転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第25話~「タカシ」です!~

 …おかしい。

 

 隆史殿の運転する車。

 その助手席で、先程撮った動画をノートパソコンで編集していた。

 

 最後のカルパッチョさんの動画部分のみ、編集ができない。

 別にエラーが出るわけでもない。普通に「完了」のポップアップがでるのだけど、何も変更がされていないという事が起こる。

 

 …ちょっと怖いです。

 

 あの時のあの目。

 カメラを完全に捉えていました。

 

 ……後ろを確認しても、後部座席しか見えませんから大丈夫でしょう

 あの場は、すぐに逃げ出したのですが…なんかまだ後ろから、見られている気がしてなりません。

 

 

「……」

 

 

 わ…忘れましょう!

 

 えぇ! では、これで編集は終わりです!

 多分、機械トラブルか何かに決まっています! 後で、この映像はちゃんと消しておきましょうか!

 

 ……消して…

 

「ちゃんと消去できますかね……」

 

「何が?」

 

「わひゃ!!」

 

 私の呟きに反応した、隆史殿の言葉にすらビックリしてしまいました……。

 

「終わった?」

 

「はい…ちょっと問題はありましたけど、これで皆さんに潜入して得た情報をお渡しできます」

 

 隆史殿のタラシぶりをお届けするのは、ちょっと迷ってますけど……

 

 隆史殿とは、アンツィオ学園の外で合流。

 また、コンビニ船を密航しようかと思いましたけど、隆史殿に却下されました。

 

 隆史殿は隆史殿で、帰艦の計画をしっかり立てていたようで、その案にほぼ強制的に乗せられました。

 取り敢えず、アンツィオ学園艦から出ている定期船で近くの港まで。

 その港街で、乗り捨て可能なレンタカー会社より車を借りて、大洗の定期船が出ている港までレンタカーで移動。

 そこでレンタカーを乗り捨て、定期船に乗り換えて大洗学園艦に戻ると…。

 隆史殿は、予約まで全て済ませていました。

 

 現在は、その港に向けて高速道路を走行中。

 料金はそんなにかからないとの事で、隆史殿が出してくれるらしいのですけど…なんか……

 

「そういえば、優花里に一つ、聞いておきたい事があったんだけど」

 

「え? なんでしょうか?」

 

 横を向くと、ワイシャツだけ違うのですが、何かいつもと雰囲気が違う感じがします。

 運転をしているからでしょうか? 普段こんな姿、見れませんからね。

 

「軍用レーションって、なんであんなに高価なの?」

 

「へ?」

 

「いやな、優花里と野営するって約束したろ? なんか優花里、そういうの好きそうだし、ちょっと調べてみたんでけどもな」

 

「……」

 

「高価かった…。なんで、5千円以上するの? あれ」

 

「……」

 

「優花里?」

 

「あの…」

 

「はい?」

 

「覚えていたんですね…。正直ただの軽口で、忘れていると思っていました」

 

「……俺を何だと思ってるんだ。落ち着いたらやろうって言ったろ? 大会終わった後になりそうだけどな」

 

 

 ……ちょっと。

 

 いえ、すごくうれしいです。

 私は、その時だけの発言かと思っていました。

 調べるって事は、本気でって事で……嬉しいです。

 

「まぁ俺の場合、野営の経験というか野外泊って基本、食料現地調達だったからなぁ……」

 

「そうですか……え!? 現地調達!?」

 

 そういえば、野兎の捌き方がどうの言ってましたね…正直興味はあります。

 

「あぁ。ほら、俺の母さん戦車道の師範やってるだろ? その練習もそうだけど、小さい頃から富士演習場に良く連行されたんだよ」

 

「え! 練習も見せてもらえていたのですか!? しかも富士の聖地の!?」

 

 それは素直に羨ましいです!

 

「聖地って…。まぁいいや。でな…ちょっとコンビニ行こうぜ!って感覚で、連行されて行ったんだよ…樹海に……」

 

「え……」

 

 樹海?……富士の!?

 

「大体、目的の1週間前に連れて行かれたな…あれは、野営やキャンプじゃない」

 

「」

 

「いやぁ…良く自殺のメッカと言われているけど、そっち側じゃないんだ。……マジで人の手が、入っていない方の樹海」

 

「あの、隆史殿? 遠くを見ないで欲しいのですけど…」

 

「あのクッソババァ。普通、中学生に上がりたての子供を一人で、毎回樹海に放り込むか? 渡された装備って、コンパスと地図とカレー粉だけだぞ!!」

 

 隆史殿が遠い目をしている……

 

「何が、GPSが有るから遭難は心配無いだ!! 何が、自衛隊はコンパスと地図のみで踏破してるから大丈夫だ!! こっちは踏破するしか、なかったんだよ!」

 

「隆史殿!?」

 

「嫌な予感しかなかったから、毎回キャンプ道具を一応持って行って良かったよ!!」

 

「」

 

「食料は現地調達ね!とか言われるし、夜は夜で、よくわからんもんに追い掛け回されるし…なんだよ、あの三股の人影!!!」

 

 隆史殿の話が、若干怖くなってきました!

 

「ハハ…なぁ、優花里さん。ヘビ食った事あるか? トカゲ食った事あるか?」

 

「!?」

 

「……カレー粉って偉大だよな」

 

「う…運転中は帰ってきてください! 隆史殿!! 普通に怖いです!!」

 

 

 

 

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 ---

 

 

 

 

 

「という感じで、帰ってきました!」

 

「…随分と楽しそうだったねぇ」

 

「久しぶりに野営の話以外にも、濃い話ができて楽しかったであります!! 隆史殿が、北海道で遭難しても戻ってこれたのが、納得できました!…納得するしか無かったです……」

 

 

 

 隆史殿が生徒会に合流しました。

 動画がブラックアウトして終了って所で、勢いよくドアを開けて入ってきたものだから、みなさんビックリしてましたけどね。

 

 帰ってきた隆史殿は、例の白スーツをまだ着ていた状態でしたが、肩にダンボール箱を担いで、手には買い物袋。

 メチャクチャ、アンバランスな格好でした。スーパーにでも行っていたのでしょうか?

 

「只今もどりました…あれ? マコニャンどうした?」

 

「な…なんでもない。気にするな」

 

 マコニャン呼びにツッコむ事もしないで、三角座りで丸くなってますね。

 

「…おかえり隆史ちゃん」

 

 足元に荷物を置き、首を鳴らしてますね。

 

「アンツィオ校にいたんだねぇ」

 

「え? あぁ、用事が済んだので、帰りがてら寄ってきたんです。初めは諜報活動でもって、思ったんですけどね。結局遊びに行ったようなものでした」

 

「うん。秋山ちゃんの動画で見たよ? 随分とまぁ、向こうの生徒と仲良さそうにしてたけど」

 

「そうですね、青森の時からの知り合いでしてね。まぁ優花里と鉢合わせた時は、正直ビックリしましたけど」

 

「バツ悪そうだったもんねぇー」

 

「そうですねー」

 

 アハハハーと笑い合っていますけど、両者共に目が笑っていませんね。

 隆史殿は、連絡をしていなかったって所に負い目でもあるのでしょうね。

 

 皆さんさすがに、隆史殿の前で地面に座っているのは嫌だったのか、椅子に座り直してます。

 冷泉さん、椅子の上に三角座りしてますけど……

 

「まぁなんにせよ、みんな聞きた事があると思うんだ。……満場一致で」

 

「……なんでしょうか? 嫌な予感しかしませんけど」

 

 会長が、発言する前に言っておきましょう。

 

「あのカルパッチョさんって人、なんなのでしょうか!?」

 

 私が聞きました。皆さん聞きたいと思いましたけど、敢えて私が。

 だって現場にいた私が、一番怖かったと思うのですよ!!

 

「隆史殿も、私が逃げ出した所見てましたよね!?」

 

「え? えー…あぁ。アンツィオの噴水の所でか? すごい全力疾走だったよな」

 

 正直、カメラも置いて逃げ出したかったですよ!

 

「そうです! あの方に私が隠れているってバレた瞬間、カメラの映像が強制的に途切れちゃったんですよ!! しかもこの映像、編集できないんです!!」

 

 私の発言で、周りの皆さんが息を呑みました。

 

「え…秋山さん……あの映像って、わざと編集しなかったんじゃ?」

 

「……違います西住殿。私も怖かったので、カットしたかったんですけど、何をしても丸々映像が残ってしまうんです!」

 

「え…」

 

「機械トラブルとかじゃないのぉ!?」

 

「武部殿…すでにそこは調べました! 全てオールグリーン、異常無しですぅぅ……」

 

「」

 

「あー、カルパッチョさんかぁ…たまに、ああなるなぁ。ちょっと怖いよな」

 

「ちょっとじゃないですよ!」

 

「ふむ」

 

 腕を組んで、何か考え込みだした隆史殿。

 何を悩んでいるのでしょうか?

 

「ちょっと、痛い話だけど聞く?」

 

「もうお化けとか出てこないだろうな!!」

 

 即座に反応したのが、完全に怯えきって、ガタガタ震えている冷泉さん。

 あ…すいません! こういうの苦手でしたよね!

 

「まぁ、あの隆史ちゃんに対する態度じゃ…正直聞きたい」

 

「みほは?」

 

「なんで私に聞くの?」

 

 ちょっと、怯え気味の西住殿。

 内容が、正直ホラーの域に達している様な気がしますので、躊躇する気持ちはわかりますよ!

 

「……なんでだろう。何となく?」

 

 隆史殿は、まぁいいやって顔で話を始めました。

 

「カルパッチョさんの様子が変わったって話だけど、3回目くらいかなぁ…。アンツィオって、頻繁にプラウダと練習試合するようになったんだよ」

 

「よりにもよってプラウダ高校と?」

 

「そう。んでな、知り合って暫くたった後なんでけど、海であいつら簡易型の屋台作って商売してんだ…無許可で」

 

「あー…」

 

 パイプとネジで、止めてあるだけのテント式屋台だそうです。

 あの人達らしく、外装を盛りに盛って結構派手に作ったそうですけど…よく知らない土地でやる気なりますよねぇ。

 

「まぁ屋台ってか、パイプハウスって呼べる規模の物を、どうも悪乗りで作っちゃったらしくてなぁ」

 

 あのペパロニさんとかは、確かに喜々としてやりそうですけど……

 

「地元の連中、怒らせちゃってな。それでまぁー揉めた揉めた。で、その揉めてる時にな、何かの拍子で屋台が崩れたんだ」

 

「あのタイプって、どっか崩れるとまとめて崩れなかったけ?」

 

「まぁそうなったね。どっかのネジの止めが緩かったんだろうな。押されて、関節部分からパイプが抜けてって感じかな。そのパイプが垂直に、カルパッチョさんの顔めがけて落ちてきたんだよ」

 

「え…」

 

 なんか凄い事を、すごく軽く言ってませんか!?

 

「あのパイプって、切断したまんまって感じの…結構、鋭利な物もありませんでしたか!?」

 

「うん。多少加工はしてあったけど、多分そのタイプだったな」

 

「軽くいいますけど…それどうなったんですか?」

 

「俺自体が、向かい側にいたからすぐ反応できてな。庇って間に入ったら、えぐられたっていうか…まぁ、胸元ザックリといった」

 

 「「「「 」」」」

 

「いやー、何十針か縫ったな。痛かった痛かった。でな、その場は俺が怪我したから収まったんだけど……」

 

「隆史君!? なに普通に話し続けてるの!? 結構、衝撃的な事言ったよね!?」

 

「え? …いや、だって昔の事だし」

 

「…それ、プラウダの隊長さんとか、副隊長さんとか…凄い怒ったんじゃ……」

 

「おー! みほ。良くわかったな。なんか凄かったぞ? まぁそれ以前にカルパッチョさんが、凄い取り乱してなぁ…なんか、後から凄い仲良くなってたけど」

 

 雨降って地固まるってやつかなぁって笑ってますけど……聞いているだけで、ちょっとムズムズしてきました。

 

「まぁ結局、傷が残っちゃんだけどな? その後、一日入院したんだけど、病室でちょっと話して……それからかなぁ。カルパッチョさんの目が、若干怖くなったの……」

 

「」

 

「まぁそれらから、会う度、チョコチョコその傷触ってきて、少し困るくらいかなぁ」

 

「あー…それで、噴水の前で隆史君の胸付近、指で触ってたんだ……」

 

「そうだな」

 

 

 ……

 

 

 せ…静寂が……

 

 何故か、「あのカルパッチョさん」に皆が、納得したんでしょうね……

 

 ただ分かっていないのが、この朴念仁タラシ殿ですが…。結構はっきり言ってませんでしたっけ?

 

「あー…そういえば、しほさん達何も聞いてこなかったなぁ…気を使わせちゃったかな。さすが大人の女性」

 

「なんでそこで、お母さんの名前がでるの? 達?」

 

「ん? あぁちょっと傷を見られているはず何だけど、何も聞いてこなかったなぁって思ってな。一昨日のみほからの電話の時の事だよ」

 

「あぁ…あの時の。……ねぇ隆史君。傷見てもいい?」

 

 西住殿!?

 

 一斉に視線を独占する西住殿。確かに気になりますけど!!

 

「んぁ? 結構エグいよ?」

 

「うん、大丈夫。よかったら見せて」

 

 そのまま黙って、上着を脱いだ隆史殿。

 そしてワイシャツをお腹くらいまでボタンを外した所で、気がつきました。というか、気づかれました

 

「……あの、皆さん」

 

 「「「「 …… 」」」」」

 

「前かがみで、キラキラした視線を集中するの、ヤメテもらえませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「け…結構、大きいけど…もう痛くないの?」

 

「もう痛みはないな」

 

 ……みほさんや。

 なんで、赤くなってんの?

 見ていて、気持ちのいいものでも無いだろうに。

 

「さ…触っていい?」

 

「みほ!?」

 

 

 ブッ

 

 …

 

 ……

 

「……西住ちゃん」

 

「……なんですか?」

 

「部屋の電気が消えたね」

 

「消えましたね」

 

 

 「「「……」」」

 

 

「なぁ、マコニャン。大丈夫か?」

 

 両手で、両耳塞いで丸くなってるけど……

 

「キコエナイ、キコエナイ、ミエナイ、ミエナイ……」

 

 ……ちょっと、可愛いと思ってしまった。俺は多分クズだろう。

 

「隆史ちゃん。もういいから服着て」

 

「御意」

 

 ちゃんと服を着直したら、電気もちゃんとついた。

 俺は、センサーかよ。

 

 ……みんな顔が硬直してるけど、大丈夫か?

 

 

 

 

「さてと、会長。俺もういいですかね? ちょっとカバさんチームの所、行きたいんすけど」

 

「カバさんチーム? どしたの?」

 

「いやね、カバさんチームの鈴木さんに、装填練習用台の改造を頼まれていたもんでね。本当は一昨日やってやるつもりでしたけど、ほら俺、拉致られたから」

 

 まぁあれは、拉致と変わらなかっただろよ。

 

「あ、じゃあ私も一緒に行っていい? P40の情報、何か無いか聞いてみようと思ってたの」

 

「あぁ、あの歴女チームならなんか持ってるかもな。いいよ、一緒に行こうか。俺の軽トラに、もう改造パーツ積んであるから、すぐ出れるよ」

 

「それで来るの遅かったのかぁ…でもなんで、私と西住ちゃんの連絡に一切出なかったの?」

 

「あ!」

 

「……」

 

 ……どうしよう。電源切ってた。

 

 まぁ丁度、女の子いっぱいいるし、聞いていみようか。

 うん…まぁ大丈夫だろう。

 

 腕を後ろに組み、両足を開ける。

 

「では! 会長閣下! 一つ質問よろしいでしょうか!」

 

 

 「「「「「「……」」」」」」」

 

 

 しーんとした。

 

「な…なに? 会長…か、閣下? ちょっとその呼び方は、やだなぁ…」

 

 ……そうですか。

 

「ならば、杏! 一つ質問よろしいでしょうか!?」

 

 

 「「「「「「……」」」」」」

 

 

 また、しーんとした。

 

「な…なにかなぁ~」

 

 会長だけ、にやにやしてるけど…

 

「隆史君。また何かごまかそうとしてる?」

 

「またとは失礼な!」

 

 実は、これが原因なんだけどなぁ。

 

「杏。例えば、君に恋人なり、夫がいたとしよう」

 

 ……

 

「一々、沈黙はやめて頂きたい! 話が進まん!」

 

「ま…まぁいいよ。で? 私に、そういった人がいたとして?」

 

「その伴侶が、キャバクラに行ったとして、それは浮気に入るのでしょうか!?」

 

 

 「「「「「「……」」」」」」

 

 

「……なに? 隆史ちゃん。行きたいの?」

 

「隆史君…」

「書記…」

「きゃばくらとは何でしょう?」

「…華。後で説明してあげる」

「隆史殿…」

 

「隆史君…お姉ちゃん感心しないなぁ…」

「…きゃばくら?」

 

「俺じゃありません! 知り合いの話です! ぶっちゃけ、それが奥さんにバレたから、何とか間を取り持って欲しいと、着信が鳴り止まないんです!!」

 

「こういった場合、知り合いって大体、自身の事だよね」

「そうなんですか?」

 

「沙織殿! 邪推は、やめて頂きたい!!……いやね、マジで参ってるんだよ。それで、殆ど携帯の電源切ってたんだよ……」

 

 試しに、携帯の電源を入れてみる。

 すると、数分で着信が入る。

 

「……」

 

「な?」

 

 常夫。仕事しろ常夫。

 

 そして電源を切る。

 

 

「…まぁ、いいや。そだね、例えば……」

 

「はい!!」

 

「私と隆史ちゃんが、そういった関係だったとしよう」

 

「…は?」

 

「例えばだよ? た・と・え・ば」

 

「……はい」

 

「まぁ、浮気とまでは言わないけど、いい気分はしないねぇ。それが例え、仕事とかの付き合いとかでもね」

 

 あら、まともな回答。

 

「まぁ、私もそうかな…仕事とかなら仕方ないと思うけど」

「……よくわからん」

「ですから、きゃばくらとは…」

「私もそうかなぁ…」ムシシナイデクダサイ

「難しいですねぇ!」

 

「……ウワキダトオモウ」

「柚子ちゃんが、怖い顔してる…」

 

 

「……では、ですね」

 

「まだあんの?」

 

 どうしよう。なんて言お……あ。

 

「そのキャバクラの指名する女の子の名前が、よく知る知り合いと同じ名前ならどうでしょうか?」

 

「ほぇ? 例えば?」

 

「例えば…俺と杏が、そういう関係だっとして…指名キャバ嬢の名前が、「柚子」とか「桃」とかだったら…」

 

「無いね! 浮気だね! 死刑だね!!」

 

 即答された……

 

「例えば……みほ。俺とみほが、そういう関係だったとしてだな」

 

「隆史君!?」

 

「指名キャバ嬢が…「まほ」とか……」

 

「うん! 浮気だね!」

 

 笑顔で即答された……

 

「隆史殿…それは浮気とかより、もはや別の問題ですよ……」

 

「そうだよな。俺もそう思う」

 

 実際は、自分の娘だ。フォローのしようが無い。諦めろ。な?

 

 

 では、最後に。

 

「以上です! ありがとうございました! 先方には自己責任だ!っと言っておきます!!」

 

 一言くらいは言ってやるから、俺と同じく土下座でもして来てください。

 

「後、もう一ついい?」

 

「なんでしょうか!?」

 

「そのダンボール箱なに?」

 

「は!! ピーマンです! 農業科から直接、購入したものであります!! 安くて良いものでした!!」

 

「ぴーまん?」

 

 ハッ! さっそく、みほが反応した。

 さてと…みほの目を見て、ちゃんと話そうか。

 

「みほ」

 

 ビクッ!

 

「しほさんから聞きました。まだピーマンが食べれないと」

 

「た…食べれるよ? 嫌いなだけで、食べる事できるよ!?」

 

 はっ! 嘘だな。みほが嘘つく時は、目がキョロキョロするのを分かっている。

 

「じゃあ大丈夫だな。明日からこれ一箱、消費するまでの間、毎食ピーマンを投下します」

 

「」

 

 俺達の会話に何か引っかかったのか、何かどよめいている。なんだ?

 

「あの…隆史君。どういう事? 毎食? みぽりんと!?」

 

 ん? あぁ。

 

「聞いてないの? みほ大体、朝飯と夕飯。俺んとこで食べてるけど? 1人前作るのも2人前作るのも変わらないし。殆ど、俺が作ってるよ?」

 

 「「「「「「 …… 」」」」」」

 

「ひっ! ひどい!! 毎食ピーマンなんて!! 鬼! 悪魔!! お母さん!!!」

 

「はっはー。目標は、生でバリバリ食える所までです。…………覚悟しろ」

 

「」ナマ…

 

「いや! いやいやいや!! え? 何!? どういう事!?」

 

「え? 全ての食事にピーマン入れるって…」

 

「ちっがーう!! みぽりんと隆史君って何!? 付き合ってるの!? 何その半同棲生活!!」

 

「付き合ってないよ? そもそも飯食いに来てるだけ……『あほか!!』」

 

 なんでしょうか? 何故か怒られました。

 

 

「いやー…西住ちゃーん」

 

「…なんでしょうか」ピーマン…

 

 ピーマンに絶望しているのか、目にハイライトさんがいない。

 さてっと、何作ろうかねぇ。

 

「やってくれるねぇー…まさかねぇ……チッ!」

 

 会長。良くわかりませんけど、取り敢えず舌打ちはヤメテクダサイ。

 

「…みぽりん」

 

「ぴーまん……」

 

「みぽりん!!」

 

「ふぇ!?」

 

「はぁー…何? 毎食、隆史君が作って、隆史君の部屋で食べてるの?」

 

「そ…そうだけど? 私より、隆史君が作ったほうが美味しいし……ぴーまん……」

 

「ねぇ……みぽりん」

 

「な…何?」

 

 

「女子力って知ってる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■▲▼▲▼▲■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 届いた。

 

 例の男の交友関係の資料。

 

 知らね。

 

 興味がない。

 

 でもまぁ、これも仕事っていえば仕事かね?

 あの爺の狙いは、男子高校生のガキ。

 ただ、その学校に所属していた…姉妹の片割れにしか、俺は興味が無い。

 

 まぁついでにやるのもいいがな。……金を貰う以上、一応目を通すかね。

 

 …バインダーの資料を捲っていく内に、馬鹿でも分かる程の落差があった。

 

 ……

 

 なんだ?

 

 資料の情報濃度が、サンダースって高校から一気に下がっている。

 調べた奴が変わったのかね?

 

 はぁ…どうでもいい。

 

 俺が興味あるのは。あの姉妹だけだ。

 

 ……その男の名前すら見てねぇや。

 

 まぁ何か使えるかもしれないし。もし彼氏とかだったから、何かの弱みになるかもなぁ。

 

 気乗りはしないが、見るだけ見と…く……

 

 

 

「尾形 隆史」

 

 17歳

 

 詳細…熊本より……幼少時……

 

 

「……」

 

 

 携帯を取り出す。

 

 ……そろってるんだよなぁ。

 

 揃っていたんだなぁ!!

 

 仲良しこよしで、大変よろしいねぇ!!!

 

 あの姉妹よりも、もっと……もっと恋焦がれていた奴がいた。

 いいねぇ…妹と一緒にいるのかぁぁ……

 

 電話の向こうで、プチッっと音がした。

 やっと出やがったな。おせぇ。

 

『…はい』

 

「お、どうだ? 覚悟決まったか?」

 

『…早速本題か? この前の話だな』

 

「他の二人は、この話に乗るってよ。お前はどうすんだ?」

 

 まぁ、この話を聞いている時点で、拒否権はねぇけどよ。

 

「西住 みほ」側の資料が目の前に転がっている。

 ストーカーでも雇ってんのかよ、ってぐらいの詳細な資料。

 

『……正直、迷ってる』

「あぁ? 何、日和ってるんだ?」

 

 携帯を肩と耳にはさみ、資料をもう一度見ながら話す。

 黒森峰の時とあまり変わっていないだとよ。

 

 あらあら、お友達が少ないなねぇ……

 

 お友達庇って前回負けたくせになぁ。そのくせ、お友達は大好きですってなぁ。お優しいねぇ……。

 

 大洗って所でも変わらないのかなぁ?

 

『今更…』

 

「三人揃ってんだよ」

 

『は?』

 

「あの時のガキ共三人が! 全部そろってんだぁぁよぉぉあぁ!? 全て一回で済むんだよ!!」

 

『……』

 

「なぁ…やろうよぉぉ。俺達全ての…全てをぶっ壊した奴らが揃ってんだよぉ!?」

 

『……』

 

「金も問題ねぇ。馬鹿なジジィがな? 資産投げ打ってでも、復讐したいんだってよぉ…」

 

『…わかった』

 

 乗った!

 

「……だよなぁ。そうだよなぁ!! こんなチ…チャンスもうねぇだろうからなぁ!!!」

 

『……』

 

「ちょっと考えがあんだよ。「西住 みほ」…妹の方な? お前が追い回した方な!」

 

『あぁ…覚えてる』

 

「本人は、後回しだ。どうせこんな寄せ集めの学校、最後まで行けないだろうからなぁ…だからな!」

 

「詳細を送るから! コイツはどうも、お友達集めて、チーム組んでるみたいでな! その中のお友達が、じ…自分のせいで、どうにかなったらどう思う!?」

 

『……』

 

 4つの資料が手元に有る。

 

「金はいくら掛かってもいい。他人を…全く関係ない考えの足りない、馬鹿を雇え」

 

「そうだな…こいつだ。こいつでいい。見てくれも悪くないから、簡単に馬鹿共なら釣れるだろ」

 

「あいつら学園艦だから…そうだな。大洗にその内、着艦するだろうよ。そん時でいいや…そん時がいい!」

 

「馬鹿共に依頼しろ。得意だろ? 昔から。こいつを…、まぁなんでもいいや。攫って輪姦して山にでも捨ててこいよ」

 

「女なんてそれで、大体終わる。楽でいいだろ? …あぁ、間違っても殺さないようにな? それじゃ意味が無い」

 

 殺しちゃったら、みほちゃんが、その大事なお友達から責められるって、心躍るイベントが起こらないじゃないか。

 

「だから楽しみだろ?」

 

 目の端に見えた、もう一つの…男の資料を改めて見てみる。

 

 ……いやぁ順風満帆だねぇ。

 

 羨ましいねぇ。

 

「……」

 

 

 違う。

 

 

 ……なぜこうも違う。

 

 …同じ……同じ……同じぃぃ!!

 

 

『…お前。大分、変わったな』

 

「うるせぇよ。お前も結局、参加するんだろ? 同じなんだよ俺と!」

 

『……そうだな。資料送ってくれ。やってみる。』

 

「はい、お願いします、頼みますねぇ?」

 

『……じゃあな。「高史」』

 

 

 通話の切れた電話と共に、資料の一つを机に頬り投げる。

 乾いた音と鈍い音が机から聞こえた。

 

 顔写真、名前、共に正面に見える。

 

「まぁいいや。取り敢えず楽しみが増えた」

 

 つまらない消費するだけの人生が明るく好転した。

 

 こいつから始まるな。

 

 

 

「んじゃ、よろしくぅ…「武部 沙織」ちゃぁぁん」

 




はい。閲覧ありがとうございました

3人目のタカシです。

次回、アンツィオ戦、戦闘開始!

…できたらいいと思います。

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