転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第28話 面会 ~後編~

「30秒ください」

 

 顔を上げた隊長は、踵を返し、またあの男と向かい合った。

 自分の気持ちを整える為…もしくは、頭の中を整理する為の時間だろうけど…大丈夫だろうか?

 

 正直言ってしまえば、一刻も早く、この男から隊長を遠ざけたい…いや、遠ざけた方が良い。

 隊長には、こんな…歪んだ人間と関係を持ってほしくはない。敵対しての会話だけど…先ほどの隊長の事もある。

 …このまま話せば、どんな影響があるか分からない…。

 

 ここは…無理にでも…強引にでも…。

 

 

「 西住 あゆ…あゆみ? …つったか? 」

 

 

 隊長が対面の椅子へと座った直後…男の口が開いた。

 顔にまだ痛みがあるのか…顎を摩りながら…また癪に障る声で、一人の名前を出した。

 

「そうそう! 西住流分家 西住 歩!」

 

 隊長を無視して、会話を再開し始めた男を、思わず睨んだ。

 …しかも…あからさまに「西住」の名前を出して…。

 そんな私の睨みに気が付いたのか…こちらに目線を送り、心底つまらなそうに…。

 

「いいですかぁ? 糞ビッチ。…30秒? 待ってあげると言ってませぇん。僕ぁ、せっかちですからねぇぇ?」

 

 このっ…。

 

「わかった」

 

 無視をすれば良いですのに、隊長はそんな糞野郎の声に応じる様に、顔を上げ…あの男と視線を合わせた。

 先程大暴れした後ろの女性は、また壁に背を預け、そんな隊長を見守っている。

 

「アズミ、もう大丈夫」

 

 こちらを向いてはくれなかったけど…何時もの隊長の声で、声を掛けてくれた…。

 何故か…いつも通りに戻ったと、少し…安心してしまった。

 

「頭の中でボコをイメージ。そしたら…お兄ちゃんが出てきた。…と思ったら…黄色い熊も出てきて…余計に混乱したけど…何となく合体させたら、頭の中がスッキリした」

 

 …なんですか、その精神統一方法。

 

「システム「ALICE」開発……急ごう…」

 

 その結論に何故至ったのでしょう…と言いますか、思いの外…余裕ありますね…。

 それになんですか? …そのシステム。

 

 隊長は機嫌が良さそうに鼻から息を少しだすと…この目の前の男を呼んだ。

 

「では…橋爪 高史」

 

「…なんですかぁ?」

 

 あ…。

 

 …止めるタイミングを逃した。

 

 会話が始まってしまった。

 

「ありがとう、待ってくれて。今の彼女との会話で、きっかり30秒」

 

 あ、隊長…。あの隊長が嫌味を言った…。

 

「……あ?」

 

 よしっ! 今の言葉で、一瞬不快そうな顔をした男に、少し気が晴れました!

 後ろでもあの女性が、声を殺して笑っているのが分かるっ!

 

「まっ…いいですけどぉ? でぇぇ…? 何かお聞きになりたい事でもございますでしょーー…ヵ?」

 

「ん…随分と素直になった。また人の神経逆なでする様な事、言ってくると思ったのに」

 

「化物サマの覚醒イベントに、付き合う気は御座いません。前座は全て終了いたしましたぁ…気が向いたら答えてやるから言ってみろや」

 

 何を思ったのか…本当に男は、だるそうに椅子の背もたれに体を預け…ニヤニヤとした笑顔で隊長を見ている。

 そのニヤついた笑顔を、隊長は逆に不思議そうに見つめている。

 …というか!! そんな目で私の隊長を見るなっ!!

 

「なら…「んじゃまず「西住 歩」。こいつが、ガキの頃に「尾形 隆史」「西住姉妹」を襲う様に依頼してきたんですぅ」

 

 答えてやるから…と言って、隊長の言葉を遮って話し出した。

 ワザとだ。ワザと…ッッントに…腹立つっっ!

 

「知らないかなぁ? 島田家とも交流がある様な事言ってたよぉ?」

 

「…知らない。まだ私は、あまり島田流として、西住流との交流は無い。…というか、知らないから聞いている」

 

「化け物産の情報網は凄いんじゃないのぉ?」

 

「興味もなければ、必要も感じない対象を調べる程、暇じゃない。本家なら兎も角、西住流の分家なんてどうでもいい。興味すら湧かない」

 

「ふ~…ん。ま、でもこれで興味が湧いたよねぇ? どうせこの後、調べるでしょう? ね? その依頼者の事はぁ…今ここで聞いておけば楽じゃね?」

 

「それは自分で…ん? そういえば…依頼…。当時、見ず知らずの中学生に、西住を名乗ったの?」

 

「違いますよぉ? 当時は素性を隠してましたねぇ……って、何を考えてんだか知らねぇが、先日俺に面会に来た時に…嬉しそうに得意そうに…偉そうに…その時の事を、教えてくれましたぁぁよぉ? その時初めて名乗ったの。その分家さんとやらは」

 

「その時に名乗った…今更になって…?」

 

「そうそう、今更になって。あ、僕の動機? あの頃の僕は、若くてねぇ~。前金で200万持って来やがったモノですから? 馬鹿な中坊達は、まんまとソレに釣られちゃいました!♪」

 

「襲う理由は、何か聞いた?」

 

「あぁ~…当時も聞いてねぇなぁ…。お家騒動って奴じゃないのぉ? お金持ちの考える事は、一般庶民には理解が不能ですからぁ~」

 

「………」

 

「そん時もぉ…重体もしくは、間違って殺しちゃっても、隠蔽してくれるって言ってくれましてねぇ? そんなアフタ~ケアも充実した提案でしたぁ」

 

 ベラベラと…ふざけた口調は相変わらずだけど、この男は先程とは打って違い…ポツリポツリと喋る隊長の言葉に対し、素直に話している。

 

「なぁんか、本家とやらの確執が、云々かんぬん非常に悔しそうに言っていたねぇ。それじゃね? コンプレックスの塊みたいなノだったよ?」

 

 いや、それ以上だ。聞かれていない事まで、その時の様子を口に出していた…そして。

 

「あぁっ! そうそう…その「西住 歩」が、僕に面会に来る前に? お兄ちゃんも、態々会いに来てくれたよぉ?」

 

「…え」

 

 ソレこそ鬼の首を取ったかの様に…また一層ニヤニヤとした目つきで隊長を見下ろす。

 …尾形 隆史が、あの事件後にこの犯人に態々…。

 

「そうそう…相変わらず首輪着けて、西住さん家の家元さんとねぇ~」

 

「それは言わなくてもいい。時間がない。…次に行く」

 

 アッサリとその事は話さなくとも良いと一蹴。…興味を持たない隊長に対して一瞬だけど、この男の目が鋭くなった…気がした。

 あの子に事だというのに、この隊長の応えは、この男からしても意外だったのだろう…か?

 

「現状の優先事項が違う。余計な事、情報は入れたくない。…今は邪魔なだけ」

 

「……ふ~ん。でもぉー? 時間ならまだまだいっぱいあるよぉ? ここ治外法権だしぃ」

 

「どんなに延長をしたとしても、面会時間と言うものは概ね決まっている。時間を掛けすぎれば、他の…ちゃんとした、通常の。真面目な。警察官が…何かしらの異常事態かもしれないと、不審に思うのが当然」

 

「ふむふむ」

 

「…何時、他の買収何てされない真面目な警官が、ここの様子を見に来ても、何ら不思議じゃない」

 

「あらら。言われちゃってるねぇ~~? こんな幼女にぃ」

 

 隊長の言葉に、地面に項垂れていた警官が、肩を跳ねあがらせた。

 まぁ…当然の報いだろうけど…というか、ここの部屋に入ってどれだけ時間が経っただろうか?

 

「……でも、もういい。大体の事は分かったから」

 

「んん~? まだ触りの部分しか言ってないよぉ? もう聞きたい事ないのぉ? 気分が良いから何でも上げるよぉ?」

 

 そこまで言うと、スッ…とその椅子から隊長が立ち上がった。

 もう会話は終わりだと、言わんばかりに。

 

「なら…最後に一つ…。いえ、二つ、わからない事がある。その答えを聞かせて」

 

「なぁんだぁ、まだあるじゃないのぉ」

 

 手をパタパタと、こちらに煽ぐ男。

 

 …無性に腹立つ。

 

「…西住 歩。西住流の分家を名乗るその男は、結局貴方に何をしに面会に来たの?」

 

「……?」

 

「ただ、昔の事を話す為だけじゃないでしょう?」

 

 この男、最後の質問に対してだけは、すぐに答えなかった。

 

 一瞬、眉を顰めたが、すぐに…その質問に対し…。

 

 

 

「…っ!?」

 

 

 

 ニタァ…と、酷く…深い皺と一緒に、頬を歪ませた。

 

 

 その歪んだ笑顔に、この状態…。あの男が言っていたふざけた名称。天才少女モード? とか言う…淡々とした冷静な彼女。

 それは戦車に搭乗している彼女が、本当に集中している時と似ていた。

 今のその状態の隊長が…少し怯んだ。

 

 

「 復 讐 」

 

 

 そして…一言、男が…楽しそうに答えた。

 

「前回は失敗した。その復讐…らしいよぉ? それでぇ、俺にも協力しろとか言ってきやがったのぉ」

 

「……そう」

 

「俺も西住姉妹に対して、恨みがあるだろう? …とかねぇ~…鬼の首取ったような勝ち誇った面してねぇ? …それに」

 

 ある意味で予想通りの理由なのか、小さくうなずいた。

 その隊長の仕草を見て、何が嬉しかったのか…その後、マシンガンの様に、次々と言葉を吐き出した。

 

「西住姉妹はもちろんだけどぉ、あの時邪魔した「尾形 隆史」も復讐対象ぉぉ。ほらぁ、化物発進のお膳立てもできてますよぉ? 危ないよ? あのお兄ちゃん!」

「あの姉妹は、自分の為に邪魔ぁ~。尾形 隆史は自身の計画の邪魔をした張本人んん~~」

「あぁ!! そうそう!! 塀の中の俺にぃ…何ができるって思うよねぇ? 出来ない事もないのぉ。…まぁ簡単に言えば、過去に俺が西住家ご令嬢を襲った「過去の事件」と「今回の事件」…その首謀者の俺」

「そして今回戦車道の…全国大会会場でやった「今回の事件」。取っ捕まった僕がぁ…その「過去の事件」の復讐に? 暗に…人権を無視した扱いを、あの家元様達から受けたとか?」

「ある事無い事、囚人という弱者側からの意見で吹聴してくれって話ぃ。弁護士に話せって話ぃ! そして今回の報酬は…俺の自由。どうにかこうにか…執行猶予付きの釈放を促してくれるって話ぃ」

「馬鹿だよねぇ!? 世間知らずすぎるよねぇ!? んな事言った所で、どうにもならないし、俺がそう簡単に出れるはずねぇぇだろぉうがボケェカスがぁ!!」

 

 良く…舌が廻る男。

 

 話している内に、熱が入ってきたのか…こちらの声を遮る様に喋り続けている。

 

「それかぁ!? そう言う事で、西住流家元様に、少なからず言及が…「 もういい 」」

 

「…大体分かったから、もういい」

 

 隊長は顔を少し歪ませ、心底軽蔑するかの様な顔で目の前の男を見ていた。

 そんな顔の隊長を、男は嬉しそうに…舐めまわすかの様に目玉を泳がした…って気持ち悪いわね!

 

「はぁっ…ぁぁ~…あ。もういいのぉ? 漸く火が付き始めたんですけどぉ?」

 

「…いい。最後の質問」

 

 立ち上がったまま、男に対して背中を向ける。

 

 無理もない…。

 

 隊長は天才少女と言われてはいても、まだ13歳の女の子。

 多感な時期に、ここまで歪んだ異常者を目の間にすれば、生理的に受け付けなくなるのも分かる。

 先程のやり取りもあるけど、これ以上見たくないと、終わらせようとするのも当然でしょうね…私だって、一刻も早くコイツを視界から消したい。

 それでも、最後の質問と…自身の仕事をこなそうとする。隊長は…この質問が終われば、この部屋を退出するつもりなのでしょうね。

 

 そして感情がこもらない声で、確認する様に口にする。

 

「大洗納涼祭「西住 みほ」…の、友人拉致事件」

 

「ふぁい」

 

「大洗高校 戦車道準決勝の事件…」

 

「あい」

 

「そして、全国戦車道大会決勝戦の、貴方が捕まった最後の事件」

 

「はいはい」

 

「貴方は基本的に、…敢えて本人達を狙わず、精神的な傷を関節的に負わせる事を好む…卑怯者」

 

「あら酷い」

 

 …こ…コイツ。

 

「そんな異常者が…何故私を呼び出してまで、そんな事を教えてくれたの? 西住流分家は、どちらかと言えば貴方の味方だよね?」

 

「あぁ~…そんなつまらない事、最後に聞きたかったんですかぁ?」

 

 先程までの歪んだ笑顔が、本当につまらなそうな顔をに萎んだ…。

 

 あ~…と、唸る様な音を喉から響かせながら、少しの間なにかを考える様に頭を揺らし始め…ゴキっと首を鳴らす。

 

「…そん時の俺のパトロンの話とかは良いのかねぇ?」

 

 小さく…本当に小さく呟いた。

 

「……もう、それはいい。大体の予想は着く。答え合わせは、今する事じゃない」

 

「ふ~~~ん。…正直真っ先に聞かれると思っていたから、どうからかってやろうかと思っていたのにぃ」

 

 どちらも不愉快だけど、こちらの方がまだマシね…。

 

 さらにゴキッ…と、こちらに聞こえる程に強く首を鳴らし…こちらを見下すような目で見下ろす。

 そのまま…首の骨でも折れちゃえばいいのに。

 白髪交じりの髪を、手で上げながら、またあの歪んだ笑顔になる。

 

 これが本音。

 

 

「 楽しいだろ? 」

 

 

「…は?」

 

 そう…確信付ける静かな口調。

 

「人の人生、弄繰り回す側…は、楽しいだろぉぉ?」

 

「……」

 

「俺は楽しみたい。娯楽が欲しい。ただそれだけぇ。お前も俺を好きに利用すればぁ? 俺もお前を利用しますからぁ」

 

「利用…」

 

「…あのクソ分家…。俺の人生、弄くり回した人間に? 逆に弄くり回される気分はどうかと、最後に聞いてやりたいのぉ! 生活水準高い奴を、泥水啜るド底辺な生活に堕として差し上げたいだっっ!! けぇ~~」

 

「……」

 

「それだけですがぁぁ?」

 

「……」

 

「あら、気にくわない?」

 

 笑い続けている男が急に、ピタッ…と動きを止めた。

 顔は天井を向き、心底楽しそうに叫んでいた男が、電池が切れたおもちゃの様に止まった…。

 そして…口調を変えて…コレが素だと言わんばかりに。

 

 

 

「 復 讐 」

 

 

 

 そう、先ほどと同じ言葉を吐いた。

 

 

「…復讐?」

 

「なぁ、お嬢様よぉ…。お前さんにゃ想像もつかんだろう、この糞みたいな底辺な俺の人生は…ある意味で、自業自得だと理解しちゃいんだよ」

 

「……」

 

「…でもなぁ~…ガキの頃の俺を利用してぇ…その原因になった奴が! また…今になって、餌ぶら下げて? この俺を利用しようとする糞野郎なんぞに…協力する訳ねぇだろ」

 

「だから…裏切った?」

 

「裏切りぃ~? 今回は、初っっから!! …俺が利用する側なんだよ。前提が違ってんだよ、脳内お花畑ですかぁ? …今度は、アレ…あいつが…俺に利用して糞みたいな人生歩めばいいいいいぃぃぃ」

 

「……」

 

「はっ…ああぁぁ…もう、久しぶりに大真面目に語っちゃじゃないの」

 

「………」

 

 ソコで、会話が完全に終了した。

 

 もう話す事は話した。隊長は、最後に二つと言っていた。

 その二つ目が終わると男は力なく椅子に座りこんだ。虚空を見つめ…抜け殻の様になっている…。

 先程の狂気じみた感じは…すでにない。

 

「…分かった。ありがとう」

 

 隊長がそう…小さくお礼を口にすると、部屋を出る為に出口に向かう。

 こんな奴にお礼を言う事なんてないのに…とも、思うけどコレもまた隊長の良いと所。…敢えて何も言わない。

 隊長の言葉に連れられて、付き添いの女性も、私も…部屋を退室…す…。

 

 

 

 

「 あぁ、最後に愛里寿ちゃぁ~~ん 」

 

 

 

 

 

 突然…また声がした。

 

 

「 僕からも一つ良いかなぁ??? 」

 

 

 振り向き…また二度と見たくもない顔に視線を向けると…また…あの歪んだ笑顔だった。

 

 

「…なに?」

 

「あの分家をぉ…知らないんだよねぇ? 西住 アユミを見た事も、会った事も、話した事もないんだよねぇ?」

 

「知らない…と言った。それがなに?」

 

 こんな質問、無視をすれば良いのに、律義に返事を返してしまった。

 

「ぼくねぇ? …一言も、分家が男だと言ってないけどぉ?」

 

「…っ!!」

 

 どうでも良い言葉。

 

 今回の話では、男か女なんてどうでも良い話。

 

 しかし隊長は、一瞬目を見開き…小さく唇を噛んだ。

 

「アユミなんて名前、普通は女の名前だと感じると思うけどぉ?」

 

「……」

 

 

 一瞬見せた隊長の悔しそうな顔を、この男は見逃さなかった。

 

 

「…ま、嘘を付いた理由は、分からないけどねぇ~~? どうでもイイケドネェェ!!」

 

「……」

 

 私は、その顔を見せないように、ただ部屋の扉を閉める事しか…出来なかった。

 閉まりきる間際になっても、ただただ嬉しそうなこの男の顔は、しばらく夢に出そうなくらいに……醜悪だった。

 

 

 

「んじゃぁ今回は、ここまでぇ…またおいでぇぇぇ…」

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 腹立つわぁぁぁ…

 

 …最後まで人の事、ビッチとしか呼ばないあの男の事を何時までも考えていたくはないが、腹が立つのだから仕方がない。

 

 

 

 先程までソコにいたのか…と、何気なく振り向くと、静かで無機質な外観が目に入る。

 犯罪者を収容する施設と言う事で、当たり前だけど敷地を取り囲む格子付きの壁が、妙に非日常感を強調してくれる。

 再度思うけど…私達は面会の為とは言え、あんな所の中にいたのね…。

 やっと面会時間が終わり、一生縁なんて持ちたくないその建物からやっと出る事ができた。

 

 こんな所…二度と来たくないわね。

 

「隊長…大丈夫ですか?」

 

「うん。大丈夫…ありがとう」

 

 あ…もう…無表情の様に見える、小さな笑顔が天使…。

 

 …違う、そうじゃない…。

 

 あの変な女性は、まだ少し用事があるとして、建物に残っている。

 こんな場所だけど、ルミとメグミもまだいないので、隊長と二人きりという時間は物凄く…物凄く貴重…。

 それでも自分の事ではなく、あんな異常者と会ったのだから、隊長の疲弊がどれ程のモノか…心配だった。

 

 しかしその時間も短く…後ろから少し高い音がして、門が開く音が響く。

 

「はいは~い、おまたせぇ」

 

「…チッ」

 

 そしてソコへ入る前と、完全に雰囲気が変わっている女性。

 隊長と私に少し遅れて出て…合流。

 もう出てきた。

 

 腰を曲げ…一つ大きな深呼吸をして…。

 

「んじゃあ、愛里寿ちゃん。自分でやってみて…どうだった?」

 

「うん…。おば様に任せて貰えて…良かった。やっぱり冷静なのが一番だと勉強できた」

 

「そ? 良かったわね…普通でいれた」

 

 普通…ね。

 

 正直、あの時は何を言っているのだと思ったのだけど…確かに隊長は最後まで…取り乱す事はなかった。

 

「感情を制御できるようになったら、一人前よ? 意外に出来ない人って多いのよぉ?」

 

 …。

 

 なんでこっち見た。

 

「大丈夫…大きな収穫があった」

 

「収穫…ですか? 隊長」

 

 ニヤニヤした目で見てくる女性を、睨みつけながら無視。

 

「うん…まず、あの男が言っていた事…多分、7割程は嘘」

 

 アレだけ長時間話して、あそこまで感情的になっていた会話が…嘘?

 あの男は、異常者だ。それを断言できる。その異常者がアソコまで感情的なって叫んでいた。

 …明らかに本音をブツケテきた…と、思うのですが。

 

「隊長、アレら全てが嘘…だったと?」

 

「そう。アレの性格上…素直に全てを話すとは思えない。私は話半分に聞いていた。五月蠅かったし」

 

 隊長には失礼だけど…私にはとても嘘を言っている様に…いや、嘘を付ける様に冷静には見えなかった。

 何を根拠に嘘だと、隊長は断言したのだろうか。

 

「後は、嘘と真実の選別。…コレは後で行うから…」

 

「あの…7割じゃなくて、全て嘘だって可能性は…?」

 

 隊長が、スッ…と腕を頭の付近にまで上げ、人差し指を上げた。

 あ…隊長が、講義…というか、人に対してモノを教える時に見せる癖ね。

 私はこの時の隊長を見るのが、とても好きぃ…。

 

 

「お兄ちゃんが言っていた」

 

 

 …あ、なんか違う。

 

 人差し指を照らす逆光が、変な演出をプラスしてる。

 

「人を利用しようとする輩。…特に嘘のつくのがうまい詐欺師は、嘘の中に…濃度の高い真を混ぜてくる…って」

 

「……濃度の高い真?」

 

「一つの確信に近い真実を、嘘の中心に混ぜる事で…全てを疑うか、全てを信じるか。最終的には人の思考は、そちらへと誘導されてしまう」

 

「……」

 

「たとえ小さな嘘に気が付いても、それを段々と忘れていくか、もしくは気にしなくなる。どうしても真実のインパクトが強いから。…私は今回の会話…その典型だと思った」

 

 あ…珍しく隊長が興奮し始めた。

 

「あと、さっき言った大きな収穫。…過去の事件話の時…あの男は、こちらが話題に出さなかった、あの男の協力者の話を出してきた」

 

「そ…そうですね」

 

「そして確信。あの男のお兄ちゃんに対する「復讐」は続いている。同じくして「西住流分家」もターゲットの一つに入っただけ…。更に…その「協力者」に対しても私を利用して「復讐」を遂げようとしていると思えた」

 

「あ…あの? 隊長?」

 

「その「協力者」が、私は気になる…おそらくあの言い方なら、現状野放し状態。アレだけの無茶を支援した…それなりの社会的地位がある人間かもしれないというのを、視野に入れるべき…」

 

「あのぉ…」

 

 フンフンと、鼻息を少し荒げて説明をし始めた。

 隊長の可愛い所っ! 多分、説明と同時に情報の整理をしていんだろうけど…私達は蚊帳の外…。

 

「会話の終了間際。あの男は私達から聞いてほしかった事を、全然聞かれなかったら…最後…と、態々強調して言ってみた。そしたら…まくしたてる様に…面白い程、吐いてくれた…フフッ」

 

 …。

 

 あの…隊長? なんで笑ったんですか?

 

「…相手の冷静さを奪えば、会話でも結構…相手を思い通りに動かせる。…うん、実戦で一つ勉強になった」

 

「あっ! あのっ!!」

 

「……なに?」

 

 説明を続けていく内に、自分の思考に夢中になっていく隊長…。

 

「あの…最後…あの男が、言っていた性別の話で、隊長は何をそんなに悔しかったのですか?」

 

 そう、何かこのまま止まらなくなるのではないかと思い、私は疑問に思っていた事を口にした。

 この隊長が、感情を表にだした行動。

 

「悔しい? …私が?」

 

「そうです…唇まで噛んで…」

 

「あぁアレ…」

 

 スッ…目を細めて、簡単に言い放った…。

 

 

 

「  演  技  」

 

 

「………え」

 

 本当に…私が思っていた通り、西住流分家とやらを隊長が知っていたかどうかなんて、彼女からすればどうでも良い事だった。

 どちらにしろ後で分かるかもしれないし、そんな情報どうでもいいと…。

 何故隠していたか、どうして悔しがったか。そんな小さな情報を与える事で…

 

「面白い位に引っかかってくれた……フッ…フフ。精々勝ち誇って、間違った解釈をすればいい。私が悔しがるフリをする事で、変な深読みでもすると思うから」

 

「………」

 

「あの男には、考える時間はあっても、情報を選別する方法はない」

 

 隊長も…この女性と同じくして、この施設へと入る前と後で大分変ったと…思わずにはいられない。

 薄く笑う隊長も可愛い…じゃなくて!

 

 隊長が…あの男を、手の上で転がそうとしてる…。

 

 

「あ、おば様? あの警官…どうでした? ふむぅ!?」

 

「ん? あぁ、ちゃんと言って来たわよ。ここの所長様にね」

 

「そ…そうですか」

 

「すぐにでも逮捕するって。そっちの細かい事は…知らなくても良い事ね」

 

「わかりました」

 

 室内で話した内容…あの買収された警官とは別に、もう一人程いるであろうと思われていた警官。

 やはりいたらしい…ただ。この女性がここの所長から聞いた話では、協力者のふりをしていた調査員だった…との事。

 しかしそんな内容を、この外部の女性に話すなんて…そんな身内の恥を晒すような真似を良くしたわね。

 

「でもね? 愛里寿ちゃんのお願い…やっぱりあの警官を泳がしておくのは無理だったわ」

 

「…そう。さすがに無理…か」

 

「私達にバレちゃったしねぇ~。私も立場柄、言わない訳にもいかないしね」

 

「大丈夫です。…一応、言ってみただけですから」

 

 現職の警官が、職場と立場を利用して、こんな事をしでかしたのだ。

 先程の面会で、あっさりとあの男が私達にバラされたというのに、上からのお咎めがないのならば…恐怖以外の何モノでもないでしょうね。

 捕まる前に逃亡…も、勿論考えられるけど…一番怖いのが、自殺だという。まぁ…そうよね。

 罪の意識に苛まれ…とかではなく、今後の事を考えればそちらへと()()()可能性は、勿論あり得る。

 

「でね? なんか話を聞く限り、ココも既に疑っていたみたい。今回の事で確定で…お礼言われちゃった」

 

「そうなんですか?」

 

「もう一人いるって推測していた買収された警官。確かにいたわ…でもそれ、内部調査の人だったみたいよ? 買収相手と証拠掴む為に、協力者のフリしてたみたい」

 

「…成程」

 

「さっきの会話も、しっかりと録画録音されてたわね」

 

 …ん?

 

 あ…れ? そうすると…。

 

「隊長…それって、あの男…詰んでいませんか? 全部芋蔓式に…」

 

「違う…どちらかと言うと、あの男…というよりも、西住流の分家」

 

「まっ。アレ聞いていて私も分かったわ…今回の面談の目的…」

 

「あっ…この買収話を、隊長にバラすって…事ですか?」

 

「一番はそうだと思う。分家からすれば、橋爪 高史が裏切り…警官を買収した事を話すとは思っていない。…その楔を打つ事」

 

「あの島田 忠雄といい…金持ちって、どうしてこう金で何でも出来ると思ってるのかしらねぇ?」

 

「…ま、何かしら手は打ってあるとは思うけど…多分、またあの男に会いに来ると思う…」

 

「そうそう! それよ、それっ! 愛里寿ちゃんの提案! その調査員が引き継いで続けてくれるみたいよ? …買収されたフリしてね」

 

「そうですか、よかった…あと、おば様…暑い…下ろして…」

 

「あぁ~~~…いい匂いがするぅぅ。愛里寿ちゃん、ちょっとスカート捲っていい?」ハァハァハァ

 

「やめて…」

 

 …。

 

「………」

 

 それはそれとして…この女性…隊長をぬいぐるみか何かと勘違いしてないかしら?

 出てきて早々…隊長を抱き上げて抱きしめて、頬擦りしている。

 しかし隊長も口では嫌がってはいるが…本気で振りほどこうとしない辺り…ちょっと…こう…。

 

「…いい加減にしてくれないかしら」

 

「ん? なに? アズにゃん」

 

「アズにゃんっ!?」

 

 くっ…変な愛称で呼ばれた…。

 それに対して、怒ったりする歳でもないけど…流石に変わりすぎでしょう、この人。

 

「隊長…」

 

「まに?」

 

 まに…って。なに? か……。

 頬擦りが酷い…隊長がまともに喋れなくなってるじゃないの。

 

「…くっ。隊長…この人、一体誰なんですか? …妙に隊長に慣れ慣れしぃ」

 

「あれ…さっきの会話で分からなかった?」

 

 あぁ…尾形 隆史の…母親っぽい事を先ほどの面会の時に言っていましたね。

 親子そろってぇぇ…。

 

「いえ…あの子の母親というのは、何となく分かりましたけど…」

 

「あら…そういえば、自己紹介してなかったかしらねぇ~」

 

 私と隊長の会話に割り込んで、ほんとーーーに今更、そんな事を言って来た。

 もうこの時間も終わるから、どうでも良いのだけど…ま、隊長を下ろしたので良しとしましょう。

 

「アズミ…この方、西住流師範で…私の親戚で…」

 

「西住流!? えっ!? それで親戚!?」

 

 え…なんで、隊長と西住流の師範が…あの子繋がりだとは思うけど…アレ?

 でも確か…最初…家元からの要請で、隊長の付き添いに今日同行したとか…言ってなかったかしら?

 

「そうっ! そして永遠の魔法少女でっ! 永遠の17歳でっ!! あとっあとっ!!」

 

「おば様…色々とオカシイ…そして長い」

 

「愛里寿ちゃんに突っ込まれちゃったぁ♪」

 

 …そ…そうだ…。

 

 しかも、隊長がおば様と呼んでいる…。

 

 初め、尾形 隆史関連だからだと思い込んでいたけど…。

 

 尾形…島田流家元の…島田…。

 

 ……。

 

 

 ま……まさか…。

 

 

 

「 尾形 弥生よっ!! 」

 

 

「 」

 

 …。

 

 し…島田の血縁者…。

 

 そっ…そうよ…。

 尾形 隆史を連行した時は知らなかったけど…あの男も島田の血縁者…。

 

「あ…あの…隊長の親戚って…事は…旧姓は…」

 

「島田ねっ!!」

 

 

 

 て…こと…は…。

 

 

 あ…あの…車外の血暴者…。

 

 

 

「あら? どしたの?」

 

 

 ウインクして、舌だしてるこの人が…? え?

 

 生ける伝説…人間兵器…。

 

 素手で戦車を破壊できる化物…。

 

 あの…島田 弥生…?

 

 え…私…

 

 

 あの家元達…西住流家元と島田流家元…その先輩にして…唯一、頭の上がらない人……に、何言った?

 

 私っ!! なんて口を利いたっ!?

 

 

「お~~い。固まっちゃったわね」

 

「…?」

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「メグミ…全車輌、投入しない?」

 

「そうね、ルミ。遠征中だろうが関係ないわね」

 

「カール自走臼砲の試運転に丁度良いわ」

 

 

「やめてっ!!!」

 

 

 …どうしたんだろう。

 

 ルミとメグミも合流して、おば様にまた抱き上げられて、抱きしめられてる私を見て…いきなり物騒な事を言い出した。

 それを必死になって止めているアズミ。

 

 …。

 

 おば様…スカートは捲らないで。

 

「…おば様、これ…普通にセクハラ。やめて…」

 

「えぇ~…セクハラ~?…んじゃ、残念だけど、やめる」

 

 あ…セクハラって言われたら、あっさりと下ろしてくれた。

 降ろした後も、頭は撫でてくる…い…良いけど。

 

「愛里寿ちゃんは…この後、どうするの? 千代に、報告にでも行く?」

 

「「っ!!??」」

 

 …ん?

 

 どうしたんだろう…ルミとメグミが驚いた顔をしている…。対照的にアズミは顔が青い。

 

「い…家元を呼び捨て…」

「今日会った時も思ったけど…この人何者…? 家元の部下じゃないの?」

 

 良く分からない…まぁいい。

 

「…行かない。母には電話で済ます」

 

「あら~…まだその呼び方なのねぇ」

 

 …最近、母は何かをしている。

 何か…良く分からない事…仕事だとは思うけど…。

 

 ここでお兄ちゃん関連の話を、入れるとまた遊び兼ねない。

 

「今日の仕事は、午前中で終わるって言ってたけど…」

 

「あ、そうなの?」

 

「…本当かどうか知らない」

 

「…千代……」

 

 母 仕 事 し て

 

 私は、この後…大洗に直行。お兄ちゃんに会うつもり。会って…色々聞く。

 今日の情報と、お兄ちゃんから聞かせてもらう予定の情報。その選別、判別。…考察。

 

「ふ~ん、まぁ…んじゃ私は、もう必要ないのね?」

 

「うん…ありがとう…ございました」

 

「どういたしまして。まぁお仕事だしねっ!」

 

 少し強く…頭を撫でる。ちょっと男の子に撫でる様なこの撫で方は…好き。

 

「あ~~…私はどうすっかなぁ~…思ったより早く終わったし…」

 

 カラカラと笑いながら、首を少し鳴らした。

 …あ、アズミの肩が少し跳ねた。

 

 

「…う~~ん。そんじゃあ~~…貴女達ぃ!」

 

 

「 は い っ ! ! 」

 

 

 おば様が、アズミ達に声を掛けた。

 

「ちょっと、アズミ…どうしたのよ」

「メグミ、アレじゃない? 家元呼び捨てにしてたから…やっぱりお偉いさんなんじゃない?」

「あぁ…アズミ、一緒にいたものね。どんな人か知ってるのね」

 

 それだけなのに…アズミの動きがおかしい…。

 どうしたんだろう。動きもキビキビし始めた。

 

「お酒好き?」

 

「……え」

「え? はい、まぁ…」

「たしなむ程度には…」

 

 …。

 

 …おば様…。

 

 

「そ? んじゃ、今回の打ち上げ込みで、飲み行きましょう。奢るわよ?」

 

「………」

「えっ!? 良いんですかぁ?」

「なによ、怖い人かと思ったら、いい人じゃない。そういえば、朝と喋り方違うわね」

 

「ん? どうする? 私この後、暇なのよ~……さぼる予定の事務仕事しか残ってなくて」

 

「行きます、行きます!! ごちそうさまです!!」

「どうしたのよアズミ。アンタも行くでしょ?」

「………」コレハ、シゴト。コレハ、シゴト!

 

「せっかくだし、それなりに良いとこ連れて行ってあげるわ!!」

 

「あ、やっぱりお偉いさん!?」

「正直、嬉しいです! この前…家元に合コン潰されて…」

「んぁ? 千代に? 馬鹿ねぇ~! 若い子の出会い潰すなんてぇ。今度私から言っといてやるわよ」

「っ!? やっ…やめ「 ホントですかっ!? すごっ! 話分かる人!! 家元、合コン否定は何ですよっ! 考え方、古くないですかっ!? 」

「ほんっっとに、そうなんですっ!! 私達、女子大だから…出会いが本当になくて…」

「 」

 

 …何言ってるか、良く分からない。

 

「別に本人達次第なのにねぇ~~。私の娘、今度結婚するんだけどねぇ? 合コンで相手見つけてきたみたいでぇ~」

「そうなんですかっ!?」

「お子さんいらっしゃるんですねぇ~」

「薄っっすい娘と、でっかい息子がいるわね」

 

 え? …涼香さんが、ご結婚?

 あの人も…おば様と一緒で、私を良くぬいぐるみ代わりにするから…ちょっと苦手…。

 

「息子さんっ!? どんな人なんですか!? いくつなんですかっ!?」

「バッ!!?? ルミッ! やめなさいっ!」

「あ~…息子? まぁ…ガタイは良いわね…まぁそれだけの脳筋だけど…年齢っても、高校生よ? 17の高二」

 

「紹介してくださいっ!!」

「あっ! ルミ、ずるい!!」

 

「 」

 

 ……。

 

 …………。

 

「んぁ~…別にいいけど…最近、なんか連盟のハゲ…あぁ、戦車道連盟の理事長ね? アレに妙に気に入られてねぇ~…なんかめんどくさくなるわよ?」

「お…男でっ!?」

「理事長に!?」

 

 …。

 

「わ…私、大丈夫ですっ! 2歳しか歳が変わりませんからっ! 年下っっ!! 私、年下大丈夫ですっ!!」

「わっ…私も!!」

 

「  」

 

 

「でもなぁ~…紹介するっても…」

 

「なんでしょうっ!?」

「なんですかっ!?」

「   」

 

 …コキッ

 

「貴女達、会った事あるわよ? 話した事もあるわよね?」

 

 

「え?」

「え?」

「    」

 

「って、いうか~~貴女達がうちの息子、前に拉致したって千代から聞いてるけど?」

「…ぇ」

「…ぇ」

「      」

 

「大洗学園にも行ったって聞いてるけど…尾形 隆史って…知ってるでしょ?」

「…ぇ…ぁ…は? い?」

「な…まさ…か……ひっいい!?」

 

 

「 ル ミ  」

「  」

 

「 メ グ ミ 」

「  」

 

「 オハナシ…シヨウ? 」

 

「 」

「 」

 

「待っ…待ってくださいっ!! しらなっ…知らなかったんですっ!!」

「そうですっ! 知ってたら…って、アズミッ! アンタ知ってたわねっ!?」

 

 …。

 

 ……。

 

 …はぁ~…もういい。

 

 おば様のあの言い方だと、多分分かっていての言い回しだろうし…。

 ほら…私を楽しそうに見てる。

 ルミとメグミから視線を外すと、二人とも逃げる様にアズミに食って掛かり始めた。

 

「酷いじゃない、アズミッ!! それでさっきから、妙に大人し…どうしたのよ」

「あの人…尾形 弥生さん…」

「なによ、いきなり。あの子の親って事でしょ? それが何が…」

「旧性…島田」

「…それが何よ…あの子も元・島田でしょ? そんなの…あ」

「……」

「……」

「  」

「  」

 

 …なにか…面白い位に、顔色がコロコロ変わってるけど。

 

「私ら…車外の血暴者の…ご子息…」

「 」コロサレル…

「 」カイタイサレル…

 

「あ、別に気にしてないわよ?」

「ひぃ!?」

「ひゃぁ!?」

「ヒッ!?」

 

 …おば様が、ルミとメグミの間で、肩を組んだ。

 あ…完全に怯えてる…。

 

「経緯は聞いたし…あ、そうそう。ヘリで搬送する時ね? せめて、簀巻きにして逆さ釣りするくらいしないと」

「」

「」

「」

 

「んじゃ、もういい? お店に予約入れないといけないし」

「ハイ…」

「ハイ…」

「ハイ…」

 

「あ、そうそう…せっかくだし」

 

 そう言って、おば様は携帯電話を服のポケットから取り出した。

 少し操作して…携帯電話を左耳に当てた。

 

「あ、出た出た。千代、今暇ぁ?」

「!?」

「!?」

「!?」

 

「ちょっと、今からアンタんとこの若いの3人と飲み行くのよ~…そうそう、その3人」

「えっ…ちょっ!? 尾形さん!?」

「ま…マジで家元、呼び捨てにするあたり…本物…」

「…私はさっき…その実力を生で見たわ…」

 

「 アンタも来なさい 」

「」

「」

「」

 

「は? 仕事? ふ~~ん……アンタ、よりによって、私に嘘をつくんだ。あ? パワハラ? 何言ってのぉ♪ …立場的にはアンタの方が上でしょ」

「あ…あの…尾形さん…?」

「お…恐ろしく冷たい声…だした…」

「…もう諦めよう…」

 

「………」

 

 あ、おば様が固まった。

 

「…良い事思いついた」

 

 あ、おば様が悪い顔をした。

 

「ねぇ、貴女達?」

「「「 はいっ!! 」」」

 

「千代の学生時代の話…聞きたくない?」

「「「 っっ!!?? 」」」

『 ちょっ…尾形さん!? 』

 

 あ…母の声が聞こえた。

 

『 行きますっ!! 行きますからっ!! 』

「いやねぇ…無理強いはしないわよ? 仕事なんでしょ? 社会人なら仕事を優先させなさいよぉ」

『 さっきと言ってる事、違いますよね!? 』

 

「あぁ、千代ね? やっぱり結構な箱入り娘だったからぁ~…黒森峰と合同合宿した時の夜ね? じつ…『 行きますから、余計な事言わないで下さいっ!! 』」

「あ、そう? んじゃ、何時もの…そうそう、接待とかに使う店ね? まぁ今回は私が出すわ」

「…携帯の奥から、家元の断末魔が聞こえてくる……」

「決めた…私、この人に逆らわない」

「物理的にも立場的にも…勝てる要素が見つからないわよね…」

 

 …もう、放っておこう。

 大人の言っている事は、たまに分からない。

 あ…そう言えば…分からない事が、一つあった。

 

「ねぇ、アズミ」

 

「」

 

「アズミ?」

 

「あ、はいっ! なんでしょう!?」

 

「あ、うん…あの男との会話で、一つ分からない事があったの」

 

「え…隊長がですか? なんでしょう?」

 

 そう…一つだけ。

 

 言葉の意味が分からなかった。

 

 

 

「 ビッチって何? 」

 

「  」

 

「ダッチワイ「 隊長っ!? 」」

 

「…アズミッ!? アンタ、隊長に何を教えてるのっ!」

 

 …どうしたんだろう。

 

 皆が一斉にアズミに対して、怒り始めた…。

 両肩を持って、ガックガックン前後に振っている…。

 アズミがあの男に言われて、怒っていたから、侮称だとは思うけど…

 

 

「あ~…愛里寿ちゃん?」

 

「え…はい。なに? おば様」

 

「彼女達も若い女の子だし…口にしたくないのよ。そういう類の言葉。…だから、貴女も人前で、その言葉を口にしちゃダメよ?」

 

「う…うん分かった」

 

 あ…やっぱりいい言葉じゃなかったのか。

 おば様が優しく教えてくれた。

 

「お…大人ッ! 返答が大人だっ!」

「流石、二児の母…その手の質問に慣れてるのね…あの…男の親だし…」

「隊長が素直に従ってる…」

 

 ネットで検索してみようと思ったけど…やめておいた方が良さそう。

 

 

「だから…そう言う事はね?」

 

 ん? おば様?

 

 

 

「 隆 史 に 聞 き な さ い 」

 

 

 

「「「  ・・・・・ 」」」

 

 

 お兄ちゃんに?

 

「あの子、そういう事に…すっっっ………ごく、詳しいから」

 

「詳しいの? 分かった」

 

 うん…お兄ちゃんなら大丈夫。

 聞く事増えちゃったけど、それはそれで楽しみ。

 

 …ん?

 

「…悪魔だ…悪魔がいる…」

 

「なんであのセリフを、微笑ましい笑顔で言えるのよ」

 

「え…私達、あの人とこれから飲み行くの? え?」

 

 

 

 …どうしたんだろう…青い顔して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ! 元気かねっ!?」

 

 

「……チッ!」

 

 

 殆ど車輛が、市街へと向かう映像を…一度見たら忘れられない顔が邪魔をした。

 光る頭っ!…に、まほちゃんの対応が…。

 

 

「まほ君…舌打ちは、ひどくないかいっ!?」

 

「……何しに来たんですか? 児玉理事長」

 

「いやぁ~…ちょ…ちょっと野暮用で…」

 

「暇人め」

 

「辛辣!?」

 

 …こ…ここまで嫌味なまほちゃんは、珍しい…というか、物凄く機嫌が悪くなった…。

 腕を組み…脚まで組んで、目に見えてイライラしてるぅ。

 

「あの…まほちゃん…ローズヒップが、怯えてるから…マジ怯えしてるから…」

 

 あ、はい。

 ローズヒップは椅子の後ろに回り…怯えた猫の様になっている。

 アレだね…部屋の角に避難するように…だ。

 

「隆史がつまらない事を聞くからだろうっ!!」

 

 …怒鳴った。

 うっっわ…此処まで露骨に不機嫌になっているまほちゃんは…ある意味で初めてだ。

 貧乏ゆすりまでしそうな感じ…。

 

「尾形君、ど…どうしたのかね? 助けてくれんかね?」

 

 いきなり来て、いきなり俺に助けを求めるな。

 

「まほちゃん、俺が理事長とここで会う、約束していたんだ」

 

「……」

 

 そっぽ向かれた…。はぁ~…参ったな…。

 

「ま…まぁ、先に用事をすませようか…ほら。頼まれていた物だよ」

 

 そう言って、USBメモリを差し出した。

 …戦車道連盟の家紋の様なマークが付いたメモリ。

 

「一応、公式に見れるものばかりだから、余り力になれないかもしれないがね」

 

「いえ、助かります。…では、俺もコレを」

 

 交換…と、ばかりに俺も胸の内側ポケットから、USBメモリを取り出した。

 

「…隆史、何だソレは」

 

 まぁ…目の前での交換だし…聞かれてもしかたがないけど…。

 こういった事に、ここまでハッキリと聞いてくるのは…相当頭に来てるの…か?

 ヒステリックなまほちゃんは、初めて見る…外聞すら投げ捨てて、感情的になってる。

 

「…いや…ちょっと」

 

「なんだ。私には言えない物か? …児玉理事長…ふむ。どうせ如何わしいものだろうなっ!!」

 

「違うよ!?」

 

 どうしたものかなぁ~…。

 

「いや…本当にどうしたんだね…? こんな彼女は初めて見るが…」

 

「あ~…はい。実は俺もです…」

 

 …。

 

 初めは、少し遠回しに聞いていみた。

 

 しかし、それでもすぐに眉を顰め…忌々しいと言わんばかりに顔を歪ませた。

 

 それでもぶっきらぼうに、ポツリポツリと答えてくれてたのだが…。

 

 何度か聞くと…。

 

「思い出したくもないのに……全く…せっかくの気分が、台無しだ…っ」

 

 …5回目くらいで…ブチ切れた…。

 

 とても分かりやすく…。

 

 ある意味でそれは、嬉しくもある。

 嫌いなモノを共有して安心感を得るのは、正直人としてどうかとも思うが…。

 まぁ…ちょっと正直に話してみるか…。

 

「このメモリはね」

 

「……んっ?」

 

「西住 歩が、俺に対して…戦車道連盟に出した提案一覧なんだ」

 

「隆史…に…? どういうことだ? なぜお前がアレと関わっている!!」

 

 そう…例の分家の事を、まほちゃんから聞いてみた。

 すでにしほさんには、ある程度聞いていたが…彼女の視点からのアレを聞いてみたかった。

 嫌っているというのは、しほさんから聞いてはいたが…ここまでか…と、今まさに実感中です。

 

「しかも…連盟に…だと? 一体、何を言っているっ!!」

 

 名前を聞く事すら、忌々しい…そんな感じで立ち上がり、俺を見下ろした。

 

「ん~…公式に出されたものだし…本人だからね? コレの閲覧は、私が許可を出したんだ」

 

 児玉理事長が、助け舟を出してくれたが、それはまほちゃんからすれば訳が分からないだろう。

 俺からある程度は、彼女に話していると踏んでの言葉か。

 …そんな理事長を睨み…その目のまま俺を睨む。

 

「…どういう事だ。説明しろ…隆史」

 

 あ~……。

 

 試合中なんだけど…ここで誤魔化すと、多分…まずいよなぁ…。

 

 …。

 

 ま…仕方ない。

 

 まぁ…あそこならば、問題はないだろう。

 アスファルトが踏み割れる音と、砲弾の音が聞こえる中…。

 名指しで来た事…あのゲームの後の事…。

 あの男が、俺に面談をしに来た話を少し掻い摘んで説明した。

 話を聞いている内に、段々とまほちゃんの顔が、怒ってくれているのか…赤くなっていく。

 …聞かせられない話…。ミカとの事…アレの西住姉妹への認識等は流石に言えなかったけどな…。

 

 …俺が真夏のアスファルト上に、携帯電話へ向かって正座した所まで…。

 

 

「ま…まぁ、そう言う事。な? 俺だって、さすがにどんな奴か聞きたくなるだろ?」

 

「……あの…屑め」

 

 …わー…。

 

 コレも初めてだぁ…吐き捨てる様に言ったねぇ…。

 

「…すでに私には、興味は失せたのだろう」

 

 …え?

 

「アレの考えそうな事だ! …奴の狙いは…みほだ」

 

 あの…まほちゃん?

 

「はっ…!! 下衆が考えそうな事だっ! どうせ「敗れた西住」より、「勝った西住」なのだろう! さらに…御しやすそうな…みほに鞍替えかっ!!」

 

 面談した時の話をしただけ…なんだけど。

 

 何か…物凄く納得していた。

 

 それに…みほ?

 

 迷う事もなく…ハッキリと断言した…。

 

「転校…か。みほから、お前を遠ざけたいのだろう。しかも、みほとお前の共通の友人を人質にして…お前の性格上、友人の話が本当だったのならば、お前はかなり動きが制限されたろ?」

 

「……」

 

 みほを優先するに決まっている。

 

 …決まってはいるが…アイツらを頬っておく…というも…多分、俺はできないだろうな…。

 何かしらするとは思う。だから制限されたという推測は…正しい。

 だから、まほちゃんの言葉には黙って応えた。

 

「……成程。だから隆史は私に、あの屑の事を聞いてきたのか」

 

「そ…そうです」

 

 あ…ちょっと怒気が和らいだ気がした…。

 納得してくれたのか…な?

 

「隆史…怒鳴って、すまなかった。ある意味で自衛の為だったのだな…」

 

「あ…はい」

 

「ならば…私も私で、少し…調べる。何か解ったらすぐに知らせる」

 

 す…すげぇ…。アッサリとした対応に驚くなぁ…。

 あの話だけで、殆ど把握したって顔だ。

 

「それに? どうせお前の事だろう? お母様にはすでに話してあるのだろうな!!」

 

 …あ、はい。懐かしい怒気に変わって嬉しいです…。

 

「…はぁ。聖グロリアーナの一年。悪かった…私が大人げなかった。だから…出てきてくれ」

 

「も…もう、よろしいのですの?」

 

 …。

 

 顔半分だけ、恐る恐る顔を出したローズヒップ…。

 まほちゃんの、この対応。うん…完全に戻ってくれたか…良かった。

 

「だが…今は、試合を…「 あれ? 尾形君の転校話は、正式に要請されるよ? 」」

 

 

 …。

 

 なんだと…?

 

「…どういう事だ」

 

「まほ君っ!?」

 

 漸く区切りが付きそうな話に、燃料投下しやがった。

 俺は何も聞いてないぞ? 正式…に? だ?

 

 いや…でもな…アッサムさんから聞いた話と、少し…違う。

 それに…話をある程度してある理事長が、こんな事言うのもおかしい…。

 

「さぁ…言葉を選べ……返答しだいでは…西住として…本気で私は動く…ぞ」

 

 あ…あかん。

 

 まほちゃんが、何かに覚醒しそう…。

 

 すでに年上に対しての敬語すら忘れてる…あの分家の事もあるから余計だろうな…。

 

 そして何故か俺は思いの外…冷静。

 

「なるほど…では、今ここで…正式に要請しようか?」

 

 更に…そんなまほちゃんに対して、何時もの様にビビると思っている理事長が…真顔?

 

 スッ…と背筋を伸ばし…真剣な顔で、俺に向き直した。

 いつもの変なおっさんじゃない。

 

「尾形 隆史君」

 

「え…あ、はい」

 

「君に「ベルウォール学園」への、()()()()をお願いしたい」

 

 …短期転校。

 

 ん?

 

 短期転校?

 

「実際、君が言われた通りでね…あの学園から要請が来ていたのも事実。…戦車道活性化の為に今は、あらゆる手をつくしたいのだよ」

 

「ちょ…ちょっと、待ってください? 短期転校…って、なんですか?」

 

 ここで理事長は、かたっ苦しい表情を崩した。そしていつもの様に…。

 

「まぁまぁ、簡単に言えば、一週間くらい他の高校で、戦車道体験っ! って感じだねぇ。夏の優勝校のマネージャー! その敏腕を振るってくれたまえ!」

 

「いや、体験って…それに俺は、別にマネージャーって訳じゃ」

 

「…実際的に、君の評価は凄いんだよ? まぁ家元との繋がりが一番目立つけどねぇ~だから余計だよね!」

 

「話が…見えないんですが」

 

「ふぅ~…ま、お上も必死なんだよ。あらゆる要因を取り入れて、どんどん戦車道を広めたい…ま、それは悪い事じゃないだろ?」

 

「………」

 

 ここで…まほちゃんが放っていた殺気が消えていたのに気が付いた。

 

「はぁ~…後は実績ですか?」

 

「ん?」

 

「お上…って言いましたよね? 連盟側としての努力って奴を、見せておきたいって所もあるのでしょう?」

 

「…まぁ…そうだねぇ」

 

「それ…やり始めたら、下手するとドロ沼化しますよ」

 

「ははは…分かっちゃいるんだけどねぇ?」

 

「戦車道連盟の理事長といっても…ある意味で中間管理職と立場は変わらない…ってとこですか?」

 

「…変に理解があるね…君」

 

 まぁ…うん。

 

「因みに、断る事は?」

 

「それは勿論可能だよ! 時期が時期だからねぇ…これもあくま自由意志! 教育の一環! って、意味もあるんだよぉ」

 

「…それなら返事は後日で構いませんか? 流石にすぐには決められませんよ」

 

「勿論だよっ! 受ける事によってのメリットも勿論あるからね! 良い返事を待ってるよ!」

 

 

 …しかし…短期転校って…そんな制度があるのか。

 

 

「はぁ~…まぁ、みほと相談した方が…いいよなぁ…ちなみに、メリットってなんですか?」

 

「戦車道連盟! その就職有利だよっ!? 私としては、寧ろ高校卒業したら君を、すぐにでもスカウトしたいくらいだよっ!!」

 

「はっはー! 素人の男子高校生に何言ってんですか~? どうせ俺なら、しほさん千代さんとか家元と? まほちゃんとかの、時期家元からの弾除けになるとか考えてませぇ~ん?」

 

 

「  ………………  」

 

 

 …。

 

 

「おい、こっち見ろハゲ」

 

 

「そっ…そもそもだね? 勝手に学生の意思を無視してでの強制転校とか、在り得ないだろう!?」

 

「いきなり話を戻すな。あの野郎の会話の話はしてねぇ」

 

「それにっ! 君が転校してしまったら、乙女の戦車道チョコの企画がダメになるだろう!?」

 

 …あ、それ、アッサムさんが言ってたな。

 そんなふざけた理由かよ…とかも思っていたのに…マジか?

 

「…因みに…何故ですか?」

 

「アレは君が、夏の優勝校の生徒! その要望!!! …というのが建前にあるお陰で、コスプレ衣装を通す事ができたんだよ?」

 

「おい、ちょと待て、初耳だぞコラ」

 

「その発案者である君が! 転校してしまったら企画倒れになってしまうじゃないかっ!!!」

 

「俺を発案者にするな!!」

 

「私は…ね? 恥ずかしい衣装を無理やり着せられて、恥ずかしがる姿を見るのがとても好きなんだっ!! しかもコレは合法だよ!? 合法!!」

 

「……」

 

「君は嫌いかね!?」

 

「………」

 

「こっちを見ようか? 何故目を逸らすんだい?」

 

「くっ…それにっ!!!」

 

「なにかねっ!? 話を逸らすのかね!?」

 

「俺の名前を出さないって約束でしたよねっ!? しほさん達に言いますよ!?」

 

「はっはっは!! 好きにするがいいさ!! ならば私は、そこのまほ君に全て話そうか!?」

 

「くっ…!!」

 

 

「死なば諸共だよぉぉ、きみぃぃ!!!」

 

 

「くそがぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

「「 ………… 」」

 

 

 

 

 

 

 …。

 

 ………。

 

 

 

 

「実際問題だよ? 尾形君は自身の事を考えないとダメだよ? 君の人間関係は特殊すぎるんだよぉ?」

 

「俺の人間関係?」

 

「西住、島田…両家元とプライベートにまで渡り懇意にしていて…現世代の各強豪校の代表格とも親密な仲だ」

 

「言い方が気になりますが?」

 

「これから発足されるプロリーグ。その第一世代の代表になり得る人物達との事だよ? しかも西住の者の…親公認の恋仲だ。良くも悪くも…君を利用とする輩は大勢出てくると思うよ?」

 

「どこぞのハゲみたいにですか?」

 

「…誰の事だね…とりあえず…だね?」

 

「なんすか」

 

「…まほ君に…なにか言ってくれないか?」

 

 

「………無理です」

 

 

 

 …正座…最近、良くするなぁ~…。この懐かしい殺気は、むしろ安心するなぁ~…。

 

 映像…見辛いなぁ~…執事服で正座は夢にも思わなかったなぁ~…。

 

「………」

 

 理事長に渡したUSB。

 

 誰と誰の写真の入ったデータだというのは、理事長も理解かっているのか…。

 

 俺と同じく拷問されても吐かないだろう…。

 

 

 …さて。

 

 そろそろ試合も終盤だな…。

 

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました。
次回から通常に戻ります

本編閑話アンケ。
その内に書きます。だから6月中まで。

1、尾形っ! ナンパ行こうぜっ!ナンパ!! え? 各高校連中が大洗にいる? …だから? は?編 

2、会長…お宅訪問編

3、なぁ…尾形…お前に客だ。お前に恋愛相談だってさ…あ? 知らんが…一年の…宇津木選手の彼氏だってよ編

4、蝶野式、人生は所詮…修羅場よ…ボードゲーム編

5、オペ子のお茶会

挿絵付き…の、予定

続・閑話アンケ

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