「なんだ? 嫌か?」
「……」
沙織さんが、目の前で似てない俺のモノマネをしている。
ストローをタバコに見立ててスパーッっとかしてるけど、俺吸ってないですし。
うわぁー…しかし、似てねぇ。
「じゃなーい! 何! その上から目線!」
「あの、普通にいこうかなぁって思いましてね?」
「ソレはソレで、あまりにも普通すぎるでしょ!! もうちょとこう…何かあるでしょ!? 場所とかも!」
「場所ですか?」
「そうよ! しかもみんなの前で!……あ、それは別にいいか。皆の前で、公開告白されるのってちょっと憧れる……」
「そ…そういうものですか……」
「それでも、隆史君! 振られちゃったかもしれないのに、もう…こう、落ち込んだりしないの!? なんでそう普通なの!?」
「んぁー、まぁショックといえばショックだけどねぇ。結構振られるの前提で、話したからなぁ…」
「こ…この男は……」
まぁ結局の所、みほからの好意は感じていたところ、恋人関係になるとするとまた話が別だ。
…恋人関係ってはっきり言うと、照れくさいというか、違和感しかないや…。
結局、付き合うかどうかの返事は、頂いておりません。
みほは、どうも反射的に「嫌」と言ってしまったようで、最終的に「考えさせて」というお返事を頂きました。
戦車で学園艦に戻る際、車内では何も喋らなかったそうだ。
学校に到着後、「先に帰るね」と一言だけ言って、フラフラと一人で家路についた。
はい。残された俺は、みほを除いたあんこうチームの皆様方に、ファミレスに連行された。
ズゾゾゾと音を立てて、ドリンクバーから持って来た、各自飲み物をストローですっていますね。
女の子が、それはないんじゃないかなぁ~…
「あれじゃ、みほが可愛そうだよ!」
「沙織さん。最終的には、隆史さんと、みほさんの問題ですので…」
「でも華! あの告白は、無かったと思うの!」
「それはそうですけど…隆史さんですよ?」
「そうだぞ沙織。書記だぞ? この男に女心を理解しろなんぞ、土台無理な話だ」
「そうですよ。隆史殿ですよ?」
「ぐっ!」
反論して…そこは反論してください。
反論できないって顔で、悔しがらないでください。
……まぁ確かに女心なんてわっかんないけど。
しかし…オペ子がねぇ。
大体のあらましは聞いたけど、ちょっと信じられない。
随分と怒ったそうだけど、ぜんっぜん想像がつかないな。
プリプリ怒ってるは見たことあるけど、マジギレだったそうだし…。
「で? どうするの? 隆史君」
「なにが?」
「みほの事。…一応、返事は保留だけど」
「あー、今日帰ったら話してみるよ」
「え!?」
「いえ…あの、隆史さん。みほさん、考えさせてって仰っていたじゃありませんか」
「言っていたな。まぁ、この現状じゃ聞く気は無いけど」
「え…あの、隆史殿。それはいくらなんでも酷いと思いますよ? 西住殿、混乱していると思いますよ? 可愛そうですよ!」
「…書記」
睨まれてるなぁ…。
「みほは多分、このままだと、考えすぎてダメになる。また自分に閉じこもる可能性があるからな」
「え?」
「俺の転校前の…「人間関係」とやらに負い目を感じているんだろ?……女性問題しかり」
「え…隆史君、理解してるの? 女性問題を? 本当に!?」
……まぁオペ子もそうだろ。
お茶会の後から、俺の呼び方も変わったしなぁ。
客観的に見るとそうなんだろうな。
……実感全然無いけど。
「だから、まぁ…ちゃんと話してくるよ。ろくに俺と話もしないで、何を考える事があるんだって話だよ」
そこまで言って、荷物を手に取り立ち上がる。
さて、このままいても責められるだけだろうし、意味を成さない。
とっとと、みほと話に行くか。
俺が、帰る意思を見せたのと同時に、ここでお開きだという空気がみんなに伝わったのか、各自荷物を手に取る。
しっかしまぁ、それでも怪訝な顔で見られてるなぁ…
「なに? 沙織さん」
沙織さんが俺の顔をジッと見ている。
睨んでいるとは違うな。なんだ?
「…隆史君が、ちょっと嬉しそうにしている顔が、何か納得できない。何考えてるの?」
そんな顔してるか。特にニヤけてもいないんだけどなぁ…多分。
…まぁ。そうかもなぁ。
正直、みほを心配しているのが分かるから、嬉しいという感情しかわかないな。
それが顔に出ていたかもしれないな。
黒森峰の時にも、こういった友達いたのかなぁ…。
彼女達には感謝している。
なんか保護者目線で申し訳ないけど、できるだけ みほは俺といるだけじゃなく、彼女達との時間を過ごして欲しかった。
だから、学校から下校する時なんかは、一切関与しなかった。
…昨日はその関係で、ピーマン食わせ損ねたけど…。
まぁ、良好な関係を築いているようだ。よかった。
だけどなぁ…感謝の言葉なんて、照れくさくて口に出して言えないしなぁ。
だから。
「……ないしょ」
いつもの様にお茶を濁そう。
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「と、いう事がありましたとさ」
『……』
夜の21時頃。
みほのアパートの部屋、そのドアの前で、何回かインターフォンを連打。
普通にただの嫌がらせですな。
ドア越しに、みほの気配はする。
一応は玄関まで来てはくれているのだろう。
ドアから軽く音がしたから、多分ドアに背中を預けているのだろうな。
無言の時間が暫く続いていた。
「一応、話をしに来たのだけど。玄関くらいは入れてくれんかね?」
『……』
「俺、このままだと女の子の部屋の前に鎮座している、ただの不審者なんですけどー?」
『……』
「みほ~」
『……なら、帰ったらどう? 考えさせてって言ったよね?』
やっと声が聞こえた。
「返事はな。ただ、俺から何も話をしてもいないじゃないか」
『……』
また、だんまりか。
さて、どうしたもんかね。
明日は早朝から動く事になるし、何より時間を置くと後々またおかしな話になりそうだ。
青森での心配性な俺を、知られたということは…どうせ、ペコに悪いとか自分が悪かったとか思い込んでいるんだろうな。
……まったく。
「ちょっと君いいかね?」
「ハイ? 俺ですか?」
いきなり横から、二人組の男性に声をかけられた。
考え込んでいた為、接近に気付かなかったヨ。
声をかけてきたのは、独特の制服。
夏場だからワイシャツを着ているけど、一発で職種が判明する独特な制服。
はい、こんばんわお巡りさん。
……通報されてた。
「…若い女性の部屋の前で、大男が長時間ウロウロしていると通報があってね。ちょっと話聞かせてもらえる?」
「」
本当に不審者になってた…。
「……はい。一応、知り合いに会いに来ただけなんですけど……。交番まで行ったほうがいいですか?」
事情を説明した所で、信じてはもらえまい。
任意の職務質問だろうけど、下手に拒否するより素直に応じよう……まいったなぁ……。
俺が答えた直後、ドアの鍵が開く音がした。
ゆっくりとドアが開いた。
その部屋の中から、目が真っ赤になったみほさんが、出てきてくれた。
「あの…すいません。彼は、私の知人です…大丈夫です」
……結局、痴話喧嘩みたいなモノという事で納得し、警官は帰っていった。
一応身分証は見せておいたけどね…。
人騒がせだと、軽く説教くらっちゃった……。
まぁ結果オーライだ。
一応、また通報されたら堪らないと、みほの部屋の中には、入れてもらえた。
さて、後は話を聞いてもらえるかどうかだな。
「…こんな時間に、女の子の部屋に普通来る? だから不審者に間違えられるんだよ」
「……もっと遅い時間に、泊めてと言って、一人暮らしの若い男の部屋に現れた珍客に言われたくない」
「ぐ…」
一応、玄関先から中には上がろうとはしなかった。…さすがにねぇ。
玄関先の廊下の壁に背中を預け、体育座りでいるみほを見下ろしている。
目が赤くなっているのを見られたく無いのか、顔を膝で隠している。
「まったく。…何を泣くことがあるんだ」
「……いいから。言いたい事があるなら、聞いてあげるから言って。それで早く帰って」
「あら、冷たい。昨晩怖がって、抱きついてきた子の言葉とは思えないな」
「……」
ふっ。耳が赤くなってましてよ?
「さて…まず。何か聞きたい事あるか? 多分それが、みほに言いたい事になる」
「……」
「……」
暫く無言が続いた。
たまにピクピク、体が動くのが見て分かったから、言い出そうとしているのは分かる。
俺から言ってもいいけど、敢えてみほに言わせる。それがある程度心の整理にもなるだろう。
「……他の娘どうするの?」
「他の娘?」
「…オレンジペコさんとか、ダージリンさんとか、会ち…プラウダ高校の人とか、…………お姉ちゃんとか」
「かいち?」
「それはいいの」
「?」
かいち何て知り合いはいないけど…まぁいいや。
「みほ」
「なに?」
「他人は、この際どうでもいい」
「……え?」
「そこで、なんで周りに気を遣う? 結局お前が、どうなりたいかだ」
「どう?」
「もしお前が、周りに気を使っただけの理由で、俺を拒否するなら俺の気持ちはどうなる? 他に代わりになる娘が、いるからいいって事か?」
「…そうは言って無いよ」
無視です。聞いてやりません。
「ここの所、俺の様子がおかしかっただろ?」
「…うん」
「コノ事をずっと、考え込んでいたんだ。…考え抜いて、出した答えがコレだ。」
「……」
「まぁ…ぶっちゃけよう。メチャクチャ悩んだ。…特にまほちゃんの事が」
「……」
「最終的には…吐いたなぁ。胃液しか出なくなって、胃自体が出てくるんじゃないかってくらい」
はい。それで合流が遅れました。
「俺自身、ある程度の好意は、みほとまほちゃん位しか分からなかったからなぁ…」
「え!?」
みほが、漸く顔を上げてこちらを見た。
目と合わせて、顔まで赤くなっている為……なんかもう心配になるくらい顔色が赤い。
「まぁ…もちろん恋愛感情かどうかまでは、分からなかったけどな」
「……隆史君だしね」
「……」
みんなしてひどい…
「まぁ最終的に…だ」
「……うん」
「俺が、みほを選んだんだ。みほが、よかったんだ」
「……」
「まぁ端的に言えば……」
「……言えば?」
「みほが、一番好きだったんだよ」
「 」
「だから、返事は後でもいい。他人は気にするな。みほ自身の気持ちで返事くれ…以上!」
我ながら偉そうな事言ってるな。自分自身は他人を気にしまくっていた癖に…。
というか、この状態…恋愛自体が、良く分からないので非常に辛い。
みほは、まだ体育座りだし……まぁなんか、小刻み震えているけど。
「……隆史君」
「ん?」
「私、隆史君にもう甘えないって決めていたんだ…」
「他の娘に負けないって決心してたんだ……」
「……」
「でも今日、オレンジペコさんに言われて思い知っちゃったんだ…私ただ……」
「なに?」
「……いい。隆史君にいう事じゃなかった」
言いかけで辞めるのってすっごい気になるのですけど…
「大丈夫…ちゃんと答え決めるから。…決めたから」
「…はいよ」
「ごめんね…いろいろと。…今日はもう帰って」
「…了解」
後ろを向き、ドアに手をやり、退室する。
…一つ言い忘れた。
まぁ大事な事かな?
この世界に生まれて、全身全霊で押さえつけていた、ある化物がいた事があったのを、一つ言い忘れていた。
苦節17年以上だ。
俺は、この化物と日々戦い続けている事を言っておこう。
「あ、みほ、一つ重要な事を言い忘れていた」
「…なに?」
「俺と付き合う条件…とも違うな? なんだろう…宣言というか……」
「なんなの?」
もう、なんか迷いは無くなった! みたいな顔してるけど……ゴメン。
これは多分、言わないと後々めんどうだ。
「まず質問。みほが、寝言でも言っていたんだけどな?」
「寝言!? え!? 隆史君昨日、私寝た後も起きていたの!?」
「ん? あぁ寝れなかった。 ゴメン。寝顔もしっかり見た。というか、写真撮った」
「!!」
「あ、消さないよ? でな、そん時に寝言で言っていたんだけど」
「!!!!」
唖然と何か言いたそうな顔をしているけど無視だな。
「『隆史君の変態ぃ』って言っていたんだけど、俺ってそんな認識なの?」
「けっ!消して!!! そんな事してるから、そんな寝言言ったんだよ!!」
「うん、それはある程度正解なんだわ。結構俺、性癖ひん曲がってるから」
「せーへき…?」
あ、分からなかったか。んじゃまぁ……
「つまりな? 俺とみほが、付き合ったとして…」
「あ、おねが…じゃない、何!?」
「まず。プラトニックな関係は、まず無理だと思うんだ」
「ェ……え!?」
「こういう事は、結構大事な事だと思うんですよ。うん」
「なに!?」
「多分、遠慮なし。全力全開になると思うんですよ。はい」
「なにが!?」
「じゃ、明日早いから帰るな? お休み~」
「だから、なにがぁ!!」
『お前今なんて言った!? なに考えているんだ!?』
「そんな大げさなことかねぇ? ただ、僕もみにいきた~いって言っているだけだよぉ?」
『あの女達に、接近禁止の処分を受けているだろ!』
「あぁ、半径…なんめーとるだっけ? 忘れた」
『お前…今目立つと後々、動き辛くなるぞ!?』
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。何もする気はねぇよ。ただ目立たないように見ているだけだよ?」
多分な…。
『……3名雇った。一応、人に見られないようにと指示は、出しておいたが』
「あぁそれな。逆だ。できるだけ目立つよにしろって、馬鹿共に言っといて」
『な!?』
「新しい資料が届いてなぁ…ちょ~と、良い事思いついたんだぁ。ただ俺らとの関係は、一切バレないよにしとけよ?」
『当たり前だ! 今の生活もある。だからお前も無茶なことはやめておけよ?』
「わかってるワカッテマァス。…馬鹿共にはな、できるだけ「西住 みほ」や、人目に付く所で攫えって、言っておいてくれますぅ?」
『わざわざか?』
「わざわざだねぇ。ちょうど、イベントっぽいのもやってるしねぇ…」
交通規制もかかるしな。
失敗したら失敗したで、別の意味でダメージになってくれると思うよぉ?
「学園艦も来たしなぁ」
『お前今、大洗にいるのか?』
「そうだな。 あぁ大丈夫、心配すんな。目立つことはしないよぉ」
『……分かった。指示を出しておく』
ふっふ~ん
見えた。学園艦。
夜に着港するものだから、ライトが綺麗だなぁ。
なに色かは、わからないけどぉ……赤しか分からないやぁ。
明日だなぁ。明日だねぇ。
楽しみで今日寝られるかなぁ?
遠足の前日って感じがするよぉ?
……
「いやぁ…タノシミダネェ」
はい、閲覧ありがとうございました
今回ちょっと短いです。
はい。次回話オリジナルの展開となります
ありがとうございました