転生者は平穏を望む   作:白山葵

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はい。
しばらくシリアスが続きそうで病んできそうですので息抜きで書いてみました。
ifかもしれないし、本編かも知れない。
息抜きです……飛ばしてもらってもかまいません。


閑話【 番外編 】 ~男子会です!~☆

「では、本日の練習はここまで!」

 

河嶋川嶋先輩の挨拶で、本日の練習は終わり。

各チーム、戦車をしまう為に納車を始める。

 

「ん。書記の奴、今日は練習に来なかったな」

 

操縦席に乗り込み、麻子さんが独り言の様にボソっと呟いた。

そういえば、今日は連絡も取っていない。

 

「あぁ、隆史殿なら教室で、なんか無線機弄ってましたよ?」

 

「無線機?」

 

「…はい、試合中に音声スイッチ入りっぱなしになるの…どうも、スイッチ部分が少し壊れていたらしくて…」

 

「修理してるんですか? まぁ隆史さん、そんな事も出来るんですか?」

 

「隆史君、昔から手先が器用だから…まぁ不思議じゃないかな?」

 

「昼休みも、少し図面…というか、説明書らしきものと睨めっこしてました! なにか、部品交換だけでいいみたいですけど」

 

「にしては時間が掛かり過ぎだな…ただサボる口実が、欲しかっただけじゃないのか?」

 

「…麻子と一緒にしちゃダメだよ」

 

「……」

 

ん~。

練習にも現れないって事は、会長達も知っているとは思うけど…。

隆史君、無断でそういう事しない人だしね。

 

「……」

 

「…な…なによ、麻子」

 

ん? 真顔で、麻子さんが沙織さんを見つめている。

どうしたんだろ?

 

「……いや。最近、沙織はどうにも書記の肩を持つなと、思ってな」

 

「そんな事…無いよぉ?」

 

「……」

 

あれ?

 

華さんが、目を逸らした?

優花里さんが、顔を背けた?

 

どうしたんだろ?

 

戦車の外からは、他の戦車の駆動音が響いている。

多分、他のチームも納車が終わったみたいだった。

 

外からも…うさぎさんチームだろうか?

元気のいい声が聞こえた。

 

と、同時に。

 

ザ…ザザッ……

 

無線機から、雑音が突然流れた。

通信が不安定な時に良くなる音。

 

『……カ…ユ…………ウ………………マ』

 

ん?

 

『……ブ……だろうか?』

 

途切れ途切れの声…らしきものが、いきなりクリアな声に変わった。

隆史君の声だ。

 

『―っと、電源入ったし…これでいいかな?』

 

後ろからの、雑音と共に安堵した様な声も聞こえた。

まだ教室で作業をしていたのだろうか?

 

『尾形ぁー。できたか?』

『おぉ、スイッチの摘み部分が、大分老朽化していたみたいだった。…随分と緩いと思っていたけどさぁ……壊れていたのかよ……』

 

 

「隆史君!?」

 

電源を入れて、テストを入れているみたいだった。

単純な修理で直るところを長時間かけてしまい、落胆している様な声が聞こえる。

まぁ良くある事かな?

 

『電源入れて大丈夫か? まだ練習しているんじゃねぇの?』

『こんな時間だし…もう終わってるだろ』

『…おーい。タカシコンビ。もういいか?』

 

別の男の子の声が、聞こえた。

まだ放課後の教室に残っているみたい。

 

「チッ。書記の奴。やっぱりサボって遊んでいるじゃないか」

 

「サボっているのとは違うんじゃないでしょうか? 無線機を持って動かすのも大変ですし……話しながら修理していのでは?」

 

「まぁ男子学生が少ない学校ですからね、私達のクラスでも、男の子達で結構集まってますよ?」

 

「そだね、優花里のクラスって何人いるの?」

 

「隆史殿合わせて5人ですね」

 

「それはちょっと、肩身が狭そうですねぇ」

 

無線機を通して、ちょっと音声は悪いけど、その隆史君を含めた3名の男子学生の声が聞こえていた。

 

「では、沙織さん。こちらから話しかけて見てはどうでしょう?」

 

「あー…まだ私達に聞こえてるって事、教えて上げないとね」

 

会話をしているのが、丸聞こえだったし、他のチームから笑い声や怒号やら……まぁ河嶋先輩だろうけど…が聞こえてきたしね。

 

『―で、だ。尾形。お前の意見を聞こう』

『自分の……大洗女子・戦車道乙女の戦闘力ランキングだっけ?』

 

ん?

…戦闘力?

 

 

『…野郎同士…包み隠さず…言え!』

『…はぁ…その野郎同士の会話で、毎回虚しくなって終わりじゃねぇかよ』

『うっせぇな! 彼女持ちは余裕で良ござんすね!』

『……まったく』

 

 

「…戦闘力? なんの事でしょう?」

 

先程まで騒がしかった車外が、少し静かになった。

ハッチから顔を出して周りを見渡してたら、誰もいない。

 

…全員戦車の中だ。

 

男の子同士の会話って…まぁちょっと気になる。

でも…

 

 

『あんまり、そういった下世話な会話って好きじゃないんだよ』

『は? お前が言うか?』

『そうだな。他校の女子にまで手を出してるお前が! 挙句、西住さんと付き合ってるのに! 死ね! マジで死ね!』

『……』ドウシロト?

『尾形、こういう話に乗っておかないと……男連中は基本的にめんどくせぇぞ』

『慣れていますね、イケメン君』

『…もう、お前の味方してやらない』

『スイマセン』

『そもそもさお前、戦車道履修者って可愛い子ばっかりだよな?』

『ん…まぁ…否定はしない』

 

 

……。

あれ?

なんで他のクラスの男の子が私の事を知っているんだろう?

剰え、なんで隆史君との関係を知っているんだろう!?

 

 

『んで尾形。お前他校にも知り合い多いよな? 普通ねぇぞ?』

『…まぁ、転校前の知り合いとか多いし…』

『……いや…まぁ、もう疑い晴れたけどさ…西住さんと付き合いだす前ってお前、結構な噂流れていたの知ってる?』

『結構な噂? 知らん。んだそれ?』

『……』

『なぜ黙る』

『……尾形、ホモ説』

『…………』

『しかも相手は中村』

『…………』

『もしくは……』

『…なんだよ』

『……ED説』

 

 

 

「「「「「 …… 」」」」」

 

「男子って…すごい会話するね…」

 

「……同性愛者ではありませんね。確実に。」

 

「華!?」

 

「戦車倉庫の静けさが凄いな」

 

「……」

 

「…EDってのも違うなぁ……」

 

「ん? みぽりん、なんか言った?」

 

「あっ! いやっ!! 何でもないよ!!」

 

「…?」

 

「………………ミホサン」

 

 

 

 

『……いや…まぁいい。理由を聞こう』

『いや、結構簡単な理由だ』

『そうだな。当然といえば当然…か?』

『だからなんだよ!』

『さっきも言ったけどさ、戦車道って可愛い子多いよな?』

『……あぁ』

『そんな中、理性を保っているお前がキモイと』

『……』

『普通なら、誰かに粉かけて成功するなり失敗して、変な噂立つのにな。…お前、何も問題なく過ごしているから…男子学生全員の嫉妬と恨みを込められたんじゃね?』

『…………』

『なぁ…尾形…中村…俺を救ってくれ……』

 

悲しい無言がしばらく続いた…。

流石にこの空気の中、こちらから無線を飛ばすなんてできない。

 

 

『あのな…俺だって、あの中で、すっごい気を使ってるんだぞ? 女の子だらけの中で、男一人ってのはな、ある意味地獄なんだぞ?』

『は? ふざけてんの? は?』

 

 

 

「……書記の奴、アレで気を使ってるのか?」

 

「あ~でも、そうかも…戦車道の事に関して、隆史君って一切口出さないもんね」

 

「そうですねぇ…砲弾の持ち方とか、1年生に教えていた時も、安全面の事でしたし…後は筋肉デスネ」

 

「…」

 

 

『お前らな! あんなミニスカートの女の子が、目の前で戦車に乗り降りしてんだぞ! 目のやり場に困るだろうが!! どんだけ気を使ってると思ってんだ!』

 

 

「「「「「  」」」」」

 

 

とんでもない事言い出した…。

あ…戦車倉庫の静寂が継続してる…。

 

 

『天国じゃねぇか! パンチラ見放題だろ!!』

『見てねぇよ! 俺以外、全て女子の中で、そんな事バレてみろ! 後は針の筵だろうが! 見えそうな時とか、顔逸らしてるよ!!』

『嘘ついてんじゃねぇ! むっつりが!!』

『…………』

『な…なんだよ』

『……マジでな…9対1って割合の中で、男の立場ってのは…地獄なんだよ…村八分なんだよ…………』

『……』

『……』

『で? お前の大洗女子・戦車道乙女の戦闘力ランキングは?』

『…強制的に話を戻しやがった…』

 

 

 

 

「…皆さん、気をつけましょう」

 

「…うん」

 

「そうですね」

 

「……」

 

「はいぃ…」

 

多分、他の戦車内でも同じ会話してるなぁ…。

 

 

『…分かったよ…もう…』

『下世話な話バンザイ』

『では、尾形。現場の人間として教えてくれ』

『1位・柚子先輩 2位・沙織さん 3位・華さん 4位・近藤さん 5位・ぴよたんさん』

『…すげぇな尾形。渋ってた割に、ものすごい早口で即答したな…』

 

 

 

「戦闘力って仰っしゃいましたけど…私3位って…。喧嘩なんてした事ありませんのに…」

「…私、2位だぁ!……でもなんでだろう……あまり嬉しくない…」 

「「……」」

「西住殿!?  冷泉殿!?」

 

…なんの事か分かっちゃった。

これは、怒っていいんだよね? いいよね!?

 

 

『1位の圧倒的な破壊力と包容力。2位の見る者全てを圧倒する存在感! 3位のこれぞ王道! 4位の…あれは卑怯だ…。5位の本当に高校生か?と思わせる人妻感!』

『あ。尾形の変なスイッチが入った』

『なぁ尾形。なんで西住さん入ってねぇの? 戦闘力の大きさじゃなくて、好みだぞ?』

『…みほはな。戦闘力より………推進力だ。そっちの部門なら間違いなくトップクラスッ!!』

『…………なるほど』

『概ね、理解する』

『ありがとう』

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

「西住さん」

 

「…はい」

 

「これ絶対に隠語だな」

 

「そうですね。もう分かりました」

 

「あれ? みぽりん? 顔赤いよ?」

 

 

 

 

 

 

『尾形? お前の知り合い全ての、戦車道乙女の戦闘力ランキングだとなんだ?』

『他校も含めてか?』

『そうだなぁ…』

『すでにノリノリじゃねぇか…』

 

『1位・ノンナさん 2位・エリリン 3位・まほちゃん 4位・柚子先輩 5位・ペパロニって所だな! うんっ!』

 

『で? その心は?』

 

『1位の核弾頭。2位の黄金比。3位…は、うん……ナイショ。4位の…は言ったな。5位の…健康的ってのは…結構な武器になるのな』

『……3位が気になる』

『あれ? お前がご執心の西住流の家元は?』

『しほさん? しほさんは、殿堂入り』

『即答しやがった…その心は?』

 

『尊い…』

 

 

 

 

「ダメですよ西住殿!! ハッチ壊れちゃいますよぉ!!」

 

「またっ!! またお母さんっ!!! またっお母さん!? 後なに!? 3位の理由なに!?」

 

「…みほさんも怒るんですねぇ」

 

「華! しみじみ言ってないで、みぽりん止めて!!」

 

「でも、みほさん。何で怒ってるんでしょう?」

 

 

 

 

『ふむ。1つ気になったんだけどさぁ』

『ン?』

『尾形、転校してから結構、経つよな』

『…そうだな』

『お前、大洗に来てさ。一番ポイント高かった娘って誰?』

『…は?』

『あぁ、昔からの知り合い抜かしてな。初対面で』

『……なんだよ薮から棒に』

『まーま。いいから。参考までに』

『……まぁ…いいけど』

 

 

 

 

「先程から、戦車倉庫内が恐ろしいほどに静かですね…」

 

「…華! 静かに!」

 

「……沙織さん」

 

 

 

 

ふぅ…冷静になれた。

うん。慣れちゃったっ♪

 

昔からの知り合い…プラウダやグロリアーナとか…他校を抜かした。

後は、私やお姉ちゃんも抜かした…隆史君の好み…。

 

「おぉ…みぽりん、冷静になったね…」

 

「沙織さんっ! 初めから私は冷静だよ!♪」

 

「なんか、怖いよ!?」

 

「あ、でもみほさんも、こういった事は気になりますか?」

 

「うん! キニナル! でも…まぁ。多分、隆史君なら大丈夫だと思うから」

 

「あら、浮気の心配無しですか?」

 

「あはは…まぁうん。大丈夫」オネエチャンイガイハ…

 

「おぉ…正妻の余裕……」

 

「……」

 

「みぽりん?」

 

「沙織さん♪」

 

「な…なに?」

 

「側室がいる様な言い方…すっごく嫌っ♪」

 

「」スイマセン

 

 

 

そうさなぁ…と隆史君の声が、また無線から聞こえた。

…会長とか…絶対無線に齧り付いているんだろうなぁ…。

 

『…そうさなぁ』

 

……

 

…………

 

『優花里』

 

一斉に各戦車から何かにぶつける音や、ガタンとか、ゴトンとか大きな音がした。

 

「……」

 

「ゆかりん!?」

 

「優花里さん!?」

 

優花里さんの耳と頬と……色んな所が真っ赤に染まっている。

あぁ…湯気出してる…。

告げられた名前よりも、その症状に皆が心配しだした…異常な程に真っ赤なんだもん。

 

が。

 

『―のお母さん』

 

『『……』』

 

 

……さっきから、喧騒と静寂の区切りが酷い…。

 

皆固まってるなあ…。

 

「は……」

 

「母は…やめて下さいぃぃ」

 

優花里さんが、その場に崩れ落ちて嘆きだした。

 

「他の方とか…もう…どうでもいいですから!! そういうのは良いですから!! 母はぁぁぁ!!」

 

「分かる!! 分かるよ!! 痛いほど分かる!! 優花里さん!!」

 

手を取って一緒に泣いてあげよう…同胞ができました!

 

 

『まったく…もういいか? そろそろ帰りたいんだけど』

『……なんか尾形から、エロい話を今度聞いてみたくなった』

『何言ってんだお前』

『……なんか更にとんでもない事を言いそうで…興味が沸いた』

『……』

『…おい、林田。振りでも何でもなくな…酒を尾形に飲ますなよ?』

『…なんだよ急に!』

『色々聞き出そうと、こいつに飲まそうとする奴が多くてなぁ…』

『……』

『こいつに飲ませた場合…少なくとも、戦車道の強豪校が大挙して押し寄せるから…死にたくなかったらやめておけよ』

 

 

…。

 

そこまで言って、無線が切れた。

多分、無線の電源を落としたのだろう。

 

……。

 

今日の事は、各チームの皆と話し合って内緒にする事にした。

盗み聞きみたいな事をしてしまったのもある。

 

男同士、女同士、それぞれでしか話せない事もある。

 

……だから、今回は胸にしまっておこうという話。

 

……。

 

…………。

 

はい。優花里さん、一言。

 

 

「隆史殿は、秋山理髪店に出禁です!」

 

 

 

 

 

 

 




はい閲覧ありがとうございました。

男子会は元々、ルートPINK用で考えてました。
ただの露骨な男同士の会話。下世話な会話。
大分マイルドにしてみました
…また番外編で描けたら描きたいデス

年末が始まる……胃が死ぬ月がくる…。

がんばります…

ありがとうございました

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