ありがとうございました
何? 俺死ぬの?
昨日の事は、良く覚えていない。
どうも私は、間違えて飲酒をしてしまったようだった。
記憶も朧げで、所々記憶が抜けている。
隆史さんに、ボコランドへ連れて行ってもらう約束をした所は覚えている。
……忘れるもんか。
飲酒をしてしまう前の事は、ちゃんと覚えている。
敵がいた。
敵。敵対勢力。
正直まだ、おつき合いとか、結婚とか…男女の関係?というのは、私にはまだ良く分からない。
でも。
隆史さんの話を聞いていて、この人昔から変わらないなぁと安心するのと同時に、顔も知らない女の人の話が出てきて…少し。
いや違う。すごく嫌な気持ちになった。
そう。今の彼には、彼の生活がある。
だから知らないうちに、昨日の話の中の人から「恋人」と言われる人が、できてしまうかも知れない。
でもいいの。例えば実際に、今現在「恋人」がいたとしても、それは今。「現行」の話。
結婚する訳では無い。
……。
やめておこう。下手に考えると、いつまでも気になってしまう。
―私は今、大学生。
飛び級までして、彼に追いつこうとしている。
彼が、高校を卒業した後、二年で私は社会人になる。年齢も16歳を超える。
私の容姿は彼にとって、どうなのか分からないけど……今の彼の周りの女の人達より、「若い」というアドバンテージがある。
だからある意味、他の人達より少し時間はあると思う。
だから大丈夫。今は嫌でも、将来は分からないから。
だからいいの。
その時になったら、敵は蹴散らす。撃破、粉砕する。
最終的に、私の所に「戻って」来てくれさえしてくれれば、それでいい。
―ス
理想は、現行も私と一緒にいてくれるのが一番嬉しい。
でも……
「愛里寿」
「わっ! はい!?」
「……どうしたボーっとして。あんまり旨くなかったか?」
「い、いえ。とても美味しいよ!」
「「「 …… 」」」
いけない。
一緒にいられる時間が、あまり残って無いのに考え込んでしまった。
日本戦車道連盟会館にある休憩室で、隆史さんが作ってくれたちょっと早い昼食を取っていた。
試作段階のメニューらしく、感想を聞きたいとの事だった。
アズミ達も体調が良くなったらしく、出発前にみんなでご馳走になっていた。
「「「 …… 」」」
「まぁ、ちょっとパスタにうるさい奴らに出す品だから、ちょっと不安だったんだ」
「大丈夫。美味しい。パスタ料理って、私が嫌いな物を良く使うから、あまり好きじゃ無かったのに食べられるよ。おいしい!」
「まぁ、和風パスタだからね。愛里寿が嫌いな物今回は、一切使わなかった。例えば、…そうだな、オリーブオイルの代わりに、余ったツナ缶の油使ったり…確か、嫌いだったよな?」
「うん♪」
こういう気遣いは素直に嬉しい。けど、これができて、何であそこまでデリカシーが無い行動ができるのだろう。
……別の意味ですごいと思う。
「次は、嫌いな物も食べれるようにスルケドナ」
「…うん」
ちょっと、笑っている隆史さんの目が、怖かった。
「「「 …… 」」」
「お姉様方。先程から無言で食べてますけど…あの、お口に合いませんか?」
そういえば、あの賑やかなアズミ達3人が、黙々と食べていた。
食べたのに感想も言わないのは失礼だと思う。
「貴女達……」
「隊長。すいません。ちょっとショックで……」
「ショック?」
「オイシイデスヨ? 美味しいのですけど…それがショックで……」
「ショック?」
「えぇ…。今朝、あの西住流家元に『昨夜の事は、お互い忘れましょう……』とか意味深な事言われてた、高校生が作ったとは思えない……」
「」
「そうね。絶対カタギの人間じゃない格好の男の子が、作ったとは思えないの…ごめんね?ちゃんと美味しいわよ?」
「褒められてる気がしませんよ!!」
隆史さんの昨夜の衣類は、酒浸りになってしまった為と、お母様がいつの間にかクリーニングへ出してしまった。
その代わりに、お母様に用意された衣類を、代わりに隆史さんは着用している。
白いスーツなんて、結婚式用以外にあるんだ。知らなかった。
「……なんでみんな俺の…しかもスーツのサイズ分かってるんだよ。そして何故着せようとするんだ? 会長といい、千代さんといい……」
サイズの件は、私もそう思った。だからお母様に聞いていてはいたので、代わりに答えておこう。
「母上は昨晩、「隆史さんの体を堪能できたから、サイズは分かった」って、言っていましたよ?」
「」
あれ? みんな固まってしまった。
「尾形君…貴方……」
「ちっ違う! 違う違う!! 貴女達も昨夜、散々楽しそうに見てたじゃないですか!! そっちの意味じゃない!!」
そっちの意味?
「というか、家元も娘になんて事言ってんのよ」
「隊長。あの…堪能というのは、昨晩の食事会の時に家元が、彼の体のサイズを図ったのです。…直に触って」
「あぁ、何となく覚えている。では、隆史さんが言っていた「そっちの意味」ってなんだ?」
「「「「 …… 」」」」
「どうした? わからないから素直に聞いてるのだけど?」
なぜ三人共目を逸らす?
隆史さんまで目を逸らすし。
「…さて、私そろそろヘリの準備するわ」
「あ、昼食作って貰ったから、洗い物くらいは私するわね」
「私は荷物まとめてくる」
「ずるい!!」
早々に、三人共部屋を逃げるように出て行ってしまった。
隆史さんは、非常に困った顔をしている。どうしたのだろう。
まぁいいか。
「それで、隆史さん。どういう意味なんですか?」
◆
やっと…
やっとだ!
戦車倉庫に本日届いた、我校の秘密兵器!
長かった……。
本当に長かった……まさか私の代で購入まで至るとは!
重戦車! 重戦車ぁ!!!
頬ずりしたくなるなぁ! 明日に控えたお披露目に心が躍る!!
あぁ…戦車倉庫で、一際存在感を出しているこの勇姿!
1回戦を突破し、次は大洗学園。
いける! 例え、西住流が相手だとしても、今年こそ悲願の3回戦出場も夢では無いなぁ!!
長かった……。練習試合では、プラウダにボッコボコにされ。
ノリと勢い以外は、食欲しか無いとまで言われ……。
しかし! これで見返せる! あの男を!!
あの散々、私達を馬鹿にしくさった、あの男を!!
人のツインテールをおもちゃにして、遊びに遊んでくれたあの男!
商売のコツを教えてくれたあの男。
ちょっと。ほんのちょーと、危ない所を助けてくれたあの男…。
海の家って怖かったなぁ……ショバ代請求って本当にされるんだァ……。
……。
今頃、何してるかなぁ。
久しぶりに、青森行ったら転校していなかったなぁ。
人の裸まで見ておいて、何も言わないで、どこに行ってしまったのだろう。
「……」
……やめよう。昔の事だ。
特に裸の件は、恥ずかしくなるだけだ。
さて、早速試運転…。
「姐さん! アンチョビ姐さぁん!!」
「……」
「姐さん! なにボケーっとしてんっすか!!」
「いや…何でもない。どうした?」
戦車倉庫の扉をわざわざ蹴破って、入ってきた副隊長。
……いちいち壊さないでほしい。
修理するのも無料じゃないんだぞ。
「カチコミっす、姐さん! カルパッチョが今対応してんすけど、どうも誰か探してるみたいなんです!」
「一々、叫ぶな! カチコミだと!? 他校の生徒か? 人数は? 誰を探してるんだ?」
「いや、それなんすけど。誰か分からないんっすよねぇ」
「どういう事だ?」
「戦車道所属の「安斎 千代美」って人探してるらしいんっすけど、いましたっけ? そんな生徒」
「……」
「えっと、私も一年からの報告を聞いたんすけど、相手は男一人。他校の生徒じゃなくて、どうもヤ○ザらしいっす!」
「え……」
ヤ○ザ!?
なんで、ヤ○ザが私を探しているんだ!?
「……なんで私を?」
「やだなぁ姐さん。アンチョビ姐さんじゃなくて、「安斎 千代美」って生徒っすよ?」
「それは、私だ! 私の本名だ!!」
「そぉなんすか!? まぁそんな事は、どうでもいいっすから、早く来てくれないっすか!?」
……ペパロニ。どうでもいいは無いだろう。どうでもいいは。
私が行けば良いって話だろ?
でも正直行きたくない。
行きたくないが、カルパッチョが心配だ。他の生徒に危害が加わるかも知れない。
行こう。……怖いけど行こう!!
動け脚!
「どうするっすか? あ!P40で行くっすか? 砲撃試験には丁度いいと思うんっすけど!」
「死ぬ! ヤ○ザ死ぬから!!」
ダメだ、すぐに行こう。
この子達に任せたら、本格的に某事務所のカチコミを受けそうだ。
……。
報告を受け、早速校門前に出向いたら本当にいたよ。
学校の正門出口前。
白い階段を降りた所にある、一番下に広がる中庭。
広がる白い石畳の上に立っていても目立つ、同じ色調の白いスーツ。
ブラッドレッドのワイシャツを首元で開けている。サングラスで顔はちょっと分からないけど。
うっわー、マジでヤ○ザいるよ。
……怖い。
ショバ代の件は、彼が間に入ってくれたお陰で、すでに解決済みなのに……。
あれ? 他に私なにかしたっけ?
平和に戦車、乗り回していただけなんだけどなぁ。
「うへぇー。本当にいましたねぇ。さっそく実弾ぶち込みますか!?」
「やめんか! 洒落にならんだろ!!」
横の副隊長も別の意味で怖かった。
多くは望まないから、少しは後先考えてくれ!
「あれ?」
「あ……」
なぜだ? なぜカルパッチョは、楽しそうに談笑してるのだ?
先行したと報告を受けたもう一人の副隊長が、えらく嬉しそうにヤ○ザと話していた。
「どうしたんすかねぇ……あ、こっち見た」
一定の距離を保った、他の生徒に囲まれたヤ○ザが、こちらを見て手をふってきた。
「おー千代美ぃ! ペパロニぃー! 久しぶりー!」
「……」
どこかで聞いた声と、私の呼び方。
私を、下の名前で呼ぶ男は限られている。お父さんと……
「あ! タカシか!? タカシじゃねぇか!」
◆
昼。大洗学園に帰艦する途中、アズミさんに頼んで、アンツィオ学園艦でヘリから降ろしてもらった。
もちろん密航じゃない。正式な手続きをもらってだ。
諜報活動でもしてみっかなぁっと思って、昔の知り合い訪ねて真正面から乗り込んでみた。
ペパロニは聞いたら、普通に教えてくれそうだし。
イタリア風の学園艦って事で、ちょっと観光でもしとこうかなぁっとか思っていたけど、俺が到着した時は、すでに下校時間。
帰られてしまったら意味がないと、早速アンツィオ学園を訪ねて見た。
しかし男の俺が、ウロウロしていたらやはり目立つ。
取り敢えず、アンチョビを見つけようと近くの生徒に尋ねてみた。……まぁ本名で。
すぐさま、不審者扱いされ通報された。えー……
俺を逃がさない為か一定の距離を保って、周りにいた他の生徒に囲まれた。
この学校の生徒って、どうも血の気が多いらしい。
通報を受け、警備員でも駆けつけてくるのを待っているのか、何もしないでただ睨まれ続けた。
「囲んでみたけど、どうしたらいいかわかんないよ!」
「報告したら、ドゥーチェ連れて来てくれるって!」
なにか相談してる。ドゥーチェってアンチョビの事だろ?
「あの、お嬢さん……」
「ヒィ! 睨んだ!? 食べられるぅ!?」
「姐さん! まだですか!?」
「……」
……普通に声かけただけなんすけど。
通報を受けて駆けつけたのは、警備員じゃなくて顔見知りでした。
その顔見知り。カルパッチョさん。はいお久しぶりですね。
相変わらずふわふわしてるなぁ……。この学校では異彩って言えば異彩なのかな?
一応、戦車道の副隊長って事で、判断を仰がれたらしいけど……いや俺が言うのもなんだけど、男の警備員を呼べよ。
彼女は、すぐに俺だと分ってくれて、周りの生徒に説明をしてくれた。
…が。誰も警戒を解いてくれなかった。まだ一定の距離を保っている。
カルパッチョさんと会話をしている時、横目で様子を伺ってみると、まぁ睨まれてる睨まれてる。
その皆さんが警戒を解いてくれたのは、ドゥーチェとペパロニの二人が合流してから。
千代美とペパロニ。それとカルパッチョさん。この三人揃った為なのだろうかね。
「千代美、久しぶり」
「いや、確かに久しぶりだけど…何故、貴様は相変わらず名前で呼ぶ!? 私はアンチョビだ!」
「えー、だって料理とかする時、紛らわしいんだよ。じゃあ千代美って呼び方しか残ってないじゃんよ」
「いやいや! だからって何で下の名前なの!?」
パタパタしてるなぁ……。取り敢えず、ムチを持った手を振り回さんでくれ。
「あ、ところで千代美。会ったら聞きたい事あったんだ」
「その前に私のいう事、聞けよ!!」
うん。無視だ。
「何? あのカード」
「は? カード?」
「何で、ムチ舐めてる写真撮ったの?」
「え……」
はい。買い続けています「例のお菓子」
そして前回でました。SRのアンチョビ姐さん。
ムチを舐めたってワードで、思い当たったのだろう。顔色が変わった。
「何で水着姿のまま、わざわざ戦車の上で、横たわりながらムチ舐めてんの?」
「」
「何で? え? 狙ったの?」
振り上げた両手が止まってしまいましたね。
いやぁ赤い赤い。真っ赤になっていくなぁ……。
「わ…私も恥ずかしかったんだぞ! そもそも水着で撮影なんて!!」
そのまま胸の前で、両手で指先を弄びながら、モジモジしだした。
「あ…あれは、その…撮影した女性スタッフが…ああいぅ、キャラモ…ウケルッテ……」
段々と声が小さくなっていくなぁ。
「はっはー。千代美ちゃん、かーわーうぃーいー」
「や、やめろ! 私の髪で遊ぶなぁ!! 千代美ちゃんって呼ぶなぁ!」
ツインテールの根元を持って、ぐるんぐるん回して遊ぶ。
「あ、そうだペパロニ。千代美のこのツインテールって着脱可能だぞ? ドリルになって武器になるんだぞぉ」
「マジか!? さすがっすアンチョビ姐さん!!」
何がさすがなんだろう…。
「な! 何言ってるんだ!? やめろ隆史! ペパロニが信じたらどうするんだ!」
真っ赤になったドゥーチェと戯れている姿を見て、周りも漸く納得したのか。警戒を解く。
……まぁ逆に、別の意味の視線に変わったけど。
「なんだ。姐さんの男か」
「早く言ってくださいよー」
「ち、違う! なんでそうなるんだ!?」
大丈夫だという事で、この警戒態勢はお開き……解除となり、散り散りに帰っていく。
「聞けよ! お前達! そのまま帰るなぁ!!」
そして残った、彼女達3名様。
「あの…尾形君。結局今日は、どうしたの? わざわざ学園艦まで来るなて」
「あー…」
叫びすぎて、ハァハァ言っている千代美さんを頬っておいて、当然の疑問を口にされる。
ただなぁ…諜報活動に来ました。なんて、いくらなんでも言えないだろう。
「お、そうだなタカシ。おめぇ今、大洗学園の生徒だろ? 何しに来たんだ?」
「「え!?」」
「ペパロニ! どういう事だ!? 隆史の転校先を知っていたのか!?」
「え? 言わなかったすか? 戦車道開会式の時、タカシと会ってる…というか、また屋台手伝ってもらったんすよ?」
「聞いてない!」「聞いていないよ!?」
綺麗にハモったなぁ。
「どういう事だ隆史! 次の対戦校の生徒だと!?」
「そうなんですか? 隆史さん?」
「そうですね、大洗学園に在籍してますよ」
「あら~…」
「それに、今回来艦したのって、ちょっと野暮用の帰り道に、近くを通ったらから寄り道してみただけですよ?」
「……本当に? 戦車道開会式会場にいたって事は…ひょっとして、戦車道に関係してるの?…諜報活動とかじゃないよね?」
「どうなんだ隆史!?」
さてどうするか。疑うって事は、多少なりとも俺を、友人として信じてくれてる…のか?
うーん
「正直に言うと、その目的はありましたねぇ。なんか情報もって帰れないかなぁって」
「「 !? 」」
「でも、なんか千代美で、遊んだらどうでも良くなった。どっちにしろ俺、戦車知識あんまり無いしなぁ」
「お…思いの外、素直に吐いてびっくりしたぞ…。後、私で遊んだってどういう事だ!」
そうだ。諜報活動とか、なんか俺には合わないな。
みほ達には悪いが、今回は中止にしよう。
こいつらとは、裏表無しに付き合いたい。
「んー。俺の事、ある程度は友人として見てくれてるっぽいし…なんか裏切るみたいで嫌になった」
「……」
「どうせ後日、試合で顔合わせそうだったし…なんか特にカルパッチョさん騙したくなかったんだ」
「そ…そうですか?」
「隆史…私とカルパッチョとの態度の差が、ひどいぞ…」
「そっか?」
「やめろ! ツインテールを回すな!」
あ、逃げられた。
あらま。俺と一定の距離をとられた。
「あーでも、どうすっかなぁ。目的なくなっちゃった。…ただ帰るのもなぁ」
諜報活動中止。
しかしまぁ折角来たわけだし…どうせ今日は、もう帰れないしなぁ。
「あーそうだ。試作段階だけど、パスタ料理食うか?」
「「パスタ!?」」
あ、食いついた。
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久しぶりに言おう。
何故こうなった?
「あぁ? 何言ってんだ? アンチョビ姐さんもカルパッチョも、寮暮らしだからだろうが」
「ペパロニ姐さん。んな事じゃない。何で俺、お前の家に連行されたの?」
「はぁ? 女子寮に入るつもりだったのか? ちょっと変態すぎんだろ」
「チャウネン」
「隆史さん。それは、ちょっと……」
「隆史が、結構な変態なのは知っていはいるが、男子禁制だからそれは無理だぞ?」
「チャウネン」
はい。
そんな訳で、ワタクシ今、ペパロニ家に来ております。
意外や意外。ペパロニさんだけ、賃貸暮らしですね。
それにしても意外ですねぇ……整理整頓が行き届いております。
部屋も、とても綺麗にしてますねぇ。
「何、一人でブツブツ言ってんだ?」
「リポーターごっこ」
「は?」
「……ゴメン忘れて」
現在キッチンで、ペパロニと肩を並べて調理中の為、率直な意見を真横言われた。
ちょっと虚しい……。
「意外だな。ペパロニが、一人暮らしって」
「寮だとキッチンって、好きに使わせてくれねぇからな。好きにできるキッチン欲しかったんだ」
「結構、この部屋に私達、集まりますしね」
やはり、プライベートでも結構遊んでいたりしてるのかな?
仲良さそうだもんなぁ、この3人。
「しっかし、意外だ。ペパロニが、しっかりしていた」
「なんだぁ? 失礼な奴だな」
「いやいや。料理が得意なのは知ってたけど……それ以外は全てダメだと思っていました。家事とかね」
うん。もっと部屋汚いと勝手に想像してました。
「そっか?」
「そうですね。隆史さんは、ご存知無いかと思ってはいましたけど、結構びっくりしますよね?」
「しましたねぇ…人は見かけに寄らないものだなぁ…」
ペパロニの部屋は、本当に綺麗に片付けられていた。
間取りは、俺のアパートとあまり変わらないのだけど、俺みたいに物が無いわけでもなく、机から本棚までちゃんと整理整頓されている。
「どうだ! 隆史! ペパロニは、伊達にアンツィオの副隊長をしている訳では無いだろ!?」
「そうだな。うん、見直したわ」
副隊長は関係無いだろうけどな。
「あ、あんまり部屋ん中、ジロジロ見んなよぉ!!」
「あれだな! ペパロニは、結婚したら良い奥さんになりそうだよな!」
千代美さんが、胸張って言うけど…。
まぁ…家事が得意なら、いい奥さんとやらになれる訳でも無いのだけどな。
しかし、ポイントは高い。
「隆史、そういうものなのか?」
「んぁーまぁ、同意はする。できないよりできるほうが、そりゃいいだろ」
「ふーん…」
ちょっと嬉しそうなペパロニさん。
女性側からしたら嬉しいもんかね?
―が。
「んじゃ隆史。私と結婚すっか?」
「……は?」
今何て言った?
「いい奥さんになれそうなんだろ? んじゃいいだろ!」
「ペパロニ! 何を言っているんだ!? 気は確かか!?」
「そうよペパロニ! 早まってはダメ!!」
……二人がひどい。
「まぁ、卒業するまでガキできたら不味いから、エロい事は無しな!」
「「 ペパロニ!!! 」」
「…あの、ペパロニさん?」
あぁいかん。これは、この流れはいかん。
「あぁ! だからって迫って来るなよ!? 断りきる自信ねぇからな!!」
「」
笑ってはいるが、コイツの場合、冗談に聞こえないのが怖い。
「……冗談はいいから、飯作るぞ……」
「お? おおぉ!」
作業に集中しようか。
「……」
……冗談だよな?
黙るなよ!
後ろの二人が無言の為、ちょっと怖いんだけど……。
「あ、ペパロニ。アンチョビ取って」
「あいよ」
「……」
「こっちのアンチョビって、結構臭うな。ちょっと臭い」
開けた缶詰は、イタリア産。俺が練習していたのは日本の缶詰だ。
結構違わないと思ったけど、購入したものは、臭いがちょっと強めだった。
「だな。アンチョビって生臭さが少しあるぞ? 和風パスタだろ? 基本塩漬けの缶詰だから、味は結構濃いし…どうするんだ?」
「……」
喋りながらも、手を動かす。
まぁ和風系だと、生臭さは天敵になる場合があるしな。
「ガーリックと一緒に、一回外で炒めて混ぜる。これで残った生臭さを全部飛ばす」
火をかけていたフライパンに切ってあった、ガーリックとアンチョビを一緒に炒める。
少し香りがついたら、他の野菜も投入。一緒に炒める。
炒める音と共に、部屋に香りが漂いだした。
「まぁ、アンチョビ使う時の基本だな。…あぁ何をしたいか何となく分かった。塩辛さは塩変わりね」
「そだな。後、最後に出汁醤油とオリーブオイルで味の調整を……って、どうした千代美?」
俺とペパロニの間にいつの間にか、立っていたドゥーチェさん。
顔真っ赤にして、プルプル震えてるね。どうしたの?
「……お前ら、わざとじゃないだろうな」
「何いってんすか姐さん?」
「わざとって…あぁ…」
やれやれ。だから言ったのに……
一度、手を水で洗い、タオルで手を拭く。
ちゃんと後ろを振り向くと、学校ではないので、すでにマントを脱いでいる制服姿の千代美さん。
ポンと肩に手を置き、少し屈んで千代美と目線を合わせてやる。
「あー。なんか悪かったな。もう少し気を使うべきだったよな」
「あ、いや…まぁ……わかればいいんだ」
目が合った時点で、すこしモジモジしだしたが、まぁいい。
こういう事は、ちゃんとフォローしておかないとな。
「こういう場合、確か…亜美姉ちゃんが言うには……」
ビクッ!
あれ。呟いた直後に千代美が硬直した。
「ま、待て! 蝶野さんの教えは!!!」
あまったもう片方の手で、ツインテールの片方を鼻元に持ってきて、ちゃんと言ってやる。
「大丈夫だ。千代美は、ちゃんと良い香りがするから」
「ヒゥ!!!」
「「 …… 」」
あれ。どうした?
完全にフリーズしてっけど。
「あれ? 千代美? 千代美さーん。どうしましたー?」
座り込んでしまいました。
膝と頭をくっつけて丸まってますけど……。
「隆史さん…」
「なんでしょうか? あの…カルパッチョさん? …なんで睨んでるんですか?」
「……お酒。…飲んでます?」
「どうしてですか!? 飲んでませんよ」
いきなり飲酒を疑われた!?
「……そうですか? 本当に?」
「あの…目がちょっと怖いんですけど……」
はい、閲覧ありがとうございました
GW、みなさんどうお過ごしでしょうか?
私は、仕事三昧です。連休?なにそれおいしいの?状態です
乙女の戦車道チョコの設定を採用します。
長編になりそな場合、閑話として、UPしますけど、チョコチョコ本編に絡んでいきたいとお思います
はい、結局アンツィオが最後の登場となりました。
西さんは、前回一応名前だけでてきましたしね。
いやぁ……OVA……今回見なくても書けたよ……
細かい出会い等を省けば、物語自体は進みますが、どうも省略する文面がうまく判別できない……。
あ、ドゥーチェの全裸の話は、以前記入しましたが、日常の風呂回で書くつもりのものでした。
出会いの話ですね。タラシ殿の酔っ払った状態と、亜美姉ちゃんと隆史との関係性をこの三人は知っています。
ありがとうございました