千代さんに見せれられていた資料の数々。
正直、俺や西住姉妹だけでここまで捜査…というか、調査をしてもらっていたのかと思うと、ありがたいのだけど少し疑問にも思う。
「島田 忠雄」の件のついでと、言っているけどもなぁ…。
島田流家元である、千代さんの独断というだけではなかったようだ。
家元の上。
まぁなんだ。小姑みたいな…相談役というか…。
どうにもそのご隠居様連中の逆鱗に触れたとの事。
準決勝戦のテント前で、俺と愛里寿の件を、正式に公表すると千代さんは言っていた。
偽装婚約の件も含め、勘当した島田の名を持っている母も絡んでいたしね。
亜美姉ちゃんや自衛隊。関係ない他人様まで巻き込んだし…島田の面目丸つぶれ。
ガマ蛙の隠居の話も無くなり、もうどうなるかは、千代さんにも分からないそうだ。
……面目や…歴史があるような組織。
権力もある、金もある。
こういった連中は、下手なヤクザなんぞ可愛い様に思えるくらいに……怒らせると怖い。
下手に俺は、関わらない方がいいと、この話は終わりとばかりに、もう一つの資料を渡された。
資料というか…いくつかの写真。
部屋。
狭い部屋。
この部屋で、あのガマ蛙「島田 忠雄」が発見されたという。
賃貸の一室の壁中に貼られた写真。
常軌を逸したこの部屋。
4面、天井にまで俺の写真が貼られていた。
正確には、上から貼られていたそうだ。
まほちゃん、みほ。
俺の写真の下には、彼女たち姉妹の写真で埋め尽くされてた。
普通の写真では無く、雑誌の切り抜き。又、それをコピーした用紙が殆どだった。
どれも綺麗に全部、どこかしら破損していた。
何かで刺した傷。切り裂かれた傷。焦げている物もある。
拗らせたストーカーの部屋みたいだ。
まぁ…似たようなモノか。
それは、彼女達の写真の上に貼られた俺の写真にも言える事で、彼女達の写真より損傷が激しい。
いやぁ…ここまで思われても困る。
男のストーカーなんて冗談にもならないや。
「……」
大洗、黒森峰の生徒達には護衛がついた。
今回の決勝戦は辞退。もしくは中止になんぞできないだろう。
…何より廃校の件もある。
それに戦車道関係ないけど「無頼の輩如きで、西住流が逃げるなどありえない」とか、言いそうだよな。しほさんの場合。
だから、それを理由に、まほちゃんとみほに、中止しろとか言わないだろうしな。
やっぱり、戦車道が絡むと人が変わるなぁ。
…と、思った時期が俺にもありました。
はい。確かにおっしゃりましたけどね。
顔青くして、小刻みに震えながら言われてもなぁ…あぁそうだ。
親子関係が多少なりとも修復したら、……親バカに磨きがかかったんだっけ、この人。
無理をするベクトルが、おかしな方向を向いてるなぁ…。
…うん。
まさかガードする護衛の人……千代さんに協力求めたとしても、100人単位で用意するとは思わなんだ…。
「……」
そして俺の呼ばれてた理由。
こんな事、当事者としても高校生の俺に、報告なんて態々しないだろうよ。
特にこんな異常な部屋の写真なんて見せるわけ無い。ただ恐怖心を煽るだけだ。
だからの提示。
俺をここ、島田家に置き、試合が終わるまで避難していろって事だとさ。
部屋の惨状を見て、即座に俺を避難させると言いだしたのが、母さんだった。
だからだろうか?
昨日、母さんがいた時に、この話をしなかったのは?
「恐らく、犯人の狙いは隆史君です。もちろんあの姉妹もターゲットでしょうけどね」
まぁ簡単な理由だ。
護衛対象は、少ない方がいい。
特にメインターゲットになる人物が少ないのなら、尚更。
「ですから、隆史君には、明後日の試合が終わるまで、家に滞在しておいて下さい。これは貴方のお母様の御意向でもあります」
親として…かね?
いい加減、子離れしてくんねぇかな、あの人。
……わかってるさ。
俺の昔の事件での、もう一人の犠牲者。
母さんはどうにも俺が生まれる前。
…男の子供が欲しかったようだ。
ずっと同性に囲まれた人生を過ごしてきた…というのもあるのだろう。
初子は、姉さん。…女の子。
戦車道はしていないが……なんか母の影響が、別方向にあったようで…うん。
…多段保有者の道を選んで、日々人をぶん殴っている。
何? 総合格闘技でもやるつもり? ってな感じでデスネ。
まぁ…いいや。
二子の俺が生まれて、大層喜んだそうだ。
昔は俺が幼いってのあったのか、なんか…もう、俺男の子だよ? 女の子じゃないよ?って位の甘やかし方だった。
父さんが引いたって言っていたからなぁ…。
男の子なのにお姫様扱い。そんなベタベタだった。…んなことしたから、姉さん格闘技にのめり込んじゃったんじゃなかろうかと思う。
……男の俺に戦車道を勧めて来たり…何やらせたかったんだろ…母さんは。
そんな息子。
そしてあの事件。
凄まじかったと。
今日初めて聞いた。
俺を納得させる為だろうか?
初めて話してくれた。あの後の話。
当事者の一人のしほさん。
俺は気を失ってしまっていたから知らなかった。
本来ならしほさんも、同じように怒り狂う所だと…まぁ想像は付くけど話してくれた。
そんな私が、冷静に対処できる位、頭に上った血を強制的に下げられた…と。
その時の母さんを見たしほさんが、淡々と言った。
いつもの俺が言う冗談では無く…あれは本物だった。
あれは本物の殺意だったと。
大人が来て、現場の状況を少し考えれば、中学生でもすぐに分かる。
その現場には、5人いた。
蜘蛛の子を散らす様に逃げ出したのは4人。
俺をぶん殴った…現在の主犯は、逃げる事も無く立ちすくんでいた様だった。
逃げた四人を母さんは、ものの数分で全員発見、捕縛した。
雑木林に逃げようが、田園に逃げようが。民家に片隅に隠れようが…。
まとめて捕縛し、引きずりながら連れてきた。
…4人。
俺の対処もあり、他の大人達まで来てくれたので、その場は収まった。
しほさんも、まほちゃんとみほの事もあり…探しに行った、母さんから頼まれた俺の事もあった。
後は特に問題もなく、その場の流れで事は収まった。
心配をかけたとは思ったのだが…その事件の反動がすごかった。
母親というものは、総じてそうなのだろうか?
一瞬、死んで取り残されてしまった。
前世の母さんの事を思い出してしまった。
…。
…それ以降。母さんの態度…というか、俺に対して色々と変わっていた。
体を鍛える。
その事を初め伝えて、色々とやり始めたら、過剰なくらい協力的になった。
まぁそれが現在にまで至るのだけど…。
やられる位ないならやってしまえ、それができないならば、やられない身体に。
挙句、他人に任せる位なら、私が鍛えるとばかりに……まぁなんだ。
超脳筋思考に至ったのだろう。
やめて…本当にやめて下さい…。
「はぁ…隆史君。青森にいる時、家へ殆ど帰らなかったって聞きましたけど?」
疲れたように、しほさんが話題を変えてきた。
「え? まあ…はい。殆どバイト先に泊まり込みというか、居候していた様なものでしたね」
週末は帰っていたけどね…。
「……その事で尾形さんから、頻繁に愚痴を聞かされていましたよ…さらに転校して、大洗に行ってからは、結構な頻度で電話が来ます」
…何してんのオカン。
「隆史君も高校生なんですから…あの人も、そろそろ子離れしてくれませんとね」
貴女が言いますか?
「なんですか?」
「…いえ」
「?」
おっといけない。顔に出そうになった。
「まぁそんな訳で、しばらくゆっくりしていって下さい」
締めとばかりに、千代さんが横から口を挟んだ。
決勝に出れないという、悔しい気持ちもあるし、正直嫌だ。
しかし…二人共心配をしてくれての事だし、何となく気持ちも分からなくもない。
ふむ…さてと。
「…たまに私は、隆史君が分からなくなりますね」
「何がですか?」
「もっと食って掛かってくると…どうやって納得させようかと、そんな事を昨日から考えていました」
「……」
「本心では無いにしろ、最悪……あの場には、「戦車道に関して何も出来ない貴方は不要」…と、少しきつい言い方までしようとまで思っていましたし…」
「あら、ひどい」
少し、冗談めかした返事にも顔色すら変えない。
真面目に目を見てくる。
先程まで、愛里寿の呼び方に世界の終わり…見たいな顔をした人とは思えないなぁ。
「…何か…無茶な事考えてません?」
探るような目。
それは、しほさんも同じだった。
先程まで、愛里寿になんかまほちゃんに暴露され、膝から崩れ……まぁいいや。
「いやぁ…どうやって、母さん含めた3人を納得させるかなぁって…考えてますけど?」
「……」
「無茶はしませんよ。意味が無いし、しほさんと千代さんの気持ちを裏切る事にもなりますし……大人の事情も絡んでいますしね」
俺が会場に行ける条件を、頭の中で探している。
俺がなにをされてもいい服装なら…防弾チョッキ、防刃チョッキ等着込めばいいけど、目立ちすぎるし。
さて、どうしたもんか。
突然、スッっと目が細くなる千代さん。
「また、しほさんの名前から呼びましたね?」
「……」
お願いします。
シリアス脳、帰ってきてください。
しほさんが、ため息をつけながら、千代さんを嗜める。
なんだろう…何を言っても、もうダメな気がするんですけど!
「千代さん? 負け犬の遠ぼっんん!!! そういうのは、もういいですから。話を続けませんか?」
おーぅ。
すげぇなんか、得意気になって胸を張ったヨ。
いやぁ…でけぇ。胸を張るからさらにスゴイ。
嬉しそうなのは…なんだろう、喜んでいいのだろうか?
…。
さてと、言い合い始めちゃったからもうどうにもならないな。うん。
慣れている自分が、成長したのか、何か麻痺したのか。
あれは戯れているだけだからまぁいいかなぁ…。
いいよね?
囮になるってのも、無理だろう。
結局の所、まほちゃんもみほもいる。
俺がいたとしても、露骨に狙って来たりし無いだろうし…。
どちらかといえば、沙織さんの事もある。どうにも第三者を狙ってきそうだ。
…。
…………。
「お兄ちゃん?」
「ん?」
一度席を外していた、愛里寿が帰って来ていた。
相変わらずの家元を、ジト目で眺めていたけど、呼びかけて俺が気がついたら、その視線を合わせてくれた
…また定位置と言わんばかりに、膝に座り直したけど…。
「もう少しで業者が来るから…、後はあの二人を納得させるだけ」
「…え?」
「叔母さまには、話をもう通しておいた。だから後は、あの二人のみ。明日の決勝戦までには何とかする」
話は千代さんから、すでに聞いていたのだろう。
まぁ愛里寿が今回絡んでいるらしいから、知っていてもおかしくは無いけど…業者? え?
全て分かっていると、淡々としている。
叔母さまって…母さんか!?
「犯人…」
「」
あ…愛里寿さん?
雰囲気がいつもと違うけど? どうしたの!?
モコッっと俺の身体を抱きしめる様に、また腕を回してきた。
俺に聞かせないようにか、顔を見られたくないのか…。
顔を身体に埋めて、顔を隠して呟いた。
…背筋が凍る様な…そんな絞り出した声で。
「絶対に許せない」
…今朝一番でも思ったが、愛里寿の様子がおかしい。
しほさん、千代さんに対する言動もそうだけど、あまりよくない傾向だ。
早々になんとかした方がいいかもしれない。
……取り敢えず、千代さんに……胃薬もらおう…。
多分そろそろ穴が開くかも知れない…。
◆
「やっほい、みほちゃん!」
「…こ、こんにちは。小母さん」
決勝戦会場の富士演習場。
他の試合の時よりもイベント仕様で、出店とか戦車展示をしているとか…なんかお祭りみたい。
決勝戦だけあって、各戦車用に臨時ガレージまで用意されていた。
結構、人通りも激しい所に設置されて目立っていたけど、特にみんな気にする様子もない。
その、試合前最後の戦車整備点検中。
その最中、見慣れた顔の人が挨拶に来てくれた
この前見たばかりだったんだけど…。
……どこかで見たことあるような…奇抜な格好をしていた。
「ごめんねぇ…さっき生徒会長さんにも言って置いたんだけどさ」
会長? 先に、学校代表である会長に挨拶も兼ねて、現状を謝罪したと言っている。
謝罪?
「馬鹿息子ね。ちょっと所用で間に合いそうにないの。ごめんね」
うん…その格好見たら、何となく察しがついちゃった。
それ…ベコの着ぐるみですよね?
頭だけ外しているけど、独特の胴体部分で分かっちゃう。
「あら、隆史さん間に合いませんでしたかぁ…」
「…そうですか、ちょっと残念ですね。まぁ西住殿! 試合が終わるまでには来てくれますよ!」
「……隆史君、相変わらずだねぇ…」
「職務怠慢だな」
隆史君のお母さん再度登場で、その場にいたあんこうチームの皆が集まってきた。
「あの…でも、隆史さんのお母様? その格好は?」
「んぁ、隆史の仕事の代わりって奴だね。まぁ私の事情で遅れてる訳だし、この着ぐるみの宣伝位はやってやろうかなぁって!」
生徒会長に、大洗納涼祭で隆史君が着て宣伝をしていた着ぐるみ……ベコを今回も使う様だった。
隆史君が、到着するまで代わりに着て回ってくれるっていうのだけど…。
「…小母さん。ちょっと楽しんでませんか?」
「あ、分かる!?」
相変わらず、子供の様な人だ。
とても楽しそうに、元気に返事をしてくれた。
あれ? 少しデザインが変わってる。
前は毛並みしかなかった体が、少し服を着ているようになってるなぁ。
後、マントの色が青になってる。
隅に置かれた頭部の部分が…青い毛色の……普通のモヒカンだ。
でもなぁ…着ぐるみの中の人が、こんな往来で顔が分かるようにしていていいのかなぁ?
「ごきげんよう」
「あっ…こんにちは」
聖グロリアーナ。
ダージリンさん…と、オレンジペコさん。
今回も試合を見に来てくれたんだ…。
「試合前の激励に来ましたわ。…後、ペコ」
「はい」
ダージリンさんの少し後ろに立っていた、オレンジペコさんが一歩前に出た。
その顔は、特に私を睨む訳でもなく、前に見た普通の顔。
私に怒った時とは全然違う…。
「西住 みほさん」
「は…はい」
礼儀正しく、腰を曲げて…頭を下げた。
「先日は、大変失礼しました」
「えっ!? いえ!!」
「……感情的になり、ただ貴女を罵倒する様な…失礼な発言。申し訳ありませんでした」
表情は見えないが、やはり普段の彼女らしからぬ行動、言動だったのだろう。
ダージリンさんも、横で目を伏せ黙っている。
私もいきなり頭を下げられてしまい、びっくりしてしまった。
「あっ、頭を上げてくださいぃ!」
「……すみません。こんな往来で、少し卑怯でしたかね」
焦った私の返事に、ゆっくりと頭を上げてくれた。
嫌味でもなんでもなく、本当に申し訳なさそうに。
人通りも結構あるし、目立ってしまう…。
「ま、隆史さんが良く使う手ですわよね?」
あ。ダージリンさんが嫌味を言った。
「オレンジペコさん…その事は、もういいんです。あれは確かに私が…悪かったんですから…」
「…いえ、私も…私自身、人に言える様な立場でも無かったのです。…申し訳ありませんでした」
「謝らないでください、私は大丈夫ですから!」
言ってしまった。
感情的になって吐き出してしまった。
そんな感じの叫びだった。
言われるより、言ってしまったオレンジペコさんの方が、ダメージが大きかったみたい。
あの後、しばらくふさぎ込んでしまったのだと、ダージリンさんが言っている。
横で、赤くなりながらパタパタ怒っていたオレンジペコさん。
前回の準決勝戦で、隆史君と何かを言われた様だった。
…それで謝る踏ん切りがついた…か。
「試合前に言う事では、無かったですね」
「いえ、大丈夫です。私もスッキリしましたから! で、ですからこの話は、もう終わりにしましょう!?」
お互い少し肩が軽くなった。そんな気がした。
だからもう終わり。
言葉が少ないかもしれない。足りないかもしれない。
シコリは少しあるかも知れない…でもなんか、スッキリした。
…だからもういい。
彼女は…隆史君の事は、口にしなかった。
なにか言いたそうにしていたけど、少し苦笑したような顔をして、一度目を閉じた。
すぐに目を開き、ハッキリと言った。
「…まさか、貴女方が決勝戦に進むとは思いませんでしたわ」
謝罪を受ける側の私が、もういいと言っているので、これ以上の謝罪は蛇足になると話題を変えた。
顔はもう、大丈夫。普通に笑顔でいてくれた。
「…私もです」
だから私も笑顔で返そう。
私達を見て、安心したのか。
ダージリンさんも、微笑んでくれた。
「そうね。貴女方はここ「貴女方はここまで毎試合、予想を覆す戦いをしてきましたよね」」ペ…ペコ!?
「今度は何を見せて頂けるか、楽しみにしていますね?」ペコォォ!?
「……が…がんばります」
信じられないモノを見るような顔で、ダージリンさんが、オレンジペコさんを見ている。
あ…あれ?
「ペコ!? え?」
「ダージリン様は、一々意味ありげに言おうとするから横から掠め取られるんですよ」
「色々考えた言葉と…練習したのは、ペコも見ているでしょう!? なんで? え!?」
「ダージリン様は、回りくどいんです」
練習したんだ…。
見たこと無い様な、アワアワしたダージリンさんを他所に、しれーっとした顔で、明後日の方向を見てるオレンジペコさん…。
あ~…隆史君が気に入った理由が、何となく分かっちゃった。
「ミホー!!」
「ん?」
あれは…サンダースの。
ジープに乗って、サンダースのケイさん達がやってきた。
そのジープが、目の前に止まると、勢いよく飛び降りた。
スカートで、その動きはちょっと危ないんじゃぁ…。
「またエキサイティングで、クレイジーな戦い。期待してるからね!」
相変わらず、気持ちのいい人だ。
ウィンクをしながら、親指を立てた。
「ファイト!!」
「ありがとうございます!」
満足そうな顔をして、手を腰に置いた。
そのままキョロキョロと顔を動かし、誰かを探している様だった。
…うん。
「あれ? タカシは?」
「…そういえば、いませんわね」
「ダージリン様? 先程から気がついているのに…白々しいですよ?」
はは…。
オレンジペコさんが、ダージリンさんに何か厳しい…。
「残念ですが、隆史君は所用でちょっと遅れて来るそうなんです」
「あら、そうなの?」
「「そうですか…」」
残念そうな声が、約二人重なった。
息が合っているのか…合っていないのか…。
「…………何、アイツ。決勝戦だっていうのに、まだあそこで、油売ってんの?」
「アリサ?」
運転席の横、助手席で…アリサさんだっけ。
そのアリサさんが、ちょっと意味深な事を呟いた。
というか、え? 知っているの?
「え? どういう…「はいはいーい!!」」
後ろから、大きな声がした。
あ。忘れてた。一番忘れちゃいけない人を忘れてた!!
「」ヒィッ!
なぜだろう。
笑顔で、アリサさんを見ている。まっすぐ見ている。
「みほちゃーん、この子達は? 隆史を探しているって事は…なに? 他校の知り合い?」
「あ、はい。隆史君の…その……お友達です」
嘘は言っていない。言っていないよね?
関係がちょと複雑すぎて、なんて言っていいか迷っちゃった…。
「そういえば…みほさん。こちらの…奇抜な格好の方は?」
「え? あぁ……隆史君のお母さんです」
「「「 !! 」」」
あ。
約3人の目の色が変わった…。
「あら、ワタクシ…いえ、隆史さんのお義母様でしたか」
「……ダージリン様ァ?」
「へぇ~……タカシのマミーねぇ。ちょっと…いえ、かなり怖いわね」
…ケイさんが、何かに気がついた様だった。
分かるものなのかなぁ?
ニッコニコしている小母さんに、少し物怖じしているようだった。
すごく警戒色が強い…。
「そっかぁ。今顔、思い出した。結構なスター選手だってのに…………この子達が被害者かぁ…なんかごめんねぇ」
準決勝のテント前の事を言っているのだろうなぁ…。
制服とか他校とか…ダージリンさん達有名人だし、顔を思い出したって事で、色々と繋がったのだろうなぁ。
「いやぁ…馬鹿息子がお世話かけました…、もしあれなら訴えていいからね?」
「小母さん!?」
「いえ…そんな。初めまして、聖グロリアーナ隊長のダージリンですわ、お義母様」
「同じく聖グロリアーナ。オレンジペコです」
「……」
あ。小母さんの目が光って唸ってる。
優雅にお辞儀をする二人を、スキャンしているかの様に見ている…。
私逃げたほうがいいかなぁ…。
「え…っと。サンダース隊長のケイです…」
グリンッっと顔を向け、ケイさんを今度はスキャンしてる…。
なんか、ケイさんが、いつものフレンドリーな雰囲気を崩している。
どうしたんだろ…。
「ミホーシャ!」
「あっ」
「このカチューシャ様が。見に来てあげたわよ!」
今度はカチューシャさんが、ノンナさんに肩車されて来てくれた。
朝ごはんを何回か一緒に食べた仲…というのも変だけど、初対面の時に比べ大分空気が和らいでいた。
最初は始終睨まてれいたしなぁ…よかったのかな?
「黒森峰なんか、バグラ「かちゅーーーーしゃちゃん!!!」」
「小母さん!?」
激励…だろう多分。
その激励をくれている途中であろう、カチューシャさんを小母さんがノンナさんから、もぎ取った…。
え…今、一瞬空飛んだ? 飛んだよね!?
「あぁ! 久しぶりカチューシャちゃん! ぁあぁぁ!! かわぅいいわ!! たまんない!!」
「」
ノンナさんから、奪い取ったカチューシャさんを、小母さんが頬ずりしている。
目が完全にやばい人だった…。
「」
あぁ…うん。カチューシャさんは白目向いてる…。
「来ていらしたのですね。お久しぶりですね、お義母様」
「ノンナちゃん、お久しぶり! 相変わらず胸の大きさエグイわねぇ!!」
……え?
ノンナさんが、カチューシャさんを奪われた事に対して反応を示さなかったのが疑問だった。
それでどころか、慈愛の目で見ているのが不思議だった。
知り合い? え!?
「あいっかわらず、この子いいわ! 可愛いわぁぁ!!!」
「はい、カチューシャは最高です」
「」
…温度差がひどい。
「みほさん」
「ダージリンさん?」
色々な疑問と共に呆気に取られている最中。
ダージリンさんが、私の疑問に答えてくれた。
「ノンナさん…いえ、プラウダ高校は拠点が青森でしょう?」
「そうですね」
「隆史さんの実家も、現在青森でしょう?」
「…そ、そうですね」
「隆史さんのお義母様って、戦車道の師範をされているのでしょう?」
「……」
「ノンナさんが、黙っているとお思い?」
「」
「それでも、西住流ですし…他校になんて教えるはずが無い…多分、そう思いますでしょうけど…」
私の疑問を先読みされた…。
「あのお義母様、護身術もご教授されているようで…」
「」
「ノンナさん。毎回、私達にメールで、隆史さんのご家族とのお付き合いを報告してきましたわ」
「」
「…写真は送られて来ませんでしたから、私達、お義母様の顔すら知りませんでしたけど…ナルホド…」
あ。
私とダージリンさんを、ノンナさんが横目で見てきた。
……。
一瞬、口元がにやけた。
・・・イラッ
◆
いやぁ~…まいった。
驚いた、驚いた。
なに、あの馬鹿息子。
すっごいモテるわねぇ…。
モゲレバイイノニ。
誰に似たのか…、うん。お父さんね!
やっぱり私の旦那の遺伝子ね!
まぁ…。
良かったわ。
学校の娘達といい…良い人間関係が出来ていて。
まぁ女性関係は、自業自得だから自分でなんとかしなさい。
ダージリンちゃんとノンナちゃんとケイちゃん。
私の見立てだと、あの五人の中じゃあの三人ね。
一押しは、ダージリンちゃんかしらねぇ…。
息子の好感度は、胸の大きさと比例するって教えて上げたら、オレンジペコちゃんがすっごい顔してたわねぇ…。
いいわね。あの娘もいい! ちっちゃいけどね!!
カチューシャちゃんは、がんばらないとね!
みほちゃんには悪いけど、一応全員にアドバイスを上げておいた。
隆史には、取っ替え引っ変え女を変えるようなら、ぶん殴ってやろうと思ったけど…。
みほちゃん以外の娘達の、あの諦めない姿勢を見ていたらねぇ…チャンス位上げたくなるわよね!
…まぁ今度、ゆっくりと話す時間もあるでしょう。
その時にでも、もうちょっと詳しく教えてあげましょ。
「……六人」
この、変な着ぐるみの頭部を装着。
変な着ぐるみねぇ…。
敢えてあそこで、顔を晒す。
熊のぬいぐるみの中身が私だと公表しておく。
…愛里寿ちゃんも、面白い事考えたものねぇ…私の要求も同時に叶えるかぁ。
……。
昔の事がある。
何にせよ。
引きこもっていて欲しかったけどねぇ…。
でもこうなってしまったら、後は隆史自身で決着をつければいい。
―が。
私にも思う所はある。
ただ黙っているのは、性に合わない。
だから、せめて鬱憤晴しくらいはさせてもらおう。
…ガレージ前だと分かりやすかったわねぇ。
あそこで、露骨な悪意やら何やら…よくない視線。
私の態度に…ケイちゃんは気づいてたわね。
他人の悪意に反応できる…昔何かあったのかしら。
…やっと終わらせられるかしらね?
これが終われば、私も少しは子離れできるかしら?
はっはー。しほ達に愚痴を言うも減るかしらねぇ…。
…まぁいいや。
お仕事しましょ。
さて。
「…狩るか」
はい閲覧ありがとうございました
ダー様は、ポンコツかわいい。
ママン見立てはダー様一番。
ありがとうございました