詳細は活動報告にありますが、非常に執筆が難しい状態です。
本来は今回の「その4」で終わらせる積りでしたが…余りにも投稿日を開けるのも申し訳ないので、本来の半分の文字数ですがと投稿にしました。
…絵を描くのは大丈夫なんや…。そういった訳で挿絵を何枚かと、ピクシブでみぽりんいじめる、アナザーifを何枚か投稿はしています。
本編…進めたいねん。安易に閑話を入れない方が良かったかも…。
そんな訳で菊代さん始動回です。
「…えぅっ!?」
喉から変な空気が声と一緒に出てしまった…。
真夏の熱い日差しの元、あまりにも不釣り合いな和風な日傘が目の間に…あぁもう、本当に鼻先にあった。
さぁ、選べ。
…と、かなり殺気が籠った声を出しながら、その長い脚…太股を見せつける様に伸ばし、向かい合って似たよう姿勢で座る、まほちゃんとミカ…。
特にミカさんや。…貴女、そんな人でしたか? 非常に分かりやすく睨みつけるまほちゃんに対し、口を上げ、微笑を浮かべているミカ。しかしその目は…完全に臨戦態勢。
すでに俺を見てもいやしない…。女としてのプライド…なのだろうか? よく見かけた、貴女方のお母様達の後継を在り在りと思い出させる程に…静かに睨み合っていますね…。
うん、まほちゃんもミカも…お二方、お母様方にソックリデスヨ。
「……」
その二人を前にして…うん、ぶっちゃけよう。
俺は逃げた。
中途半端に現実逃避し、変な言葉と感想を脳で考える…それが何時もの俺の行動。
しかし、そんな事をする余裕すらある訳がない。ただもう…本能に従い、逃げる。それしか俺に取れる行動は御座いませんでした。
もう一度言おう。
戦略的撤退とか何とか、下手な言い訳はしない。あぁ、俺はただ逃げただけだ。
こんな…下手なグラビアアイドルが裸足で逃げすようなプロポーションの二人から、贅沢すぎる選択肢を与えられたら…もう「逃げる」以外のコマンドが浮かび上がらなかったんすよ。
出るとこ出て、引き締まる所は、綺麗にバランスよい筋肉で引き締め…なんかもう…。
無理だろ、無理無理。下手にこの場に居続ければ、必ず何方かは、選ばざる終えなくなるのが目に見えていたからな…。
後々、まほちゃんに怒られるだろうが、今この場よりかは遥かにマシだろうて。
情けない事この上ないが、もう少し二人とも冷静な時ならば、俺にも対応ができますが、この状態の二人にはムリ。
ので…此方を見ないで、睨み合っている隙を見て、全力で彼女らに背中を向け、反対方向に全力疾走をかまそう! と、決めた矢先…。
…なんかどっかで見た、レトロな日傘が目の前に飛び込んできた。
それはこの砂浜、そして海では酷く場違いにも見える日傘…。
真夏の砂浜に不釣り合いすぎるコレを見た時…本能で察したのか、目の前に立つ人の全貌を確認しようと、その場で一歩下がってしまった…。
そして分かっちゃいたのに、全体像を確認する行動をして、俺は激しく後悔をした…。
日傘を上げ…隠れていた顔を見せ………いや…すぐに解ったんだ。そのウグイス色の…和装姿の女性…。
俺と目が合った瞬間、漸く気が付いたか? とでも言わんばかりに、何度も見た事がある温和な顔と口調で口を開いた。
「お久しぶりですねぇ~………隆史君」
「 」
ま…マジカヨ。
「お…久しぶりです…菊代さん…」
ちょっと前に、西住家でお会いしましたよね? とか…まぁ、色々とツッコミ処もあるのですが…それよりもだ。な…なんで此処におられるのでしょうか?
しかし、そんな言葉も出て来やしねぇ…。直感的にもそうだが、俺はすぐに解った。菊代さん…その今の表情が、彼女のご機嫌を物語っていた。
その見慣れた温和な笑顔…に、普通の方々ならば騙されるかもしれないが、ここでもう一つ。俺にはすぐに解った事がある。
「あら、私が此処に居る理由を、いの一番に聞かれると思っていたのに…少し残念ですねぇ」
「い…いえ…挨拶はちゃんとしないと…」
…。
………めちゃくちゃ怒ってる…。
これはまずい! …非常に不味い。
脳内にアラーム音が鳴り響く!
まずい!
この菊代さんはまずいっ!!
彼女は、何より誰よりも! …怒らせてはダメな人だ。
静かに怒る人だからぁ…。気が付く人は少ない為、後々に彼女を怒らせた人は大変な目を見させられる…。
…俺とまほちゃんは、彼女のこの状態には、結構簡単に気が付くのだけど、他の人が気が付いたのを見た事が無い。
しほさんは…まぁ、菊代さんが分かりやすい態度の時以外、気が付かないから…後から大体ひどい目にあったりしていた。
…付き合いが長いと、色々と大変だよなぁ…。
情報は武器だと、よくぞ言ったものだ。
…しほさんが、他人に知られたくはない事を、非常に付き合いの長い彼女は、知っている。
情報収集担当でもある彼女ですから? どこまで知っているかを、此方が把握できないのが恐怖だ。…と、しほさんは一度漏らしたな…。
「隆史君」
「っっ!?」
そ…その、彼女の陰から、ぴょこんと彼女が顔を覗かせた…。
「…書記」
「タラシ殿…」
「あらあら…顔色が大変………よろしいようですねぇ…隆史さん」
「…華、なんでそんなに笑顔なのよ」
……。
え~…と、うん。
前門の虎、後門の狼とはこの事か?
…。
逃げ道がねぇっっ!!!
何よりも何故、俺は気づかなかったっ!!! まほちゃんが居れば、近くに彼女達がいる事は簡単に予想できたはずなのにっ!
俺の図体で、こんな場所を走って逃げれば、いやでも目に入るだろうよ…。つまり…俺に逃げる事は初めから…。
…。
…詰んだ。
脚の力が抜け…崩れ落ちそうになる…。
「隆史君?」
「菊代さんっ!? なっ! …なんでしょう?」
相変わらず温和な口調だけど…油断しない…。あからさまに顔を近づけ、内緒話するかの様に小声で話しかけてくるっ!
一瞬声が上ずりそうだったのを、途中で修正…上手く普通の口調で喋れたはずだっ!
何に怒っているかは分からないが、余計な事をしない方が絶対に懸命だ…。言葉を選ぶんだ、俺っ!!
「みほお嬢様…と、そのご友人達。彼女達は今、水着姿でいる」
「そ…そっすね…」
な…何が言いたい!?
あんこうチームを後方に従えていたが、その言葉と共にスッ…とその場から体をずらした。
まさに、彼女達を見ろと言わんばかりに…。
「先日の全国大会で優勝を果たした彼女達は、現在この地元、大洗では大変、知名度を上げています」
「は…はい」
「物見遊山や好奇心もありますでしょう。しかし、何よりも魅力的な彼女達です。不埒な輩から声も掛けられる事もある…でしょう?」
「…ハイ」
「ですが、私の様に海水浴場で和服姿という? 無粋な恰好の保護者…的な人間が居れば、そうそう声を掛けられません…まぁ防犯ですね」
顔色を変えず…め…めちゃくちゃ早口で言い切ったな…。
「それが此処に居る私の理由です」
「」
違う…絶対に違うっ!! 無茶苦茶に無理があるでしょ、それっ!
熊本くんだりから、それのみの理由で…。
「…ですが? 本来それは、貴方の役目ではないでしょうか?」
「」
…ま…まさか…。
袖口で口をスッ…と隠し…俺にだけ聞こえる様に…小さく呟いた。
「…その隆史君が…まさか、その不埒な連中と同じ目的だとは………ねぇ? どうなんでしょ」
「 」
なっ…なっ!? 今朝決まった事だぞっ!? 林田がいきなり言い出した事だぞっ!?
この言い方はあからさますぎるくらいに、俺らの目的を知っての発言だっ!
本当に何しに来たんだ、この人っ!!
「では、隆史君。…せっかくみほお嬢様方が、水着姿なのですよ? 感想でも言って上げてください♪」
「 」
すっ…と顔を離し…薄目で有無を言わせない様に淡々と物事を進め始めた…。
俺に考える隙を与えない…そんな…。
「…先ほどまでと同じように…」
「 」
み…てたぁ…。
この口調は完全に今までの俺達の行動を…って事はっ!? 常夫さんの状態もこの人知っているんじゃないのか!?
…詰んだ仲間ができました…。
うっ…ぁ…。
「……女性に恥を掻かせるきですか?」
薄目の…その奥の瞳が…俺に拒否権を与えてくれない…。
なぜだ…何故他の皆も待ち遠しい様な目線で俺を見てくるんだ…。
…。
◆
「はっ!? なっ…なっ!? 今朝決まった事だぞっ!? 林田がいきなり言い出した事だぞっ!? なんで知ってんだっ!?」
「ぉう、中村。それと全く同じ事を、俺も思った」
横でガヤガヤしている中、ここまでの経緯を尾形から聞いていた。
「菊代さん曰く、西住流として、遠征先の情報を一番ふれっしゅ♪ …な、状態で確保するのは、基本中のキホンなんだそうです」
「西ず…っ!? 戦車道関係なくないかっ!?」
「笑顔で、ふれっしゅ♪…とか言われたら、何も言い返せませんでした…」
「……」
その尾形は、光が消えた目で、虚空を眺めながら、乾いた笑いを出している…。
いつの間にか正座になって、この炎天下…俺と尾形…並んで座っている。
何故正座か…? 決まっている…。
俺の目の前で仁王立ちになっている彼女のお陰だ。
「タカシもタカシだけど…そこの色男さんは、アリサから逃げて、な・に・を…してんのかしら?」
「」
…。
その一言で、自然とこうなったんだよ…。
それに釣られて、尾形もまた正座…。
「あ…あの…別に俺は、アリサから逃げてる訳じゃ…」
「…じゃあ、なんで毎回、私の顔見て逃げ出すのかしら?」
「 」
怖いからですよっ!!!
「…正直…貴方とは一度…本気で話をしないといけないと思ってたんだけどねぇ~…」
「そ…そうなんすか…」
「…えぇ、別段、貴方が一方的に悪いとは別に思ってないわ。でもね…寄りにも寄って…ナンパ…」
「 」
尾形っ! 助けてくれ尾形っ!! お前が言えば、多少和らぐ…。
「宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光…」
「何いきなり唱えてんだっ!!」
「はぁ…まったく。タカシもタカシで…大人に混じって何をしてるの…」
ケイさんはため息を一つ履くと…現状を確認するかのように周りを見渡した…。
俺、尾形…西住さんのお父さん。そして五十鈴選手と、秋山さんのお父さんと…野郎達が女性に囲まれて並んで正座…。
こんな絵面…注目を浴びない方が嘘だろうよ…。通行人達の奇異な視線が痛い…。
「元・お父様…よい歳をして…」
「まっ…待て、華っ!! そのハサミをまずしまえっ! どっから出したんだっ!?」
「一族の恥は一族の者が…」
「一族って、お前! また変な映画見たなっ!?」
いやぁ~…五十鈴選手…怖い怖いとは思っていたけど…すごいなぁ…。
「………」
「………」
「………お母さん、まだかな…」
「……っっ!!」
秋山さん…あんなゴミを見る目できたんだな…じっ…と見降ろして視線を動かしやしないな。
お父さん、完全に青くなっちゃってるよ。
「たいへんだなぁ~おまえら」
くっ! 林田が少し離れた所で、まったく感情のこもらないセリフを吐きやがったっ!!
何もかもが、お前のせいだろうがっ!
そして…。
「……………」
「……………」
「………」
「……………」
「……………」
「………あの…ま…ほ? みほ?」
「…みほ。この男性は、『何故か』…私達の名前を知ってるな。どこかで会った事があったか?」
「………お姉ちゃん」
「私は見た事はないが…なぁ…」
「あ…はは…は…」
「」
西住さんと西住選手…。その西住姉妹に見下ろされてるな…。
あのお父さん、昔はあんなチャラい姿ではなかったらしいし、しばらく会っても居なかったようだし…まぁ、久しぶりに見た父親があんな恰好では、当然の反応と言えば当然なんだろうな…。
『 オヒサシブリデス、旦那様 』
…あのお父さんの真後ろから…首を盗る様に呟いたあの和服の女性…。
全身硬直し、ギリギリと首を動かすしかない彼…西住さんのお父さんがその女性に向かい首を動かした時。そうだな漸く彼女を視界に入れられると思った瞬間…彼女が避ける様にその場から動いた…。
そして、後ろから娘さん方が姿を現し…いやぁ…一瞬意識が飛んだんだろう…白目を剥いちゃったな。
ま…まぁ…聞いた限りじゃ、本当に久しぶりに顔を合わせたんだろう…。尾形曰く、変わりに変わったらしい、このお父さんを見て…二人揃って真顔になったな…。
…。
姉の方は兎も角、西住さんって結構表情が豊かだから、急な真顔は結構な恐怖を感じた…うん、こえぇ。
しっかし…西住選手の方が、やばいなぁ…めちゃくちゃ見下ろしながら、蟲を見る目で見てるし…。西住さんは、そんな姉を宥めている様に話しかけている。
「ほら、お姉ちゃん」
「なんだ、みほ」
「お姉ちゃん有名だし…西住流も有名だから、「 知らない人が 」私達の事を知っていても、何にもおかしくないよ?」
「ふむ…そう言われてみればそうだな。ならば…コノ…コレは、ストーカーという奴か?」
「怖いねぇ」
「怖いな」
「 」
…。
きっつ…。
ツッコミ処が多彩だけど…きっつ…。
「ほら、中村」
「…なんだよ、尾形」
「あのふざけたコント続けろよ…」
「できるかっ!!」
◆
「…私は放置か? 隆史、少し悲しいぞ」
…。
「まぁまぁ、まほお嬢様。…私が責任をもってキッカリ…選ばせますので」
「…き…菊代さんが言うのならば、待とう…」
「そ…そうだね、ハッキリさせてくれるのならば、私も待つことにしよう…ヵ…な…」
…はい、やはり逃げられませんでしたね…次回予告が見えました…。
まほちゃんもやはり菊代さんの状態に気が付いている。素直にその言葉に従った…。ミカですら若干引いている。
…あぁ…もう、膝が砂浜の熱を吸って熱いっす。
「では、隆史君…すたんだっぷ♪」
「……はい」
膝から崩れ落ちた俺に向かって、菊代さんは立てと言う…。
この状態で…
「元気がありませんねぇ~……ねぇ?」
「はいっ!! 立ちますっ!!」
脚の筋が悲鳴を上げたが、強引に脚に力を入れて立ち上がるっ!!
脚っ!! いや、筋っ!! 悲鳴を上げたいのはこっちの方だっ!!!
「はぁい、やればできますねぇでは、どうです? 彼女達」
…と、立ち上がった俺に、流れるように言い放ち、視線を促した…。
その先、目の前にいる…華さん…。
目が合うと、少し笑ってくれたので、まぁ…うん。
そうだっ! できるだけ、今までの…何時もの俺で…そうだ堂々とするんだよなっ!
「ど…どうでしょう?」
いや…しかし…あの華さんが、ま…まさかの黒ビキニ…。
シンプル故、その破壊力を妙実に表している…。
「素晴らしいです」
「そ…そうですか…」
…。
いかんっ!! 林田達といた時の感覚まで蘇ってしまった!!
普通に…素直に言ってしまった…。
「…隆史君…華、見過ぎ」
「ちっ…ちがっ!!」
そんなに見てはいないのだけど、何故か沙織さんが横からクレーム…。
…。
というか…。
「なんつー奇抜な水着…」
「可愛いでしょっ!!」
…と、ぐっんっっ!! と胸が…すげぇな沙織さん。ワンピースタイプなのだが…歯車? 車輪? よくわからんマークが胸元にある。
その間から肌色が見えるのがまた…。
貴女、自分自身のスタイル分かってますかっ!?
「正直言いますと…可愛いかどうかは分かりませんが…素晴らしいとは思います」
「なんで敬語…ま…まぁ良いけど…。華と同じ感想ってのは、ちょっとふまーん」
不満…と、おっしゃる割に結構な笑顔ですね…。
いかんっ! こんな状況だが見入ってしまうっ!! 即座にバレない様に視線を逸らすと…その横のマコニャンに…。
「……なんだ」
目線を俺と逸らしつつ、しっかりと見てくる。
白いワンピース。これもまた、シンプルが故に……。
「わ…っ! 私は、学校指定ので良かったんだが、沙織が…」
…。
「マコニャン。それはダメだ。一定の大きなお友達が大喜びする」
「……なんだ、それは」
「多分、それには俺も含まれている」
「………キモイぞ書記」
…あ、はい。すいません。
「余裕ありますね、タラシ殿」
無いよっ!! 中途半端に現実逃避してるだけだよっ!
…って、優花里…。らしいっちゃらしいが…。
「なっ…なんですか…?」
「びくとりー優花里じゃない…」
「なっ!! あっ…当たり前じゃないですかっ!! あんなの人前で着れる訳ないでしょっ!?」
迷彩柄のスポブラタイプの水着…。
非常に健康的でよろしいのですが…結構いい腹筋してるんだよなぁ…ゆかりん。
「ヴィクトリー…」
「心底残念そうに………本当に余裕ありますね、タラシ殿」
ありませんよ?
「…隆史君」
「」
いつものノリ戻りそうだったのだけど、菊代さんがすげぇジト目で見てくる…というか、貴女が促したんじゃないですかっ!!
「…なるほど。暴れまわっているとは聞いていましたが…ここまで…矯正箇所を複数確認」
こ…怖い事をブツブツと…。
なんだろうか…この体の芯から湧きおこる恐怖心は…。
しかし…ある意味で俺が、彼女にここまでの恐怖を感じる理由が分からん…。確かにしほさんからすれば、ジョーカー的存在になるのだけど、俺にはそこまで…。
「隆史君?」
漸くとばかりに、俺の正面に立つみほと視線が合った。
ぶっちゃけた話、菊代さんとまほちゃん達が怖くて、彼女達をまともにその姿を見る余裕がなかった。
改めて見ると…みほ…ビキニを、よく着れたな…。恥ずかしがって着そうにないのになぁ…。
ぴ…ピンクのフリルが装飾のビキニ…。
…。
そういえば、此処に居る理由とか何やらを一切聞かれていない。ま…まぁ…まほちゃんが言ってしまった手前、サプライズは失敗に終わったので、敢えて黙っているのだろうか?
「ち…ちょっと…うん。がんば…たぁ…かな?」
がんばった…という時点で、見せてくれる気が満々だったのだろうなぁ。
俺にじっ…と見れら、後ろに回していた腕をくねらせ、少し体をモジモジさせ始めた。
…菊代さん…何処から出した、そのハンディカムカメラ。
まほちゃんもいつの間にか、携帯のカメラを向けてるし…。
「ど…うぅ?」
不味い…本当に俺は最近オカシイ…ここまで女性としての彼女達を意識した事なかったのに、最近じゃあ、年相応に胸が鳴ってしまうのが分かる。
というか、みほが直接俺に感想を聞くあたり…彼女もまた変わって…。
「 」
…。
恥ずかしがっていた、その羞恥心が最高潮に達したのか…腕を前に出して来た。
そして少し体を隠すように…腕に持っている…あぁ…も…持っている…ぬいぐるみをギュッと抱きしめた……。
…。
…海に…こんな所まで持ってくるとか、そういう事は置いておいて…なんていうか…。
そのぬいぐるみが…。
「ボ…コ…」
「…え? あ、うんっ!! 菊代さんにお土産で貰ったんだよっ!? 地域限定ボコなんだっ!」
…。
弾ける笑顔で説明してくれるみぽりん…。
悪いが…そのボコは…。
「最近、ボコの制作陣が活動的になってねっ!? 観光地とかの主に新幹線が止まる様な駅とか、各地域のご当地ボコのぬいぐるみが発売されているんだ!!」
「私、存在はもちろん知っていたんだけど、通販とかだとボコに悪いし、何よりもこういうのは現地で買わないとあまり意味ないよね!?」
「でもお土産で貰う分には正義だと思うのっ! だから菊代さんが買ってきてくれたのが本当にうれしくて、うれしくて、恥ずかしいけどすぐに開けちゃった!」
「ぉーう、みぽりん全開…」
「西住殿のハイテンション再びですね」
「とても可愛らしいと思いますが…」
「この西住さんは、長くなりそうだな」
「みほ…。だが、こうなる事を知っていて、ボコの話題を振った隆史が悪い」
「人は好きなモノを語る時は饒舌になるモノだよ」
…。
あぁ…知ってる…知ってはいる。というか、ソレは現地で見た…。
良くある特産物や有名人のコスプレとでもいうのだろうか? コラボ作品とも…。
楽しそうに…いや、嬉しそうに突き出したそのボコは…。
ウナギに脚から丸飲みにされた様に、ウナギの口から顔を覗かせているボコのぬいぐるみ…。
な…何故ソレをお土産に…確かに熊本からの道なりではあるのだけど…何故…。
「ふむ…因みに私にも、ご当地物だったな」
まっ…まほちゃんっ!?
「レトルトのお茶カレーという物だ素晴らしいありがとう菊代さん」
…声に楽しみが溢れて満載ですね…。
「私達も頂きましたよ」
華さんっ!? 何を…いや、何処のをっ!?
「うなぎ○イって凄いネーミングだよね」
「うなぎとパイって、全然イメージが結びつかないですよね」
「…美味しければ何でも良い」
「後で、私にも少し分けてくれないかな?」
「 」
駅で…なんか売ってた…。
変なネーミングだったので、何となく覚えいたのが悔やまれる…。
というか、ミカ…さりげなくねだるな。
「隆史君…ここ一年の貴方の行動を調べさせて頂きました」
「っっっ!!」
き…菊代さん…。
「主に…西住家と関係ない所での、貴方が大洗を離れた理由を…詳細に…ね?」
肩に…手が…あからさまに強く掴んで…
「…時に隆史君。彼女…恋人と呼べる方がいる男性が…」
…そして、耳元で語り掛けてくる…。
「理由はドウアレ…その恋人に内緒で、他県にまで旅行と言える行動をとる男性を…」
そのボコを指さして…。
「………どう、思いますか?」
「 」
◆
ケイさんに睨まれる状態で今度こそ完全に沈黙した中村の姿を見て冷静になれた…。なんか悪いな、中村…。
みほ達を「お土産」を使って懐柔し味方につけ…その「お土産」で俺に牽制を掛けて来た…。
こ…これが大洗に来た、本当の目的かっ!!
し…しほさんが菊代さんを恐れる理由が、本当の意味で今、理解したっ!!
本当にどこまで知っているんだ、この人っ!! 俺がエリリンと静岡に行った事は、誰にも言ってねぇのにっ!!
微笑ましい笑顔で自己紹介している、その後ろ姿が、恐ろしい何かに見えてしかたねぇっ!!
「まぁまぁ、皆さん。それ位にしておきませんか?」
もの凄くカオス渦巻く空気を…というか、その空気を運んできた菊代さんが、笑顔で中断させた。
…こ…今度は何を言う気だっ…もう、彼女が何を何に対しての発言をするのが怖くて仕方ないっ!
青森での俺が泥酔して、オペ子やノンナさんに対してやらかした事まで、なんか知ってそうで怖いっ! アレは流石にみほには言えない…っっ!
「折角の行楽地ですよ? なんでしたら私が皆さんの荷物番でもしますので…そちらの海にでも行ってきては如何でしょうか?」
《 …… 》
き…菊代さん…?
「私の本来の目的は…ソチラの旦那様に対しての要件と、隆史君に五寸釘を打ち込む為ですので、今しばらくは時間はありますので、楽しんできてください」
「 」
「 」
ご…五寸の文字はいらないと…。
というか、あっさりと本来の目的を吐いてくれましたねっ!
「…あの…き…菊代?」
あっ! 馬鹿野郎っ! 常夫さん、今の菊代さんに下手に声かけるなよっ!
「………なんでしょうか?」
「「…………」」
…ほ…ほら…路上の死にそうな羽虫を見る目で見られた…。
それにつられて、みほとまほちゃんまで…。
「君は…その…何にをしに来たんだい?」
「今、申し上げた通りですが?」
「いや…本当の事を…」
…まぁ…あの理由なら、冗談か何かかと思うのが普通…。だが、俺には解る。
アレは、 マ ジ だ 。
「具体的に申し上げれば、旦那様がお使いになられた、カード支払いの明細書を奥様に提示する為ですが、なにか?」
「ちょっ!?」
常夫さんや…あんた、ソコで慌てるって事は…何に普段使ってるんだ。
利用明細に如何わしい場所への支払いとか在る訳じゃないよな!?
これ以上、ややっこしい状態に持って行ってくれるなよ!?
「では…それはそれとして…」
これ以上、話す事は無い。…と言わんばかりに、露骨に視線を常夫さんから外した。
正座するオッサンを見下ろしながら、感情のない顔でハサミをチョキチョキ動かしている…ってこっちも大分来てますね…。
そんな華さんへと、体を向けた。
「五十鈴 華さん…は、えぇ、気持ちは本当に理解しますが、物理的な制裁はお勧めしません。こういった事は、裏から誰も知られずしなければ、本当の意味がありません」
「そうでしょうか…」
「はい。宜しければ、後日…色々と処理の方法を教えて差し上げますよ?」
「っ! お…お願いします!!」
「 」
…淡々と温和は口調ですげぇ事を話してるな…。オッサンの顔が本気の焦りで彩られていくな…。
何をどうお考えか知りませんが…一応は、この場を収めに…。
「えぇと…後、秋山 優花里さん」
え…優花里?
「はい?」
まさか振られるとは思っていなかったのか、素の表情で菊代さんに返事を返した。
よ…よかったっ! こちらは何時ものゆかりんのまま……
「お母様を呼ばれたみたいなのですが…。 コ レ が い る …場所に呼んしまわれるのはどうかと」
「はっ!! しまったっ!!! 怒りで我を忘れてましたっ!!」
き…菊代さんに…暗に…いや、ハッキリとコレ呼ばわれされた…。
それを言った瞬間、優花里が携帯を取り出して、電話を始めたね…。
何を慌てて…あ。
「…なんなかしら、この状況…優花里? ……アナタ…なんで正座してるの」
非常に大人らしい、落ち着いた花柄のワンピタイプの水着を着た、優花里さんママがいらっしゃいました。
「…お…遅かった…」
と、同時に何故か優花里さんの顔が絶望一色に染めあがった。
閲覧ありがとうございました