転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第43話~華さんです!~ 前編

学園艦から、港までの船旅…というには、少し短いかもしれない時間。

華さんと二人きりという状況は結構緊張するな。

 

その船での移動時間。

二人して思い出してみてはいたが、結局分からない。

特段、俺と華さんとの間柄を示すような内容では、無かった為に余計に困ってしまった。

 

分からないならって事で、途中から華さんが出品するという、花の展示会の事に話が変わった。

戦車道を続けながらも、花道もそのまま継続して続けているそうだ。

流れる水平線をボケーっと見つめながら、船内のベンチに座っている。

 

「華さんは、なんだろう…結構、努力の人ですね」

 

「そうでしょうか…?」

 

「そうですよ」

 

華道は、幼い頃より続けて来たのだろう。

お家柄ってのもあるのだろうけど、才能も勿論持ち合わせていたのだろうな。

その才能に胡座をかかないで、努力するような人は好きだ。

何よりも、華さんの性格も。

 

おっとりしているようで、芯が通った性格。

何気に、あんこうチームの戦車道以外での生活の中なら、華さんって柱になってないか?

学校生活然り…普段のプライベートでも。

そういや、華さんって…髪も性格もそうだけど…すっげぇ俺のタイプの女性といえば、女性だよな。

 

…でかいし。

 

黒い笑顔で見られている時は、別だけど…。あれ本当に怖い。

 

……おっきいし。

 

「……」

 

…なんだろう。

若干…いや、華さんのジト目ってかなりレアじゃ…。

というか、何故その様な目で、俺を見ていらっしゃるのでしょう?

 

「…隆史さん。普段そうやって、女性を口説いていらっしゃるのでしょうか?」

 

「え?」

 

「……またですか? いい加減、ワザとじゃないかと思い始めましたよ…」

 

「な…なんの事でしょうか?」

 

努力の人って言っただけだよな? 口説く事になるの?

…基準がわからん。

はぁ…と一つ、大きなため息と共に、目線を海上に移してしまった。

 

「みほさんも大変ですね…」とか「…私、そんなに長身では、無いと思うのですけど…」とかブツブツ呟いていた。

…どうしたんだろ。

 

 

 

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「…はぁ」

 

華さんが港へ到着後、すぐにまた大きな溜息をついた。

船の降着場を見ながら、今度は頭を押さえていた。

 

「すみません隆史さん。あれ…私の家の者です…」

 

……うん。そんな気はしてました。

 

「華さん」

 

「なんでしょうか?」

 

「華さんの家って、華道の家元だって聞いていましたけど…」

 

「…そうですよ。もっとも、私は今は勘当されてしまってますけどね」

 

「……先程、お聞きしましたね。聖グロとの練習試合の後ですよね」

 

「えぇ。隆史さんにお会いした時、勘ぐられてしまったのは、少しビックリしましたね」

 

「…まぁ…それはそうと、もう一度お聞きしますけど…」

 

「…はい」

 

「華道ですよね?」

 

「はい、華道です」

 

「……最後に組とか、つきませんか?」

 

「…つきません」

 

はい、到着した港。

黒塗りの車が2台。降着場の降り口の前に鎮座してますねぇ…。

何あれ…すげぇ高級車…。

車とかに疎い俺にでも、高い車ってのは分かる。

…あれ完全にあっちの方が、ご愛用する奴だぁ…。

 

何故皆さん、黒服のスーツを着ていらっしゃるのでしょうか?

一般客がすれ違う度に、ご迷惑おかけします!って叫んでいる為、一般客の皆さんは苦笑いだ。

実際怪しすぎて、苦笑いするしかないのだろうけど…。

 

「お嬢!」

 

その中の一人が、華さんに気がついた。

新三郎さん…だっけか?

あの時とは違い、この人もスーツ姿だ。

お嬢って華さんの事だよね?…すげぇ違和感が無い、呼ばれ方をされていますね。

いやぁー…。

一緒にいる俺をすっげぇ睨んでますねぇ…。

船からの階段を降りた先、すぐに駆け寄って来た。

 

「お嬢! お迎えに上がりました!」

 

「…なんですか。この大層な出迎えは。いつもの人力車は、どうしたのですか?」

 

「いえ! そこの男を逃がすなと…旦那様から仰せつかりまして…奉公人男衆一同で、お迎えに上がりました!」

 

「……お父様から?」

 

わぁ…、皆さんにすっごい熱烈な歓迎をお受けしてますねぇ…。

すっげぇ睨まれてる。

それに釣られてか、こちらを振り向いた華さんと目が合う。

 

「…隆史さん。逃げるんですか?」

 

「……逃げる理由が、ありませんよ」

 

そうですわよねぇ…って、ボソっと呟いている。

またその会話と華さんの呟きに、華さんの家の人達から、再度殺気が放たれたる…。

……本当に…なんでしょうかね。

 

「それに、私はすでに勘当された身。この様な出迎えを受ける、謂れがありません。実家には私達だけで参ります」

 

「しかし、お嬢!」

 

…派手な歓迎で、完全に一般客の方々が萎縮してしまっている。

華さんは、頑なに出迎えの車に乗る事を拒否し、奉公人の人達と言い合ってしまいだした。

…華さんは、変なスイッチが入ってしまったのか、頑なに拒否をしている。

ここまで頑固な人だったのかぁ…。

う~ん。

 

「華さん」

 

「隆史さん?…なんでしょうか?」

 

俺が華さんに声をかけた時点で、また周りのから…もういいや、めんどくさい。

適当に流そう。

呼ばれた理由が分からなければ、俺も対処のしようがない。

 

正直、この手の連中の扱いには慣れている。

まぁ…主に被害者側からの立場だけど…。

 

どうしたら大事にならないかとか…回避するのは得意だった。というか慣れた。

まぁいくら睨まれた所で、多分この人達は本職じゃ無い。

本職の方達のクレーム処理は、昔の仕事の一つだったからなぁ…。

いやでも見分けがつくようになったよ…。

 

華さんは、会話の内容から、どうにも俺を心配してくれている様だった。

様子が、いつもとやはり違うのだろう。

…しかし時間が惜しい。

 

「もういいから、お言葉に甘えましょう?」

 

「しかし…」

 

「大丈夫ですよ? 別に…袋頭に被せられて、親指を拘束バンドで止められた状態で、手錠もされてませんし…。ほら! 両足も自由です」

 

「……新三郎?」

 

「し…しませんよ! しませんってば、そんな事!!」

 

華さんに睨まれた新三郎さんが、ブンブンと頭を振っている。

映画か何かで見た…とでも思ってください。

 

「ここだと目立ちますし、何より他の方達に迷惑が掛かりますからね」

 

「…………隆史さん。たまに凄い遠い目をなさいますよね…」

 

笑って誤魔化す。

そんな目してるかなぁ?

 

人に迷惑が掛かるというのが、効いたようだ。

渋々承諾をしてくれた華さん。

 

しかし、車に乗り込もうとすると、「お前はこっちだ」と、俺だけ後続車に乗せられそうになった。

あ、やっぱりか。

これ、本当は俺が彼氏か何かかと、誤解が解けていないんじゃないのだろうか?

 

すると華さんは、突っ立ていた俺の手を引いて、自分が乗るはずの車に俺を引き入れて乗車する。

勝手に後部座席へ。……華さん、メチャクチャ動きが早かったよ?

 

二人乗車すると同時に、バタンとドアを閉めてしまった。

 

「ご要望通りに車へ乗りました。早く出してください」

 

「お嬢、しかしそいつと一緒ってのは…」

 

新三郎さんが、外から何かわめいている。

そんな彼を放っておいて、運転手へさっさと出せと、めいれ……い……。

 

 

「お嬢!?」

 

「華さん!?」

 

あ! 見た! この華さんこの前ちょっと見た!

いやぁ…更に強力だァ…。

 

「…理由も何も言わないで、呼び出しておいて…。挙句、お客様である、隆史さんに対してこの扱い……」

 

 

「「 」」

 

 

……あの…車の窓ガラスにヒビが、入ったんすけど?

 

 

 

「…いい加減にしなさい」

 

 

 

「「 」」

 

しほさん、千代さんはもちろん。

みほ、まほちゃん。

愛里寿もそうなのだろうか?

 

家元ってのは、何か特殊な職業か何かなの!?

 

 

……本気で怒らせちゃダメな人が、俺の中でもう一人増えた。

 

 

 

 

 

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---

 

 

 

 

 

応接間…なのだろうか?

一体何畳あるんだろうって、数えたくなる程の広い部屋。

すっごいド派手で豪華な襖を見て、西住家とは趣が全く違うなぁって…どうでもいい感想が浮かぶ。

五十鈴家に到着早々に、そんな大広間に通された。

華さんと仲良く、横並びで用意された座布団に座っている。

 

反対方向。

 

上座には、同じく二組の座布団が並んでいる。

…二人来るのか…。

お父さんとお母さんかな?

ちょっと異常事態だと、流石に気がついている…。なんで?

俺なんかやったっけ?

 

こんな広い部屋。

華さんと二人っきりの状態。

 

横で、目を伏せている華さん。

 

この無言の…空気が……。

 

「……なぜでしょうか?」

 

「え?」

 

目を伏せた状態で、こちらを見る訳もなく…自分に話すように突然口を開いた。

 

「…確かにあの様に、お客様に対して無礼な仕打ち…。怒って当然…ですのに……」

 

「……?」

 

「………あそこまで怒りを感じるモノなのでしょうか?」

 

「あの?」

 

「え? あ、はい? なんでしょう?」

 

「……いえ、何でもないです」

 

「?」

 

…逆だ。

違う、多分一緒だ。

 

なぜだろうか…。なんとなくわかった。

華さんも思った事、無意識に喋るタイプだ…。

ワーイお仲間だぁ…。

 

不思議そうな顔をする華さんは、もう特に怒ってはいないようだった。

無言で過ごす、移動中の車の中は、そりゃもう…すごい空気だった。

…華さん、目を見開いて運転手をガン見だもの…。

 

「……お母様」

 

若干の恐怖と共に、送迎の車の中での回想をしている内に、いつの間にか襖が開いていた。

華さんの呟きで気づき、顔をそちらに向けると、着物を着た女性が、青白い顔をして立っていた。

…いや、俺と目が合った瞬間、顔が真っ赤になった。

うん。すっげぇ睨んでくる…。

 

そのまま、ゆっくりと用意されていた上座の座布団に座る。

 

終始無言。

目を伏せている。

 

麩の外では、新三郎さん…といったか。その奉公人が俺を睨みながら、座っている。

俺、ここまで話した事も無い人に、恨まれる事したっけか…。

 

「……お母様」

 

華さんから声をかけた。

もう少しこの状態が、続くかなと思ったけど、華さんから口を開く。

しかし、これに無言で答える母親。

 

「……」

 

「一体、どういった理由で、私達をお呼びになったのですか?」

 

「……」

 

「新三郎達の出迎えも…少々目に余る物がありましたし…一体、何なのですか? どのようなおつもりですか?」

 

「…時期にお父様もいらっしゃいます。本題は、それからです」

 

「そこです。全国フラフラなさってるお父様が、なぜ態々彼にお会いに帰ってこられるのか?」

 

「…何故?」

 

彼。

 

俺の事だろうな。

視線が集中する。

どうにも部屋の外にもいくつか気配がする。

奉公人が集まっているみたいだ。多分…出迎えの人達って…正装していたつもりだろう。

 

俺、本当になにしたの!?

 

「…共学の学校になんて…入れるんじゃなかった…」

 

「お母様!?」

 

泣き出した……。

 

泣き崩れた…!?

 

座った状態で、完全に前のめりになり、嗚咽を漏らしている。

 

この歳の女性が、本気で泣いている…。

えー…。これ……俺のせい?

 

「あの時、強制的にでも家に縛っておけば……こんな男の毒牙にかけられる事も無かったはず…」

 

「」

 

え…毒牙って…。

 

華さんすら呆気に取られているのだけど…終始事情が全く分からない為、リアクションに困る!!

 

「あ…あの、隆史さん。私を毒牙にかけたのですか?」

 

「」

 

訝しげる訳でもなく、極普通に聞かれた…。

 

俺に聞かないで!!

俺も、全く状況が分からないですから!!

 

「勢いで勘当してしまったとはいえ、大事な一人娘……」

 

姿勢を直し、俺を改めて睨み直す。

 

「それを…こんな、不埒な男に!!」

 

…不埒ってのは、初めて言われたなぁ…。

 

「そちらの下衆の素性は、全て調べました」

 

「下衆って…」

 

「」

 

これも初めて言われたなぁ…。

 

「そんな女性に対してだらしが無い男との間に…み…身籠るなど……ましてや、その歳で…」

 

 

……ん?

 

 

子?

 

子を身籠る?

 

えー……。

 

「あの…お母様…仰る意味が分かりません…」

 

華さんは、まだよく分かっていない様だけど、「子を身籠る」ってフレーズが、すっごい引っかかった。

何回も、華さんとあの時の状況、会話内容を振り返っていたので、すぐに思い出せる。

彼女の母親が、倒れた時の最後の言葉……。

 

もう一度、あの最後の言葉…。

 

『「できてしまった事」は、仕方ありません。……ちゃんと「責任」…取ってください』

 

思い出した瞬間…カッチリと違和感が、全てが当てはまった。

 

……。

 

…できてしまった…………責任。

 

 

子。

 

子供。

 

赤ちゃん……。

 

赤子…。

 

歯車だろうが、パズルのピースだろうが、例えなんて、何でもいい…。

綺麗に当てはまった。

 

分かった…納得がいった。奉公人から、この母親の態度まで全て。

 

そりゃ当然だ…。

 

「隆史さん? どうしました? 顔色が優れませんが…」

 

 

最悪な誤解。

 

 

「奥様」

 

麩の外から声がした。

新三郎さんとやらの声だろうか?

 

「旦那様が、ご到着しました」

 

「…分かりました」

 

もう一言も喋らず、俺を一瞥し部屋を出て行ってしまった。

いやぁ…ゴミを見る目で見られるのは、もう慣れてしまったのでいいんだけど…。

 

こうして部屋に華さんとまた、二人きりになってしまった。

…今のうちに事情を説明しておかないとまずいよな…。

 

「……いくらお母様でも、殆ど初対面の隆史さんに不埒やら、下衆やら…」

 

ブツブツまた言ってますけど、ちょっといいですかね!?

 

「……華さん」

 

「あ、はい! なんですか?」

 

「…華さんのお母さんとの会話で、俺が呼ばれた理由が分かりました」

 

「え? 本当ですか?」

 

「えー…はい。お家の人達…。大会会場で華さんの言った言葉に……その。すごい誤解をしているみたいです…」

 

「その様ですけど…。でもお分かりになったのですよね? なんですか?」

 

…なんというか、すっごい無邪気に聞いてくる。

答えが分かった。教えて! 教えて!って感じで…。

まぁ答えは最悪だけど…。

でもこれ、ストレートに言っていいのだろうか?

ぬ…。

 

「あのですね…」

 

「はい! なんですか!?」

 

やめて! そのキラキラした目やめて!!

なんか今日は、華さんの学校では見ない顔をよく見る気がする…。

 

正直に言おう。

経験上…隠したら、それこそ後々絶対めんどくさい事になる…。

 

「…どうもお母さん達の認識では、華さんは…」

 

「私?」

 

「…妊娠しているそうです。」

 

「え?」

 

「それで、その父親が俺……って事になってるみたいです」

 

「はぁ…」

 

「……つまりですね」

 

はい。敢えてストレートに説明しました。

はい。推理というか、俺が死刑執行になるであろう経緯を、説明させて頂きました。

あの時の言葉。

華さんのお母さんが、倒れたタイミング。

 

そういった関係だと勘繰られるのは、華さんもいい気分はしないだろうけど…。

思いっきり性のお話デスカラネ。

 

そういった誤解をされてもしょうがないセリフだし、申し訳ないですけどハッキリと言っておいた方がいいと思った。

 

「隆史さん」

 

「…はい」

 

「それは無いでしょう」

 

「え!?」

 

「いえ、流石に…それは無いですよ。面白い事を仰言いますね。でも私も一応女です。そういった冗談はちょっと…」

 

…嘘だろ? え?

少し顔を赤らめて、少し笑いながら…そして少し怒りながら、んな事言ってますけどね!?

 

「いやいやいや! 完全にそうですって! 華さんのお母さんも言ってましたよね!? 子供とか身籠るとか!!」

 

「隆史さん……飛躍しすぎですよ? いくらなんでも…」

 

「いくら俺でも、そんな冗談言いませんよ!! ただセクハラしただけじゃないですか!!」

 

「違うんですか?」

 

「違いますよ!! 華さんの中で、俺は一体どういう扱いになってるの!?」

 

必死の状況説明を再度しました。

絶対この理由だと。

 

「んじゃ無きゃ親父さんまで、俺に会いに出張ってこないでしょ!?」

 

「……」

 

うーんと、それでも、考え出してしまった。

なんで!? 繋がってしまえば後は、すっごい簡単な答えでしょ!?

 

「そうでしょうか?」

 

「そうですよ!!」

 

「でも、私と隆史さんは別に、恋人関係とかでも無いと、説明しましたよ?」

 

「だから余計に怒ってるんですよ!!」

 

はい。3回目の説明です。

俺、クズ。華さん被害者。俺、ゲス。

 

そこで理解してくれた…。やっと…。

なによ俺。華さんにセクハラしてるようにしか見えないじゃない!!

 

…再三説明したのに……渋々納得って…。

 

 

「あっ! でも、それでしたら話は、簡単では無いのでしょうか?」

 

「……何でですか」

 

「私、隆史さんの部屋に一人で行ったこともありませんし…、私の自宅に招いた事もありませんわよね?」

 

「……」

 

「戦車道の練習や試合もありますし…特にお母様は、私が日々欠かさない、日課の事も知っていますし」

 

「……」

 

「そんな…その…。男女の逢瀬を遂げる時間など無いと、説明すればよろしいのでわ?」

 

「……」

 

すっげぇ穴だらけの解決案を提示されました…。

嬉しそうにしないで…絶対それ通りませんから…。

 

「華さん」

 

「はい?」

 

「まず人目をはばかるのですから、お互いの部屋に行っていないと証明できません」

 

「えー…でも、『後ですね』」

 

「男はその気になったら、何時でもそこがホームグラウンドです」

 

「……」

 

「ですから、証明できません!」

 

「……隆史さんの仰る意味はわかりませんが、ロクでも無い事を仰っているのはわかります」

 

 

 

 

 

-------

-----

---

 

 

 

 

「……」

 

「お父様」

 

はい、親父様ご到着。

華さんのお母さんが退室したのは、親父様をお迎えに行ってた為だった。

無言で麩を開け、そのまま二人揃って、正面迎えの座布団に座った。

 

なんだろう。

普通に入ってきたな。

 

そして普通に座ったな。

襖を開けて入室した直後、走ってきてぶん殴られるかなぁとは、思っていたのに。

 

というか…。

 

「華さん…お父様って…その、格闘家か何か?」

 

「…はぁ……一応、アレでもお父様も、五十鈴流華道の師範です」

 

はい。体付きがやべぇ。

華さんのお父さんは、なんというか…紺色の普通の着物を着ていた。

なんつーか、浪人みたい…。

こんな金持ちのお宅のご主人だから、もっと豪華な着物を着てもいいと思うけども…。

 

それよりも気になったのは、その体格。

着物越しでも、俺には分かる…。

 

骨格から、首筋、胸元。

華道の師範だよね? 

なんでそんなに、筋骨隆々なんすか?

 

座布団の座り方も、正座とかではなくて、即胡座だった…。

膝に肘をつき、手の上に顎を載せて、前屈みに俺を睨んできた…。

 

ここまで、一言も無し!!

 

「久し振りに会った娘に、一言も無しですか? お父様」

 

「……」

 

あ…あれ? 華さんに言い方に少し、棘がある。

こういう喋り方って滅多に…というか、俺にしかしなかったような気がするのだけど…。

 

「久しぶりだな、華」

 

「……えぇ、お久しぶりですね、お父様。今度はどこをフラフラなさっていたんですか?」

 

「」

 

えー!? 

 

ちょっ!?

いきなり喧嘩腰!? 華さんどうしちゃったの!?

父娘中、悪いの!?

 

「…華」

 

「……」

 

お母さんから、静かに名前を呼ばれ、口を閉ざした。

よくよく親子関係に巻き込まれるな…俺。

あ…今回その中心が俺だ…。

 

「…さてと」

 

特に姿勢を正すわけでもなく、姿勢を崩した状態で本題を口にした。

 

「まず。そこの小僧。尾形 隆史って言ったな」

 

小僧って…。

 

「…はい」

 

「自己紹介も何もいらん、俺が良いと言うまで口を開くな。お前の事は全て調べて来た。ここへ到着するのが遅れたのもその為だ」

 

淡々と説明し、始終睨みつける親父様。

…本当にこの家、ヤクザ絡みじゃないよね?

 

「…「全て」調べてきた。全く…光源氏の再来ねぇ…」

 

ぐ…。不本意な二つ名を呼ばれた…。

ここ最近、俺の個人情報ダダ漏れだなぁ…。

 

「では、華」

 

「…なんですか」

 

睨みつける華さん…。

なに? こんな敵意剥き出しの華さんも初めて見る。

 

「まず、お前の勘当を解く」

 

「……え?」

 

「それから……先程学校に、直接退学届けを出しておいた」

 

「なっ!?」

 

小僧の事を調べるついでに寄ってきた…と言っている。

この人、大洗の学園艦にいたのかよ。

 

「今週中に、家に戻って来い。これからの事は、それから考える。以上だ」

 

「か…勝手な事を言わないで下さい!」

 

少し乱暴な物言いだったけど、淡々と話す親父様。

 

退学届を出しておいた…って。

 

その場に、思わず立ち上がる華さん。

手を握り締めて、それこそ父親を睨みながら叫ぶ。

…華さんが叫んだ。

 

「今、学校がどんな状況かご存知ですよね!? もうすぐ決勝戦だと言うのに…ふざけないで下さい!」

 

「…戦車か」

 

「そうです! 皆さんとここまで頑張って来たのです。ただの誤解なんかで……た…退学……出してきたって……」

 

退学届けをすでに出した。

結果報告のみ。

 

青くなって、その場にまた座り込んでしまった。

目を見開いて、下を向いてしまった。

 

…うん。

 

「お前達が、無責任な行動をして招いた結果だ。……華の友人達には悪いが、親としては華の身体を優先する」

 

「…何を誤解しているか存じませんが……人に指を指されるような事なんて!!」

 

…ま。

 

親なら同然といえば当然だろうか。

こんなでかい家の一人娘。

 

身籠っているってなら、高校なんてさっさと退学させ、産ませるなら家に入れる。

戦車なんて、持っての他…って奴だろう。

勘当を解いて家に入れるってなら、産ませる方向で話が進んでるんだなぁ…。

 

あ~…それで、俺余計に睨まれてるのかぁ…。

 

それに…。

 

退学届を出してきた……ねぇ。

 

直接…ねぇ。

 

ふーん…。

 

この親父…。

 

「それでだ。次はそっちの小僧」

 

「お父様、話を聞いてください!」

 

華さんの言葉すら、聞く耳を持たない様な態度で、体ごとこちらを向く。

 

「……」

 

無言で睨まれているのに、もうなんか…怖いとかそういった恐怖感が沸かなかった。

この人の「嘘」で、なんとなく分かった。

 

「選んだか?」

 

「…何をですか」

 

「蟹かコンクリ」

 

若干嬉しそうに言ってきた。

なんというか…。

 

「……で? どうする小僧」

 

「……」

 

睨み合い…というか、自然とそうなった。

この人の思惑が分からないけど、なんだろう…。

 

いくら親でも…いくら誤解だとしても……。

 

 

「……お前、五十鈴家に入れ。高校ぐらいは卒業させてやる。卒業したら……華と籍を入れろ」

 

 

「「 !? 」」

 

 

あ…華さんとお母さんが、こっち見た。

 

「あ…あなた!? こ、こんな無頼の下衆を五十鈴家に入れろと!? やめてください!」

 

「華を、未婚の…しかも父親も分からない母親にさせるつもりか? 華とこいつを会わせる会わせないは、別の話だけどな」

 

「ぐ……し、しかし……こんな…」

 

…このお母さんは、何も聞かされていないのだろう。

ただ、悔しそうに俺を睨む。

 

「華さん…」

 

「……なんでしょう?」

 

力なく、こちらを振り向く。

なんだろうか…。

誤解とは言え、こちらの話を聞く前に、全ての事柄を済ましてしまった様な言い方。

この華さんの姿を見ると……。

 

……。

 

悪趣味だな。

 

……腹が立つ。

 

「誤解だと、言わないんですか?」

 

「……あ」

 

退学の言葉のインパクトが強すぎて、忘れてしまっているのだろうか?

 

まぁ俺が意見するのも、火に油を注ぐ様な気もするが。

 

多分、下衆等散々な言われ方だし、客観的に見れば俺が一番の悪者だろうな。

うん。

……まぁいいや。

 

たまには、感情的になってもいいかな?

 

 

 

「華さんのお父さん」

 

「あ?」

 

 

「なんのつもりか知りませんけど、もう茶番はいいでしょ?」

 

「人の一人娘に仕込んで置いて、茶番だと?」

 

……盗人猛々しい…。

 

まさにそんな風だよねぇ? 俺。

 

でも……。

 

「……あんた。全部分かっていて、こんな悪趣味な嘘つきやがったな?」

 

「……嘘だと?」

 

俺の事、調べてあんなら分かるだろうが。

俺の学校での立場を。

それでいて、動揺させる為にだろうな。

なんにせよ…。

 

「ついて良い嘘と、悪い嘘ってのがあんだよ。くそ親父」

 




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