第24話~潜入動画です!~
「ちょっと、麻子」
「なんだ沙織。ちょっと静かにしてろ」
「…いや、なんでテレビ睨んでるの? みんなも、ちょっと怖いよ?」
「……私は、眠いだけだ。放っておけ」
うん。眠いだけ。
どうも、三角座りをしている膝に、顔下半分を隠して目だけテレビを見ている格好になっていたようだ。
眠いから、少し蹲っただけじゃないか。うるさいな。
西住さんは、沙織と同じく普通に正座してるし、会長は相変わらず干し芋をモゴモゴ食べている。
ほら、何もおかしくない。ただ、真剣に見ているだけだろうが。
そう、秋山さんのアンツィオ校の潜入動画を次の試合の為、みんなで視聴しているだけだ。
二日前、大学戦車同連盟の人達に連れて行かれた書記。
当日は、西住さんは連絡がついたと言っていたが、それっきり音沙汰なしだったようだ。
次の日…要は昨日だな。
日が変わって、現在に至るまで一切の連絡が取れないようだ。
初めは何かあったのかしんぱ…いや。それなりに気にはなっていたのだが、今はもう何も思わない。
目の前の映像を見る限り、無駄に元気そうだったからだ。というか、なんという格好をしているのだこの男は。
秋山さんが、転校生のフリをして在学生徒に色々質問をしていたのだが、天井が戦車の形をした屋台を見つけた時からおかしくなった。
まず、その屋台の中で例の書記が鉄板を使って商売をしていた。
……何をやっているんだコイツは。
「西住ちゃん」
「なんですか?」
「今気がついたんだけど、あの娘って開会式会場で、隆史ちゃん連れて行っちゃった娘じゃない?」
「え?」
改めて、書記の横にいるコックの格好をした生徒らしき娘を確認している。
私は、その時半分寝ていたから、全くわからないな。
カメラが、その店に近づいて顔がはっきり映った。
「あぁ!!」『あぁ!!』
映像の秋山さんと、西住さんの声が被った。思い出したようだ。
『隆史殿!? 何やってるんですか、こんな所で!?』
『』
個性的な髪型をした店員の横に、なんか赤いワイシャツを着た書記がいた。
明らかに、動揺した顔をしているな。目の前の鉄板が音を立てているぞ。
別の汗だろうな。ワイシャツを腕まくりしてて、汗だくになりながら鉄板に油を引いていた。
秋山さんに気がついたのだろう。
白目になって、完全に固まっていた。
その瞬間。プシュンと画面が光の残像を残して消えた。
真っ暗な画面から、音楽と共に新しいタイトルが表示された。…エフェクトまでつけて。
『 実録! 尾形 タラシ殿のアンツィオ校 浮気現場! 』
「「「「 …… 」」」」
なんだ、この無駄に凝った演出は。
初めこの動画は、『秋山 優花里のアンツィオ高校 潜入大作戦』と銘打ったタイトルが表示されたはずだ。
タイトル変更されたぞ……。
「ちょっ、ちょっとゆかりん!」
「なんですか? 沙織さん」
また沙織が騒ぎ出した。
うるさいなぁ。黙って見れないのか?
「別に隆史君、誰とも付き合ってないよね!? 浮気って、さすがにちょっとおかしいよね!?」
「え? 別に、おかしく無いでありますよ?」
「ェ…」
「うん。おかしくないね」
「そーそ。普通だね」
「おかしくありませんね」
「ちょっと、私も擁護できないなぁ…」
沙織一人が、オロオロしている。
「え!? おかしいの私!? 桃先輩は!?」
「……私は、別にどうでもいい」
「麻子は!?」
「いいかげん、うるさい。黙って見てろ」
「えぇー…」
「いいですか? 沙織さん。隆史さんは、用事を済ませて帰ってくる最中に、あの場所へ出向かれたと考えられます。
みほさんや私達に連絡も無しに、わざわざ相手の学園艦に寄り道するなんて…やましい気持ちが有るに決まってます! これは大洗学園に対しての、明確な浮気行為です!」
「華…それを言うなら、裏切り行為じゃぁ…。後、何でそんなに目が輝いてるの?」
五十鈴さんは、頗る楽しそうに説明している。
秋山さんは、わざわざ沙織に説明する時間の為に、動画を一時停止をした。
五十鈴さんの説明では納得できないのか?
「えっと、いいですか? 沙織さん」
さらに西住さんが、うるさい沙織に丁寧に説明をしようとしてくれる。
沙織に向かって、戦車に乗っている時のような真剣な眼差しで説明を始めた。
「隆史君に限って、大洗学園を裏切る事はありえません」
「あ、そこは信用してるんだ…」
「隆史君の事です。対戦校…どうせまた他校に知り合いの女の子でもいたのでしょう。挨拶がてら、とか何とか言って、会いにでも行ったに決まってます!」
「み…みぽりん?」
「ですから、これは浮気であってます!」
「ェー…」
「そういうこと~。分かった? 武部ちゃーん」
「説明になってないぃ~」
西住さんの説明に、沙織は漸く理解した為、動画の一時停止が解かれる。
秋山さんが、アンツィオの露店市場をキョロキョロしている所から始まった。
先程の映像では、編集をされていた為か映像が良く切り替わっていた所だな。
……なるほど。ここか。
他のみんなも気がついたのか、食い入るように画面を見ている。
「おかしいの、私なのかなぁ…さすがにちょっと、隆史君可哀想だと思うんだけどなぁ……」
…横でまだブツブツ言ってるのが、うるさい。
『で? 隆史殿。何、こんな所で油売ってるんですか?』
『……売っているのは海鮮鉄板焼きです。油は引いています』
『は?』
『……』スミマセン
秋山さんの声が、珍しく冷たい。
カメラが、書記を映している為、秋山さんの顔は映ってはいない。
しかし、どんな顔をしているか何となく想像がつくな。
---------
-----
---
相手の最新戦車の情報があっさりと手に入った。すっごい普通に話してくれたな……。
オメェ通だねぇ~の一言で、まさかあそこまでベラベラ喋ってしまって、逆にこちらが心配になる。
重戦車、P40。
でも、すごいな秋山さん。イタリアの重戦車ってだけですぐに予想がついていたな。
『んで? 情報通のお嬢さんは、タカシと知り合いなのか?』
『え!? あ、はい。昔からの…おっ幼馴染です!』
『そーなのか!? いやぁー、世間って狭いなぁ!!』
下手に答えすぎると、大洗の生徒とバレてしまうのを恐れたのか、幼馴染設定でも考えたのだろう。
一瞬、西住さんが、ピクッっとしたけど。
そして素直に信じる、あの生徒。
『なんだよぉー! アンツィオにそんな奴いたんだったら、昨日呼んでやりゃよかったのに!』
『昨日? 呼ぶ?』
『おぉ! こいつ昨日の放課後に学園艦についたらしくてな、色々あったんだけど…まぁいいや。簡単に言うと私ん家で、飯作ってくれたんだよ』
『……』
『……あの、つかぬ事をお聞きしますが、えっと…ご自宅では、ご家族の方もご一緒でした?』
『いねぇよ? 私、一人暮らしだし』
『……』
「「「「 …… 」」」」
『つまり、隆史殿は一人暮らしの女性宅へ、しかも放課後って事は夜でしょうか? …そこにお邪魔したと?』
『そーだな』
カメラが、グルンと勢いよく回転し書記を捉える。
『タラシ殿? 何か弁解は?』
弁解を聞いてやるだけ、秋山さんはやさしいな。
カメラが向いた書記の顔は、普段想像できないくらい和やかな面をしていた。
『確かに私は、そこのペパロニさんのお宅にお邪魔しまして、一食作らせて頂きましたが、別に彼女一人ではありませんよ?
如何わしい事は一切ありませんよ? えぇ他に2名いらっしゃいました。後ろめたい事は一切ございません。
その方々も、確かに女性ではありますが、古い…と言っても一年程前からの友人でして、久しぶりにお会いしましたので、腕を振るわせて頂いた次第です。
本日も午前中、校内を見学させて頂き、現在彼女の露店を手伝っているだけで、何もやましい事はございません
あぁそうだ、ペパロニさん。そろそろ私、お暇する時間となりましたので、失礼しますね?』
『……』
『何言ってんだタカシ。その口調、すっげぇ気持ち悪いぞ?』
『……すごい早口で言いましたけど。えっと、ペパロニさんでしたね? 彼の言っている事は本当ですか?』
『んぁ? おお! 概ねその通りだ! 昨日はアンチョビ姐さん達いたな! さっき言ってたウチの隊長な! でな、今朝からはこいつ、ウチの戦車の練習見てたぞ?
んで、昼飯時の今まで手伝ってもらってたって訳よ。大まかに言えばだけどな!』
……すごいな、このペパロニとか言う人。
いくら知り合いでも、次の対戦相手の生徒に練習見せるとか……。
開会式会場で会ったって事は、書記が次の対戦校だと知っているはずだけど。
『な! なっ!! 大丈夫だろ!?』
証言をもらって、安心したのか口調が元に戻る書記。
安心した表情が若干腹立つが、多分何も大丈夫じゃないと思うぞ。
『……でも、タラシ殿ですからねぇ』
しかし先程から周りが静かだ。
西住さん達は、テレビ画面を見ているだけで、一切誰も喋らない。
…な? 大丈夫じゃないだろ?
『タカシ! 帰るなら、姐さんに挨拶してけよな』
『そ、そうだな! カルパッチョにもちゃんとしていくよ』
そう言って、露店から素早く出てくる書記。
手荷物も無い為か。素早い。
というか、逃げたくて仕方が無いって感じだ。
そのまま秋山さんに近づき…耳打ちだろか?
映像の顔が、一気に近くなる。
『……隆史殿。すごいスピードで出てきましたね』
『……優花里は、また潜入調査なんだろ?』
『そうです。私は、まだ続けますけど…タラシ殿は、もう帰られるんですか? 西住殿、心配してましたよ?』
『と…取り敢えず、俺ちょっと、帰る前に知り合いに挨拶してくるから! 後で落ち合おう』
『……もう言い訳は、聞きませんよ?』
『違う! どうせ帰りは一緒なんだ。それにまたコンビニ船を密航してきたんだろ?』
『まぁそうですけど……』
『んじゃ、一緒に帰ればいいだろ!?』
『……わかりました。後で、落ち合う場所メールして下さい』
『了解!』
『何コソコソしてんだ?』
『な…なんでもない。またなペパロニ。試合でまた顔合わすだろ』
片手を上げて、早々に現場を立ち去ろうとする書記。
どんだけ逃げ出したいんだコイツ。
『おーそうだな! じゃあな! また家来いよ~! 今度は二人で飯作って、食おーな!!』
『』ア、ハイ
『……隆史殿』
現場を離れようとする書記に、後ろから嬉しそうに手を振って見送る、ペパロニさんとやら。
ビクッっと動きを止めた書記の姿を見た時、画面が暗転した。
画面が切り替わり、通路らしき所に秋山さんはいた。
◆
「さて、みなさん絶句してますね」
小休止とばかりに、テレビの画面横でちょっと疲れた顔で、一時停止をしたゆかりん。
最近、ゆかりんも隆史君に言うようになったなぁ…。
「……隆史ちゃん。もう帰ってきてるの?」
「はい。私と一緒に帰ってきましたから!」
「優花里さん…隆史君の携帯繋がらないけど……」
「私は知りませんよ? 逃げ回ってるんじゃないでしょうか?」
「「……」」
わー隆史君。これ結構、後から大変じゃないかなぁ……。
みぽりんと会長から異様な空気を感じるんだけど。
「この後隆史殿、どうも私と行き先が一緒だったらしく、私の後からコロッセオに到着しました。P40と隆史殿がセットになってお得でした!」
「そりゃお得だな」
「調査対象が、セットでいてくれたのですね」
華と麻子が合いの手を入れてる…。
いつの間に隆史君、調査対象になっていたんだろ……。
「では、続きを再生しますね」
『これが我々の秘密兵器だぁー!!』
なんか緑の戦車の上で、ムチを振り上げてるツインテールの娘が叫んでる。
『おぉー! P40の本物、初めて見ましたー!!』
秋山さんのうれしそうな声が聞こえた。
興奮してるなぁ。
戦車の周りには、アンツィオの生徒が歓声を上げながら、パシャパシャ写真を撮ってる。
戦車の上の女の子が、アンツィオの隊長かなぁ?
だとしたら、さっきの娘が言っていたアンチョビ姐さんってのが彼女かぁ。
『はぁ!』
声と一緒にポーズをとると、更に歓声が上がってパシャパシャ写真を撮る音が増える。
なんだろ? まるでアイドルみたい。でも、女の子にモテてもなぁ…。
『まぁ! これさえあれば、大洗など軽く一捻りだぁ!』
『ドゥーチェー!』
誰かがドゥーチェと呼んだと同時に、ドゥーチェコールが始まった。
呼ばれる度に、ポーズ撮ったり、写真にピースしたり…うん。この娘悪い子じゃなさそう。
『現場は大変な盛り上がりです!』
最後には、一緒になってドゥーチェコールしてるし。
『ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!』
……ちょっと楽しそう。
「ねぇみぽりん。「ドゥーチェ」ってどういう意味なの?」
「えっと、イタリア語で統領とか統帥って意味だったような……」
「そだね。それで合ってるよぉ」
「へぇ~。って事は、この娘が隊長なんだね」
「そうみたいですね」
『ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!』
……まだやってるよ。
『以上! 秋山 優花里がお送りしま…あれ?』
『おーい、千代美。楽しそうな所悪いけど、ちょっといいか?』
『ドゥーチェ! ドゥー…あっ!』
あれ? 隆史君だ。
戦車の砲塔下付近から、ツインテールの娘に声をかけていた。
なんかすごく、親しそうに下の名前で呼んでるし。
『隆史!? ど…どうした!?』
『いや、もう帰るから一応一言、声を掛けとこうと思ってな』
隆史君が現れたら、周りが一斉に歓声からざわめきに変わったよ…
まぁあんな格好の男の子が、女子高にいるだけでも普通じゃないよね。通報とかされないのかな?
「なぁ。これ書記の奴、思いっきり不審者扱いされてないか?」
「ですね。そもそも隆史さんは、なぜあの様な格好をされているのでしょう?」
もっともな質問。
それに帰りの時に聞いていたのであろう、ゆかりんが答えてくれた。
「あぁ! なんか、制服をクリーニングへ出されてしまったようでして。代わりに用意されたのが、あの格好だそうです」
……用意した人、すごいセンスだなぁ。
「後、初日にあの格好で来校したら、いきなり通報されてちょっとした騒ぎになったようですよ?」
「はは…」
みぽりんが苦笑してるよ。まぁ苦笑するしかないかな?
それにしても、会長が静かだ…。なんか一言くらいいつも言ってくるのに。
「あれ? 一度通報されているってことは、今はもう、隆史君の身元って分かってるはずだよね? なんで、ざわついているんだろ?」
「……」
画面からは、相変わらずザワめきが起こっている。
『ドゥーチェの男だ…』
『姐さんの男だ…』
なんか今、すごい呟きが聞こえたよ!?
え!? 何!? そういう人!?
「「「「……」」」」
あ…またみんな黙っちゃった……。
『ちっ、ちがーう!! 誰だ今の!? 私達はそういう関係では無い!! 私にも選ぶ権利があるぞ!!』
顔を真っ赤にして観衆にムチをさしながら、必死に叫んでいる。
そのまま戦車の上から降りて、今度は隆史君にムチの先を向けて近づいていく。
目の前に立った時点で、周りから軽くはやし立てる声が聞こえてくるのも聞こえる。
『おっ! お前も!! なんか言ったらどうだ!?』
『え? 俺?』
『そうだ!! 私はお前の様な、デリカシーの欠片もないような男は、好きじゃあ無い!!』
『あら、お嫌いですか?』
『そ…そうだ!! 何故いつも私だけ、からかってばかりなんだ! もう少し優しくしてくれてもいいじゃないか!!』
『優しくって…ちょっと待て、何を言ってる!?』
叫ぶように、ブンブンとムチを上下に振っている。
『ペパロニはともかく、カルパッチョと態度違うじゃないかぁ!!』
『あの……』
『うるさい!! 私のツインテールをグルグル回して遊ぶな!! どうせなら優しく撫でるとか、してくれもいいじゃないか!!』
『え? あ、はい…ご所望であれば…』
『お姫様だっこだって、ペパロニとカルパッチョにはやって私にしてくれないじゃないかぁ!! ああいう恋愛小説みたいなのちょっと、憧れてる…ン…ダゾ……』
そこまで言って、動きが完全に固まった。
周りの視線が、気になったのかな? 周りの生徒から、すごいニヤニヤして見られてる。
しかし、誰も何も言わない。
周りが静かすぎるなぁ…最後凄い事いいそうになってたよ?
そして、私の周りも静かすぎるなぁ……。
『ウゥゥ…』
『あの…千代美? 千代美さん?』
『ウワァァァァァァァァン!!』
あ! 走って逃げた!?
戦車置いて、逃げちゃったよ!!
ブツッ!
あ…画面が真っ暗になった。
あれ? 故障かな?
「…すいません。ここで私、カメラを強めに握ってしまっていたようで、汗で指がずれて停止ボタン押してしまいました」
「…いいの優花里さん。気持ちはわかるから」
……どうしよう。もはや、潜入動画じゃないよ。
何やってるんだろ隆史君。
「チョビィィ…」
前に座っている会長から、唸り声が聞こえたんだけど……
ザリッっとかなんの音だろ?
あぁ…会長が干し芋の袋握り締めてるのかぁ……
ボソボソ呟きが聞こえる。
「名前呼び…私もツインテールなのにぃ…」
「……」
もはや語るまい。
◆
「はい。後、少しでこの動画も終わりますよぉぉ。わかりますかぁ? 私この現場にいたんですよぉぉ」
手をパンパンしなががら宣言する優花里さん。
え? まだあるの?
あぁ「カルパッチョ」さんって言う人が、まだ残っているのか。
なんだろうなぁ、隆史君。ホントになんだろうなぁ……
改めて今まで隆史君、何やっていたんだろって思うな。
「西住殿」
「え? あ! はい!」
「覚悟はよろしいですか?」
……なんで私に確認したんだろ? 覚悟?
「最後、短いですけど……かなり強烈ですよ? 続きご覧になりますか?」
「……」
短いのに強烈。
……。
「どうぞ」
「はい! では再生~」
返事と共に再生された映像は、ピントが合わない画面だった。
グラグラ画面が揺れて、二人の男女が立っているのが、わかるくらいだ。
あれか……
遠くにいる為、マイクが音声を拾わないのか、よく会話が聞こえない。
場所は中庭かな?
公園の様な広場にいるみたい。
噴水の前で話しているようだった。
ようやくピントが合い、輪郭がはっきりした。
それは、隆史君と金髪の女の人だった。
イラッ
『…ス…チョ………たので、そろそろ帰りますね?』
隆史君の音声が、聞こえてきた。
ザーザーと、噴水の音も拾っているのだけれど、会話が聞こえる。
優花里さん、大分近づいたなぁ……
「私これ、近くのゴミ箱の裏に隠れています」
「優花里さん。あの…これ、ひょっとして盗撮じゃぁ……」
「違います! 潜入レポートです!」
「そうだな、タイトルにもあったな」
「そうですねぇ。アンツィオの風景を写しているだけですねぇ」
「そだねぇ。多分あの娘が副隊長っぽいし問題ないと思うよ」
……
沙織さんは、ノーコメントなのか会長から貰った干し芋をかじっている。
『二人っきりの時は、名前で呼んでって言いいましたよね?』
……
『あの……カルパッチョさん!?』
『あまり、同じ事を言わせないでください。ちゃんと、「ひ・な」って呼んでくださいぃ』
…………
『青森から、久しぶりに会ったというのに…貴方は、相変わらずいぢわるです』
……………………
「優花里さん」
「はい」
「これは、潜入動画ですね。問題ありません」
「はい!」
「みぽりん!?」
金髪の女の人が、指先を隆史君の胸でクルクル回しながら触っている。
これは、合法です。問題ありません。続行します!
『昨日のペパロニの発言はビックリしましたけど……正直、私はどちらでも構わないんですよ…』
『あの…それは、あいつの冗談じゃ? それに、カル…ひなさん!!』
「……ねぇ、西住ちゃん」
「なんですか?」
「初め正直どうかと思ったんだけど…隆史ちゃん。なんか、震えてない?」
「え?」
会長に言われて気がついたけど、隆史君が若干震えている。
『アナタが、ダレとドウナロウト、私は変わりませんから』
『』
『ただ…ワタシハ、スコシデモ私ヲ、見てクレさエしてクレレば…』
そう言った直後、彼女の目だけが、こちらを向いた。
目玉だけが、グリンッっと効果音をつけて。
遠目に見ていたので、細かくわかるはずもないのだけれど、何故かそれだけは、はっきり分かった。
ブッ!
視線が合った瞬間、画面が真っ暗になった。
はい、閲覧ありがとうございました
少し、期間が空いてしまってすいませんでした。
現状これで、タラシ殿の全てのフラグが出現終わりました。
今回、初めてタラシ殿主観がありませんでしたね。
はい、これメインヒロインルートです。