転生者は平穏を望む   作:白山葵

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前話、デイリーランキング11位まで行きました。

ありがとうございました

何? 俺死ぬの?



第23話~アンツィオ潜入です!…潜入だよね?~✩

 昨日の事は、良く覚えていない。

 

 どうも私は、間違えて飲酒をしてしまったようだった。

 記憶も朧げで、所々記憶が抜けている。

 

 隆史さんに、ボコランドへ連れて行ってもらう約束をした所は覚えている。

 

 ……忘れるもんか。

 

 飲酒をしてしまう前の事は、ちゃんと覚えている。

 

 敵がいた。

 

 敵。敵対勢力。

 

 正直まだ、おつき合いとか、結婚とか…男女の関係?というのは、私にはまだ良く分からない。

 

 でも。

 

 隆史さんの話を聞いていて、この人昔から変わらないなぁと安心するのと同時に、顔も知らない女の人の話が出てきて…少し。

 いや違う。すごく嫌な気持ちになった。

 

 そう。今の彼には、彼の生活がある。

 だから知らないうちに、昨日の話の中の人から「恋人」と言われる人が、できてしまうかも知れない。

 

 でもいいの。例えば実際に、今現在「恋人」がいたとしても、それは今。「現行」の話。

 結婚する訳では無い。

 

 ……。

 

 やめておこう。下手に考えると、いつまでも気になってしまう。

 

 ―私は今、大学生。

 飛び級までして、彼に追いつこうとしている。

 彼が、高校を卒業した後、二年で私は社会人になる。年齢も16歳を超える。

 私の容姿は彼にとって、どうなのか分からないけど……今の彼の周りの女の人達より、「若い」というアドバンテージがある。

 だからある意味、他の人達より少し時間はあると思う。

 

 だから大丈夫。今は嫌でも、将来は分からないから。

 

 だからいいの。

 その時になったら、敵は蹴散らす。撃破、粉砕する。

 

 最終的に、私の所に「戻って」来てくれさえしてくれれば、それでいい。

 

 

 ―ス

 

 理想は、現行も私と一緒にいてくれるのが一番嬉しい。

 でも……

 

 

 

「愛里寿」

 

「わっ! はい!?」

 

「……どうしたボーっとして。あんまり旨くなかったか?」

 

「い、いえ。とても美味しいよ!」

 

 「「「 …… 」」」

 

 いけない。

 

 一緒にいられる時間が、あまり残って無いのに考え込んでしまった。

 

 日本戦車道連盟会館にある休憩室で、隆史さんが作ってくれたちょっと早い昼食を取っていた。

 試作段階のメニューらしく、感想を聞きたいとの事だった。

 アズミ達も体調が良くなったらしく、出発前にみんなでご馳走になっていた。

 

 「「「 …… 」」」

 

「まぁ、ちょっとパスタにうるさい奴らに出す品だから、ちょっと不安だったんだ」

 

「大丈夫。美味しい。パスタ料理って、私が嫌いな物を良く使うから、あまり好きじゃ無かったのに食べられるよ。おいしい!」

 

「まぁ、和風パスタだからね。愛里寿が嫌いな物今回は、一切使わなかった。例えば、…そうだな、オリーブオイルの代わりに、余ったツナ缶の油使ったり…確か、嫌いだったよな?」

 

「うん♪」

 

 こういう気遣いは素直に嬉しい。けど、これができて、何であそこまでデリカシーが無い行動ができるのだろう。

 ……別の意味ですごいと思う。

 

「次は、嫌いな物も食べれるようにスルケドナ」

 

「…うん」

 

 ちょっと、笑っている隆史さんの目が、怖かった。

 

 「「「 …… 」」」

 

「お姉様方。先程から無言で食べてますけど…あの、お口に合いませんか?」

 

 そういえば、あの賑やかなアズミ達3人が、黙々と食べていた。

 食べたのに感想も言わないのは失礼だと思う。

 

「貴女達……」

 

「隊長。すいません。ちょっとショックで……」

 

「ショック?」

 

「オイシイデスヨ? 美味しいのですけど…それがショックで……」

 

「ショック?」

 

「えぇ…。今朝、あの西住流家元に『昨夜の事は、お互い忘れましょう……』とか意味深な事言われてた、高校生が作ったとは思えない……」

 

「」

 

「そうね。絶対カタギの人間じゃない格好の男の子が、作ったとは思えないの…ごめんね?ちゃんと美味しいわよ?」

 

「褒められてる気がしませんよ!!」

 

 隆史さんの昨夜の衣類は、酒浸りになってしまった為と、お母様がいつの間にかクリーニングへ出してしまった。

 その代わりに、お母様に用意された衣類を、代わりに隆史さんは着用している。

 白いスーツなんて、結婚式用以外にあるんだ。知らなかった。

 

「……なんでみんな俺の…しかもスーツのサイズ分かってるんだよ。そして何故着せようとするんだ? 会長といい、千代さんといい……」

 

 サイズの件は、私もそう思った。だからお母様に聞いていてはいたので、代わりに答えておこう。

 

「母上は昨晩、「隆史さんの体を堪能できたから、サイズは分かった」って、言っていましたよ?」

 

「」

 

 あれ? みんな固まってしまった。

 

「尾形君…貴方……」

 

「ちっ違う! 違う違う!! 貴女達も昨夜、散々楽しそうに見てたじゃないですか!! そっちの意味じゃない!!」

 

 そっちの意味?

 

「というか、家元も娘になんて事言ってんのよ」

 

「隊長。あの…堪能というのは、昨晩の食事会の時に家元が、彼の体のサイズを図ったのです。…直に触って」

 

「あぁ、何となく覚えている。では、隆史さんが言っていた「そっちの意味」ってなんだ?」

 

 「「「「 …… 」」」」

 

「どうした? わからないから素直に聞いてるのだけど?」

 

 なぜ三人共目を逸らす? 

 隆史さんまで目を逸らすし。

 

「…さて、私そろそろヘリの準備するわ」

 

「あ、昼食作って貰ったから、洗い物くらいは私するわね」

 

「私は荷物まとめてくる」

 

「ずるい!!」

 

 早々に、三人共部屋を逃げるように出て行ってしまった。

 隆史さんは、非常に困った顔をしている。どうしたのだろう。

 まぁいいか。

 

「それで、隆史さん。どういう意味なんですか?」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 やっと…

 

 やっとだ!

 

 戦車倉庫に本日届いた、我校の秘密兵器!

 長かった……。

 本当に長かった……まさか私の代で購入まで至るとは!

 

 重戦車! 重戦車ぁ!!!

 

 頬ずりしたくなるなぁ! 明日に控えたお披露目に心が躍る!!

 あぁ…戦車倉庫で、一際存在感を出しているこの勇姿!

 

 1回戦を突破し、次は大洗学園。

 いける! 例え、西住流が相手だとしても、今年こそ悲願の3回戦出場も夢では無いなぁ!!

 

 長かった……。練習試合では、プラウダにボッコボコにされ。

 ノリと勢い以外は、食欲しか無いとまで言われ……。

 

 しかし! これで見返せる! あの男を!! 

 あの散々、私達を馬鹿にしくさった、あの男を!!

 人のツインテールをおもちゃにして、遊びに遊んでくれたあの男!

 

 商売のコツを教えてくれたあの男。

 

 ちょっと。ほんのちょーと、危ない所を助けてくれたあの男…。

 海の家って怖かったなぁ……ショバ代請求って本当にされるんだァ……。

 

 ……。

 

 今頃、何してるかなぁ。

 久しぶりに、青森行ったら転校していなかったなぁ。

 人の裸まで見ておいて、何も言わないで、どこに行ってしまったのだろう。

 

「……」

 

 ……やめよう。昔の事だ。

 特に裸の件は、恥ずかしくなるだけだ。

 

 さて、早速試運転…。

 

「姐さん! アンチョビ姐さぁん!!」

 

「……」

 

「姐さん! なにボケーっとしてんっすか!!」

 

「いや…何でもない。どうした?」

 

 戦車倉庫の扉をわざわざ蹴破って、入ってきた副隊長。

 ……いちいち壊さないでほしい。

 修理するのも無料じゃないんだぞ。

 

「カチコミっす、姐さん! カルパッチョが今対応してんすけど、どうも誰か探してるみたいなんです!」

 

「一々、叫ぶな! カチコミだと!? 他校の生徒か? 人数は? 誰を探してるんだ?」

 

「いや、それなんすけど。誰か分からないんっすよねぇ」

 

「どういう事だ?」

 

「戦車道所属の「安斎 千代美」って人探してるらしいんっすけど、いましたっけ? そんな生徒」

 

「……」

 

「えっと、私も一年からの報告を聞いたんすけど、相手は男一人。他校の生徒じゃなくて、どうもヤ○ザらしいっす!」

 

「え……」

 

 ヤ○ザ!?

 

 なんで、ヤ○ザが私を探しているんだ!?

 

「……なんで私を?」

 

「やだなぁ姐さん。アンチョビ姐さんじゃなくて、「安斎 千代美」って生徒っすよ?」

 

「それは、私だ! 私の本名だ!!」

 

「そぉなんすか!? まぁそんな事は、どうでもいいっすから、早く来てくれないっすか!?」

 

 ……ペパロニ。どうでもいいは無いだろう。どうでもいいは。

 私が行けば良いって話だろ?

 

 でも正直行きたくない。

 行きたくないが、カルパッチョが心配だ。他の生徒に危害が加わるかも知れない。

 行こう。……怖いけど行こう!!

 

 動け脚!

 

「どうするっすか? あ!P40で行くっすか? 砲撃試験には丁度いいと思うんっすけど!」

 

「死ぬ! ヤ○ザ死ぬから!!」

 

 ダメだ、すぐに行こう。

 この子達に任せたら、本格的に某事務所のカチコミを受けそうだ。

 

 

 

 ……。

 

 報告を受け、早速校門前に出向いたら本当にいたよ。

 

 学校の正門出口前。

 白い階段を降りた所にある、一番下に広がる中庭。

 

広がる白い石畳の上に立っていても目立つ、同じ色調の白いスーツ。

 ブラッドレッドのワイシャツを首元で開けている。サングラスで顔はちょっと分からないけど。

 

 うっわー、マジでヤ○ザいるよ。

 

 ……怖い。

 

 ショバ代の件は、彼が間に入ってくれたお陰で、すでに解決済みなのに……。

 あれ? 他に私なにかしたっけ?

 平和に戦車、乗り回していただけなんだけどなぁ。

 

「うへぇー。本当にいましたねぇ。さっそく実弾ぶち込みますか!?」

 

「やめんか! 洒落にならんだろ!!」

 

 横の副隊長も別の意味で怖かった。

 多くは望まないから、少しは後先考えてくれ!

 

「あれ?」

 

「あ……」

 

 なぜだ? なぜカルパッチョは、楽しそうに談笑してるのだ?

 先行したと報告を受けたもう一人の副隊長が、えらく嬉しそうにヤ○ザと話していた。

 

「どうしたんすかねぇ……あ、こっち見た」

 

 一定の距離を保った、他の生徒に囲まれたヤ○ザが、こちらを見て手をふってきた。

 

「おー千代美ぃ! ペパロニぃー! 久しぶりー!」

 

「……」

 

 どこかで聞いた声と、私の呼び方。

 私を、下の名前で呼ぶ男は限られている。お父さんと……

 

「あ! タカシか!? タカシじゃねぇか!」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 昼。大洗学園に帰艦する途中、アズミさんに頼んで、アンツィオ学園艦でヘリから降ろしてもらった。

 もちろん密航じゃない。正式な手続きをもらってだ。

 

 諜報活動でもしてみっかなぁっと思って、昔の知り合い訪ねて真正面から乗り込んでみた。

 ペパロニは聞いたら、普通に教えてくれそうだし。

 

 イタリア風の学園艦って事で、ちょっと観光でもしとこうかなぁっとか思っていたけど、俺が到着した時は、すでに下校時間。

 帰られてしまったら意味がないと、早速アンツィオ学園を訪ねて見た。

 

 しかし男の俺が、ウロウロしていたらやはり目立つ。

 取り敢えず、アンチョビを見つけようと近くの生徒に尋ねてみた。……まぁ本名で。

 

 すぐさま、不審者扱いされ通報された。えー……

 

 俺を逃がさない為か一定の距離を保って、周りにいた他の生徒に囲まれた。

 この学校の生徒って、どうも血の気が多いらしい。

 通報を受け、警備員でも駆けつけてくるのを待っているのか、何もしないでただ睨まれ続けた。

 

「囲んでみたけど、どうしたらいいかわかんないよ!」

「報告したら、ドゥーチェ連れて来てくれるって!」

 

 なにか相談してる。ドゥーチェってアンチョビの事だろ?

 

「あの、お嬢さん……」

 

「ヒィ! 睨んだ!? 食べられるぅ!?」

「姐さん! まだですか!?」

 

「……」

 

 ……普通に声かけただけなんすけど。

 

 通報を受けて駆けつけたのは、警備員じゃなくて顔見知りでした。

 

 その顔見知り。カルパッチョさん。はいお久しぶりですね。

 相変わらずふわふわしてるなぁ……。この学校では異彩って言えば異彩なのかな?

 一応、戦車道の副隊長って事で、判断を仰がれたらしいけど……いや俺が言うのもなんだけど、男の警備員を呼べよ。

 

 彼女は、すぐに俺だと分ってくれて、周りの生徒に説明をしてくれた。

 

 …が。誰も警戒を解いてくれなかった。まだ一定の距離を保っている。

 カルパッチョさんと会話をしている時、横目で様子を伺ってみると、まぁ睨まれてる睨まれてる。

 

 その皆さんが警戒を解いてくれたのは、ドゥーチェとペパロニの二人が合流してから。

 千代美とペパロニ。それとカルパッチョさん。この三人揃った為なのだろうかね。

 

「千代美、久しぶり」

 

「いや、確かに久しぶりだけど…何故、貴様は相変わらず名前で呼ぶ!? 私はアンチョビだ!」

 

「えー、だって料理とかする時、紛らわしいんだよ。じゃあ千代美って呼び方しか残ってないじゃんよ」

 

「いやいや! だからって何で下の名前なの!?」

 

 パタパタしてるなぁ……。取り敢えず、ムチを持った手を振り回さんでくれ。

 

「あ、ところで千代美。会ったら聞きたい事あったんだ」

 

「その前に私のいう事、聞けよ!!」

 

 うん。無視だ。

 

「何? あのカード」

 

「は? カード?」

 

「何で、ムチ舐めてる写真撮ったの?」

 

「え……」

 

 はい。買い続けています「例のお菓子」

 

 そして前回でました。SRのアンチョビ姐さん。

 ムチを舐めたってワードで、思い当たったのだろう。顔色が変わった。

 

「何で水着姿のまま、わざわざ戦車の上で、横たわりながらムチ舐めてんの?」

 

「」

 

「何で? え? 狙ったの?」

 

 振り上げた両手が止まってしまいましたね。

 いやぁ赤い赤い。真っ赤になっていくなぁ……。

 

「わ…私も恥ずかしかったんだぞ! そもそも水着で撮影なんて!!」

 

 そのまま胸の前で、両手で指先を弄びながら、モジモジしだした。

 

「あ…あれは、その…撮影した女性スタッフが…ああいぅ、キャラモ…ウケルッテ……」

 

 段々と声が小さくなっていくなぁ。

 

「はっはー。千代美ちゃん、かーわーうぃーいー」

 

「や、やめろ! 私の髪で遊ぶなぁ!! 千代美ちゃんって呼ぶなぁ!」

 

 ツインテールの根元を持って、ぐるんぐるん回して遊ぶ。

 

「あ、そうだペパロニ。千代美のこのツインテールって着脱可能だぞ? ドリルになって武器になるんだぞぉ」

 

「マジか!? さすがっすアンチョビ姐さん!!」

 

 何がさすがなんだろう…。

 

「な! 何言ってるんだ!? やめろ隆史! ペパロニが信じたらどうするんだ!」

 

 真っ赤になったドゥーチェと戯れている姿を見て、周りも漸く納得したのか。警戒を解く。

 ……まぁ逆に、別の意味の視線に変わったけど。

 

「なんだ。姐さんの男か」

「早く言ってくださいよー」

 

「ち、違う! なんでそうなるんだ!?」

 

 大丈夫だという事で、この警戒態勢はお開き……解除となり、散り散りに帰っていく。

 

「聞けよ! お前達! そのまま帰るなぁ!!」

 

 そして残った、彼女達3名様。

 

「あの…尾形君。結局今日は、どうしたの? わざわざ学園艦まで来るなて」

 

「あー…」

 

 叫びすぎて、ハァハァ言っている千代美さんを頬っておいて、当然の疑問を口にされる。

 ただなぁ…諜報活動に来ました。なんて、いくらなんでも言えないだろう。

 

「お、そうだなタカシ。おめぇ今、大洗学園の生徒だろ? 何しに来たんだ?」

 

 「「え!?」」

 

「ペパロニ! どういう事だ!? 隆史の転校先を知っていたのか!?」

 

「え? 言わなかったすか? 戦車道開会式の時、タカシと会ってる…というか、また屋台手伝ってもらったんすよ?」

 

「聞いてない!」「聞いていないよ!?」

 

 綺麗にハモったなぁ。

 

「どういう事だ隆史! 次の対戦校の生徒だと!?」

 

「そうなんですか? 隆史さん?」

 

「そうですね、大洗学園に在籍してますよ」

 

「あら~…」

 

「それに、今回来艦したのって、ちょっと野暮用の帰り道に、近くを通ったらから寄り道してみただけですよ?」

 

「……本当に? 戦車道開会式会場にいたって事は…ひょっとして、戦車道に関係してるの?…諜報活動とかじゃないよね?」

 

「どうなんだ隆史!?」

 

 さてどうするか。疑うって事は、多少なりとも俺を、友人として信じてくれてる…のか?

 うーん

 

「正直に言うと、その目的はありましたねぇ。なんか情報もって帰れないかなぁって」

 

 「「 !? 」」

 

「でも、なんか千代美で、遊んだらどうでも良くなった。どっちにしろ俺、戦車知識あんまり無いしなぁ」

 

「お…思いの外、素直に吐いてびっくりしたぞ…。後、私で遊んだってどういう事だ!」

 

 そうだ。諜報活動とか、なんか俺には合わないな。

 みほ達には悪いが、今回は中止にしよう。

 

 こいつらとは、裏表無しに付き合いたい。

 

「んー。俺の事、ある程度は友人として見てくれてるっぽいし…なんか裏切るみたいで嫌になった」

 

「……」

 

「どうせ後日、試合で顔合わせそうだったし…なんか特にカルパッチョさん騙したくなかったんだ」

 

「そ…そうですか?」

 

「隆史…私とカルパッチョとの態度の差が、ひどいぞ…」

 

「そっか?」

 

「やめろ! ツインテールを回すな!」

 

 あ、逃げられた。

 あらま。俺と一定の距離をとられた。

 

「あーでも、どうすっかなぁ。目的なくなっちゃった。…ただ帰るのもなぁ」

 

 諜報活動中止。

 しかしまぁ折角来たわけだし…どうせ今日は、もう帰れないしなぁ。

 

「あーそうだ。試作段階だけど、パスタ料理食うか?」

 

 「「パスタ!?」」

 

 あ、食いついた。

 

 

 

 

 ---------

 ------

 ---

 

 

 

 

 久しぶりに言おう。

 

 何故こうなった?

 

 

「あぁ? 何言ってんだ? アンチョビ姐さんもカルパッチョも、寮暮らしだからだろうが」

 

「ペパロニ姐さん。んな事じゃない。何で俺、お前の家に連行されたの?」

 

「はぁ? 女子寮に入るつもりだったのか? ちょっと変態すぎんだろ」

 

「チャウネン」

 

「隆史さん。それは、ちょっと……」

 

「隆史が、結構な変態なのは知っていはいるが、男子禁制だからそれは無理だぞ?」

 

「チャウネン」

 

 

 はい。

 

 そんな訳で、ワタクシ今、ペパロニ家に来ております。

 意外や意外。ペパロニさんだけ、賃貸暮らしですね。

 

 それにしても意外ですねぇ……整理整頓が行き届いております。

 部屋も、とても綺麗にしてますねぇ。

 

「何、一人でブツブツ言ってんだ?」

 

「リポーターごっこ」

 

「は?」

 

「……ゴメン忘れて」

 

 現在キッチンで、ペパロニと肩を並べて調理中の為、率直な意見を真横言われた。

 ちょっと虚しい……。

 

「意外だな。ペパロニが、一人暮らしって」

 

「寮だとキッチンって、好きに使わせてくれねぇからな。好きにできるキッチン欲しかったんだ」

 

「結構、この部屋に私達、集まりますしね」

 

 やはり、プライベートでも結構遊んでいたりしてるのかな?

 仲良さそうだもんなぁ、この3人。

 

「しっかし、意外だ。ペパロニが、しっかりしていた」

 

「なんだぁ? 失礼な奴だな」

 

「いやいや。料理が得意なのは知ってたけど……それ以外は全てダメだと思っていました。家事とかね」

 

 うん。もっと部屋汚いと勝手に想像してました。

 

「そっか?」

 

「そうですね。隆史さんは、ご存知無いかと思ってはいましたけど、結構びっくりしますよね?」

 

「しましたねぇ…人は見かけに寄らないものだなぁ…」

 

 ペパロニの部屋は、本当に綺麗に片付けられていた。

 間取りは、俺のアパートとあまり変わらないのだけど、俺みたいに物が無いわけでもなく、机から本棚までちゃんと整理整頓されている。

 

「どうだ! 隆史! ペパロニは、伊達にアンツィオの副隊長をしている訳では無いだろ!?」

 

「そうだな。うん、見直したわ」

 

 副隊長は関係無いだろうけどな。

 

「あ、あんまり部屋ん中、ジロジロ見んなよぉ!!」

 

「あれだな! ペパロニは、結婚したら良い奥さんになりそうだよな!」

 

 千代美さんが、胸張って言うけど…。

 まぁ…家事が得意なら、いい奥さんとやらになれる訳でも無いのだけどな。

 しかし、ポイントは高い。

 

「隆史、そういうものなのか?」

 

「んぁーまぁ、同意はする。できないよりできるほうが、そりゃいいだろ」

 

「ふーん…」

 

 ちょっと嬉しそうなペパロニさん。

 女性側からしたら嬉しいもんかね?

 

 ―が。

 

 

 

 

「んじゃ隆史。私と結婚すっか?」

 

 

 

 

「……は?」

 

 今何て言った?

 

「いい奥さんになれそうなんだろ? んじゃいいだろ!」

 

「ペパロニ! 何を言っているんだ!? 気は確かか!?」

 

「そうよペパロニ! 早まってはダメ!!」

 

 ……二人がひどい。

 

「まぁ、卒業するまでガキできたら不味いから、エロい事は無しな!」

 

 「「 ペパロニ!!! 」」

 

「…あの、ペパロニさん?」

 

 あぁいかん。これは、この流れはいかん。

 

「あぁ! だからって迫って来るなよ!? 断りきる自信ねぇからな!!」

 

「」

 

 笑ってはいるが、コイツの場合、冗談に聞こえないのが怖い。

 

「……冗談はいいから、飯作るぞ……」

 

「お? おおぉ!」

 

 作業に集中しようか。

 

「……」

 

 ……冗談だよな?

 

 黙るなよ!

 

 後ろの二人が無言の為、ちょっと怖いんだけど……。

 

 

 

 

「あ、ペパロニ。アンチョビ取って」

 

「あいよ」

 

「……」

 

 

 

「こっちのアンチョビって、結構臭うな。ちょっと臭い」

 

 開けた缶詰は、イタリア産。俺が練習していたのは日本の缶詰だ。

 結構違わないと思ったけど、購入したものは、臭いがちょっと強めだった。

 

「だな。アンチョビって生臭さが少しあるぞ? 和風パスタだろ? 基本塩漬けの缶詰だから、味は結構濃いし…どうするんだ?」

 

「……」

 

 

 

 喋りながらも、手を動かす。

 まぁ和風系だと、生臭さは天敵になる場合があるしな。

 

「ガーリックと一緒に、一回外で炒めて混ぜる。これで残った生臭さを全部飛ばす」

 

 火をかけていたフライパンに切ってあった、ガーリックとアンチョビを一緒に炒める。

 少し香りがついたら、他の野菜も投入。一緒に炒める。

 炒める音と共に、部屋に香りが漂いだした。

 

「まぁ、アンチョビ使う時の基本だな。…あぁ何をしたいか何となく分かった。塩辛さは塩変わりね」

 

「そだな。後、最後に出汁醤油とオリーブオイルで味の調整を……って、どうした千代美?」

 

 俺とペパロニの間にいつの間にか、立っていたドゥーチェさん。

 顔真っ赤にして、プルプル震えてるね。どうしたの?

 

 

「……お前ら、わざとじゃないだろうな」

 

「何いってんすか姐さん?」

 

「わざとって…あぁ…」

 

 やれやれ。だから言ったのに……

 

 一度、手を水で洗い、タオルで手を拭く。

 

 ちゃんと後ろを振り向くと、学校ではないので、すでにマントを脱いでいる制服姿の千代美さん。

 

 ポンと肩に手を置き、少し屈んで千代美と目線を合わせてやる。

 

「あー。なんか悪かったな。もう少し気を使うべきだったよな」

 

「あ、いや…まぁ……わかればいいんだ」

 

 目が合った時点で、すこしモジモジしだしたが、まぁいい。

 こういう事は、ちゃんとフォローしておかないとな。

 

「こういう場合、確か…亜美姉ちゃんが言うには……」

 

 ビクッ!

 

 あれ。呟いた直後に千代美が硬直した。

 

「ま、待て! 蝶野さんの教えは!!!」

 

 あまったもう片方の手で、ツインテールの片方を鼻元に持ってきて、ちゃんと言ってやる。

 

「大丈夫だ。千代美は、ちゃんと良い香りがするから」

 

「ヒゥ!!!」

 

 「「 …… 」」

 

 

 

 あれ。どうした?

 

 完全にフリーズしてっけど。

 

「あれ? 千代美? 千代美さーん。どうしましたー?」

 

 座り込んでしまいました。

 膝と頭をくっつけて丸まってますけど……。

 

 

「隆史さん…」

 

「なんでしょうか? あの…カルパッチョさん? …なんで睨んでるんですか?」

 

「……お酒。…飲んでます?」

 

「どうしてですか!? 飲んでませんよ」

 

 いきなり飲酒を疑われた!?

 

「……そうですか? 本当に?」

 

「あの…目がちょっと怖いんですけど……」

 




はい、閲覧ありがとうございました
GW、みなさんどうお過ごしでしょうか?
私は、仕事三昧です。連休?なにそれおいしいの?状態です

乙女の戦車道チョコの設定を採用します。
長編になりそな場合、閑話として、UPしますけど、チョコチョコ本編に絡んでいきたいとお思います

はい、結局アンツィオが最後の登場となりました。
西さんは、前回一応名前だけでてきましたしね。

いやぁ……OVA……今回見なくても書けたよ……
細かい出会い等を省けば、物語自体は進みますが、どうも省略する文面がうまく判別できない……。

あ、ドゥーチェの全裸の話は、以前記入しましたが、日常の風呂回で書くつもりのものでした。
出会いの話ですね。タラシ殿の酔っ払った状態と、亜美姉ちゃんと隆史との関係性をこの三人は知っています。

ありがとうございました


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