転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第 7 話~続・男子会です! 黒森峰の場合~

知らない名前がでた。

 

テレビ画面の向こう側…。

おに…あの男が、なんとも言えない顔をして、自身の携帯を見つめている。

男共の会話の中…また、酔ってしまっているという事なのだけど…そんな状態だというのに、そんな顔を見せていた。

 

たしか…詩織?

 

「…みほ」

 

「…なに?」

 

「「沙織」…さんと言うのは、みほの友人か?」

 

「うん…あんこうチームの通信手」

 

「……」

 

「……」

 

姉妹揃って複雑そうな顔してるわね…。

 

 

 

 

 

 

『…尾形』

『ちなみにその子いくつ?』

『……15歳って、言ってた』

 

『『 …… 』』

 

『通報したほうが、いいかな?』

『やめろ!! 変な関係じゃない!!』

『…そもそもさぁ…なんで、そんなにビビってたのよ』

『…なぁ中村』

『なんだよ、ロリコン』

 

『……』

 

『まぁマァ、中村。話を聞こうじゃあーないか?』

『林田。半ギレで、言うな。な?』

『中村…。決勝戦のテント前で、愛里寿に言った事、覚えてるか?』

『どれの事だよ』

『……助けた子供に、化物って言われた事』

『あぁ、着ぐるみ着てた時か』

『そう。その言っていた子供が、その娘』

『……』

『…なんか逆ナンされた』

 

『……110番って、何番だっけ?』

『よし林田、落ち着け』

 

『世間って狭いなと、思い知らされたよ…』

『決勝終わって、二日しか経ってねえだろ!!』

『知らねぇよ!! その日から、メールが、もの凄い数を送って来るんだよ!! 質問攻めだよ!!』

『でも、お前ってメールもLIENも殆どしないよな? 電話で済ませる派だよな?』

『あぁ…。電話で30秒も掛からない事を、メールで何分もかけて、繰り返すのって嫌い』

『LIENもグループ入らないしな』

『だから、最近の若い子のメール内容がな…絵文字やら何やらで、暗号にしか見えなくてな…面倒くさくて、電話で済ませたら…』

『済ませたら?』

『…すげぇ頻度で、電話来る様になった…若い子パネェ』

『若い子って…』

『その娘すげぇな。即座に尾形に合わせてきた』

『特に、俺の趣向なんて言ってないんだけどな…』

『で? なんで驚いていたんだ?』

 

『……来るって』

 

『は?』

『今日! ここのホテルに宿泊しに来るんだと。…一人で』

 

『……』

『……』

『…沙織さんに、会いに来るって言ってたけど…夕方には到着すると…()()()俺に連絡してきた』

 

『おまわりさん呼ぶ?』

『取り敢えず、西住さん呼ぼうか?』

『やめろ!! また誤解される!!』

 

『はぁ…というかよ。西住さんに、先に言っておけばいいじゃねぇか。メールとかしねぇの? 』

『殆どしないな』

『…ちょっと送信メール見ていい?』

 

 

 

 

「…そうだね。隆史君、メールの文章すっごい少ないものね」

 

「そうだな。殆ど電話で話していたな。…昔からそうだったな」

 

あれ? 私との時は、普通にメールしてたけど…?

家元のカードの事、聞いてきた時とか…割と普通だったわよね?

 

アレ?

 

 

 

 

『尾形…』

『なんだよ』

『これはメールじゃない…電報だ』

『……』

 

『なんだよ、コレ。「晩飯いる?」だの「今どこだ?」だの。一言って。ハハ、キトクとかじゃねぇんだぞ?』

『………』

『なぁ。これの西住さんの返事って、結構、長文だろ?』

『…割と』

『お前……これじゃ、流石に…』

『あと…』

『あ? あと何だよ』

『付き合いだしてから、たまに顔文字や絵文字とか…ハートが、つくようになった』

 

『『 …… 』』

 

『説教してやろうかと思ったら、ノロケで返された…』

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「少し、携帯を見せなさい。みほ」

 

「!?」

 

「ナゼニゲル。ホラッ」

 

……。

 

イラッ

 

…なんで、私がイライラしてるのよ。

 

 

 

 

『いっ! いいんだよ!! 電話で話す方が好きだから!』

『いや…それでも、もうちょっと…こう…』

『だから、もう! みほの声、好きだから電話で話す方がいいんだよ!!』

 

『『 …… 』』

 

『なぁ、林田。地面に携帯叩きつけていいか?』

『許す。 ヤ レ 』

『やめんか!!』

 

 

 

 

「……」

 

「 」

 

…。

 

両手で顔隠したわね。

 

……。

 

机に突っ伏したわね。

 

………。

 

震えだしたわ。

 

「……」

 

腹立つぅ…。

 

赤くなった耳、思いっきり引っ張りたい…。

隊長は、横から目を見開いて、すっごい見てるし…。

 

 

 

 

 

 

『なんでキレてんだよ!?』

『むしろ、なんでキレないと思うんだよ!』

 

『チッ。もういい!! 次だ次!!』

『まったく…残す所、黒森峰と大洗学園か』

『あ。大洗は、選考やんないぞ?』

 

『『 は? 』』

 

『正確にはな? 大洗学園って、優勝校になったから、衣装がほぼ決まってんだ』

『そうなのか?』

『勇者様御一行になっとる。まぁ…』

『まぁ?』

『衣装は、俺が決めたけどな!』

『…それは、それで気になるな』

 

『優勝校って事でな? PL枠って事で、あんこうチーム全員が撮影対象になったんだ』

『PL? んじゃ、SR枠ってどうなんの? 隊長、副隊長が撮影対象じゃ?』

『……』

『…なんか…撮影対象リクエストで、カメさんチームがぶっち切りで…』

 

『『 …… 』』

 

『だから、SR枠を副隊長…カメさんチームでって事で、撮影対象をあんこうチームと分けるんだと』

『…生徒会長と、小山先輩と、河嶋先輩か』

『柚子先輩と桃先輩…あのスタイルだからなぁ…。後、一部に会長ファンが、すっごい多いんだ』

『この菓子の購入者と、アンケート回答者って……』

『……男性が7割だ』

『『 ですよねぇ… 』』

 

 

 

 

《 …… 》

 

分かってはいたけど…、会場内が理事長の笑い声しかしない…。

 

 

 

 

『ちなみに、大洗側の衣装は、確定してる』

『ほう…。ちなみに何?』

 

『みほは勇者。沙織さんは僧侶。華さんは魔法使い。優花里は盗賊。麻子は踊り子』

 

『……最後だけ異彩を放ってるけど』

『冷泉さんは、黒魔法使いって感じが強いけど…』

『 踊り子 』

『……』

『……』

 

『 踊り子 』

 

『分かったよ!! 何だよ、その謎の押しは!!』

『やる気も踊る気も無い、踊り子になるな』

 

 

『ちなみに衣装内容は、教えません』

『なんで!?』

『どこで、情報が漏れるか分からないしな! 書類も隠してある!』

『…ちなみに…何でだよ』

 

『優花里…辺りになっ!!』

『秋山さん?』

『衣装をしっかり着てもらった後で、「何てもの着させるんですかっ!!」って、真っ赤になった顔で言わせたい』

 

『『 …… 』』

 

『無駄に露出を上げた踊り子衣装で、マコニャンをマジギレさせたい』

 

『『 …… 』』

 

『恥ずかしがって、赤面してモジモジしている みほを、ニヤニヤして眺めたい』

 

『『 …… 』』

 

『理由が限定すぎる…』

『忘れてた…こいつ基本的にS寄りの性格だった…』

『武部さんと、五十鈴さんが抜けてるな』

『すげぇ普通に、着てくれそうだし…』

『着てもらえなかったら、どうするんだよ…』

 

『いいか? 中村。着てもらえなかったら…じゃない。着させるんだよ』

 

『『 …… 』』

 

『はい、んじゃ。黒森峰行くか!』

 

 

 

 

…この男。

 

「隊長? 我々の始まりますよ?」

 

「………」

 

「隊長!?」

 

「んっ。…分かった」

 

肩を揺さぶって、ようやく気がついてくれた。

まだ突っ伏しているみほには、若干腹立つけど…まぁいいわ。

 

…変なの着させないでよ。

他の連中の、衣装の露出の高さに不安しか感じない…。

 

 

 

 

『はい! ではまず!!…どうする? どっちから?』

『…まほちゃん。隊長から』

『隊長からね』

『アンケート結果だと…。すげぇな…ぶっちぎりで騎士だ』

『あの人、凛々しいからねぇ…』

『……』

『黒騎士とか、すっごい多いな』

『……』

『近衛騎士団長とか、そっち系が、まぁ…ぶっちぎりの数だなぁ』

『…こりゃある意味、すぐに決まりそうだな』

 

 

 

 

隊長が顔色すら変えずに、画面を眺めてる…。

なんか、お腹部分が開いた鎧やらの衣装が映し出される。

なぜ微妙に露出度をあげるんだ…。

 

装飾が、大体金か赤で、光り輝いている…。

聖グロの隊長と、真反対って感じね。

 

 

 

 

『 魔 王 』

 

『…は?』

『なんだ尾形…魔王?』

『魔王枠が空いている。みほが勇者枠なら、対でいいだろ』

『いや…いいけど…』

『白い衣装の魔王がいい!』

『…いや、普通に黒系統が、いいじゃねぇの?』

 

『 嫌 だ 』

 

『おや…珍しい…。尾形が意固地になってる』

『どいつもこいつも、まほちゃんに黒い服ばかり着させようとしやがって! もう黒はいらん!!』

 

『…まぁもはや、イメージカラーだしな』

『白がいいんだ! 白が!!』

『ふむ』

『彼女の私服って、白系統が多いんだぞ!?』

『そうなのか?』

『というか…まぁなんで知ってるんだよ…幼馴染たってさ』

 

『大体、俺が選ばされたから』

 

『『 …… 』』

 

『転校しても、連絡自体は取ってたからさ。高校生に上がってから、すっごい聞かれる様になった…』

『……』

『まほちゃんは、白が似合うんだよ!! どいつもこいつも、黒黒黒って!!』

 

 

 

 

「…お姉ちゃん」

 

「……」

 

「高校生になって、急に服のセンスが変わったのってソレ!?」

 

「……」

 

「…目を逸らした」

 

「はぁ…。隊長? そもそもあの男…女性の服なんて選べるんですか?」

 

「…一つ聞くとな。毎回二日後くらいに返答が来るんだ」

 

「……」

 

「結構、悩んでくれてな。周りに聞いたりしたりで…まぁその…」

 

隊長が珍しく言いよどんでいる。

若干、赤みが刺した頬をが…。

 

イラッ!

 

……。

 

…………。

 

あれ?

 

なぜ、私は今…隊長にイラついたんだ?

 

 

 

 

『そんなわけで、真っ白い衣装の魔王!!』

『…魔王ねぇ』

『うん、まほう』

『まほうって…まぁいいや。それでもういい…』

『尾形の目が、いつになく血走ってるな…』

 

『んじゃ衣装は?』

『取り敢えず、この大きな角と…大きな悪魔の羽根を付けて…』

『なぜ装飾から先に…』

『これ着けとけば、魔王っぽいだろ!?』

『…まぁそうだけど、お前さ。ただ単に、西住選手に白い衣装を着せたいだけだろ』

『半分当たりだ!!』

『…言い切った……』

『んで、この…衣装』

『……』

 

『チョーカーは、黒なんだな…』

『すげぇな。胸部分から下…腹下までバックリ開いてるな…』

『肩、胸元まですげぇ開いてるけど…これは大丈夫なのか? 幼馴染として…』

『露出度がすげぇ…。胸と横腹と腕しか、隠している部分が無い…』

『スカートはロングだろ!?』

『いや…そうだけど』

『あと、鳥の羽やら何やらと、真っ白なマントで、肩下から隠す』

『……』

『そうすれば、胸元(谷間)と腹。そして、肩だけ露出する様になるんだ!!』

『……』

『あ。ちなみにガーター装着な! スカートは、前で太もも部分で割れる様になってるから、脚を曲げると見える仕組みだ!!』

『……尾形』

『こうすれば、露出と隠すを両立できる。んでもって、チラリズムも…って、なんだ?』

『…これもう、決定事項で出してるだろ』

 

『 あ た り ま え だ 』

 

『言い切ったな…』

『ほっときゃ、皆して黒い衣装しか、着せようとしねぇからな』

『とは言っても…良くそこまで、熱い情熱を…』

『お前、西住選手好き過ぎるだろ…』

『大好きだな!!』

『妹さんが、不憫だぞ…』

 

 

 

 

「……」

 

「」

 

…。

 

両手で顔隠しましたね。

 

……。

 

机に突っ伏しましたね。

 

………。

 

震えだしましたね!?

 

「……」

 

あ。

 

起きた

 

「……ゥゥ」

 

涙目になってますが…。

 

 

 

イラッ

 

 

 

 

 

『まほちゃん、腹筋がうっすら割れてるから、こういったので腹出したい!』

『…尾形さん。テンションがおかしいですよ?』

『そもそも…なんで、腹筋割れてるとか知ってるんだよ』

『前回の戦車道カードのSRが、水着だったからな!!』

 

『『 !? 』』

 

『お前…持ってるのか…』

『持ってる! 最初に買った時、マホチャンコンプリートしたぞ!!』

『…あれ、LRの排出率と、同じだったんだぞ!? コンプリート!? もう一つのSRもか!?』

『ちなみに、姉妹揃ってコンプリートした』

『……』

『……』

 

『…やらんぞ?』

 

 

 

 

 

 

…隊長。

 

うれしいのは分かりますけど…。

あの男…。

 

家元以外のカードを、全て持ってますよ…。

 

言えないけど…。

 

 

 

 

『んじゃ、これでいいか!?』

『はい…結構デス』

『この姿……魔王の椅子に座ってもらって、足組んで見下した目で見られたいな!』

『林田…気持ちは分かるが……』

『あの人、怖いけどさぁ…慣れてくると、快感になりそうで…』

『……』

『ちなみに尾形は?』

『俺? …むしろこの姿で、デレさせたい! 赤面させたい』

 

『……いや、やってみろよ。お前なら楽勝だろ…』

 

『……』

 

『まぁいいや、次だな!!』

『よかない!! なんだ今の間は!!』

『…林田』

 

『……』

『何だよ中村…。無言で首振るなよ…』

 

『はい、決定! まほう!!』

『…魔王な』

 

『んじゃ、最後の大トリ…副隊長ね』

『……』

『…これも尾形なら、すぐ決まるだろ』

『……』

『どうした尾形?』

 

『…はい。ここで一つの問題が発生しました』

 

『どうした?』

 

『何も浮かばねぇ…』

 

『…は?』

『アンケート結果と照らし合わせた結果。思考が完全に袋小路に入りまして…』

『……』

 

『なんっっにも…思いつかない…』

 

『…嘘だろ? お前が…か?』

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「どうしたエリカ?」

 

「いえっ!! なんでもありません!!」

 

「うん?」

 

「……」

 

「エリカ?」

 

な…何を落胆してるのよ…。

変な衣装着させられないだけマシよね…。

隊長ですら、あの格好だし…。

 

…うん。

 

 

 

 

『まぁ、整理しながら行こうぜ』

『そうだな。隊長が魔王なら、側近とかでいいんじゃね?』

『…』

『んじゃまず、アンケート結果1位の騎士とかどうだよ。これなら側近役でも…』

『……しかし、用意された衣装の騎士って、基本ビキニアーマーだよな』

『そうだな、これならどうだ? アバラ付近まで鎧の…』

 

 

 

『ダメ。露出が多い』

 

 

 

『『 …… 』』

 

『『 は? 』』

 

『胸元開きすぎ。腹部分の装甲が無いとか、意味不明だ。鎧だぞ? 鎧』

『……』

『ごめん…なんつった? 今』

『腹部分の…『 その前だ!! 』』

 

『 露出が多い…? 』

 

『お前…どの口で、それ言ってんだ?』

『なにが?』

 

『『 …… 』』

 

『じゃあ、これ。秘書っぽい、副官』

『ダメ。スリットが、際どすぎる。秘書なのに谷間強調しすぎ』

 

『…これは? 側近ぽい悪魔』

『却下。サキュパスと、どう違うんだ? 腕と脚以外が、殆ど水着じゃねぇか』

 

『『 …… 』』

 

『な? 決まらんだろ?』

『…中村』

『…分かってる林田』

 

『…ちなみに、西住さんの勇者衣装ってどんなのだ?』

『なんだよ、急に。だから内緒だって…』

『ほら、主人公枠だろ? なにか対照的な、何かを思いつくかも知れない』

『う~ん…』

『どんなのだ? 鎧系? 冒険者系?』

『ビスチェ風の鎧だな。あと、ミニスカ』

『……』

『くっ殺、完備!』

『…お前、自分の彼女だろ?』

『そうだな』

『…いいのかよ』

『ダージリンもそうだし…、これは仕事だからな。彼女だからと言っても、優遇しないぞ?』

 

『『 …… 』』

 

『なんか思いついた?』

『…いや、ちょっと待て』

 

 

 

 

なっなに!? え!?

すっごい視線感じるんだけど!?

 

「!?」

 

西住姉妹に挟まれてる!?

姉妹揃って、真顔で見ないで!!

 

「……」

 

「……」

 

無言!?

 

 

 

 

『なぁ…尾形』

『んぁ?』

『これどうだ? ある意味、魔王とのセットだろ?』

『どれだ? あー…なるほど。定番だな』

『ダロ?』

 

『 さらわれた姫 』

 

『…衣装は?』

『コレナンテ、ドウダロウ?』

 

『……』

 

『……』

 

『…………閃いた』

『よし! 戻ってきたな!!』

『…林田』

 

 

 

 

「ご気分はどうでしょう? プリンセス?」

 

「随分と、隆史さんに気に入られていますね?」

 

「聖グッ…!? プラウ……隊長!?」

 

近い!? みんな近い!!

 

「……」

 

「……」

 

近いぃぃ! みほも近い!! 特に隊長が!!

い…息が掛かる!!

 

 

 

 

『この組み合わせは、どうだろうか?』

『……』

『……』

 

『少し、ウェディングドレスみたいだけどな!!』

『全体的にフリッフリだな…』

『なんというか…正統派姫様ドレス…』

『色は黒!!』

『黒って…西住選手の…』

『エリリンは、髪の色とマッチして、黒! というか…』

『あん?』

『魔王が白系だからな。対になるように黒ですね! ブラックウェディングドレス!!』

『…』イッタナ…ツイニ、イッチマッタナ

『やっぱり、まほちゃんとエリリンは、コンビでいると安心するな!! うん!』

『……』

『後は、レースのストールで、肩を隠しゃ完成!!』

 

『……』

 

『林田』

『…ん?』

『いいか林田。正直、姫様案は、俺も思いついた』

『そうなのか?』

『でもな…敢えて、黙っていた』

『なんでだよ?』

『……お前。どう見ても、ウェディングドレスにしか見えねぇこの衣装を、尾形に一人の為に、選ばせた様なものだぞ?』

『だから?』

 

 

『……』

 

 

『…責任とれよ、お前』

 

『…え?』

 

 

 

 

 

隊長の顔と体が、私の右半身に密着するくらいに近い!!

みほの顔と体が、私の左半身に密着するくらいに近い!!

 

は…挟まれた…完全に逃げられない…。

 

画面には、テロップで私が着せさせられるであろう…そのドレスが…

 

「ナニヲ、ニヤケテイル? エリカ?」

 

「」

 

た…助けて…。

 

 

 

 

『さて! 黒森峰も決まったな! やっと終わるなぁ…』

『……』

『…中村? どうした?』

『ん!? おぉ。いや…』

『?』

 

『……』

 

『なんだよ』

『なぁ、LR枠って家元達なんだよな? 西住流と島田流の』

『そだな!』

『…コスプレさせんの? あの二人に…』

『…俺は、まだ死にたくない』

『そうだよな…。お前、責任者だったな…』

 

『30代後半のおばさんに、コスプレは…きついだろ…』

『ばっ!? 馬鹿!! 林田!!』

 

 

 

『……』

 

 

 

『うん。尾形。まぁ悪気は無いだろうし、俺も謝るから、許してやってくれ』

 

『 』

 

『本気の殺気を向けるな…というか…いつ被った、ベコの頭部』

『 タイヘン、モウシワケワリマセンデシタ 』

『…な? ダチをマジで、怯えさせんなよ…』

 

『…はぁ……分かったよ』ツギハ、ナイゾ?

『……』

『ま…まぁ、それはそれとして…。尾形』

『なんだよ』

 

『…お前、家元大好きだったよな』

『大好きだな!!』

『そこは元気いいな…』

 

『もし、家元達に今回の件を頼むなら、どんな格好にすんの?』

『魔王は、まほちゃんに使っちゃったしな。なら…』

『なら?』

 

 

『 大 魔 王 』

 

 

 

 

 

(((( 大 魔 王 )))) デスネ デスワネ ダロウ ダナ

 

多分、この場の全員が納得した…というか、同時に思っただろうなぁ…。

左右の姉妹も、半分諦めた顔で見てる…というか、そろそろ離れて…。

 

 

 

 

『…納得するしかねぇな』

『ちなみにな、衣装はいらないと思うんだ…』

『…ん?』

『ラスボス系って最後、最終形態とかになると思うから、それはそれだけど、普段だったら…』

『…だったら?』

 

『しほさんと、千代さん。二人のいつもの格好に…』

『  』

『この前の伸びる、でっかい角つけるだけで…どうだ』

 

『…い……違和感が全く…無い…』

 

『二人共…普段、力をセーブしてる大魔王って設定だ。って、口に出すと…』

 

『……』

『……』

 

『…なぁ中村。これ、二人に言えるか?』

『……俺に、自殺願望は無い』

 

『……』

 

『なぁ…尾形』

『なんだ? 林田』

『お前、ゲームでも作るつもりか?』

『は?』

『設定が、すげぇな。母が大魔王…。その娘二人が、勇者と魔王…って』

『……』

『白の魔王と黒衣の姫君?って感じか?』

『……』

『ふむ…ちょっと面白いな』

『…いや、偶然だけど…ちょっと理事長に掛け合ってみるか…面白いな!!』

 

『後な…』

『んぁ?』

『俺正直、お前がその大魔王…西住さんのお母さんに、そこまで入れ込む理由が、分からん』

 

『……』コノ、バカ…

 

 

『…ソウカ オマエ オレノ 敵 カ 』

 

 

『いやいやいや!! 変な意味じゃなくてな! 見たこと無いんだよ俺。その家元さん』

『…あぁ。なるほど。それで興味が、沸 い た と ?』

『タラシ殿が、そこまで入れ込むくらいだしな』

『なるほど。なるほど』

『な…なんだ、その宗教団体の勧誘みたいな笑顔は…』

 

『はっはー。俺に、しほさんを語らせると……長いぞ』

 

 

 

 

「 」

 

……。

 

「…あそこの席だけ、別次元ですわね」

 

「時空が歪んでるみたいですね…」

 

「マタ、オカアサン マタ、オカアサン マタ、オカアサン マタ、オカアサン」

「マタ、オカアサマ マタ、オカアサマ マタ、オカアサマ マタ、オカアサマ」

 

……。

…………。

 

「…姐さん」

 

「……なんだ?」

 

「大洗と黒森峰の副隊長…息してねぇっすよ?」

 

「…そっとしておいてやれ…。せめて静かに眠らせてやろう…」

 

「生きてるわよ! 助けなさいよ!!」

 

少し、矛先が変わった為に何とか、声がでた…。

まったく…。

隊長の衣装も凄いけど…なんで私だけ…。

 

……

 

「ねぇミカ」

 

「……」

 

「黒森峰の副隊長…ちょっと、ニヤニヤして気持ち悪いね」

 

「……」

 

「…アキ」

 

「……うん。これはダメだね」

 

「……」

 

…んんっ!!!

 

ニヤけてなんていない!!

 

ニヤけてるのは、目の前の、あのハ……はぁ!?

 

 

「いやいや、これで大体の衣装は決定になったねぇ」

 

顎を摩りながら、満足げにそんな事を言っている。

でも、そんな事は、もはやどうでもいい。

気がついたのは、私だけではないだろう。

 

他の学校の生徒も気がついたのか、目元がくらい。

目が見えないくらい…。

 

「撮影の日取りは、後日お知らせするよ」

 

隊長とみほは、気がついていない…。

ブツブツと生気の無い目で、テレビ画面を見つめている…からだろう!

 

「しかし、ゲームかぁ。若い子は面白い発案をしてくれるねぇ。手間をかけた甲斐があったというものだよ」

 

「…なるほど。これは、盗撮ですか?」

 

「んん~そうだねぇ。先程も言ったように、どっきりみ…たい……な……」

 

理事長の座った席の後ろ。

二人の女性が立っている。

 

一人は、面白そうに画面を見つめ。

もう一人は、理事長の背後を取って…ただ、腕を組んで見下ろしている…。

 

「あら~…随分と面白そうな事を…。詳しい経緯をお聞きしたのですが? あぁ…一緒になって視聴している皆さん。……動かないヨウニ」

 

《  》

 

たった数秒で、この会場の全ての空気を飲んだ。

 

「立場のある人間が、どの様な理由で未成年に対して、ここまでしたか…」

 

「」ガタガタガタガタ

 

 

 

「お聞かせ願いますか? 児玉理事長?」

 

 

 

二人の大魔王が…降臨した。

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

嫌な西住サンド…。

次回、男子会というか、オファー編終了

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