転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第 8 話~続・男子会です! 終焉~

『あ、そういえばさ。男の撮影枠ってどうなってんの?』

『尾形やんの?』

『 ヤ リ マ セ ン 』

『でもさぁ、お前が責任者だろ?』

『関係ない。あんな全国から、一斉に怨念を引き受ける様な役なんぞやらん』

『…一部には需要ありそうだけどな』

『だってな…今回から値上げするんだと…』

『いくらよ』

『…300円(税抜)』

 

『『 たっか!! 』』

 

『殆ど、ソシャゲのガチャと同じだ』

『足元見てるなぁ…』

『そんな金払ってな…出てくるのが、男だぞ?』

 

『『 …… 』』

 

『俺なら破り捨てる…』

『気持ちは分かるが…』

『やりたきゃ、お前らのどっちかやれば?』

『俺らただの観客だぞ? 戦車道に関係してねぇよ』

『…チッ』

 

『んじゃ、尾形の衣装決めるか』

『そうだな』

『やんねえよ! 黒森峰で最後だ! 最後!!』

 

 

 

 

「なるほど、あのいかがわしいカードの件ですか…」

 

「人様を巻き込んで、おもしろい事しますねぇ?」

 

「」

 

隆史君までカードになるのかぁ…。

 

……。

 

本当に一部に需要がありそう。

うん極、一部に。

 

 

「…で? 先程から数秒が経過しましたが…。はやく理由をお答えください」

 

 

「」

 

あれ…お母さんだ。

幻じゃなくて、本物だ。

帰ったんじゃなかったのかな?

 

他のみんなは、とっくに気がついていたみたい…。

考え混んでしまっていた、私とお姉ちゃんは、今気がついた。

 

「3…2……」

 

「早くないかね!? 数秒って!! しかもカウントダウンも短いよ!?」

 

「……1…」

 

「やめない!?」

 

カウントダウンに従って、組んでいた腕をゆっくりと伸ばし始めた。

な…何する気だろう…。

あ。指がコキッて音した。

 

「まぁまぁ、しほさん」

 

「……」

 

「こういった手合いの相手には、目撃者に聞いたほうが、おも…いえ、てっとり早いですよ?」

 

「目撃者…?」

 

「はい。ですので、前科者さんに全て吐いてもらいました♪」

 

島田さんの横に、肩を落とし、完全に怯え切った…アリサさんがいた…。

あれ…まだそんなに、時間経ってないのに。

 

「また、貴女ですか」

 

「 」

 

「…今度は盗撮ですか?」

 

「ちっ! 違います!! 今回は、そこのハゲの単独犯です!! 私は関係ありません!!」

 

「……ふむ」

 

コソコソと、会場の地面を這いながら逃げようとしている…。

いい大人の逃げ方じゃないなぁ。

そのまま無言で、理事長の袴を踏みつけ、逃亡を阻止した。

この状態のお母さんから逃げ切っても、後からもっとひどい目にあうのになぁ。

襟首を掴み、先程まで座っていた席に…力尽くで戻した。

正面に周り、もう一度見下ろしながら…一言。

 

「 次、逃げようとしようものなら…分かってますね? 」

 

「 」

 

あ…島田さんは、理事長にはすでに興味が無いようで、テレビ画面を見上げている。

その手には、アリサさんが捕まったままだ…。

 

「…貴女達」

 

「」

 

「」

 

向い側…生徒の席の並び。

その先頭にいた…私達の前に踵を返して振り向いた。

 

…。

 

矛先がこちら!!

 

「まほ…みほも…。何を考えているのですか?」

 

「…その」

 

「……」

 

いけない…。

先日…普通に話せる様に、少しずつなってこれたと実感したばかりだった。

だからかな…それは、お母さんも同じだった。

ギクシャクした感じが、少しずつ解けていった…。

 

それはいい。

それはいいんだけど…。

 

その為かな? お母さんは、昔…小さい頃に私達に説教する時の様な顔になってる…。

つまり…母親としての説教顔に変わっていた…。

だからだろうか? 

お姉ちゃんも目をそらしている…。

 

「…盗撮に素直に加担するなど…西住流がどうのという話ではありません」

 

「いえ…加担していた訳では…」

 

「……素直に、その映像を視聴している時点で、同罪です!」

 

「」

 

 

 

 

『んじゃ、さっきのが最後だな?』

『そうだ。もう終わり! 男の撮影枠なんざ…『では聞かせろ』』

 

『なんだよ…』

 

 

 

 

テレビ画面からは、会話がまだ続いている。

もはや皆、お母さんの怒気に飲まれ、テレビを見ていない。

 

「まったく……他の高校も揃いも揃って…」

 

だって…お母さんが、色々と溜め混んでいる。

ぐっ…っと、助走をつけるみたいに…。

 

 

「恥を知りなさい!!」

 

 

お母さんの怒号が、会場中に響き渡った。

 

―が。

 

 

 

『西住さんと、どこまでいった?』

 

 

 

ガタァーン!!!

 

「……」

 

音を立てて、私の横に飛び座った…。

 

机を飛び越えたよ!?

 

なんで、最初の隆史君と同じ格好になるの!?

あ…皆、同じ格好になった…。

なんで!?

だから! そんな決まりでもあるの!?

 

え!?

 

さっきまでの空気は!?

 

「あらあら、しほさん…」

 

唯一、普通にしているのは、島田さんだけ…。

 

「お母さん」

 

「……なんですか」

 

「さっき、「恥を知りなさい」とか何とか、言ってなかった?」

 

「…言いましたね」

 

「じゃあ、やめようよ! 帰ろうよ!! やっと終わると思ってたのに!!」

 

「……」

 

「振り出しに戻っちゃったよ!!」

 

「…みほ」

 

「なに!?」

 

 

「これも戦車道です」

 

 

「違うよ!! ぜっっったいに違うよ!! 西住流が心配になるよ!!!」

 

「……」

 

「目を逸らさないで!!!」

 

ぁぁああ!! 理事長の顔が、またすっごい笑顔になってる!!

 

「ほら! いいの!? 理事長の思うツボだよ!?」

 

「…みほ」

 

「なに!?」

 

「あまり、人を疑うものではありませんよ?」

 

…。

 

……縁、切ろうかな…。

 

 

 

 

 

『えっと、男性撮影枠の話だったな!』

『……露骨に逸らした』

『いやいや、そっちはもうどうでもいいから、西住さんとの進行具合をだな?』

『……』

『…どうした、尾形』

『ちょっと電話してくる』

 

 

……

 

 

『…チッ、逃げられた』

『今度は、部屋出て行ったな』

『西住さんに、言っていいか許可もらいに行ったんじゃね?』

『それは、ないだろ。絶対に許可なんてくれないだろうよ』

 

『…なぁ』

『なんだ?』

『イケメン君からすると…どうだろ…アレ』

『…尾形と西住さんか?』

『そうだな』

 

 

 

 

あ、隆史君が退室した…。

私に電話来るの!?

 

「……」

 

皆っ!! 真顔!!!

 

…お母さんが、あっさりと同じ穴の狢になった。

 

 

 

 

『…まぁ』

『……』

『あの感じじゃ! ひょっとすると…ひょっとするかもな!!』

『!!』

 

 

 

 

 

「…みほ?」

 

「……」

 

「なぜ、下を向いているのでしょう?」

 

「……」

 

「なぜ、赤くなっているのでしょうか?」

 

「……」

 

「少し、お母さんと話しましょう? ん?」

 

「……」

 

 

 

 

 

『…アノ、ウラギリモノ』

『まぁまぁ。つき合ってんなら普通だろ。もう、あまり聞いてやるな』

『……』

『林田?』

『…こうなったら、尾形の衣装を……』

『なんだよ』

『これにしてやる…』

『……』

 

『 オーク 』

 

『……ただ、腰巻させて体を緑に塗っただけだな…』

『……』

『…林田』

『ダメだ!! これだと、くっ殺になる!! またチャンスを与えてしまう!!』

『いやぁ…多分、ダージリン選手相手だと…逆に喜んで、鎧脱ぎそうだぞ…』

『……西住さんもだよなぁ…』

『だな!』

『んじゃ…却下!!』

 

 

 

 

「……」

 

「アッサム…何を納得した顔をしてるのですか?」

 

「…はぁ……」

 

「ですから、クッコロっとは、どういった…ん?」

 

「どうしました? ダージリン様?」

 

「いえ、携帯に着信が……ん? 隆史さん?」

 

ぅぅぅ?

 

「はっ…はい。どうしました?」

 

あれ? 私じゃなくて、ダージリンさん?

携帯電話を耳当てている、ダージリンさん。

うん、お母さんは視界に入らないなぁ。

 

「……」

 

あ、苦虫を噛み殺したかの様な顔をした。

ダージリンさんが珍しい…。

 

「はい、確かに存在しておりますね。非常に…不本意ですが…。許可を出したのを、未だに後悔しております」

 

なんの事だろう?

あ…また眉を潜めた。

 

「どうにも、隆史さんを非常に敵視していますけど…本当によろしいのですの?」

 

…敵視。

 

「…なるほど。分かりました、私から言っておきます」

 

…なんなのだろう。

 

 

 

 

 

『ただぁいま!!!』

『ぉわ!?』

『だから、変なテンションで……まて。なぜまたソレを飲む』

『ん? お茶飲むのが、おかしいか?』

『……』

『…まぁいい…で? どうした?』

 

『男の撮影枠が決まった!!』

『は?』

『ちょっとダー様に、電話してきた!!』

『…ダージリン選手?』

『そのダージリンに、親衛隊とやらがいるんだ』

『しんぇ…は!?』

『一人、ロリコンのおかしいのが、いるんだよ。そいつに押し付け…基、オファーを出した』

『……』

『ダージリンから言えば、大丈夫だろうし。何よりナル入ってる奴だったしな!! 喜んで引き受けるだろ!』

 

 

 

 

あ…。

オレンジペコさんと、アッサムさんの目が…。

特に、オレンジペコさんが、あそこまで人を蔑む様な目をするなんて…。

 

「…ダージリン様」

 

「……そういう事だから…、オファーお願いね? ペ・コ?」

 

「嫌です! 絶対に嫌です!!」

 

「ダージリン。隆史さんは、貴女に依頼をしてきたのですから、しっかりと自分でなんとかなさい」

 

「……」

 

「…それに、オレンジペコにお願いするのは、少し酷じゃないかしら?」

 

「そうですよ!! あの人、気持ち悪いです!! 私を見る目が、生理的に受け付けません!!」

 

…はっきりいったなぁ…誰の事だろ。

 

「では、こうしましょう」

 

「なんですか?」

 

「オファーは断られたと。そうすれば、必然的に隆史さんの役目となるでしょ?」

 

「「 それでいきましょう!!! 」」

 

隆史君のカード化が、現実になりそうだ…。

 

 

 

 

 

『そういやよ』

『なんだよ』

『カメさんチームの衣装も内緒なんだろ?』

『そうだな!! 柚子先輩を、いぢめたいから内緒!!』

『お前…昨日呼び出されたばかりだろうに…』

 

『しっかし…こうやってみると、隊長、副隊長だけじゃなくてさ…各学校の選手全員をカード化して欲しくなるな』

『そうだなぁ…キャラが濃い奴多いしな』

『例えば?』

『聖グロだと…ローズヒップとか?』

『ふむ…で? 衣装は?』

 

『 アマゾネス 』

 

『……』

『…驚く程しっくりくるな…一応、お嬢様校だろうに』

『取り敢えず、ドクロの兜な。武器は、斧』

『まぁ…うん…』

『ただ…ローズヒップって腹筋割れてないからな…。ちょっと…鍛えさせるか…』

『……ちょっと待て。それは、なんで知ってるんだ?』

 

『……』

 

『後は、やっぱりプラウダから、クラーラさんかなぁ』

『待て!! 質問に答えろ!! ローズヒップさんって、カード化まだされてないよな!?』

 

『…………』

 

『彼女は、ちょっと海賊から離れようと思うんだよ』

『聞けよ!! 俺の話を!! …って、なんだ!? 中村!!!』

『やめとけ…な? もう、なんか……本当にメンドクセェ…』

『……』

 

『なんだろうか…クラーラさんは…槍騎士とか……』

『…話を一人で進行するなよ……』

『あの金髪デコは、貴重だと思うんだ!!』

『は? んなら、クルセイダーか?』

『それは、愛里寿だ!!』

『……』

 

『そうだ…。愛里寿をクルセにして、大学生達を…近衛兵に…』

『……』

『……』

 

『露出は、できるだけ控えて…あぁ大学生達は、どうでもいいや。腹出しくらいなら、普通にやってくれっだろ』

『……』

『……』

 

『あっ! 取り敢えず、クラーラさんは、エルフ耳確定だな!! っ! んなら、アーチャーもいいな!』

『……』

『……』

 

『なぁ…中村』

『…分かってる…本格的に、尾形が壊れたな』

『西住さんとの事は、もう言わない方がいいか?』

『…やめとけ。下手すると、本当に聞かない方がいい事まで喋りそうだぞ?』

『……』

 

 

 

 

「しほさーん!」

 

「なんですか? 邪魔しないでください、島田流」

 

「おもしろい事、聞きましたよ!?」

 

「…?」

 

「隆史君……酔ってるそうですよぉ?」

 

「…は?」

 

「備え付けのお茶に…焼酎を混ぜたそうです。だから、あの様子なんですねぇ」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「…おい、ハゲ」

 

 

 

 

 

「」

 

 

 

 

 

 

 

『あっ! そうだ!!』

『んだよ。林田』

『さ…さっき、言ってた家元!!』

『しほさんか?』

『そうそう!!』

『お前、写真とか持ってる? 見てみたい』

『…どれがいい?』

『……お前の携帯、画像ファイルの数が凄まじいな…』

『普通のでいいか…。これとか?』

 

『!?』

『林田? 何震えてる』

『…これ? この人!? 西住さんのお母さん!?』

『そうそう、西住流家元』

『…彼女の母親のピンでの写真が、携帯に入ってる時点で、ちょっと…どうかと思うけど…』

 

『まじで!? お母さん!? 若っ!! これで2児の母親!?』

『だろ!!』

『なぜ、尾形が嬉しそうなんだろう…』

 

『つか…なにこの美人!! でっか!!!』

『だろっ!!!!』

『尾形が、今日一番の笑顔だ…』

 

『尾形が、西住さんのお母さんが大好きな理由ってこれか!!』

『これだけのはずないだろ!!』

『…どうしたらいいんだろう』

 

 

 

 

「…お母さん」

 

テレビ画面から、隆史君が携帯電話で撮ったであろう写真を、林田君に見せている。

今日一番のテンションで…。

 

隆史君の会話内容が聞こえてきた瞬間、お母さんの動きが止まった。

 

「…お母様」

 

「んんっ!!」

 

咳払いを一つして、取り繕っている。

遅いなぁ…。

 

 

 

 

『というか、うるせぇな! 中村!!』

『なに一人だけ、冷静面してるんだよ』

『いや…、俺どちらかといえば、島田流の家元派だから』

『ん? 千代さん?』

『え!? なに!? 島田流の人も美人なのか!?』

『見るか?』

『写真あんのかよ!!』

 

『…ほれ』

『……』

『な? 俺は、島田流家元派なんだよ。西住流の家元さんは、なんか固そうだしなぁ…』

『…なに? この美人。なに!? この美人!!』

『林田うるせぇ』

『うわぁ…。なんだろう…尾形の気持ちが分かってきた…。まずい…理解できる…』

『…これで人妻ってんだろ?』

『……』

『……』

『いかん…存在自体がエロい…』

 

『……』

『どうした、林田』

『なぁ、尾形』

『なんだよ』

 

『お前は、どっち派なん?』

 

 

 

 

「「 …… 」」

 

せ…静寂が…。

黙ったまま、お母さんがテレビ画面を睨んでいる…。

あ!! 島田さんも皆と同じ格好になった!!

 

「……」

 

 

 

 

『なんだよ、中村』

『お…お前……なんでそう、聞いちゃいけないことばかり聞くんだよ!!』

『なにが?』

『パワーバランス考えろよ!!??』

『なんの事だよ…』

『二人共、なんでか尾形に入れ込んでるんだぞ!?』

『…だから?』

『だからって…』

『え…ただ、どっちが尾形の好みかって聞いているだけだろ? 何言ってんだ?』

『いやな…そりゃそう…』

『いやいや! なにマジになってんだよ。二人共人妻なんだろ? 変な関係でもあるまいし』

『………』ソウダトイイナ…

『…で、尾形! どっちだ!?』

 

 

『 分からん!! 』

 

 

『は?』

『即答したな…』

『多分なっ!!!』

『ぉお…』

『 それを選ぶと俺は死ぬ 』

『……』

『なぜか知らんが、本能がそう言っている! シ ヌ ゾ と』

『……』

『今まで、その質問が俺に無かったと思うか!?』

『ま。そりゃそうか』

『…本能で危機察知してんのかよ…慣れてるなぁ…』

 

 

 

 

 

「「 チィ!! 」」

 

力強い、舌打ちが聞こえた…。

といか…もう、本当に帰りたい…。

まぁ…、今日はここに泊まるんだけど…コレを早く終わらせたいよぉ。

 

 

 

 

 

『…なぁ、中村。関係ない話していいか?』

『俺? なんだよ』

『…まぁ、林田には分からないだろうからさ』

『ふむ?』

『…俺に分からない事前提ってのが、引っかかる』

 

『まぁ、あれだ。みほとの事だ』

 

『『 聞こうじゃないか 』』

 

 

 

 

・・・。

 

また何か始まっちゃった!!

 

「お母さん」

 

「なんですか?」

 

「…なんでそんなに、真剣な顔をしてるの?」

 

「自身の娘の事です。気にならない、はずがないでしょう?」

 

……。

 

「お姉ちゃん」

 

「…ノーコメントだ」

 

「オネエチャン」

 

「…ノーコメント…」

 

「ちょっとこっちを、ムコウヨ」

 

「……」

 

 

 

 

『…一年の宇津木さんに、教えてもらったんだけどな…』

『あぁ…あの、妙に艶かしい一年か…』

『みほに、壁ドンとやらをしてみたらどうか? と、言われたんだ』

『…唐突だな』

『今時、壁ドン…』

『どうにも、俺達を見ていると、プラトニックすぎるというか、俺が奥手に見えるそうで…試しにやってみたらどうですかぁ? …と言われた』

『……』

『一気に距離が縮まりますよ! と、えらく嬉しそうになぁ…』

『…アワアワする、西住さんが目に浮かぶようだな…』

『俺って奥手に見えるのか?』

『各校の選手達相手に、何もしないヘタレだと、俺達は認識しているな!』

 

『……』

 

『…まぁいい、で?』

『壁ドンなんてやっても、引くか、怯えさせるだけだと思うんだけど…』

『そうか?』

『試しにやってみれば?』

『う~ん…』

 

 

 

 

……。

 

「みほ」

 

「……」

 

「何を期待した目をしている」

 

「……」

 

「ちょっとこっちを、ムコウカ?」

 

 

 

 

『…尾形?』

『どうした? どこに行く…て、お前…まさか』

 

 

ゴ ド ン ッ !!!

 

 

『 うるせぇぇ!!!! 』

 

 

 

『『  』』

 

 

『って、やるんだろ? これでどうして、距離が縮められるんだよ?』

 

『『 違う そうじゃない 』』

 

『…いや…起源は合ってるんだけど…。いろんな意味で、お前知らねぇのかよ…』

『…林田すら知ってるのに…』

『取り敢えず、すげぇ音したな…おもいっきりやったのかよ…。壁、大丈夫か?』

『壁? あぁ、音がでっかく出るようにしたから、うまく衝撃は逃がした』ナレテル

『……』

 

 

 

 

《 …… 》

 

「すごいな…。今時、ドラマとか映画でもやっているのに…」

 

「あ、ダメっすよ、姐さん。タカシってテレビは、殆どニュースぐらいしか見ないって言ってたっすよ?」

 

「…おっさんか」

 

「ですから、ドゥーチェ。恋愛小説みたいな事、隆史さんに期待してもダメですよ?」

 

「なふっ!?」

 

…そういえば、そんな事言ってたっけ…。

 

 

 

 

『……』

『ドア、ノックされたぞ…』

『…隣、人いたのか…』

『……尾形』

『分かった…』

 

『も…申し訳ねぁでした!!』

 

『…ドア開けた瞬間、謝ったな…』

『ドア開いた早々、尾形だしな…』

 

『さ…騒がしくしたづもりは、ながったのだげどぉ』

 

『あれ? ニーナじゃないか』

『えっ!?』

『あら、アリーナも』

『隆史さん!?』

 

『…おい、中村』

『……もはや、ただただ西住さんが、不憫でならねぇな』

 

『いや、ごめん…うるさかったわけじゃないんだ。驚かせたか。申し訳なかった』

 

『おい…尾形の口調が変わったぞ…』

『淡々と説明しているな。なんだ…雰囲気まで変わったな』

 

『び…びっくりしだぁぁ…』

『よがったぁぁ…』

『すまんかったなぁ。んで、どうしてここにいるの?』

『私達、カチューシャ様の付ぎ添いで来だんだ』

『運転手兼、従者って感じだぁ…』

 

『おい…中村、アイツ普通に女の子の頭撫でてるな…』

『…これが、タラシ殿…』

 

 

 

「…ノンナ」

 

「……はい、手配しておきます」

 

「あら、でも、カチューシャ様? ここであの二人に何かすると…バレません?」

 

「「 …チッ 」」

 

まだ…知り合いがいた…。

また、女の子…。

 

 

 

 

『すげぇ笑顔で…手を振って帰っていったな…』

『まぁ、プラウダの生徒だよ。しょっちゅう…カチューシャとノンナさんから庇ってやっていたら…なんか懐かれた』

『お前、雰囲気変わりすぎだろ…』

『そうか?』

 

 

 

 

 

「何ルーブルにしようかしら…」

 

「……」

 

「ですから、カチューシャ様…」

 

「わかってるわよ!!」

 

 

 

 

『まぁいいや、話を戻そう』

『…お前の壁ドンは、脅迫にしか見えんかったな…』

『まぁ随分と慣れたモノだったな…』

『……』

 

『そうだな、口で説明するより実践だろ』

『…は?』

『さっきの子達、呼んでくる?』

『やめとけ…もう迷惑かけるな…』

『んじゃあ、中村。やってどうぞ』

 

『…は?』

 

『あぁ! でも、タッパが違いすぎるか! んじゃ尾形、中村の向かい側に立て』

『?』

『待て!! 話を進めるな!!』

 

『こうして…そうそう、後は中村を追い詰める様にして…そうそう!!』

『おい!! 尾形! お前も何、素直に従って…あぁ! こいつ飲んでるんだった!!!』

 

『…なんで俺は、男相手にこんな格好をしなきゃならないんだ?』

『じゃぁやめろよ!! お前にそれされると、恐喝されてるみたいだろ!!』

『なんだ、このイカツイ壁ドン…』

 

 

 

 

《 …… 》

 

「…みほ…あれは……」

 

「しっ!! お母さん、静かに!!」

 

「えーと…まほ?」

 

「……」

 

「……娘達がおかしい…」

 

……

 

「…隊長が、何かに目覚めようとしてる…」

 

……

 

…………

 

 

 

 

『あ、そうだ。尾形』

『なんだよ…』

『中村のネクタイ掴んでみて?』

『…なんで……まぁいいけど…』

『よくねぇ!! あぁ!! もう本格的に筋モノに絡まれてる感がすげぇ!!』

『んで、ちょっとネクタイ引っ張って』

『…良くわからんな。…こうか?』

 

 

 

 

「児玉理事長?」

 

「な…なんだね、島田さん…」

 

「この映像、録画されてます?」

 

「いや…後を残すとまずいと思って…ただの中継だよ?」

 

「……チッ」ツカエナイ、ハゲネ

 

「舌打ち!?」

 

「あ…島田流の家元は、行けるクチなんだ…」

 

…エリカさん、うるさいなぁ…。

 

 

 

 

パシャッ

 

『おい! 林田!! なんで今、写真撮った!!??』

『え…記念に…』

『何のだよ!!』

『…よくわからん……これが、壁ドン? なんの意味が……』

『尾形! ボケッとしてないで、林田の写真を消すぞ!!』

『は?』

『あんな写真が出回ってみろ! お前も俺も、ホモ認定されっぞ!?』

『…なんで?』

『あぁぁぁ!! もうっ!!!』

 

『…この写真売れねぇかな………』

 

『林田!!!』

 

 

 

 

《 !!! 》

 

「ペコ?」

 

「…はい。手配します」

 

 

 

 

『…チッ、分かったよ…消すよ! まったく…』(ガルーンニ、ホゾンシテオコウ)

『…まったく!!』

『ほら、よく見ろ! はい、消去!』

『お前、いつか痛い目に遭うぞ…』

 

『はぁ…まぁいいや。んじゃこれで本当にお終いだな』

『いやぁ…胃にダメージをモロに食らったけど…ま、面白かったな』

『そうだな…ところでよ、林田』

『ん? なによ』

『今日、初めからだけどもさ。何かしら変だったな』

『ん? どこが?』

『本当に、こんな短時間で尾形と西住さんとの進行状況を聞いたりよ。聖グロの選手達とかの尾形からの印象聞いたりよ…』

『あぁ…』

『そうだな。俺の事を聞くのは辞めて頂きたい!』

『……ま、壊れた尾形はどうでもいいが、どうしたんだ?』

 

『あぁ、始めに聞いてくれって頼まれた』

 

『…は? 誰に』

 

『日本戦車道連盟のおっさん』

 

『『 …… 』』

 

『すげぇハゲてる人』

 

 

『『 …… 』』

 

 

 

 

 

「なぁ!!??」

 

理事長が口を開けた…。

スパイとか言っていたからなぁ…あっさり裏切られたのかな?

ウフフフ…

 

……

 

あ!!!

そうすると、まずいくないかな!? 

あぁ!! 皆がそわそわし始めた!!

 

 

 

 

 

『…意図が分からんな……』

『なんかさ、その方がおもしろいとか何とか言ってたぞ?』

『……』

『別に今更だけど、俺も気にならない訳でもないし…それ知っておいた方が、衣装選び面白そうだったしな』

『……』

『まぁ、あのハゲが考えそうな事だよな…』

(酒を混ぜるといい…この手の入れよう…)

『中村?』

『…なぁ、憶測だけどな…ひょっとして…』

『んぁ?』

 

『この部屋、盗撮とか盗聴とか、されてないよな?』

 

 

 

 

ガタンッ!!!

 

「ペコッ! アッサム!!」

「アッハッハッハッハ!!」「隊長!! 爆笑してないで!!」

「ペパロニ!! カルパッチョ!!」

「ノンナッ! クラーラ!!」 「「はい!」」

「エリカ!!」「はい!!」

 

皆、一斉に皆立ち上がった…。

 

逃げる気だ…。

 

ここまできて、逃げる気だ!!

 

 

 

 

 

『…そんな事してメリットあんのかよ』

『各学校の生徒を、その場に足止めさせるには、いい餌だろ…』

『だから、なんの為にだよ…』

『…修羅場』

 

 

 

 

 

「な!? なんだねあの子は!! 勘が良すぎないかい!?」

 

「…おや、理事長。暴露しましたね?」

 

「しまっ!!」

 

「…子供の人間関係、引っ掻き回して…覚悟なさい……」

 

覚悟って…

 

「フ…フフフ……」

 

「…なにが、おかしいのですか?」

 

「何を言ってるのかね? 先程まで見入っていた、家元お二人も同罪だよぉ?」

 

「「 」」

 

「さぁ一緒に、尾形君に怒られようじゃないかね? んん!?」

 

あ、理事長がヤケになり始めた…。

 

……。

 

あれ? お母さんが小刻みに震えてる…。

目元が暗くなって、動かなくなった…。

 

「ん? しほさん?」

 

あ…そっか。

 

「 オ カ ア サ ン 」

 

「みほ!?」

 

「マタ、正座かな?」

 

「!!」

 

ウフフフフフ…

 

 

 

 

 

 

『まぁ、大丈夫だろ』

『尾形!?』

『昼に、まほちゃんとミカと会ったけど普通だったし…普通なら即、コロサレルダロ?』

『…あぁ、そういえば』

 

『それになぁ…』

『なんだよ』

『盗撮されていたとして』

『されていたとして?』

 

『皆なら、判明した時点で、帰るなり見ないなりするだろ』

 

 

 

 

《 !!! 》

 

あ…皆が、一斉に固まった…。

 

 

 

 

『そんな映像が流れてたとしても、彼女達なら素直に見るような…そんな()()()()()はしないだろうよ』

 

 

 

 

《   》

 

あ。

 

皆、うずくまった…

 

 

 

 

『ま…まぁそうだろうけど…』

『はっはー。大丈夫、大丈夫』

『お前…その信頼はどこからくるんだろ…』

 

『よし、後は報告して終わりだ! 俺は…少し寝る…』

『お…おぉ! 寝ろ! マジで寝ろ!!』

『お前らどうするの?』

『流石に帰るわ…俺らも流石に疲れた…』

『だな…』

 

『んじゃ、お疲れ~ありがとな』

『はいよ~』

 

 

 

 

「…」

 

みんなの顔色が優れない…というか、土気色してる…。

罪悪感が、すごいよ…。

これは、言えない…怒れない…。

 

「だ…だーじりんさま」

 

「ななななにかかしら?」

 

「隆史様…卑怯な真似って言ってましたね…」

 

「一番、隆史さんが嫌う言い方ですよね…あれ」

 

「……」

 

「ば…バレたら…確実に…」

 

「「「 …… 」」」

 

怒るだろうな…それこそ、本気で怒るだろうな…。

それ以前に…

 

「みほ…」

 

「…なに? お姉ちゃん」

 

「墓まで持っていこう…」

 

「…そうだね」

 

 

 

こうして、訳の分からない誓約が、各学校で結ばれました。

 

 

 

 

 

 

 

「…つ…疲れた…」

 

疲労感が凄い…。

今回の決定事項を、提出し終わったので、これで本当に終了。

…なに真面目に仕事してんだろ…。

 

まぁいいや…。

もう何も考えたくねぇ…。

 

昨日から泊まっているホテルの、用意された部屋に向かう。

昨夜は、結局徹夜作業だった為に、荷物を置きに入っただけなのだけどな! 

 

あのクソハゲ!!

 

祝勝会までには、まだ1時間ほど時間があるな…。

先に風呂にでも入るか…。

 

「あれ? 先輩?」

 

あら…。

 

ロビーへ繋がる廊下の先、見知った団体様を見つけた。

流石に、こんな公共の場所では、制服か…。

むしろこちらの姿の方が、違和感があるな。

 

「…どうも」

 

「尾形君、早いねぇ」

 

「随分と疲れた顔してますね?」

 

はい、アヒルさんチーム。

なんだろか…すっごい久しぶりに会話をした気がする…。

 

……

 

河西さんが…すっごい警戒した目で見てくる…。

試しに、少し手を少し動かした。

 

……。

 

「河西さん」

 

「……」

 

「流石に…少し、傷つくんだけど…」

 

「……」

 

あぁ…プラウダのテント前で、結構な事しちゃったけ…。

まぁとにかく、脚を褒めただけだけど!

腰もか! クビレもか!!

 

……

 

…うん、俺が悪いな。

近藤さんの真後ろに、隠れてしまった…。

すげぇ、警戒されてるなぁ…。

 

「せ…先輩は、いつ頃来たんですか?」

 

近藤さん! 相変わらず、気遣いが出来る子!! ちゃんと空気が読める!!

ですから、正直に答えましょう。

 

「…昨日から」

 

「「「「 …… 」」」」

 

「帰ってきて早々…日本戦車道連盟のハゲに拉致られてさ…。そのハゲから押し付けられた仕事が…今さっき終わった…」

 

「「「「 …… 」」」」

 

なんとも言えない…そんな表情で返されましたね。

 

「お…お疲れ様でした…」

 

「ありがとう…」

 

まぁ、それしかかける言葉が無いのだろう。

はぁ…言葉にすると、ドッと疲れが押し寄せてくるな…。

 

「ところで…」

 

「ん?」

 

「その一緒にいる方、どなたです? 家族の方ですか?」

 

「……え?」

 

はっはー…。

誰だろ…。俺は先程まで、ずっと一人でした。

ですから多分、見えてはいけないモノだろうか?

ここに来てホラーですか? やめてください。

 

…違うよなぁ…。

もう何度も経験したから分かる…。

 

どうせ、戦車道の強豪校の隊長クラスだろ…。

 

「先程から、ずっと…先輩の小指を握ってますが……」

 

「……」

 

……

 

…………

 

君は、アレですか?

 

あの人達と同レベルの人ですか?

将来楽しみだね…。

というか、早くない!? もう着いたの!?

 

「えへへ~…」

 

嬉しそうに、俺の小指を、手で掴むように握っている。

少し緑掛かる程の黒髪に、前髪パッツン。ボブショートの女の子。

年の割には背が低く、そのくせヤッパリ遺伝だろう…と納得するしかない…ぼりゅーむ。

 

「…こんにちは、詩織ちゃん」

 

「こんにちは! 尾形さん!」

 

キラッキラのいい笑顔だ…。

 

「ロビーから、見えたので…来ちゃった♪」

 

「…あ、はい。元気そうで…」

 

なんだろうか…。

ある意味積極的なのは良いのだけど、色々な意味で、沙織さんとは真反対に感じたんだよなぁ…この子。

 

「…あの、先輩?」

 

「あぁ…この子…いや、彼女は…沙織さんの妹さん…デス」

 

まぁ微妙なお年頃っぽいし、一応彼女と言っておこう。

子供扱いは嫌がりそうだしね…。

 

「武部先輩の!?」

 

「はい! 中学3年! 武部 詩織です! 姉がお世話になっています!!」

 

あら、しっかりした子。

紹介した矢先、姿勢を正して、深々とお辞儀をした。

 

「…なに? またナンパしたの? こんな子供ナンパしたの?」

 

…きっついなぁ。

 

河西さんの言葉を、詩織ちゃんが反応した。

 

「いえ! 私がナンパしました」

 

「「「「 !? 」」」」

 

あ~…やっぱり。

子供という部分に反応したか…。

一瞬、ムッとした顔したしなぁ。

 

「大丈夫です! まだ子供かもしれませんが!」

 

「……」

 

「 アンタより、胸ありますから! 」

 

「」

 

……え?

 

なんつった!? 今、なんて言った!?

 

「あ、間違えましたぁ…」

 

「貴女より、余程女性のシンボルが、ふくよかですから! ご心配無く!!」

 

………。

 

あれ? こんな子?

こんな子なの!?

 

「ね! 尾形さん!!」

 

「」

 

勘弁して…。

 

「いや! 知らないよ!? なんで知ってる事、前提に言うの!?」

 

「ほら! メールで教えたじゃないですか!」

 

「いやいやいや! 君のメール、暗号過ぎて分からなかったんだよ!?」

 

「あ、そうなんですか? では、改めて…私、もうCカップはありますよ!!」

 

「それを、俺に教えてどうするの!?」

 

ほら! アヒルさんチームが呆気に取られてる!

河西さんだけ、ヘコんでるし!!

 

「大丈夫ですよ? 先輩?」

 

「近藤さん!?」

 

「先輩が、中学生に手を出すような、腐れ外道だなんて…爪の先ほどにも思っていませんから」

 

「……」

 

その言い方は、喜んでいいのだろうか?

ウフフと笑ってはいるのだけど…なんか…怖い…。

なんだこのカオスな状態…。

 

……。

 

詩織ちゃんが、また笑顔で俺の指を掴んだ。

それに反応するかの様に、近藤さんの頬が、一瞬引きつった…。

 

そしてそのまま、膠着状態へ…。

 

助けて…。

 

 

「詩織!?」

 

…来た

 

「え? あんた何やってるの!?」

 

……ご家族の方がいらっしゃってくれました!!

 

みほを除いたあんこうチームが、ホテルロビーより、団体様で来てくださいました!!

 

チッ「 お姉ちゃん!」

 

嬉しそうに姉を呼ぶ、妹。

一瞬の舌打ちは、多分空耳だろう! うん!!

 

「お姉ちゃん! じゃなーい! なんで大洗にいるの!?」

 

「え…詩織ちゃん!? 沙織さんに会いに来たとか言ってなかったっけ!?」

 

「え!? 隆史君!? 詩織を知ってるの!?」

 

「はっ!? え!?」

 

え…どうなってんの?

 

…は?

 

カオスの闇が深くなって行く…。

 

「…詩織」

 

「あ、麻子お姉ちゃん。久しぶり!」

 

「…久しぶりだな」

 

また、元気に挨拶してるなぁ…。

あ、そうか。

マコニャン、沙織さんと幼馴染だっけか。

なら、当然妹の詩織ちゃんと、面識があってもおかしくないか。

ただ…ちょっと、マコニャンの顔色がすぐれないなぁ

 

「っ! ちょっとこっち来なさい!!」

 

「え!? やっ!! お姉ちゃん!! 引っ張らないで!!」

 

取り敢えず、話を聞かせろと。

呆然としている、アヒルさんチームとあんこうチーム…様は、俺らを残して、ロビー方面へ詩織ちゃんは、連れ去られていった…。

 

…実の姉に。

 

「…おい、書記」

 

「なに? 麻子お姉ちゃん」

 

「……」

 

怒られた…

 

「まぁいい。いつ詩織と知り合ったんだ」

 

「んまぁ…決勝で、会場彷徨いてる時だけど…」

 

「はぁ…なんだ? お前は、女を探す探知機でも内蔵されてるのか?」

 

「……」

 

「あいつは…詩織はな。悪い娘じゃないんだけどな…おばぁも気に入ってるし…」

 

「へぇ…あの、婆さんがねぇ…」

 

「だがな。あれは、沙織の妹だ」

 

「そ、そうだな…」

 

なにが言いたいんだろ…

 

「恋愛とやらに飢えてる」

 

「まぁ…うん。なんとなく今ので分かった…」

 

ゼク○ィ詩織かぁ…

 

「その割合は、沙織を凌駕してる…」

 

「」

 

「しかも…」

 

「……なんだよ」

 

沙織さんを凌駕してるって…。

まぁなんとなく先ほどの会話で分かったけど…。

 

「詩織は…私が引くほど……黒い」

 

「……」

 

「そうか…お前は、アレに目をつけられたのか…」

 

「…ちょっと待て。なにその怖い言い方」

 

 

 

 

「精々、気をつけるんだな」

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

さぁ、エンカイ・ウォー!っだ!

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