転生者は平穏を望む   作:白山葵

13 / 141
第11話~転生者の望みは絶たれそうです!~

先日、島田家に宿泊させてもらった。

早朝出立し、試合開始前には大洗町に到着できた。

まだ学園艦も着港していないだろう。

前日の夜に、学校の皆に迷惑をかけたとお詫びのつもりで「魚の目プリン」を大量に作った。

ほぼ半日使ってしまったが、島田家の調理場の利便性の良さも有りうまくいった。

青森のバイト先、飯所「魚の目」で開発した自作品。女の子が多いし、まぁ喜んでくれるとうれしい。

あの母娘には、すこぶる評判だったので大丈夫だろう。

 

やっと戻れたと思った俺は今、なぜか・・・千代さんに腕を組まれて歩いている。

 

「このお店ならいいかしら?」

 

「・・・勘弁してください。」

 

娘の将来が変わるかもしれない、俺の所属高校「大洗学園」で本日行われる練習試合。

見ておきたいと思うのはわかる。わかりますが、なぜ俺の車を買うという話になるんですか?

 

「せっかく、免許を持っているのに車がないと意味がないでしょう?」

 

「だからって、買って頂かなくて結構ですよ・・・。」

 

「あら。未来の娘の旦那様にプレゼントするのが、そんなにおかしいかしら?」

 

「おかしいです。そもそも時間稼ぎで、家元襲名したら縁談破棄って話でしょうが。」

 

そう。そういう話になっている。なっていますよね?ね?

 

「まぁ冗談抜きで、お礼のつもりではあるの。隆史君のおかげで非常に良い状態になりました。」

 

「それらしい事言って誤魔化してません?それに、そろそろ腕を離してくださいよ。」

 

「い・や♪」

 

正直この状態はよろしくない。何とか別れて学校の皆と合流したい。が、携帯電話を人質ならぬ物質に取られている。

千代さんが、先程からなぜかツーショット写メをパシャパシャ取って、執拗に携帯をいじっている。

その直後に、ブーブーと千代さんの胸が震える。

 

「それに、いい加減俺の携帯電話かえしてくださいよ・・・。本当に。」

 

「いつでも取ればいいでしょ?どうぞ。」

 

胸を突き出す千代さん。・・・そう今、俺の携帯は千代さんの胸の間だ。

ヘリから降りる時に、携帯を落としてしまった。

落としてしまった携帯を千代さんが拾ってくれたのは良いのだけど・・・そのままブラウスのボタンを一つ外しその中に入れてしまった。

手が出せない。帰るまで返してくれないつもりなのか。

この人は清楚なのか大胆なのか、よくわからない。

 

「犯罪者には、なりたくないです。」

 

「別に私は良いのだけれど?ン・・・しほさんが先程から鬱陶しいですね。」

 

「何故しほさんの名前が・・・?」

 

ブーブー先程から胸が震える。たまに出す色っぽい声をやめてください。

 

「先程から撮った写真をしほさんに全て送っているからよ♪」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

え?何?良く聞こえなかった?

 

 

「貴方、彼女のお気に入りですし、どうなるかなぁって♪」

 

「」

 

さっきから感じていた悪寒は、それか。風邪ひいたんじゃなかったんだ~。

もっと悪状況になってたのかぁ~。

 

「あぁ、大丈夫よ?携帯、下着の間に入ってるから振動で落ちて壊れたりしないから。」

 

「んな事心配してません!なんでそんな事!?この後、あの人ここに来るんですよ!?」

 

今回の状況とみほの状況を隠れて見たいと、ここに来る予定になっていた。

例の島田家お姫様だっこの写真を送られて即座に着信があった。携帯に向かっての土下座は、初めての経験だったなぁ・・・。

一応、千代さんより大まかな説明をしてもらったのだけれど、俺の口から直接聞きたいという事で、本日ご降臨なされる。

 

「千代さんも知ってますよね?何でそんな事するんですか!?」

 

しほさんと千代さんのどういった関係かは、みほから聞いた事があった。

 

「そうね。敢えて言うなら・・嫌がらせかしら♪」

 

誰か助けて・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな格言を知ってる?」

 

あの方は、いませんでした。

ペコは、ひどくガッカリしていましたけれど、だからと言って試合前の相手に…。

しかも殿方の事を聞くのも品がありませんわ。

 

さて。この方が「西住 みほ」さんなのかしら?

まほさんと雰囲気は余り似ていませんけど。

あの方が、必要に気に掛けていた方。

・・・少々やけますわね。

 

「イギリス人は、恋愛と戦争では・・・。」

 

しかし、正直驚きましたわ。

素人の寄せ集めとお聞きしていましたのに。

始めは初心者に胸を貸す気でお相手しましたが、市街戦に持ち込まれ

尚且つ、ここまでおやりになるとは思いもしませんでしたわ。

 

Ⅳ号戦車。

 

あの車両のみ、奇抜なカラーリングも無し。

動きに躊躇も無い。

間違いなく経験者ですわね。

そう・・。多分、彼女が隊長。

 

彼女が「西住 みほ」さん・・・。

 

「手段を選ばない!」

 

全車両、砲身を向ける。

4対1。

最後は呆気ないものですわね。これで終わり。

 

「さんじょ~!」

 

 

右方より先程リタイアしたと思われた悪趣味な金色にカラーリングされた車両が、前方に乱入し停止。

零距離射程で、発砲するも・・何故この距離でお外しになるのかしら・・・。

 

ドゴン!!

 

四車両の一斉砲撃。

一両撃破・・・即座にⅣ号が、急速発進。

隙を突かれ撤退際に一両撃破された。

素早い。

煙に巻かれ視界が塞がれ判断が遅れた。

視界から急速に消える。

 

「回り込みなさい。至急!」

 

 

 

 

 

 

・・・結果から申し上げましょう。

 

私達は「敗北」しました。

 

試合には確かに「勝利」しました。

 

最後、逃がしたⅣ号に二両をまとめて撃破されてしまう。

道路交差点間際、壁に姿を隠し接近され、ほぼ零距離からの砲撃で一両撃破される。

離脱すると思わせ、視界の外で旋回され、また零距離射程に近づかれ砲撃で、もう一両。

そこで私の車両も一発頂き、被弾。

 

最後、突撃で仕掛けられた時も返り討ちにするつもりが、

フェイントに引っ掛かり、砲身の回頭も動きについて行けず再度被弾。

 

即座にこちらも砲撃・・・試合に勝利した。勝ったとはいえ、強豪校とは言えない勝利の仕方ですわ。

これでは、私達は戦車の性能「のみ」で勝利したとしか思えません。

大手を振って「勝ちました」とは、とても言えませんしね。

・・・あの一両に、全てやられた様なものですわ。

 

「無様ですわね・・・。」

 

でも、あれは本当に西住流なのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重い音を響かせ、走行不能になった私達の戦車が運ばれていく。

煤だらけの体で、呆然と見送っていた。

 

「あんこう踊り・・・。」

 

沙織さんが呟くのが聞こえる。

結局私達は、負けてしまった。みんな初めての試合で仕方がないとは思うけど、やっぱり何か悔しい。

こんな感情も久しぶりだな。

運ばれていく戦車を見送っていると、後ろでバタンと車のドアが開閉の音が聞こえた。

 

「お疲れさん。」

 

一斉に皆振り向いた。そう、隆史君の声だった。

 

「隆史く~ん。遅いよもう~。終わりだよ。絶望だよ。お嫁に行けなくなるよ~。」

 

沙織さんが、項垂れながら近寄る。そんなに嫌なんだ・・・。

 

「いやいや、試合は間に合ったよ。車の中で見てたし。・・・お嫁?」

 

「車?あれ、その軽トラックって隆史君の?免許持ってたの?」

 

軽トラックで、ここまで来たようだ。本当に何していたんだろ?

 

「あれ言ってなかったっけ?ちょっと色々あってね。これからの準備とかでちょっと合流できなかったんだ。ごめんな。」

 

ちょっと体を傾けて見てみる。荷台にクーラーボックスが、いくつか積んであった。

こんな車持っていたっけ?

 

「まぁ結構、健闘したな。どうだった?えっと冷泉さん。やっぱり君すごいよ。」

 

「いや・・・まぁ何とかなった。それに私は、西住さんの命令を聞いていただけだ。」

 

前回のやり取りからか、隆史君への対応が、良くわからないみたい。

目を逸らし、ぶっきらぼうに答える。

 

「怖かった~。」

 

「刺激が凄くて、大変素晴らしかったです!」

 

苦笑して聞いている。何だろう。隆史君の様子が何か変だ。

必要以上に明るくしようとしている感じがする。私達が負けちゃったからかなぁ。

 

「優花里は・・・いいや。言わなくてもわかる。」ナンデデスカー!

 

先程より秋山さんは随分と高揚している。体中で楽しんでいたのがわかった。

 

「なぁ。みほ?」

 

「な・・何?」

 

何だろう。満足気な顔して聞いてくる。

 

「どうだった?」

 

「・・・うん。楽しかった!」

 

沙織さん達に支えられて再び戦車に乗った。実戦だった。

負けてはしまったけれど、久しぶりの高揚感に満ちている。

次は勝ちたいと、「次」を想定してしまう。

何だろう。すごく充実した気分になってくる。

 

 

 

 

「ごめんなさい。少しよろしいかしら?」

 

不意に声をかけられた。私にだよね?

 

「貴方が、隊長さんですわね?」

 

「え?あ、はい。」

 

綺麗な人だった。聖グロリアーナ学園の隊長さん。ダージリンさんだっけ。

もう一人女の人と、男性が三名。試合後の挨拶に来てくれたのだろうか?

大洗学園に続き、男女共学になった聖グロリアーナ学園。

それでも、戦車道に男性がいるのは珍しい。

 

「そう。貴女が『西住 みほ』さんね?随分と、まほさんとは違いますのね。」

 

「はい・・・。」

 

いきなり名前を言い当てれられた。お姉ちゃんまで、引き合いに出された。

実力差でも言われてしまうのだろうか・・・。そもそも何故、私を知っていたのだろう。

 

「今回の練習試合。一番の目的は、貴女に会う事でしたの。」

 

「え・・?」

 

「理由は、そこにいる「卑怯者」兼「薄情者」にお聞きになったら?」

 

私と会いたかった。え?何でだろう。

そもそも「卑怯者」兼「薄情者」って誰の・・・。ハッ!

 

「隆史君!?」

 

後ろを振り向く。

 

あ。・・・目を逸らした。その滝のような汗はナニかなぁ。

 

「1つ。「西住 みほ」さんを気にして心配ばかりしていた貴方。

 2つ。行き先も言わないで、突然の転校。

 3つ。戦車道に所属し、練習試合を申し込んできた貴方。・・・大洗学園として。」

 

クスクス笑っていたダージリンさんが、説明を始める。

 

「少し考えれば、誰でもわかりますわ。」

 

「え、でも何でそれで、私と会ってみたいって理由になるんでしょうか?」

 

ビクッ

 

「・・・本当に。お分かりになりませんか?」

 

顔を傾け、薄目にした流し目でこちらを見る。睨まれてる?え?

でもすぐに、フッと微笑を浮かべながら顔を逸らす。

 

「あそこまで隆史さんが、気に掛けていた方。どんな方か、興味があっただけですわ。」

 

「隆史さんが、青森から転校した後なんて、ペコなんて取り乱して大変でしたのよ?ねぇ・・・あれ?ペコ?」

 

ペコと呼ばれた人がいないのか、キョロキョロとするダージリンさん。

でも最初から女性は、ダージリンさんと、そこの髪をアップにしている方だけだったような。

 

「あの・・・。」

 

「あら、隆史さん。お久しぶりの挨拶も無しに何かしら?」

 

「ムグ。」ダラダラ

 

干からびるんじゃないかと思う位の汗をしている隆史君。何だろう。この言葉を送りたい。ざまぁみろ。

 

「あの・・・お久しぶりですね。ダージリンさん。ご機嫌はイカガデショウカ?」ダラダラ

 

「えぇ。ご機嫌よう。余り宜しくはないかしらね。誰かさんのお陰で。それに昔みたく気軽に、呼び捨てて頂いて結構ですわよ?」

 

・・・。

 

なにその子。

 

嫌味な挨拶の返し方をされ、注目が更に集まった隆史君の腕に、女の子が腕を組んで満面の笑みを浮かべていた。

また増えた。

 

「オペ子を何とかして下さい。」

 

「ペコ・・。あなた・・・。」

 

「あ。私の事はお気になさらずに。ダージリン様は、どうぞ隆史様に嫌味タップリの挨拶を続けて、どんどん嫌われてください♪」

 

探していたのはこの子かな。

隆史君を見つけて、即座に飛びついたみたいだった。

隆史様、隆史様言って擦り寄っている。イラッ

 

「ダージリン。オペ子って、こんな娘だっけ?」

 

頭を指で押さえ、吐き出すようにダージリンさんは嘆く。

 

「隆史さん。貴方が、この娘を変えたんでしょ・・・。」

 

 

・・・。

 

・・・・・。

 

・・・・・・・ハ?

 

 

「隆史君。」

 

ビクッ「はい!!」

 

「この娘に何したの?ナニしたの?ナ・ニ・シ・タ・ノ!?」

 

「フー・・。ちなみにワタクシモ、サレマシタワ。」

 

「」ガタガタガタ

 

隆史君の目が泳ぐ。

沙織さん達に助けを求めたいのだろうけど、彼女達も女の子。

何か不誠実をしたのかと、隆史君を睨んでいます。

 

やっぱ友達っていいねっ♪

 

 

「やーやー。何か面白いことになってるね~。」

 

会長達、生徒会役員がやって来た。チッ

しかし、どうだろう。味方に引き入れて一気に追撃しようかな。

今が攻め時だろうしね。

 

「」ガタガタガタ

 

「ちょっと、話聞こえてたんだけどさぁ。隆史ちゃんって・・・ひょっとして女の敵ぃ?」

 

ブンブンブンブンと青い顔を振っているのだけれど説得力が無い。ドウシヨウ。コノ・・・。

 

「西住ちゃんもさぁ。そろそろ愛想も尽きたと思うんだけどぉ。どーだろ?」

 

「そうですね!そこら辺で、何やってたか分からないような人!!」

 

あ。しまった。怒りに身を任せて言ってしまった。

 

会長がニタァと笑った。

 

「まーまー。冗談はここら辺にしようか。多分だけど、ダージリン。彼に飲ませたね?」

 

・・・あ。そうか。

一応、人が行き交う場所だ。未成年が「お酒」と言わないように言葉を選ぶ分、会長の方が冷静だった。

あれ。私今さっき、結構致命的な事言っちゃった気がする。

 

「事故みたいな物ですけどね。ご経験がお有り?」

 

「まーねー。・・・アレは駄目だ。」ハー

 

「・・・そうですわね。刺激が強すぎますわ。」フー

 

「だからさぁ。隆史ちゃんは別に如何わしい事しようとした訳じゃないと思うから、そろそろ許してやって。」

 

沙織さん達は、渋々侮蔑の視線をやめる。

 

しかし、私はそれ所じゃない。頭の中で警報が鳴っている。

隆史君の会長を見る目が、キラキラしている。イラッ

 

「会長。悪いんですけど。この後、人と会う約束があるので、もう少し合流が遅れます。」

 

「なに?また女?」

 

聖グロリアーナの約2名含め、注目を受ける彼。

 

「・・・まぁそうですけど。みほのお母さんと・・会う約束してるんです。」

 

「え?お母さんと?」

 

「ちょっと俺が、今回抜け出した件で関係してるんです。だから、みほは今回関係してないよ。」

 

「・・・でも。」

 

それでも不安は不安だ。いきなりここにお母さんが来る。隆史君に会いに。

 

ボソッ「・・・島田家との事でね。その前に千代さんが、しほさんを盛大に、からかってな・・・。」

 

「いってらっしゃい♪」

 

即答した。うん♪関わりたくない♪

 

 

 

彼は、早々と車に乗って行ってしまった。

誰もが思った。「逃げたな」と。

 

「そんじゃ、我々も解散しようかね。あんこう踊りもあるし。」

 

会長の一言で思い出したのか、沙織さんは暗い顔になる。

 

「会長。尾形書記を行かせてよかったのですか?」

 

「いいっしょ。それともあの格好を見られたかった?」

 

みんなして顔をブンブン振る。どんな格好させられるんだろ・・・。怖くなってきた。

 

「では、私達もそろそろ。」

 

「うん、ありがとね~。」

 

ダージリンさん達は、自分達の学園艦に戻って行く。

 

「最後に、生徒会長さん。」

 

「ん?何?」

 

「如何わしい行為って、どこまでの事を指すのでしょうね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自由時間。

バレー部のみんなと反省会という事で、街まで来たのだけれど逸れてしまった。

さすがに街中でユニホームは無いと、制服に着替えたのだけれど逆に目立たなくなってしまいわからない。

携帯で連絡を取って、待ち合わせまではしたけど早く合流しないと。

大体一人でいると・・・。

 

「ねぇねぇ。お姉さん暇?あ。制服着てるね~。高校生かなぁ?見えないねぇ。」

 

声を掛けられる。

茶髪でピアスで、チャラチャラして怖い。

グイグイ強引に近づいてくる。いつもだったら、忍ちゃんが追い払ってくれる。

人目にもつくし、すぐあきらめてくれると思うけど・・・。

 

「あの・・友達と待ち合わせをしてるので・・・。」

 

「いーのいーの、そういうの気にしないからwww」

 

会話すらしてくれない。どうしよう。

周りを見ても、明らかに嫌がっているのに誰も助けてくれない。

大人の人も目を逸らす。

 

「いや~君、スタイルいいねぇww本当に高校生?wwww」

 

逃げようと思ったら、手首を捕まれた。

何だろう、ゆっくり黒いワゴン車が近づいてくる。

何?怖い。

 

「いいね、いいねぇ。「みんな」喜んでくれると思うよ?」

 

やだ。本当に怖い。声が出ない。体が動かない。

ゆっくり近づいたワゴン車。後ろのドアが、ゆっくりスライドして開いていく。

嫌。嫌だ。

 

 

 

「ヘイ彼女、一緒にお昼どう?」

 

 

見慣れた人がいた。

 

「・・・どう?」

 

もう一度聞かれた。もう必死にコクコク頭を縦に振る様に頷く。

次の瞬間、すごい力でもう片方の腕を引かれた。

一瞬の事だったので、茶髪の人の手は離れた。

 

「はい。あんたら動かなーい。」

 

「あんたら、他県ナンバーだね。こんな所で目立ちすぎ。都会じゃないんだからさ。」

 

何も言わせないと、大きな声でしゃべりだした。

 

「何も用意しないで、こんな事するわけないでしょ。ハイ。後ろをご覧くださーい。」

 

私も彼らの後ろを見てみたら、警察官が2人程こちらを見ていた。

そこから、今度は彼らの行動が早かった。開いたドアに茶髪の人が乗って車を出して逃げて行った。

こちらを凄い睨みながら。先輩は結局、あの人達に一言も喋らせなかった。

 

「はい。近藤さんのナンパ成功。」

 

あっと言う間の事だった。

声を掛けられて、今のこの状況まで。

 

あぅ。膝が今になって震えてきた。ストンと腰が抜けた。

 

「あ・・あの先輩、帰っていたんですね。」

 

声が震える。

お礼言わなきゃ。

あのままだったらどうなっていたんだろう。

すごく怖かった。

 

「はい。帰ってきました。んじゃ。よっ。」

 

抱っこされた。お姫様だっこと言う奴だろうか。

今の状態じゃ確かに動けないけどびっくりした。

そのまま先輩の車だろうか?軽トラックの荷台に下ろされた。荷台って・・・。

 

「余程の馬鹿じゃなきゃ、あいつらもう来ないだろうよ。警察も絡んでると思ってね。」

 

「いえ、ありがとうございました・・・。アレ。」

 

手も震えていた。ガクガクと。こんな事は初めてだった。

震えた両手を見ていたら小さな黄色のカップを渡された。

 

「あの・・。これ。プリン?」

 

「今回の事で、みんなに迷惑掛けたから人数分用意したんだ。というか俺が作った。キモイだろ。」

 

「あ、いえ。でも。え?」

 

「あとで全員に渡すつもりだけど、余分にあるから、その一個はサービスです。」

 

「落ち着くまで、そこにいな。今は車内よりそこの方が落ち着くだろ。」

 

そういう事か。結局、キャプテン達と合流するまでいてくれた。

何か、待ち合わせをしていると言っていたけど、大丈夫だろうか。

先輩はみんなの姿が見えたら、そのまま行ってしまった。多分忍ちゃんが怖かったのだろう。

私と先輩が一緒にいるのを見かけたら、明らかに睨んでたし。

 

「大丈夫!?妙子!?アレに何もされなかった!?」

 

アレって・・・。

 

「・・・忍ちゃん。つり橋効果って本当かなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「余程の馬鹿っているもんなんだなぁ・・・。」

 

しほさんと待ち合わせの場所に行ってみたら、先ほどのチャラ男が、よりにもよってしほさんナンパしていた。

怖いもの知らずという何というか・・・。

あら、珍しい。しほさん私服で来たんだ。スカート履いているのって久々に見たなぁ。

レアだ。レア!

おっと。そんな場合じゃなかった。

 

「あんたら。懲りないね。」

 

「またテメェか。」

 

待ち合わせの場所は、喫茶店の前だった。話をするのには丁度いいと思ったからだ。

今度は、人通りが少ないとでも思ったからか・・・。馬鹿だな。

でもまぁ。しほさんナンパされるんだぁ。やっぱりなぁ。

 

「通報されてるのに懲りないな。」

 

今回は、何もしていない。ただ先ほどの事があるので、警戒はしているようだ。

キョロキョロしている。すぐに黒いワゴン車が、そいつの横に止まる。

何かしてくるかな?殴られるのは得意でも、喧嘩はそんなにした事が無いから正直怖い。

 

「隆史さん。私はいいですから。」

 

一応しほさんとの間に入り、チャラ男と数分にらみ合う。

時間をかけるのも、割に合わないのかチャラ男の方があきらめる。

さぁ、とっとと捨て台詞を吐いて退散するがいい。バカめ。

 

「チッ、もういいわ。こんなババァ。」

 

 

 

 

 

 

「」

 

「・・・バ?」ピクッ

 

 

 

言葉が無い。何を言えと?

 

「若作りしてるようなババァに声かけんじゃ無かったわ。」ペッ

 

 

 

「」ガタガタ

 

「・・・・・・・・・・・ワ・・カ・・。」

 

 

 

 

お空ってこんなに赤かったっけ?

わーアスファルトって殺気でヒビ割れるんだね~。

誰か助けてー。

 

「隆史さん。」

 

「はい!!!」

 

普通に声を掛けられる。

 

「先ほど通報と言っていましたが、一度警察が絡んでいるのですね?」

 

「え?」

 

答える前に携帯を取り出し、どこかと通話をしだした。

 

「そこから見えていますね。あの車のナンバーと持ち主を調べなさい。犯罪歴等をすぐに。」

 

「ババァ!ふざけん・・・」ドサッ

 

 

チャラ男が倒れた。え?え?

 

特殊部隊みたいな格好をした兵士みたいなのが、ゾロゾロと3人、物影から出てきた。

 

「彼らは、まぁ私のボディガードのようなものです。」

 

・・・マジかよ。私設部隊もってるの!?

 

「家元。」

 

リーダーらしき隊員が、しほさんに指示を仰ぐ。

調べがついたのか、電話の会話が聞こえる。

 

「わかりました。なるほど。女の敵ですね。・・・下衆共が。」

 

ピッっと通話を切り、そのまま指示を出す。

 

「全員捕縛しなさい。抵抗するようなら・・いえ、全て無力化しなさい。」

 

異様な空間にビビったのか、車が逃げ出そうと動き出す。

が、タイヤを全て撃ち抜かれて動けなくなる。

逃げ出そうと車内から、また猿みたいなのが3人出てきた。

出てきた瞬間、全て取り押さえられる。

 

「彼は、私の連れです。手を出さないように。コレらの処分は、後日伝えます。警察にでも引き渡しておきなさい。ただ・・・。」

 

しほさんが動いた。何もしてないのに俺がビビる。隊員達もどこか様子がおかしい。

ツカツカと最初の茶髪のチャラ男に近づく。うつ伏せに倒れていた。意識が戻ったのかググッっと、体を起そうと腕に力を入れ始めた。

そのまま、そいつの肩をガッと踏み潰す勢いで、足で押さえつける。

 

「意識が、まだ有ります。私は「無力化」しなさいと命じましたよ?」

 

バシュ!バシュ!

 

バッグから拳銃らしきものを取り出し、2発そいつの背中に撃ち込む。・・・動かなくなった。

死んでないよね?

 

「りょ!了解!」

 

他の3名も意識をすぐに刈り取った。

震えが止まらない俺に、リーダー隊員から小声で声を掛けられる。

 

ボソボソ「な・・何が有ったんだ。我々は会話までは認識していない。あんな家元は見たこと無いぞ。」

 

ボソボソ「・・・あいつらが、しほさんを・・家元をババァって・・・。」ガタガタ

 

 

「「「」」」

 

 

通信で会話を聞いていたのだろう。全ての隊員の動きが止まった。

 

ボソボソ「更に・・・。」ガタガタガタ

 

ボソボソ「まだ何か言ったのか!?」ガタガタ

 

ボソボソ「わ・・若作りのババァって・・・。」ガガガガガッ!ガタガタ

 

 

「「「」」」

 

 

ボソボソ「そうか。怖かったな。よく頑張った!」ガタガタ

 

ボソボソ「怖かったです!」ガタガタガタガタ

 

隊員が慰めてくれる。その現場に立ち会ったものにしか、わからない恐怖を感じてくれたのだろう。

 

「では、撤収して下さい。すぐに「ソレ」を私の視界から消しなさい。」イライラ

 

 

 

 

こうして恐怖の時間は終わった・・・。

 

いや終わってなかった。次は俺の番だった。

 

この状態のしほさんと会話するの!?

 

 

 

「さて。では邪魔者も処理しました。では行きましょうか?隆史君。」

 

 




はい。閲覧ありがとうございました。

次回はもう少し更新が早くできたらいいな・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。