転生者は平穏を望む   作:白山葵

20 / 141
第14話~さぁ!戦いの始まりです!!~

「おめぇ!タカシだろ!?」

 

戦車道大会開会式会場 さいたまスーパーアリーナ

 

入場口付近でいきなり声をかけられた。

あれ?俺ちゃんと変装できてるよね?

 

 

「・・・ペパロニ?」

 

思わず返事をしてしまったせいで完全にバレてしまった。

怪訝な顔が笑顔に変わる。

一度くらい弱った所を見てみたい、そんな事を思わせるローズヒップに匹敵する程のやかま・・元気な子。

相変わらず変わった髪型してるなぁ・・・。

 

「久しぶり。よく俺だって分かったなぁ・・・。」

 

「んなこたぁー見りゃわかっだろ!?まいいや!ちょっと助けてくれよ!」

 

「え?な!?」

 

腕を掴まれ全速力で引っ張られていく。

 

「ちょ!待て!おい!」

 

一言も喋る隙すら与えてもらえなく、取り残された彼女らが呟く。

 

「隆史君が拉致された・・・。」

 

 

-------

-----

---

 

 

「助けてって、こういう事かよ!」

 

喋りながらも手を動かす。

 

「いやー姐さん達、まとめて会場入ちゃって、人数足りなくて下拵えすらできなかったんだ!」

 

「・・・はい、できた。」

 

肉と野菜の下拵えが終わった。なんで俺ここまできて働いているんだろ・・・。

 

「いやー!懐かしい顔が見えたと思ったらタカシだろ!?手伝ってもらって助かったぜ!」

 

「いやいや、お前も行けよ。アンツィオ高校も出場するんだろ?お前、副隊長だろ?」

 

パスタを茹でる準備も終わった。

 

「おぁ?何言ってんだ?私が稼がなきゃ誰が稼ぐってんだ!?」

 

あー・・会話のキャッチボールしようよ。

 

昔プラウダの試合会場で知り合った。

出店を出していた彼女。

余りにも拙かったので、堪り兼ねて俺が屋台での飲食店商売のイロハを教えてやったら懐かれた。

試合後、対戦相手にも食事を振舞うのが、この学校の流儀だそうだ。

特にペパロニは作る側の人間として話が合った。

料理・・・まぁお互いに料理の作れる種類が偏っていたので、共にいい刺激になった。

 

「マジで造りやがったのか・・・移動式屋台自動車。」

 

「そーそー。あんがとなぁ。売上かなり上がったんだ!」

 

こいつらの学校。飯作る情熱が凄まじく設備が戦車より充実していた。

自動車とか改造して自動屋台造ったら?って昔言ったことがあったのだけど・・・。

すげぇ・・作っちゃったよ。その情熱の方向が全速力で違う方向に向かっている。

 

そんな訳で彼女の移動式屋台自動車で仕込みに手伝いに駆り出された。

自動車の後ろに繋がれた、分離可能なタイヤの着いた屋台。

市販されている車も勿論あるのだが、資金の関係で自作したとの事。

 

「はぁ・・もう始まってるよなぁ。外で待つことにするか。つか、ペパロニよぉ。」

 

「なんだよ。」

 

「バイト代寄こせ。」

 

「ハッ!金は無い!!」

 

・・・こいつ。

 

「一皿くらい奢ってくれって言ってんの。」

 

「おぉ!お安い御用だ!なんだよぉ!そういう事は早く言えよ!」

 

うれしそうに火を入れ、すぐに一皿完成させてくれた。

これに関しては手際がいい。パスタかー。今度何か作ってみるかなぁ。

納豆スパゲティとか、こいつらに食わせてみたいなぁ・・・。

 

「はいよ!300万リラ~・・・。あーバイト代だっけか。しょうがないなぁ!もってけ泥棒!!」

 

・・・疲れる。が、楽しくはある。ローズヒップもそうだが、こういう奴らは好きだ。

 

鉄板ナポリタン

 

ペパロニの得意料理。アンツィオ高校の名物料理(自称)

近くのテーブルに置いておく。

 

「なぁペパロニよぉ。これ正直500円は取れると思うぞ?値上げしたら?」

 

「そぉかー?」

 

「旨いし。」

 

「・・・あ、あったりめぇだろ!タカシとアタイの愛(味)の結晶だぞ!?」

 

・・・赤くなるな。人が聞いていたら誤解するだろうが。

 

「確かに昔、口出しはしたが、作ったのはペパロニだろ?」

 

「何言ってんだ?タカシがアイディア出してくれたから作れた味だろうが。」

 

まぁ、そう言ってもらうのは素直に嬉しい。まぁいいや食うかな。

 

「・・・。」

 

振り向いたら、もう一人懐かしい奴がいた。

相変わらずのチューリップハット。

何故かいつも弦楽器を携えている。

 

そんな彼女に敢えて言おう。

 

 

「・・・おい、泥棒。」

 

 

カンテレの音色が響く。

 

「ちょっと熱かったな。」

 

「おい、食い逃げ犯。」

 

「何の事だい?」

 

「じゃあ何で半皿無くなってるんだよ。」

 

「やぁ隆史、久しぶりだね。」

 

聞けよ。会話してくれよ。

 

「なんで俺のナポリタンを食ってるんだよ。」

 

変装はまだ解いていない。何故分かった?

 

「風が教えてくれたのさ。懐かしい顔に会えるってね。」

 

「・・・それは俺の質問の答えにはならないと思うのですが?」

 

俺の鉄板ナポリタンが半分無くなっていた。

 

「タカシ。その人って継続高校の隊長さんだよね?知り合いだったの?」

 

「・・・昔ね。」

 

カンテレを弾く音が聞こえる。

 

食べながらは、やめろと昔言ったのになぁ・・・。

 

「おや、つれないじゃないか。・・・北海道で半月も寝食を共にしたっていうのに。」

 

「なんだ?タカシいつの間か継続高校に転校でもしてたのか?」

 

俺の代わりにミカが答える。

 

「いいや、違う。・・・文字どうり一緒に「寝食」を共にしてたのさ。寝床も一緒にね・・・。」

 

おい誤解を生む返事をするんじゃない。

北海道遭難時に出会った。というか遭難の原因。それがこのミカだ。

 

 

「・・・タカシ。」

 

・・目のハイライト様が不在になってますよ?

 

こいつアホの娘だから絶対、周りに隠しきれない。絶対誤解を拡散する。

 

「な・・なに?」

 

「なんだよ。キャンプでもしてたのか?それはそれで楽しそうだな!!」

 

 

アホの娘バンザイ。

 

 

「よし!よぉぉし!!ペパロニ大好きだ!!」

 

「なっ!?なんだよぉ!?おかわりか!?おかわりが欲しいのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

先程からチラホラ女子高生が店前を通るようになった。

そろそろ終わったのかな?

その割には客が来な・・・俺の風貌のせいだな。きっと。

 

 

 

「ペパロニ。そろそろ行くわ。俺がいると多分、客が来ない。」

 

「そっかー。姐さんにはよろしく言っとくわ。」

 

結局まともに食べれなかった。

 

「・・・ミカ。ミッコ達を待っているんだよな?」

 

「そうだね。今回は、大人しく待つことにするよ。」

 

・・・。

 

「ペパロニ。この後、多分こいつの連れが来ると思うから、そいつらにもソレ出してやってくれ。」

 

三人分の料金を先払いしておいてやる。

 

「君は、相変わらずミッコ達にはやさしいね。」

 

「ミカを見てるとあの二人が不憫になるんですよ。主に食事面で。わかります?」

 

「フ・・。」

 

都合が悪くなると相変わらず、微笑で誤魔化すなぁ・・・。

 

「はぁ・・、ミカの分も支払ってあるから後、一皿は食ってよし。」

 

心なしか顔が明るくなった。・・・継続高校は飯で釣れる。

 

「それはそうと・・君。何かやらかしたかい?」

 

「なんの事だ?」

 

「・・・何も無いのならば、いいのだけどね。」

 

ポロォォンって。

 

なんだろう。珍しく煮え切らない態度だな。

 

「それはそうとミカさんや。」

 

「なんだい?」

 

ハンカチで口を拭ってやる。

 

「ケチャップ系の食べ物は、急いで食べると証拠が残る。」

 

「ムグッ・・・君は相変わらずデリカシーが足りないね。」

 

何を赤くなっている。

 

 

 

 

 

 

-------

-----

---

 

 

 

 

 

 

会場を出てくる人達の波に逆らうように入口に向かっていた。

 

ペパロニに拉致されて結構時間が経っていたのだろう。

会場より出てくる各学校の生徒達とすれ違う。

ちょっと違うか。・・・若干距離を置かれて避けられてすれ違う。

見た目って大事だよね。本当に思い知ったよ。

 

ドンっと急に横から太もも付近に衝撃を受けた。

 

「ッ・・。痛いわね!何なの!?・・・ピッ!!」

 

ワー・・・マジデー?

 

 

声がする方に目を向けたら、いきなり大当たりを引いてしまったようだ。

俺の顔を見上げて、怯えている彼女がいた。

 

「大丈夫ですか?カチューシャ!」

 

「ノノノ・・ノンナ!?だ。大丈夫!大丈夫よ!!」

 

見た目が完全な幼女と俺の間に庇うように割って入ってくるノンナさん。

わー・・・心臓バックバックいってるるるる。

 

「こちらの不注意で、失礼しました・・・。」

 

こちらを睨みつけて謝罪をしてく女性。

懐かしいなぁ。この睨みだけで人を殺せるかのような強烈な視線。

そういえば、段々こういった目線で見られなくなったので余計に懐かしく感じるのかなぁ。

 

カチューシャ少し髪伸びたか?ノンナさんは・・・更にでかくなってた。どこかとは言わないよ?

僕も男の子だもん。サングラスって視線がバレないのがいいよね。

 

「・・・何か?」

 

「・・・。」

 

下手に声を出すとバレそうだったので、黙ってその場を後に歩き出す。

傍から見れば俺が、彼女達に絡んでいる様に見えるのだろうなぁ・・・。

 

下手に目立って、警備員とか警察とか呼ばれたらたまらないので、名残惜しいが早々に彼女達を後にする。

わー・・・心臓がバクバクまだいっている。ビックリシタァ・・・。

 

そっと後ろを見たらカチューシャの背中が見えた。

もう大丈夫だろう。前を向きなおしたら懐かしい顔が目の前に立っていた。

 

「失礼。」

 

「うっっわ!」

 

ノンナさんがいつの間にか目の前にいた。

この人、相変わらず心臓に悪い。

 

「貴方・・・どこかでお会いした事が、ございませんか?」

 

訝しげな目で俺を凝視している。

 

「いえ。・・・ありませんね。」

 

「・・・そうですか、勘違いのようですね。失礼しました。」

 

一言呟いて俺の横を通り過ぎ、今度こそ振り向く事なくカチューシャと帰っていった。

・・・怖かった。一瞬バレたかと思った。

 

さすがにもう大丈夫だろうと歩き出し・・・出せなかった。

今度は右手を掴まれたらしく、グッっと引き止められた。

 

先程から冷や汗しか出ていない気がする・・・。

 

 

 

そー・・と視線を向けてみたら・・・・満面の笑顔のオペ子が手を掴んでいた。

いつの間に・・・。気配すら感じさせないとは・・・。

 

あーしかもこれはバレてますね。はい、完璧に。

 

「お久しぶりデスネ。オペ子さんや。」

 

「やっぱり隆史様ですね!なんでそんな格好してるんですか?」

 

ごもっとも。

 

「ちょっと変装を・・・というかオペ子よく俺がわかったな。さっきカチューシャとノンナさんとすれ違ったけど、俺の事わからなかったぞ?」

 

俺の事が、わかる・わからないの境界線が不明すぎる。

あのノンナさんをも誤魔化せたのにオペ子には初っ端からバレてた。

 

「あー・・あの人達ですか。・・・ハッ。」

 

 

 

 

 

 

・・・笑った。あのオペ子さんが鼻で・・・。

 

「私はすぐわかりましたよ?当然じゃないですか。わからない人は、隆史様を良く見ていないだけですよ?そうです。見ていないのです。」

 

・・・・・・すっごい笑顔で言われた。

 

なんだろうこの不安感は。

 

取り敢えずオペ子の頭撫でて、癒されよう。

ワシャワシャする。

はわぁぁ・・とかいって撫でられているオペ子が、一瞬黒く見えたのは気のせいだろう。うん。気のせい。

 

「あなた!オレンジペコさんに何してくれてやがってますの!?」

 

後方より誰かすぐわかる声が飛んできた。まぁ、こいつなら大丈夫だろ。

振り向いた先、返事をする前に返された。

 

「あら。なんだ。隆史さんじゃありませんの。」

 

・・・・・・・・・・。

 

「ね。わかりますよ普通。ローズヒップさんでも、わかるのですよ?」

 

「ちょっとひどくありません?オレンジペコさん!」

 

・・・。

 

何故わかった・・・。一目見ただけだよね?

呆然としていたら今度は別方向より声をかけられた。

 

「失礼。そちらの方。私共の者が何か失礼でも致しましたでしょうか?」

 

今度は・・あー。

来た来た、来ましたよ総大将。いち、にー、さんっ、ダーー様。

 

「・・・何か?」

 

黙って見ている俺に警戒心全開のお嬢様。

見慣れていないなぁ・・・ダージリンの敵意がある視線。

結構知人にやられるとキツイなぁ・・。

 

「・・・。」

 

ワシャワシャもう一度、オペ子の頭を撫でる。

 

「!?・・・貴方、一体どういうおつもりかしら?」

 

おー怒ってる怒ってる。ちゃんと後輩の為に怒れるのか。

いいね。後輩をからかっている姿しか見たこと無かったから、正直おっちゃん見直しちゃったよ。

でもね、今回は少し違うの。

 

オペ子とローズヒップの手首を持って上に掲げる。

 

「うぃなぁー。オペ子とローズヒップゥー。」

 

「!!??」

 

「・・・マジですの?ダージリン様?この方、隆史さんですわよ?」

 

信じられないのか固まる田尻。

 

「え・・・え!?」

 

狼狽し出すポンコツ。おいおい、ローズヒップに引かれたよ。

 

「え・・あの、本当に隆史さん?」

 

「はい。この服装は一応変装のつもり。この二人には意味なかったけどね。」

 

サングラスを外して目を見せて理解したのだろう。納得したようだった。

 

が。

 

「そうですか。ダージリン様は、わかりませんでしたか・・・・・ハッ。」

 

・・・オペ子さん?

 

「私はわかりましたよぉ?」

 

「グッ!」

 

どうしたんですか?オペ子さん。様子がいつもと違いますわよ?

ダージリン!気にするな!な!?

 

「・・・こんな格言を知ってい『言い訳ですかぁ?』」

 

「」

 

懐かしいなぁあのお茶会の日々。何処行ったんだろ。

周りの人達がすっごい距離とって避けて行くよぉ。

 

「ブペ子。その辺にしておいてやって。わからないように変装したんだからさ。しょうがないだろ。」

 

「・・・ブペ子?」

 

「あ、ごめん。オペ子。ちょっと噛んだ。」

 

ワシャワシャもう一度頭を撫でて誤魔化す。

 

・・・先程の貴女はブラックペコでしたよ?

 

「ところで隆史様。」

 

放心しているダージリンを無視して問いかけてくる。

 

「なに?ダ・・オペ子。」

 

・・・もしくは、ダークペコか。

 

「私は、「隆史様の」癒し系なのですよね?」

 

うっわ、すっごい笑顔で懐かしい事を聞いてきた。

 

「そ・・そうだな。昔と変わらないよ。」

 

「そうですか。今となっては、それが嬉しく思います。で、ですね隆史様に聞きたい事があったのですけど、よろしいですか?」

 

とても嬉しそうにしてくれるのは、いいのだけれど不安感がすっごい。

 

「ナ・・ナンデショウ?」

 

「大洗の方にそのような人は、いらっしゃいますか?」

 

「・・・・・え?」

 

何を仰っているのでしょうか・・。

 

「いらっしゃいますか?」

 

・・・二度聞きされた。

 

真っ先にマコニャンが浮かんだけど、ブペ子の目がすごい色をしていたので誤魔化したほうがいいと判断した。

・・・この子こんなにプレッシャーを出す子だったっけ?

 

「い・・いませ『 嘘ですね?』」

 

 

ギャーーーーーーーーーー。

 

 

すごい真っ直ぐ見てくるよぉ。

何この子!すっげー怖い!!

 

「・・・まぁいいです。次回、見極めますね?」

 

笑顔で返された。

 

彼女の笑顔に、ここまでの恐怖を感じたのは初めだった。

 

・・・違う。俺のオペ子はこんな子じゃなかった。

何が彼女を変えさせたのか・・・。

 

あ・・・俺だ。

 

ダージリンがため息混じりに言っていたなぁ・・・。

 

「た・・・隆史さん。少しよろしいですか?」

 

「へ?」

 

半死半生って顔のダージリンから声をかけられる。

 

「・・・わからなかった事は、気にしなくていいよ?」

 

「それとは別件です。しかし、それはそれで・・私としては・・。」

 

「そうですよ♪気にしなくてイイデスヨ?ダージリン様!」

 

「・・・・・・・・・・ペコォォォォ。」

 

やだ。

 

なにこの空気。

 

「クッ・・・。タタタ隆史さん。貴方、何かやらかしまして?」

 

強引に話題を変えた。うん。懸命な判断だ。拍手を送ろう。

ただ、先程ミカからもそのような事を聞かれた。なんだ?

 

「来賓の大学戦車道連盟の方より、私と隆史さんの関係性を聞かれたものでして。」

 

「・・・。」

 

あのガマ蛙。

俺との繋がりを摸っているのか。

 

なるほど。それで継続高校隊長であるミカにも聞いてきたのか。

 

・・・それであの質問か。

 

そうなると、全高校に聞いて回っていると思ったほうがいいな。

 

継続高校の名前は迎賓館でのやり取りの時には出していない。

 

「どうしました?」

 

「いや。ちょっとあってね。ごめんな。迷惑をかけて。」

 

「いえ、大丈夫ですわ。あの理事長は私も良く思っていませんの。しかし・・隠すのも変ですので、お答えておきましたよ?」

 

「そうか。悪かった。ちなみに何て?」

 

彼女の答えに合わせておこう。

変に辻褄が合わないと面倒な事になりそうだ。

 

「『あまり人様に言える事ではないのですけど、とても濃密な仲ですわ。』と、ちゃんと正確に返答をしておきましたわ。」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

----------

-------

---

 

 

 

 

 

 

「隆史さん?・・・あれ?どうしました?疲れきった顔して。」

 

・・・女の子しかいないような・・・というか、女の子しかいない喫茶店に俺はいる。

 

先程、聖グロリアーナと入れ違いに、みんなと合流できた。

会長が2時間ほど用事があるそうで、俺達は集合時間まで自由時間だと言われた。

 

優花里の提案で・・・というか来たかったのだろう。

戦車喫茶とやらに連れてこられた。

全てがミリタリー風。完全に趣味の世界の喫茶店だ。

・・・俺の前世で言うメイド喫茶の様なものか?・・・違うか。

 

まぁどっちでもいいか。居辛い事には変わりない。

 

テーブルには既に注文品がすでに届いている。

・・・戦車の形をしたケーキ。食べ辛いなぁ。

 

「・・・いえ。少々気疲れを。」

 

疲れた。

 

胃が痛い。

 

みほ達には悪いが、早く帰りたい。

 

なんだよ。本日は厄日ですか?

 

「・・・隆史君。大丈夫?」

 

「みほアリガトウ。大丈夫だよ。」

 

「でも、顔色悪いよ?」

 

そりゃまぁ、あんな事連続で起これば疲れもするし顔色も変わる。

あの会話の後で、時間が無いからと聖グロリアーナは帰っていった。

よくあのブ・・ダ・・・。オペ子が良く納得したと思った。

 

あの時、アッサムさんが来なければ多分俺は胃腸炎で死んでいたと思います。

ダージリンめ・・・。変な噂が立たなければいいけど・・・。

 

「色々とあって疲れただけだから大丈夫。」

 

「そっか。大丈夫ならいいけど・・・で?」

 

「で?って?」

 

「隆史殿?私も聞きたいのですけど、よろしいですか!?」

 

優花里まで・・・。

 

「・・・だから何?」

 

まだイベントが残っているのかよ・・・。勘弁して下さい。

 

「隆史君を拉致した方とはどの様な関係?」

 

「・・・。」

 

それかーーーーーー!!!

 

「昔の知り合いだよ。ちょっと昔アドバイスして仲良くなったんだ。・・・料理のメニューの事だけどね。」

 

「「・・・料理。」」

 

「・・・そうですか。もう一人増えました・・。」

 

あれ?もっと突っ込まれて聞かれると思っていたのに。料理の一言で黙っちゃった。

 

「ど・・・どしたの?」

 

何故暗くなる?

ごめん。マジでわからない。

 

「隆史さんは色々と気を使われた方が、よろしいと思いますよ?」

 

「え!?」

 

華さんに黒い笑顔で言われた。・・・だから何を!?

 

「えーと。・・・ちょっとトイレ行ってくる。」

 

逃げよう。うん。

時間を開ければ多少は大丈夫だろう。

 

「あら?逃げるんですか?」

 

更に笑顔で言われた・・・。

 

「はい!逃げます!」

 

グッと親指立てて、いい笑顔で答えてやった。

 

 

 

 

 

-------

-----

---

 

 

 

 

 

 

・・・・もういいかな?

 

小さな男子トイレの中。

洗面所前でまごついていた。

 

いつまでも、ここにいるわけにもいかない。

ここには結構お仲間らしい男性が多数いた。

明らかに連れて来られた感漂う、教師らしき人や男子学生がいる。

まぁ居づらいよねぇ同士達。

 

仕方がない。そろそろ席に戻ろうと彼女達の席に向かう。

 

そういえば、抽選でサンダース付属高校と当たったと聞かされていたな。

確か優勝候補の一つだったっけ?

 

どっちにしろ、誰が相手にしろ全勝しない事には大洗学園に未来は無い。

勝利は前提条件。怖いのは試合後の戦車の消耗。

 

戦車だって無料でなんでも出来るわけではない。

故障だってするし、下手したら大破して次の試合に使えないかもしれない。

一回戦を勝ち抜いた次の事も考えておかないと・・・。

 

それに俺は、試合に参加できない。

みほ達、人任せになってしまうのが悔しいが、俺は俺の出来る事をするだけだ。

 

・・・かっこ悪いなぁ。

今更だけどな。

 

「ん?」

 

なんだ?みほ達の席か?

喫茶店の2階にある彼女達の席の前に誰か立っていた。

会話してるのか?他校とトラブルなら止めないと。

 

・・・ちょっと待て。あれ黒森峰の制服か?

近づいたら誰かすぐにわかった。

わー・・・まほちゃんだぁ。

 

わー・・・。

 

 

もう一人いるな。どこかで見たキツそうな子。というか俺には、すごいキツイ子。

エリリンだぁ・・・。

 

 

「まだ戦車道をやっているとは思わなかった。」

 

そんな声が聞こえてきた。

あれ?みほの奴、まほちゃんには言っていなかったのかな?

電話で会話出来るようになったとは聞いていたのだけど。

 

「お言葉ですが!あの試合のみほさんの判断は間違っていませんでした!」

 

おぉ、優花里が席から立ち上がり、まほちゃんに食ってかかっていた。

珍しい。あの優花里が、あんなに声を荒げるなんて。

 

「部外者は口を出さないでほしいわね。」

 

「すみません・・・。」

 

ありゃ。・・・優花里さん。

 

いや、彼女にしては勇気を出したのだろう。

頑張った。うん。後で褒めてやろう。

取り敢えず。間に入った方が良さそうだ。険悪な雰囲気になってきた。

 

「それは君も同じだろ?」

 

無理やり横から会話に入る。

 

前回決勝戦の事は、みほのトラウマの事も有り、それを知らない人間にグダグダ言われたく無かった。

何も知らない奴に何も言われたくない。

 

あの事に意見を言える人間は限られている。

少なくとも俺はそう思う。

 

「だから部外者が偉そうに口を出さ・・・ヒッ!」

 

後方からの突然の乱入者・・・まぁ俺だけど。

睨みつけようとでもしたのだろう。

エリカが後ろにいた俺の顔を振り向いて見て固まった。

・・・あ、ゴメン。まだ変装してた。

 

「え・・あ…。すすすみま・せ・・!」

 

おーおービビってる。

声をかけてはいけない人種だと思われたのか、涙目になって目が泳いでいる。

 

いやー。普段あそこまで勝気というか、キッツイ子にここまで怯えれると、ちょっとゾクゾ・・違う。

不謹慎だけど、ギャップでちょっと可愛く見える。

まぁ俺、声も荒げていないし棒立ちになっているだけなんですけどね。

 

「エリカ。」

 

「た・・隊長。」

 

スッと、エリカを守ろうと俺とエリカの間に体ごと割って入って来た、まほちゃん。

わー。まほちゃんの敵意ある視線って初めてかも。

・・・怖い事は怖いのだけどちょっと悲しいなぁ。

 

「失礼。後輩が無礼をし・・・て・・・・・。」

 

あれ?睨んだまま固まっちゃった。

目を細めて真っ直ぐ見てくる。

 

「あの・・隊長?」

 

・・・あまりのビビリ様だったのか、みほ達にまで同情の目で見られているエリカさん。

でも俺、悪くないよね?何もしてない。

ガッと顔を両手で掴まれ、引寄せられた。

 

「お前。隆史か?・・・なんだその格好は。」

 

・・・バレた。

 

「あ。わかる?」

 

「え!?」

 

エリカさんや、びっくりしすぎです。

何故みほ達まで驚いている。

一度、目を見開いて細める。俺だと確信したら前みたいに、そのまま睨みつけてきた。

そうそう。それがエリリン。

 

「・・・貴方。一体なんの真似!?」

 

「何が?俺、何もしてないよ?勝手にビビるエリリン可愛かったよ?」

 

「エリリンと呼ぶなぁ!!か・・可愛いとか言うな!!」

 

みっともない姿を見られたとでも思ったのだろうか、真っ赤になって怒号を浴びせてくる。

 

「あれ・・隆史君。エリカさんと知り合いだったの?」

 

「みほには言っていなかったっけ?西住家に乗り込んだ時に知り合って仲良くなった。」

 

「仲良くなどなって無い!それに貴様!・・・あの時の事は忘れんぞ・・・。」

 

「・・・隆史。私の質問に答えなさい。」

 

あ・・いつの間にか取り残されたまほちゃんが、ちょっと怒ってますね。

さすがに隊長様がでてきたので、エリリン後ろで唸ってる。

 

「ん。まぁウチの生徒会長からの命令。引率の教員の振りをしろってね。・・・老顔だから違和感が無いだろって言われた。」

 

「・・・なるほど。それで、わざわざそんな格好をしているのか。防犯という奴か。」

 

事情を理解したのか、一言で納得している。相変わらず凄いな。

 

「まほちゃん。ちょっと会話が聞こえたんだけど、みほが戦車道に復帰したの知らんかったの?」

 

「そうだ。聞いていなかったな。・・・だから今日、開会式会場で抽選をしているみほを見て驚いた。」

 

「・・・お姉ちゃん。」

 

まだダメかなぁ。ビクビクしているみほは、あまり見たくない。

 

「良かったな。また戦車道に戻れたと私も嬉しかった。・・・隆史のお陰か。」

 

「!?」

 

みほの目が見開かれた。ついでにエリリンも。

 

「なんだ?何を驚いている。」

 

「いや・・お姉ちゃんにまた叱られるかと思って・・・。」

 

「何故だ?」

 

心底分からない顔をしたまほちゃん。

そしてまほちゃんのセリフに驚愕しているエリリン。

 

「隆史がそちらに行ったのも、私とお母様が頼んだようなものだ。何を驚く?」

 

「まほちゃん。・・・あの言い方は、そう取られても仕方がないと思うよ?」

 

「ム・・・。そうか・・・。」

 

口下手なのは本人が自覚している。何度か相談も受けた事あったし。

はっきり言わないと分からない事も有るとかね。

「そうだな。特に隆史はその最たるものだな。」とか言われたけど・・。

 

「所でまほちゃん。変装していたのに良く俺が分かったね。みほ達は分からなかったのに。」

 

ちょっと湿っぽい雰囲気になって来たので強引に話題を変える。

あまりこういった事は、沙織さん達に見られたくないだろう。

 

 

「顔を見たらすぐに分かったぞ?みほ。分からなかったのか?」

 

「う・・うん。どこかの怖い人かと思っちゃった。」

 

よしよし。普通に会話ができている。

ちょっと前までは、考えられなかったな。

 

「・・・そうか。私は分かったぞ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・そう・・・だね。」

 

 

 

・・・。

 

・・・・・珍しい。まほちゃんがドヤ顔してる。ドヤァって。

 

 

イラッ

 

「みほは、毎日学校で会っているのだろう?」

 

「・・・うん。同じ学校で戦車道に所属してるし。」イライラ

 

 

あ・・・みほさん、アパート同じ事言ってない。学校って言った。

 

 

「フッ・・・そうか。ところで、隆史と最後に会ったのは一月振くらいか?」

 

イライラ

 

「・・・そうだね。熊本で別れてからは、一月クライダネ。」

 

 

何故俺に確認を取る?貴女、俺より頭いいでしょ。

 

 

「みほ。「私」はすぐに分かったぞ?」

 

「」

 

 

 

 

「フ・・フフ・・・・ふふっ。お姉ちゃん♪何が言いたいの?」

 

 

あれ?

 

 

沙織さん達なんで違う席に移動したの?

 

華さんなんで黒い笑顔してるの!?

 

優花里は、なんで敬礼してんの!!??

 

マコニャン寝るな!!

 

「た・・隊長。」

 

 

さすがの空気にエリリンですら気を使ってくる。

西住家流オーラ全開になる前になんとかしないと! 

 

「・・・エリカさん。ちょっと黙ってて。」

 

「」ピィッ!

 

・・・エリカさん?

貴女そんなに弱かったっけ?

 

 

「・・・まぁいい。今回みほが、ちゃんとやっていけているのを見て安心した。」

 

「・・・お姉ちゃん?」

 

さすがまほちゃん。空気読んでくれた!会話を締めにかかってくれた!!

しほさんが、出来なかった事だよ!!

 

「友達には、邪魔をしてすまなかったと謝っておいてくれ。」

 

「う・・うん。」

 

「では、エリカ。もう行こう。」

 

「ハ・・ハイ!隊長!!」

 

・・・安堵の返事だなあれは。うん。

さて、やっとこさ平和が戻るな。

 

 

「・・・お姉ちゃん。」

 

「なんだ?」

 

「何で隆史君の腕を組んでるの?」

 

「あれ!?いつの間に!!」

 

がっちり組まれてました。

自然な流れすぎて気にもしてなかった!

 

「ん?・・・では行こうか隆史。」

 

「何でそうなるの!隆史君は大洗の生徒だよ!?」

 

「?」

 

「本気で分からないって顔はやめて!」

 

「みほは、もう大丈夫なのだろう?」

 

「・・・隆史君のお陰でね。」

 

「では、もういいだろう?」

 

「何が?」

 

・・・帰りたい。帰って筋トレしたい・・・。大胸筋を鍛えたい。

 

「エリカさん!」

 

「え!?私!?」

 

「何黙ってるの!?お姉ちゃんを隆史君に取られるよ!?」

 

「えぇー・・・。」

 

すげぇ。エリリンにすら何も言わせない。

 

「あの。まほちゃん。取り敢えず腕を離してくれない?」

 

「何故だ?」

 

「あの・・当たってる。」

 

先程から二砲塔ほどムニムニ当たって色々と困る。やめてください。本当に困ります。

さっきの湿っぽい雰囲気どこ行った。

 

「・・・そうか。隆史はこういうのは嫌いか。・・・そうか。」

 

ま・・まほちゃんが・・・。あのまほちゃんが、ショボーンとした・・・。

 

「すまんな、ここの最近、成長ばかりしてサイズの買い替えばかりで私も迷惑しているのだが・・・。」

 

・・・なんの話ですか?いえ分かりますよ?分かりますけど、そんな話聞いて俺にどうしろと言うんだよ!

確かに制服の上からも分かる凶悪な兵器はとても素敵ですけど・・・え?まだ成長してる・・だと?

 

「嫌いじゃ無いですよ?寧ろ大好・・。」

 

「・・・オイ隆史。」

 

「すいません!みほさん!」

 

しまった無意識に目線が行ってしまったか。

 

「みほ。」

 

「ハァーハァー。何?お姉ちゃん。そろそろ我慢の限界なんだけど。」

 

「一つ言い忘れていたのだが。あの時、写真には撮らなかったのだが・・・。」

 

「・・・何?」

 

「エリカも隆史にお姫様だっこされてる。」

 

「」

 

・・・確かに。熊本の西住家で、その場のノリとヤケクソ気味の勢いで、しほさんの提案通り

エリリンも抱き上げた。

異性慣れしていないエリリン。真っ赤になってそれはそれはモウ・・・。

 

先程の「あの時の事は忘れんぞ」は、その時の事だろうなとは思ったけど・・・。

 

「・・・まほちゃん。でもさ、何故それを今、このタイミングで言うの?」ガタガタ

 

「なに。他人事の様な顔をしているエリカが気に食わなかっただけだ。」

 

「隊長!!??」

 

「エリカサン。・・・ドウイウコトデスカ?」

 

「ヒィ!」

 

・・・ごめんねエリリン。西住姉妹修復しすぎた。普通に姉妹喧嘩になって、他人を巻き込んでる。

みほとまほちゃんを見て、しほさんと千代さんが重なって見えて仕方がない。

 

「エリカサン?ドウイウコトカッテ、キイテイルンデスヨ?」

 

「」

 

「隆史。ではもういいだろう。私達は向こうでなにか飲もう。」

 

「え?あれ?エリカさんいいの?」

 

「いいだろう。あれは戯れているだけだ。」

 

「・・・あの、しほさんに言われて、エリカさん抱っこしたの・・ひょっとして怒ってる?」

 

まほちゃんが珍しく・・・本当に珍しく、懐かしい昔みたく楽しそうな顔をした。

 

 

 

「・・・さて?どうだろうな?」

 

 

 




はい。閲覧ありがとうございました。
今回、前回より自業自得ということで、一人称全てオリ主でした。

次回です。次回サンダース戦開始となります。できるといいなぁ。
そして秋山殿。

ありがとうございました。また次回お願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。