『はい、んじゃ次はプラウダだな』
『『 …… 』』
『どうした?』
『いや…お前、一体どんだけ、他校に知り合いいるんだよ…』
『それにロシア語の先生って、どういう事だ?』
『そのまんまの意味だけど…あ、ちょっと待て。…だから袖を引っ張るな』
『『 !? 』』
>
[ どういう事ですか? 同士クラーラ ]
[ どういう事? …知りませんでしたか? ]
[ …初耳です ]
[ 以前、留学の為に青森港に下見に出向いた際に、彼と出会いました ]
[ …… ]
[ 心配なさらないで下さい。彼とは、そういった仲ではありませんので ]
[ …… ]
[ …ところで…カチューシャ様が、見当たりませんが…? ]
[ …カチューシャは今、お昼寝…!? いない!? ]
…なんだか、プラウダ高校の席が騒がしい…。
ロシア語で会話をしている為か…何を言っているのか分からないから、少し不安になるなぁ…。
隆史君いれば翻訳してくれると思うんだけど…画面に写ってるしなぁ…。
あ。
あぁ!?
>
『まぁ、青森に来ていた彼女と会ってだな。彼女はそこで、俺がプラウダ高校…まぁ、カチューシャの知り合いだと知った訳だ』
『『 …… 』』
『丁度、ノンナさんとカチューシャに内緒で、ロシア語勉強しようと思っていた所でな』
『ちょっと! 内緒にする意味が分かんないわよ!』
『『 …… 』』
『まぁ色々あってだな。ネットのライブ映像とかで、教えてもらう事になってなぁ…』
『…その色々ってのが、一番重要だと思うのだけど!?』
『『 …… 』』
『対価が、カチューシャの動画とか、写真とかだったな!』
『はぁ!? それで一時、私の事を携帯でやたらと撮影してたの!?』
『許可取ったじゃないか』
『んな事に使われると思わなかったわよ!!』
『『 …… 』』
『そういった経緯だ。な? 別に変な事じゃないだろ? 現地の人間に教えてもらうのが一番かと思ったんだ』
『いや…尾形』
『もう、そんな事よりな』
『んぁ?』
『その、膝の上のなんだ?』
『カチューシャだな』
『上のって何よ! 失礼ね!!』
『…………』
『何よ、タカーシャ』
『いや…なんでいるの?』
『気づけよ!! 流れる様に膝の上に乗せてたぞ!?』
『……記憶にない…』
>
[ カチューシャ!? ]
[ 私達に気付かれないように、会場を抜けるなんて… ]
…現場に、カチューシャさんがいる。
理事長も予想外だったのか、口を開けて固まっているなぁ。
「カチューシャ…。堂々とまぁ…良くあの場に行こうと思いましたわね」
「流石に、この状態を暴露するとは、思いませんが…思い切りましたね」
「…というか、よく尾形さんの居場所が分かったものね」
「「 …… 」」
「「隆史さん」…じゃなくて、よろしいのですか? アッサム?」
「……」
「……」
「…というか、よく隆史さんの居場所が分かったものね」
「…綺麗に言い直しましたわね…」
「……」
あれだね!
周りが冷静じゃないと、自身が冷静になる原理と一緒だね!
喉元過ぎれば熱さを忘れる…って奴かなぁ…。
…麻痺してきた自分が嫌だなぁ…。
>
『会場が暇だったからこっち来たの!!』
『暇って…お前…。この場所良くわかったな』
『廊下で、フラフラしている、元気なのか、疲れているのか、よく分からない状態のタカーシャを見かけたのよ』
『……アノ、アトカ』
『…その後ろを着いてきたわ!!』
『『『 …… 』』』
『…もう、突っ込み疲れたから…このまま行こうぜ…』
『本人目の前にしてか!?』
『なによ!! 文句あるの!?』
『イエ、ナニモゴザイマセン』
『んじゃ、まずカチューシャだな』
『どうするんだ尾形』
『まず、アンケート結果ってな『海賊』』
『 海 賊 』
『来たな…また被せてきた…』
『でもまぁ、普通だな』
『ちなみに、ヴァイキングも似合うと思ったけど、パイレーツの方な』
『でもなぁ…』
『なんだ? 異論あるのか?』
『いや、プラウダってロシア風だろ? 北欧の方がイメージ強いからな』
『ふむ、言わんとする事は、分かる……が!』
『なんだよ…』
『当時、ロシア人は、ヴァイキングと敵対していたとか、恐れていたとか色々有るけど…そんな細かい事はどうでもいい!』
『…ふむ。その心は』
『 露 出 度 』
『『『 …… 』』』
『即答したな…』
『お前ら。…ノンナさんいるんだぞ』
『『 …… 』』
『採用』
『…あんた達……』
『カチューシャ選手いるのに、ぶれねぇな尾形』
『大丈夫だ! コレはカチューシャにも、ちゃんと関係ある!』
>
[ 尾形サン…、まさかカチューシャ様にも、如何わしい格好させるつもりでしょうか? ]
[ 隆史さんなら大丈夫だと思います。むしろ…私ですかね…… ]
…その信頼は、どこから来るんだろう…。
というか、なんで今、ロシア語理解できたんだろう…
>
『んじゃ、まずカチューシャだな』
『お…おぉ』
『まず、プラウダの大将なら、衣装もキャプテンだな』
『そうね!』
『んじゃコレ』
『随分とまぁ…真っ赤など派手なコートだな』
『装飾も…金か…』
『ふん! 悪か無いわね!』
『まぁ、カチューシャはこういった派手なの好きだしな』
『……』
『…どうした、中村』
『尾形が、普通すぎてキモイ』
『…お前』
『…俺がこのまま、終わるわけないだろう…』
『いや…無理するな…。幼女にいかがわしい格好させるのは、犯罪になるんだぞ?』
『……あんた、バイカル湖に全裸で吊るすわよ』
『……』
『まぁまぁ。ちょっと移動するぞカチューシャ』
『分かったわ!』
『……』
『……』
『…なぁ中村』
『…あぁ』
『…尾形。移動するつって、すげぇ自然に肩車させたな』
『その行動に素直にしたがったな、カチューシャ選手』
>
隆史君…座ったままカチューシャさんを肩に乗せて、画面から見切れてしまった。
呆然とその方向を見続ける、残された二人。
画面からは、ガサガサとちょっと大きめな音がする…。
プラウダ席からは、ロシア語で色々と会話が聞こえてくる…。
[ 尾形サンが、カチューシャを連れ去りましたよ!!?? ]
[ 同士クラーラ。その慌てぶりを見て、安心する私がいます ]
[ !? ]
>
『お待たせ』
『お…この衣装と同じ…』
『衣装サンプルが全部あんだよ。試用できないと思っていたけど、丁度本人いるしな』
『でも…これ、サイズが普通の奴だぞ? でっかくないか?』
『…まぁ見てろ。カチューシャ、これを着てくれ』
『今そこの男が言ったように、カチューシャにはおっきいわよ?』
『いいから、いいから』
『……』
『中村…尾形さ。なんで裁縫セット持ってるんだ?』
『あぁ。尾形は、ある意味お母さんみたいな持ち物、いっぱい持ち歩いてるぞ?』
『……』
『ほれ、できた』
>
カチューシャさんが、着せられた派手なコート。
腕の部分を少し縮めて、安全ピンで止めたみたい。
…ブカブカだ。
帽子もブカブカだ。
少し斜めになってしまい、顔が少し隠れている。
袖はキョンシーみたいに、前に垂れ下がり、手が隠れてしまう…。
裾の部分は、あまりすぎて引きずられている。
コレは…。
[ カチューシャ!! ]
[ カチューシャ様!! ]
プラウダ席が…光輝いている…。
長すぎて、折れた袖口のまま、ブカブカの帽子を直しているカチューシャさん。
……。
隆史君…。
>
『後は、微調整でもうちょっと縮めれば…』
『武器が、二丁拳銃…というか鉄砲』
『袖に、ちょっと隠れてるのがいいだろ!!』
『…よくお前、こんなの思いつくな……』
『…タカーシャ。ちょっとこれ大きすぎて嫌なんだけど…』
『はっはー。いいか、カチューシャ?』
『…何よ』
『…俺知ってる。あの笑い方する尾形は、ロクな事言わねぇ…』
『…わかってきたな』
『少し大きめの服着てるとな、体が自然に追いつこうとしてな! 背が伸びたり、足が伸びたりするぞ!!』
『着る!! これ、着るわ!!!』
『すげぇいい笑顔で、言い切ったな…』
『……息をする様に嘘をついたな』
『アイツ、すげぇ自然に言うから、たまに嘘か本当か分からん時あるよな…』
『…なにが、嘘は嫌いだ…だ』
『……』
『なぁ…』
『いやまぁ…正直、あのカチューシャ選手。俺が見ても可愛いと思うが…』
『尾形…一心不乱に写真撮りだしたな…』
『あれだ…七五三とかで、娘の写真をひたすら撮る、お父さんの気分じゃねぇの?』
『あぁ!! すげぇ納得いく!!』
『あ。この武器はどうだ!?』
『ちょっと…重…重いぃ!!』
『いや…なんだ? でけぇ、斧持ってきたな…』
『すげぇ小道具をサンプルで置いてあるな』
『カチューシャ選手、真っ赤な顔して、斧を持ち上げようとしてるな…』
『それをまた、バッシャバッシャ写真撮ってるな…尾形』
『もう、これで採用でいいんじゃね?』
『…これでいいな。というか、今更無理だとは言えそうにない…』
>
[ ずるいです!! 尾形サン、ずるい!! ]
[ 大丈夫です、同士クラーラ ]
[ え!? ]
[ カチューシャの写真は、後で隆史さんに送ってもらえます ]
[ なっ!? ]
[ ですから、今は色々とポーズを取っているカチューシャを愛でましょう… ]
[ 本当ですか!? 私にも頂けますか!? ]
[ あら? 隆史さんのアドレス知らないのですか? ]
[ 知りませんよ…。彼は、あくまでロシア語講座の生徒です ]
[ 分かりました。では、
[ ありがとうございます!! ]
>
『ふぅ…堪能した』
『……すげぇ笑顔だな』
『ちょっと癒された…』
『で…携帯いじって何してんだ』
『ノンナさんに、全部今の写真送ってる』
『『 …… 』』
『娘の写真共有してる夫婦か、お前ら』
『……』
『…なんだよ』
『いや…青森で、それ散々言われたなと…』
『 死ね!! 嫌味で言ったんだよ!! 』
>
「今度あの方に、なにか送りましょう」
なんで今、日本語で呟いたんだろうなぁ!?
>
『んじゃ、次はそのノンナさんだな!』
『……』
『……』
『……』
『何よ』
((( 決め辛ぇ )))
『ま、いいわ。私、そろそろ会場へ戻るわ』
『『『 !? 』』』
『どうせ、私がいるとノンナの衣装、決められないんでしょ?』
『『『 !!?? 』』』
『まぁ? 少しくらいエッチな会話もするって事でしょ?』
『か…カチューシャ!?』
『私は、何も言わないわよ。…男の子って、そういうものでしょ?』
『カ…カチューシャが、お姉さんだ…』
『…あら、知らなかった? 私の方がタカーシャより、お姉さんなのよ?』
『 』オォォォ…
『私からすれば、そんな事で一喜一憂してる方が、どうかしてるとしか思えないし?』
『…どこ見てるんだ?』
『…ないしょ。んじゃ私は行くわ』
>
せ…静寂…。
会場から音がしない…。
「流石ですね、カチューシャ」
日本語で、何かを噛み締めている様に頷いているノンナさん…。
「……」
お姉ちゃんも、なにか頭を押さえてる…。
う~ん…。
「ちびっこ隊長に言われてしまった…」
「一本取られたっすねぇ」
……まぁ…隆史君が、思いの他、変態さんなのは分かってたけど…。
「……」
「河嶋先輩?」
「ん? いやな、あのプラウダ高校の隊長の言う事も、分かる…」
「そうですね…」
「…分かるが。限度というモノが、あるだろう」
《 …… 》
>
『さて。んじゃノンナさんだな』
『…んじゃ、どうする?』
『これだな! コルセットで、腹下から胸元まで、左右紐で締めるやつ!!』
『即決だな! 迷う必要ないのって楽だな!!』
『それにこの時代のコルセットって、すげぇ胸強調するよな!』
『素晴らしいよな!』
『素晴らしいな!!』
>
「な? 壊れた尾形書記だぞ?」
《 …… 》
ノンナさんが、頭抱えてる…。
>
『色は、やっぱりプラウダっぽく、赤と黒だな。カチューシャとセットにするか』
『下はどうする? スカート?』
『そうだなぁ…このレースので、いいか』
『いや、ここはズボンだ。その方が体型を強調する!!』
『…本当に、今日の尾形は神がかってるな……ダメな方に…』
『あっ! 後、この眼帯もつけるか!!』
『…なんか似合うな…』
『黒髪だしな!』
『帽子は?』
『…………』
『どうした?』
『いや…、どうしたもんかと』
『おや、珍しい…迷ってる』
『ほら、ノンナさん髪の毛、すげぇ綺麗な黒髪だろ? あんま隠したく無いなと思ってな』
『……』
『…なんだよ』
『だから…そういう事をサラッと言うな…』
>
「……っ」
……。
あの、ノンナさんがニヤケテル…。
「…なんて顔してんのよ、ノンナ」
「お帰りなさい。カチューシャ様」
「…やっぱり、ロクでもない会話を始めたわね…」
「……っ!」
「あ、今。彼女は口を開くと変な声が出そうらしくです」
「……」
>
『んじゃ、コレは? 額に巻くバンダナ』
『……はぁ…林田』
『…お前、馬鹿だろ?』
『は?』
『あのエロいおでこ隠して、どうすんだよ。バカじゃねえか?』
『これだから、童貞は…』
『……』
>
「……」
あ。今度は微妙な顔した…。
>
『んじゃ…そのままでも、いいじゃねぇか』
『…それしかないか…。少々残念だけど…』
『そうだな…』
『…泣きそうな顔すんなよ』
『んじゃ! ノンナさんも決定!! ノンナさんは簡単だったな!!』
『…今さらだけど、ノンナさんは、ワイシャツも似合うからなぁ…』
『んじゃ、コルセットの下に着てもらうか?』
『でも胸元空いてないと、女海賊じゃねぇだろ?』
『『 そうだな!! 』』
『…ワイシャツもそうだけど、服着てる時のさ…』
『お…おぉ?』
『胸の谷間にできる、左右に引っ張られる感じの、服のシワが好き…』
『……』
『…ごめん、それは分からん』
『……』
『んじゃワイシャツで、左右に引っ張られて、ボタンとの間にできる小さな隙間』
『……』
『『それは、分かる!!』』
『だろ!! ノンナさんなら、それが両方とも再現できるんだよ!!』
>
「…西住」
「……はい」
「あれは、いいのか? もはや衣装の話じゃないぞ?」
「……」
>
『あ、そうだ。新顔のクラーラさんは、どうするの?』
『今回撮影枠に入ってないからな。無しで』
『お前なら想像くらい、しそうなものだけどな』
『…んじゃ、時間無いから、さっさと次行くか』
>
「 …… 」
「クラーラ。あんた、なんでちょっと残念そうなのよ」
「タカッいえ。尾形さん、私にはあまり興味が無いのかと」
「…逆に、この場面じゃいい事じゃないの?」
「そうですかね?」
「…ノンナ?」
「…………」
「…ノンナ? なんでクラーラに顔近づけてんの?」
「……」
「…ノ…ノンナ? 近くない? え?」
「……」クラーラ
「…………」
>
『次は、最後の相手の黒森峰……ってどうした? 携帯見つめて』
『…』
『ん? 着信でもあったか?』
『……あぁ』
『でねぇの?』
『…でるけど』
『話の腰折られても何だからよ、先に済ませてしまえよ』
『…分かった』
『…はい。尾形です』
《 …… 》
『…いえ、そのような事は……』
《 ……!! 》
『…おい、また女の声だな』
『…微かに聞こえるな』
『外出て話せば良いのに…』
『あれじゃねぇのか? さっきのカチューシャ選手みたいに、誰かに出くわしたらまずい…そんな相手…とか?』
『…その割には、なんでか敬語だな』
>
《 …… 》
また?
今度は誰だろう…。
あんなに隆史君が、他人行儀な喋り方する、知り合いはいないなぁ…。
>
『え!? はっ!? 来るの!? 大洗に!?』
《 ……?》
『そ…その様な事は、ございませんよ!?』
《 ……♪ 》
『 』
『…なんで、あそこまで尾形を動揺させるのだろう』
『相手が気になるな。家元達は、もういるって言ったよな』
『…えっ!? いつ!? ちょっ!? 詩織ちゃん!!??』
《 …~♪ 》
『……切られた』
『…知らない名前が出たな』
『今度は、何もんだろうな? また戦車道関連か?』
『あ、尾形が頭を抱えた…』
『…マジか……』
『どうした尾形? 浮気相手?』
『違うわ!!』
『んじゃ、誰よ』
『……』
『……』
『沙織さんの妹さん……』
閲覧ありがとうございました
こういった話だと、筆が進む進む……