前にお母さんに散々言われてたよね? 』
「……」
『 西住流として、戦車、人員。…戦力の情報は、頭に叩き込みなさいって。…嫌なるほど昔から…それこそ、癖になっちゃう程に言われてきたよね? 』
…あの…まほちゃん? 西住流後継者さん…妹さんに言われてますけど…。
『 本当に何言ってるの? お姉ちゃん? 』
「っっ!!」
あ…崩れ落ちた…。
『 …い…言いなさいよっ! 気づいた時点で言いなさいよね!! 』
『 え…? だって、エリカさん、私に気がついてくれていないと思ってましたし…今更、とても言えませんよ、恥ずかしい… 』
『 あ…アンタの性格なら、そうでしょうね……でも、む…昔の呼び方で呼べば、一発で… 』
『 エリカさん。小さい頃も隆史君以外に、エリちゃんって呼ぶと怒ったもん。言えないよ 』
『 』
エリカも、混乱している。何をどう言葉にしていいか分からず、頭を抱えてだした。
それはそうだろうよ…。
「あの…みほ。…みほさん? みぽりん?」
『 隆史君? なに? 』
「…最初から…気づいてたんだな…?」
『 気づく? …普通に知ってたよ。そもそも知らなかったら、エリカさんが隆史君の事を「お兄ちゃん」って、呼んでる事にまず何か言うし、尋ねるよ。……って、本当に皆、何言ってるの? 』
……。
ごもっとも…。
…………。
頭が…真っ白になってきた。
俺と…まほちゃん…それとエリカ…。
「あら、どうしましたの?」
能天気な薔薇尻の声が、何故か小さな…変な安らぎをくれる…。
彼女から見れば、無線機の前で、二人揃って両膝付いて崩れ落ちている俺達を見て、疑問に思うのは当然…だ…ろう……。
な…なんだったんだ、今までの事は…。
みほ以外、完全に空回り…直接、さっさと聞いておけば、すぐに済む話だった…。
いや…でも…えっと…。
上手く考えが纏まらない…。
一度…無線越しじゃなくて、しっかりと話そう…4人で…ちゃんと…。
今はその考えしか、浮かばない…。
取り敢えず、この場はこれで良しとしなくては…俺達の事で、他の学校連中にこれ以上、迷惑は…。
『 あ、それより、隆史君! なんでお母さんの… 』
『 こ…この… 』
『 エリちゃん? 』
どうしようもなく、また無線機から聞こえてきた声で、顔を上げれば、肩を震わせるエリカが画面に映っている。
彼女も彼女で、今更どうしていいか分からないのだろう。
昔の呼び名で…。
昔の…幼馴染へと、声を掛けるみほに対して…
『 エリちゃんって呼ぶなぁーー!!! 』
桃先輩見たいな事を叫ぶしか、手がなかったんだろう…。
◆
「会長、随分と長い挨拶でしたね…何か揉めてたんですか?」
「あ~…うん、大丈夫、大丈夫」
「すごい空気でしたが…」
「いやぁ~本当に大丈夫だよ、か~しま。寧ろ、良かったのかもしれないねぇ」
試合前の挨拶が終わり、戦車へと戻ってきた。
隆史ちゃんの声が聞こえた時も、あ~…こりゃ多分、邪魔しちゃダメだなぁ…って思って、ずっと黙ってたけど…。
何か黒森峰の副隊長さんも、憑き物が堕ちたような顔してたし…アレで良かったんだろうねぇ。
「えっと…『 西住ちゃん 』」
無線を飛ばしても良かったけど、少しプライベートな会話。携帯で彼女に連絡を取ろうか。…うん、一応の確認。
よしよし、すぐに出てくれたね。
『 あ…はい 』
「いやぁ~! 元気、良かったねぇ~」
『 うぅ…すみません… 』
「まぁ、私としては面白かったけどぉ」
『 あぅ… 』
ふぅ…もう、何時もの西住ちゃんに戻ったみたい。
会話ですぐに分かるのっても、すごいけど…さっきの彼女の様子を見たら、他の皆なら絶対びっくりするよね。
…まぁ、私は驚きはしなかったけど…。
黒森峰の参戦を許せば、何かしら絶対に起こるとは思っていたけどね。
このエキシビジョン…隆史ちゃんが、初めて生徒会室に来た事を、少し思い出しちゃったのが原因。
西住ちゃんは、本当は戦車が好きだと…言っていた言葉。
まぁ…今日の試合は、全国大会と違って…わだかまりもない、彼女が楽しめる試合になればと思って企画したけど…思いの外、あったね…わだかまり。
これは、彼女に対してのお礼の意味もある試合…西住ちゃんが、望んだから、あの副隊長さんの参加も許可したんだけど…良かったのかなぁ…ってね。今更だけど。
「ねぇ、西住ちゃーん」
『 はい? 』
「…この試合…楽しみかな…?」
『 えっと…どういう意味ですか? 』
「裏表も、深い意味もないよ? ただ単純な疑問」
いやぁ~…今までの、私の行いの反動が、ここで返ってきたねぇ~。疑われちゃったよ。
…廃校を阻止できた、一番の立役者は、西住ちゃん。
彼女には足を向けて寝れないよねぇ~。
「うん、楽しんで…もらえてるかなぁ…ってね」
『 …… 』
……。
騙しちゃったり、脅迫地味た事もしてしまった。
だから、お詫びも込めて、お礼も込めて…彼女には、せめて…私が卒業するまでは、出来るだけ学園生活を謳歌してもらいたい。
『 あはは…いきなり、ちょっと…ありましたけど… 』
「うん、そうだねぇ~」
隆史ちゃんの事は、また別の話。
それは、ソレ。今は、西住ちゃんの為にね…。
『 すっごく…楽しいです! 』
…今は、頑張ろう…。
閲覧ありがとうございました
さぁ、物語が一気に動き出します。
そろそろ、愛里寿……が。
隆史の「あの夜」は、正史PINKだなぁ…。
挿絵描こうかと思ったんすけど、なっとくいくのが描けませんでした…。
もうちとがんばります。聖グロ、エリリン描こうと思ったんすけど…ね。
もっと…感想貰えるようにがんばります。
現行アンケ……同票で動かない……PINKのアンケートが同票の場合の時の事を考えてなかった…どうしよう。何か追加加筆でもしてみるかと考案中……。
ありがとうございました。