「エリカ。帰るぞ」
「はい」
お姉ちゃんが、立ち上がったまま踵を返した。
横目で、理事長を睨んでる。
「私はこの様な、恥知らずな真似はできない。後日、結果だけ送ってください」
「そうですわね。些か度が過ぎてますわね。ペコ?」
「…はい」
「私達も、流石にどうかと思うわねぇ~。ね? アリサ?」
「」
周りの皆さんも同じの様で、まばらだけど順番に立ち上がり、帰る準備を始めた。
「おや? 君たち…本当に見ていかないのかい?」
理事長の声を無視し、何も言わないで背中を向けた。
これが最後だと言わんばかりに、顔だけ半分、テレビ画面に向けた。
そのテレビ画面で、隆史君が…。
…ん?
>
『…さて』
『『『 始めるか 』』』
>
三人が向かい合って、手を指で組み、口も隠すように肘をついた。
なんだろ…先ほどと全然、雰囲気が違う…。
なに? この空気!?
「まったく…」
河嶋先輩も立ち上がり…というか、この後の惨状が若干、予想できるのかな?
そそくさと、帰る準備を始める。
……が。
>
『まず最初に』
『林田?』
『…尾形。西住さんとは、どこまでいった?』
>
ガタン!!
…一斉に皆、着席した…。
皆立ってたよね!? なんで座るの!?
なんで!? 帰ろうよ!!
そのまま一気に皆、隆史君達と同じ姿勢になるの!?
そうしないといけない決まりでもあるの!?
>
『なんでだよ! 今関係ないだろうが! というか、前に聞かれた時より、一週間も経ってないぞ!?』
『……』
『なんか言え!!』
『…林田。話が始まらないから、最後にしろ』
『えー』
『まったく…』
>
《 チッ!! 》
一斉に舌打ちが聞こえた…。
というか…。
「お姉ちゃん!!」
「なんだ? みほ」
「恥知らずとか、言ってなかった!?」
「…言ったな」
「じゃあなんで座り直すの? 帰ろうよ!」
「……みほ」
「なに!?」
「これも戦車道だ」
「違うよ! 絶対に違うよ!! 取り敢えず、それ言っとけば良いとか思ってない!?」
「……」
「目を逸らさないで!!」
ぁぁああ!! 理事長の顔が、すっごい笑顔になってる!!
>
『んじゃま、順番に行きますか。大洗との試合順でいいんじゃね?』
『あいよ、まずは…聖グロリアーナっと』
『撮影対象は…えっと、ダージリンとオペ子…じゃない、オレンジペコ。それとアッサムさん』
『というかよぉ。全高校の中で、圧倒的にリクエストが多いな…。こりゃ絞るの大変だ…』
『もうさ、尾形の趣味でいいんじゃね? この人達も、それなら文句いわねぇだろ』
『タラシ君だしな!!』
『……』
『つ…ツッコミが無い…。どうした尾形!?』
『 分かった 』
『!?』
『…随分とまぁ、あっさりと…』
『力強く頷いたな…』
『今、徹夜明けハイでな。何でもできそうだ』
『おぉ……初っ端から、壊れた尾形だ…』
『アンケート全無視ってのも何だから、集計した俺の意見で判断してくれ』
>
「ダージリン…オレンジペコ……」
「「アッサム」様、うるさい」」
「……」
結局…皆、そのまま動こうとしない…。
あ…最後にあの質問が来るから!?
その為だけに、皆残るつもり!?
「…でも、なんですかね?」
「ペコ?」
「今は…隆史様に、あだ名以外で呼ばれると…ちょっと寂しく感じます」
「……」
>
『でもよぉ? ファンタジーだろ? RPGみたいなのだろ? …上手く想像ができないな』
『ここに衣装一覧がある。このクオリティーで…更にオーダーメードで作成されるそうだ』
『……なんだよ、この完成度…映画撮影する訳じゃないだろうに。戦車道連盟って馬鹿じゃねぇのか?』
『俺もそう思う! 本当にそう思う!!』
『ま、いいや。それで? どうする?』
『順番に行こうか。んじゃまず、ダージリン』
『あの完璧超人か』
『…』
『林田?』
『尾形からすると、あの人ってどうなん?』
『は?』
『ほら! 人によってはさ、綺麗系とか美人系とか…可愛い系とかあるじゃんよ』
『綺麗系』
『…即答したな』
『…なんで、んな事聞いてくるんだよ』
『いやぁ…普通に興味出るだろうが。タラシ殿』
『……』
>
「と。いった具合に、スパイを一人送り込んだんだよぉぉ!」
「……」
随分と…嬉しそうに胸を張る理事長。
…それ、聞く意味ないよね。
意味ないよね!?
「……」
ダージリンさんが、静かだ…。
「アッサム様?」
「あの理事長…撒き餌が、エグイ…」
「あ…皆さんの目の色が変わりました」
「オレンジペコ…、貴女は変わらないのね」
「私は、隆史様の癒し系ですから!♪ はっきり言われましたから!♪」
あ…一部で舌打ちが聞こえた…。
>
『んじゃ、その綺麗系…なんにする『姫騎士』の?』
『『 …… 』』
『 姫 騎 士 』
『…どうした尾形』
『被せてきたな…』
『これ! この下がミニスカの姫騎士。甲冑は、白と金の奴。マントは…青で。ダージリンは青!』
『…熱意がすげぇな』
『ま…まぁいいけど…その心は?』
『くっ殺』
『即答かよ…』
『…そう言われてみると、異常に似合うなこの人…』
『さすが尾形(壊)』
>
隆史君が選んだであろう衣装が、テレビ画面横に、テロップの様に表示された。
白の甲冑に、装飾が金色。ピカピカに光っている。
…なんでコレなんだろ。
というか、クッコロってなんだろ?
「隆史さんは、随分とまぁ…私に勇ましい衣装を選びましたわね」
「でも、ダージリン様? クッコロってなんでしょう?」
「さぁ? アッサムは知っていて?」
「……」
「アッサム?」
「……知らないわ」
「「 ??? 」」
「エリカ? どうした? 顔が赤いぞ? というか、何を怒っている」
「…いえ、なんでもありません」バカジャナイノ? アノオトコ、バカジャナイノ!?
「ところでエリカは、知っているか? クッコロとやらを」
「知りません!! 知ったこっちゃありません!!」
「?」
……。
一部の人が、顔を赤くしているなぁ。
うん! 絶対にエッチな事だ!
うん!! 後で問い詰めよう!!
うん!!! 理事長が爆笑してるね!!!
>
『んじゃ、次は尾形のお気に入りの人だな。オレンジペ『ヒーラー』』
『だから早ぇよ!! 俺らにも少し選考させろよ!!』
『んじゃ、ヒーラーかプリーストか。どちらか選べ』
『2択じゃねぇか!!』
『……』
『尾形?』
『…オペ子は癒し系。それ以外は認めん。癒されたい…今俺は、とても癒されたい…』
『『 …… 』』
『…疲れた。ここ最近、特に心労が酷い…、胃が…死ぬ…』
『まぁ。うん、決勝戦お前頑張ったよな。動画で見たぞ? お前にテントで、置き去りにされた時には、正直殺意が沸いたが、あれで許せた』
『肉体的には、まだ大丈夫なんだけどなぁ…』(華さんの家に行った辺りから、胃が酷使され始めたな)
『…尾形! 大丈夫! お前頑張ってるよ!! だからその虚ろな目はやめろ! 怖い!』
『あぁ…オペ子に癒されたい…また、お茶入れてくれないかなぁ…』
>
「ハゲ! 隆史様、どこにいらっしゃるんですか!!!?」
「ハゲ!?」
「おやめなさい、ペコ。…お茶のセットを持って行こうとしないで」
「隠すと為になりませんよ!!」
「…オレンジペコ。多分今持って行っても、ロクなことにならないから、後になさい」
「うぅぅぅうう!!!」
>
『あ、衣装はこれだな。白ベースの生地。装飾が…赤もいいけど』
『グロリアーナでセットにするなら、青か金だな』
『金でいいだろ。…っていうか、強制的にヒーラーで採用になってるじゃねぇかよ』
『まぁ、これもまた異様に似合うから良いけど…』
『笑顔で回復魔法、使ってくれそうだろ!? 使ってくれるんだよ!!』
『…お前、コレ終わったら、もう休め』
『まだ、この後仕事残ってる…』
『…何すんだよ。内容によっては手伝ってやるぞ?』
『このまま、このホテルでこの後、祝勝会すんだよ。…その準備』
『……女に囲まれて宴会すんのか?』
『その言い方やめて!! 胃がまた痛む!!』
『はい、次~』
>
「河嶋先輩…」
「…分かった。皆まで言うな。ちょっと尾形書記は休ませる」
「そうして上げてください」
祝勝会の開催と、それが終わったら、そのままこのホテルに宿泊すると、全員にメールで通達があった。
合計すると、結構な金額になると思うのだけど…会長が出してくれると言っていた。
すごいなぁ。
>
『んじゃ、ラストだな。アッサムさん』
『すっごい、いいとこのお嬢様オーラ全開の人だな。この人は?』
『…美人系』
『で、衣装は…なんだこれ。アンケート結果がぶっちぎりで、魔法使いになっとる』
『…それで良いと思う』
『なんだろうなぁ。水魔法とかぶっ放しそうな感じだなぁ…って』
『なんだ尾形、今回はあんまり乗り気にじゃなさそうだな』
『どうした? 尾形』
『あ、いや。…ちょっと青森で合同合宿した時の事、思い出した』
『あー言ってたなそういや。プラウダとアンツィオとだっけ?』
『そうそう。なんでか知らんが、俺も連れて行かれた』
『…お前は、拉致られるのが仕事なのか?』
『……』
>
「」
「アッサム!?」
「アッサム様!?」
涼しい顔して聞いていたアッサムさん。
熱くなっていたダージリンさんと、オレンジペコさんを止めていたのに…。
…なんで、顔を赤くしてるんだろう。
……なんで、紅茶を持つ手が震えているんだろ!
この人は違うと思っていたのに!!
思っていたのに!!!
>
『…今でこそ思う。すごい顔ぶれの合宿だよな』
『モゲレバイイノニ』
『…林田』
『んぁ…まぁ人に言うことじゃないな』
『……』
『あれか? 浮気か?』
『その頃はまだ付き合ってないんだから、浮気じゃねぇだろ!?』
『……はっ。ボロが出たな』
『つまりは、類似したことか』
『違うわ!!』
『少なくとも、西住さんにバレると怒られる事か?』
『ち…違う…と、思う。…思いたい』
『イケメン君にキイタラドウカナァ?』
『林田。なんだ、その笑顔は』
『判断してやろう。さぁ聞こうじゃないか?』
『……』
>
「ハゲッ! 隆史さんは、どこですか!!」
「また言われた!?」
「…アッサム?」
「アッサム様?」
「なっなに!?」
「なにか…聞かれるとマズイ事かしら?」
「…べ…別に!?」
「なら、大人しく聞いていましょうか?」
「」
「それに…」
「オレンジペコ!?」
「アッサム様。隆史様の事、今まで苗字で呼んでいませんでしたか?」
「あっ!!」
「……「あ」?」
なるほど、アレがブペ子さんかぁ…。
私に怒ってきた時は、素だったんだぁ…。
それが分かるくらいに変わるものだなぁ…。
そっか。
これは、あれだ。
隆史君が、順番に各高校の選手達との事も、暴露させようという…理事長の企みかぁ…。
ウフフフフ。
「み…みほ?」
「ナァニ? オネエチャン」
「…いや、なんでもない」
>
『合宿自体は、隣の北海道でやったんだけどさ。土地広いし』
『……』
『…温泉街に、宿泊したんだよ』
『なんだろ、その時点でアウトな気がするぞ…』
『まぁ北海道って、温泉街多いしな。で?』
『……その旅館ってさ。時間で風呂が、男湯と女湯が変わるんだ』
『アウトだろ』
『アウトだな』
『…まだ、何も言ってないけど』
>
「」
「あの時かァァァ!!」
あ。
横でアンチョビさんが、叫んだ。
「ダージリン! そのウサ耳リボンを引き渡しなさい!!」
「カチューシャ。少しお待ちなさい。まだ全部聞いていないでしょう?」
「そうですよ? ノンナさんもちょっと、落ち着いてください。全部聞いてから判断しましょう?」
「」
「ミホーシャ!!」
「え? あ、はい?」
「何をボケーとしてるのよ!!」
「いえ、まだ話し始めたばかりですし…」
うん。ハンダンハ、ソノアト。
「あの時のタカーシャ!! すっごい、酔ってたわよ!!」
「……」
「み…ミホーシャ?」
ふーん。
「カチューシャ。余り、叫ばないでくださいな。音が聞こえませんわ」
「…」
「そもそも、あの合宿の時もそうだけど…。あんた達! 青森から去って、1週間で戻ってくるとは思わなかったわよ!!」
「アンツィオを連れてくるとは、思いませんでしたね」
「あれは例のドウーチェさん達が、私達の船で許可も無く、勝手に商売をしていただけです」
「…密航じゃないの。どうりで合宿なのに、あいつらだけ戦車持ってなかった訳ね…」
「あ、話しますよ!?」
>
『いやな、殆ど貸切みたいなモノでな。その宿で男って、俺だけだったんだよ』
『死ね!!…と言いたいが…それは……』
『ほぼ強制的に連れてこられてソレか…』
『俺の事、知らない生徒もいたからさ。なにこいつ? って、目ですっげぇ見られる訳なのサ』
『……』
『想像してみろ。例えば女子高の修学旅行。夜のプライベート時間に、その宿泊旅館に男が一人だけ参加させられるとか』
『…地獄だな』
『部屋から…出れなかった…飯も部屋で食ってた』
『…大変だったな』
『まぁ…ノンナさんとか、ダージリンとか来てくれたからまぁ…うん』
『…』ヤッパリモゲロ
『…なんか、大量の飲み物持参して来てたな』
『…………』
『中村?』
『いや…いい。それで?』
『ん? まぁいいや。んで、非常に歩きづらいからさ。男湯の時間ってのを夜の遅くにしてもらって…』
『まぁ…そうだな。最後の方がいいよな』
『んで、夜の…1時頃かなぁ…。他の生徒が寝静まった後にしか、行動できなくてなぁ』
『行動が、完全に不審者だな』
『んで、風呂…温泉に入ってたらさ』
『おぉ』
『チヨミン達が、入ってきた』
『『 』』
『夜中とか、人がいない時に温泉に入りたいという気持ちは、分かるんだけどさぁ』
『『 』』
『男が俺しかいないの。分かってるしな。時間も時間だからって、男湯ののれんをペパロニが外しやがってよぉ』
『『 』』
『まぁ…そん時は、逃げるように3人とも出てったんだけど…』
『『 』』
『その後に、アッサムさんが入ってきた』
『『 』』
『どうにもペパロニが、のれんを戻して行かなかったようでな。…入ってきた』
『後な』
『……なんだよ』
『…記憶が、それ以上無いんだ』
『どういう事?』
『気がついたら、脱衣所で寝てた』
『……』
『ちょっとダージリン達の事で、湯船で話してな。その後…のぼせたのか、記憶が無い』
『…チャッカリ混浴してるし』
『いや…な、真剣な顔で…まぁコレは人に話すことじゃないな』
『……』
『ただ、ちょっと怖いのがなぁ…』
『んだよ』
『たまにアッサムさんに、名前で呼ばれるんだよ』
『…………』
『普段、大体苗字で呼ばれるてるからさぁ。結構驚く』
『…それってよぉ、尾形』
『んぁ?』
『……周りに人が、いない時だろ』
『えっと…ん~…あぁ、そういえばそうだな』
『……』
『んで、どうだろうか? 殆ど事故の様なもんだけど…』
『『 アウトだ 』』
『……』
>
「アッサム、後でお話があります」
「」
「アンツィオの方々も、ちょっとこちらにおこしなさい?」
「」
会場内が殺伐としてきた…。
>
『さてと、これで一応、グロリアーナは終わったな』
『すげぇ、話が脱線したけどな』
『姫騎士と、ヒーラーと、魔法使い』
『…尾形』
『あぁ。…自分で決めといてなんだけど』
『すげぇテンプレになったな』
『…くっ殺』
『……』
『……』
『素晴らしいよな!!』
『素晴らしいな!!』
『よし! 尾形! 壊れたまんまだな!!』
>
「あ、河嶋先輩」
「な…なんだ?」
「あまり貧乏ゆすりは、しない方が…」
「」チ…チガ…タスケテ、ユズチャン!
うん。
コレは…私も最後まで聞いていこう。
次はサンダースかぁ…ケイさんだね!
タ ノ シ ミ ダ ナ ァ
閲覧ありがとうございました