『あ、そういえばさ。男の撮影枠ってどうなってんの?』
『尾形やんの?』
『 ヤ リ マ セ ン 』
『でもさぁ、お前が責任者だろ?』
『関係ない。あんな全国から、一斉に怨念を引き受ける様な役なんぞやらん』
『…一部には需要ありそうだけどな』
『だってな…今回から値上げするんだと…』
『いくらよ』
『…300円(税抜)』
『『 たっか!! 』』
『殆ど、ソシャゲのガチャと同じだ』
『足元見てるなぁ…』
『そんな金払ってな…出てくるのが、男だぞ?』
『『 …… 』』
『俺なら破り捨てる…』
『気持ちは分かるが…』
『やりたきゃ、お前らのどっちかやれば?』
『俺らただの観客だぞ? 戦車道に関係してねぇよ』
『…チッ』
『んじゃ、尾形の衣装決めるか』
『そうだな』
『やんねえよ! 黒森峰で最後だ! 最後!!』
>
「なるほど、あのいかがわしいカードの件ですか…」
「人様を巻き込んで、おもしろい事しますねぇ?」
「」
隆史君までカードになるのかぁ…。
……。
本当に一部に需要がありそう。
うん極、一部に。
「…で? 先程から数秒が経過しましたが…。はやく理由をお答えください」
「」
あれ…お母さんだ。
幻じゃなくて、本物だ。
帰ったんじゃなかったのかな?
他のみんなは、とっくに気がついていたみたい…。
考え混んでしまっていた、私とお姉ちゃんは、今気がついた。
「3…2……」
「早くないかね!? 数秒って!! しかもカウントダウンも短いよ!?」
「……1…」
「やめない!?」
カウントダウンに従って、組んでいた腕をゆっくりと伸ばし始めた。
な…何する気だろう…。
あ。指がコキッて音した。
「まぁまぁ、しほさん」
「……」
「こういった手合いの相手には、目撃者に聞いたほうが、おも…いえ、てっとり早いですよ?」
「目撃者…?」
「はい。ですので、前科者さんに全て吐いてもらいました♪」
島田さんの横に、肩を落とし、完全に怯え切った…アリサさんがいた…。
あれ…まだそんなに、時間経ってないのに。
「また、貴女ですか」
「 」
「…今度は盗撮ですか?」
「ちっ! 違います!! 今回は、そこのハゲの単独犯です!! 私は関係ありません!!」
「……ふむ」
コソコソと、会場の地面を這いながら逃げようとしている…。
いい大人の逃げ方じゃないなぁ。
そのまま無言で、理事長の袴を踏みつけ、逃亡を阻止した。
この状態のお母さんから逃げ切っても、後からもっとひどい目にあうのになぁ。
襟首を掴み、先程まで座っていた席に…力尽くで戻した。
正面に周り、もう一度見下ろしながら…一言。
「 次、逃げようとしようものなら…分かってますね? 」
「 」
あ…島田さんは、理事長にはすでに興味が無いようで、テレビ画面を見上げている。
その手には、アリサさんが捕まったままだ…。
「…貴女達」
「」
「」
向い側…生徒の席の並び。
その先頭にいた…私達の前に踵を返して振り向いた。
…。
矛先がこちら!!
「まほ…みほも…。何を考えているのですか?」
「…その」
「……」
いけない…。
先日…普通に話せる様に、少しずつなってこれたと実感したばかりだった。
だからかな…それは、お母さんも同じだった。
ギクシャクした感じが、少しずつ解けていった…。
それはいい。
それはいいんだけど…。
その為かな? お母さんは、昔…小さい頃に私達に説教する時の様な顔になってる…。
つまり…母親としての説教顔に変わっていた…。
だからだろうか?
お姉ちゃんも目をそらしている…。
「…盗撮に素直に加担するなど…西住流がどうのという話ではありません」
「いえ…加担していた訳では…」
「……素直に、その映像を視聴している時点で、同罪です!」
「」
>
『んじゃ、さっきのが最後だな?』
『そうだ。もう終わり! 男の撮影枠なんざ…『では聞かせろ』』
『なんだよ…』
>
テレビ画面からは、会話がまだ続いている。
もはや皆、お母さんの怒気に飲まれ、テレビを見ていない。
「まったく……他の高校も揃いも揃って…」
だって…お母さんが、色々と溜め混んでいる。
ぐっ…っと、助走をつけるみたいに…。
「恥を知りなさい!!」
お母さんの怒号が、会場中に響き渡った。
―が。
>
『西住さんと、どこまでいった?』
>
ガタァーン!!!
「……」
音を立てて、私の横に飛び座った…。
机を飛び越えたよ!?
なんで、最初の隆史君と同じ格好になるの!?
あ…皆、同じ格好になった…。
なんで!?
だから! そんな決まりでもあるの!?
え!?
さっきまでの空気は!?
「あらあら、しほさん…」
唯一、普通にしているのは、島田さんだけ…。
「お母さん」
「……なんですか」
「さっき、「恥を知りなさい」とか何とか、言ってなかった?」
「…言いましたね」
「じゃあ、やめようよ! 帰ろうよ!! やっと終わると思ってたのに!!」
「……」
「振り出しに戻っちゃったよ!!」
「…みほ」
「なに!?」
「これも戦車道です」
「違うよ!! ぜっっったいに違うよ!! 西住流が心配になるよ!!!」
「……」
「目を逸らさないで!!!」
ぁぁああ!! 理事長の顔が、またすっごい笑顔になってる!!
「ほら! いいの!? 理事長の思うツボだよ!?」
「…みほ」
「なに!?」
「あまり、人を疑うものではありませんよ?」
…。
……縁、切ろうかな…。
>
『えっと、男性撮影枠の話だったな!』
『……露骨に逸らした』
『いやいや、そっちはもうどうでもいいから、西住さんとの進行具合をだな?』
『……』
『…どうした、尾形』
『ちょっと電話してくる』
……
『…チッ、逃げられた』
『今度は、部屋出て行ったな』
『西住さんに、言っていいか許可もらいに行ったんじゃね?』
『それは、ないだろ。絶対に許可なんてくれないだろうよ』
『…なぁ』
『なんだ?』
『イケメン君からすると…どうだろ…アレ』
『…尾形と西住さんか?』
『そうだな』
>
あ、隆史君が退室した…。
私に電話来るの!?
「……」
皆っ!! 真顔!!!
…お母さんが、あっさりと同じ穴の狢になった。
>
『…まぁ』
『……』
『あの感じじゃ! ひょっとすると…ひょっとするかもな!!』
『!!』
>
「…みほ?」
「……」
「なぜ、下を向いているのでしょう?」
「……」
「なぜ、赤くなっているのでしょうか?」
「……」
「少し、お母さんと話しましょう? ん?」
「……」
>
『…アノ、ウラギリモノ』
『まぁまぁ。つき合ってんなら普通だろ。もう、あまり聞いてやるな』
『……』
『林田?』
『…こうなったら、尾形の衣装を……』
『なんだよ』
『これにしてやる…』
『……』
『 オーク 』
『……ただ、腰巻させて体を緑に塗っただけだな…』
『……』
『…林田』
『ダメだ!! これだと、くっ殺になる!! またチャンスを与えてしまう!!』
『いやぁ…多分、ダージリン選手相手だと…逆に喜んで、鎧脱ぎそうだぞ…』
『……西住さんもだよなぁ…』
『だな!』
『んじゃ…却下!!』
>
「……」
「アッサム…何を納得した顔をしてるのですか?」
「…はぁ……」
「ですから、クッコロっとは、どういった…ん?」
「どうしました? ダージリン様?」
「いえ、携帯に着信が……ん? 隆史さん?」
ぅぅぅ?
「はっ…はい。どうしました?」
あれ? 私じゃなくて、ダージリンさん?
携帯電話を耳当てている、ダージリンさん。
うん、お母さんは視界に入らないなぁ。
「……」
あ、苦虫を噛み殺したかの様な顔をした。
ダージリンさんが珍しい…。
「はい、確かに存在しておりますね。非常に…不本意ですが…。許可を出したのを、未だに後悔しております」
なんの事だろう?
あ…また眉を潜めた。
「どうにも、隆史さんを非常に敵視していますけど…本当によろしいのですの?」
…敵視。
「…なるほど。分かりました、私から言っておきます」
…なんなのだろう。
>
『ただぁいま!!!』
『ぉわ!?』
『だから、変なテンションで……まて。なぜまたソレを飲む』
『ん? お茶飲むのが、おかしいか?』
『……』
『…まぁいい…で? どうした?』
『男の撮影枠が決まった!!』
『は?』
『ちょっとダー様に、電話してきた!!』
『…ダージリン選手?』
『そのダージリンに、親衛隊とやらがいるんだ』
『しんぇ…は!?』
『一人、ロリコンのおかしいのが、いるんだよ。そいつに押し付け…基、オファーを出した』
『……』
『ダージリンから言えば、大丈夫だろうし。何よりナル入ってる奴だったしな!! 喜んで引き受けるだろ!』
>
あ…。
オレンジペコさんと、アッサムさんの目が…。
特に、オレンジペコさんが、あそこまで人を蔑む様な目をするなんて…。
「…ダージリン様」
「……そういう事だから…、オファーお願いね? ペ・コ?」
「嫌です! 絶対に嫌です!!」
「ダージリン。隆史さんは、貴女に依頼をしてきたのですから、しっかりと自分でなんとかなさい」
「……」
「…それに、オレンジペコにお願いするのは、少し酷じゃないかしら?」
「そうですよ!! あの人、気持ち悪いです!! 私を見る目が、生理的に受け付けません!!」
…はっきりいったなぁ…誰の事だろ。
「では、こうしましょう」
「なんですか?」
「オファーは断られたと。そうすれば、必然的に隆史さんの役目となるでしょ?」
「「 それでいきましょう!!! 」」
隆史君のカード化が、現実になりそうだ…。
>
『そういやよ』
『なんだよ』
『カメさんチームの衣装も内緒なんだろ?』
『そうだな!! 柚子先輩を、いぢめたいから内緒!!』
『お前…昨日呼び出されたばかりだろうに…』
『しっかし…こうやってみると、隊長、副隊長だけじゃなくてさ…各学校の選手全員をカード化して欲しくなるな』
『そうだなぁ…キャラが濃い奴多いしな』
『例えば?』
『聖グロだと…ローズヒップとか?』
『ふむ…で? 衣装は?』
『 アマゾネス 』
『……』
『…驚く程しっくりくるな…一応、お嬢様校だろうに』
『取り敢えず、ドクロの兜な。武器は、斧』
『まぁ…うん…』
『ただ…ローズヒップって腹筋割れてないからな…。ちょっと…鍛えさせるか…』
『……ちょっと待て。それは、なんで知ってるんだ?』
『……』
『後は、やっぱりプラウダから、クラーラさんかなぁ』
『待て!! 質問に答えろ!! ローズヒップさんって、カード化まだされてないよな!?』
『…………』
『彼女は、ちょっと海賊から離れようと思うんだよ』
『聞けよ!! 俺の話を!! …って、なんだ!? 中村!!!』
『やめとけ…な? もう、なんか……本当にメンドクセェ…』
『……』
『なんだろうか…クラーラさんは…槍騎士とか……』
『…話を一人で進行するなよ……』
『あの金髪デコは、貴重だと思うんだ!!』
『は? んなら、クルセイダーか?』
『それは、愛里寿だ!!』
『……』
『そうだ…。愛里寿をクルセにして、大学生達を…近衛兵に…』
『……』
『……』
『露出は、できるだけ控えて…あぁ大学生達は、どうでもいいや。腹出しくらいなら、普通にやってくれっだろ』
『……』
『……』
『あっ! 取り敢えず、クラーラさんは、エルフ耳確定だな!! っ! んなら、アーチャーもいいな!』
『……』
『……』
『なぁ…中村』
『…分かってる…本格的に、尾形が壊れたな』
『西住さんとの事は、もう言わない方がいいか?』
『…やめとけ。下手すると、本当に聞かない方がいい事まで喋りそうだぞ?』
『……』
>
「しほさーん!」
「なんですか? 邪魔しないでください、島田流」
「おもしろい事、聞きましたよ!?」
「…?」
「隆史君……酔ってるそうですよぉ?」
「…は?」
「備え付けのお茶に…焼酎を混ぜたそうです。だから、あの様子なんですねぇ」
「……」
「…おい、ハゲ」
「」
>
『あっ! そうだ!!』
『んだよ。林田』
『さ…さっき、言ってた家元!!』
『しほさんか?』
『そうそう!!』
『お前、写真とか持ってる? 見てみたい』
『…どれがいい?』
『……お前の携帯、画像ファイルの数が凄まじいな…』
『普通のでいいか…。これとか?』
『!?』
『林田? 何震えてる』
『…これ? この人!? 西住さんのお母さん!?』
『そうそう、西住流家元』
『…彼女の母親のピンでの写真が、携帯に入ってる時点で、ちょっと…どうかと思うけど…』
『まじで!? お母さん!? 若っ!! これで2児の母親!?』
『だろ!!』
『なぜ、尾形が嬉しそうなんだろう…』
『つか…なにこの美人!! でっか!!!』
『だろっ!!!!』
『尾形が、今日一番の笑顔だ…』
『尾形が、西住さんのお母さんが大好きな理由ってこれか!!』
『これだけのはずないだろ!!』
『…どうしたらいいんだろう』
>
「…お母さん」
テレビ画面から、隆史君が携帯電話で撮ったであろう写真を、林田君に見せている。
今日一番のテンションで…。
隆史君の会話内容が聞こえてきた瞬間、お母さんの動きが止まった。
「…お母様」
「んんっ!!」
咳払いを一つして、取り繕っている。
遅いなぁ…。
>
『というか、うるせぇな! 中村!!』
『なに一人だけ、冷静面してるんだよ』
『いや…、俺どちらかといえば、島田流の家元派だから』
『ん? 千代さん?』
『え!? なに!? 島田流の人も美人なのか!?』
『見るか?』
『写真あんのかよ!!』
『…ほれ』
『……』
『な? 俺は、島田流家元派なんだよ。西住流の家元さんは、なんか固そうだしなぁ…』
『…なに? この美人。なに!? この美人!!』
『林田うるせぇ』
『うわぁ…。なんだろう…尾形の気持ちが分かってきた…。まずい…理解できる…』
『…これで人妻ってんだろ?』
『……』
『……』
『いかん…存在自体がエロい…』
『……』
『どうした、林田』
『なぁ、尾形』
『なんだよ』
『お前は、どっち派なん?』
>
「「 …… 」」
せ…静寂が…。
黙ったまま、お母さんがテレビ画面を睨んでいる…。
あ!! 島田さんも皆と同じ格好になった!!
「……」
>
『なんだよ、中村』
『お…お前……なんでそう、聞いちゃいけないことばかり聞くんだよ!!』
『なにが?』
『パワーバランス考えろよ!!??』
『なんの事だよ…』
『二人共、なんでか尾形に入れ込んでるんだぞ!?』
『…だから?』
『だからって…』
『え…ただ、どっちが尾形の好みかって聞いているだけだろ? 何言ってんだ?』
『いやな…そりゃそう…』
『いやいや! なにマジになってんだよ。二人共人妻なんだろ? 変な関係でもあるまいし』
『………』ソウダトイイナ…
『…で、尾形! どっちだ!?』
『 分からん!! 』
『は?』
『即答したな…』
『多分なっ!!!』
『ぉお…』
『 それを選ぶと俺は死ぬ 』
『……』
『なぜか知らんが、本能がそう言っている! シ ヌ ゾ と』
『……』
『今まで、その質問が俺に無かったと思うか!?』
『ま。そりゃそうか』
『…本能で危機察知してんのかよ…慣れてるなぁ…』
>
「「 チィ!! 」」
力強い、舌打ちが聞こえた…。
といか…もう、本当に帰りたい…。
まぁ…、今日はここに泊まるんだけど…コレを早く終わらせたいよぉ。
>
『…なぁ、中村。関係ない話していいか?』
『俺? なんだよ』
『…まぁ、林田には分からないだろうからさ』
『ふむ?』
『…俺に分からない事前提ってのが、引っかかる』
『まぁ、あれだ。みほとの事だ』
『『 聞こうじゃないか 』』
>
・・・。
また何か始まっちゃった!!
「お母さん」
「なんですか?」
「…なんでそんなに、真剣な顔をしてるの?」
「自身の娘の事です。気にならない、はずがないでしょう?」
……。
「お姉ちゃん」
「…ノーコメントだ」
「オネエチャン」
「…ノーコメント…」
「ちょっとこっちを、ムコウヨ」
「……」
>
『…一年の宇津木さんに、教えてもらったんだけどな…』
『あぁ…あの、妙に艶かしい一年か…』
『みほに、壁ドンとやらをしてみたらどうか? と、言われたんだ』
『…唐突だな』
『今時、壁ドン…』
『どうにも、俺達を見ていると、プラトニックすぎるというか、俺が奥手に見えるそうで…試しにやってみたらどうですかぁ? …と言われた』
『……』
『一気に距離が縮まりますよ! と、えらく嬉しそうになぁ…』
『…アワアワする、西住さんが目に浮かぶようだな…』
『俺って奥手に見えるのか?』
『各校の選手達相手に、何もしないヘタレだと、俺達は認識しているな!』
『……』
『…まぁいい、で?』
『壁ドンなんてやっても、引くか、怯えさせるだけだと思うんだけど…』
『そうか?』
『試しにやってみれば?』
『う~ん…』
>
……。
「みほ」
「……」
「何を期待した目をしている」
「……」
「ちょっとこっちを、ムコウカ?」
>
『…尾形?』
『どうした? どこに行く…て、お前…まさか』
ゴ ド ン ッ !!!
『 うるせぇぇ!!!! 』
『『 』』
『って、やるんだろ? これでどうして、距離が縮められるんだよ?』
『『 違う そうじゃない 』』
『…いや…起源は合ってるんだけど…。いろんな意味で、お前知らねぇのかよ…』
『…林田すら知ってるのに…』
『取り敢えず、すげぇ音したな…おもいっきりやったのかよ…。壁、大丈夫か?』
『壁? あぁ、音がでっかく出るようにしたから、うまく衝撃は逃がした』ナレテル
『……』
>
《 …… 》
「すごいな…。今時、ドラマとか映画でもやっているのに…」
「あ、ダメっすよ、姐さん。タカシってテレビは、殆どニュースぐらいしか見ないって言ってたっすよ?」
「…おっさんか」
「ですから、ドゥーチェ。恋愛小説みたいな事、隆史さんに期待してもダメですよ?」
「なふっ!?」
…そういえば、そんな事言ってたっけ…。
>
『……』
『ドア、ノックされたぞ…』
『…隣、人いたのか…』
『……尾形』
『分かった…』
『も…申し訳ねぁでした!!』
『…ドア開けた瞬間、謝ったな…』
『ドア開いた早々、尾形だしな…』
『さ…騒がしくしたづもりは、ながったのだげどぉ』
『あれ? ニーナじゃないか』
『えっ!?』
『あら、アリーナも』
『隆史さん!?』
『…おい、中村』
『……もはや、ただただ西住さんが、不憫でならねぇな』
『いや、ごめん…うるさかったわけじゃないんだ。驚かせたか。申し訳なかった』
『おい…尾形の口調が変わったぞ…』
『淡々と説明しているな。なんだ…雰囲気まで変わったな』
『び…びっくりしだぁぁ…』
『よがったぁぁ…』
『すまんかったなぁ。んで、どうしてここにいるの?』
『私達、カチューシャ様の付ぎ添いで来だんだ』
『運転手兼、従者って感じだぁ…』
『おい…中村、アイツ普通に女の子の頭撫でてるな…』
『…これが、タラシ殿…』
>
「…ノンナ」
「……はい、手配しておきます」
「あら、でも、カチューシャ様? ここであの二人に何かすると…バレません?」
「「 …チッ 」」
まだ…知り合いがいた…。
また、女の子…。
>
『すげぇ笑顔で…手を振って帰っていったな…』
『まぁ、プラウダの生徒だよ。しょっちゅう…カチューシャとノンナさんから庇ってやっていたら…なんか懐かれた』
『お前、雰囲気変わりすぎだろ…』
『そうか?』
>
「何ルーブルにしようかしら…」
「……」
「ですから、カチューシャ様…」
「わかってるわよ!!」
>
『まぁいいや、話を戻そう』
『…お前の壁ドンは、脅迫にしか見えんかったな…』
『まぁ随分と慣れたモノだったな…』
『……』
『そうだな、口で説明するより実践だろ』
『…は?』
『さっきの子達、呼んでくる?』
『やめとけ…もう迷惑かけるな…』
『んじゃあ、中村。やってどうぞ』
『…は?』
『あぁ! でも、タッパが違いすぎるか! んじゃ尾形、中村の向かい側に立て』
『?』
『待て!! 話を進めるな!!』
『こうして…そうそう、後は中村を追い詰める様にして…そうそう!!』
『おい!! 尾形! お前も何、素直に従って…あぁ! こいつ飲んでるんだった!!!』
『…なんで俺は、男相手にこんな格好をしなきゃならないんだ?』
『じゃぁやめろよ!! お前にそれされると、恐喝されてるみたいだろ!!』
『なんだ、このイカツイ壁ドン…』
>
《 …… 》
「…みほ…あれは……」
「しっ!! お母さん、静かに!!」
「えーと…まほ?」
「……」
「……娘達がおかしい…」
……
「…隊長が、何かに目覚めようとしてる…」
……
…………
>
『あ、そうだ。尾形』
『なんだよ…』
『中村のネクタイ掴んでみて?』
『…なんで……まぁいいけど…』
『よくねぇ!! あぁ!! もう本格的に筋モノに絡まれてる感がすげぇ!!』
『んで、ちょっとネクタイ引っ張って』
『…良くわからんな。…こうか?』
>
「児玉理事長?」
「な…なんだね、島田さん…」
「この映像、録画されてます?」
「いや…後を残すとまずいと思って…ただの中継だよ?」
「……チッ」ツカエナイ、ハゲネ
「舌打ち!?」
「あ…島田流の家元は、行けるクチなんだ…」
…エリカさん、うるさいなぁ…。
>
パシャッ
『おい! 林田!! なんで今、写真撮った!!??』
『え…記念に…』
『何のだよ!!』
『…よくわからん……これが、壁ドン? なんの意味が……』
『尾形! ボケッとしてないで、林田の写真を消すぞ!!』
『は?』
『あんな写真が出回ってみろ! お前も俺も、ホモ認定されっぞ!?』
『…なんで?』
『あぁぁぁ!! もうっ!!!』
『…この写真売れねぇかな………』
『林田!!!』
>
《 !!! 》
「ペコ?」
「…はい。手配します」
>
『…チッ、分かったよ…消すよ! まったく…』(ガルーンニ、ホゾンシテオコウ)
『…まったく!!』
『ほら、よく見ろ! はい、消去!』
『お前、いつか痛い目に遭うぞ…』
『はぁ…まぁいいや。んじゃこれで本当にお終いだな』
『いやぁ…胃にダメージをモロに食らったけど…ま、面白かったな』
『そうだな…ところでよ、林田』
『ん? なによ』
『今日、初めからだけどもさ。何かしら変だったな』
『ん? どこが?』
『本当に、こんな短時間で尾形と西住さんとの進行状況を聞いたりよ。聖グロの選手達とかの尾形からの印象聞いたりよ…』
『あぁ…』
『そうだな。俺の事を聞くのは辞めて頂きたい!』
『……ま、壊れた尾形はどうでもいいが、どうしたんだ?』
『あぁ、始めに聞いてくれって頼まれた』
『…は? 誰に』
『日本戦車道連盟のおっさん』
『『 …… 』』
『すげぇハゲてる人』
『『 …… 』』
>
「なぁ!!??」
理事長が口を開けた…。
スパイとか言っていたからなぁ…あっさり裏切られたのかな?
ウフフフ…
……
あ!!!
そうすると、まずいくないかな!?
あぁ!! 皆がそわそわし始めた!!
>
『…意図が分からんな……』
『なんかさ、その方がおもしろいとか何とか言ってたぞ?』
『……』
『別に今更だけど、俺も気にならない訳でもないし…それ知っておいた方が、衣装選び面白そうだったしな』
『……』
『まぁ、あのハゲが考えそうな事だよな…』
(酒を混ぜるといい…この手の入れよう…)
『中村?』
『…なぁ、憶測だけどな…ひょっとして…』
『んぁ?』
『この部屋、盗撮とか盗聴とか、されてないよな?』
>
ガタンッ!!!
「ペコッ! アッサム!!」
「アッハッハッハッハ!!」「隊長!! 爆笑してないで!!」
「ペパロニ!! カルパッチョ!!」
「ノンナッ! クラーラ!!」 「「はい!」」
「エリカ!!」「はい!!」
皆、一斉に皆立ち上がった…。
逃げる気だ…。
ここまできて、逃げる気だ!!
>
『…そんな事してメリットあんのかよ』
『各学校の生徒を、その場に足止めさせるには、いい餌だろ…』
『だから、なんの為にだよ…』
『…修羅場』
>
「な!? なんだねあの子は!! 勘が良すぎないかい!?」
「…おや、理事長。暴露しましたね?」
「しまっ!!」
「…子供の人間関係、引っ掻き回して…覚悟なさい……」
覚悟って…
「フ…フフフ……」
「…なにが、おかしいのですか?」
「何を言ってるのかね? 先程まで見入っていた、家元お二人も同罪だよぉ?」
「「 」」
「さぁ一緒に、尾形君に怒られようじゃないかね? んん!?」
あ、理事長がヤケになり始めた…。
……。
あれ? お母さんが小刻みに震えてる…。
目元が暗くなって、動かなくなった…。
「ん? しほさん?」
あ…そっか。
「 オ カ ア サ ン 」
「みほ!?」
「マタ、正座かな?」
「!!」
ウフフフフフ…
>
『まぁ、大丈夫だろ』
『尾形!?』
『昼に、まほちゃんとミカと会ったけど普通だったし…普通なら即、コロサレルダロ?』
『…あぁ、そういえば』
『それになぁ…』
『なんだよ』
『盗撮されていたとして』
『されていたとして?』
『皆なら、判明した時点で、帰るなり見ないなりするだろ』
>
《 !!! 》
あ…皆が、一斉に固まった…。
>
『そんな映像が流れてたとしても、彼女達なら素直に見るような…そんな
>
《 》
あ。
皆、うずくまった…
>
『ま…まぁそうだろうけど…』
『はっはー。大丈夫、大丈夫』
『お前…その信頼はどこからくるんだろ…』
『よし、後は報告して終わりだ! 俺は…少し寝る…』
『お…おぉ! 寝ろ! マジで寝ろ!!』
『お前らどうするの?』
『流石に帰るわ…俺らも流石に疲れた…』
『だな…』
『んじゃ、お疲れ~ありがとな』
『はいよ~』
>
「…」
みんなの顔色が優れない…というか、土気色してる…。
罪悪感が、すごいよ…。
これは、言えない…怒れない…。
「だ…だーじりんさま」
「ななななにかかしら?」
「隆史様…卑怯な真似って言ってましたね…」
「一番、隆史さんが嫌う言い方ですよね…あれ」
「……」
「ば…バレたら…確実に…」
「「「 …… 」」」
怒るだろうな…それこそ、本気で怒るだろうな…。
それ以前に…
「みほ…」
「…なに? お姉ちゃん」
「墓まで持っていこう…」
「…そうだね」
こうして、訳の分からない誓約が、各学校で結ばれました。
◆
「…つ…疲れた…」
疲労感が凄い…。
今回の決定事項を、提出し終わったので、これで本当に終了。
…なに真面目に仕事してんだろ…。
まぁいいや…。
もう何も考えたくねぇ…。
昨日から泊まっているホテルの、用意された部屋に向かう。
昨夜は、結局徹夜作業だった為に、荷物を置きに入っただけなのだけどな!
あのクソハゲ!!
祝勝会までには、まだ1時間ほど時間があるな…。
先に風呂にでも入るか…。
「あれ? 先輩?」
あら…。
ロビーへ繋がる廊下の先、見知った団体様を見つけた。
流石に、こんな公共の場所では、制服か…。
むしろこちらの姿の方が、違和感があるな。
「…どうも」
「尾形君、早いねぇ」
「随分と疲れた顔してますね?」
はい、アヒルさんチーム。
なんだろか…すっごい久しぶりに会話をした気がする…。
……
河西さんが…すっごい警戒した目で見てくる…。
試しに、少し手を少し動かした。
……。
「河西さん」
「……」
「流石に…少し、傷つくんだけど…」
「……」
あぁ…プラウダのテント前で、結構な事しちゃったけ…。
まぁとにかく、脚を褒めただけだけど!
腰もか! クビレもか!!
……
…うん、俺が悪いな。
近藤さんの真後ろに、隠れてしまった…。
すげぇ、警戒されてるなぁ…。
「せ…先輩は、いつ頃来たんですか?」
近藤さん! 相変わらず、気遣いが出来る子!! ちゃんと空気が読める!!
ですから、正直に答えましょう。
「…昨日から」
「「「「 …… 」」」」
「帰ってきて早々…日本戦車道連盟のハゲに拉致られてさ…。そのハゲから押し付けられた仕事が…今さっき終わった…」
「「「「 …… 」」」」
なんとも言えない…そんな表情で返されましたね。
「お…お疲れ様でした…」
「ありがとう…」
まぁ、それしかかける言葉が無いのだろう。
はぁ…言葉にすると、ドッと疲れが押し寄せてくるな…。
「ところで…」
「ん?」
「その一緒にいる方、どなたです? 家族の方ですか?」
「……え?」
はっはー…。
誰だろ…。俺は先程まで、ずっと一人でした。
ですから多分、見えてはいけないモノだろうか?
ここに来てホラーですか? やめてください。
…違うよなぁ…。
もう何度も経験したから分かる…。
どうせ、戦車道の強豪校の隊長クラスだろ…。
「先程から、ずっと…先輩の小指を握ってますが……」
「……」
……
…………
君は、アレですか?
あの人達と同レベルの人ですか?
将来楽しみだね…。
というか、早くない!? もう着いたの!?
「えへへ~…」
嬉しそうに、俺の小指を、手で掴むように握っている。
少し緑掛かる程の黒髪に、前髪パッツン。ボブショートの女の子。
年の割には背が低く、そのくせヤッパリ遺伝だろう…と納得するしかない…ぼりゅーむ。
「…こんにちは、詩織ちゃん」
「こんにちは! 尾形さん!」
キラッキラのいい笑顔だ…。
「ロビーから、見えたので…来ちゃった♪」
「…あ、はい。元気そうで…」
なんだろうか…。
ある意味積極的なのは良いのだけど、色々な意味で、沙織さんとは真反対に感じたんだよなぁ…この子。
「…あの、先輩?」
「あぁ…この子…いや、彼女は…沙織さんの妹さん…デス」
まぁ微妙なお年頃っぽいし、一応彼女と言っておこう。
子供扱いは嫌がりそうだしね…。
「武部先輩の!?」
「はい! 中学3年! 武部 詩織です! 姉がお世話になっています!!」
あら、しっかりした子。
紹介した矢先、姿勢を正して、深々とお辞儀をした。
「…なに? またナンパしたの? こんな子供ナンパしたの?」
…きっついなぁ。
河西さんの言葉を、詩織ちゃんが反応した。
「いえ! 私がナンパしました」
「「「「 !? 」」」」
あ~…やっぱり。
子供という部分に反応したか…。
一瞬、ムッとした顔したしなぁ。
「大丈夫です! まだ子供かもしれませんが!」
「……」
「 アンタより、胸ありますから! 」
「」
……え?
なんつった!? 今、なんて言った!?
「あ、間違えましたぁ…」
「貴女より、余程女性のシンボルが、ふくよかですから! ご心配無く!!」
………。
あれ? こんな子?
こんな子なの!?
「ね! 尾形さん!!」
「」
勘弁して…。
「いや! 知らないよ!? なんで知ってる事、前提に言うの!?」
「ほら! メールで教えたじゃないですか!」
「いやいやいや! 君のメール、暗号過ぎて分からなかったんだよ!?」
「あ、そうなんですか? では、改めて…私、もうCカップはありますよ!!」
「それを、俺に教えてどうするの!?」
ほら! アヒルさんチームが呆気に取られてる!
河西さんだけ、ヘコんでるし!!
「大丈夫ですよ? 先輩?」
「近藤さん!?」
「先輩が、中学生に手を出すような、腐れ外道だなんて…爪の先ほどにも思っていませんから」
「……」
その言い方は、喜んでいいのだろうか?
ウフフと笑ってはいるのだけど…なんか…怖い…。
なんだこのカオスな状態…。
……。
詩織ちゃんが、また笑顔で俺の指を掴んだ。
それに反応するかの様に、近藤さんの頬が、一瞬引きつった…。
そしてそのまま、膠着状態へ…。
助けて…。
「詩織!?」
…来た
「え? あんた何やってるの!?」
……ご家族の方がいらっしゃってくれました!!
みほを除いたあんこうチームが、ホテルロビーより、団体様で来てくださいました!!
チッ「 お姉ちゃん!」
嬉しそうに姉を呼ぶ、妹。
一瞬の舌打ちは、多分空耳だろう! うん!!
「お姉ちゃん! じゃなーい! なんで大洗にいるの!?」
「え…詩織ちゃん!? 沙織さんに会いに来たとか言ってなかったっけ!?」
「え!? 隆史君!? 詩織を知ってるの!?」
「はっ!? え!?」
え…どうなってんの?
…は?
カオスの闇が深くなって行く…。
「…詩織」
「あ、麻子お姉ちゃん。久しぶり!」
「…久しぶりだな」
また、元気に挨拶してるなぁ…。
あ、そうか。
マコニャン、沙織さんと幼馴染だっけか。
なら、当然妹の詩織ちゃんと、面識があってもおかしくないか。
ただ…ちょっと、マコニャンの顔色がすぐれないなぁ
「っ! ちょっとこっち来なさい!!」
「え!? やっ!! お姉ちゃん!! 引っ張らないで!!」
取り敢えず、話を聞かせろと。
呆然としている、アヒルさんチームとあんこうチーム…様は、俺らを残して、ロビー方面へ詩織ちゃんは、連れ去られていった…。
…実の姉に。
「…おい、書記」
「なに? 麻子お姉ちゃん」
「……」
怒られた…
「まぁいい。いつ詩織と知り合ったんだ」
「んまぁ…決勝で、会場彷徨いてる時だけど…」
「はぁ…なんだ? お前は、女を探す探知機でも内蔵されてるのか?」
「……」
「あいつは…詩織はな。悪い娘じゃないんだけどな…おばぁも気に入ってるし…」
「へぇ…あの、婆さんがねぇ…」
「だがな。あれは、沙織の妹だ」
「そ、そうだな…」
なにが言いたいんだろ…
「恋愛とやらに飢えてる」
「まぁ…うん。なんとなく今ので分かった…」
ゼク○ィ詩織かぁ…
「その割合は、沙織を凌駕してる…」
「」
「しかも…」
「……なんだよ」
沙織さんを凌駕してるって…。
まぁなんとなく先ほどの会話で分かったけど…。
「詩織は…私が引くほど……黒い」
「……」
「そうか…お前は、アレに目をつけられたのか…」
「…ちょっと待て。なにその怖い言い方」
「精々、気をつけるんだな」
閲覧ありがとうございました
さぁ、エンカイ・ウォー!っだ!