転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第15話~秋山さんです!~

「みほさん。そろそろお許しを頂けると大変ありがたいのですが・・・。」

 

下校中・・・というか、私達は秋山さんのお家に向い歩いています。

 

「・・・。」

 

プィッと隆史さんが、みほさんを呼ぶたびに彼女はそっぽを向く素振りをします。

わかりやすい拗ね方といいましょうか・・・。

 

「秋山さん、結局練習に来ませんでしたね。」

 

「メールは返ってきた?」

 

隆史さん以外にはちゃんと会話をしてくれます。

彼は彼で「まいったな」という感じで後からついてきます。

 

「ぜーんぜん。電話かけても圏外だし。」

 

「どうしたんでしょう・・・。」

 

同じクラスの隆史さんも今日は秋山さんを見ていませんでした。

つまりお休みだったという事ですね。

あの「戦車大好き秋山さん」が、何も言わないでお休みするとはちょっと心配になります。

 

それは、生徒会長達も疑問に思ったようで、隆史さんに様子を見てくるよう命じていました。

大洗学園の戦車道チームの要である私達、みほさんのチームに何かあると困ると心配になったのでしょう。

私達は私達で心配だったのでご自宅まで様子を伺うつもりでしたので、ついでにと隆史さんも同行する事になりました。

ですけど、現在絶賛みほさんが隆史さんに対してお冠の状態。

 

「みほちゃーん、みぽりーん。みぽみぽ~。」

 

「・・・。」

 

・・・昨日あの戦車喫茶で、みほさんのお姉様に連行された隆史さんにとても怒っていらっしゃいました。

みほさんも拗ねるのですねぇ。

遠目でしか見ておりませんが、冷静になったみほさんが、まず見たのが・・・仲良くお茶を飲んでいる隆史さんとお姉さんですからねぇ。

怒る気持ちは分からなくも無いです。

 

帰りの車中でも、港から学園艦に向う連絡船の中でも、ずっと隆史さんを無視していましたね。

何か隆史さんが話かける度に、今見たくプイッっと顔を背けてました。これはこれで可愛いと思うのですけど・・・。

その様子を微笑ましく見ていたのですが、隆史さんがそんな私の顔見て軽く引きつった笑顔になっていたのは、どうしてでしょう?

 

「に・・西住さーん。」

 

「 !! 」

 

隆史さんが、みほさんを苗字で呼んだ直後、グリンと首が回り、みほさんが隆史さんを睨みつけます。

 

「・・・分かった。今回は許してあげるけど、次そんな呼び方したら・・・本当に怒るから。」

 

「い・・いえす、まむ。」

 

あら~。結構本気で怒ってますね。ここの所いい所無しですね、隆史さん。

ちょっと気になったので聞いてみましょうか?

小声で・・・みほさんにバレないように。

 

「隆史さん。みほさんは何で、あそこまで怒っているのですか?」

 

「・・・今の事?」

 

「そうですね。先程までは昨日の喫茶店での事でしょう?今の首の回り具合は、・・・ちょっと私も怖かったです。」

 

「あー・・・。みほ達姉妹はですね、俺が苗字で呼ぶと昔からメチャクチャ怒りましてね・・・。

 朝からみほが、思いの外機嫌を直してくれないので、ちょっと強行手段に・・・。」

 

「あら。昨日の事よりも「西住さん」呼びされる事の方が嫌なんですね?」

 

「そうみたいですね。あまり使えない手ですが・・・。コワイノデ。」

 

みほさんのお姉さんもここまで怒るそうですけど、隆史さんもいい加減イロイロと気づくべきだと思います。

いえ、気がついてはいるのでしょうか?あの怯え具合は。・・・でもまぁこれはこれで、日常が「えきさいてぃんぐ」になりますね。ウフフフ・・

 

「・・・華さん。最近笑顔が若干怖いですよ?」

 

あらあら、隆史さん。そんな事ないですよ?私至って普通ですよ?

今だって笑顔で返してあげたじゃないですか?

何で顔が引き攣るのでしょう?

 

 

 

「あれ。秋山さん家、床屋さんだったんだー。」

 

沙織さんの声で気づきましたが、もうすでに到着していました。

「秋山理髪店」少し日焼けした店先の看板に書いてあります。

 

「営業中ですね。お客さんは・・いないようです。今なら大丈夫そうですね。」

 

「・・・隆史君?どうかしたの?」

 

なにか複雑そうな顔をしていますね。

 

「いやー・・・。この前、夜に彼女達を送っていった時あったろ?ほら、時間がちょっとかかった日。」

 

「・・・うん。あったね。練習試合の日でしょ?」

 

まだ、若干機嫌が良くないみほさん。

会話できるだけ良くなったようですけど。

 

「そうそう。帰ってきたら、みほが女豹のポー・・痛ぁ!!!」

 

・・・真っ赤になって隆史さんをつねっています。何があったんでしょう?女豹?

というか隆史さんは、やはり少しおバカさんですね。みほさんが怒る内容なら口にしない方がいいと思うのですけど。

 

「むぅ。・・・その日最後に優花里を送って行ったんだけどね、店先で優花里のお父さんと鉢合わせになってなぁ・・・。」

 

「・・・それで?」

 

「夜遅かったって事もあって・・・彼氏に間違われてた。」

 

ガチャ。

 

チリンチリンと音を出し扉を開けました。・・・私が。

隆史さんは無視ですね。

 

「すみませーん♪」

 

「あれ?皆さん?話聞いてました?何で即入店してるんですか!?俺、顔合わせ辛いんですけど!?」

 

チームワークって普段から発揮される物ですね。何事も無いように皆さん一同に入店しました。

中には、エプロン姿の秋山さんのお父様とお母様が座っていました。お父様は新聞を読んでいますが・・・暇なのでしょうか?

でしたら問題ありませんね。隆史さんは少し黙っていてください。

 

「あの、優花里さんはいますか?」

 

「ん?あんた達は・・・?」

 

「友達ですー。」

 

「トモダチ・・・とっと、友達ぃ!!??」

 

お父様が、沙織さんの「友達」発言にすごく慌て出しました。

何かおかしな事を言ったのでしょうか?

 

「お父さん落ち着いて!」

 

「だ、だってお前!?優花里の友達だぞ!?」

 

「分かってますよ。・・・いつも優花里がお世話になってます。」「お世話になっております!!」

 

あら~。お母様のお辞儀の横でお父様は土下座でご挨拶されてしまいました。

すでに初めて見るわけでは無いのですけど、土下座はまだびっくりしますね。

 

「あ・・あの。」

 

「優花里、朝早く家を出てまだ学校から帰ってないんですよ。」

 

「・・・ん?お前は。」

 

土下座から顔を上げたお父様の視線が隆史さんを凝視していますね。

隆史さん・・・あれ?あまり焦っていませんね。

 

「こんにちは。先日はどうも失礼しました。」

 

「おおおまっお前!良く顔を出せたな!!」

 

「お父さん?」

 

「母さん!こいつはな、この前夜の9時頃にな・・・仲良く優花里を家に送ってきたんだぞ!!」

 

「えーと、それが何?仲がいいならいいんじゃない?」

 

「優花里のか・・・かか彼氏かもしれんだろ!!しかも夜遅くまで優花里を連れ回して!!」

 

「あら。でも、優花里。野営とか何とか言って外泊も夜遅くなるのも良くあるでしょう?」

 

「外泊!?・・・貴様ぁ!!」

 

あー。これはなる程。お父様は思い込みが激しいタイプですね。

隆史さんが顔を合わせ辛いのが何となく分かりました。話を聞いてくれないタイプですねこれは。

先日鉢合わせたって事は、ある程度隆史さんから説明しているのでしょうけど・・・多分覚えていないでしょうね。

 

「お父さん!ごめんなさいね?えぇと貴方は?」

 

「はい。大洗学園生徒会書記兼、戦車道に所属している尾形と申します。ゆか・・秋山さんとはクラスメイトでもあります。」

 

あらー。役職までいいましたねぇ。

はじめましてとお辞儀までして。

でもいつもと様子が違うように見えます。少々気味が悪いですね。

 

「みほさん。」

 

「なに?華さん。」

 

「隆史さん、随分と落ち着いて見えるのですけど・・・あれ実はとても動揺してません?」

 

「あ、わかる?隆史君、大層な敬語とか使い出す時って大体怒ってる時か、すっごい焦ってる時なの♪」

 

あら、随分と楽しそうに・・・。

 

「・・・私の時もそうだったな。あれは怒っていたと言われて、謝られたが。」

 

「麻子がマコニャンに変わった時に謝られたの?」

 

「・・・そうだが、その呼び方はヤメロ。変わってない!」

 

あの様子ですと背中とか大層な冷や汗かいていそうですね。

それででしょうか?みほさんが嬉しそうにしているのは。

 

「皆さん戦車道のお友達なのね。なら大丈夫じゃないお父さん。生徒会の人だって。「尾形」って苗字も良いじゃないの。」

 

「ぐ・・しかし、それは理由にならないだろう?あれだぞ!?悪い虫だぞ!?」

 

「・・・お父さん。いい加減にしなさいネ?」

 

「」ヒィ!

 

あらあら。小さくなってしまいました。

今気づきましたが、秋山さんはお母様似ですね。

 

「では、皆さん2階へどうぞ。優花里の部屋で待っていてください。」

 

私達が移動しようとする中、隆史さんだけが動きませんでした。

お母様も気づかれたようで。

 

「尾形君?どうしました?」

 

「いえ、俺は外で待っていますよ。帰ってくれば分かると思いますので。」

 

「お客様を外で待たせるなんて・・・お父さんは気にしなくていいのよ?」

 

「いえ。さすがに留守の女性の部屋に、僕みたいな男が本人の許可もなく入るのはちょっと・・・。」

 

「あらあら。優花里を「女性」ですってお父さん。」

 

「・・・。」

 

「気にしなくていいですのに。」

 

「僕が気にするんですよ。遠慮させて頂きます。ゆ・・秋山さんに悪いです。」

 

「・・・。」

 

「あの・・・お父さん。睨んでくるのそろそろやめて頂けますカ?」

 

「・・・君にお義父さんと呼ばれる筋合いは無いな。」

 

「」

 

中々に楽しいやりとりですね。

思わず笑顔になってしまいます。

でもあれは多分、字が違いますね。

 

「ね・・ねぇ華?」

 

「なんでしょう?」

 

「私「お義父さんと呼ばれる筋合いは無い」ってセリフ、ドラマ以外で初めて聞いたよ。」

 

「私もだ。」

 

「私もー。隆史君、楽しそう♪」

 

「そうですねー♪」

 

「・・・みほも華も何でそんなに笑顔なの?なんかコワイヨ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからどのくらい経っただろう。

カチコチ時計の音だけが聞こえる。

 

お父さんは新聞を読んでいる。・・・振りをしている。

ちょこちょこ敵意ある視線を感じるんですよ。

正直、この体の同年代と話すより、大人と話すほうが楽だ。

しかしこの状態はきつい。話せる雰囲気などでは無い。

 

・・・そう、お父さんと二人で1階の店内で優花里を待っている。

結局、外で待つことをお母さんが許してくれなかった。

みほ達にお茶でも出すのか、奥に入ったきりお母さんは戻ってこない。

 

特にやる事も無く、話すことも無く、ただ無言の時間が過ぎてゆく。

 

・・・きつい。

 

何か話すきっかけが欲しくて店内を見渡すしてみた。

ごく普通の良くある床屋の店内。

部屋の上の方を見渡すと結構な数の写真が額に入れられ飾られていた。

 

少し幼く感じる優花里の写真・・・あれは高校1年生の時かな?

戦車の写真、表彰状、家族の写真・・・。この人も結構な親バカみたいだしな。

うぉ、まだブラウン管テレビが有る。

 

・・・ん?なんだあれ。新聞の記事か?

切り抜きらしき物が写真と同じく額に入れられ飾られていた。

それを見ていた事に気がついたお父さんが初めて口を開いた。

 

「・・・優花里はな、昔・・小学生の時だ。戦車道の大会を見学しに行った時に死にかけたんだ。」

 

「え?」

 

いきなり話しかけられた事とその内容にビックリした。

死にかけた?その時の記事だろうか?

 

「その場に居合わせた同世代の男の子に助けられてなぁ・・・。それはその時の新聞の切り抜きだ。」

 

「・・・そうですか。」

 

「その子には感謝しても、したりない。その後、優花里と友達になってくれてな。

 高校まで友達がいなかった、あの子の支えになってくれていたみたいなんだ。」

 

「・・・。」

 

結構重い内容に何も言えなかった。

 

「それ以降、親としてあの子の事が心配で心配で・・・。そんなあの子が・・夜遅くに・・・男と家にぃぃ。」

 

あ。ヤバイ。これは喋っているうちに怒りが込上がって来た感じだ。

お・・お母さん!早く帰ってきてください!!

 

「そ・・そうなんですかぁ。」

 

曖昧に返事をするしか無かった。

そのまま気にしないふりをしながら、その記事を見上げ、読んでみる。

 

地方新聞だろうか?

文字だけの、小さな欄の小さな記事。

すでに変色し黄ばんでいる。

 

《 今月、戦車道の試合が行われた熊本の会場で― 》

 

わざわざ熊本まで見に行ったのか・・・あーなる程。

西住流の本拠地だし、好きな人には遠出をしても見に行く価値があるのか。

 

《 会場の観客席から― 》

 

 

海沿いで試合してたのか。

それでか。大会会場で優花里、客席から海に転落しちゃったわけね。

 

でも、救出されているのなら新聞記事になる程の事かなぁ。

あぁこれは、「優花里を助けた人」の記事か。

優花里を海から救出し、応急処置まで行ったのが。

 

それでも新聞記事になるような事か?

 

・・・。

 

ナルホド。助けて応急処置まで行ったのが同い年の小学生だって。

 

ナルホド。それは記事になるな。ウン。小学生でそこまでやれたら記事にもなるかもね。

 

その小学生の名前も記載されていた。

 

《 尾形 隆史君(8歳) 》

 

「」

 

俺だった。

 

え?知らない。男の子は助けましたよ?

そうそう、パンチパーマの男の子。・・・男の子?

 

嘘だろ?

 

 

「やっぱり・・・。」

 

「うわぁ!!!」

 

思わず仰け反ってしまったじゃないか。

いつの間にか、みほが俺の横に立って切り抜き記事を見上げていた。

 

心臓がバクバク言っている。

なに?ノンナさんといいオペ子といい、戦車道の隊長格みたいな人はみんな気配殺せるの?

随分と暗い顔をしているので本気で驚いた。幽霊みたいに存在感がない。

 

「これ見て・・・。」

 

なんだろ。みほが手に持っている物を開いて差し出してくる。・・・アルバム?

そこには・・・。

 

「まじかぁ・・・。」

 

昔、みほとまほちゃんに見せたパンチパーマの男の子と一緒に写ってるツーショット写真。

それと同じものがアルバムの中に合った。

 

「これ。子供の頃の隆史君だよね?」

 

 

 

 

 

-------

-----

---

 

 

 

 

 

 

優花里の自室。6畳間の和室。

なんだろう。

この世界は戦車は乙女の嗜み。よって戦車は女性の乗り物。

だからこの部屋は正常なのだろう。

だけど・・・戦車のプラモ、ミリタリーグッズ。

テレビの裏には砲弾が陳列している。隅には、プラモの箱が積まれている。

 

これが女の子の部屋かぁ・・・。

 

優花里は自分の部屋の窓から帰宅したとの事。

窓からかぁ・・・。

そんな部屋主が帰宅した部屋でその部屋主に対して、俺は誠心誠意の真心を込めた土下座の最中。

 

「ほんっっっとうにすいませんでした!!」

 

「いえ、あの時は男の子に見られても仕方ありませんよ。だからあの・・困りますぅ・・・。」

 

そんな俺に、あわあわしている優花里さん。

 

「失礼な話!長年、優花里さんを男と思っておりました!!」

 

こんな失礼な話も無いだろう。

チャットでもメールでも。男と話しているつもりでずっと交信していた。

 

「もういいです!もういいですから!顔を上げて下さいぃぃ。」

 

本当に困った顔で嘆願された。いえ罵って下さっても結構です!!

 

「ごめんね秋山さん。わ・・私も隆史君に見せてもらった写真で男の子だと思ってたの・・・。」

 

「西住殿も気にしないで下さい。仕方ないですよ。」

 

優花里さんは座り直して、一息つき言い出した。

 

「・・・私、実は一つ嘘をついていました。」

 

「嘘?」

 

部屋で土下座中の俺に優花里さん以外から向けられる視線が痛い。

・・・何故か約一名すっげーいい笑顔でいますけど。

 

「はい。実は隆史殿が転校してきた日、まさかとは思っていました。・・・その隆史殿の正体というか何というか・・・。」

 

「あー、目を輝かせて見てきた時か・・・その理由が確か俺の母さんが戦車道の師範だから嬉しくなったとか言っていた奴?」

 

「はい。初めは同姓同名の方かとも思ったのですが・・・その、友達を紹介してくれるって話で確信しました。」

 

「・・・オッドボール三等軍曹。」

 

「そう!それです!・・・もうお気づきかと思いますが、それ私です。」

 

「ソウデスヨネー。」

 

初めは電話でやり取り、中学生になった辺りでスマホが販売され、ネット上のチャットでのやり取りになった。

電話では、中々声変わりしないなぁくらいにしか思っていなかったし、ネット上では名前がハンドルネーム表記になっていた。

電話はチャットをしだしたあたりでしなくなったので、声で判別は出来なかった。

 

「そんな訳で気がつきませんでした。本名聞いたのかなり前で忘れておりました。どうぞ殺してください。」

 

「いえいえそんな!私友達いなかったし、隆史殿とのやり取りは本当に楽しかったんです。ありがとうございました。」

 

「いえいえこちらこそ!」

 

向かい合って土下座の挨拶をする俺達。

なんだこの絵。

 

「そうすると・・・なに気にみほより優花里の方が俺と付き合い長いのか・・・。」

 

そんなに大差はないけど。

・・・一瞬ピクッっとしたみほさん。何でしょうか?

そしてもう一つ思い出した。

 

「あ・・・それでか。亜美姉ちゃん襲来の次の日の朝、優花里の様子がおかしかったのは・・・。あ。」

 

「!!」

 

ただの呟きだったのだが、思いっきり声に出てしまった。

あの名前で呼び合うと提案した日、斬新な挨拶をしてきた日。

 

優花里さんが涙目になって真っ赤になってしまいました。

人工呼吸という人命救助の行為だとしても・・・だ。

恥ずかしがる年齢でもないのだが、なんだ?俺まで顔が熱くなる。

 

「あ・・・あの、その。口に出されるとさすがに・・・て、照れちゃいますよぉ。」

 

更に赤くなって俯いてしまった。目だけ上目遣いで見てくので、若干見つめ合ってしまった。

 

 

・・・。

 

 

「隆史さん?」

 

「はっ!!は、はい!?」

 

華さん。笑顔が怖いです。

 

「デリカシーって言葉をご存知です?」

 

「・・・は、はい存じております。」

 

「知っているだけではダメですよ?ちゃんと理解してくださいね?」

 

そっとお腹の前でみほの方を指差し・・・た・・・。

 

「」

 

 

ガタガタガタガタ

 

西住流ここに有り

 

 

 

 

 

-------

-----

---

 

 

 

 

 

 

「隆史君。」

 

「ハイ。ナンデショウ?ミホサン。」

 

「・・・この中で誰が知り合い?」

 

優花里が今日学校を自主休校して行っていたのは、サンダース大付属高校の潜入調査の為だった。

 

実録!突撃!!サンダース☆大付属高校

 

テロップまでつけてまぁ・・・気合入れて編集したなぁ。

コンビニ貨物船に密航までして撮ってきたのかぁ・・。

 

トイレで着替え出した時にさすがに見ちゃいかんと思って横を向いたら、超真顔のみほさんと目が合いました。

安心してください。しっかりハイライト様はご不在でした。・・・頼むから仕事してください。

よしよしと、頷いて顔をテレビに戻したみほさんより、流れる映像を見てそんな事聞かれました。

その時は、こちらも見ないでテレビ画面を凝視しながら・・・。

 

「サ・・サンダースには知り合いはいませんよ?面識もナイデス。」

 

「・・・ふーん。そ。」

 

し・・信じてぇぇぇ。

 

優花里は、みほの為、試合の為とわざわざ撮ってきたのか・・・。

でもごめん、正直もう気が気じゃなかったので、あんまり記憶に残っていない。

怖いの。

最近俺、怯えてばっかりいる気がする。

 

一番の恐怖は帰り際だったりする。

 

「隆史君!」

 

すごい勢いで優花里のお父さんに掴まれた。

それこそ走って体当りされるように。

 

「すまなかった!命の恩人の君だと知っていればあんな態度は取らなかったんだ!」

 

さっきと対応がまるで違う。なにこの変わりよう。

みほ達とのやり取り見てさすがに気がついたのだろう。

名前と出身地等を聞かれ、優花里に確認を取りしばらく呆然としていた。

2階にあった優花里の部屋から降りてきたらこの様子だった。

 

「あ、いえ僕も急に来てご迷惑をおかけしました。先日の事も、おじさんもびっくりしたでしょうし。」

 

「何を言うんだ!!」

 

ガッと音が出るような勢いで両肩を掴まれた。

 

「お義父さんでいい!!」

 

「」

 

 

 

 

 

次の日より朝練が開始になったのだけど、マコニャンが一番の心配だったけど毎朝沙織さんが引きずってきていた。

今度沙織さんを労ってやらないとな。

 

俺は生徒会員としての仕事があるので、みほ達と一緒にいる時間が少なくなっていった。

試合が近づくに連れて、忙しい日々になっていく。

 

大体俺がやる事は雑務が大半だった。柚子先輩の手伝いが大体の7割を占めていた。

あの先輩も今度労ってやらないと・・・仕事量がすごい。

あの人のお陰で維持されてたもんだよなぁ・・・生徒会って。

 

放課後、沙織さん達は、みほに内緒で居残り練習を自主的にやり始めていた。

でもそれは、結局みほにバレてしまい、チームみんなで仲良く居残り練習をする事になっていた。

ここら辺からだろうか、できるだけ必要以上にみほ達に関わらないようにしていった。

 

彼女達は彼女達の世界がある。

 

男の俺がいるとできない会話もあるだろうし、気を使うだろう。

仕事とプライベードは分けないとね。

 

他のチームの戦車の塗装もし直した。

みんなの気持ちも段々と変わっていったのだろう。

各チーム名も決まり、みんなも戦車にも愛着を持つ頃だろうな。

 

 

「隆史ちゃん。」

 

「何すか?会長。」

 

「ちょっーと、いい?」

 

「・・・嫌です。」

 

「おや。何で?」

 

「ちょっと今、忙しいんで。・・・それに普通の生徒会員の面倒も柚子先輩見てるのでしょ?あの人の仕事量ちょっとかわいそうですよ。」

 

「いやぁー。少し耳が痛いねぇ。」

 

「まぁ聞くだけ聞きますよ。何すか。」

 

「パンツァージャケットの発注の件なんだけど。」

 

「あぁ。各チームのパーソナルマーク付きの発注はすでに終わってますよ?何か問題でも?」

 

「いやね。ここに皆のデータがあるんだけどぉ・・・隆史ちゃん見た?」

 

何を言い出すんだこの会長は。

 

「見てませんよ。身体情報も個人情報でしょうが。それは柚先輩に任せました。試合の当日には届くでしょうね。」

 

「・・・本当にぃ?みんなのスリーサイズとかのってるよ?」

 

あぁなる程。

現在結構な忙しさだけど、会長は基本やる事が無いのだろう。

俺をからかいたいのかな?

 

「・・・会長。暇なら桃センパイで遊んでいてください。」

 

「あれ?本当に見てないの?」

 

・・・。

 

「杏。」

 

「!?」

 

突然名前呼ばれて珍しくびっくりした感じの会長。

しかしこちらも暇ではない。なんせ明日試合当日だ。

残った仕事自体は、さすがにもう終わるけど。

 

「はぁ・・・杏。」

 

「な・・なにかなぁ。」

 

「今、最終調整で忙しいんですよ。何?暇なの?」

 

すでに練習も終わり皆、帰った後だ。

最期の仕上げに俺だけ残っていただけだ。

 

・・・あぁそうか、会長も不安なのか。

 

そりゃそうか。なんだかんだ荒唐無稽な人だったから気にしなかったが、この人もまだ子供だった。

17、8歳の娘が学園の命運を握る代表だもんな。

プレッシャーは人一倍か。

 

・・・。

 

無言の時間が続く。時計を見ると20時を回っている。そろそろ仕事が終わる。

書類作成も結構めんどくさい。

2回戦に向けた書類の下準備をしていた。これを終わらせておけば後々楽だ。

 

「・・・大丈夫ですよ。」

 

カタカタとパソコンを打ちながら返事をする。

 

「な・・何が?」

 

「みほが本気になってる。後は、皆が諦めなけば勝機は有ります。なんとかなりますよ。」

 

「・・・。」

 

視線を移して見れば、会長室の窓から外に視線を投げている会長。

 

ふむ。

 

「・・・会長。正直いいますよ?」

 

「なんだろ?」

 

はー・・やっと仕事が終わった。後は帰るだけだな。

結構な事務処理が溜まっていた。

重要な事は終わらせたからしばらくは楽できそうだ。

 

パタンとノートパソコンを閉める。

会長を真っ直ぐ見て、真面目に話してやろう。

 

「・・・俺はどうでもいいんですよ。この学園の未来なんぞ。」

 

「!?」

 

こちらを振り向く会長。

まぁそうだろな。目が合う。

 

「そっか。まぁ・・・隆史ちゃんは、西住ちゃんが・・・心配で転校してきただけだもん・・ねぇ・・・。」

 

「まぁ最初はね。」

 

まぁ俺もやっぱり甘いのかなぁ。結局昔みたいに変に情に弱い。

例え裏切られてもそれはそれかな。覚悟があると結構違うもんかなぁ。

 

「やっぱり、杏はこの学園が大切なんだよな?」

 

「・・・まぁね。」

 

少々寂しそうな顔をしている。

 

「まぁ・・ならしょうがない。」

 

「・・・なんなのかなぁ?」

 

「俺は、あんた達が・・・結局の所、気に入ったんだ。あんた達が守りたいモノならなんだってしてやるよ。」

 

「・・・。」

 

「転校初日の日に言ったと思うけど、俺が体を張ってやる対象に、もう会長達も入ってるんだよ。恥ずかしいから言わせないでくれ。」

 

 

「・・・。」

 

 

「・・・あのさぁ隆史ちゃん。」

 

なんでしょうかねぇ。正直結構、年甲斐もなく直球に本音を言ってしまった。あぁ。俺今17歳か。ならセーフかな?

 

「練習試合の後、ダージリンが言っていたの思い出したんだぁ。隆史ちゃんの事「卑怯者」って。」

 

「・・・言ってましたね。」

 

会長が後ろを向いてしまった。なんなんだよ。

 

「実感した。・・・タイミングがずるいんだよ、隆史ちゃん。」

 

「?」

 

「この・・・卑怯者め。」

 

 

 




はい閲覧ありがとうございました。

秋山殿が本格的に参戦されました。
思いの外文字数が伸び、サンダースまで届きませんでした。すいません。

次回はさすがにサンダース戦開始です。
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