転生者は平穏を望む   作:白山葵

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青森編 第2話。完全オリジナル展開となります。


第3.2話~良い予兆と悪い予兆~

 雨の日だというのに、わざわざ先日の男に会いに行くと言う。

 カチューシャが行くと言えば私はついて行くだけです。

 

 そもそも場所は知っているのでしょうか?

 ただ、市場で出会っただけ。

 情報は、近くでバイトをしているだけだという事。

 帰り際、「あそこでバイトしている」と指を指されましたが、アバウトすぎてよく分かりませんでしたし…。

 

 先日の男がいる場所は、思いの外あっさりと見つかった。

 カチューシャが、周りの市場で働く人達に聞くだけで、すぐに判明したからだ。

 3人程に聞いてみましたが、特徴と年齢を言っただけで、即答気味に答えが返ってきた。

 

 …カチューシャは、やはり知らなかったようですね。

 情報を現地調達とは。

 

 教えられた店。

 そこは汚い店だった。

 看板も潮の波風で汚れて黒ずんでいる。文字すらとても読み辛い。

 店の明かりはついているが、本当に営業をしているのかと、疑ってしまう程の風体…。

 …カチューシャは躊躇せず、店のドアを開けてしまった。

 

 開けたドアの先。

 その中であの男は、すぐ目の前の席に座っていた。

 こちらを見て、呆けた様な顔をしていた。

 

「来たわ!」

 

「い…いらっしゃい」

 

 間抜けな顔をして返事をする男。

 カチューシャは特に気にもしない。

 ただ、嬉しそうに話しかける。

 

「今日は、タカーシャに報告があるわ!」

 

「…」

 

 私は、発言しない。

 ただ横で黙っているだけいい。

 

 特に話す事も無いし、何よりカチューシャが楽しそうだった。

 邪魔はしない。……が、苛つく。

 

「取り敢えず中へお入りください。…雨だし、寒いだろ?」

 

「そうね! わかったわ!」

 

 店内に案内された。

 狭い寿司屋というか居酒屋というか…10人程で満員になる小さな店。

 どちらかといえば寿司屋に近い内装だろうか。…まぁ、そんなに行った事もありませんが。

 

 午前4時の開店から、午前6時までの2時間がピークで、行列もできるそれなりに評判の店。

 そしてピークも過ぎた8時頃。短時間営業の為、一応客足も途絶えた為と、閉店して現在にいたる…と聞かされた。

 

「タカーシャの言った通りだったわ。実際に現場で見ていたら、ちゃんと出来る子が多かったの。結構驚く動きをする子もいたし…参考になったわ!」

 

「そっか、そりゃよかった」

 

「……」

 

 カチューシャは、プラウダ高校戦車道の一戦車の車長。

 

 事実色々と人間関係はスムーズになっている。

 目上の者に認められ、悪い気をするものは少ない。反発する者も少なくなった。

 

 ただ、この男より助言をもらった結果…というのが気に入らない。

 

 ……苛つく。

 

「ふっふーん! それに、ちゃんと来てあげたんだから、臆病なタカーシャは嬉しいわよね!? ねっ!?」

 

「まぁ、はい。嬉しいです。アリガトウ」

 

 前回、別れ際の会話を思い出す。

 …何が臆病だ。

 

 ただの軽口を、カチューシャが本気にしたとも思えないが、何故またこいつに会いに来たのだろう。

 この男に報告すると言っていたが、それは建前でしょうし…現に、すでに会話が終わってしまった。

 

 それも感じ取ったのか、それともこの男は、何も考えていないだけなのだろうか? 

 

 普通にその疑問を口にした。

 

「えーと、何? 俺の顔を見に来ただけ?」

 

「そうよ! 悪い!?」

 

 特に隠す事もなく、あっさりと本心を言ってしまいました。

 

 ……。

 

 カチューシャが、普段起きない時間に起き、朝食も摂らないでこの雨の中、会いに来たというのに…。

 何を間抜け面をしているのだ。

 

 この男…、爪を剥いでやろうか?

 

「悪くは無いなぁ。…素直に嬉しい。ありがとな、カチューシャ」

 

「と…当然よね! 存分にありがたがるといいわ!!」

 

 ……その言葉から、見るからに機嫌を良くするカチューシャ。

 

 ……イラツク。

 

「あ、そういえば二人共、飯食った?」

 

 「「?」」

 

 何だ突然に。

 

「まだ食べてないけど、それが何?」

 

「あー…よし! ちょっと待っていてくれ」

 

 座っていた客席から、カウンターの裏へ回った。

 調理場に入り、包丁を取り出して、調理の為だろうか? 食材を出し始めた。

 私達に朝食を振舞おうとでもいうのだろうか?

 

「……」

 

 特に、目立つような調理方法では無い。

 ただ魚を捌くだけ……その為か、すぐに目の前に、それは出された。

 

 生魚を捌いて、切って乗せてだけ…?

 何かタレだろうか? 液体をかけていたが…。

 

 海鮮丼?…と…味噌汁。

 

「これは?」

 

「タカーシャこれ」

 

「俺がさっき食ってた物と同じものを作った。今日客が少なかったから材料はあって…まぁ余り物で悪いけどな。俺なりの賄いってやつだ」

 

 これは、お椀か? 

 

 一応スプーンも出してある。

 私達の食事が、まだだということからなのだろうか?

 しかし……。

 

「余り物? …つまり残飯ですか!? それをカチューシャに食べさせようというのですか!?」

 

 客人に…カチューシャに対しての対応がこれかと……怒りを覚えた。

 

「ノンナ。これは賄いって言うんだって。前にタカーシャが言ってたわ。残飯とは違うわ!」

 

 カチューシャが、自慢気にフォローを入れてきた。

 何故この様な男に…疑問しか沸かない。いや、怒りも沸く。

 

「いいから食ってみろ」

 

 店主だろうか? 奥の……フスマ? とやらを開け、顔と口を出してきた。

 

「何か騒がしいと思って来てみりゃ、なんだタカ坊。友達か? 彼女か?」

 

「彼女が出来るほど要領よくないっすよ。おやっさん」

 

 これも軽口だろう。

 

 彼女……。背丈からして私の事を指しているのだろうか。

 

「いくらバイトが作った物でも、うちの店の食い物を残飯呼ばわりされちゃー、黙っちゃらんねぇ。いいから食ってみろよ」

 

「……」

 

 確かに失礼な話だったのかも知れない。

 

 一応この男なりに、気を使ってくれたのだろう。

 

 箸は苦手だった。

 

 …なるほど。確かにスプーンも用意してくれている。

 先程の発言は、一方的すぎて確かに失礼だったかもしれない。

 

 無言で、出された物を口にする。

 

「……美味しい」

 

「美味しいわ!!」

 

 …何故か悔しかった。

 

「礼を言うわ!」

 

 カチューシャが讚辞を贈る。

 これは珍しい…。

 カチューシャが、素直にお礼を言うなんて。

 

「違うだろ? カチューシャ。なんつって教えた?」ペチ

 

 そう言ってこの男は、カチューシャを軽くチョップした。

 

 

 

 

 …コイツ、ブッコロシマショウ。

 

 

 

 

 私が腰の後ろに手を回した辺りで、信じられない事が起こった。

 

 

「……わかったわよ。ぁ……ありがとう。とても…美味しかっチャ!///」

 

 …最後噛んだ。

 

 これは後で、日記に記しておこう。

 

 いや違う。ソウジャナイ。

 

 カチューシャの発言が、信じられなかった。…違う。

 

 この男の言う事を、素直に聞いたカチューシャが信じられなかった。

 

 

 「「 …… 」」

 

 …どうした。

 この男と、店主らしき男性が固まっていた。

 

「……タカ坊。真鯛が一本あったな?」

 

「……尾頭付きでいいっすね?」

 

 何だ? この雰囲気は。

 先程と違い真剣な顔をしだしたぞ?

 店主が、調理道具をカチャカチャと出し始める。

 

「カチューシャ。もっと美味いもん食わせてやる…。おやっさん。明日用に、蟹の下拵えも済んでますんで、それ使っても?」

 

「よし使え。中トロも残ってたな。握ってやれ」

 

 戸惑い始める。

 何だこいつらは。

 急に蟹だ、中トロだ、鯛だの。

 

「ノンナさん」

 

 奴に急に呼ばれて、不覚にも驚いてしまった。

 本当にこいつは、鯛を取り出し包丁を入れ、捌きはじめてしまった。

 

「ノンナさん、生魚ダメっすか?」

 

「いえ…。大丈夫ですが……」

 

 狼狽える。

 

 次々に出される「料理」を。

 先程の賄いも生魚を使っていはいたが、そんなにまだ食べていなかった為か、気を使って聞いてきた。

 聞いては来たが…。

 

 日本食に詳しくない私でもわかる。これは高い。

 刺身やら煮付けやら……。

 

「ふっ……金を心配してるのか? いらねぇよ……。これはただの「賄い」だ」

 

 妙に格好をつけてた主が、自慢気な顔をする。

 ドヤ顔と言うのだったか?

 奴はそれに答えるかの様に、無言で親指を上げている。何だこのテンションは。

 

「いえ…あの……」

 

 少し気圧されてしまった……カチューシャは、目をキラキラさせながらその調理をしている姿を見ている…。

 

 突然スパーーン!と、住居側と思われるフスマ?を開けて、女将らしき方が出てきた。

 

 突然の事で、視線が集中してしまう……が、ヌッと顔を出し…ただ一言。

 

「……あんたらの給料と小遣いから折半ね」

 

 スパーーーン!と閉めて戻っていった。

 

 

 「「……」」

 

 

 二人の顔色がおかしい。

 

 

「ノンナさん」「嬢ちゃん」

 

「……何でしょう」

 

 「「 好きなだけ食ってけ! 」」

 

 

 

 

 

 

 

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 ここの所、私はおかしい。

 

 情緒不安定というのだろうか?

 原因はわかってはいる。

 

 …あの男だ。

 

 カチューシャは、気に入った人物、認めた者にしか「あだ名」をつけない。

 特に自分の名を入れた「あだ名」をつけるのは滅多に無い。

 

 会ってから数時間程しか一緒にいなかった奴に、その「あだ名」を与えたのが信じられなかった。

 いくつか助言をもらった様だったが、それを何かは教えてもらえなかった。

 その助言のおかげだろうか? 

 

 …たった一週間で我が部隊が目に見えて変わった。

 

 今まで目立たなかった者。使えないと判断した者すら、再度取り立て編成を見直した。

 カチューシャは、そんな事は今までしなかった。考えすらしなかっただろう。

 しかし、たった一週間。

 

 たった一週間で、一部記録を塗り替えていった。

 

 そこからだろうか。

 

 カチューシャのあの男に対する、信頼度が跳ね上がったのは。

 奴には頻繁に会いに行くようになっていった。

 ヘリまで使い、着港日以外もたまに出向いていった。

 

 カチューシャは、戦車道の話まで奴にしていた。

 相談していた。

 

 その答えが、また結果を生む。

 

 部隊内からは特に不満は出ていない。

 適材適所に人員を配置。出かける度に新たな案を持ち帰る。

 

 記録も新たに塗り替え、しかも部隊員のストレスケアまでやってのけた。

 部隊内、部隊外でもカチューシャの人気が上がっていく。

 それは良い。それは良いのだが……。

 

 カチューシャが奴に、依存し始めていると思った。

 

 苛つく。

 

 ただイラツク。

 

 私の立つ瀬がない。

 奴がわからない。何者だ。あいつは。

 

 数ヶ月後、青森港の現場の人間との交流関係すら生み出した。

 青森港は、プラウダ高校学園艦の停泊地ではある。…が、地元の人間達とは特に交流は無かった。

 寧ろ、疎まれていたのではないかとさえ思われる。

 食品を扱う様な職場付近を、戦車で移動していれば…まぁ、良い顔はしまい。

 

 しかし、奴はカチューシャと共に私まで近隣に紹介し始めた。

 私達は目立つ。

 よく顔を出していれば必然と覚えられる。歩いているだけで挨拶までされ始めた。

 

 行く度に金銭も無いのに、ご馳走をしてくれる店もあった。

 カチューシャの…いや。あの男から「助言をもらって変わったカチューシャ」の人気が凄かった。

 

 ファンクラブとやらも、できたそうだ。それは納得しよう。ウン

 ……何故か私にもあるそうだ。

 その会員とやらには「睨んで罵って下さい」だの「踏んで下さい」だの言われる。

 それは気持ち悪かった。冷たくあしらうと何故か、そいつらは喜ぶ。どうしたらいいのだろう……。

 

 ……今の生活。

 

 青森港の行来と交流。悔しい事に私も楽しんでいた。

 

 そう…楽しいのだ。

 カチューシャが喜べば私はうれしい。

 それだけだと思っていたのに、その気持ちに気がついた。

 

 ……私は今の生活が楽しい。

 

 そんな気持ちの中…今年度の戦車道大会は、順調に勝ち進んでいる。

 順調すぎる。こちらの被害は、ほぼ無い。

 

 そして次は決勝戦。

 

 これも、あの男のお陰なのだろうか?

 あの男は、港の連中を引き連れて応援にも来ていた。

 

 またそれが、カチューシャと部隊の士気が上げる。

 あの男は今、ある意味参謀の立ち位置と同じだろう。

 

 部隊員の管理を裏でしている様なものだった。

 カチューシャからあの男への相談が「人」の扱い方だ。

 …また、それに的確に奴は答える。

 特に不平不満の解消が上手かった。

 しかし、作戦等には一切口を出さない。

 そう、余計な口出しはしない。「後は、カチューシャの領分だろう?」「当然ね!」と、この会話のやり取りは、何度も聞いた。

 …そうしてプラウダ高校は、更に強化されていった。

 

 カチューシャの奴への信頼と共に。

 

 私の何がダメだったのだろう。副隊長は私だ。あいつではない。

 あの男にできて、私には出来なかった。

 

 もうすぐ決勝戦だ。

 この気持ちのままでは、カチューシャに迷惑をかけてしまう。

 戦場で迷いはいらない。

 特に相手は、あの…黒森峰学園。

 

 排除…。

 

 そうだ…。

 

 問題を排除しよう。

 

 奴を調べさせよう。

 

 どんな些細な事でも良い。

 

 諜報部を呼び命令を下す。

 当然、不審に思うだろう。

 調査対象が、ただの男子高校生。

 港でバイトで働いているだけの男……何を調べろと?

 

 だが念の為だ。

 

 何かないか?

 

 生立ち、犯罪歴、何でもいい。

 

 あの男に、カチューシャを……トラレナイタメニ。

 

 

 

 

 

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 後日、諜報部が喜々として報告に来た。

「何故この男を調査対象に選ばれたのですか?」など、「良く見破られましたね!」

 そんな事を言われたが、そんな事はどうでもいい。

 

「いいから、報告書を見せてください」

 

 結果が早く知りたい。

 何故、諜報部が喜ぶのかと。

 

「…っ!」

 

 調査の結果…あの男は「西住流」の関係者だった。

 血は繋がってはいない。

 いないが、西住流本家の娘。あの有名な「黒森峰の西住姉妹」との幼馴染だった。

 

 今も頻繁に連絡はとっているとの事。

 ……幼少より戦車道も男ながらに学んでいたという事だろう。

 親も戦車道「西住流師範」…この親の事は、意外だった。

 

 なる程、戦車道に詳しいはずだ。

 ナルホド納得した。

 

 見つけた。

 

 見つけた。見つけた。

 

「ミツケタ」

 

 これが、何か突破口にならないかとほくそ笑む。

「西住流関係者」「黒森峰の関係者」「黒森峰の西住姉妹の内通者」……十分だ。

 すぐに行動に出よう。他にも情報はあったが、これだけで何とかなるだろう。

 カチューシャを取り戻せる。

 

「……」

 

 ……少し待て。

 

 不自然すぎる。

 

『なぜカチューシャに近づいた? 我が学園の情報を得る為?』

 

『黒森峰側のスパイだろう。西住姉妹と連絡を取り合っていた』

 

『しかし、あの男の行動や成果は、寧ろ黒森峰にはマイナスなのでは? 我が学園に、確実に利益をもたらしていた』

 

 調べさせた結果……あの男が更に分からなくなった。

 

 チグハグだ。

 

 利益が黒森峰には無い。

 

 では、あいつは……今までの事は、ただの善意だと?

 

「……」

 

 気持ち悪い。

 

 そして…怖い。

 

 あの男が段々と怖くなっていった。

 

 このままカチューシャが、本当に取られてしまう気がして、仕方がなかった。

 今のカチューシャは、あの男の言う事には、多分なにも疑問も持たないで、聞いてしまうだろう。

 

 ステラレル?

 

「……」

 

 …直接カチューシャに報告しよう。

 

 ありのままを。

 

 それで多少なりとも、不信感をもって頂ければそれで良い。

 

 それで十分な成果だろう。

 

 …そう思った。

 

 それが間違いだった。

 

「知ってるわよ?」

 

「……」

 

 なんですって?

 

「タカーシャと『黒森峰の西住姉妹』との関係でしょ? ちょこちょこ聞かれたわ。あいつらは、私から見てどうなのか〜? とかね」

 

「わ……我らの部隊編成や、そういった内部情報等を聞かれた事は……」

 

 ……

 

「無いわね。戦車の名前すら良くわからないみたい」

 

 ……

 

「タカーシャは、あの姉妹が心配だって言ってたけど…。あの悪魔みたいな奴らの何を心配するってのよ……」

 

 ……

 

「連絡を取り合ってるのも知ってるわよ? 勿論。そもそも昔の知り合いと、連絡取ることの何がおかしいのよ」

 

 ……

 

「ただ決勝戦の相手だからって、この時期は暫く連絡を控えるって言ってたわね。気にすること無いのにね」

 

 ……

 

「ノンナ? ちょっとノンナ? どうしたの?」

 

 

 そのまま返事もしないで部屋を出て行く。

 

 自室に戻り、携帯を取り出す。

 

 

 

 もういい。

 

 

 

 

 

 

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『バイトが終わった後でもいいですか?』

 

「構いません。そちらの都合に合わせます。少々お聞きしたい事があるだけですので」

 

 あの男の携帯番号は教えてもらっていた。

 次の日のアポを取り付ける。

 

 分からない。

 

 もう分からない。

 

 ……直接本人に聞いてやる。

 

 停泊中の学園艦から抜け出す。

 勿論カチューシャには内密に。

 

 早朝、早めに支度をする。カチューシャはまだ寝ているだろう。

 艦内を通り、そのまま陸へ続く階段へ。

 

 その階段下に、あの男を見つけた。

 

 おかしい。

 

 まだ、あの男は働いている時間なのでは?

 不審に思いつつも、階段を下り陸へ上がる。

 

 ……すでに見慣れた風景になってしまった。

 

「早いですね」

 

「まぁ、そういう日もあるんですよ。魚が取れなければ、客足も途絶えるってね」

 

 いつもの軽口だ。

 この男は、見た目と違い愛想がいい。その愛想もただ苛つく。

 特に急いだ様子もない。本当に早めに終わったので、ここで待っていただけなのか?

 

「貴方に、お聞きした事があります」

 

 階段を下り、早々に話を始める。

 極めて冷静に、話しを切り出したつもりだった。

 

「貴方の目的はなんですか? 何故カチューシャを…プラウダ学園に有益な事ばかりするのでしょうか? 貴方は黒森峰の人間では無いのですか? 西住姉妹に情報を渡す為でしょうか? しかし、貴方のお陰でプラウダは強くなりました。黒森峰に有益な事は何も無いのでは? 貴方の助言もおかしい! あそこまで的確に、見てもいない隊員のメンタルすら、ある程度把握した助言は異常でした! 何がしたいのですか!? カ…カチューシャをどうしたいのですか!!??」

 

 言葉が溢れてくる。

 会話の順序も曖昧だ。

 しかし聞かなければ、私の心が持たない。

 

「ちょっ! ちょっと待ってください! まくし立てないで下さい! …何が言いたいのですか?」

 

 気がついたら男の胸ぐらを掴んでいた。

 私の両肩に男の手がある。

 

「…私は貴方が嫌いだ。…気味が悪い」

 

 もはや顔すら見ていない。

 

 自分の手元に、自分自身の顔がある。

 

 声すら上手くでない。

 

 そして…やっと絞り出した言葉が……。

 

「カチューシャを……私から奪わないで…下さい……」

 

 涙声になってしまった。

 

 男は動かない。

 

 困っているのか、固まっている。

 

「まず俺に、特別な目的なんてありませんよ。カチューシャが頑張っている。だから応援する。それだけですよ? 後、俺は別に黒森峰の人間じゃありませんよ。そもそもあそこは女子高でしょう?」

 

「しかし、貴方は西住姉妹の!」

 

 男は黙る。

 カチューシャは関係を知っていた。

 

 だから何だ。

 

「あー……これは、真面目に答えないとダメだな……。場所を変えていいですか? こんな場所でする話じゃないんで」

 

 ……やはり何かあるのか?

 何でもいい…何処へでも行ってやる。

 

 この男の言う通りに、場所を人気の無い所へ移した。

 

 港の外れ。荷物や資材が置かれている場所。

 溜息をし、仕方がないとばかりに、話し出す。

 

「まず、西住姉妹との関係……。まぁ…俺らの出会いからですが」

 

 出会いなんてどうでもいい。

 この男の目的さえ分りさえすれば……そう思っていた。

 

 黙って聞いた。

 

 黙るしかなかった。

 

 この男が熊本へ引っ越し、西住流本家へ挨拶へ行った時の話。

 初めての土地で迷い、姉妹に出会う。

 暴漢との対峙、結末。

 小学生から中学へ上がり、ここ青森へ越してくる迄の経緯。

 

「……」

 

 異常だ。

 

 この男は異常だ。

 

 その話が本当だとするのならば、小学生で取る行動ではない。

 

 何故そこまで出来る。

 

 見知らぬ子供の為に。自己犠牲もそこまで来ると恐ろしい。

 

 この男の根底がソレか…。

 

「あんまり人に喋る内容ではないのですけど、包み隠さず話さないとノンナさん怒りそうですしね。まぁこんな所ですよ」

 

「……」

 

「俺はただ…あいつらが心配なだけですよ。みほ……妹の方ですけど、特にメンタル部分がちょっと心配でしてね。事件後のトラウマというか……ある部分に異常に反応するんですよ。だから、カチューシャに戦車道の試合とかで会ったり、見聞きした事があったら様子を教えて欲しかっただけです」

 

「メンタル…そう言えば、部隊員の扱いが異様にうまかったのは?」

 

 男は苦笑して答える。

 まるで思い出したく無い事を思い出すみたいに。

 

「あれは……。まぁ、昔の俺の立ち位置に似ているなと思っただけですよ。不平不満を持つ者は、最悪態度が腐ってくる。カチューシャから部隊員の態度の愚痴を聞いていて分かったのですけど、そこからアドバイスしただけです。能力が評価されない。まともに見もしないで見切りをつけられて飼い殺しにされる……そりゃ不満も持つのも当然だろってね。結構、第三者から見ればわかりやすい物ですよ。そんな大した事してません」

 

 おかしい。

 こんな答えを聞きたいわけではない。

 

 ヤメロ。

 

「これは戦争じゃない。戦車道の試合です。スポーツ? とは違うのかな……。ただ純粋にカチューシャを応援してやりたかっただけですよ」

 

 ヤメロ。

 

「港の連中と応援に行ったのだってそうですよ。すっごいですよ? カチューシャ人気。まるでアイドルだ」

 

 ヤメテ。

 

「だから…別にカチューシャを取ったり、奪ったりする気なんて毛頭無いですよ。ですから……」

 

 ……何が言いたい。

 

 放っておけと? カチューシャは貴様に惹かれている。

 

 何も出来ない。結局この男に奪われてしま……。

 

「そんなに「嫉妬」しないで下さい。カチューシャは、ノンナさんにある意味、ベタ惚れですよ?」

 

 ……

 

 …………

 

 嫉妬?

 

 顔を上げる。

 

 この男の顔を、初めてしっかり見た気がする。

 

 その男は笑っていた。

 

 困った顔をして笑っていた。

 

「カチューシャは、貴方をちゃんと見ていますよ。貴方の前だから言わないだけです。電話で話す時、8割は貴方の自慢ですよ。ノンナはすごい。ここが俺とは違うって、得意げにね」

 

 ……嫉妬。

 

 これが嫉妬。

 

 ……そうだ。私はこの人に嫉妬をしていただけだ。

 こんな感情は初めてだった。

 

 嫉妬……。

 

 普段なら反発していたかもしれない。

 

 関係無いと。誤魔化すなと。

 だけども……納得してしまった。

 それまでの彼の行動が、ソレを証明していた。

 

 そう・・この人は、本当に善意で動いていただけだ。

 

 黒森峰も関係ない。カチューシャを見ていてくれていた。

 励ましてくれた……支えてくれていた。

 

「……ッ」 

 

 急に恥ずかしくなってきた。

 

 ここまで思いつめて、呼び出してまで詰め寄って。

 冷静に考えれば分かった話ではないのか?

 

 いや待て、ここで冷静になると余計に恥ずかしくなる。

 余程の詐欺師でもない限り、二心ある人があそこまで親身にするだろうか?

 わざわざ他県にまで試合の応援に。しかも団体を引き連れて……。

 

 顔が熱くなる。

 

 何をしているのだろう私は。

 

 この人はいつも味方だった。

 

 この人は恩人だった。

 

 カチューシャを……プラウダ学園を強くしてくれた。

 

「あぁ後、すいません」

 

 なにを謝る?

 

 この場合、謝るのは私の方なのに。

 

「先程俺の事、嫌いと仰りましたが……」

 

 しまった。

 

 素直に言葉にしてしまっていた。

 

 しかし今となっては、どうすることもできない。

 

「ですから、すいません。俺は結構好きですよ? ノンナさんの事」

 

「……」

 

 ……何を言っているんだ。

 

 私はただ憎しみのみで、この人を見ていた。

 何をするにも、裏があると決めつけて……。

 

 そんな私の何が良いのか。

 

「カチューシャにベタ惚れなのは目に見えてわかるし、間違ったらちゃんと嗜める。しっかりしてますしね」

 

 やめて……。

 

「カチューシャからかったり、チョイチョイ黒い部分も見えますけどね?」

 

 やめて下さい。

 

 耳まで熱くなってきた。

 

 

「いいんじゃないんですか? それはそれで可愛くて」

 

 

 

 

 ……もう駄目だった。

 

 

 

 

 

 

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「ご迷惑をおかけしました…」

 

「いえいえ。誤解が解けて何よりです」

 

 多分、私は耳まで赤くなっているだろう。

 素直に謝罪しよう。

 後、一つ聞いておきたい事ができた。

 

「タカシさん。一つ、お聞きしてよろしいですか?」

 

「何でしょうか?」

 

「今度、戦車道大会決勝戦が行われます。ご存知かと存じますが、決勝はあの…黒森峰学園です」

 

「…はい」

 

「貴方は、どちらを応援するのでしょうか?」

 

「……」

 

 そう。これを聞いておかなければ。

 まもなく行われる決勝戦。

 

 蟠りもなく、ただ疑問に思った。

 隆史さんの判断を聞きたかった。

 

「あー……卑怯な言い方かもしれませんが、どっちの応援もしますよ」

 

 やはりそうか。

 

「何事も無く、無事に終わればそれで良いです。プラウダが勝てば一緒に喜び、黒森峰が勝てば讚辞を送る……」

 

「フフ……卑怯者ですね」

 

 カチューシャが、この人を気に入った理由が、何となくわかった。

 あの方はさすがだ。

 

 ただ私が、至らなかっただけだ。

 

 \Выходила на берег Катюша~♪/

 

 私の携帯から着信音が流れてきた。

 

 画面を確認すると、カチューシャからだった。

 もう起床されたのかと思ったら、あれから結構な時間が経過していた。

 

「出ても?」

 

「はい。どうぞ」

 

『ノンナァ! 今どこ!?』

 

「はい? 港におりますが」

 

『やっぱり……。そこにタカーシャいる!?』

 

「え? はい。いますが?」

 

『何やってんのよ、あんた達!! すごい噂聞いたわよ!?』

 

 ……。

 

「すみません。良く聞こえなかったので、もう一度お願いします」

 

 通話をスピーカーに切り替える。

 

『何やってんのあんた達!!すごい噂聞いたわよ!?』

 

 綺麗に言い直しましたね。タカシさんが、何事かと近づいて来ました。

 一緒に聞きましょうか? 何やらあったようですし。

 

『ノンナ! 学園艦降りた先で、いきなり男に寄りかかって、そのまま肩抱かれて、人気の無い所に一緒に行ったって、噂が立ってるわよ!!』

 

 ……先程の件ですね。

 

 そう見えたかもしれませんね。下船元であれは誰かに見られてもおかしくないですね。

 迂闊でした。

 

 胸ぐら掴む…が、寄りかかる。

 胸ぐら掴んだ私の肩に手を置くタカシさんが…肩を抱かれる。

 

 なる程、少し誇張されてますが。

 

『男ってタカーシャの事でしょ!? 何やってんのーーー!? どういう事ーーーー!!??』

 

「……あれかぁ。ノンナさん、色々情報が間違ってますが……誤解を解きましょうよ」

 

『タカーシャ、携帯の電源切ってるし!! 出ないの!! 貴女が説明しなさいよ!!』

 

「あ、忘れてた!」と、自身の携帯を確認されてますね。

 

 ……ふむ。

 

「カチューシャ」

 

『何よ!』

 

「大人には、色々と秘事と言うものがあるのですよ」

 

『「!?」』

 

「カチューシャには、まだ早いかもしれませんが…詮索は無粋ですよ? ねぇタカシさん?」

 

「うぇ!?」

 

『タカーシャ!? 声聞こえたわ!! 代わりなさい!! 説明ーー!!』

 

「ではカチューシャ。私はもう少しここに、タカシさんと居りますので。До свидания~」

 

『ちょっ! ノンナ!? ノン』ブッ

 

「……あの、ノンナさんや」

 

 タカシさんが青くなってますね。

 

 貴方は、黒い私も可愛いと仰ってくれました。

 

 では……

 

 

 

 可愛い私を見てもらいましょう。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 全国戦車道大会 決勝戦。優勝校は「プラウダ高校」

 

 そう。

 

 カチューシャ達の勝利に終わった。

 

 フラッグ車を仕留めたカチューシャが、MVPとして取り上げられていた。

 ……あれは、みほの戦車だったな。

 みほはフラッグ車に乗っていた。車長か~。出世したもんだね。

 ……崖を移動中、川に落ちてしまった同部隊の車両を、救出に飛び出してしまった。

 

 車長が戦車を飛び出してしまい、棒立ちになったフラッグ車。

 それをカチューシャが撃破……勝利した。

 

 カチューシャ達にはお祝いの電話。こういう事は、直接言ったほうがいい。

 興奮して「当然よ!」って燥いでた。絶対ドヤ顔だったな、ありゃ。

 

 しかし、みほには連絡がつかない。

 電話とメールのどちらも音信不通だった。

 まほちゃんは、連絡がつくにはついたが、話がまともにできない状態だった。

 

 どうしたものかね……。

 

 ノンナさんには、難しい顔をされた。事情を知っているからだろうか。気を使わせてしまった。

 カチューシャでさえ、俺の前では黒森峰の話は出さない。あの雑誌を見たからだろうか。

 

 月刊戦車道の臨時刊。

 

 今回の試合の経緯が書かれていた。

 

 ……酷かった。

 

 みほに対する記事も載っていたが、中傷しか書かれていない。

 しほさんのインタビュー記事。

 

 ……久しぶりに本気でキレてしまった。

 

 本を破り、燃やして捨てた。

 

 俺にとって後味の悪い大会になってしまった。

 優勝ムードがすごく、港で軽いお祭り騒ぎになっていた。

 

 各店セールや割引合戦が起こったが、バイト先では事情を知っているおやっさんは、それに参加しなかった。

 色々気を使わせてしまっている。本当に申し訳ない。

 それから何ヶ月か経過。俺の学年も一つ上がって高校2年生。

 

 みほと…まだ連絡が取れない。

 

 

 

 

「……」

 

 いつもの様にバイトも一段落つき、店先の掃除をしていた。

 

 競りが終わり、片付けをしている競売所。

 ボケーとそれを眺めていた。

 

 どっかで見た光景だなーって思っていましたよ。

 なんせ2回目だもの。

 

「……またか」

 

 オレンジがかった髪が綺麗な女の子。

 中学生くらいかな? 多少幼く見える。

 

 だがマグロはいない。

 ただ業者が右往左往しているだけだ。

 えらくオロオロしてるけど……どこかのお嬢様っぽいな。

 

 しょうがない……。

 

「お嬢さんどうした? 迷子か? ここ結構、危ないぞ?」

 

 カチューシャの時と同じセリフを吐く。

 

 さぁて、また睨まれるか?

 

 ビクッ「ヒッ!」

 

 ……怯えられた。

 

 大丈夫だよ~、おっちゃん怖くないよ~。

 

「……あの、俺が怖いなら誰か、女の人連れてこようか? 嬢ちゃん迷子だろ?」

 

「あ…。いえ、すみません。場所を探してまして。…ここら辺に「魚の目」ってお店が、あるはずなんですが……」

 

 あら。どこかで聞いた名前のお店ですね。

 

「それ、俺の働いている店だよ。ほれあそこ」

 

 指を指す先に出ている看板。

 

 ごめん…汚くて読めなかったか?

 

「あ……気づかなかった……」

 

「でも、もう閉店してるよ。また明日来てくれ」

 

「いえ、人に会いに来たんです。え~と「尾形 隆史」さんという人に。ご存知ですか?」

 

 こんないいトコのお嬢様の知り合いはいない。あ、西住姉妹も一応、いいトコのお嬢様か。

 

「……俺ですけど」

 

 隠す意味もないので、素直にそれにお答えしましょうか?

 

「えぇ!? あの高校生ってお聞きしたんですが……」

 

 この子は純粋に、俺の心を抉ってくるな……。

 

「はい。そろそろ私17歳になります」

 

 はっと、彼女の顔が赤くなり、何度も頭を下げられた。

 

「もう慣れてるから気にしないで。んで? 俺に用件って何でしょう?」

 

「あ、はい。これを……」

 

「……」

 

 何だろう。

 すごい豪華な便箋だけど、本当にわからん。なんだこれ。

 

「ダージリン様よりお茶会の招待状です」

 

 誰? 知らない。え?

 

「誰ですか。知らない人について行っちゃいけませんって言われてるんだけど。こんな顔だけどね」

 

 良かった少し笑ってくれた。

 緊張がこちらに伝わるほどガチガチだったものな、この子。

 

「まぁいいや、ここで話す話じゃなさそうだ。店の中で話そう」

 

「あ、はい。すみません」

 

 …ホイホイ素直についてきたけど…危うすぎる……。

 俺が人拐いならどうするつもりだ。

 というか、市場っていつから幼女拾える場所になったんだ……。

 

 店に案内する。

 ガラっとドアを開け、真ん中の席に座らせる。

 さてと、どうしたもんかね。この店の雰囲気に合わなすぎるよ、この子。

 んー…。

 取り敢えず餌付けでもしとくかね。

 

「お嬢ちゃん、もうすぐ昼飯時だけど食った?」

 

「え? あ、いえ」

 

「じゃあ、ついでに何か食ってきな」

 

「あ、いえ結構ですよ! お金も持っていませんし!」

 

「賄いで好きに食っていいんだよ。自分で作る分なら、一人も二人も手間は変わらないから。奢るってのも変だけど、何か作るよ?」

 

「でも……」

 

 どうしよう。相手はお嬢様っぽいし。時間も無いかも知れない。

 

 んー。

 

「じゃあさ、これでも食べてって」

 

 彼女の前に小さなカップとスプーンを置く。

 

 手作りのプリンだ。

 

 おやっさんに何か新しいメニューを考えろって言われてた時

 何かアンバランスなものを、ジョーク商品で作ってやろうと拵えてみた。

 甘いものが出るのが珍しいのか、一番人気になってしまった商品だ。

 

「プリン……」

 

「あー、俺が作った。試しに売りだしたら人気が出てね……俺が作ってるのがわかったら、それが珍しいのか雑誌の取材まで来てさ。すぐ売り切れる人気商品になってしまったプリンです」

 

「尾形さんが、このプリンを?」

 

「気持ち悪いかも知れませんが、味は保証します。どうぞご賞味あれ」

 

 恐る恐る食べ始めるお嬢様。

 

「……美味しい」

 

「だろ?」ドヤァ

 

 やはり女の子だ。甘いものはすっごい集中して食べている。

 暫く黙っていよう。ニヤニヤ見つめてやろう。

 

 不審者みたいに。

 

 ニヤニヤ

 

「あ、あの何でしょうか……?」

 

 気持ち悪がれらた。スンマセン。

 

「こう自分が、作ったものを旨いって食べてもらえるのは、うれしいもんだよ。お嬢さん、食べてる時が何か、小動物見たいで可愛いし」

 

「じょ…女性の食事を見つめるなんて、失礼ですよ!///」

 

 赤くなって抗議してくる。

 

 あー…いなかった。

 

 ここまで癒してくれる女の子。

 俺の周りにはいなかった。

 

 癒されるわー。

 

「それに、お嬢さんはやめてください。私高校1年生です」

 

 ……見えねぇ。

 

「あ、失礼しました。そう言えば、自己紹介もしていませんでした」

 

 食べ終わったカップを置き、姿勢を正す。

 

 

「私、オレンジペコと申します」

 




はい。閲覧ありがとうございました。
ノンナさんは、希に熱いクーデレデス。

あぁ誤字が怖い。

※追伸※
次回、過去【青森編】終了予定でしたが、雰囲気と尺の関係上後2回としました。

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