転生者は平穏を望む   作:白山葵

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青森編 第3話。完全オリジナル展開となります。


第3.3話~日常の中でお茶会を~

 聖グロリアーナ女学院 学園艦。

 

 現在、学園艦自体のエンジントラブルの為、青森港に緊急着港しているそうだ。

 結構深刻な状態の様で、復旧はいつになるか分からない。

 

 その学園艦。

 

 戦車道総隊長…ダージリンさんから、お茶会とやらに誘われた。

 面識は無い。

 名前も初めて聞いた…何で名指しで、俺なのだろう。

 

「プラウダ高校の、カチューシャ様をご存知ですよね?」

 

 オレンジペコと名乗る女の子…ニックネームか?

 

 …長い。

 その女の子から、カチューシャの名前が出た。

 

「ダージリン様と良いお付き合いをさせて頂いているのですが…前回の戦車道大会優勝後にお茶会を開いた際にですね? 随分と自慢をしていらしておりまして…」

 

「自慢?」

 

「はい。尾形さんの自慢話を、散々聞かされました…。それはもう…すごいテンションでしたよ?」

 

「…」

 

 何してんのカチューシャ。

 俺、関係ないじゃん。

 確かに口出しをした事はあったけど、たいした事してないじゃんよ。

 

「それに若干イラつ…いえ。興味をもたれたダージリン様が、お会いになりたいと…」

 

 興味本位で呼ぶとか…暇なのかねぇ? お嬢様は。

 

「しかし、ノンナさんが良く黙っていたな。俺の話の事なんぞ、途中で止めてくれそうな感じだけど」

 

 ノンナさんはカチューシャに激甘だけど、嗜める所はしっかり嗜める。

 どんな会話内容かしらんけど、部外者を引き合いに出すようなら止めてくれると思うのだけれど。

 

「そこですね」

 

「何が?」

 

「その「あのノンナさん」が、すごいキラキラした目で、終始頷いているものですから。ダージリン様が…これは珍しいと、興味を強められました」

 

「…ソウデスカ」

 

 最近、ノンナさんがおかしい。

 

 やたらと触られるというか、スキンシップが増えた。

 今までは、殺気が篭った目で一定の距離から睨んでくるのが大半だったが、この変わりようが逆にコワイ。

 ついに、俺を殺る気になってしまったのか?

 

「そういう訳で、学園艦が出立するまでの間、暇なダージリン様に付き合ってあげてください」

 

「はっきり今暇って言ったな…。戦車道の練習とかいいの? 俺もバイトと学校以外の時間しか空いてないけど…」

 

 取り敢えず、便箋をハサミで開封し中を確認。

 

 達筆な、綺麗な文字。

 

 ……

 

 …読めん。

 英語でもないし…なんだコレ。

 ひどく達筆なガイコクノオコトバ。

 

「あの…」

 

「あ、はい。何でしょう?」

 

「読めないので、できれば読んでください…」

 

 恥を忍んで、中学生にしか見えない年下の娘に頼む。

 苦笑して読んでくれた。

 

 …それは、簡単な社交辞令の挨拶と、日付が記載されていた。

 

「一週間後か…。でも俺、マナーとか一切わかりませんよ?」

 

「何で敬語なんですか? あの…午後のティータイムって感じの気安い会ですので、特に心配されなくても大丈夫ですよ?」

 

「でも。お嬢様ですよね? 何か「キャッキャ! ウフフ!」…何ですよね?」

 

「何ですか? それは」

 

 ヤバイ。

 

 何か緊張してきた。

 

「…あの、無理しなくても大丈夫ですよ? こんな言い方は変ですが、ダージリン様のいつもの思いつきですので」

 

「んぁ? いや行くよ。カチューシャ達の顔も立ててやりたいし、君も怖い思いして、ここまで届けてくれたし」

 

「…」

 

「それはそうと、オレンジペコさんや」

 

「なんでしょう?」

 

「今更だけども…あまりよく知らない男に誘われて、室内に入るものじゃあないよ」

 

「え?」

 

 先程、俺に誘われて店に入るまでの工程を、思い返させた。

 ちょっと危ないよね。

 世間知らずを地で行きそうだし、この娘。

 

「そうですね。ちょっと軽率でしたね」

 

「誘った俺が、言う事では無いけどね。まぁ俺は、癒されたからいいけど」

 

「…癒されたって、私に何かしたんですか?」

 

 言ってすぐだったので、軽く警戒してきた。

 

「女の子が普通に甘いもの食べて! 普通に幸せそ~うにしてる姿を見て癒されていただけですよ。普通がいいんですよ、普通がぁ! カチューシャなんか最近プリプリしてるし! ノンナさん様子が変で怖いし! みほは案の定連絡寄越さないし!! ああああぁぁぁぁぁ!!! あれだね。雰囲気的にもオレンジペコさんは癒し系だね!!ひっっっさしぶりに癒されました! ありがとうござっした!!」

 

 ここの所、色々有りすぎて…久しぶりに心休まる光景を見たのは本当だ。

 

「わ…私は、癒し系なのですか?」

 

 若干、引き気味に尋ねられた。

 そうですね。

 即答シマショウ。

 

「はい。私の癒し系は、貴女です!!」

 

「あの…結構、疲れていらっしゃいます? 大丈夫ですか?」

 

 …心配されてしまった。

 

「…ごめん、軽く暴走した。話を戻そう。…お茶のマナーは失礼じゃない程度で、軽くでいいので教えてください」

 

「え? 私がですか?」

 

「うん。ちょっと待ってて」

 

 教えてもらう事をメモしておこうと、メモ用紙という名のチラシと、ボールペンを探す。

 ゴソゴソ探している俺を見て、オレンジペコさんが何か考え込んでいる顔をしていた。

 

「…わかりました。では、私がご指南させて頂きます!」

 

 フンスッ! と、立ち上がり…何か決意したような目をしていた。

 大きな青い目が、何か静かに燃えている…。

 

「では、今日と同じこの時間。…毎日しっかりと、指南役を務めさせて頂きます!!」

 

 …え?

 

 なんで、急にやる気になったの? この子。

 

「実はもうすぐ我校は、男女共学になるんです。私も少しは、殿方と話をするのに慣れておかないと!」

 

 あぁ、なるほどな。

 男に対して免疫を作りたいと。

 それは俺をある程度、信用に足る人間だと判断してくれての事だろうか?

 でもなぁ…すげぇ気合が入ってるのが…ちょっと。

 

「……あの軽くで、良いのですけど…?」

 

「ダメです。教えるからには、しっかりと教えます」

 

 ピシャリと窘められた。

 

「では、本日は準備の為と、ダージリン様に許可を頂きに帰ります。では、これで失礼しますね。プリン、ご馳走様でした」

 

 ダージリンさんとやらに許可を貰えなければ無しって事か。

 …まぁ、無理だろ。

 彼女達も忙しいだろうしな。よくわからない男の元に、1年生の後輩を暫く派遣なんてな。

 

 まぁ、もうそんなに会うこともないだろうと、お土産にプリン一箱持たせた。「いいんですか!?」と目を輝かせてくれたのがチョット嬉しい。

 店を出て…一応という事で、近場まで送って行き、そのまま彼女は、学園艦へ帰っていった。

 

 

 

 

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「おはようございます」

 

「…」

 

 翌日の朝の7時頃。

 

 彼女はやって来た。

 

 マジでやって来た!

 

 お茶会用のだろうか?

 そのフルセットが、店の前の空いたスペースにセッティングされていた。

 店前が物凄く洋風です。

 ソファーとか…テーブルとか…。

 

 …すげぇ高価そうなんすけど!?

 

「…おはようございます。オペ子さん」

 

「オペ子? って…私の事ですか!?」

 

 不本意な呼ばれ方なのだろうか、プリプリ怒ってる。

 あらやんだ、可愛いわ。

 

「その呼ばれ方は、何か嫌です。馬鹿にされてる気がします!」

 

「…んな気は、毛頭ありません。で? オペ子さん。これは…え? どういう事?」

 

 特に変える気にもならない為、そのまま会話を続ける。

 

「尾形さんに、お茶を教える為のフルセットですよ! ちゃーんとお店の店長さんには、了承を取っていますよ」

 

 静かに微笑んで、ウチの店の責任者の許可を得ていると仰りました。 

 

 おやっさん…。

 

 おかみさんの機嫌悪かった理由は……コレか。

 

 甘い。甘いなぁ~…。 

 

 本当に、女の子に甘いなーあの親父。

 

「さぁこれから1週間。朝、学校へ行くまでは、みっちりと教えますよぉ! 学校から帰ってきたら、再開ですね!」

 

 わー。すごいやる気になってるよ。

 何故そこまで自分の時間を裂いてまで、良く知らない俺に付き合ってくれるのだろう…。

 間接的にダージリンさんとやら為か。前に言っていた男に対しての免疫を作るためか…。

 どちらにせよ…ここまでしてくれたんだ。

 真面目に誠意を持って応えようか。

 

「では、始めますよ~」

 

 それから5日間。

 本当にきっちり、同じ時間に来て教えてくれた。

 それこそ、放課後も約束の時間にはいてくれた。

 

 この子は、やる事なす事が素早い。

 すごく、おっとりしているイメージが強かったが、まぁ…とにかく手際が良い。

 お茶を教えてくれる所しか見ていないが、それ以外にも…まぁこのお茶会セットを用意してくるあたりだろうか。

 

 基本マナー講習みたいな事をしていたが、そんなに厳しい事は言われなかった。

 雑談で紅茶を飲み、学校行って帰ってきて…また雑談して紅茶飲んで帰る。

 

 …そんな日常だった。

 

 

「尾形さん。一つ聞いておきたかったんですが、私の何処が、癒し系なのですか?」

「はい、オペ子さん。全てです。言動雰囲気全てです。ありがたや~」

 

「尾形さん。オペ子って呼び方、やめてください」

「嫌です。俺が気に入りました」

 

「尾形さん。紅茶は一気に飲み干すものではありません」

「はい、オペ子さん。熱すぎるのでおかしいと思いました」

 

「隆史さん。お茶請けのお菓子も食べても良いのですよ?」

「はい、オペ子さん。ですが、めちゃくちゃ高価そうで怖いのですよ」

 

「隆史さん。あの…たまに、何で涙ぐむんですか?」

「ここや…。ここにあったんや。ワイの平穏…」

 

 

 たった一週間。

 

 そう。一週間だけども、献身的にしてくれるオペ子さんに、色々と俺の中の何かが安らいだ。

 日常会話というのがここまでありがたく感じたことは今までなかった。

 俺の呼び方も変わってきて、多少は良く思ってくれているのだろうか。

 

 うん…。

 

 俺、疲れていたんだ…。少しぐらい休んでもいいよね…。

 

 

「さて、本番も明日となりましたが、オペ子さん」

 

「はい。何ですか? …やっぱりその愛称は、やめてくれないんですね」

 

「 結婚してください 」

 

「ブふッ!!」

 

 朝一から、紅茶を頭から霧吹き状にかぶった。

 ご褒美だと思った方は、挙手をして下さい。

 

「な…なにを言ってるんですか!!?? からかわないでください!!! なんで手を挙げているんですか!!??」

 

「いやぁ…ここまで、俺を癒してくれる人。今までいなかったなぁって…」

 

「冗談でも、言っていい事と! 悪い事があります!」

 

「人間弱ってる時に優しくされると、コロっと靡いてしまうものなんですよ?」

 

「はいはい! 3年後、気が変わってなかったら、また言ってください!」

 

 振られちゃった。

 3年というのが、また生々しかった。

 

 

 

 

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 午前の講習が終わった。

 午後の講習では、明日の為に締めにかかるとの事でした。

 授業が終わり、早々にいつもの場所に向かう。

 オペ子が、いつも待っていてくれるのが分かる為、毎度毎度急いで帰る事が日課になっていた。

 

 だけど、今日は少し違った。

 

 いつもなら、俺より先に来ているオペ子がいない。

 代わりなのか、お茶会フルセットの場所に別の人がいた。

 誰だ?あの…。

 

 …誰?

 

「 ご機嫌よう 」

 

「え? はい。ご機嫌よう…。どちら様でしょう?」

 

 静かに挨拶をしてきた。

 俺に言ったんだよな? こんな令嬢とも言えるような雰囲気の人の知り合いはいない。

 

 …ごめん。オペ子以外にいない。

 

 ………さらにごめん。まほちゃんと、みほも一応ご令嬢と言える人物だったよ…。

 

 まぁいいや。

 

 この女性。

 

 格好は、オペ子と同じ制服を来ている。

 聖グロリアーナの制服…髪型も同じだ。

 透き通る様な金髪、碧眼…。

 

 誰だろう。

 

 自己紹介を待っていると、何か言い出した。

 

「何を言っているのかしら? オレンジペコでしてよ? さぁ、本日も講習を始めましょう?」

 

「……」

 

 もう一度言おう。

 

 何か言い出した。

 

 というか…なんだその、ドヤ顔。

 

( もうすでに、バレているのに… )

( 大丈夫ですわ! ダージリン様は、完璧ですのよ!! )

 

 …聞こえた。

 どこか近くにでも、隠れているんだろ。

 聞き慣れた声と、聞きなれない声の二つ。

 

 …あぁ。

 

 ()()が、例のダージリンさんか。

 本当にお嬢様ってのは暇なのか?

 一応、戦車道の強豪校なんだろ?

 なに、こんな所で油売ってるんだろ…。

 

 そもそもオペ子にでも、変装しているつもりなのだろうか?

 髪型が同じなだけのような気もするが、何か同じなのか?

 

 しかし…。

 

( 隆史さん、完全に呆れた顔してますけど… )

( 大丈夫ですわよ!! ダージリン様、かんっっぺきに変装してますから!!!  )

 

 …オペ子は兎も角…もう一人だ。

 隠れる気があんのか? 丸聞こえだ。

 

 ……。

 

 …………ニタァ…。

 

 

「あぁ、そうだった、そうだった。んじゃあ、オレンジペコ。本日もよろしくお願いします」

 

「えぇ、よろしくて…よろしくお願いしますわ」

 

 …似せる気が、あんのか? こいつ。

 

( ほら! 大丈夫でしたわ! )

( …隆史さんって、お馬鹿さんなんでしょうか…? )

 

「……」

 

「あら? どうかされまして?」

 

「…いえ」

 

 …オペ子が酷かった。

 わざわざ呼び方まで、分かりやすい様に戻したのに…。

 

「では本日は、明日の為に最後の講習でしたわね。…よね?」

 

「…そうですね」

 

( さっっすが、ダージリン様! 完璧ですわ! あの殿方も、普通に会話を始めましたし、気づいていませんわ!! )

( …隆史さん。私の顔も、まともに見てくれていなかったのでしょうか… )

 

 …よし。

 

 呼び方まで戻したのに、気がつかなかったオペ子。お前が悪い。

 少々、思い知れ。

 

「ふふ…。始める前に、少々聞きたい事がございます…よろしいかしら?」

 

 ドヤ顔が…イラっとくるな。

 

「はい。なんでしょうか? オレンジペコさん」

 

「私…いえ。ダージリン様の事を、この前どのように話しましたっけ?」

 

 …だから…似せる気……あぁ、もういい。

 

「あ~……。格言好きをこじらせて、よく分からない事をのたまわってるって、言ってましたよね?」

 

((  ))

 

「……ペコォォォ」

 

( 言ってません! 言ってませんよ!! そんな事ぉ!!! )

( オレンジペコさん…。そんな本当の事を… )

 

「あ~…でも、才色兼備で、ダージリンさん目当てで聖グロリアーナに入学してくる生徒や、編入手続きをしてくる生徒もいるとか…。大人気で憧れの的とも言っていたね」

 

「…そ…そう?♪」

 

 …チョロ過ぎるだろ。

 

( フォロー入れてる!? これ絶対、気がついてますよ! もうっ! )

( 大丈夫ですわよ! まだ行けますわ! )

( 私の心臓が、大丈夫じゃありませんよ… )

 

「ふふ…少し早いけれど、もういいかしら?」

 

 何かに満足したのか…ドヤ顔が最高潮に達していた。

 

「実は、何を隠そうワタクシ『 あぁ。オレンジペコ? いつもの、いいのか? 』」

 

 先ほどの呟き…。

 正体を明かして、終わらそうとするが…そうはいかん。

 

「いつもの?」

 

 終わらそうとしたが「いつもの」が、気になるのだろう。

 問い返して来た。

 

( 隆史さん…何を言う気ですか…? )

( いつもの? オレンジペコさん…なんの事ですの? )

 

 

 

「ほら。毎日、スカート捲し上げてくれて『 本日の下着はどうでしょう? 』って、聞いてくるじゃん」

 

 

((「!!!???」))ガタッ!!

 

 

「…男女の仲は、時間は関係無いと言いますが……ペコ。殿方といつの間に、そこまでの…」

 

( …さすがオレンジペコさん )

( やってません! 聞いていません!! 何言ってんですか!! 隆史さっムグ! )

( バレます。黙りなさい )

( …アッサム様。いたんですのね… )

 

 真っ赤になって、ブツブツと何かを呟いているダーさん。

 …ウフフ。

 オペ子の焦った様な声も聞こえてきたね。

 

「ん? 今日は、いいの?」

 

「ほ…本日は、よろし『 あれぇ? ひょっとして、違う人ぉ? 』」

 

「え…ええ! そうなんっ『 で も 』」

 

「俺、色々あって「騙される」の本当に死ぬほど嫌いなの…知ってるはずだよね。そんな人の嫌な事、する人じゃないよね~。オレンジペコも…ダージリンさんって人も」

 

「ムグ!!!」

 

 もうバレてるのが、分かりそうなものだけど…テンパッているのか、ただ真っ赤になっていくねぇ。

 実際、前世の事もあり「騙される事」が、嫌いなのをオペ子には言ってある。

 性格上、ダージリンさんにも報告しているだろうと踏んだが…やっぱり聞いていたんだねぇ。アッハッハッハ

 

( ムー!!(ゼッタイバレテル!!) )

( アッサム様。オレンジペコさん、苦しそうですわよ? )

( ダージリンが真っ赤に追い詰めらる姿なんて、そうは見れないものよ? )

 

 お嬢様って、いい性格してるな~。

 

 ダージリンさんとやらは……はっはー。耳まで真っ赤だねぇ。

 いやー葛藤してるな~。

 人はもういないけど、往来だしねぇ~。

 キョロキョロして、プルプルしてるな~。

 

「淑女が…人前で…。騙しているとはいえ…いや…でもっ!」

 

 キッと、こちらを上目使いで睨んできた。

 謝ってくるかなぁ…とか、思って見ていると…。

 

 動いた…。 

 

 両手の指先で、スカートの端を持つと… ゆっくりスカートを上げていく。

 

 おいおい…マジかよ。

 

「わっ! わかりましたっ!! 私は今や、オレンジペコ!! 見事、演じて見せますわ!!」

 

 錯乱してる、錯乱してる。

 演じるって言っちゃってるよ。

 涙目になるくらいなら、やめればいいのに…。

 

 …まったく。

 

「ではっっ! 本日の『 嘘ですよ 』」

 

「……ゑ?」

 

 

「 嘘 ・ で ・ す ・ よ 」

 

 

「……」

 

「オペ子はそんな事しちゃいないよ。どこの痴女だよ。……あんた、ダージリンさんだろ?」

 

「……」

 

 完全に停止しちゃってるなぁ。

 スカートを摘んだ状態から動かない。

 

 ナニコレ。

 

「……」

 

「…オ」

 

「お?」

 

「…オヤリニナリマスワネ」

 

 なに、このポンコツ。

 

 

 

 

 

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「 隆 史 さ ん !! 」

 

「はい。何でしょう、オペ子さん」

 

「あれは無いです! あれは無いです!! あれは無いです!!!」

 

「どれの事でしょう?」

 

「スッ! すかっ!! スカーーー!!!!」

 

「はっはー! やっぱりオペ子は、癒されるなぁ」

 

 頭を撫でてやると、両手を上げてパタパタ怒ってる。

 

「やはり最初から、バレていましたか」

 

「当たり前です。髪型しか同じな所、無いじゃないですか」

 

 結局、全員出てきてもらった。

 いつものマナー講習フルセットが、普通にお茶の会場となっている。

 明日には、会えるというのに何の用だろうか?

 

「いえ…ペコが日に日に楽しみにしているお茶会講習。…その相手の殿方がどのような方なのかと…別の興味が湧きまして」

 

「…はぁ」

 

「ダージリン様もぉ!!」

 

「ペコの変装をすれば、普段どのように接しているか、分かりやすと思いましたの」

 

「…変装? え? 変装?」

 

 もう一度言って? ん?

 

「日本の方は、英国人の見分けが難しいと聞いたもので…」

 

「日本人を馬鹿にしてますね?」

 

 すげぇ事を、普通に言ったな…。

 

「ダージリン様! そろそろ本題に入ってください!」

 

 オペ子が復活した。

 いや…まだ顔が赤いな。

 ……ニヤニヤと見ていたら睨まれた。ウフフ

 

「実は、明日のお茶会なのですけど…中止になりましてね」

 

「おや…そうですか。それで今日来たと?」

 

 オペ子に注がれた紅茶を飲みながら、優雅に応答をするダージリンさん。

 先程まで真っ赤になって、スカート摘んで、固まってたポンコツには見えないなぁ。

 

 …耳が、まだ赤いけど。

 

「先程までの事は、忘れて頂けると助かりますわ…」

 

「…はぁ。はい、分かりましたよ」

 

 仕方がない…そんな言い方に真実味を感じたのか…安心したような顔をしたダージリンさん。

 

 やだ。

 

 絶対忘れねぇ。

 

 ……オペ子さん。

 やめて下さい。

 なんでこちらを見てるんですか?

 

「では、本題に入ります。我が学園艦の現在の状況はご存知かと思いますけど…少々問題が発生しましてね。我が学園艦に尾形さんをお招きしようかと思いましたけど、部外者立入禁止になってしまいましたの」

 

 あー。

 なる程なる程。船内機密もあるわな。

 部外者にウロウロされたら、困ることもあるだろうよ。

 

「それで、代わりにペコの紅茶マナー講座に、合流しようかと思いまして」

 

 …は?

 

「だって、ペコがすっごい楽しそうなんですもの」

 

「つまりは、ダージリン様の午後のティータイム。それをここで過ごしたいと。そういう事ですよ、隆史さん」

 

「…お邪魔だったかしら?」

 

 はい。お邪魔です…とも言えず、了承した。

 まぁ、この人なんか、キャラすっげーな。

 喋ってるだけで退屈しない。

 それに、みほの情報も何か持っているかも知れないし…。

 

 取り敢えず、先に次の問題を解決しよう。

 

 

「構いませんよ? まぁ俺としては、退屈しないから良いのだけれど…別に一ついいかな?」

 

「何でしょう?」

 

「…こいつは、一体どうしたらいいんだ?」

 

 赤い髪の子。

 ローズヒップと言ったか。

 オペ子と一緒になって隠れていた…いや、隠れる気があったかも定かではな子。

 先程から俺に対して、突っ掛ってくる(物理)。

 

「あんな破廉恥な事を言う殿方と! 話す事なんて有りませんわ!!」

 

 まぁ、俺も悪かったが…先ほどのスカートの件で、ダージリンとオペ子を辱めたと思ったらしく、先程から突っ込んでくる(物理)。

 

「まぁまぁ。俺も悪ノリが過ぎたけれど、君らも俺を騙そうとしてたからお相子だろ?」

 

「うっさいですわ! うっさいですわ!!」

 

 彼女の頭を、アイアンクローするみたいに左手で掴んでいる。

 掌から外れないので、腕に足でぶら下がったり蹴ったりジタバタもがいているんだけど…さぁ…。

 

 あの……さっきから、パンツまで見えてるんだけど。

 まぁ? …知らないふりするのが紳士だ。

 

「なんっですの!? ぜんっぜん、外れませんの!!」

 

「はっはー。女子供にどうにかなるような、そんな柔な鍛え方しておりません」

 

「ローズヒップ。優雅さの欠片もありませんわよ? 私達の事は、誤解だと言っているでしょう?」

 

 ダージリンが、注意するも聞き入れる気は無いらしい。

 …というか興奮しすぎて聞いてねぇ。

 それもわかっているのか、ダージリンさんも溜息しかしていない。

 

「隆史さん、これを」

 

 オペ子が、お茶会セットのお茶請けに置いてあった林檎を、右手に渡してきた。

 

「え? ナニコレ」

 

 ダージリンさんが、声をかけてくる。

 

「隆史さんとお呼びしても?」

 

「え? えぇ…はいどうぞ。で? この林檎は?」

 

「隆史さん。それ、握り潰せます?」

 

「はい、特に問題なく」

 

「では、合図で握りつぶして下さいな。ローズヒップ。隆史さんの右手を見ていなさい」

 

 よくわからないな。

 握り潰したから何だっていうのだろう。

 食いもん粗末にしたくないのだけど。

 言われた通り、ローズヒップは俺の右手の林檎を見ている。

 

「せーの…ハイ!」

 

 ご要望でしたので、一応合図に合わせ握りつぶした。

 ゴリッと。

 結構思いきりやったので、小気味よく砕け散った。

 あー…手が果汁で、ベトベトだ。

 

「…」

 

 …ローズヒップが大人しい。どうした? 俺の右手を凝視している。

 

「隆史さん。次は左手ですわ♪ せーの…」

 

「ピィ!」

 

 ローズヒップが暴れだした。マジ逃げだ。

 あーもう! スカート履いてるの忘れてるのかよ。

「ヤベーですわ!ヤベーですわ!」って涙目になっちゃってるよもう。

 …さすがに可哀想になってきた。

 

 

「はぁ…オペ子さんや」

 

 俺が呼ぶと、疲れきった顔で近くに来てくれた。

 

「何でしょう?」

 

「ダージリンさんって…その…すげぇな?」

 

「…そのうち慣れますよ」

 

 

 ローズヒップは、まだ暴れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一月程。

 ダージリン様達とお茶の時間を共にしてもらいました。

 お茶会で彼に聞きたかった事は、比較的真面目な内容。

 

 カチューシャ様より聞いていた事。

 それは彼の「人の扱い方」でした。

 プラウダ高校の内部変革は、ダージリン様も一目置いていました。

 

 こうも試合に影響するのかと。

 

 ダメ元で聞いてみた所、隆史さんはアッサリ教えてくれました。

 彼は難しくない、良くある事だとは言ってはいましたが…そこに着目できるかどうか…だと思うのですけど。

 

 ダージリン様と同じく、彼の話で一番ビックリしたのが、黒森峰の西住姉妹との関係でした。

 それも、そんなにアッサリ言ってしまって良かったのでしょうか?

 

 前回の戦車道大会決勝戦後から、妹の「西住 みほ」さんと、連絡が取れないと嘆いていましたね。

 この人は、結構な心配性だと思いました。

 

 暫く時間を共にして…どうにもダージリン様は彼を気に入ったようでした。

 後、意外にもローズヒップさんは彼をあっさりと受け入れていました。

 あの方は、根が素直と言うか…一度受け入れれば後は、心配することもないでしょう。

 

 …が、何か嫌でした。

 

 …何だろう。

 ちょっと…いや、何でもないです。

 ……思い過ごしだと思いますし。

 

 隆史さんと出会い、もう一月以上たった。

 そろそろ私達の学園艦も、修理が終る頃…。

 ここにいられる時間も、あまり多くありません。

 そんなおり、遠征中のプラウダ高校が、青森港に帰ってきました。

 

 

「タカーシャ。なにこれ」イラッ

 

「…隆史さん。説明を」イライラ

 

「」

 

 お茶会場所が、すでに集合場所となっていた今の生活。

 

 隆史さんの周りが、プラウダ高校より、すでに聖グロリアーナ色が強くなっていた為でしょうか?

 カチューシャさん達の顔色が余り良くない。

 

 というか、怒ってます。怒ってますねぇ~。

 

 そうですよね~。久しぶりに帰ってきたら、隆史さんの周りって、女性だらけ。

 それでもって、皆で仲良くお茶を楽しんでいましたからね。

 

「」ガタガタガタ

 

 …何でしょう。

 最近隆史さんが、あまり構ってくれません。

 

 今は一生懸命カチューシャさん達に説明をしている姿が…何でしょう。

「妻に浮気の言い訳をしている夫」っていう構図にしか見えませんでした。

 

 …浮気。

 

 私達そういう相手でもありませんし、彼女らもそういった…お付合いしている関係では無いのでしょうに。

 

 でも何でしょうか? この苛立ちは。

 

 正直「西住 みほ」さんを心配している彼を見るのも、最近ちょっと嫌な気分になります。

 ダージリン様は「妬けますわね」と隆史さんに冗談で言っていますが…目が結構本気なので、たまに怖いです。

 

 日常でただお茶をしていただけ…朝と夕。

 本当にただ、一緒にお話していた…それだけなんですけどね?

 

 隆史さんって、見た目の割に結構色々と話しやすいですし…結局、変な所でみんな頼ってしまっているからでしょうか?

 

 しかし、プラウダ高校の方々。…人が増えたのも有り、最初のようにゆっくりとした時間が、最近少なくなってしまいました。

 

 …なんでしょう。

 

 何故私が、寂しがっているのでしょうか?

 私はマナーを、ただ教えていただけなのですけど。

 

「じゃあ、私達の学園艦で明日やるわよ!」

 

 は! 考え込んでいて聞いていませんでした!

 

「オペ子?」

 

 まだ、聖グロリアーナ学園艦は、部外者は立入禁止だった。

 一度落ち着いて話をしたいという事で、プラウダ高校にてお茶会を明日開催するという話でした。

 用はカチューシャさん達も、隆史さんにお茶を振舞いたいと。私達だけでは不満だと言う事でしょうね。

 

「あ」

 

「どうしました? 隆史さん」

 

「お茶会に着ていく服が無い」

 

「なんですか、それは…」

 

「いやいや。プラウダも女子高だろう? お洒落する気なんて今更無いし、ドレスコードも無いと思うけど…」

 

「別になんでもいいわよ。タカーシャって、今じゃプラウダでも結構いい意味で有名人だから誰も気にしないわ!」

 

 鼻を高く言い切るカチューシャ様。

 

 何でしょう。

 隆史さんは別に貴女のモノでは無いでしょうに。

 ノンナさんも満更でもない顔してますよ。チッ

 

「でも俺ジーパンと、無地かネタ系のTシャツしか持ってないけど」

 

 「「「「 …… 」」」」

 

 たしかに今現在着ているTシャツも無地に日々平穏って墨字で書いた、良くわからないのを着ていますね…。

 センスが壊滅的です。

 

「き…気にしないわ!」

 

 強がってるじゃないですか。

 

「あぁ、そうだオペ子」

 

「え? あ、はい」

 

「後で、なんか選んでくれない? 服をそこら辺にでも、買いに行こうと思うんだけど」

 

 「「「「!?」」」」

 

「いいですけど…選ぶの私で、よろしいのですか?」

 

 ちょっと殺気を感じる。

 チラッと横目で見ると…睨まれてる。

 

 すっごい、睨まれてますよ!?

 

「いやぁ…カチューシャとノンナさんは帰ってきたばっかりで忙しいだろうし…。ダージリンはなんか予算を度外視しそうだし…」

 

「ぐっ! 確かにカチューシャ達、この後部隊の現地調整があるけど…ノンナ!?」

 

「…口惜しいですが、総隊長のカチューシャの代わりになる者がおりません」

 

「ここここんな格言をしってる?『 長くなるなら知ってる事にして。短いなら知ってる事にするから 』」

 

「」

 

 …最近、隆史さんのダージリン様の格言潰しが結構エグイです。

 

「あー、嫌なら別に『 行 き ま し ょ う 』」

 

 誰も行かないとは言ってません。

 ダージリン様は少し自重して下さい。

 

「あ…そういや、女の子と二人だけでまともに買い物って奴に行ったこと無いや。これがデートって奴なら人生初デートだな! はっはー………は?」

 

 「「「「…………」」」」

 

「あの…皆さん、どしたの?」エ?ナニ?ノンナサン!?チカイチカイ!コワイコワイコワイ!!

 

 …デート。

 

「くっ! そういえば、タカーシャってお茶の好みってあるの?」

 

 ……デート。

 

「そうですわね。特に好みとかは仰っていませんでしたわね」

 

 でぇとぉ……

 

「……」

 

 あぁはいはい、隆史さんのお茶の好みですねぇ。

 はい、ダージリンさま? 睨んだってダメです。

 

 さて…結構長い間、ティータイムを一緒に過ごしてきましたが、何でも「おいしい」と言うものだから、特に好みとか聞いてませんでしたね。

 

「参考までに、教えてちょうだい! 明日の為に合わせるわよ!?」

 

「そうねぇ…どんな香り…とかでも、よろしいですわよ? そこから選別も可能ですので!」

 

 結局2人とも興味があるのか、強く問い詰めだしましたね。

 

 ……でぇぇと。

 

「無い。何でも、おいしかった」

 

 「「…………」」

 

 一番言っちゃいけない事をこの人は…。

 

「あ、でも」

 

 バッと、その言葉に2人とも食い入りましたね。

 前屈みになる程ですか?

 

「種類じゃないけどさ。オペ子が入れてくれるのが、一番好きかなぁ」

 

 

 

 

 …。

 

 

 …うん。ずるいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故、こうなった。

 

 まず服は良かった。

 オペ子に頼んで正解だったな。

 

 選んでもらった服は、普通だった。

 本当に普通で、ある意味で俺好みだ。

 清潔感がある格好が一番良いという事で、見本のような選別だった。

 

 お礼になんか食ってくかと聞いたら、最初は遠慮していたのだけれど、ラーメン屋が良いという事だったので連れて行ってやった。

 お嬢様学校だと、ああいう食事は食べられないからだという。

 結局夜までかかったので送って行ってそこで終了。

 

 何故だろうか…始終どこかで、視線を感じたのだけど…。

 まぁいい…。でもな……?

 

 話せというので、話したのに…。

 ノンナさんからは睨まれる、カチューシャには蹴られる、ダージリンには本気で次は私も連れて行けと懇願されるし…。

 

 プラウダ高校に入った時点で、なぜかわからんが隠される様に部屋に通された。

 その通された…応接間とでもいうのだろうか?

 なにこの部屋!? 広! 天井高!! そして俺、なんでど真ん中の席!?

 

「さぁ! タカーシャ! 今日は逃がさないわよ!」

 

「隆史さん。観念なさって下さいね?」

 

「なんの!?」

 

 何で俺、強豪高校総隊長に包囲されてるの!? なんで!?

 

「どちらのお茶でおいしいと言わせるか…そういった勝負らしいですよ?」

 

 オペ子が説明をしてくれる。

 …が、意味がわからん。

 

「私は今回不参加です。ダージリン様に「不公平ですわ!」って言われちゃいまして……」

 

「ペコ。今までの事は良いです。ただ、隆史さんとラーメンまで食べてきたのは許せません」

 

 ソコカヨ。

 

「…ダージリンさぁ。それはいくらなんでも、大人気が…」

 

「ダメです! 私達の学園では、稀少も稀少! 抜け駆けと言っても過言じゃご…「じゃぁ今度、俺が店で作ってやるから…」」

 

 あ、紅茶を持つ手が止まった。

 

「…」チラッ

 

 ツーンと、逸らしていた顔。

 目だけ少し開け…

 

「ペコ。今回の件は、不問にします。私も大人気ありませんでしたわ。ごめんなさい」

 

 「「……」」

 

 …このお嬢様は。

 

「もういいかしら? どうする? 先方は、聖グロリアーナでいいわよ?」

 

「そうね。では、アッサ『 私がいきますわ!! 』」

 

 …ローズヒップが、名乗りを上げた。

 ……アッサムさん! どこ!? どこですか!? いない!?

 

「今日の為に、練習してきましたわ!! がんばりました!! がんばりましたわ!!!!!」

 

 今日の為にって…昨日決まったんだから、つまりは一夜漬って事かよ!

 

「あの…ローズヒ『 いきますわ!!! 』」

 

 ダメだ。

 

 何で、紅茶を入れるのにビンがあるんだ?

 

 そもそも何で…もういいやめよう……淹れる工程は見ない。

 ローズヒップだから…の一言で説明がつく工程は無視しよう。

 見ないでおこう。

 

「……」

 

 なに? この無言の静かな時間。

 静寂って、こういう事をいうのだろうか?

 

「でっきましたわ!!!」

 

 ドン! と、テーブルに置かれる。

 いや…ドン!って…。

 

「…タカーシャ。ゴメン。なんかゴメンネ?」

 

 あのカチューシャに謝られた…。

 

 カップを手に取り…もういい! マナーもクソもあるか! 

 

 顔を上に向かせ…一気に飲み干した!!

 ん。

 …冷たい。

 

「あれ? これアイスティー? 変わった味と、香りがするけど…ちゃんと飲める…。あれ? うまい…」

 

 何だろう、ちょっと飲んだ瞬間グラっとしたけど。

 

 まぁ、淹れたのがローズヒップだし…。

 

 うん…

 

 

 ----------

 -------

 ---

 

 

 

 

 なんだ? 体が熱い。

 

 紅茶のカフェインのせいかな…。

 あの後、散々飲まされたが、何かおかしい。

 

「結局どのお茶が、一番の好みだったのかしら!? タカーシャ!?」

 

「え? ああ…そういう勝負だったな」

 

 いかん。

 ちょっと、視界がグラグラする。

 気分はいいのだけど…何だコレは。

 

「隆史さん、どうかしましたか?」

 

 ノンナさんが心配をしてくれる。珍しい。

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

「カチューシャ。結局の所、隆史さんは「ペコの紅茶」がっ! …一番という事でしてよ? よって、聖グロリアーナの勝利は、揺るがないのではなくって?」

 

「…あんた。一番手がアレじゃ、正直同情するけど…。それはさすがに、無いんじゃない!?」

 

 二人のよく分からない言い争いを、ボケーと見つめる。

 その俺の様子が、何かおかしかったのか…オペ子が声をかけてくれた。

 弱冠、心配そうな顔をして…。

 

「隆史さん?」

 

「あら、ペコ。ずいぶん仲がよろしいですわね。さすが隆史さんからプロポーズされただけはありますわね」

 

 「「!?」」

 

 あれ?

 

 なんでダージリンが知ってんだ?

 

「あれはただの冗談でしょう!? それよりも! 何でダージリン様がそれを知ってるんですか!?」

 

「さすがに心配でしたもの。誰かに覗き…監視させてましたわ」

 

「…ダージリン様ぁ?」

 

 ムッとした表情で、ダージリンに詰め寄り始めた。

 プロポーズ…あれって、店内で言ったよな…。

 なんで…。

 

「ま…まぁ!? タカーシャならそのくらい! じょじょじょ冗談で言いそうよね!!」

 

「…カチューシャ」

 

 顔を何故か青くしたカチューシャに、ノンナさんが妙に神妙な顔つきで声を掛けた。

 なんでそんなに真顔なんだろう。

 

「なによ、ノンナ?」

 

 横からノンナさんが、俺の顔を覗き込むように見ながら…。

 

「隆史さん。目が少し座っています」

 

 大丈夫、大丈夫…目つきが、悪いだけだと思うから!

 さてと…それよりも。

 

 ハイ! っと、手をあげてみた。

 

「あら、隆史さん。なんでしょう?」

 

「あー…、少なくとも俺は、アレで、オペ子からOKもらったら、多分マジで嫁さんにしてたと思うよヨ?」

 

「!!」

 

 「「「!?」」」

 

 あら、オペ子さん。顔が真っ赤になってますね。

 目をまぁ…なんでそんなに限界まで見開いちゃってんの?

 

「はっはー。まぁ振られちゃったけどねー。薔薇尻~、さっきのもう一杯ちょうだいー」

 

「ソソソソソ! …それは、どういう意味でして?」

 

 赤髪尻から淹れてもらったモノを飲みながら答える。

 取り敢えず田尻さん。かちゃかっちゃと、手に持ったティーカップが鳴ってましてよ?

 

「いやー…冗談でも好意が無きゃそんな事言わないっすよ。俺のオペ子は癒し系ですしね~。まぁ振られましたけどー。はっはー」

 

「…隆史さん?」

 

 ダーが、何か訝しげな表情になりました。

 

「…ローズヒップ」

 

「なんですの!?」

 

「…貴女…隆史さんの紅茶に、ブランデーをいれましたね?」

 

 薔薇尻の隣…そこに鎮座していた空のビンを見つけ、問い詰めるダージリン。

 

「おー! さっすがダージリン様! よっっく、おわかりで!!」

 

「いえ、ティーロワイヤルというのは、確かに有りますが……これは…」

 

「さっすがダージリン様!! 隆史さんは大人の方ですから、対比を逆転してみましたの!!」

 

「…ローズヒップ。隆史さんは高校2年生…。17歳でしてよ。逆転って…それただのブランデーですわ」

 

「マジですの!?」

 

「…いえ、なる程。丁度いいですわ。この際、聞きたい事を聞いてみましょう」

 

「どういうこと?」

 

 あぁ、このビンの飲み物がうまいんだ。

 もうビンさらでいいや。

 

「…こんな格言をしっている?「酒に害はない。泥酔する人に罪がある」」

 

「フランクリンですね。って、ダージリン様…なにが言いたいのですか?」

 

「つまり、悪いのは隆史さん」

 

「したり顔で言い切りましたね…」

 

「酔った人間は、比較的真実を話すものでしてよ? 何か聞きたい事とかありまして? カチューシャ?」

 

 ちびっ子が呼ばれた。

 皆の視線が集まる。何だろう?

 

「た…タカーシャは………や、やっぱりいい!!」

 

 何だろう。なにが聞きたかったのか?

 何かを言いかけた時、俺と目が会った瞬間、顔を赤くして逸らした。

 まっ! かわいいからいいや!!

 

「チッ。ノンナさんは、何かありまして?」

 

 お嬢様が、舌打ちするなよ…。

 

「…隆史さん」

 

「え? あぁ、はい」グビー

 

「隆史さんは、私の事をどうお思いですか?」

 

 「「「ブッ!!」」」(これは意外な!…直球ですわ!)

 

 

 うぇあ? なんで一斉に吹いたんだろ?

 まぁいいや。簡潔に一言…。

 

「好きですよ?」

 

「……………………」

 

「…あれ。どうしたんですか? 何で、顔抑えて蹲ってるんですか? 俺なんか変なこと言いました?」

 

「ソ…それは……結婚しても良いと意味で…でしょうか?」

 

 なんちゅー事を聞いてくるんだ。

 ああ、オペ子と比べてるのか。

 

 ……まぁ、真面目に答えようか。

 

「え? ノンナさんが、良ければ全然いいですけど?」

 

「ッーーー!!!!」

 

 あぁ!? 痛い! 痛い!! 

 なんでか、ノンナさんとオペ子に叩かれてる!?

 

 

 

 

「ふー…隆史さんは結構な卑怯者ですわね。そんな事ではペコの時もストレートに言っただけじゃなくって?」

 

 あーそうかも。

 

「そういえば、そうだったなー」

 

「ただの冗談かと思いますよ! 普通っ!」

 

 オペ子さん。

 

 何故、睨んでいるのですか?

 

「隆史さん…ちゃんと愛を囁かないから振られるのですわ。それに、ペコに愛情はありまして?」

 

 なんだろうか。

 すげぇ楽しそうな顔をしてますね、ダー。

 

「ありま…すよぉ。有……り余ってま……すね」

 

 何だろう。うまく声が出なくなってきた。

 

「ちなみに…。わ…私には?」

 

「も…ちろん、ありま……すよ? すでに大切な人で……すよ?」

 

「フ……フフッ。フフフッ!! たたたた! 例えば!! 愛情表現に接吻が有りますが、場所で意味が違うのをご存知かしら?」

 

「ダッ! ダージリン様!?」

 

 なにが言いたいんだろ? この妄言おっぱいは。

 

「額、首筋、掌など色々ありますが、愛情は唇。つまり口でしてよ? 態度に示して、紳士的に口説いていれば…」

 

「つ……まり、愛情があるのな……らば、即座にその…様にちゃんとぉ……シロト?」

 

「い、いえ…。そこまで言ってな…「わかりました。オペ子ー」」

 

「え? はい。なんで…ヒャウ!!」

 

 体が小さいのと軽いので、ポーンと軽く宙に浮かせた。と言うか、軽く持ち上げたら浮いた。

 そのまま抱き上げる。

 なるほど、これがお姫様だっこと言う奴か。

 なるほど、なるほど。初めてやったな~。

 

「隆史さん!? 何を!!??」

 

 言い出した、ダージリン産のダージリンさんが、何か言ってる。

 

「愛情を示せと、言っていましたのでえっと……「口」だっけか?」

 

「え!? ちょ! 隆しウムゥ!!??」

 

 

 

 

 

 「「「   」」」

 

 

 

 

 

「ムゥ!! !!?? ンン!!!」

 

 横目で周りを確認すると…ぽかーんと見守る4人が見えた。

 え? なに? 何か、おかしいか?

 愛情を示せと言うので、言われた通りに示したのだが…。

 

 

 

 あ。

 

 

 

 あぁ、そうか。

 

 まだ足りないのか。

 

 そういやぁ…亜美姉ちゃんが、言っていたっけ。

 

 

 

 

 

 

― 大人のキスは二段構え ―

 

 

 

 

 第二段階

 

 

「!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「ノ…ノンナ? 何で目を隠すの!? 何にも見えないじゃないの!!」

 

 「「「 」」」

 

 オペ子が、ビクビクッ!! と、軽く痙攣して……ありゃ、グッタリしてしまった。

 

「フー…」

 

「いやいやいやいや!! なにいい仕事した! って、顔してますの!? いいいいいま!?」

 

「隆史さん…あなた今…」

 

 ノンナさんが、ドス黒いオーラで近づいてくる。

 なんだろう?

 

 あ。

 

 そうか、そうか。

 

「はー…次は、ノンナさ…んです……か?」

 

「ふぁ!?」

 

 え? そう言う話の、流れじゃなかたっけ? あれ? まぁいいや。

 

「えっ!? あの!? 違ァ!?」

 

 両肩を掴んで一気に攻める。

 

 そのまま第二段階まで突き進む。

 

 逃がすなー! だっけか?

 

 では。

 

「ンンンンン!!! ンム!? んっっ!!!!!」

 

 

 

 --------

 -----

 ---

 

 

 

「ふー…あれ? ノンナさん大丈…夫ですか? 軽く痙攣してま……すけど?」

 

「ハー…ハー…今……私に触れないで……ください……」

 

 なるほど。

 

 行遅れ姉ちゃんと、ダー様の言うことは正しかったのかなぁ。

 

 次は。

 

「…ダージリン様。あれ、かなりヤベェですわよ」

 

「」

 

 

「ふぃー…」

 

「タ…タカーシャ」ビクビク

 

「え? 何? どうした…か? カチューシャ」

 

「タカーシャが、怖いのだけど…え? 何? どうなったの? 私にはやめてよね…?」

 

 何故か、カチューシャが怯えている。

 

「え? 嫌ならやんないよ?」

 

 「「え!?」」

 

「愛情を示せというから、ガンバッタダケケダヨ? ろーずひっぷワ?」

 

「遠慮しますわ! そ…それより、どうしますのこの惨状…」

 

 ノンナさんは下向いて、真っ赤になってハーハー言ってるし。

 ダー公は、放心してるし…あれオペ子?

 

「オペ子? おーい、オペ子???」

 

 いつの間にか、俺の手を握っていた。

 耳まで赤くした顔を俯かせ、動かない…。

 

「あの…隆史()…」

 

「え? あ、はい」

 

「隆史様…」

 

 それっきり喋らなくなってしまった…。

 

 

 

 

 

 次の日。

 

 俺は、関係各所に俺は土下座して回った。

 

 

 

 誰か……俺を殺してくれ……。

 

 




はい。閲覧ありがとうございました。
最後、正直この表現というかストーリーはどうだろうか?
と思ったんですけど、プラウダと共に青森勢は日常での関係の構築、
あんまりギスギスしたくないなぁという事でした。
正直最後の展開は人選ぶなぁ・・・と思いましたがニヤニヤしたかったので。

感想の所にも返信でチョロっと書いたのですけど、
オレンジペコがなに気にオリ主の初めてを3つほど持って行きました。
原作ストーリー無しの日常編は書いていて楽しいです。

この関係もあと1話で終わります。これ過去何ですよねー。
正直ノンナのオリ主への好感度を上げすぎたと思いました。が、これはこれで良しという事で。
また次回よろしくお願いします
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