「大洗女子学園の勝利!!」
客席から歓声が聞こえる。
そして俺の顔の横で、イケメン仮面が輝いていた。
「尾形!!すごかったな!!すごかったなぁ!!!」
バンバン肩を叩いてくる。うれいしいよ?でもな。
「・・・。」
「いやいや、あそこから勝てるなんてなぁ!!」
「そ・・そうだな。」
近い。
「高台から攻撃しようと、あのⅣ号が移動しだした辺りから熱かったよなぁ・・。最初、賭けに出たなぁって思ったんだけどさぁ!!」
だから近いんだよ。
「すげえよな!しかも移動中に一回、後方からの攻撃を急停車で避けてるだろ!!あれ明らかに避けてるよな!!」
褒められるのはいいよ?いいんだけど、そろそろ若干ウザクなってきた。
興奮冷めやらぬってやつか。
早口でさっきからずーと喋ってる。
「しかも中盤の命令無視も作戦だったんだろ!?」
「あー・・・うん。そうみたいだね。」
試合終了後、一応どういう事か携帯で連絡して確認を取っておいた。
本当にただの命令無視ならシャレにならなかった。
まさか、盗聴されてるとはなぁ・・・。
「それで最後!最後の攻撃だよ!!確か、隊長以外みんな初心者なんだろ!?それで、あの遠距離射撃かぁ・・・。」
「そうだな、すごいよな。でもそれ同じ事3回は聞いてるんだけど・・・。」
だから現在4回目だ。
「フラッグ戦はコレだからおもしろんだよ!そうそう、あの隊長。幼馴染なんだろ!?まさか本当に西住流だとは思わなかった!」
「あぁ、最初お前が、トロそうって言っていた子だな。」
「人は見かけによらないものだなぁ・・・。」
良かった。何とか勝てた。
昨日の会長にいったセリフ。あれは自分に向けた言葉でもあった。
経験者が、みほのみだからなぁ・・・。
これが殲滅戦だったら絶望しかなかったな。
結構被害もあったし、次の試合大丈夫かなぁ。
こういう場合、修理費ってどのくらい掛かるものなのだろうか。
「なんだよ、勝ったんだから、もっと喜んだらどうだよ。」
「いや・・喜ぼうと思ったら、お前が奇声を上げて喜ぶものだから、勝利の興奮が一気に冷めた。」
「奇声は上げてないだろうが。」
いや上げてましたよ?向かいのサンダースの連中が、引くくらい。
歓声も収まってきたし、そろそろ自分の仕事をやらないとな。
「さて、ちょっと行ってくるわ。」
「あぁ最期の挨拶だな?」
「荷物の運搬終わらせたらな。・・・それと、誤解を解きに行ってくる。また睨まれるかなぁ・・・。」
少し時間はかかるが、開始位置に両学校が集まり、最期の全体挨拶が行われる。
そこに全員集まるから、一気に誤解を解くには都合がいい。
あー・・まだ少し胃が痛い。
すぐ裏に機材を運んできたマイ軽トラがとめてある。
中村に手伝ってもらい、全て荷台に積んだ。
まぁ全てと言っても私物以外は、無線機しか無いので、すぐに撤収準備は完了。
「なんか悪かったな。その・・・。」
「・・・いいよ。これは不幸な事故だったんだ。そう思わないと、やってられん。」
「すまん!」
バタンとドアをしめ、エンジンをかける。
古い車を中古で買ったので・・・買ってもらったので、エンジンのかかりが悪い。
今度、自動車部で見てもらおうか。
あ、そうだ。
「中村。」
「なに?」
「アリサさんには、今回の事は言うなよ?お前が知っている事を、知らない方がいいと思う。」
「・・・わかった。んじゃ学園艦帰るよ。」
「まぁなんだ。おつかれさん。」
「おつかれ。」
中村と別れ、俺は別ルートから学園艦へ戻る。
まだ歩行者がいるから、ギアを入れゆっくり車を発進。
結構、砲弾やらなにやら運ぶことが増えたので、軽トラは重宝した。楽でいい。
学園艦に車のまま乗り入れ、荷物の運搬を終わらせる。
一番上の生活区まで行かなくても、下部の臨時駐車場に車を置かせてもらったので助かった。
「さて戻るか。」
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「くっそ!馬鹿か俺は!」
・・・しまった。会場まで距離があるのを忘れていた。
仕方がないから現在、全速力で走っている。
走るの嫌いなんだけどなぁ・・・。
観客が学園艦に戻っていく中、逆走して必死に走っている。
間に合わなければ、みほ達とすれ違うから置いてきぼりは、大丈夫だと思うけど・・・。
あぁ・・奇異の目で見られてるよ。
15分後、やっと現地が視認できるくらいには近づいた。
「ハァハァ。やっぱり、終わってる。」
遠くから見て、観客席に人が殆ど、いなくなっているのがわかる。
さすがに疲れたので、フラフラ歩いて近づいて行く。
持久力は俺には無い。ちょっと今度、走り込みでもするかなぁ・・・。
よかった・・・。
トボトボ歩いてようやく目的の場所に到着した。
広場にまだ各選手達が集まっていた。
よかった。
さて。誤解を解くか。
おや。みほとケイさんだっけか。
向かい合って握手を交わしている。
お互いの健闘を称えてって奴かな?
今までの俺の人生には無かったなぁ・・・。
あ・・・。遠くにまほちゃんとエリリンがいた。
そうか、見に来ていたのか。
まほちゃんの事だから、偵察とか言って見に来たのだろう。
挨拶くらいしとくか?
いや、先にみほ達の所に行かないと。
先に目的を果たそう。
近づいて行く最中、サンダースの生徒数人とすれ違う。
・・・?
あれ?何か俺を見る雰囲気が違う。
てっきり殺意の視線を向けられるとばかり思っていたんだけど・・・。
あ、目を逸らされた。
なんだ?
「みほ。おつかれさん。楽しそうな所、邪魔して悪いんだけど・・ちょっといいか?」
「あ、隆史君。遅かったね。・・・なんでそんなに汗だくなの?」
「ちょっと計算違いで遅れてしまった。・・・学園艦から走ってきた。」
あれ?ケイさんと目が合ったら固まってしまった。どうした?。
「あー・・それで。試合中の無線の事とか聞きたかったんだけどね・・・先に・・・彼女なんだけど・・・。今隆史君の居場所を聞かれていたの。」
「本当は、私から貴方の所に行こうと思ってたんだけど・・・。」
・・・ケイさんが、青い顔して手を上げた。
あれ。最初の勢いどこ行った。こんな娘だっけか。
「えっとケイさんでしたね。あの時は、何も言えませんでしたけど、俺の言い分も聞いてもらえないでしょうか?」
「oh..」
「まずアリサさんに、俺の顔を見てもらって確認を・・・あれ?どうしました?」
なんかメチャクチャバツの悪そうな顔してるけど。
目が泳ぎっぱなしだけど?
あれ、段々と涙目になっていくよ。
後ろに並んでいる人達を見てみたら、バッっと一斉に目を背けられた。
あ・・・もしかして。
「・・・ひょっとして。誤解だと気がついて「I'm truly sorry!!」」
・・・。
走って近づかれ、片手を掴んで叫ばれた。
とった手を、自分の手で包み、祈るように顔の前にあげられた。
俺をぶん殴った手で。
「・・・俺、英語が分からないので、日本語でオネガイシマス。」
情けないことに、ソーリーしか分からなかった。リスニングもまともにできなかったわ。
「ご・・ごめんなさい!!誤解で貴方に、ほんっっっとーに!酷い事をしちゃったわ!!」
はい。2発ぶん殴られました。
それはいいんだけど・・・良くないか。普通に傷害事件だわ。
それより。
「えっと・・、なんで誤解だって分かったんですか?」
そのまま目を見て理由を話し出してくれた。
「実は・・・その、あの髪を短かく、両端で結んでいる娘がアリサなんだけど・・・。」
あぁ、あの娘か。・・・酷く落ち込んでるけど。ちっちゃいなー。
「簡単に言えば、あの娘が試合の最中、無線でパニックになって・・・無意識に叫んだ事が、その・・サンダースに広がったのが原因。」
・・・何叫んだんだ?
「どうも、別の意味で言ったようなんだけど・・・それがその・・・。」
・・・分かった。
「ようは、噂ですか?」
「イ・・Yes...」
「は?じゃあ、なんですか?俺、あんた方の学校の噂なんかで、ぶん殴られたわけですか?しかも人違いで。」
「・・・ソウ。」
段々と声が小さくなって行く。あの勝気というか、勢いがすごかった年上の隊長さんが、俺の前で段々と小さくなっていく。
・・・。
「本人が喋っていたってのもあって、信憑性が高かったと。それで、わざわざ他校の生徒のクラスまで調べた、と。」
随分とまぁ隊員思いの隊長さんだこと。
こういう人は嫌いでは無いけど、よく確認もしないで他校の生徒をぶん殴らないでほしい。
「イ・・Ye「日本語で喋ってください!」」
「はい!」
「はぁ・・・。それで、たまたま「タカシ」って名前の俺がいたから・・クラス確認したら本人と思い込んでしまったと。苗字までちゃんと確認してくれよ。」
「ごめんなさい!弁解の余地は無いわ!!私にできる事なら償いは、何でもするから!!なんなら、私を殴り返してもらってもいいから!!」
「そんな事したら、別の意味で俺が悪者でしょうが。」
「え!・・・あ。」
何でもするに反応したら負けだと思ってる。
いいか?負けだぞ?これは罠だ!
「・・・反省してんすね?」
「・・・申し開きもないわ。」
ショボーンとしてる。
さっきも思ったけど、この最初の勢いとのギャップの差が、大きくてこう・・・ゾクゾ違う。
可愛く思えるのがズルいと思う。エリリンとは別枠だけど。・・・変な性癖に目覚めそうだからやめとこう。
「はぁぁ・・・・。じゃあ、もういいです。」
「え?」
「誤解だと皆にも分かったみたいなんで、もういいです。取り敢えずもう手を離してください。」
・・・横からみほさんが、俺の目をガン見してくるので、いい加減離してください。悪寒が・・・。
「ダメよ!貴方が良くても、私が許せないわ!!」
いいよもう・・・。
正直殴られた事は別に怒っちゃいない。みほ達の見る目が変わることが怖かっただけだから。
俺の中ではもう終わっていた事だった。
さっさと終わらせて帰りたいってのが本音デス。
「そうですよ、隆史様。そんな簡単に許しちゃダメですよ。」
「つってもなぁ・・・。俺自身が、もうそんなに怒っちゃいな・・・い・・・・・。」
もう片方空いた手をオペ子が掴んでいた。
・・・なんでいるの。
俺・・・この娘の気配が、最近全然、分からない。
え・・・。しかも。
「ご機嫌よう。隆史さん。大洗学園の皆さん。」
「・・・ダージリンまで。」
「一回戦突破おめでとうございます。また面白い戦いを見れましたわ。・・・おめでとう、みほさん。」
「あ・・ありがとうございます。ダージリンさん、試合見に来てくれていたんですね。」
「・・・。」
「えぇ、勿論。試合前に激励にでも行こうかと思ったのですけれど、隆史さんがお取り込み中でしたので一旦引き上げましたわ。」
「そうですかぁ・・・。」
・・・見ていたわけですね?ぶん殴られた所を。
「さて、ケイさん。」
「な・・なによ。ダージリン。」
ジロリとケイさんを横目で見る。
この二人、面識はあるのか。
まぁ過去に試合経験があってもおかしくない。
「隆史さんが「許す」と仰っているのであれば、それを拒否する権利が、貴女にあると思って?」
「ぐ・・・。」
「この際、貴方の気持ちなんて、どうでもいいの。なんでもすると仰ったのであれば、たとえ後ろめたくとも、その気持ちのまま許されるべきでしてよ?」
「」
「償って楽になりたいなんて甘え、許される訳も無し・・・。」
なに?え?ダー様いつもの格言好きどったの。
「ダージリン様。」
「なに?ペコ。」
「サンダース大学付属高校って、アメリカ式でしたよね?」
「そうね。」
「なら、ケイさんが「許される」のを拒否するのであれば、隆史さんに「アメリカ式」で訴えてもらいましょう♪」
「は!?」
「」
すっげぇー笑顔の前で、ポンッと手を合わせるオペ子。
淡々と喋り出すダージリン。
・・・なに!?ケイさん既に瀕死の顔してますけど!?
「まず、2回の暴力。」
「傷害ですね♪」
「次に人の多い、往来での罵倒。」
「名誉毀損ですね♪」
「しかも、これが誤解と判明。」
「言い逃れできませんね♪」
「アメリカ式裁判だと・・・賠償金とか、どのくらいなのかしら?」
「人生に影響しますね♪」
なにそのコンビネーション。
・・・ケイさん息してない。
青くなって、ボロボロ完全に泣いちゃってるよ。
普通にかわいそうなんですけど。
「ダ・・ダージリンさん?オペ子さん?」
「「はい?なんでしょう?」」
「」
こ・・・こえぇぇ。どうしちゃったの二人共。ゴゴゴって音が聞こえてきそうだよ?
俺には笑顔なんだけど・・・。
「・・・ケイさん。大丈夫?ほら。俺は何もする気は無いから。・・・二人共、もういいよ。あまり虐めてやるな。」
ハンカチを渡してやりながら、ダージリン達に目配せをする。
「「 嫌です。」」
「・・・。」
明確に拒否された!!
みほ!助けて!
あれ!?
あんこうチームが、遠い!?
他の!・・・皆さん一定の距離を開けて眺めやがって・・。
「隆史様。」
「・・・はい。」
・・・ブラックペコ再来。
「あまり気品が無いので言いたくありませんでしたが、ローズヒップさん風に言うならば・・・。」
「そうねペコ。私も多分同じですわね。」
「「 私達、マジギレしてますわ。」」
「あー・・はい。」
さすがに気がついてますヨ。
そんだけ黒いオーラ撒き散らしてたら嫌でも分かるヨ。
あー・・ほら。裁判とか金銭とか現実的な事を言うから、ほら。ケイさん完全に怯えちゃってるでしょ。
17.8歳の女の子同士の会話に聞こえないよ。
・・・俺の為に、ここまで怒ってくれるのは、正直嬉しいけど黙っていよう。
しょうがない。ちょっとこちらもマジになろう。
「ダージリン。オペ子。」
「「 何でしょう?」」
・・・気圧される。グリンって、一斉に俺を見るんだもの。軽いホラーだ。
ハモるのもやめて。
何この、黒リアーナ・コンビ。
「本気で謝罪している人間を追い詰めるな。な?許す許さないは別問題だ。」
ちょっと昔の自分とケイさんが重なる。
「はぁ・・。ちょっと今のお前達いやだな。俺の嫌いなタイプだ。うん・・・嫌いだ。」
「「!!??」」
あれ?話の触りなんだけど?
「き・・。」
「・・・イ。」
メチャクチャ目を見開いたけど。
「キライ・・・。」
ブワッと目に涙を溜めるブペ子さん。
「ギラィ・・・ィィィ・・・・。」
ブペ子さん。人の話を最後まで聞きなさい。
「オペ子。」
「・・・ヴァイ。」
ヴァイって・・・。
「今のお前はちっとも癒されない。・・・って、この世の終わりみたいな顔すんなよ。」
「デスゲドォォ・・・。」
今の二人は、良くない傾向だ。ただの嫌な人間だ。
ただ二人なら分かるだろ。
分かってくれるだろ。
頭に手を置いて、腰を落とし目線を合わす。
「俺が昔、言った事覚えてるか?」
「・・・ハイ。」
「そうだな。青森で散々、話をしたもんな。俺がどういう人間か多少は、分かるだろ。」
「・・・。」
「俺はお前を嫌いに、なりたくないんだよ。・・・こんな事言っている理由は・・・わかるな?」
「・・・はい。ちょっと感情的になりました。・・いぢわるしちゃいました。」
「・・・よし!」
後は、笑って撫でてやる。
「じゃあ、俺の癒し系は、もう大丈夫だな。」
「は・・はい!」
良し。ブペ子浄化完了。
自分で分かるのだから、後は大丈夫だな。
・・・撫でてた手を握り締めて、離してくれなくなったけど。
「・・・尾形先輩、お父さんみたい。」
「何・・あの父性。おもしろーい。」
「あの子、小さいから余計に感じるよね~。」
聞こえてんだよ・・1年!
「キキキ・・ラ・・キ・・・。」
さて次はこっちか。
「ダージリン。」
「ひゃい!」
・・・はぁ。
「お前もわかるだろ。俺が言った意味が。」
「と・・当然ででで、カカ・・クゲ・・」
いかん。壊れた。
「はぁ。俺の為に怒ってくれるはうれしいけどな。隊長が止めなくて、一緒になって何やってんだよ。」
「・・・ペコと随分と扱いが違いますのね。」
「当たり前だろ先輩。年下に甘えんな。」
「・・・先輩。年下・・・。」
あれ?
「お姉さんだろ!?しっかりしなさい!」
「・・・お姉さん。・・オネ・・。」
いかん。このポンコツが何かに目覚めつつある。
「しかし・・あの・・。」
「何?」
「隆史さんは、ペコの頭撫でるのに私には何もしませんのね。」
「女性の髪の毛触るのなんて失礼だろうが。まぁ触ってはみたいがね。」
「・・・女性。さ・・わ・・。」
・・・どうした。トリップしだしたぞ。
ダージリンはもういい。ほっとこう。
さて、最後だ。
「ケイさん。」
呼ばれた瞬間、ビクッっとした。
目が完全に捨て猫だ。
・・・。
いかん。俺も変なのに目覚めそうだ。
「俺はもう、何も気にしてないですよ。何も要求するつもりも無いです。」
「・・・でも。」
ダメだ。
多分堂々巡りになる。
そうだ話題!少し話題を変えてよう!
取り敢えず・・・。
「あ・・そういえば、試合の最後なんで4輌しか増援しなかったんですか?」
戦車道の質問なら多少ピシッとするだろう。
「私達と同じ車輌数を使ったんだって。」
みほが後ろから答えてくれた。・・・今更戻ってきた。
ダメです。みほさんへの好感度は下がりました。
「そんな目で見ないでよ・・あれはコワイヨ。ドウシヨモナイヨ。」
「・・・で?なんで?」
「これは戦車道。戦争と違う。道を外れたら戦車が泣くって・・・ちょっと私感動しちゃった。」
・・・。
「フェアプレイって奴か。・・・あんた甘いね。」
「隆史君。そんな言い方!」
肩ならいいだろ。ポンっと手を置く。
俺の目を怯えた目で見てくる。ハイライトさんがいませんね。
「だけど、あんたいい女だな!」
笑いながら肩をパンパン叩く。
いいね。気持ちのいい性格してんだな、この人。
「え?」
「・・・隆史君?」
「俺、あんたみたいな人、結構好きなんだよ。だから、もういいよ。許した。だから気にすんな。な!」
「・・・。」
呆然とした目で俺を見てくる。
もう大丈夫だろ。やっとこさ終わる。
あー、でも一言くらい言っておこう。
「みほは、キライ。」
「隆史君!?」
はぁ。疲れた。ここらで締めだ。
「ケイさん。」
「ダージリン?」
おいおい。蒸し返すなよ!?
「私が、怒った理由をお教えしておこうかと思いまして。」
「ダージリンがなんで・・・?」
「私、正直な所。隆史さんに、平手打ち程度なら、特に問題ないと思いますの。あ、グーでも結構でしてよ?」
・・・オイ。
「隆史さんは、多少痛い目にあったほうが、いい薬になりますわ。」
・・・おいポンコツ。
「でも、あなた。あの後、彼に助けられているのご存知無いでしょう?」
「え?どういう事?」
「運営本部のスタッフが、隆史さんの所へ殴られた理由を問いに来られましたわ。」
「!」
・・・いや、なんで知ってんの。ダー様。
そうだよ。そもそも殴られたのが、誤解だと何で知っていたんだ?
「あそこで隆史さんのお答え次第で、サンダースは終わっていましたのよ?下手したら、来年は出場が出来なかったかもしれませんわね。」
ケイさんに、信じられないモノを見る目で見られた。
ダージリンと交互に見られる。
「え・・なんで?正直に答えなかったの!?誤解だったんでしょ!?」
「さぁ?それは隆史さんにしかわかりません。ただ・・・もうちょっと何かあったんじゃございません?隆史さん。」
「ダージリンさん。隆史君なんて答えたんですか?」
「お姉さん胸でっかいけど何食ったらそんなになるの?って聞いたらビンタされただけです。」ですって。」
すっげぇ綺麗に言われた。
「・・・は?」
みほさん!!
「まぁ、知る由もなかったかもしれませんが。ですから、自分だけ謝って楽になろうとする貴女に、本気で頭にきたわけです。」
ケイさんが呆然としている。
別にいいのに・・・。
「・・・ドウシテ。」
「はい?」
「どうして自分が悪いみたいに!殴った私が悪いのに!!そんなの貴方が、一方的に悪いみたいじゃない!」
・・・一瞬ノンナさんを思い出した。
結構、俺ノンナさん思い出すなぁ・・・。
この状況、あの時と似ている。
カチューシャの事で問い詰められた時に。
問い詰められる、しかし問い詰めている方が、実は追い詰められている。
「・・まぁしょうがないだろ。」
「なにが!?」
「隊員というか、後輩を思っての事だろ?誤解だって俺には分かっていたし・・。」
「・・・。」
「今回の件は、誤解が解けた時点で、俺の中じゃもう終わった話なんだよ。」
殴られるの慣れてるし・・・マヒしてんなぁ・・。
「さっき言ったろ。あんたみたいな真っ直ぐな奴、結構好きなんだよ。俺は。」
「――!」
「わかった?だからもういいんだよ。被害者当人の俺が許したんだ。もうこの話は終わりだ。」
終わりと言った所で、ケイさんはまだ呆然としていた。
しかしなぁ・・ほかの奴らは何してんだ。ケイさんほったらかしかよ・・・。
・・・なんだ?
副隊長含め、体育座りで震えてるように見えるけど。
遠目にも顔色悪いのわかるくらい憔悴してるなぁ。
あれ?一人黒い制服の娘がいる。
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「タカシクン。」
「なによ。みほ。」
何言ったて、いまさら好感度は戻りませんよ?
「いい加減に何とかして。・・・その娘。」
指をさす先にオペ子がいた。
そうまだ、俺の右手にしがみついていた。
「あ、私のことはお気になさらないで下さい。」
「しますよ!離れて下さい!」
「嫌です。」
・・・笑顔で、すっごい棒読みで答えた。
何で笑顔で睨み合ってんの?
「西住 みほさん。」
「・・・なんでしょう。」
「そちらの方は、いいのでしょうか?」
反対の腕を指差すオペ子。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・なんだ?」
「なんだ、じゃないよ!何でいるのお姉ちゃん!!」
・・・黒森峰の隊長にガッチリとホールドされていた。
もう驚かない。神出鬼没はもう慣れた。ただ恐怖しかない。
「なにって、みほ達の試合を見に来ただけだ。試合が終わったので声でもかけようと思ってな。」
・・・。
「なんで一々腕組むの!?今それ関係ないよね!?」
「?」
「だから本気で分からないって顔はやめて!首を傾げない!」
いやぁ。みほさん最近、怒りっぽいですよ。
「ふむ。・・・隆史。」
「なんでしょうか、まほちゃん。」
「やはり、こういうのは嫌いか?」
・・・ワザとかよ。
「後輩にな、こういうのは喜ばれると教えてもらったのだが。・・・誤情報だったか?」
「・・・お姉ちゃん。今度その人教えて。」
みほさんの目がそろそろヤバイ。
それは、それとして。
「オペ子さん。・・・何で腕を組むのでしょうか?」
話している最中、オペ子が、手から腕にシフトチェンジしていた。
自分とまほちゃんを交互に見比べていた。
「・・・チッ。」
・・・オペ子さん。舌打ちは、やめなさい。
明らかな戦力差を思い知らされたようだ。
両手に花って状態だろうが、羨ましい、変わってほしいという方がいましたら喜んで変わろう。
はっきり言おう。腕が折れそうだ。
まほちゃん。無表情で、オペ子が動くたびに力入れるのをやめて下さい。
オペ子。まほちゃんの胸を見る度に力入れるのやめて下さい。貴女、装填手だから結構な力あるでしょ!
「隆史。」
「・・・なんでしょう。」
「今回の件は、もう終わったのか?」
「俺の中ではな。つか、ダージリン達もそうだけど、誤解って何で知っているんだよ。」
先程から謎だった。
おかしいよな。その辺知っているのは、サンダース陣営にいた一部の人間だけだ。
今の言い方だと、まほちゃんも多分、把握しているっぽい。
「3人組の大学生スタッフに教えてもらったのだが。」
「あ、私達もです。」
・・・。
何もんだよ、あのスタッフ。
そこまで詳しく知らない筈だけど・・・。
「・・・そういえば大学生ってボランティアとかで運営スタッフとして、参加できるんだっけ?」
「そうだな。連盟から要請も行くはずだな。」
・・・まさかな。考えすぎだといいけど。
最後、一人には助けてもらったし。
「まぁいい。終わった事ならもう私からは何も言わないでおこう。」
「あ・・ありがとう。そろそろ腕離して・・・。」
そろそろ、腕も胃も限界なんですよ。
「・・・いつのまに現れましたの?まほさん?なんでしょう・・・その腕は。」
「貴方には関係ないと思うが?」
ダー様、復活・・・。
ケイさん置いてきぼりになってるよ。
終わらないので腕を振りほどく。
ほら、二人共悲しそうな顔をしない!
いつまでも終わらないでしょ!
あれですか?無限軌道ゾーンにでも入りましたか?
「えっと、尾形クン・・。」
「はい。なんでしょうか?ケイさん。」
もういい加減終わろうよ!
疲れたよ!
「やっぱり、何かさせて。土下座でもなんでも。誤解で殴っておいて、何もしないで許されるってのも・・・。ダージリンが言ったように私本位かもしれないけど・・・。」
まぁ・・踏ん切りがつかないのだろう。いつまで経っても話が終わらない。
さて、どうしたものか。
「いい加減にしなさいよね!!」
誰だよ・・今度は。
声を掛けられた方向を見たら、青い顔したエリリンでした。
なんで青い顔してんの?
「あんた達が、いつまでもグジグジしてるから、隊長の矛先がこっちに来たじゃない!」
胸ぐら掴む勢いで・・というか掴まれた。
あらやだ、近い。
「なんで私が、サンダースの連中と一緒に怒られなきゃならないのよ!!」
いや・・知らんがな。
「どういう事?」
「あんた達の話が長いから、後ろで待機してたサンダースの副隊長達と先に話をしたのよ。」
「あぁ、あのアリサさん達?おわ!」
胸ぐら掴んだ手をグッと引き寄せられた。
「隊長、本気で怒っていたみたいで、あの子達にマジ説教始めたわ。あんたなら、想像つくでしょ。」
ボソっと小声で睨みながら言われました。
・・・それであの体育座りか。
うん、それは仕方がない。
しほさん譲りのあのプレッシャーは、慣れていても辛い。
「あの子達、あれからずっと小声で「スイマセン」をリピート再生してるわよ。どうすんのよ!」
あー。それで目も死んでるのかぁ。
隊長といいサンダース壊滅状態じゃないか。
「なんで、それに私が巻き込まれなきゃならないのよ!」
胸ぐらの手に力が入る。
いや、だから知りませんよ。俺関係ないよね。
「・・・エリカ。」
「ヒャイ!」
「少々・・・顔が近いなぁ。」
「ヒィ!」
バッと手を離して一気に離れるエリカさん。
貴女この間からいい所ないですね。怯えてしかいませんよ?
はぁ・・・。
「じゃあ、ケイさん。」
「なに?どうするか決まった?」
ダメだ完全に自暴自棄な顔になってる。
そんな彼女の目の前に手を差し出す。
「握手しましょう。」
「え?」
強引に手を掴むと無理やり引き起こす。
いつまでも地べたに、座らしておくわけにもいかない。
「はい、仲直り。」
ポカーンとしている。
「もういいよ。いつまでも終わらないから。女の子追い詰めて、悦に浸る趣味も無いし。」
「隆史君・・・言い方・・・。」
うっさいみほ。
もう、いい加減、帰ろうよー。
「正直、私はまだ言いたりませんけど・・・。」
「ふむ。私も言っておきたい事は有るといえば有るが・・・。」
まほちゃんとダージリンがまだちょっと渋る。
まほちゃん、貴女もういいってさっき言ったでしょ?
・・・。
・・・・・。
「なぁ、まほちゃん。ダージリン。」
「あら、何かしら?」
「なんだ・・ム。」
「あ・・・。」
みほとまほちゃんは勘付いたのか。
俺もソロソロこのグダグダしたループが嫌になった。
感情的にはあまりなりたくないんだけどなぁ・・・。
うん。いい加減シツコイ。
「いい加減にしないと・・・本気で怒りますよ?」
◆
なによ。あの男が怒ったから何だって言うのよ。
そろそろ日も傾きだしたし、黒森峰に帰りたいのだけど。
・・・。
隊長?
え?なに?隊長が固まっている。
何よ。あの子まで固まって・・・。
「まず。」
ビクッ!
あの男が声を発したら、姉妹揃って反応した。
あんな隊長見たことない・・・。
「ダージリン。いい加減しつこいですよ。私が良いって言っているのですから、もういいでしょ?
長時間責め立てられるのは、拷問と一緒です。当人が許しているのですから外野が、とやかく言わないで下さい。」
「む・・外野というの『これが最後です。』」
うっわ、気持ち悪!
なにあの男。いきなり敬語になって。雰囲気がまるで違って気味が悪い。
隊長もなんで、あんな男を・・・あれ?何かボソボソ姉妹で、話をしてるわね。
「お・・お姉ちゃん。どうしよう。」
「・・・む・・昔と違う。少なくとも、みほは大丈夫だろう。」
「でもぉ・・あれ完全にスイッチ入っちゃってるぅ・・。」
だから何だと言うのだ。
むぅと考え込んでいる聖グロの隊長。
なんだろう。前にもあったなこの感じ。
「YESかNOで終わりです。」
「キイテイマスカ?エセ外人さん。」
あ。オモイダシタ。家元と対峙していた時と同じ感じだ。
「!!」
「い・・いくら隆史さんでも、それは『じゃあ何ですか?貴女そもそも海外に行った事あるんですか?』」
「金髪碧眼ですので、敢えて聞きませんでしたけど。」
「」
「あるんですか?」
「い・・今それは関係な『はい。関係無いですね。ですから何でしょう?』」
「」
「それに、露しゅ『 隆史さん!!!』」
ロシュ?真っ赤になって怒鳴ってる。あの隊長が大きな声出すなんて。
「仕方ないですね。」
あの男が続いて、彼女に近づいてボソボソ耳元で何か囁いてる。
「ヒッ!」「ソレハ・・。」「デスケド・・・。」「ソンナコト・・・ハ。」「ツッ!!!」
小声で会話しているのか、少しは聞こえる。
段々顔が真っ赤になって、目が涙目になっていくのだけど・・・。
最後何か囁いたら、あの聖グロの隊長が、ペタンと座り込んだ。
「では、もういいですね?」
「・・・ハイ。もう私から言うことはございませんワ。もう好きにしてください・・・。」
よしよしと頷いてグルッと隊長を見る。
ビクッっとする隊長。
近づいて一応確認しておこう。
ちょっとこいつが怖く感じてきた。
ウチの隊長に何する気?
「ちょ。ちょっとあんた何言ったの?」
「えぁ?何が?あぁ、ダージリンに?」
あれ?私には普通だ。いつもの憎ったらしい喋りだ。
「いやぁもうね。ただケイさんを虐めているみたいで、気分が悪かったんで・・・こっちから少し虐めてやろうかと・・・。」
「あんた・・・。聖グロリアーナって結構なお嬢様よね。なにを言ったら、あんな事になるのよ。」
地面に座り込んじゃってボーと真っ赤になってるだけよ?
「いやぁ・・最後に「変態」って言って、ちょっと耳たぶ噛んでやっただけだよ?」
・・・。
「ちょっと、えっと・・・ごめん何でもない。」
思いっきりセクハラだと思ったけど・・・ダメだ。関わりたくない。
・・・目が本気で怖かった。多分、全部は聞かないほうがいいだろう。
そのまま西住隊長に近づいていく。
た・・隊長が小刻みに震えてる!?
みほは、少し離れて見ている。
あまりの雰囲気に心配でもしたのだろうか?あの子のチームの子達と合流していた。
「さて。西住さん。」
「!?」
あ・・確か聞いた事がある。
あの男に苗字で呼ばれるのを非常に嫌がる事を。
「た・・隆史。オマ・・」
隊長が怒気をまとった。
怖い。あの隊長は、無条件降伏を余儀なくさせる雰囲気がある。
「なんでしょう。西住さん?」
「・・・。」
「貴女一度、何も言わないと言っておいて、話をまた蒸し返すのは無いのでは?」
「・・・。」
ほら、隊長がすっごい睨んでるけど。何で私が怖がってるのよ。
「聞いていますか?西住さん。」
「・・・。」
「わかりました?西住 み・・まほさん?」
「!!」
・・・
・・・・・
あいつ・・・今ワザと名前を間違えなかったか・・・?
「・・・・・・・・グス。」
隊長!!??
「わかった・・・私が悪かったから、・・・もうやめてくれ隆史。」
「・・・そうだなぁ。・・・まほちゃんは、あんまり関わっていなかったからなぁ・・もういいか。」
「!!」
呼び方が戻ったら一気にパァァと顔色が戻った。
やだ。あんな隊長見たくないぃぃぃ!
みほのチームの会話が聞こえてきた。
「た・・隆史君。麻子の時と感じ似てるね・・・コワイ。」
「うん。今私、彼に絶対近づきたくない。」
「隆史殿、どうしちゃったのですか?」
「あー・・みほさん仰っていましたね。隆史さんが口調が変わるのって、怒っている時か焦っている時って。」
「うん。あれ結構、本気で怒ってるヨ。」
「・・・いつもの口調に慣れたから、今更あの口調の書記を見ると気持ちわるいな。」
「でも、特に暴力を振るう訳でも無く・・・何故そこまで怖がるのでしょう?」
「・・・あの状態の隆史君ね。事務口調で、人の一番嫌がる事をピンポイントで攻めて来るの。・・・セクハラ発言お構い無しに。」
「「「「・・・。」」」」
「ただ、人を追い込む発言するから正直怖いの。ダージリンさんには、耳元で話してたでしょ?多分・・人様に聞かれると本当にダメな事を言っていると思うよ?」
「「「「・・・。」」」」
「と・・・遠くで眺めてましょう。」
・・・。
な・・・何なの。あの男。
本当に訳がわからない。
◆
「ケイさん。何か悪かった。イジメみたいな事して。」
「・・・また謝るのね。貴方は。」
「もういいや。何か償ってもらって、それでお互いに気持ちよく終われるなら、それでいいや。」
「・・・。」
「ちょっとあんた。」
なんだよエリリン。
もうイレギュラーはいいよ。
「今回の事は特にあんたが、はっきりしないのが悪いと思うのだけど?」
「は?」
「つまり、聖グロの隊長達もウチの隊長も、み・・みほも、あんたが殴られて怒ってるんでしょ?」
「みほは、特に怒っちゃいなかったよ?」
「見た目はね。途中気づいたけど、結構やばかったわよ?あの子。」
「ほぉー・・・よくわかるねエリリーン。」
「う・・うるさい!とにかく!今までので、当事者の本人達以外はすべて納得できたと。」
そうだな。ダー様とまほちゃんは、もう何も言わないだろう。
あとは、彼女本人だけだ。
エリリンが、ケイさんと俺を並ばせる。
「サンダースの隊長さんは、自分が許せない。あんたは許しているから、もういいって訳よね?」
「端的に言えば。」
「そーね。」
現状確認させられる。
「別に今すぐ解決しなくてもいいんじゃない?」
「「え?」」
「取り敢えず連絡先でも交換して、そっちの隊長さんとゆっくり模索してけば?」
「「・・・。」」
「後は、あんた達が納得できればいいんだから、他人を巻き込まないで、こっそりやってなさいよ。」
「・・・。」
「oh...」
エリリンすっげぇ・・。
問題を先延ばしにしただけに思えるけど、現状の解決策で一番だ。
少なくとも他人を巻き込まないで、邪魔もされない。
「なんなら、あんた達そのまま付き合っちゃえば?サンダースの隊長さんも満更でも無いみたいだし。」
「・・・。」
うん。黙っていよう。自分の首を絞めそうだ。
「え!?何!?隊長!?」
無言で引きずられていくエリリン。
それを見送るケイさん。
「・・・それもいいわね!」
「いや・・良くないですよ。・・・何で元気になってるんですか。・・・まぁでも連絡先交換しますか?現状キリがない。」
「そうね。ちょっと待ってね。」
彼女が上着から携帯を出す。
アドレス、電話番号等、連絡先を交換する。
人心地ついたのか少しずつ最初の感じに戻っていく。
「これで、何かできそうね!」
「あーでも俺、基本メールあんまりしませんので、電話すると思いますよ?」
「OK!OK!」
よかった。やっと元気が戻ったみたいだ。
やっと終わるのか。
「正直。貴方には、何言われて何を要求されても受けるつもりではあったの。ダージリンから聞いたので覚悟が決まったしね。」
「あー・・・大学生のスタッフの話ですか。」
「そう。本当に救われていたのがわかったわ。だからエグいエッチな要望でも応える覚悟が着いたの!」
・・・やめて下さい。ウインクしながら何て冗談言うんだよ。
「まぁ・・そんな事もなく、何も要求もされなかった。ちょっと・・かなり意外だったわ。」
「ま。連絡先も交換しましたので、なんか思いついたら連絡しますよ。」
「さっきの子が、言った事でもいいわよ?男女の仲なんて付き合ってみないと、わからないもの。」
「元気が出て何よりですけど、余りフランクすぎると引かれますよ・・・。」
「大丈夫よ!私こういう事、言うの貴方が初めてだから!・・・本当に。」
・・・。
彼女が、パンっと自分で顔を両手で叩いた。
「さて、そろそろ撤収しましょ。アリサ達は・・・会ってみる?」
「もういいですよ。まだ彼女達も怯えて・・・大丈夫かあの状態。」
まだガタガタ言ってるけど・・・。
「今回、実際に手を出した貴女が、責任を取るって事で一人で頑張ってたんでしょ?じゃなきゃ、途中で全員呼んでるでしょ。」
「・・・貴方。」
まぁそれでも、普通助け人入るものだけどな。まぁ立ち塞がった障害が、マジギレモードのまほちゃんじゃしょうがない。
ではこっちも撤収するか。
「あ、そうだ。貴方の事「タカシ」って呼んでいいかしら?」
「・・・それだと、アリサさんの言う「タカシ」と混ざってまた変な噂立ちませんかね?」
「そぉーねー。」
完全に通常に戻ったのか、結構明るいフランクな喋りをしている。
そうか。彼女本当はこんな人。
「じゃぁーね。決めたわ!」
尾形でいいだろ。あ、そっか。アメリカ式だからなんか愛称つけれくれるのかな?
会長がアンジーだっけか。俺なんだ?お菓子?
「ダーリンで♪!」
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某所
「お疲れ~・・。」
「お疲れ。」
「これでボランティアって言うんだからねぇ。はぁ・・バイト代くらい出ないのかしら。」
「しっかし「アレ」がねぇ・・・。」
「理由がオッパイなんて言われるとは思ってなかったわよ。」
「体調悪そうだったってのも、有るんでしょうけど。」
「そもそも今回、男装なんてする必要あったの?」
「私が面白いからよ!」
「・・・。」
「・・・。」
「そんな事言ってるから母校が負けるのよ。」
「まぁ、あれはしょうがないんじゃない?大洗の子達も頑張ったし。」
「それはそれとして、いつ仕掛けるの?」
「そうねぇ・・来週にでも行きましょうか?」
「直接?」
「直接。」
「強制的に、お越し頂ければ、それでいいわよ。」
「相変わず・・・。」
「さて。あんまり時間も残されていないし。・・・隊長の為だし。」
「そうね。これは仕方がない事なのよ。」
「隊長の為ね。確かに仕方がない。」
「じゃ、来週行きましょうか?人拐いに。」
はい。閲覧ありがとうございました。
疲れた。いつもの文字数が約2倍です。
この作品で多分一番キャラがでました。
キャラクターが多く出るとバランスが取るのが難しいです。
正直今回の話は、青森編3話に続きて投稿するのが結構。怖い内容でした。
人選ぶだろうなぁ・・・。
ありがとうございました