撤去前に打っておこうと、休みの度に通ってたら更新遅れましたスンマセン
最後にフリーズ引けたァ
……ごめんなさい
「クソ親父ねぇ…」
お父様が前かがみになって、隆史さんを睨みつけています。
胡座の為、開いた両足の膝に両手を置いて、覗き込むように。
なぜでしょうか?
不思議と敵意を感じません。
むしろ、突っかかって来た、隆史さんの反応を楽しみにしているように…なんというのか、笑いを噛み殺している感じがします。
それが……余計に癇に障ります…。
隆史さんは、背筋を伸ばし直し、お父様と睨み合っています。
「隆史さん?」
彼の横顔を見ると、少し懐かしい感じがしました。
あの時は、私達は覗き見ていただけですから、彼の背中しか見ていませんでした。
ですから、実際にお顔を拝見した訳では無いのですけど…。
怒っている。
この怒り方は、あの初めて会った時。
みほさんの為に土下座までした時と、雰囲気が似ています。
明らかに怒っています。
だけど。
それが…少し嬉しい。
それに先程、退学届を出されたと言われた時、目の前が真っ暗になりました。
全てが、終わってしまったと。
それも、私の家の……都合なんかで。
しかし…なぜでしょうか?
不思議とその感覚も収まっています。
どこか…安心感すら感じている気がします。
…。
「それと、嘘だったか? 何が嘘だ? 言ってみろ」
あぁ…そう仰っていましたね。
嘘ですか。
どこか考え込んでしまって、忘れていました。
お父様の問いかけで、我に戻りました。
私の視線に気がつかれたのか、隆史さんがこちらを見てきました。
…いつもと同じく、普通な感じです。
特に怒っている感じがしません。
「あ、あの。何が嘘なんですか?」
「……簡単な嘘ですよ。こんな簡単な…すぐバレる嘘までついて、胸糞悪い」
そこまで言って、また顔をお父様に向けました。
その時また、隆史さんから怒気が伝わってきます。
…。
「退学届。どこに出したんですか?」
「大洗学園…学校以外にどこに出すってんだ?」
「……今日、休日ですよ? 学校やってないですけど?」
あっ!
そうでした…。
そもそも隆史さん、休日だからって朝早くから、私に付き合ってくれたのでした…。
「…投函するだけならできるだろうが」
「そうですね。でもそれ、管理している所。どこか知ってますか?」
あー…。
「生徒会が管理しているんですよ? しかも俺、生徒会役員ですよ? 俺の事を調べたのなら知っていますよね?」
「……」
「実際に投函されたとして、明日には分かりますよね? …現場にいる俺が、何もしないと思いますか?」
「なんだぁ? 職権乱用か?」
「はい、職権乱用ですね」
…ハッキリと仰りましたね。
そんな隆史さんを見て、お父様が笑いだした。
声を上げている訳でもなく、口元だけですけど……。
…………腹立たしい。
「…まっ。俺以外でも…最高責任者が、実際こんな時期に出された退学届なんて、素直にあの会長が応じるとは思いませんけどね」
「あ~、あのツインテールの…どこか飄々とした感じの娘か。話していて面白くはあったな」
「……会ったんですか?」
「さっきな」
……何をしているのでしょうか、この父親は。
昔からそうです。
フラッといなくなっては、フラッと帰ってくる。
どこで何をしているか分からない。
五十鈴流家元としても…父親としても…。
「……学園艦にいた事
「まぁな」
なぜか得意げに、顎を撫で始めました。
「……」
「……」
はい。流石に私にも分かりました。
「…お父様。嘘ってお認めになるのですね?」
はい。顎を撫でる手が止まりました。
「あっ!!」
露骨にやってしまったという顔しては、お認めになるのと一緒ですよ……。
横から、ため息が聞こえました…。
「…黙っていれば、杏会長に直接出したのかと思うのに…。なんだかもう…チョロすぎて、腹の探り合いする気も失せた……」
「待て! 誘導尋問はずるいぞ!!」
「……このおっさん」
隆史さんが珍しく、他人に対して呆れてますね…。
露骨に態度に出すのは珍しい…。
こんな簡単な誘導に引っかかるって…呟いていますね。
あぁ…そうでした。
こんなお父様の真剣な態度って、初めて見た気がします。
まぁ…途中から崩れかけてはいましたが。
大体いつも、ヘラヘラと笑って、誤魔化す人でした。
人との会話の掛け合いなんて、できるお人ではありませんでしたね…。
あまりにも家にいませんでしたから、忘れていました。
呆れていた隆史さんが、再度背筋を伸ばしました。
もう一度、大きくため息をつきましたけど、…ちゃんと顔を引き締めました。
「退学届が出されたのだったら、まず華さん本人に直接確認の為に、電話なりなんなり入るでしょうし…」
そうですねぇ…私の携帯には、着信もメールも何もありません。
一応、確認の為に携帯を見ました。
「…後、今回の件。誤解だってのも気がついてましたね?」
「…はぁ。……ま~な」
「「え!?」」
黙って聞いていたお母様も、その告白には驚いた様で、私と声が被りました。
その…肝心のお父様は…。
いじけた様に、そっぽを向いています。
…子供ですか。
その態度を見た隆史さんの、収まりかけていた怒りが再燃しました。
声がまた冷たくなりましたね。
「おっさん。…あんた、何考えてんだ? 知っていてこの茶番か!?」
「…」
「俺の事は、この際どうでもいい」
「…」
「よりにもよって、こんな時期に、華さんに対して退学なんて嘘…」
「……よくも吐きやがったな」
……。
すみません。
隆史さん、少し怖いです。
久し振りに見ましたね…本気で怒る隆史さん。
普段とのぎゃっぷが、非常に大きくて戸惑ってしまいます。
横で正座をしたまま、微動だにしません。
しかし、すぐにでもお父様に掴みかかろうという気配はします。
…青筋まで立てて。
「……」
なるほど。
麻子さんは、お婆様が倒れられた時、コレを見たのですね。
話には聞いていましたけど…コレですか。
隆史さんから、感情的になりすぎてしまったと、仰っていましたけど……これを蝶野教官に向けて、更には言い合ったのですか。
…実際目の当たりにすると、すぐに想像がつきますね。
他人の為…。今回は私ですけど…。
「……」
私の為に、本気で怒って下さるのですね。
……。
えぇ…正直に嬉しくは思います。
思いますけど…昨日のお姿の落差が激しすぎて…。
この方はどうして、いつもこうなのでしょうか?
こう…もう少し…。
「―まず」
お母様が立ち上がり、このお父様と隆史さんの間に入ってきました。
先程までの青い顔は、もうありません。
私も考えに耽っている場合ではありませんね。
「…華は、この下衆の子は、身篭っていないのですね?」
隆史さんを見る目に、まだ敵意があります。
その目で隆史さんを見下ろしながら、お父様に訪ねました。
それよりも……下衆?
「そうだ。お前の勘違いだ」
「……でしたら何故、この様な場を設けたのですか?」
「……」
仕方がない。
そんな風に、胡座のままですけど、姿勢を正しましたね。
「だってお前…」
そして小さな溜息と共に、理由を話し始めました。
「こうでもして、正式な話し合いの場を作らなかったら…」
「なんですか」
「……お前この小僧に、何をするつもりだったんだよ」
「なっ!?」
お母様が青くなっている。
二、三歩下がり、呆然と立っています。
お父様は頭をガリガリ掻きながら、仕方がないと言った感じで叫びました。
「新三郎!!……入って来て、華達に説明してやれ」
…そして静かに、襖が開いた。
お母様の狼狽振りは、私が戦車道を始めた時の比では、無かったようです。
…実際に本当に私が、身篭っていると勘違いをされていた様で、同じく勘違いをした新三郎ですら、どうしようも無い程だったようですね。
そして、試合会場から戻り次第、隆史さんの情報を色々な所に問い合わせ、調べたそうです。
…その一つ。
いんたーねっとに記載されていた、隆史さんの情報が酷かった様ですね…。
まぁ…何も知らない、第三者からすれば……まぁ……えぇ…。
心配をして下さるのは嬉しいのですけど…、その酷い隆史さんの情報を元に勘違いをしてしまったモノですから…。
「消さなくては…消さなくては……」を、仕切りに繰り返していたそうです。
お母様は特に隆史さんに危害を加える気は、現段階では無かったそうですけど、このまま時間を置いたらどうなるか分からないと、お父様は急いで戻ってこられたそうですけど……。
「百合よぉ…。お前、嫌がらせで米送るのとは、訳が違うんだぞ? それこそ変な連中と付き合いなんぞ持っちまったら、取り返しがつかねぇんだぞ?」
今度はお母様に対して、睨みを効かせながらお説教をするように話しています。
ん? 米?
「新三郎から連絡受けて、急いで何とか戻って来て」
「……」
「こいつの素性調べたら、度肝を抜かれたわ」
「…俺の?」
親指で、隆史さんを指しました。
「…俺の仕事の、お得意さんが出てきたわ」
「え?」
「…島田流家元さん。あんなおっかない女、敵に回すのはゴメンだね」
ちょっと聞いた事のある名前が出てきましたね…。
「華道って言っても、商売もしてんだよ。玄関先やら何やら…例の迎賓館や、お金持ち様のお宅の華を生けたりな」
ここら辺まで来ると、いつものお父様に戻っていた。
バツが悪そうに、また頭をガリガリと掻きながら説明をしています。
「百合。お前はどうにも気性が激しい所がある。こうやって少しづつでも、ガス抜きしないと、俺が言っても信じねぇだろうが」
ひすてりーは、勘弁してくれと仰っていますね。
「しかし」
「あん?」
説明を受けている最中も、ずっと隆史さんはお父様を睨んでいました。
その隆史さんが、お父様に対してまだやはり、怒っているようです。
「……華さんに対しての、あのクソ悪趣味な嘘をつく必要は、あったんですか?」
「あー…退学の件か?」
「そうです。精神的なストレス。ショック。…酷かったと思います」
「……」
「正直、あの時…華さんが泣いてしまってでもしたら……俺はあんたを、ぶん殴っていたかもしれない」
「…ほぉ?」
……え?
…………えっと。
……。
「…あの嘘と、今回の茶番はな、華とお前に対しての戒めでもあったんだよ」
「……戒め」
何を…?
戒め……?
それに、今はっきりと茶番と認めましたね。
「まずは、本当に小僧がどういった人間かってのだな。まぁ…本当に遊びで、華に手出してたらって、疑いが完全に晴れていた訳じゃねぇからな」
まぁそれは、もういいやって手をヒラヒラさせていますね…。
えぇ…イラつきます。
「…親の俺が言うのもなんだけどよ。華……たまに天然が、すっげぇだろ?」
「はい!」
隆史さん!?
はいって何ですか! 即答しましたよね!?
しかも結構、力強くしましたよね!?
「今回の件もそうだが…華」
…急に話をふられました。
何ですか…もう。
「お前、少しは言葉を選べ。…頼むから少し考えてから、発言してくれ」
「あ~……」
「あ~って何ですか! 隆史さん!」
失礼な! 何も考えていないみたいじゃないですか!!
「実際問題、お前の不用意な発言のお陰で、自分の母親を勘違いさせていた。…俺が何も考えなかったら、本当に先程の話になっていたかもしれねぇんだぞ?」
…。
「お前はどうにも昔からそうだからな…。去年、俺が浮気していると勘違いされた時も、お前が原因だったんだぞ…。しかも相手はお前って、勘違いされたんだぞ!?」
「……華さん。何言ったんですか…?」
き…記憶にありません。
「だから今回、百合にもそうだが、少しお灸をすえてやろうかと思ってなぁ」
……。
…お灸?
嬉しそうに……いえ、楽しそうに仰っていますね。
……そんな事で? え?
「…だからって…いくらなんでも、アレは無ぇだろうが」
…隆史さんは、まだ怒ってクダサッテマスネ。
「お…お待ちなさい。少なくとも、貴方の女性にだらし無いと言うのも、誤解を生んだ一端。貴方の様な輩に、夫を責める権利はありません」
えぇ…、先程からお母様もヒドイデスネ。
いくら何でも、誤解だとお分かりになったのですから、その様な物言いは…ドウカトオモイマス。
ナントイウカ…。
お灸…。
そんな事の為だけに、それこそ私に一言言えば済む問題を、こんなに大きくしたのですか?
隆史さんも仰っていましたけど、退学だなんてあんな嘘までついて…。
そうですか。
えぇ、そうですか。
分かりました。
「……」
「隆史さん? どうしました?」
「…い、いえ」
隆史さんが座布団を持ち、人一人分、私から離れて座り直しました。
どうしたのでしょうかね?
「…オトウサマ?」
「な…なんだ?」
本能が察したのか、ちょっと逃げてしまいましたね、はい。
多少感情的になったとしても、もっと言ってやろうとは、思っていたのですけどね?
この親父の言いたい事は、少しは分かる。
でも、やり方というか、タイミングというか…何にせよ頭にきた。
やはり、どうにも身内というか…知り合いが、どうにかなりそうになると、自制が効かなくなるな。
ガキみたいじゃないかと、思う時もあるが、こればっかりは性分だから仕方がないとも思う。
最近少し開き直ってしまった。
それに、先程言った言葉は本当だ。
実の父親だろうが、知ったことかと。
男相手だろうから、余計にだろうか?
本当にぶん殴っていたかもしれない。
…はい。
そんな俺のマジギレしそうな状態を、綺麗にぶっ飛ばしてくれました。
冷静になりましたよ?
えぇ!
ぶっちゃけ怖い!
華さんの雰囲気が、急激に変わった…。
なんというか、それを中心に場の空気が、歪んでいるようだった…。
「お父様は、今回の件は誤解だと分かっていらっしゃった。私達にお灸とやらをすえる為に、隆史さんも仰言いましたが…この様な茶番を開いたと?、」
「…おぉ。そうだな」
親父様をまっすぐ見て、微笑みながら今回の件を簡潔にまとめた。
はい。微笑んでいますね…。
「 ふざけないでください 」
「「 」」
家鳴りだろうか…なんだろうか?
ピシッっとした音が、部屋の隅から聞こえきた…。
姿勢良く、綺麗に正座した華さんが…恐ろしい…。
「普段からフラフラと、家にも滅多にいないのに…。この様な時だけ、父親面しないで下さい」
バッサリいったなぁ…。
「…いや、華。こんな時だから帰って来たのだけ…ど?」
おい、父親。
なんで娘にびびってるんだよ…。
「そもそも、誤解だと分かったのは何時ですか? 私、そもそも隆史さんに異性として、何も感じません。あの様な誤解…心外です」
「」
ま…まぁ、二回目だし良いのだけど…。
「…華。そりゃちょっと、小僧が可哀想だろ…」
同情された…。
その同情の言葉にすら、顔色を変えない華さん…。
「…何時ですか?」
いいから早く吐けと、催促をする。
…癖なのだろう。
また頭を掻きだした。一つ大きな溜息をして喋りだした。
「はぁ……今朝だな。大洗学園の…それこそ戦車やってる娘達に聞いて回って分かった…というか確信した…」
「「 はぁ!? 」」
…俺と華さんの声が綺麗にハモった。
どうもこのクソ親父は、今朝方から朝早く、それぞれのご自宅訪問で実際に俺の事を聞いて回ったそうだ。
時間が多少掛かるから、新三郎さん達に…例の黒塗りお車お迎えで、時間を稼ぐように指示を出していたとの事。
朝っぱらから、女の子の家を一軒づつ回ったそうだ…。
よく不審者として通報されなかったな…。
「それで、杏会長の事を知っていたのか…」
「まぁ、なんだ。小僧が、誤解ばかりを生む性格だと分かったしな。…男っ気が皆無だった華が、いきなりこんな事ってのは…おかしいとは思ったんだよ」
……この親父。
「情報は生が一番だな! いやぁ…噂と出回ってる情報と照らし合わせたら、爆笑しちまったよ!」
楽しそうに、今度は隠すことも無く笑い始めた…。
いや…俺、この親父殴っても文句言われないと思う…。
「多分、また変な噂がまた広まると思うが、それはすまんな小僧!」
「は?」
え…何を…なんて聞いて回ったんだこの親父!?
何、楽しいそうに顎なでてやがる…。
「いやぁな? ポニテの…生徒会の娘かな? 胸が凶悪な娘な? なんか小僧が、ヤクザの娘に手を出したの?…とか何とか、つぶやいてたからよぉ」
「楽しそうに言ってんじゃねぇー!!」
何してんのこの親父!!
いかん! 柚子先輩に後で、誤解を解いておかないと!!
「いやぁ…同じ反応する娘が、結構いたのが笑ったわ!」
「」
完全に現在進行形で、絶対に誤解が拡散してんじゃねぇかよ!!
女子のネットワーク怖いんだぞ!?
…。
笑ってんじゃねぇ!!
「…しかしそれも、普段の貴方の生活態度から来る事ではないのですか?」
本当に掴み掛かりそうに、前屈みになった俺を制したつもりなのか、華さんのお母さんが、口をだしてきた。
なんだろう…。
もう復活したのだろうか。また座布団に座り直し、俺をまた睨みながら言ってきた。
「お母様」
「華!?」
今度は、母親に顔を向けた。
まだ微笑んでいるのが、不気味だ…。
それに気がついたのだろう。お母さんが、ビビってる…。
両親揃って…。
娘の名前を呼ぶ声が、完全に裏返っていた。
「まず最初に。…誤解だと判明した時点で、隆史さんを下衆呼ばわりしたのを、謝罪するのが……スジデハ?」
「は…華」
「隆史さんを見知った方が、隆史さんをどの様に言っても、自業自得でしょうし、正直…楽しくはあるのですけど…」
頬に手をやり、困った様な顔で呟く。
いや、楽しいって…。
それでちょこちょこ、黒い笑顔を俺に向けていたのですかねぇ…。
「何も知らない、第三者に言われるのは……非常に不愉快です」
あ…あの……華さん? え? どしたの!?
「まず、隆史さんに謝罪をして下さい」
「なっ…!?」
お母さんが、俺の方をチラチラ見ている。
多分、こんな華さんは初めて見るのだろうな。
酷く困惑している。
おい、隣のクソ親父。何を笑ってんだ。
……まぁ今更、謝罪なんてし辛いだろうな。
マゴマゴしている。
何かを言い出そうとはするのだろうが、プライドだろうか? まだ疑っているのだろうか?
言葉を発するのを躊躇している。
俺は別に、慣れているからそんなに気にしてな……
「 謝 り な さ い 」
……。
静かに言った。
特に声を荒げるとかでも無く、とても静かに…。
親に対して、嗜める様に言い捨てた華さん。
躊躇している母親に対して、イラつきが見える。
はい。メチャクチャ怖い。
ホラーの域デス。
「…確かに隆史さんは、軽薄そうに見えますし、他校の…色々な学園艦に「女性」の仲のよろしい方が沢山おります」
ん?
「誰に対しても誤解を生むような発言して……それこそ色々な女性を釣り上げては侍らせて…」
…は…華さーん。
「…おかげで、沙織さんの事件以降…私の胃は荒れる一方だと言うのに、挙句前回のテント前の様な事も…」
あの…。
目を閉じて、肩をプルプル震えさせながら、頭が少しずつ下がっていく…。
手を握り締めてますね…はい。
「それを見ている周りの人達の気持ちも、少しは考えて頂きたいと常々思いますし……何故あぁも、女性からの必要以上の「すきんしっぷ」を、素直に受け入れているのとか…」
あ…あれ?
「聞いていますか!? 隆史さん!!」
「え!? 俺!?」
矛先こっちに向いた!?
バンッと畳を叩いて、こちらを見てる。
目がマジデス。
「……は…華が、ここまで声を荒げるなんて…」
お母さんも驚く所そこ!?
俺と目が合った為か、我に戻ったのか…。
華さんも、少し興奮してしまったと、気がついたようで顔を少し赤らめた。
とにかく咳払いを一つして、また姿勢を綺麗に戻しました。
クソ親父は、先程から完全に笑い出している。
今度は下をむいて、笑いを噛み殺しながら震えている。
「しかし隆史さんは、他人の為に本気になれる方です」
ここでフォローされましてもね?
え?
「…私の友人含め、多分他校の方もそうでしょう。自分をなげうってでも、何とかしてくれる…その人の為に全力を出してくれる…そして怒ってくれる。そういう方です」
若干言葉使いが優しくなった…直後、フッと目線をそらして一言。
「まぁ…それが見境なさすぎて、すごい関係性になってしまっているのですが……」
あの…褒めてくれているんですよね?
フォローしてくれたんですよね!?
遠回しに責められてる気がするのですが!!??
「お父様もそうです。隆史さんを小僧呼ばわりは酷いと思います……というか、何を先程から笑っているのですか…」
完全に笑いを堪えられなくなった様で、笑い声が漏れ出している。
片手で顔を押さえながら、もう片方の手で膝をパンパン叩きながら震えている。
「…なんだよ、華」
「……何ですか」
笑いすぎて苦しいのか、涙目になっている。
そんな涙目を挑発する様な目に変え、それでも笑いながら、華さんに凄い事を言い出した。
「お前、こいつにもう、やられちゃってるじゃねぇか」
「…は?」
「はっ! 何が異性として何も感じないだ。いやぁ~…華にここまで言わせるとはなぁ。小僧、お前すげぇな。これで何人目だ?」
「」
嘘だよ嘘。ナイナイ。
今の言われ様で、鈍い俺でも分かった。
わかったけど…。
「ですから…。隆史さんとは、ご友人です。何でも色恋にしないで下さい」
「男女間の友情なんて、あるわけねぇだろが」
華さんの返答をバッサリと一刀両断した。
ハッキリ言ったなぁ…。
「距離が近くなればなるほど、結局はそういった事になんだよ。現にこの小僧は、それで面白い事になってるんだろ? 昨日の「テント前事件」とやらは、その為に起こったんだろうがよ」
「
男女間の友情とやらは、正直俺も否定派だ。
というか、そうなった…。
友達だと思っていたのに、なんか昨日凄い事になったし…。
選べって言われたら、俺も選べる。というか、選べた。
まぁこの選ぶって言い回しは、嫌なんだけど…。
ダージリンや、ケイさん…まぁ、普通にそういった関係になる事に、抵抗は全く無い。
まぁ…そういう事なんだろう。
華さんとそういった関係になるのも…まぁ。うん。
普通に大丈夫だよな。……怖いけど。
でも俺は、みほを選んだ。選んでいる。
」
「……」
あ、華さんに睨まれた。
「隆史さん」
「は、はい!?」
「 口 を 閉 じ て い な さ い 」
「」……ハイ
華さんの嗜める様なセリフは、ぶっちゃけメチャクチャ怖いっす…。
さっきのお母さんに言ったセリフも正直、怖かったよ?
すいません…また声に出てましたか…。
「華。お前が、こいつを意識したのは、つい最近…っというか……大洗での誘拐事件。…お前の友達が、攫われた事件の後…辺りだろ?」
「……は?」
華さんの声の温度が、更に下がった…。
というかこの親父、どこまで調べたんだよ!?
あの事件での俺の事って、ちゃんと隠して欲しいって頼んで置いたのに!
「いやぁ実はな、百合が新三郎に命じて、お前を記録していた映像を、俺も見てたんだよ」
「「 」」
あ…お母さんと新三郎さんの目が死んだ。
「 お 母 様 」
「」
いやぁ…西住家も島田家もそうだけど…金持ちの考えている事はよくわからん…。
盗撮は犯罪です。
はい、これは華さん怒っていい。
まぁその事は後にしろと、親父様の話が続く。
「あの事件の後、お前の態度…目線。全てが一変した。気が付いてないのか?」
今更だけど、それ今しないといけない話?
俺本人の目の前でそれ話す事?
「あ~お前も鈍感だからなぁ…。んじゃ、そういった目で、こいつを一度見てみろよ。ちゃんと考えてやってみろ」
「…は?」
考えてやれと言われた手前、嫌でも少し考えてしまったのだろう。
「考えてやれ」って言い方が汚い。
俺の為って言い方で、否応無しに考えてくれたのだろう。
親父様を見ていた視線が、俺の目に移動してきた。
一度考えだしてしまえば、最後まで考えてしまう。
まぁ…華さんに限って無いだろうからいいけど…。
「……」
すっごい真顔…。
数秒間、見つめ合う形になってしまったけど、あまりに真剣な目をしているものだから……その……怖い。
なぜだろう。
なぜ俺はこの場で、華さんに睨まれているのだろう…?
「」
しばらく動かいないでいると、華さんの顔が、鼻で笑う…という感じで、一瞬口元が緩んだ。
そのまま、俺と反対方向を向いてしまった。
「……!!??」
…どしたの。
なんで肩が震えてるの?
耳真っ赤ですけど?
「あの…華さん?」
流石に心配になった。あの…怒ってません?
「ひゃい!?」
あ…あれ?
さっきのドス黒いオーラが消えてる。
「ち…違いますからぁ!!」
「…え?」
一瞬こちらを振り向き、なんか涙目で叫び、また顔を反対方向に向けてしまった。
ここまで、赤くなる人初めて見たよ…。
「…違います違います。えー…と、アレは沙織さんの事で…えーと。大体いつも考えてしまっていたのは、どうせまた私の胃が痛くなる様な事になりそうだとか…」
「……あ…あの」
「そうです! 準決勝戦前だというのにも関わらず、またフラフラ出かけて行ってしまった時とか……み…みほさんが……その……」
「え~と…」
ブツブツと早口で呟きだした。
華さんもそんなに早く喋れるんだァ…とか、失礼な事考えているしか無かったヨ。
段々と猫背になっていく彼女を見て、そんな事思ってました。
「……」
「私にはまだ早いといいますか…ありえませんよ…えぇ、ありえませんよぉ」
「……」
「そもそも! 私にはまだ良く分かりませんし、隆史さんには、みほさんという方がおりますし。沙織さっ! ……また……胃が…」
沙織さん?
誰に言っているのか分からないが、多分これアレだ。
考えてる事、口にしてるだけだね。
自分なりの言い訳であろう言葉が出てくる…ってな感じですかね。
「そうですよ…こんな毎回毎回、フラフラ大事な時に限って、他の……じょ……!!」
なんだろう。
そこまで言って、気がついたように動きが止まってしまった。
電池が切れたというか、ブレーカーが落ちたというか…。
上半身をひねり、半身だけ俺に背を向けて、ボソリと言った。
「……わかりました」
音声だけが響いてくる。
そんな感じ。微動だにしない。
その状態で、小声でつぶやかれると…また華さんに対して恐怖値が上がりますよ。
「…えぇ分かりました。分かりましたとも」
ふっふふ! ウフフフフフと、小声で笑いだした…。笑いだした!?
怖!! こっわ!! カルパッチョさん思い出した!!
「私が隆史さんを異性として、見れなかった理由…」
ゆらり、顔だけこちらを向き一言だけ言った。
「隆史さん……貴方、父そっくりなんです」
「……」
え? 俺とこのクソ親父と?
えー嘘だー。
「毎度毎度、全国どこにでも…知り合いに頼まれたとかで、年中家を空ける父…といい……同じような理由で、みほさん残して、試合前に他県にまで行ってしまわれる隆史さんといい……」
「ちょっとまて! 俺とこの小僧が似ている!? こんな偽筋小僧に!?」
クソ親父がそこに食いついた。
…うん。
今なんつったこのクソ親父。
「私、子供心に毎回毎回、帰ってくる父親から、女性物の香水やらの匂いがするのをとても、嫌悪していましたし…」
「おら! どうだ小僧!!」
華さんの会話を無視し、おもむろに着物の上を脱いだ親父。
ふん! っと、腕を前に出し、自信の筋肉を膨れさせる。
この親父、華道の家元だろう? 何その筋肉。
そして傷だらけの体。
まぁ……俺としても。
催促され、挑発されては仕方がない。
乗ってやる。
「毎回帰ってくる隆史さんからも、大体女性の香りがしますし……」
おもむろに俺も上着を脱ぎ捨てて、対比出来易いように同じポーズを取る。
偽筋だと? このクソ親父…。
「ぬ!?」
「ふん!」
ここの所、忙しくとも日々の鍛錬は欠かさん!
ジリジリと近づく二人。
なんだこのシンパシーは。大体見る部位が一緒なのか、交互に見合わせる。
首筋から、胸筋にかけての筋が…。
…チィ!
「なぜ脱いでるんですか!!」
あ。
突然の声に、親父と二人揃って華さんを見る。
やべぇ…途中から話し聞いてなかった…。
「いや…先に脱がれたので…これも礼儀かと……」
「どこの礼儀ですか!!」
え…違うの?
先行を取られたからなぁ…うーん。
「ちっ、まぁいい。少しは認めてやる。……偽筋では無かったな」
「はっ、クソ親父殿も、歳の割には良い大胸筋…」
認める所は、ちゃんと認める。
それは向こうもわかっていた様で、人を偽筋呼ばわりをした事をすぐに撤回してきた。
そのまま、パァンという大きな音と共に、強く握手をした。
「何、仲良くなってるんですか!!」
「「 はっ! 」」
「…そもそも二人共、私の話を聞いていましたか?」
「「 キイテタヨ? 」」
はぁん? という様な、見下したような疑いの目が痛い。
…いかん、若干この黒い華さんに慣れてきた。
普段のおっとりとした感じのギャップで、この目をする華さんは、これはこれでよし!
「…はぁ。隆史さん」
疲れた声で呼ばれましたね。
なんかスイマセン。
「はい…」
「お父様は、最初から全て分かっていらしたのなら、やはり私の案で、すぐに済んだ話ではないのでしょうか?」
「…お互いの部屋に行ってない、んな事する時間も無いって奴ですか?」
そうですと、返事を貰うと、すぐに横の親父様が反応した。
…いくら何でも、ここまでやるくらいだし、それで納得するはず無いよ。
「…華。それでは流石に、俺は納得しないぞ?」
ほらな?
「…どうしてですか。状況が分かっているなら、予想がつくのではないのですか?」
「馬鹿を言うな…。男はその気になったら、何時でもそこがホームグラウンドなんだよ!」
グッっと手を握り締め、無駄にいい笑顔と声で叫んだよ…この親父。
「貴方達は、親子か何かですか!!」
同じこと言った手前、俺は何も言えません…。
…。
ハーハー息を吐いている華さんの迎え側。
華さんのお母さんが、ちょっと赤くなっとる。
……。
考えるのはやめよう。うん。
「あ。それと華。お前の勘当を解くというのだけは、本当だぞ?」
急に話題を変えてきたな…。
その件の話も残っていたか?
「……は?」
「百合から聞いてびっくりしたわ。なんで戦車道とやらやるだけで、勘当なんだよってな」
あー…それは、俺も思った。
多分その時の現場に俺がいたら、絶対になんかやってたかなぁって思うくらい。
「お前が、自身に足りないものを補おうとして、始めた事なんだろ? 別に構わんよ。好きにしろってな」
「……」
「事実いい感じで、影響があるみたいだしな。生ける花にもそれが出てるってよ……百合が言ってたぞ?」
何かお母さんが、言おうとしているが、それを片手で制している。
なんだろうか、この親父。結局、その件も収めてしまう腹積もりだったのか。
「まぁ、住む所も仕送りもそのままで、勘当もあったもんじゃないがな」
はっはっはと、腰に手を掛けて笑いっている。
……。
でも、俺もこの親父もまだ上半身裸だ。
完全に、今回の件をまとめに掛かりだした。
が。
「……お父様」
「おう」
「なに勝手に、話を終わらせようとしているのですか?」
「」
……え。
あれ!?
「…もういいです。…結局何も解決していません」
華さんは、未だ黒いままの様です。
えー…今、終わりそうになっていませんでしたか? あれ!?
「結局、お父様もお母様も隆史さんに謝罪はありませんし、もはや誤解の件は、私にはもうどうでもいいです」
吐き捨てる様なセリフと共に、お母さんと新三郎さんを睨みつける。
「挙句…………盗撮」
「「 」」
約二名が、また絶句してますね…。
まぁ…うん。いくら娘の事心配だとしてもなぁ…犯罪はいかんヨ。
「もういいです…もう結構です! 愛想が尽きました。こちらから、五十鈴家と縁を切ります」
「「「 」」」
あ。絶句しているのが、一人増えた…。
「では、もうここには用はありません。今まで育てて頂いて、ありがとうございました」
あ……これマジモンだぁ…。
完全にキレちゃってるよ…。
綺麗にお辞儀して、もう用は無いと立ち上がる華さん。
すげぇ…ここまで言い切るか…。
「華ぁ!」
「待て、華。 お前、生活はどうするつもりだ? 仕送りの蓄えはある…かもしれんが、住む所とか名義はこっちだぞ?」
住んでいる寮なり、アパートなり…まぁ、人質ならぬ物質。
学校もどうするつもりだと、当然の疑問を華さんに投げかている。
しかし……クソ親父の方は、お母さんと違い、どこか楽しそうだった。
「それは……あっ。隆史さん」
「はい!?」
急に振られた…。
他人事みたいに聞いていた訳でも無く、多分一時の感情に身を任せての発言だろうから、冷静になったら何とかしようとは思っていた。
が、いきなり俺に振られてちょっと焦った。
「……責任。取って下さるのですよね?」
「………………ハイ」
言ったけ!? 言ったっけそんな事!?
いやいや、そりゃ自身がした事ならいくらでも責任取るけどさ!!
有無を言わさぬ笑顔で、聞かれたのでYESで、答えるしか無いでしょうよ!!
…こりゃ一種の脅迫だよ。
「…では、そういう事ですから、心配は御無用です」
「は?」
ちょっと待って…何言うつもりだ…。
「隆史さんが、養って下さるみたいです」
「「「「 」」」」
すっごい良い笑顔で、言い切った…。
キラッキラしてる…。
「少なくともこれで、住む所は大丈夫ですね」
「」
ふーって。何安心した顔してんの!?
「ちょっ!? 待ちなさい華! 意味は分かって言ってるのですか!? え? 同棲!? え!?」
完全に取り乱して、オロオロしているお母さん…。
それとは、反対に何か察したのか、笑いだしたクソ親父。
「いやいやいや!! ちょっと待って、華さん!? え? どういう事!? 俺ん家に来るつもり!?」
「責任取って下さるのですよね?」
「だからって、寝食を共にするのは、流石にぶっ飛んでますですよ!! 意味わかって言ってますか!?」
「あら、日本語が変ですよ?」
いつもの華さんに、いきなり戻った…どういうつもりだよ…。余計に怖いよ!
「…それとも隆史さんは、私と寝るのはお嫌ですか?」
「言い方ぁ!!! 意味分かって言ってんですか!!??」
流石に洒落にならんから、全力で止めようと、それこそ叫びながら立ち上がる。
視界に入った、お母さんは……泡吹いてる…。
華さんが感情的になると、一々発言が恐ろしくなるな!
死角から、もう一人の親。
……クソ親父が俺の肩に手を置いて来た。
「な。俺の気持ちも分かるだろ? 心配になるだろ?」
今回のこの茶番の事だなよな!?
何、爽やかな顔して言ってやがる!!
分かる! 分かるけども!!
ウフフと笑ってはいるが、完全に正気では無いだろう華さんを共見る。
なんでこう…動きが被るかな…この親父と…。
「なんですかぁ?」
「「 …… 」」
あー…みほに何て言おう…こりゃダメだ。
目がマジだ。
「もういいですか? では参りましょうか? ……隆史さん?」
「」
どうしよう!? ほんっとにどうしよう!?
大洗学園に来て、何気に一番厄介な事になってる!!
なんで腕組むの!?
「なぁ小僧」
「……なんですか」
何が言いたいんだよ。
ニヤニヤすんなよ!
「……華に手を出すなとは言わんが、遊びで手を出したら……本当に蟹かコンクリ選ばせるからな?」
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そして現在。
大洗港。
学園艦へ帰る為の船を待っている。
まだもう少し掛かりそうな為、近くのベンチに座って休みながら待っている。
五十鈴邸からの脱出後は早かった…。
ほぼ引きずられる様な形で、俺は華さんに連れ出された。
当然、家の者は追ってくる。
それすら無視をして、ツカツカと俺の手を引き、さっさとタクシーを拾い、ここまで逃亡に成功した。
というか、この港から船に乗るしかないのだから、先回りされていると思ったのだが、ここには誰もいなかった。
あのクソ親父が何かしたのだろうけどな。
今回の件、何か楽しんでいる様な感じが強かった。
「……」
すでに日は沈み、黒くなった海と、地平線の片隅に光る街の灯を眺めている。
…はい。
華さんが一言も喋ってくれません…。
今も両手で顔を覆い、ベンチに座りながら蹲っているようですね。
他の客はいない。
夜の待合室のベンチは、完全に俺達の貸切状態。
よって!
……気まずい。
その気まずい状態をしばらくの間、維持継続するしか無かったが、ポーンと、電子音と共に電光掲示板のランプが光った。
船の到着を知らせるランプ。
この港に、もう少しで到着するという合図…。
どうしよう…。
もう余り時間がない…。
俺も俺で、これからの事を考えないと……。
あと20分程で、船も到着する。
いい打開策も見つからないまま、時が過ぎてゆく。
あぁ…。
「…ん」
視線を感じた。
いつの間にか、華さんは顔を上げこちらを眺めている。
普通。至って普通。
ポーカーフェイスなのか、何なのか。とにかく普通。
その始終無言だった華さんが、やっと口を開いた。
「…隆史さん」
「はい。なんですか?」
「……今回は、大変ご迷惑をおかけしました」
目を伏せ、少し赤みが残る顔を下げられた。
「いいぇ…。ある意味、俺の自業自得でしょうし」
華さんのとんでもない発言からとはいえ、完全にこれは身から出た錆だろう。
でもなぁ…俺としては、本当に普通に接して来たつもりでの事だから…。
どこをどう、注意していけばいいのやら…。
華さん実家の茶番劇は、結局の所、誤解は解けたのだろう。
解ける事は、解けたのだろうけど…今度は、勘当状態が更に酷くなったヨ。
「あの…私も勢いとは言え、隆史さんにご迷惑をかける発言をしてしまって…これでは、あの元父親の言う通りですね…」
「」
……普通に元父親って言った。
この人も頑固だよなぁ…。親子って似るものなんだなぁ…。
その場の勢いで、勘当を言い渡した母親。
その場の勢いで、絶縁を言い渡した娘。
…親子だなぁとしか、言い様がない。
「先程の言葉は、忘れて下さい。住む所も何とかしますから…」
「……何とかって、どうするんですか?」
嫌な予感しかしねぇ。
「ほら…今は夏場でしょう? ですから公園とか『アホですか!?』」
「あほ!?」
まったく…。
「馬鹿な事を言わないでください。それにあの親なら、住む所も仕送りも止めませんよ…。シレッっと普通に帰ればいいんですよ」
「嫌です♪」
笑顔で返された…。
やはり頑固だ…こりゃ絶対に帰らん。
本気で家に泊めるか? 無い無い。流石にみほに悪い…。
もうそれは浮気とかどうのの問題じゃない。
お人好し通り過ぎて、ただのバカだ。
…最悪、みほの家に泊めてもらって…もしくは沙織さん呼んで…。
いやいや。会長に頼んでみるか? あの人なら住むとこくらい…。
「…」
「な…なんですか?」
またジーと眺められている。
少し目を細め、睨まれる様に。
それに気がついた俺と目が合うと、今度は閉じてしまった。
「…勢いで言ったとはいえ、ご自宅に転がり込む様な発言。お嫌ですよね…」
「嫌と言うか、みほに悪いし…何言われるか分からないし……最悪刺されそうだし……」
頭を掻きながら、携帯を取り出す。
みほへ先に、連絡をしておいた方がいいだろう。
現在の状況を、説明しておこう…。
「……それは、みほさんとお付き合いをしていなかったら…どうしてました?」
「え? まぁ…最悪俺が、車で寝泊りすりゃいい話ですし……」
電話の方がいいか?
メールにしとくか…。
通話最中に、また華さんの不用意な発言が炸裂するかもしれんから…。
爆弾ですかこの人は…。
「つまり泊めてくれたんですか?」
「…アパートに殆ど寝に帰っているような感じだし、寝泊りは車すれば、問題無いでしょうし」
あれ? これなら、みほも納得するかな?
……しねぇな。
はっ! する訳ねぇ…。
「そうですか…」
「ちょっと今、みほに連絡してみますよ。今日くらいは泊めてくれると思いますから」
「……無理にでも、帰れと仰らないのですね」
「はっはー…今回の件で、華さんが頑固なのは分かりましたから…。まぁ…今日くらいは、何とかしますよ…。ただ明日、冷静になってもう一度、電話でもいいから親と話す事。それが今日、見逃す条件ですからね」
そう言っておけば時間は稼げるだろう。
俺の所に、本気で転がり込むつもりは無いだろう。…あの発言は、親へのあてつけだな。
どうするつもりか、多分考えてなかったんだろうな。
稼いだ時間で、やはり会長だ。杏会長に頼めば、生徒会の不思議な力で何とかしてくれるだろう!
……
…………
あれ?
黙っちゃった。
突然の沈黙が、気味悪かった。
華さんを見てみると、また俯いていた。
目は髪で隠れて見えない。
髪から覗く耳だけが、少し赤くなってるなぁ…って分かるくらい。
「…色々と、元父親から言われて考えてみたのですけど」
…やはり元父親。
こりゃ俺からも、もう一度あの両親になんか言っておいた方がいいかな。
「仕方がありませんが、納得してしまいました。……納得できました」
「何がですか?」
怖っ。
現状態の華さんには、何を言われるか分からないのが怖い。
どうにも言い回しが無く、直球でこの人言うからなぁ…。
だから寝るだの、責任とれだの…誤解を生む様な発言が、バンバン飛んで……というか投下してくるのだろう。
「どうやら私。隆史さんが、好きみたいです」
足元で、携帯の落ちた音がした。
丁度どこからか、着信があったのだろう。
バイブで震え、ガタガタとした音も聞こえる。
「異性として、まったく意識しておりませんでしたが…」
「」
「先程考えて、少しでも意識してしまったら…もうダメでした」
笑顔でこちらを振り向いた。
スッキリした顔をしています。
すっごい直球で言われてしまった。
言葉が出ない…。
「あぁでも、どうこうする気はありませんよ? 隆史さんには、みほさんがいますからね?」
「」
「みほさんだからこそ、納得しているのでしょうね…。私もそうですし」
「」
「ですから、余りお気になさらず。私が言っておきたかっただけですから」
無理です! 無理に決まってんでしょうが!!!
切り替え早すぎですよ!? え?
華さんの発言は、色々と……こう……どこかしらに、一撃必中なんだろう…。
そして大体それで、大破する…。
「みほさんだから納得できる…ですからね? 隆史さん」
「……」
もはや呆然とするしか無かった。
「隆史さんが、浮気したり…。別の方と付き合ったりしたら……」
嬉しそうに…。
先程までの感じも無く。
本当に嬉しそうに、輝く笑顔で言われた。
「私、どうするか分かりませんからね?」
はい。閲覧ありがとうございました。
次回から決勝戦へとのお話になっていきます。
あ~あと、なんか本当にR-18EPを見てみたいというのが増えたので、
ちょっと考えて見ました。
過去の話の別ルートですね。
……悲しみの向こうへ、紐なしバンジーの展開にしかならないというか…
しほさんメインでいってみると、確実に泥沼化した……。
気が向いたら描いて見ます。
……本当に読みたいものなのかと思いますが…。まぁはい。