転生者は平穏を望む   作:白山葵

24 / 141
第18話~サンダース戦です!~ 後編

「大洗女子学園の勝利!!」

 

客席から歓声が聞こえる。

そして俺の顔の横で、イケメン仮面が輝いていた。

 

「尾形!!すごかったな!!すごかったなぁ!!!」

 

バンバン肩を叩いてくる。うれいしいよ?でもな。

 

「・・・。」

 

「いやいや、あそこから勝てるなんてなぁ!!」

 

「そ・・そうだな。」

 

近い。

 

「高台から攻撃しようと、あのⅣ号が移動しだした辺りから熱かったよなぁ・・。最初、賭けに出たなぁって思ったんだけどさぁ!!」

 

だから近いんだよ。

 

「すげえよな!しかも移動中に一回、後方からの攻撃を急停車で避けてるだろ!!あれ明らかに避けてるよな!!」

 

褒められるのはいいよ?いいんだけど、そろそろ若干ウザクなってきた。

興奮冷めやらぬってやつか。

早口でさっきからずーと喋ってる。

 

「しかも中盤の命令無視も作戦だったんだろ!?」

 

「あー・・・うん。そうみたいだね。」

 

試合終了後、一応どういう事か携帯で連絡して確認を取っておいた。

本当にただの命令無視ならシャレにならなかった。

まさか、盗聴されてるとはなぁ・・・。

 

「それで最後!最後の攻撃だよ!!確か、隊長以外みんな初心者なんだろ!?それで、あの遠距離射撃かぁ・・・。」

 

「そうだな、すごいよな。でもそれ同じ事3回は聞いてるんだけど・・・。」

 

だから現在4回目だ。

 

「フラッグ戦はコレだからおもしろんだよ!そうそう、あの隊長。幼馴染なんだろ!?まさか本当に西住流だとは思わなかった!」

 

「あぁ、最初お前が、トロそうって言っていた子だな。」

 

「人は見かけによらないものだなぁ・・・。」

 

良かった。何とか勝てた。

昨日の会長にいったセリフ。あれは自分に向けた言葉でもあった。

経験者が、みほのみだからなぁ・・・。

これが殲滅戦だったら絶望しかなかったな。

 

結構被害もあったし、次の試合大丈夫かなぁ。

こういう場合、修理費ってどのくらい掛かるものなのだろうか。

 

「なんだよ、勝ったんだから、もっと喜んだらどうだよ。」

 

「いや・・喜ぼうと思ったら、お前が奇声を上げて喜ぶものだから、勝利の興奮が一気に冷めた。」

 

「奇声は上げてないだろうが。」

 

いや上げてましたよ?向かいのサンダースの連中が、引くくらい。

歓声も収まってきたし、そろそろ自分の仕事をやらないとな。

 

「さて、ちょっと行ってくるわ。」

 

「あぁ最期の挨拶だな?」

 

「荷物の運搬終わらせたらな。・・・それと、誤解を解きに行ってくる。また睨まれるかなぁ・・・。」

 

少し時間はかかるが、開始位置に両学校が集まり、最期の全体挨拶が行われる。

そこに全員集まるから、一気に誤解を解くには都合がいい。

あー・・まだ少し胃が痛い。

 

 

すぐ裏に機材を運んできたマイ軽トラがとめてある。

中村に手伝ってもらい、全て荷台に積んだ。

まぁ全てと言っても私物以外は、無線機しか無いので、すぐに撤収準備は完了。

 

「なんか悪かったな。その・・・。」

 

「・・・いいよ。これは不幸な事故だったんだ。そう思わないと、やってられん。」

 

「すまん!」

 

バタンとドアをしめ、エンジンをかける。

古い車を中古で買ったので・・・買ってもらったので、エンジンのかかりが悪い。

今度、自動車部で見てもらおうか。

あ、そうだ。

 

「中村。」

 

「なに?」

 

「アリサさんには、今回の事は言うなよ?お前が知っている事を、知らない方がいいと思う。」

 

「・・・わかった。んじゃ学園艦帰るよ。」

 

「まぁなんだ。おつかれさん。」

 

「おつかれ。」

 

中村と別れ、俺は別ルートから学園艦へ戻る。

まだ歩行者がいるから、ギアを入れゆっくり車を発進。

 

結構、砲弾やらなにやら運ぶことが増えたので、軽トラは重宝した。楽でいい。

 

学園艦に車のまま乗り入れ、荷物の運搬を終わらせる。

一番上の生活区まで行かなくても、下部の臨時駐車場に車を置かせてもらったので助かった。

 

「さて戻るか。」

 

 

 

 

 

-------

-----

---

 

 

 

 

 

 

「くっそ!馬鹿か俺は!」

 

・・・しまった。会場まで距離があるのを忘れていた。

仕方がないから現在、全速力で走っている。

走るの嫌いなんだけどなぁ・・・。

 

観客が学園艦に戻っていく中、逆走して必死に走っている。

間に合わなければ、みほ達とすれ違うから置いてきぼりは、大丈夫だと思うけど・・・。

あぁ・・奇異の目で見られてるよ。

 

15分後、やっと現地が視認できるくらいには近づいた。

 

「ハァハァ。やっぱり、終わってる。」

 

遠くから見て、観客席に人が殆ど、いなくなっているのがわかる。

さすがに疲れたので、フラフラ歩いて近づいて行く。

持久力は俺には無い。ちょっと今度、走り込みでもするかなぁ・・・。

 

よかった・・・。

トボトボ歩いてようやく目的の場所に到着した。

 

広場にまだ各選手達が集まっていた。

よかった。

さて。誤解を解くか。

 

おや。みほとケイさんだっけか。

向かい合って握手を交わしている。

お互いの健闘を称えてって奴かな?

 

今までの俺の人生には無かったなぁ・・・。

 

あ・・・。遠くにまほちゃんとエリリンがいた。

そうか、見に来ていたのか。

 

まほちゃんの事だから、偵察とか言って見に来たのだろう。

挨拶くらいしとくか?

 

いや、先にみほ達の所に行かないと。

先に目的を果たそう。

 

近づいて行く最中、サンダースの生徒数人とすれ違う。

 

・・・?

 

あれ?何か俺を見る雰囲気が違う。

てっきり殺意の視線を向けられるとばかり思っていたんだけど・・・。

あ、目を逸らされた。

 

なんだ?

 

「みほ。おつかれさん。楽しそうな所、邪魔して悪いんだけど・・ちょっといいか?」

 

「あ、隆史君。遅かったね。・・・なんでそんなに汗だくなの?」

 

「ちょっと計算違いで遅れてしまった。・・・学園艦から走ってきた。」

 

あれ?ケイさんと目が合ったら固まってしまった。どうした?。

 

「あー・・それで。試合中の無線の事とか聞きたかったんだけどね・・・先に・・・彼女なんだけど・・・。今隆史君の居場所を聞かれていたの。」

 

「本当は、私から貴方の所に行こうと思ってたんだけど・・・。」

 

・・・ケイさんが、青い顔して手を上げた。

あれ。最初の勢いどこ行った。こんな娘だっけか。

 

「えっとケイさんでしたね。あの時は、何も言えませんでしたけど、俺の言い分も聞いてもらえないでしょうか?」

 

「oh..」

 

「まずアリサさんに、俺の顔を見てもらって確認を・・・あれ?どうしました?」

 

なんかメチャクチャバツの悪そうな顔してるけど。

目が泳ぎっぱなしだけど?

あれ、段々と涙目になっていくよ。

 

後ろに並んでいる人達を見てみたら、バッっと一斉に目を背けられた。

あ・・・もしかして。

 

「・・・ひょっとして。誤解だと気がついて「I'm truly sorry!!」」

 

・・・。

 

走って近づかれ、片手を掴んで叫ばれた。

とった手を、自分の手で包み、祈るように顔の前にあげられた。

俺をぶん殴った手で。

 

「・・・俺、英語が分からないので、日本語でオネガイシマス。」

 

情けないことに、ソーリーしか分からなかった。リスニングもまともにできなかったわ。

 

「ご・・ごめんなさい!!誤解で貴方に、ほんっっっとーに!酷い事をしちゃったわ!!」

 

はい。2発ぶん殴られました。

それはいいんだけど・・・良くないか。普通に傷害事件だわ。

それより。

 

「えっと・・、なんで誤解だって分かったんですか?」

 

そのまま目を見て理由を話し出してくれた。

 

「実は・・・その、あの髪を短かく、両端で結んでいる娘がアリサなんだけど・・・。」

 

あぁ、あの娘か。・・・酷く落ち込んでるけど。ちっちゃいなー。

 

「簡単に言えば、あの娘が試合の最中、無線でパニックになって・・・無意識に叫んだ事が、その・・サンダースに広がったのが原因。」

 

・・・何叫んだんだ?

 

「どうも、別の意味で言ったようなんだけど・・・それがその・・・。」

 

・・・分かった。

 

「ようは、噂ですか?」

 

「イ・・Yes...」

 

「は?じゃあ、なんですか?俺、あんた方の学校の噂なんかで、ぶん殴られたわけですか?しかも人違いで。」

 

「・・・ソウ。」

 

段々と声が小さくなって行く。あの勝気というか、勢いがすごかった年上の隊長さんが、俺の前で段々と小さくなっていく。

 

・・・。

 

「本人が喋っていたってのもあって、信憑性が高かったと。それで、わざわざ他校の生徒のクラスまで調べた、と。」

 

随分とまぁ隊員思いの隊長さんだこと。

こういう人は嫌いでは無いけど、よく確認もしないで他校の生徒をぶん殴らないでほしい。

 

「イ・・Ye「日本語で喋ってください!」」

 

「はい!」

 

「はぁ・・・。それで、たまたま「タカシ」って名前の俺がいたから・・クラス確認したら本人と思い込んでしまったと。苗字までちゃんと確認してくれよ。」

 

「ごめんなさい!弁解の余地は無いわ!!私にできる事なら償いは、何でもするから!!なんなら、私を殴り返してもらってもいいから!!」

 

「そんな事したら、別の意味で俺が悪者でしょうが。」

 

「え!・・・あ。」

 

何でもするに反応したら負けだと思ってる。

いいか?負けだぞ?これは罠だ!

 

「・・・反省してんすね?」

 

「・・・申し開きもないわ。」

 

ショボーンとしてる。

さっきも思ったけど、この最初の勢いとのギャップの差が、大きくてこう・・・ゾクゾ違う。

可愛く思えるのがズルいと思う。エリリンとは別枠だけど。・・・変な性癖に目覚めそうだからやめとこう。

 

「はぁぁ・・・・。じゃあ、もういいです。」

 

「え?」

 

「誤解だと皆にも分かったみたいなんで、もういいです。取り敢えずもう手を離してください。」

 

・・・横からみほさんが、俺の目をガン見してくるので、いい加減離してください。悪寒が・・・。

 

「ダメよ!貴方が良くても、私が許せないわ!!」

 

いいよもう・・・。

正直殴られた事は別に怒っちゃいない。みほ達の見る目が変わることが怖かっただけだから。

俺の中ではもう終わっていた事だった。

 

さっさと終わらせて帰りたいってのが本音デス。

 

 

「そうですよ、隆史様。そんな簡単に許しちゃダメですよ。」

 

「つってもなぁ・・・。俺自身が、もうそんなに怒っちゃいな・・・い・・・・・。」

 

 

もう片方空いた手をオペ子が掴んでいた。

 

・・・なんでいるの。

 

俺・・・この娘の気配が、最近全然、分からない。

 

え・・・。しかも。

 

「ご機嫌よう。隆史さん。大洗学園の皆さん。」

 

「・・・ダージリンまで。」

 

「一回戦突破おめでとうございます。また面白い戦いを見れましたわ。・・・おめでとう、みほさん。」

 

「あ・・ありがとうございます。ダージリンさん、試合見に来てくれていたんですね。」

 

「・・・。」

 

「えぇ、勿論。試合前に激励にでも行こうかと思ったのですけれど、隆史さんがお取り込み中でしたので一旦引き上げましたわ。」

 

「そうですかぁ・・・。」

 

・・・見ていたわけですね?ぶん殴られた所を。

 

「さて、ケイさん。」

 

「な・・なによ。ダージリン。」

 

ジロリとケイさんを横目で見る。

この二人、面識はあるのか。

まぁ過去に試合経験があってもおかしくない。

 

「隆史さんが「許す」と仰っているのであれば、それを拒否する権利が、貴女にあると思って?」

 

「ぐ・・・。」

 

「この際、貴方の気持ちなんて、どうでもいいの。なんでもすると仰ったのであれば、たとえ後ろめたくとも、その気持ちのまま許されるべきでしてよ?」

 

「」

 

「償って楽になりたいなんて甘え、許される訳も無し・・・。」

 

なに?え?ダー様いつもの格言好きどったの。

 

「ダージリン様。」

 

「なに?ペコ。」

 

「サンダース大学付属高校って、アメリカ式でしたよね?」

 

「そうね。」

 

「なら、ケイさんが「許される」のを拒否するのであれば、隆史さんに「アメリカ式」で訴えてもらいましょう♪」

 

「は!?」

 

「」

 

すっげぇー笑顔の前で、ポンッと手を合わせるオペ子。

淡々と喋り出すダージリン。

・・・なに!?ケイさん既に瀕死の顔してますけど!?

 

 

「まず、2回の暴力。」

 

「傷害ですね♪」

 

「次に人の多い、往来での罵倒。」

 

「名誉毀損ですね♪」

 

「しかも、これが誤解と判明。」

 

「言い逃れできませんね♪」

 

「アメリカ式裁判だと・・・賠償金とか、どのくらいなのかしら?」

 

「人生に影響しますね♪」

 

 

なにそのコンビネーション。

・・・ケイさん息してない。

青くなって、ボロボロ完全に泣いちゃってるよ。

普通にかわいそうなんですけど。

 

「ダ・・ダージリンさん?オペ子さん?」

 

「「はい?なんでしょう?」」

 

「」

 

こ・・・こえぇぇ。どうしちゃったの二人共。ゴゴゴって音が聞こえてきそうだよ?

俺には笑顔なんだけど・・・。

 

「・・・ケイさん。大丈夫?ほら。俺は何もする気は無いから。・・・二人共、もういいよ。あまり虐めてやるな。」

 

ハンカチを渡してやりながら、ダージリン達に目配せをする。

 

「「 嫌です。」」

 

「・・・。」

 

明確に拒否された!!

 

みほ!助けて!

 

あれ!?

 

あんこうチームが、遠い!?

他の!・・・皆さん一定の距離を開けて眺めやがって・・。

 

 

「隆史様。」

 

「・・・はい。」

 

・・・ブラックペコ再来。

 

「あまり気品が無いので言いたくありませんでしたが、ローズヒップさん風に言うならば・・・。」

 

「そうねペコ。私も多分同じですわね。」

 

 

「「 私達、マジギレしてますわ。」」

 

 

「あー・・はい。」

 

さすがに気がついてますヨ。

そんだけ黒いオーラ撒き散らしてたら嫌でも分かるヨ。

 

あー・・ほら。裁判とか金銭とか現実的な事を言うから、ほら。ケイさん完全に怯えちゃってるでしょ。

17.8歳の女の子同士の会話に聞こえないよ。

・・・俺の為に、ここまで怒ってくれるのは、正直嬉しいけど黙っていよう。

 

しょうがない。ちょっとこちらもマジになろう。

 

「ダージリン。オペ子。」

 

「「 何でしょう?」」

 

・・・気圧される。グリンって、一斉に俺を見るんだもの。軽いホラーだ。

ハモるのもやめて。

 

何この、黒リアーナ・コンビ。

 

 

「本気で謝罪している人間を追い詰めるな。な?許す許さないは別問題だ。」

 

ちょっと昔の自分とケイさんが重なる。

 

「はぁ・・。ちょっと今のお前達いやだな。俺の嫌いなタイプだ。うん・・・嫌いだ。」

 

 

 

「「!!??」」

 

 

 

あれ?話の触りなんだけど?

 

「き・・。」

 

「・・・イ。」

 

メチャクチャ目を見開いたけど。

 

「キライ・・・。」

 

ブワッと目に涙を溜めるブペ子さん。

 

「ギラィ・・・ィィィ・・・・。」

 

ブペ子さん。人の話を最後まで聞きなさい。

 

「オペ子。」

 

「・・・ヴァイ。」

 

ヴァイって・・・。

 

「今のお前はちっとも癒されない。・・・って、この世の終わりみたいな顔すんなよ。」

 

「デスゲドォォ・・・。」

 

今の二人は、良くない傾向だ。ただの嫌な人間だ。

ただ二人なら分かるだろ。

 

分かってくれるだろ。

 

頭に手を置いて、腰を落とし目線を合わす。

 

「俺が昔、言った事覚えてるか?」

 

「・・・ハイ。」

 

「そうだな。青森で散々、話をしたもんな。俺がどういう人間か多少は、分かるだろ。」

 

「・・・。」

 

「俺はお前を嫌いに、なりたくないんだよ。・・・こんな事言っている理由は・・・わかるな?」

 

「・・・はい。ちょっと感情的になりました。・・いぢわるしちゃいました。」

 

「・・・よし!」

 

後は、笑って撫でてやる。

 

「じゃあ、俺の癒し系は、もう大丈夫だな。」

 

「は・・はい!」

 

良し。ブペ子浄化完了。

自分で分かるのだから、後は大丈夫だな。

 

・・・撫でてた手を握り締めて、離してくれなくなったけど。

 

 

「・・・尾形先輩、お父さんみたい。」

「何・・あの父性。おもしろーい。」

「あの子、小さいから余計に感じるよね~。」

 

 

聞こえてんだよ・・1年!

 

「キキキ・・ラ・・キ・・・。」

 

さて次はこっちか。

 

「ダージリン。」

 

「ひゃい!」

 

・・・はぁ。

 

「お前もわかるだろ。俺が言った意味が。」

 

「と・・当然ででで、カカ・・クゲ・・」

 

いかん。壊れた。

 

「はぁ。俺の為に怒ってくれるはうれしいけどな。隊長が止めなくて、一緒になって何やってんだよ。」

 

「・・・ペコと随分と扱いが違いますのね。」

 

「当たり前だろ先輩。年下に甘えんな。」

 

「・・・先輩。年下・・・。」

 

あれ?

 

「お姉さんだろ!?しっかりしなさい!」

 

「・・・お姉さん。・・オネ・・。」

 

いかん。このポンコツが何かに目覚めつつある。

 

「しかし・・あの・・。」

 

「何?」

 

「隆史さんは、ペコの頭撫でるのに私には何もしませんのね。」

 

「女性の髪の毛触るのなんて失礼だろうが。まぁ触ってはみたいがね。」

 

「・・・女性。さ・・わ・・。」

 

・・・どうした。トリップしだしたぞ。

 

ダージリンはもういい。ほっとこう。

さて、最後だ。

 

 

 

 

 

 

「ケイさん。」

 

呼ばれた瞬間、ビクッっとした。

 

目が完全に捨て猫だ。

・・・。

いかん。俺も変なのに目覚めそうだ。

 

「俺はもう、何も気にしてないですよ。何も要求するつもりも無いです。」

 

「・・・でも。」

 

ダメだ。

多分堂々巡りになる。

 

そうだ話題!少し話題を変えてよう!

取り敢えず・・・。

 

「あ・・そういえば、試合の最後なんで4輌しか増援しなかったんですか?」

 

戦車道の質問なら多少ピシッとするだろう。

 

「私達と同じ車輌数を使ったんだって。」

 

みほが後ろから答えてくれた。・・・今更戻ってきた。

ダメです。みほさんへの好感度は下がりました。

 

「そんな目で見ないでよ・・あれはコワイヨ。ドウシヨモナイヨ。」

 

「・・・で?なんで?」

 

「これは戦車道。戦争と違う。道を外れたら戦車が泣くって・・・ちょっと私感動しちゃった。」

 

・・・。

 

「フェアプレイって奴か。・・・あんた甘いね。」

 

「隆史君。そんな言い方!」

 

肩ならいいだろ。ポンっと手を置く。

俺の目を怯えた目で見てくる。ハイライトさんがいませんね。

 

「だけど、あんたいい女だな!」

 

笑いながら肩をパンパン叩く。

いいね。気持ちのいい性格してんだな、この人。

 

「え?」

 

「・・・隆史君?」

 

「俺、あんたみたいな人、結構好きなんだよ。だから、もういいよ。許した。だから気にすんな。な!」

 

「・・・。」

 

呆然とした目で俺を見てくる。

もう大丈夫だろ。やっとこさ終わる。

 

あー、でも一言くらい言っておこう。

 

 

「みほは、キライ。」

 

 

「隆史君!?」

 

はぁ。疲れた。ここらで締めだ。

 

 

「ケイさん。」

 

「ダージリン?」

 

おいおい。蒸し返すなよ!?

 

「私が、怒った理由をお教えしておこうかと思いまして。」

 

「ダージリンがなんで・・・?」

 

「私、正直な所。隆史さんに、平手打ち程度なら、特に問題ないと思いますの。あ、グーでも結構でしてよ?」

 

・・・オイ。

 

「隆史さんは、多少痛い目にあったほうが、いい薬になりますわ。」

 

・・・おいポンコツ。

 

「でも、あなた。あの後、彼に助けられているのご存知無いでしょう?」

 

「え?どういう事?」

 

「運営本部のスタッフが、隆史さんの所へ殴られた理由を問いに来られましたわ。」

 

「!」

 

・・・いや、なんで知ってんの。ダー様。

そうだよ。そもそも殴られたのが、誤解だと何で知っていたんだ?

 

「あそこで隆史さんのお答え次第で、サンダースは終わっていましたのよ?下手したら、来年は出場が出来なかったかもしれませんわね。」

 

ケイさんに、信じられないモノを見る目で見られた。

ダージリンと交互に見られる。

 

「え・・なんで?正直に答えなかったの!?誤解だったんでしょ!?」

 

「さぁ?それは隆史さんにしかわかりません。ただ・・・もうちょっと何かあったんじゃございません?隆史さん。」

 

「ダージリンさん。隆史君なんて答えたんですか?」

 

「お姉さん胸でっかいけど何食ったらそんなになるの?って聞いたらビンタされただけです。」ですって。」

 

すっげぇ綺麗に言われた。

 

「・・・は?」

 

みほさん!!

 

「まぁ、知る由もなかったかもしれませんが。ですから、自分だけ謝って楽になろうとする貴女に、本気で頭にきたわけです。」

 

ケイさんが呆然としている。

別にいいのに・・・。

 

「・・・ドウシテ。」

 

「はい?」

 

「どうして自分が悪いみたいに!殴った私が悪いのに!!そんなの貴方が、一方的に悪いみたいじゃない!」

 

・・・一瞬ノンナさんを思い出した。

結構、俺ノンナさん思い出すなぁ・・・。

 

この状況、あの時と似ている。

カチューシャの事で問い詰められた時に。

問い詰められる、しかし問い詰めている方が、実は追い詰められている。

 

「・・まぁしょうがないだろ。」

 

「なにが!?」

 

「隊員というか、後輩を思っての事だろ?誤解だって俺には分かっていたし・・。」

 

「・・・。」

 

「今回の件は、誤解が解けた時点で、俺の中じゃもう終わった話なんだよ。」

 

殴られるの慣れてるし・・・マヒしてんなぁ・・。

 

「さっき言ったろ。あんたみたいな真っ直ぐな奴、結構好きなんだよ。俺は。」

 

「――!」

 

「わかった?だからもういいんだよ。被害者当人の俺が許したんだ。もうこの話は終わりだ。」

 

終わりと言った所で、ケイさんはまだ呆然としていた。

しかしなぁ・・ほかの奴らは何してんだ。ケイさんほったらかしかよ・・・。

 

・・・なんだ?

副隊長含め、体育座りで震えてるように見えるけど。

遠目にも顔色悪いのわかるくらい憔悴してるなぁ。

 

あれ?一人黒い制服の娘がいる。

 

 

 

 

 

---------

-----

---

 

 

 

 

 

 

「タカシクン。」

 

「なによ。みほ。」

 

何言ったて、いまさら好感度は戻りませんよ?

 

「いい加減に何とかして。・・・その娘。」

 

指をさす先にオペ子がいた。

そうまだ、俺の右手にしがみついていた。

 

「あ、私のことはお気になさらないで下さい。」

 

「しますよ!離れて下さい!」

 

「嫌です。」

 

・・・笑顔で、すっごい棒読みで答えた。

何で笑顔で睨み合ってんの?

 

「西住 みほさん。」

 

「・・・なんでしょう。」

 

「そちらの方は、いいのでしょうか?」

 

反対の腕を指差すオペ子。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・なんだ?」

 

「なんだ、じゃないよ!何でいるのお姉ちゃん!!」

 

・・・黒森峰の隊長にガッチリとホールドされていた。

もう驚かない。神出鬼没はもう慣れた。ただ恐怖しかない。

 

「なにって、みほ達の試合を見に来ただけだ。試合が終わったので声でもかけようと思ってな。」

 

・・・。

 

「なんで一々腕組むの!?今それ関係ないよね!?」

 

「?」

 

「だから本気で分からないって顔はやめて!首を傾げない!」

 

いやぁ。みほさん最近、怒りっぽいですよ。

 

「ふむ。・・・隆史。」

 

「なんでしょうか、まほちゃん。」

 

「やはり、こういうのは嫌いか?」

 

・・・ワザとかよ。

 

「後輩にな、こういうのは喜ばれると教えてもらったのだが。・・・誤情報だったか?」

 

「・・・お姉ちゃん。今度その人教えて。」

 

みほさんの目がそろそろヤバイ。

それは、それとして。

 

「オペ子さん。・・・何で腕を組むのでしょうか?」

 

話している最中、オペ子が、手から腕にシフトチェンジしていた。

自分とまほちゃんを交互に見比べていた。

 

「・・・チッ。」

 

・・・オペ子さん。舌打ちは、やめなさい。

明らかな戦力差を思い知らされたようだ。

両手に花って状態だろうが、羨ましい、変わってほしいという方がいましたら喜んで変わろう。

はっきり言おう。腕が折れそうだ。

 

まほちゃん。無表情で、オペ子が動くたびに力入れるのをやめて下さい。

オペ子。まほちゃんの胸を見る度に力入れるのやめて下さい。貴女、装填手だから結構な力あるでしょ!

 

「隆史。」

 

「・・・なんでしょう。」

 

「今回の件は、もう終わったのか?」

 

「俺の中ではな。つか、ダージリン達もそうだけど、誤解って何で知っているんだよ。」

 

先程から謎だった。

おかしいよな。その辺知っているのは、サンダース陣営にいた一部の人間だけだ。

今の言い方だと、まほちゃんも多分、把握しているっぽい。

 

「3人組の大学生スタッフに教えてもらったのだが。」

 

「あ、私達もです。」

 

・・・。

 

何もんだよ、あのスタッフ。

そこまで詳しく知らない筈だけど・・・。

 

「・・・そういえば大学生ってボランティアとかで運営スタッフとして、参加できるんだっけ?」

 

「そうだな。連盟から要請も行くはずだな。」

 

・・・まさかな。考えすぎだといいけど。

最後、一人には助けてもらったし。

 

「まぁいい。終わった事ならもう私からは何も言わないでおこう。」

 

「あ・・ありがとう。そろそろ腕離して・・・。」

 

そろそろ、腕も胃も限界なんですよ。

 

「・・・いつのまに現れましたの?まほさん?なんでしょう・・・その腕は。」

 

「貴方には関係ないと思うが?」

 

ダー様、復活・・・。

 

ケイさん置いてきぼりになってるよ。

終わらないので腕を振りほどく。

ほら、二人共悲しそうな顔をしない!

いつまでも終わらないでしょ!

 

あれですか?無限軌道ゾーンにでも入りましたか?

 

「えっと、尾形クン・・。」

 

「はい。なんでしょうか?ケイさん。」

 

もういい加減終わろうよ!

疲れたよ!

 

「やっぱり、何かさせて。土下座でもなんでも。誤解で殴っておいて、何もしないで許されるってのも・・・。ダージリンが言ったように私本位かもしれないけど・・・。」

 

まぁ・・踏ん切りがつかないのだろう。いつまで経っても話が終わらない。

さて、どうしたものか。

 

 

 

「いい加減にしなさいよね!!」

 

誰だよ・・今度は。

声を掛けられた方向を見たら、青い顔したエリリンでした。

なんで青い顔してんの?

 

「あんた達が、いつまでもグジグジしてるから、隊長の矛先がこっちに来たじゃない!」

 

胸ぐら掴む勢いで・・というか掴まれた。

あらやだ、近い。

 

「なんで私が、サンダースの連中と一緒に怒られなきゃならないのよ!!」

 

いや・・知らんがな。

 

「どういう事?」

 

「あんた達の話が長いから、後ろで待機してたサンダースの副隊長達と先に話をしたのよ。」

 

「あぁ、あのアリサさん達?おわ!」

 

胸ぐら掴んだ手をグッと引き寄せられた。

 

「隊長、本気で怒っていたみたいで、あの子達にマジ説教始めたわ。あんたなら、想像つくでしょ。」

 

ボソっと小声で睨みながら言われました。

・・・それであの体育座りか。

うん、それは仕方がない。

しほさん譲りのあのプレッシャーは、慣れていても辛い。

 

「あの子達、あれからずっと小声で「スイマセン」をリピート再生してるわよ。どうすんのよ!」

 

あー。それで目も死んでるのかぁ。

隊長といいサンダース壊滅状態じゃないか。

 

「なんで、それに私が巻き込まれなきゃならないのよ!」

 

胸ぐらの手に力が入る。

いや、だから知りませんよ。俺関係ないよね。

 

「・・・エリカ。」

 

「ヒャイ!」

 

「少々・・・顔が近いなぁ。」

 

「ヒィ!」

 

バッと手を離して一気に離れるエリカさん。

貴女この間からいい所ないですね。怯えてしかいませんよ?

 

はぁ・・・。

 

「じゃあ、ケイさん。」

 

「なに?どうするか決まった?」

 

ダメだ完全に自暴自棄な顔になってる。

そんな彼女の目の前に手を差し出す。

 

「握手しましょう。」

 

「え?」

 

強引に手を掴むと無理やり引き起こす。

いつまでも地べたに、座らしておくわけにもいかない。

 

「はい、仲直り。」

 

ポカーンとしている。

 

「もういいよ。いつまでも終わらないから。女の子追い詰めて、悦に浸る趣味も無いし。」

 

「隆史君・・・言い方・・・。」

 

うっさいみほ。

もう、いい加減、帰ろうよー。

 

「正直、私はまだ言いたりませんけど・・・。」

 

「ふむ。私も言っておきたい事は有るといえば有るが・・・。」

 

まほちゃんとダージリンがまだちょっと渋る。

まほちゃん、貴女もういいってさっき言ったでしょ?

 

・・・。

 

・・・・・。

 

「なぁ、まほちゃん。ダージリン。」

 

「あら、何かしら?」

 

「なんだ・・ム。」

 

「あ・・・。」

 

みほとまほちゃんは勘付いたのか。

俺もソロソロこのグダグダしたループが嫌になった。

感情的にはあまりなりたくないんだけどなぁ・・・。

うん。いい加減シツコイ。

 

 

 

「いい加減にしないと・・・本気で怒りますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なによ。あの男が怒ったから何だって言うのよ。

そろそろ日も傾きだしたし、黒森峰に帰りたいのだけど。

 

・・・。

 

隊長?

え?なに?隊長が固まっている。

何よ。あの子まで固まって・・・。

 

「まず。」

 

ビクッ!

 

あの男が声を発したら、姉妹揃って反応した。

あんな隊長見たことない・・・。

 

「ダージリン。いい加減しつこいですよ。私が良いって言っているのですから、もういいでしょ?

 長時間責め立てられるのは、拷問と一緒です。当人が許しているのですから外野が、とやかく言わないで下さい。」

 

「む・・外野というの『これが最後です。』」

 

うっわ、気持ち悪!

なにあの男。いきなり敬語になって。雰囲気がまるで違って気味が悪い。

隊長もなんで、あんな男を・・・あれ?何かボソボソ姉妹で、話をしてるわね。

 

 

「お・・お姉ちゃん。どうしよう。」

「・・・む・・昔と違う。少なくとも、みほは大丈夫だろう。」

「でもぉ・・あれ完全にスイッチ入っちゃってるぅ・・。」

 

 

だから何だと言うのだ。

むぅと考え込んでいる聖グロの隊長。

なんだろう。前にもあったなこの感じ。

 

「YESかNOで終わりです。」

 

「キイテイマスカ?エセ外人さん。」

 

あ。オモイダシタ。家元と対峙していた時と同じ感じだ。

 

「!!」

 

「い・・いくら隆史さんでも、それは『じゃあ何ですか?貴女そもそも海外に行った事あるんですか?』」

 

「金髪碧眼ですので、敢えて聞きませんでしたけど。」

 

「」

 

「あるんですか?」

 

「い・・今それは関係な『はい。関係無いですね。ですから何でしょう?』」

 

「」

 

「それに、露しゅ『 隆史さん!!!』」

 

ロシュ?真っ赤になって怒鳴ってる。あの隊長が大きな声出すなんて。

 

「仕方ないですね。」

 

あの男が続いて、彼女に近づいてボソボソ耳元で何か囁いてる。

 

「ヒッ!」「ソレハ・・。」「デスケド・・・。」「ソンナコト・・・ハ。」「ツッ!!!」

 

小声で会話しているのか、少しは聞こえる。

段々顔が真っ赤になって、目が涙目になっていくのだけど・・・。

最後何か囁いたら、あの聖グロの隊長が、ペタンと座り込んだ。

 

「では、もういいですね?」

 

「・・・ハイ。もう私から言うことはございませんワ。もう好きにしてください・・・。」

 

よしよしと頷いてグルッと隊長を見る。

 

ビクッっとする隊長。

 

近づいて一応確認しておこう。

ちょっとこいつが怖く感じてきた。

ウチの隊長に何する気?

 

「ちょ。ちょっとあんた何言ったの?」

 

「えぁ?何が?あぁ、ダージリンに?」

 

あれ?私には普通だ。いつもの憎ったらしい喋りだ。

 

「いやぁもうね。ただケイさんを虐めているみたいで、気分が悪かったんで・・・こっちから少し虐めてやろうかと・・・。」

 

「あんた・・・。聖グロリアーナって結構なお嬢様よね。なにを言ったら、あんな事になるのよ。」

 

地面に座り込んじゃってボーと真っ赤になってるだけよ?

 

「いやぁ・・最後に「変態」って言って、ちょっと耳たぶ噛んでやっただけだよ?」

 

・・・。

 

「ちょっと、えっと・・・ごめん何でもない。」

 

思いっきりセクハラだと思ったけど・・・ダメだ。関わりたくない。

・・・目が本気で怖かった。多分、全部は聞かないほうがいいだろう。

 

そのまま西住隊長に近づいていく。

た・・隊長が小刻みに震えてる!?

みほは、少し離れて見ている。

あまりの雰囲気に心配でもしたのだろうか?あの子のチームの子達と合流していた。

 

「さて。西住さん。」

 

「!?」

 

あ・・確か聞いた事がある。

あの男に苗字で呼ばれるのを非常に嫌がる事を。

 

「た・・隆史。オマ・・」

 

隊長が怒気をまとった。

怖い。あの隊長は、無条件降伏を余儀なくさせる雰囲気がある。

 

「なんでしょう。西住さん?」

 

「・・・。」

 

「貴女一度、何も言わないと言っておいて、話をまた蒸し返すのは無いのでは?」

 

「・・・。」

 

ほら、隊長がすっごい睨んでるけど。何で私が怖がってるのよ。

 

「聞いていますか?西住さん。」

 

「・・・。」

 

「わかりました?西住 み・・まほさん?」

 

「!!」

 

・・・

 

・・・・・

 

あいつ・・・今ワザと名前を間違えなかったか・・・?

 

 

 

「・・・・・・・・グス。」

 

 

 

隊長!!??

 

 

「わかった・・・私が悪かったから、・・・もうやめてくれ隆史。」

 

 

「・・・そうだなぁ。・・・まほちゃんは、あんまり関わっていなかったからなぁ・・もういいか。」

 

「!!」

 

呼び方が戻ったら一気にパァァと顔色が戻った。

 

やだ。あんな隊長見たくないぃぃぃ!

 

みほのチームの会話が聞こえてきた。

 

 

「た・・隆史君。麻子の時と感じ似てるね・・・コワイ。」

「うん。今私、彼に絶対近づきたくない。」

「隆史殿、どうしちゃったのですか?」

「あー・・みほさん仰っていましたね。隆史さんが口調が変わるのって、怒っている時か焦っている時って。」

「うん。あれ結構、本気で怒ってるヨ。」

「・・・いつもの口調に慣れたから、今更あの口調の書記を見ると気持ちわるいな。」

「でも、特に暴力を振るう訳でも無く・・・何故そこまで怖がるのでしょう?」

「・・・あの状態の隆史君ね。事務口調で、人の一番嫌がる事をピンポイントで攻めて来るの。・・・セクハラ発言お構い無しに。」

「「「「・・・。」」」」

「ただ、人を追い込む発言するから正直怖いの。ダージリンさんには、耳元で話してたでしょ?多分・・人様に聞かれると本当にダメな事を言っていると思うよ?」

「「「「・・・。」」」」

「と・・・遠くで眺めてましょう。」

 

 

 

・・・。

な・・・何なの。あの男。

本当に訳がわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケイさん。何か悪かった。イジメみたいな事して。」

 

「・・・また謝るのね。貴方は。」

 

「もういいや。何か償ってもらって、それでお互いに気持ちよく終われるなら、それでいいや。」

 

「・・・。」

 

「ちょっとあんた。」

 

なんだよエリリン。

もうイレギュラーはいいよ。

 

 

「今回の事は特にあんたが、はっきりしないのが悪いと思うのだけど?」

 

「は?」

 

「つまり、聖グロの隊長達もウチの隊長も、み・・みほも、あんたが殴られて怒ってるんでしょ?」

 

「みほは、特に怒っちゃいなかったよ?」

 

「見た目はね。途中気づいたけど、結構やばかったわよ?あの子。」

 

「ほぉー・・・よくわかるねエリリーン。」

 

「う・・うるさい!とにかく!今までので、当事者の本人達以外はすべて納得できたと。」

 

そうだな。ダー様とまほちゃんは、もう何も言わないだろう。

あとは、彼女本人だけだ。

 

エリリンが、ケイさんと俺を並ばせる。

 

「サンダースの隊長さんは、自分が許せない。あんたは許しているから、もういいって訳よね?」

 

「端的に言えば。」

 

「そーね。」

 

現状確認させられる。

 

「別に今すぐ解決しなくてもいいんじゃない?」

 

「「え?」」

 

「取り敢えず連絡先でも交換して、そっちの隊長さんとゆっくり模索してけば?」

 

「「・・・。」」

 

「後は、あんた達が納得できればいいんだから、他人を巻き込まないで、こっそりやってなさいよ。」

 

「・・・。」

 

「oh...」

 

エリリンすっげぇ・・。

問題を先延ばしにしただけに思えるけど、現状の解決策で一番だ。

少なくとも他人を巻き込まないで、邪魔もされない。

 

「なんなら、あんた達そのまま付き合っちゃえば?サンダースの隊長さんも満更でも無いみたいだし。」

 

「・・・。」

 

うん。黙っていよう。自分の首を絞めそうだ。

 

「え!?何!?隊長!?」

 

無言で引きずられていくエリリン。

それを見送るケイさん。

 

「・・・それもいいわね!」

 

「いや・・良くないですよ。・・・何で元気になってるんですか。・・・まぁでも連絡先交換しますか?現状キリがない。」

 

「そうね。ちょっと待ってね。」

 

彼女が上着から携帯を出す。

アドレス、電話番号等、連絡先を交換する。

人心地ついたのか少しずつ最初の感じに戻っていく。

 

「これで、何かできそうね!」

 

「あーでも俺、基本メールあんまりしませんので、電話すると思いますよ?」

 

「OK!OK!」

 

よかった。やっと元気が戻ったみたいだ。

やっと終わるのか。

 

「正直。貴方には、何言われて何を要求されても受けるつもりではあったの。ダージリンから聞いたので覚悟が決まったしね。」

 

「あー・・・大学生のスタッフの話ですか。」

 

「そう。本当に救われていたのがわかったわ。だからエグいエッチな要望でも応える覚悟が着いたの!」

 

・・・やめて下さい。ウインクしながら何て冗談言うんだよ。

 

「まぁ・・そんな事もなく、何も要求もされなかった。ちょっと・・かなり意外だったわ。」

 

「ま。連絡先も交換しましたので、なんか思いついたら連絡しますよ。」

 

「さっきの子が、言った事でもいいわよ?男女の仲なんて付き合ってみないと、わからないもの。」

 

「元気が出て何よりですけど、余りフランクすぎると引かれますよ・・・。」

 

「大丈夫よ!私こういう事、言うの貴方が初めてだから!・・・本当に。」

 

・・・。

 

彼女が、パンっと自分で顔を両手で叩いた。

 

「さて、そろそろ撤収しましょ。アリサ達は・・・会ってみる?」

 

「もういいですよ。まだ彼女達も怯えて・・・大丈夫かあの状態。」

 

まだガタガタ言ってるけど・・・。

 

「今回、実際に手を出した貴女が、責任を取るって事で一人で頑張ってたんでしょ?じゃなきゃ、途中で全員呼んでるでしょ。」

 

「・・・貴方。」

 

まぁそれでも、普通助け人入るものだけどな。まぁ立ち塞がった障害が、マジギレモードのまほちゃんじゃしょうがない。

ではこっちも撤収するか。

 

「あ、そうだ。貴方の事「タカシ」って呼んでいいかしら?」

 

「・・・それだと、アリサさんの言う「タカシ」と混ざってまた変な噂立ちませんかね?」

 

「そぉーねー。」

 

完全に通常に戻ったのか、結構明るいフランクな喋りをしている。

そうか。彼女本当はこんな人。

 

「じゃぁーね。決めたわ!」

 

尾形でいいだろ。あ、そっか。アメリカ式だからなんか愛称つけれくれるのかな?

会長がアンジーだっけか。俺なんだ?お菓子?

 

 

「ダーリンで♪!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――  ―

 

 

 

某所

 

 

「お疲れ~・・。」

 

「お疲れ。」

 

「これでボランティアって言うんだからねぇ。はぁ・・バイト代くらい出ないのかしら。」

 

「しっかし「アレ」がねぇ・・・。」

 

「理由がオッパイなんて言われるとは思ってなかったわよ。」

 

「体調悪そうだったってのも、有るんでしょうけど。」

 

「そもそも今回、男装なんてする必要あったの?」

 

「私が面白いからよ!」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「そんな事言ってるから母校が負けるのよ。」

 

「まぁ、あれはしょうがないんじゃない?大洗の子達も頑張ったし。」

 

「それはそれとして、いつ仕掛けるの?」

 

「そうねぇ・・来週にでも行きましょうか?」

 

「直接?」

 

「直接。」

 

「強制的に、お越し頂ければ、それでいいわよ。」

 

「相変わず・・・。」

 

「さて。あんまり時間も残されていないし。・・・隊長の為だし。」

 

「そうね。これは仕方がない事なのよ。」

 

「隊長の為ね。確かに仕方がない。」

 

「じゃ、来週行きましょうか?人拐いに。」

 




はい。閲覧ありがとうございました。

疲れた。いつもの文字数が約2倍です。
この作品で多分一番キャラがでました。
キャラクターが多く出るとバランスが取るのが難しいです。

正直今回の話は、青森編3話に続きて投稿するのが結構。怖い内容でした。
人選ぶだろうなぁ・・・。

ありがとうございました

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。