転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第54話 ~ 転生者の役割 ~

 

やぁ、元気? 愛里寿チャン

 

あぁ…そうそう、切るなよ?

大事な、大事な、お兄ちゃんの事だから

大丈夫、大丈夫

俺から愛里寿チャン達は見えないから

見える所からなんて、居場所が割れそうな…あ?

この女?

 

 ― 笑い声 ―

 

そうかそうかそうか

あの髪型変な女も「尾形 隆史」の関係者だったのか

 

あ?

 

 ― 笑い声 ―

 

そんな面倒なコトをするかよ

偶々…本当に偶然です…よぉ?

色んな女に手ー出して…まぁ…お盛んな事だねぇ?

まぁ…どうでもいいかぁ

なぁ…愛里寿ちゃぁん

君、いいのかなぁ?

 

お兄ちゃんを「西住 みほ」に、取られたままで

 

関係ない?

まぁ関係ないねぇ

でもねぇ? 考えてもみなぁ

君がどうにかすれば…少なくとも「西住 みほ」は、現状どうにかできるよぉ?

 

例えばほら…

 

今まさに川の上で………お友達助けようと…してるよねぇ

なんで川に戦車で入ったかは、知らねぇけどさ

ほら、なんかお友達の戦車…助けようとしてるよねぇ?

 

 

愛里寿チャンなら、オカアサンにでも頼んでさぁ…あれ、邪魔できるだろ?

 

タダ、ジャマスルダケデイイ

足元に…驚かす為だけに…狙撃するとかさぁ…

オレのオトモダチを捕まえた時みたいにサァ

 

それで終わるよ?

 

「西住 みほ」は、崩れるよ?

 

前回…ソウ、シタンダカラ

 

前回……昔の事を思い出させて、アゲタンダカラ

 

簡単だよ?

立ち直ってる様に見えるだけだよ?

どうせ、すぐにでも崩せれよ?

愛里寿チャンなら、すぐに分かったんじゃない?

 

自分のせいで、オトモダチが助けられなかった

 

あれが川にでも落ちてしまえば、それまで

 

試合にも負けて

 

学校も廃校

 

自分のセイデ

 

 

 ― 笑い声 ―

 

 

 ― 笑い声 ―

 

 

あぁ…なんだ…つまらん

簡単に拒否したな

 

少しは迷えよ

 

「化物」なんて揶揄されてるってのに…その程度ですかぁ?

 

いいねぇ

お優しいねぇ?

でもさぁ

 

あれだろ?

 

アイツの為って、だけだろ?

 

それは「尾形 隆史」にバレなきゃ済む話でしょう?

 

 

― 笑い声 ―

 

 

できるよ?

 

だって君…「化物」なんでしょ?

 

知ってるよ?

教えてもらったから

誰から…って?

それを言ったら、面白くないダロ?

 

あぁそうそう

 

君を「化物」呼ばわりした奴らの末路は、シッテルヨ?

そいつに聞いたよ?

 

は?

 

 

― 笑い声 ―

 

 

知らねぇのかよ!!

自分で、しでかした事なのに、知らねぇのかよ!!

 

 

― 笑い声 ―

 

 

オカアサンが隠してくれたのかね?

隠蔽してくれたのかなぁ!?

いいねぇ! 恵まれた奴は!!

 

― 笑い声 ―

 

ハァハァ…まぁいいや

 

あ?

 

 …

 

愛里寿ちゃーん

君さぁ、結構な小学校に通っていたよねぇ?

将来が約束された? エリート育成するような? 反吐がでるような学校

 

そんな所に通うガキなんて、その親も大体、簡単に想像できるだろ?

経験があるだろ?

そんなエリート思考の馬鹿な親共を含めてさ

君はそいつらを捩じ伏せた

プライドも、将来性も、何もかも叩き潰したんだよ?

なんで君が、周りのガキ共にいじめらたのか…そうそう

 

思い出した?

うん、そのガキ共ね

親に見捨てられてねぇ

一人、面白い事になったよ?

 

聞く?

 

……

 

うん

返事が無いし、通話も切られないって事は…知りたいんだよねぇ?

いいよぉ

 

えっとねぇ…

 

 

死んだ

 

 

親に殺されたちゃったの

 

君のせいで

 

頭が良いんだろ?

 

なら分かるよねぇ?

 

因果関係…想像できるよねぇ?

 

ある意味、君が殺したようなモノだよねぇ?

 

……

 

だからさぁ…開き直ってさぁ

 

化物らしくなればぁ?

 

 

男が欲しいなら奪えよ

 

他の女が、邪魔なら消せよ

 

 

 

は?

 

 

 

…嘘?

 

 

 

さっきの話?

 

死んだって事?

 

 

……

 

 

…………

 

 

 

― 笑い声 ―

 

 

そうだよ! 嘘だよ!! んな事、分かるわけねぇだろ!!

 

繰り返し、嘘、嘘って、呟くなよ! うっとおしい!!

 

想像しただろ!?

 

連想しただろ!?

 

なるべくしてなったってなぁぁあ!!

 

意味!?

 

無ぇよ、そんなモン!!!

 

 

だってお前、バケモンなんだろ!?

 

バケモンだよなぁ!?

 

えぇ!? 天才少女!!

 

この警備体勢、人員。大体が、お前の発案だって聞いたよぉぉ!?

 

いいじゃねぇか!

 

ガキの規格外だよ、お前!!

 

そうそう!

 

そこにいるんだろぉ!? 他の女達!!

 

…取られるよぉ?

 

持ってかれるよぉぉ?

 

ほら!

 

ほらほらほらぁ!

 

開き直れよ!!

 

はっ!? 化物!?

 

『 いいねぇ! 化物!! カッコイイじゃん!! 』

 

何を躊躇してるか…知んねぇけどおぉぉ

 

 

だからさぁ…

 

 

 

『 いいんじゃない!? 別に化物でもぉぉ!? 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鶴姫 しずか…。

 

 女性が現れ、そう名乗った。

 

 その時、その女性から渡された、黒い携帯電話から着信が入った。

 

 例の天才少女が、一瞬訝しげな表情を取り、先程までいた護衛の方に合図を送った。

 会話内容を録音…もしくは、第三者の判断材料を増やす為か、着信を取った直後、スピーカー設定にした。

 

 携帯から聞こえる、不快な声。

 

 会話の内容…冒頭部分で、名前が出た時点ですぐに分かった。

 これが私に話してくれた…過去の事件の犯人。

 

 会話内容が、支離滅裂だった。

 なにが言いたいか良く分からない。

 言いたい事だけ、一方的に喋っている。

 

 気味が悪い。

 

 ただ、目の前の天才少女の様子が、徐々に変わっていった。

 

 明らかに狼狽えている。

 

 明らかに震えている。

 

 足も震え、手も震え。

 

 最後には繰り返し、小さく呟き続けている。

 

 

 ―化物―

 

 

 ただひたすらに、携帯の向こう側の男は、それを繰り返し続ける。

 

 なんなのだろう…。

 

 最後の言葉…になった発言。

 

「お前がっ!!」

 

 それを聞いたとたん、天才少女が腕を振り上げた。

 

 

「お兄ちゃんと同じ事を言うなぁ!!」

 

 

 足元に携帯を叩きつける。

 少女の力でも十分だった様で、折り畳み式の携帯が、軽い音を立てて壊れた。

 

 肩で息をする様に、呼吸が乱れている。

 

「っ!!」

 

 即座に、それを踏みつけた。

 

 踏みつけて…すり潰すように…。

 

 ザリザリと音を立てて。

 

「ノ…ノンナ?」

 

 カチューシャが、私に声を掛けてきた。

 鬼気迫る形相に…先程までの差に。

 …怯えていた。

 カチューシャだけではないでしょう。

 

 正直、私も恐怖以外の感情が無かった。

 

 彼女が叫ぶのが珍しいのか…護衛の方も若干、狼狽えている。

 

「何…この男……」

 

 ケイさんが、携帯の声の主に、嫌悪感を出して呟いた。

 

「…あれが多分…、隆史さんの言っていた…過去の事件の犯人」

 

 事件の事を知ってたの私だけ。

 もう変な優越感は無い。

 

 隆史さんには申し訳ありませんが、掻い摘んで皆さんに説明しよう。

 

 …本当に申し訳ありませんが。

 

「あ…あの、愛里寿さん?」

 

 その前に、あまりの変わり様に心配したのでしょう。

 唯一、ある程度会話をした事のあった、オレンジペコさんが声をかけています。

 まだ携帯を踏み続けていた、彼女の動きが止まり…ゆっくりとこちらを振り向きました。

 

「……」

 

 振り向いた少女顔は…敵意しか持っていませんでした。

 

 全然違う。

 

 目に涙を溜め…ただ無言で、こちらを睨みつけていました。

 

 何かに呑まれた。

 

 何かに取り憑かれた。

 

 その様な…文字通りの……必死な表情。

 

 冗談でも何でもなく…これは、殺気。

 

 先程の「鶴姫 しずか」と名乗った女性も、異常な空気を察したのでしょう。

 頼まれたとはいえ、自身の持ってきた物が原因…少し…暗い表情でした。

 

 ……。

 

「…なに?」

 

「あ…いえ……」

 

 最早、何も言わせないような気迫…。

 オレンジペコさんも、完全に気押されていますね…。

 

「…っ!」

 

 オレンジペコさんの真後ろ。

 

 大画面に映し出さている映像。

 

 みほさんが、アップで映し出されている。

 

 それに対して顔を上げ、睨む…本当に憎しみをこめたような…そんな目で。

 それに釣られ、私達も視線を移す。

 その姿は…川に並んだ、大洗車輌。

 

 一列に並んだ戦車…。

 車外に出て…あれは…。

 

 水の中にでも入ったからでしょうか、エンストでもしたのでしょう。

 

 ピンクのウサギのマークが…偏っていますね。

 

 …流され始めています。

 それを…助けようしているのでしょうか?

 

 体にロープを…

 

「……」

 

 …それを一人…睨み続ける少女。

 

 ……。

 

 酷く重い空気…。

 

 皆さんもそうでしょう。

 

 私もそうです…。

 

 睨み続けている少女を見て…。

 

 もう、どうしたらいいのか…分かりませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

「おー…みほの奴、何する気だ? あれ」

 

「!?」

 

 天才少女が、大きな影に包まれた。

 

 …なんでしょう。コレ。

 

 少女の後方に、気が付けば立っていた。

 

 場の空気を読まない…この風貌。

 

 黄色い熊の着ぐるみが大画面を見上げていた…。

 

「隆史!?」

 

 アンチョビさんが声を上げました。

 

 …隆史さん? え?

 

「…隆史様……なんですか、その格好」

 

「……なんというか…ひどいですわね…」

 

「……」

 

「…な、なに? この空気…」

 

 間の抜けた声が、熊の口から聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 ----------

 ------

 ---

 

 

 

 

 

「…お兄ちゃん」

 

「おー…本当にここの所、愛里寿が甘えてくなぁ…」

 

 天才少女…いえ、もうやめましょう。

 

 愛里寿さんが、隆史さんの足…足ですよね?

 黄色い毛むくじゃらに、抱きついた状態で動きません。

 

 隆史さんはその頭に、手を置いて軽く撫でていますね。

 

 頭の熊の被り物を外し、先程の携帯の会話を録音したデータを、片耳だけイヤホンを使って聞いています。

 隆史さん曰く、この状態に追い込まれた会話内容を、もう一度愛里寿さんに聴かせるのは酷な為…との事。

 

 ただ。

 

 聞いている最中も、特に怒る訳でもなく、涼しい顔で聞いています。

 …てっきり、本気で怒ってしまわれるのではないかと、少し心配でした。

 

「はっはー。…本当に昔、俺が言った様な事を言ってるなぁ」

 

「…」

 

 その様子を、皆さん黙って見ていますね。

 

「聞き終わりましたよ」

 

 そう一言言って、護衛の方に録音された機械を返しました。

 その後、すぐに護衛の方は、離れて行きました。

 

「…この野郎、相変わらず人のトラウマえぐってきやがるな……なぁ? 愛里寿」

 

「……」

 

 そう言ってまた、頭を撫で始めました。

 

 顔を一度、大画面に移し、みほさんの映像を眺めています。

 オレンジペコさんから、試合の流れの説明を黙って聞き…一言呟きました。

 

 

「みほはもう…大丈夫だろ?」

 

 

 その声は、今まで私達が聞いた事も無い声。

 

 

「……」

 

 

 安心したような…。

 

 やさしい声…。

 

 やさしい目…。

 

 

 

 

 ………。

 

 

 

 少し…胸に痛みが走りました。

 

 

 ……。

 

 

 

 

「さて!! まずは愛里寿だな!!」

 

「!?」

 

 そう言って、無理やり愛里寿さんを引き剥がし、子供を持ち上げる様に、両手で天に掲げました。

 

「愛里寿。お前は基本的にまず、頭で考えてから行動するタイプ…だから、初めに言っとくわ」

 

「……」

 

「あいつは、取り敢えずお前を、味方につけようだとか、そういった考えは、まず無いよな?」

 

「…うん」

 

「みほの時と同じ、お前の触れちゃいけない部分を露骨にえぐって来てるな」

 

「……」

 

 隆史さんの声は明るい。

 奇妙な程…明るい。

 

「あの電話で、なにかお前が行動を起こせばラッキー! 程度だなぁ…。ありゃ、単なる嫌がらせだ。気にすんな」

 

「……」

 

「……態々、引きずる様な言い方しやがってなぁ…」

 

「う…うん」

 

「……」

 

「……」

 

 そのまま一度、抱きしめるように抱っこをした。

 …なぜでしょう。

 ここで喋っては、いけない気がします。

 

「…まだ、気にしてたか」

 

「……」

 

「…なぁ愛里寿」

 

「……」

 

「さっき、俺。化物って言われちゃったよ」

 

「……え」

 

「ただ、子供に絡んでる…あいつの仲間らしいのを、力の限り、抱きしめてやっただけなのになぁ…」

 

「……」

 

「…助けた子供に言われた…めっちゃくちゃ……怯えられた…」

 

「……」

 

「なぁ…愛里寿」

 

「…なに?」

 

「……無理すんな。ここの所、何を必死になってんだ。こんな魔改造・着ぐるみまで作って」

 

「……」

 

「防刃・防弾・防電を兼ね備えた着ぐるみなんて、普通…無いぞ?」

 

「それは…お兄ちゃんが…試合会場に…」

 

「……だからと言って、頭部内部まで特殊カーボン仕様にするのは、流石にやりすぎだ…いくら金が掛かったのか聞けねぇよ」

 

「確か…」

 

「言わんでいい!! 怖いよ!!」

 

 愛里寿さんを、そのままストンと地面に下ろした。

 頭を撫でながら…。

 

「皆を、何で睨んでいたか知らんがさ……」

 

「……」

 

「ここにいる姉さん達も、青森じゃ化物って言われてたんだぞ?」

 

 《 !? 》

 

 わ…私もですか!?

 

「まぁ、天才少女なんて言われて…正直俺もそう思うけど」

 

「…」

 

「そりゃ、愛里寿自身の個性だ」

 

「…個性」

 

「だから周りと違うのは当たり前だ」

 

「個性を化物と言うなら…みんな化物だな!」

 

 もう一度笑って、頭を撫でる。

 愛里寿さんの顔が段々と下がっていく。

 

「そうそう。一回、愛里寿自身、開き直った時もあったよな」

 

「!!」

 

「どんな理由なんだ?」

 

「……」

 

「……」

 

 あ…愛里寿さんの顔色が…青から段々と赤くなっていきましたね。

 あ~……。

 

「お兄ちゃんは、昔からあまり変わらない」

 

「…お~う。久しぶりのマジ口調…」

 

「デリカシーが無い」

 

「…ハイ、ジカクシテマス」

 

「……言わない。絶対に言わない」

 

「あら、反抗期?」

 

「…そうやって、中途半端にふざける所…嫌い」

 

「……スイマセン」

 

 もう大丈夫だと判断したのだろうか?

 体を落とし、愛里寿さんと目線を合わせるようにしゃがみこみました。

 

「ま、なんだ。最終的には…」

 

「…なに?」

 

「昔も言ったけど…愛里寿が、どんな事になってもな?」

 

「……」

 

 

 

「愛里寿は、俺の『可愛いモンスター』だ」

 

 

 …隆史さん。

 

 それが、多分理由です。

 

 まったく…。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

「…で? タラシ様」

 

「……」

 

 

 現在、愛里寿は俺の足にしがみついている。

 憑き物が落ちた様な顔をして…あの……なんで目が合うと逸らすのでしょう?

 

 一時の事とはいえ、不遜な態度だったと、愛里寿は皆に頭を下げた。

 ええ子なんや、うちの子。

 普段なら気にしない事でも、ここ最近の事で若干病んでいた…と、自身で告白した。

 なぜかそれに皆、納得したようだった。大きく頷いていたしな…。

 

 …なんで?

 

 本来なら、もう数年は待つつもりだったと…。

 

 …なにを?

 

 結局、我慢できないと、自身のメンタルを今回把握。

 修正する。

 嫉妬と判断した為…我慢しないで、次回から本気で動く…覚悟して。

 

 …と、なぜかいきなり天才少女モードに切り替わった…のだけど…。

 

 なぜか全員の顔が一瞬、爽やかになったのは何でだろう?

 

「聞いてますか!? タラシ様!!」

 

「…ヘイ、聞いてます」

 

 …オペ子に言われた。ついに言われた…。

 

「では、いくつか聞きたい事ができました」

 

「…その前に」

 

「なんですか? タラシ様」

 

「…その、タラシ様っての…やめて下さい…」

 

「…ダージリン様?」

「タラシさんでしょう?」

 

「ノンナさん?」

「タラシさんですね」

 

「ケイさん?」

「タラシね!」

 

「アンチョビさん?」

「…隆史でいいだろ」

 

 

 「「「「 !!?? 」」」」

 

 

「チヨミン!!」

 

「なっ!? なんだ!? その格好で、抱きつくな!! 髪で遊ぶな!!」

 

「……チッ」

 

「な…なに!? なんで皆、私を睨むんだ!? 裏切り者? なにがぁ!?」

 

 あぁ…チヨミン、癒されるわぁ…。

 

「…やっぱり、タラシ様じゃないですか」

 

「なんだろうなぁ……」

 

「なんですか!?」

 

「……オペ子に言われるのが、他の誰より一番応えるなぁって…ちょっとね」

 

「……」

 

 あ…あれ?

 

「では、隆史様。聞きたい事があります」

 

「ペコ!!??」

 

「…」

 

「あの子、ずるいわぁ…」

 

「…タラーシャ? じゃ変よね? どうしよう…」

 

 …カチューシャ。一人黙々と考えないでくれ…。

 

「では、まず…皆さん疑問に思っているのですが…」

 

「……」

 

「あの方とは、どの様な関係ですか?」

 

 え?

 

 …あれ? なんでいるの?

 あ。

 目を空した…。

 今日は制服…か?

 初めて見るなあ…相変わらず派手なリボン…。

 

 

「…あの方、隆史様に買われたって仰ってくれましたケド?」

 

「」カワ…

 

「…通われてるとも」

 

「」カヨ…

 

「どういう事ですか! というか…どういう意味ですか!」

 

 ……。

 

 

 

 

「ま…待て!! 隆史殿!!」

 

「…おい、しずか」

 

 

 

(((( 呼び捨て!? ))))

 

 

 

「よし、愛里寿」

 

「な…何?」

 

「ちょっと離れていろ」

 

「」

 

 よしよし。黙って言うことを聞いてくれたな。

 さて…。

 

「…オペ子」

 

「ひゃい!?」

 

「…なんつってた?」

 

「えっと…先程の言葉と…えっと…3万円…」

 

 はい。

 

 肩を掴みました。

 

 はい、逃がしません。

 

「待て!! 確かに隆史殿は、我の春を買ったではないか!!」

 

「あー、買ったな。誤解を生むから、でかい声で叫ぶな」

 

 

 「「「「「  」」」」」

 

 

「で…では、特に問題は…」

 

「……」

 

「な…い……の……」

 

「…通ってるって、言ったんだな?」

 

「…」

 

「まだ数回しか、行ってないよな?」

 

「……通って…」

 

「まぁ、そこはいい。…また手伝ってやるつもりだったから」

 

「真か!?」

 

 両手を肩に乗せる。

 はい、ほーるどぉぉ

 

「…ただ、二度とそういう事を言うなと…アレホドイッタヨナ?」

 

「」

 

「はい、まず3万円なんて金額、どこで覚えた」

 

「」

 

「…それよりな。正確には3回だよな? しずかの家行ったのは!!」

 

「…そ…そうであったか? もう何回か…」

 

「今回、決勝会場に来る前に、一度寄ってみたんだがな!!」

 

「ぬっ…」

 

「しずか、お前。家族に俺の事、何て言ったんだ!?」

 

「…と…特段……事実しか…」

 

「…じゃあなんで、責任やら何やら言われて! 婿殿やら何やら、言われなきゃならないんだよ!!」

 

「……」

 

「まさか…春を売ったのだのどうの…言った訳じゃ…」

 

「…ふっ」

 

「……」

 

「良いか? 隆史殿」

 

「……」

 

「戦とは…『はい、もういいです。ちょっと来なさい』」

 

「」

 

 しずかの襟首を掴み、完全にロック。

 まったく時間が無いというのに!!

 

「…あのタラ…いえ、あの様な隆史さんは、初めて見ましたわ…」

 

「…」ムコ?……ムコ?

 

「ノンナ!?」

 

「ありゃ~…あれ、タカシ。結構、マジで怒ってんな」

 

「…ペパロニは、慣れてるから良くわかってるな」

 

「いやぁ~」

 

「ドゥーチェ、別に褒めてないわよ?」

 

「そうかな? 特に隆史は…『お前も来い、ミカ』」

 

「」

 

 はい、もう一人確保。

 

「はい。よし、お前ら」

 

「まっ!! 待て!! 隆史殿!!」

 

「」ポロ~ン

 

 

 

「では、説教だ」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~…。隆史様、決勝戦見なくて宜しいのでしょうか?」

 

「お兄ちゃん。決勝戦は、ある意味どうでもいいみたい…」

 

「はい!? 廃校が掛かっているのにですか!?」

 

「…どうもあの…犯人をどうするか? しか、今は考えてないみたい…」

 

「……」

 

「…少し、悔しい」

 

「……」

 

「…あら…どうしてでしょう?」

 

「…西住 みほさんが…大洗学園が負けるとは思ってないみたい」

 

「……」

 

「だから私も少し…いえ、かなりムキになってしまった。あの信頼は…正直、羨ましい…」

 

 「「 … 」」

 

「いやぁ~でも、タカシ。結構今、怒ってたよな!」

 

「…いや…まだ、大丈夫」

 

「カチューシャ?」

 

「ノンナ…。タカーシャが本気で怒った所…見たことある?」

 

「いえ、大洗の…例の事件の時も…事後報告で聞きましたので…あ。あの着ぐるみの動画が、あるそうですので、見てみますか?」

 

「…いいわよ。怒ったタカーシャ何て、見たくない」

 

「という事は、カチューシャさんは、ご覧になった事があるのかしら?」

 

「……あるわ」

 

「ふ~ん。ちょっと興味あるわね!」

 

「…」

 

「カチューシャ?」

 

「……本気で怒ったタカーシャ。酷かったわ…エグイ…というか…なんというか…」

 

「…なにがあったんでしょうか?」

 

「タカーシャ、圧倒的な物量、力。なんでもいいけど、相手が何もできない状態にしてから…尚且つ、一番相手の嫌な事を選んでする様になるわ」

 

「……」

 

「あ、でも似たような事…私が、間違って殴っちゃった時に…なんか言ってたわね」

 

「……」

 

「私はそこが心配。今回の犯人…見つけたら」

 

「カチューシャさん?」

 

 

 

 

「タカーシャ………本気で何をするか分からない…」

 

 




はい、おかえり主人公


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