転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第01話~西住姉妹ファーストコンタクトです!~ 前編

2年前…9歳頃だろうか? 本格的に鍛えていこうと思ったのは。

 

勉学、知識は武器になる。ガキの頃は、学校の勉強自体「これが将来役に立つのかよ」と、誰もが思った所だろう。

しかし実際、それに反発し疎かにした結果。中学~高校へなるに従い、段々と厳しくなっていった。

社会に出てから基礎学力の無さは自分の首を締めると自覚して思い知った。

体力面でもそうだ。鍛えておけばよかったと大人になっていくにつれて思い知る。柔道でも空手でも何かしておけばと悔やまれた。

習慣になっていない運動こそ辛いだけで、今更ジョギングをしてみよう…ジムに行こう。何か道場にでも通おう。

 

不可能だ。時間に追われ、クソ真っ黒な会社勤めの折り合いを見てなんて出来るわけがない。

殴られない日なんてほとんど無かった。痛みへの抵抗は、かなりできたと思うがそれだけだ。

自分から何か、新しく始めようなんて思ってもできやしないって。

 

…そうだよ。言い訳だよ。やれば出来たかもしれない。始められたかもしれない。

正当性なんて何もない。ただの言い訳だよ。

 

だけど、今は違う。

 

心も体も物理的に新しくなった人生。今までの言い訳なんて通用しない。

子供の一年と大人の一年は、時間の流れ方が違う。

子供というのは、精神も成長しないといけない。娯楽に走りたい気持ちもある。

しかし自分は、そんな時期はとうに過ぎている。将来の為に漠然とだが、取捨択一ができる。

 

「がんばってみるか」と、月並みですが思ったわけですよ。おっさんは。

 

インターネットって素晴らしいよね。検索すれば何でもわかる。

走り方、筋肉の付け方。前世のガキの頃なんて、そんな便利なもの無かったから、比較が出来てなおさらありがたく感じるよ。

 

そんな小学生低学年を見れば、実の親だって疑問を持つのも当然。

聞かれるたび「将来の為、母の様になる為」と子供らしく答えてやれば大体喜んで良し…だった。

母は、戦車道の特別顧問とやらで、独身時代には随分と豪の者だったらしい。(父談)

 

ただ、最近「男の子でもできるわよ」と、しつこい勧誘がウザイ。

・・・親父様ヨ。寂しそうな顔をするな。

今度なんか、親父様のいい所を見繕った言い訳を考えておくから。

 

 

さぁ、ここからが本題。

 

母の顧問契約とやらで、最低3年は過ごせると、熊本県へのお引越しと相成りましたとさ。

 

この熊本には戦車道の名家。「西住流 本家」とやらがあるそうで、母はこの流派との事。

引越し早々、挨拶兼遊びに行くと今朝よりはしゃいでいる。どうも後輩と数年ぶりに会うのが楽しみらしい。

 

で、だ。何故そこに俺を連れて行く? そりゃ行くのは構わんよ。ただ戦車に乗せたいなら姉を連れて行け。

 

姉曰く、母と比較をすると絶望するから行きたくないとの事。・・・何に? 

 

そんな訳で、半ば引きずられる感じで連れて来させられたわけですね。そこは、和風家屋。…でけぇ。

インターフォンを押し、暫く待っているとすげえ美人が出てきた。

 

「尾形さん…お久しぶりですね。お元気そうで何よりです」

 

俺らを歓迎して現れた家主のご登場。……でけぇぇぇ!

 

「姉ちゃんが言ってた「母さんと比較して絶望する」の、意味が分かった…」

 

「…何が?」

 

キコエテイタYO!

 

「…なにがって。将来性が」

 

 

 

 

頭が痛い。結構本気でゲンコツくれやがって。しかしマジでビビった。すごい美人がでてきたよ。

子供目線で下から見上げると、顔の下部分が隠れて見えやしねぇ。

何に隠れてかは、敢えて言わないけど…でけぇ……。

 

「うそ!? 母さんと1つ違い!? 普通に女子大生の姉ちゃんに…」

 

2発目投下

 

「隆史君。うちには君と同い年の子もいます。よかったら、友達になって上げて下さい。先ほど家を出たばかりです。同い年位の子が今日来ると伝えてあるので、追いつけばわかると思いますよ?」

 

お美人様。「西住しほ」さんは、一通り親子の仲睦まじいやり取りを見て微笑みながら、いい情報をくれた。

俺に目線を合わせて喋ってくれる。おかげで目の前の迫力がすげぇ。…うん。その大きいのがね。

 

それに、これは抜け出すチャンス!

 

「じゃあ、ちょっと行ってみます!!」

 

かぶせるように喋ると、一応は子供らしく、遊びに行きたい様に日本家屋を飛び出していった。

前世からあまり女性と話したことの無いのに、子供の立場であの場所に居続けるのは存外きつい。抜け出せる言い訳が欲しかった所だ。

 

そろそろ午後3時。

 

適当に時間を潰すかね。

 

 

 

 

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…しまった。迷った。そろそろ日も傾きだした。

 

あぁ…ひぐらしの鳴き声が切ない。

 

とぼとぼ歩いていると、公園というか田舎特有の広場についた。公衆電話とか無いかなぁ。

ん?

夏祭りかなにかの準備だろうか? それなりに人がいて、何かイベントの練習をしている。

……こういうのには、本当縁がなかったなぁ。和太鼓素敵!

 

 

お、広場の方で、なんか子供の声が聞こえる。

 

あぁ、いるいる。いやぁ微笑ましいねぇ。

 

ロリッ娘幼女2名とワンコを取り囲んでいる、中学生位の頭悪そうな男女5名。

そして色彩を強調する無骨な、それでいて小型のかわいらしい戦車が。

 

 

…。

 

……。

 

 

これあれだよね。絡まれてるよね。確実に。 

先程聞こえた声は、遊んでいるような声じゃあ無かったって事か。

 

さてと。

よし!回れ右だ!

 

 

         - 関わるな -

 

 

落ち着け。よく考えろ。前世で何度、失敗してきた。

 

1つ、今はもう大人じゃ無い。人数みろよ人数。

 

2つ、中学生…明らかに低学年だけど、小学5年生の子供の体で、勝てる相手じゃない。

   助けて感謝されたいわけじゃあ無いだろ? な?

 

3つ、冷静に一度考えろ。大人呼んでくれば、いい話じゃないのか?

 

また同じ事繰り返すのかよ。平穏無事、順風満帆を目指すんだよな? 

 

よしよし。冷静になった。学習しているゾ俺。偉いゾ俺!賢いぞ俺!!

さぁ全速力で、回れ右だ!!

 

 

 

「お前ら!!何やってんだ!!!!」

 

 

 

 

 


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