転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第11話~宴会戦争~ 後編★

「あぁ、いたいた」

 

 あんこうチームの隠し芸が終了し、すぐに宴会場をでた。

 流石に着替えたが、あまり外注…様は、発注先の人を、外で待たせておく訳にはいかない。

 前に愛里寿から聞いていた、ボコミュージアム。

 そのボコショーをしていた人達に、ダメ元で問い合わせてみたら、あっさり了承を得た。

 まぁ、時間帯が夜という事は、先方にも都合が良かったみたいだ。

 中の人達が、バイトになってしまうという条件付きだったけど、別にそれは全然構わなかった。

 

 翌日の依頼を即OKってのも、すごいなと思ったけど…。

 ボコミュージアム自体が、かなり経営難で来場客が殆どいないといのもあった。

 様は、暇なのだ。

 

 …。

 

 あぁ…そういえば、昔あったなぁ…。

 裁縫の練習がてら、ボコのぬいぐるみを完治させた事。

 いやぁ…ガン泣きされるとは、思わなかったぁ…。

 呆然自失の後…ガン泣きだからなぁ。

 暫く口聞いてもらえなかったなぁ…。

 そのクセ、目を見開いてずっと…俺の方を真顔で見続けるという、対応に非常に困る事をされた事を一瞬思い出した。

 ボコのぬいぐるみ(大)で、許してもらったけど…。

 

 …ま、いいや。

 今は目の前の事だ。

 

「すいません、お待たせしまし…」

 

「いえいえ、そんなに待っていませんからだいじょ……」

 

 会場外、入口付近の一角に屯していた、ボコミュージアムの人らしき方々に、声をかけた。

 4名程いたが、ボコミュージアムのTシャツを着ていた為、すぐに分かった。

 

 うん。

 

 すげぇ見知った顔だったけど。

 

「…なにやってんすか」

 

「……」

 

「今更、顔逸らしたって遅いですけど…」

 

「……」

 

「い…依頼主って、尾形君だったんだ…」

 

「大洗学園が依頼元って事で、気がついて下さい」

 

「……」

 

 いや、久しぶりに見たなぁ…。

 本当に何やってんの。

 バイトの人って、聞いていたけど…なんでまた、辺鄙な所で態々…。

 

 はい。

 

 愛里寿のストー…基、大学生のお姉様方。

 

「い…いえ…、隊長がボコミュージアムに来てたから…」

 

「メグミさん。来てたから? 日本語は正しく使いましょう。愛里寿が、ミュージアムへ行く事を知っていたからですよね?」

 

「ちっ…違うの! 特に深い意味は…「あぁ…なるほど」」

 

 言い訳で即、分かった。

 察した。

 

「はい、ではアズミさん。あんたら、ショウ担当って事だよね?」

 

「そうだけど…」

 

「…ボコショウね…まぁ愛里寿の事だ。必死で応援とか、声援を贈るだろうな」

 

 「「「 …… 」」」

 

「ボコの着ぐるみを通してでも、あの愛里寿から、キラキラした声と顔で声援を贈ってもらいたかった…んな所か」

 

「ち…違うわよ? 別に隊長に内緒とかにしてないから! 他意は無いわ!」

 

「……」

 

 携帯を取り出す。

 

 ビクッ!

 

 おー…あからさまに慌てだしたな。

 

「……」

 

「やめて! そう! そうだから! 隊長に確認取ろうとしないで!! 無言はやめて!!」

「貴方! なんでそんな変な所、エスパー並に察しがいいの!?」

 

 はぁ…。

 歪んでるなあ…。

 大人しく携帯をしまってやったら、3人同時に安堵のため息をはいた。

 まったく…。

 

「…人の従兄弟にストーキングするの、やめてもらえませんか?」

 

 「「「 …… 」」」

 

「…なんすか」

 

「お…尾形君。なんか、私達にはキツいわよね…。隊長とか…家元には優しいのに…」

 

 

 あ?

 

 

 顔だけ上げて、見下す様な表情で淡々と述べてやる。

 いやぁ…もはや懐かしい。

 

 

「拘束具」

 

 ビクッ!

 

「…スタンガン」

 

 ビクッ!!

 

「……未成年者略取誘拐未遂」

 

 ビク!!!

 

「……」

 

 

 「「「 」」」

 

 

「…愛里寿に黙っていてやっているだけでも、多めに見てると思いますけど?」

 

 ガタガタガタッ

 

 壊れた人形みたいに、顔を縦に振り回している。

 …まったく。

 

「はぁ…まぁいいや。時間が押しているので、お願いします」

 

「わ…分かったわ」

 

「えっと、ルミさん。そちらに台本は、任せましたけど…本当に出るんですか? 一応持ってきましたけど…」

 

「だって、貴方の隠し芸でしょ? 貴方が出なくてどうするの?」

 

「まぁ…」

 

 そりゃそうか。

 

「でもぉ、彼女の祝勝祝いの為にって依頼してきたんでしょ? いいわよねぇ…そういう事する様に見えないのに!」

 

「……」

 

「いいのよ! それでいいの! 贈り物は形に残るモノだけじゃないわ」タイチョウカラ、ハナレテクレレバ!

 

「……」

 

 囂しい。

 

 というか、一気にお姉さん風をふかせてきた。

 

 …うぜぇ。

 

「あら? 貴方も赤面するのねぇ?」

 

 

 ……イラッ

 

 

「…なぁ、ルミさん」

 

「あら!? なにかしら」

 

「人の事はいいでしょうが。…あんたら、愛里寿の尻、追い掛け回しているのはいいですけどね」

 

「むっ!」

 

 言い方が癪に触ったか、ちょっとムッとしたな。

 

「…彼氏とかいるんですか?」

 

 「「「 …… 」」」

 

 まぁいないだろ。

 戦車道で忙しいのあるだろうけど…でも、あんたら花の女子大生だろうが。

 

「あ…相変わらず、生意気ねぇ…」

 

「ご忠告申し上げてるんですよぉ? …身近に具体例がおりますからぁ」

 

「…なによ?」

 

 

「亜美姉ちゃん」

 

 

 「「「  」」」

 

 

「俺はあの人が、大学生の時から、見ているんで」

 

 

 「「「  」」」

 

 

「はい。では納得いったら、お仕事して下さい」

 

 

 はい、3人揃って大人しくなりました。

 目元が少し暗いのは、気のせいだな! うん!!

 

 そういえば、4人目の人…なんで帽子とサングラス…しかもマスクまでしているんだろ…。

 女性の様だけど…。

 

 ……。

 

 …………どこかで…。

 

「お…尾形君……案内して……」

 

「あ、はい。では…」

 

 ま…いっか。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 舞台の幕が上がり、妙にテンポが良いBGMが流れ始めました。

 向かって左側の舞台袖から、何やら人型のネコとネズミの着ぐるみが歩いてきました。

 な…なにやら、西住殿のテンションが先程から異常に高いのですが…。

 

 しかし…。

 

「あら? どうかしました? 優花里さん」

 

「あ、いえ…先程の業者の方…どこかで見た事がある様な…」

 

「そうなんですか?」

 

「ん~…チラッとしか見ておりませんから…なんともいえないのですが…」

 

 どこかで…どこでしょう?

 直接、話した事ある方なら、大体は覚えているのですが…。

 

 

 

「ボコだぁーーー!!!」

 

 

 

 《 !!?? 》

 

 

「ぅわっ! びっくりしたぁ~…」

 

 突然の西住殿の大声で、武部殿がびっくりしてますねぇ。

 というか、私も少し飲み物こぼしそうになりました…。

 

 ボコ? ボコと仰いましたか。

 舞台袖、右側より…なんとまぁ…痛ましい…。

 両腕が包帯でグルグルに巻かれた、青タンつくったクマの着ぐるみが、歩いてきましたね。

 

 

「ボコだぁぁ! 生ボコだぁぁぁ!!!」

 

 

「に…西住ちゃん?」

 

 生徒会長が引いている…。

 いや、他の方々も、舞台を見るより、このテンションの西住殿を凝視してますねぇ。

 

 まぁ普段の西住殿を知っている方なら、大体は驚かれると思います。

 この、はしゃぎっぷり…。

 

 私も戦車の事となると、こう変わるのでしょうか?

 …自覚、余りありませんが。

 

「あれ、みほさんのお部屋にあったぬいぐるみと、同じですね」

 

「あぁ…あったな」

 

 ま…まぁ、西住殿が好きな物です。

 私も大人しく、拝見しましょう!

 

 

『おい! お前ら!!』

 

 

 左右から同時に近づき、正面で向き合って止まりました。

 クマの…ボコでしたね。

 そのボコが、包帯だらけの腕を、3人組につき出しましたね。

 どういった関係でしょう?

 

 

『今! 俺と目が合っただろ!!』

 

 

 《 …… 》

 

 

「め…目が合っただけで、通行人に絡んだよ…」

 

「ガンの付け合いでしょうか!?」

 

「なぜ、そこで嬉しそうなんですか? 五十鈴殿…」

 

 あぁ、いけません。脱線しました。

 西住殿が、かつてない程の笑顔で、その光景を見てますね! 

 よく分かりません!!

 

 

『あぁ!? 何言ってんだ!? コイツ!!』

 

 

 ネコの方が、体を前かがみにして、威圧しましたね。

 

「…そうだよ。まったくその通りだよ…」

「これ、西住ちゃんが好きな奴なの?」

「尾形書記からは、そう聞いてますが」

「ふ~ん」

 

 

『オイラに、因縁つけるなんて、いい度胸してるじゃねぇか!』

 

 

 ず…随分と、血の気の多いキャラですねぇ。

 

「因縁つけているのは、あのクマの方だよね…」

 

「キャプテン。こういうのには、突っ込み入れたら負けですよ?」

 

「何に?」

 

 凄むというか…なんというか。

 少なくとも3人相手に、躊躇なく喧嘩売ってますね。

 

『あぁ!? 生意気だ! やっちまえ!』

『おもしれぇ! 返り討ちにしてやる!!』

 

 ……。

 

 …………。

 

 

「あの…なんか、袋叩きにあってますけど」

 

 3匹の着ぐるみに攻撃したのは、いいのですけど…避けられて、その場に転び…。

 上から蹴られまくってますね。

 3匹に取り囲まれて、ボッコボコですね。

 

 その光景を、嬉しそうに手を前に出して、見ている西住殿。

 …どうしたら…。

 

『みっ! みんな! オイラに力をくれぇ~~!』

 

 蹴られながらも、こちらに腕を出して救済を求めましたね。

 

「自分で喧嘩売って、負けそうになったら周りに助けを求めるって…」

「まぁ、そういう趣向なんだろうけど…」

「いるよね…こういう人」

「…これはどうなの? 桂利奈?」

「ありだね! これもあり!!」

「ヒーローショウって、奥が深いんだねぇ」

 

 ウサギさんチーム…。

 坂口さんは、西住殿と同じく目を輝かせていますね。

 

「が…がんばれ…」

 

 あ、西住殿。

 これは少し恥ずかしいのか、若干躊躇しながら応援を始めましたね。

 

「がっ、がんばれ、ボコ!」

 

 段々と、声を大きくし始めましたね。

 

『もっと! もっとだぁ!!』

 

 よし、西住殿一人に恥ずかしい真似は、させません!

 

「がんばれ! ボコー!! がんばぁれぇー!!!」

 

 あ、坂口さんに先を越されました。

 

「! ッ…がんばれぇ! がんばれ、ボコー!!!」

 

 それに触発されたのか、西住殿の声にも力が入りましたね。

 

「ボコさん、がんばってぇ~」

「……ガンバレ」

「ふっ…ふぁいとぉ~…」

 

 また先を越されましたぁ!?

 

 《 がんばれぇ~!! がんばれーーー!!!! 》

 

 更に触発されたのか、周りの皆さんからの声にも力が入り出しました。

 先ほどの、私達の隠し芸…最後の全員の音頭からも考えるに…皆さん結局、まだ場に酔っているのでしょうか?

 

 段々と楽しそうに、大声で応援し始めました。

 

 

 かんっっっぜんに!! 

 …出遅れてしまいましたぁ…。

 

 

『キタ! キター!!』

 

 あ、両腕を上げて立ち上がりました…。

 私まだ何も、言ってません…。

 

 あ……あぁ!!

 

 西住殿が悲しそうな目で、こちらを振りきました!!

 

 ああああぁぁぁぁぁぁ!!!

 

『みんなの応援が! オイラのパワーになったぜ!! ありがとよぉ!!』

 

 

 まだです! まだパワーにしないで下さい!! 私一人分、足りてませんよ!!??

 

 

『お前ら、まとめてやってやらぁー!!』

 

 

 だから、まだぁ…。

 

 あ…。

 

 

 

 

『あぁー!!』

『おらっ!! おらっ!!』

 

 

 ……

 

 

 あっさり攻撃をよけられて、また袋叩きにアイダシマシタネ…。

 会場が呆然としてますね…。

 

「…なにコレ」

 

「結局は、ボコボコにされるんですか」

 

「それがぁ! ボコだからぁ!!」

 

 西住殿のテンションが、完全に振り切れました。

 すっごい嬉しそうに、こちらを振り向きながら宣言しました…。

 

 …でも、どうするんでしょう…コレ。

 

「結局、隆史さん出てこられませんね」

 

「あぁ、そういえば…」

 

「これ、隆史殿の隠し芸でしょう? おかしいですよね」

 

「はぁぁぁ!!!」

 

 西住殿…。

 すっごい輝いてますね…。

 

 

『そこまでだ!』

 

 

 …釣天井の稼働部分付近でしょうか?

 凄い音を立てて、ドスンッて、音と共に何かが落ちてきました…。

 

 

『なんだ、オメェ!!』

 

 ネコの着ぐるみの方達が、振り向くと、地面に赤い物体が転がって…あぁ……。

 

「ベコだ…」

 

 赤い部分。

 マントを翻して、立ち上がりました。

 黄色いクマ。

 

 ボイスチェンジャーでも使っているのか、録音なのか…、女性のハスキーな声で喋りだしましたね。

 あれ、喋る機能ついてましたっけ?

 

 

『 やぁ! ベコだよ! ボクと力の限りハグしようよ!! 』

 

 

「あ…隆史君が来た」

 

「あぁ、なるほど。そういった趣向ですか。これでボコさんを助けると」

 

「!?」

 

 あ…あれ?

 西住殿が、一瞬微妙な顔をしましたね。

 

「ヒーローっぽい、出で立ちですからねぇ」

 

「…書記、結局ベコの着ぐるみを着こなしてるな」

 

「あれ? でもデザイン少し、変わってるよね? 顔も少し小さくなって…毛並みの部分が減ってる。マントも首に巻くタイプになってるよ」

 

「…沙織。よく変更部分に気がついたな」

 

「……」

 

 なんか目をそらしましたね。

 

 

 

『なんだ、オメェ! こいつの仲間か!』

『こいつもまとめて、やっちまえ!!』

『おぉ!』

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

『暴力は何も生まないよ!? だからハグしてラブ&ピース!!』

 

『そんなナリして何言ってんだ!!』

 

 …。

 

 俺は特に、何もしていいない。

 

 今回は録音されている音声が、そのままスピーカーを通して喋っているだけだ。

 いやぁ…セリフ、増えてるし…。

 決勝戦の時には、気付かなかったけど…どうでもいい機能も、結構付け加えてあったようだね…ベコMk-Ⅱ

 視界と音調がメチャクチャいい

 

 しかし…相手の着ぐるみの中に、誰がどういう配役で入ってるか分からない。

 えっと…結局ハグすりゃいいのか?

 いや…セクハラにならないかな? まぁ着ぐるみ越しだから大丈夫か。

 

 なんて、悩んでいると…。

 

『おれらぁああ!!!』

 

 無駄に気合の入った、よく分からない掛け声と共に、殴りかかってきた…。

 

 ドスンッと胸に拳(?)が、当たる。

 …これ割と本気で、殴ってきてないか?

 着ぐるみ越しと、このベコスーツのおかげで、全然痛くはないけど…。

 

『ふぶらぁぁ!!』

 

 はい…じゃあ一人目。

 

『ふぐぇ!?』

 

 ガッツリ脇下で、ホールド。

 …グッと軽く力を入れた。

 だから、ただ抱きしめてるだけみたいな形。

 流石に本気じゃできねぇわな。

 

( あら、隆史君。大胆ね )

 

 近くにいるので、会話は出来る。

 漏れたとしても、BGMでかき消されるだろう。

 

 うん、それよりも。

 

 

( アズミさんか。あんた方が書いた脚本だろうに… )

( でも普通、躊躇なくできるものかしら? )

( …… )

( お姉さんちょっ~と、恥ずかしいわねぇ… )コレハ、タイチョウニホウコク…

( あぁ、大丈夫ですよ? 俺、貴女にあまり異性としての意識…してませんから )

( ……は? )

 

 あ、なんかプライドが傷ついたのか、一瞬怒りを言葉に感じた。

 

 この方、確かにデカいし、おっきしいし…みほ達からイロイロ疑われる感がすごいけど…。

 色っぽい姉ちゃんっていうだけなら、ぶっちゃけ別になんとも思わない。

 

 つか、苦手。

 

( なぁ!!?? )

 

 あ…また声に出てたか。

 そうなんだよなぁ。

 迫ってくるタイプの色っぽい姉ちゃんを前にすると、どうしても疑ってかかってしまう。

 よく知らない人だと特にそうだ。

 女の武器とやらを、前面に押し出してくる人ってどうにもなぁ…。

 

 まぁいいや。

 

(はい、じゃあ退場して下さいネ?)

(ぐっ!!)

 

 ゴトンと音を立て、その場に崩れ落ちたアズ…基、ネコ!!

 まだ何か、思うところが有るのか、倒れた状態で震えている…と、思う!

 はっはー! なんかやっと仕返しできた感があるな! うん!

 

『 ふぐっ!? 』

 

 そのまま二人目。

 誰だ?

 

( おぁ、軽っ! )

( あら、ありがと )

( ルミさんか。ちょっと心配になる軽さですよ…コレ )

( それは…喜んでいいのかしら? お酒でカロリー摂ってるけど…)

( …ちゃんと飯食ってください。まぁいいや、んじゃ後ろのネズミが、メグミさんか )

( 違うわよ? メグミは、ボコ着てるから )

( …ふーん。じゃあもう一人の業者の人か…ま、いいや。退場してください )

( はいはい )

 

 その場に崩れ落ち、動かなくなった。

 演技だというのにな…ちょっと観客席の良い子達…基、生徒達が引いている感がする…。

 

 はい、じゃあラスト。

 

『!!』

 

 最後のネズミを抱き上げる…というか、抱きしめる。

 知らない女性だし、申し訳ないから早めに切り上げるか。

 

( …あら。隆史君、大胆ね )

 

 

 

『    』

 

 

 

 …。

 

 心臓が…止まるかと思った…。

 分かった…声で分かった…。

 

 

( 何してんすか!! 千代さん!! )

 

( あ、もう少し強くても平気よ? )

( んな事、聞いてませんよ!! )

( …いえ、驚く隆史君見たくて…… )

( そのニュアンスは、違いますね。なんですか? 貴女も愛里寿に、構って欲しくてバイトで入ったんすか? )

( …… )

 

 嘘だろ……図星っぽい…。

 

( さ…流石に…バイトじゃないけど… )

( … )

( 愛里寿が、また「母」って呼び出したの!! )

( …… )

( な…なんとか、なんとかしたくって!! 助けて、隆史君! )

( …こんな事してるからじゃないですか? )

(  )

 

 まったく…何してんだ、このお人は。

 お忍びで、子供の学校生活とか覗いてそうだな…。

 

( はいはい。今度聞いてあげますから。今は劇に出た以上、ちゃんと仕事してください )

( で…でも! 隆史君! )

( …仕事をしなさい。島田さん )

(  )

 

 はい、三人目終了。

 着ぐるみ着た、家元(人妻)抱きしめる高校生。

 …普通いないな。

 いてもたまらないが。

 

 …本当に何してんだこの人。

 

 崩れ落ちた三人目を見下ろしながら、そう思う。

 うん! 終わり!

 

 三人を締め落とした演技が、終わったら、取り敢えず元の立ち位置にもどる。

 バッとマントをまた翻し、ボコと向かい合う。

 

 さて、続き…。

 

『さぁ! これでラブ&ピースだね!』

 

 …なんだこのセリフ。

 俺が言ってるみたいでなんか嫌だ。

 

 

『……』

 

 目の前のボコが、震えている…。

 震えた上で…包帯に巻かれた腕を、こちらに突き出して叫んだ。

 

『確か…ベコとか言ったな…』

 

 あれ? 知り合い設定だっけ?

 あれ?

 

『なんて事してくれやがんだ! コノヤロー!!』

 

 …怒られた。

 

『誰が、助けてくれなんて言った!!』

 

 俺は、台本で一度流れを見ているから、大丈夫なんだけど…。

 客席が呆然としてるな。

 

『オイラに恥をかかせやがって! こうなったら、お前をヤッタルァー!!』

 

 殴りかかってきた…。

 

「助けてくれた相手に、喧嘩売ってるけど…」

「なんかもう…すごいキャラクターですねぇ」

「ボコ! 良かったボコ!!」

「…何が嬉しいんだろ、みぽりん」

「これ、隆史殿にまた抱きしめられるんでしょうか?」

「…結局負けるのか」

「それがボコだから!」

「いや、それもう聞いたから…」

 

 

 はい、大体皆さん流れを読みましたね。

 この理不尽にも、負け癖が着いた毛玉は、そういったキャラクターです。

 

 勝てない。

 

 何をやっても勝てない。

 

 初めてみほに、見せてもらったボコの歌の歌詞。

 文字だけで読んだら、どう見ても合体ロボの主人公だったのに…。

「やってやる、やってやる、やぁ~ってやるぜ!」だったか。

 いろんな動物のメカが合体して、黒いロボットになる主人公の人かと思ったのに。

 実際、これだもんな…。

 

 ある意味アレだ。

 ボコを相手にする=負けてはいけない…だ。

 

 …ほら。

 

 なんにも…避けてもいないのに、勝手に殴りかかってきて…倒れた。

 さてと…

 

『ボコー! がんばれボコー!!』

 

 持ち上げようとした腕が止まった。

 少し、観客席を見てみると…うぁぁ。

 みほが、キラッキラの輝く瞳で応援してますね。

 少し、罪悪感が沸くなぁ。

 

 《 ボコー!! ガンバレー!! 》

 

 あぁ、皆さんも趣向を理解して下さったのですね。

 先ほどのあんこう怪人(雌)の時のノリと、同じように声を出してきた。

 

『みんな…まだオイラに、力をくれるのか…』

 

 あれ? こんなセリフあったっけ?

 後は、俺が抱きしめて終わりのはず…。

 

『よし! そこのお嬢さん!』

 

 おい、客席を巻き込み始めたぞ。

 まぁショウとしては、有りなんだけど…アドリブはやめて欲しい…。

 包帯の腕を客席に…ん?

 

「ふぇ!? 私!?」

 

 みほを指したな。

 と…いうか、これ会話って全部録音だったよな…。

 アドリブに行った時点で、俺には会話能力がなくなったも同然なんですが…あれ?

 

『さっきも熱心に応援してくれて、ありがとうよぅ!!』

 

「ひぅ!!」

 

 おーボコと会話が出来て嬉しいのか…見た事ない顔しとる。

 でも…なんで、ボコ側は普通にアドリブが効くのだろうか…。

 

 ……。

 

 あっ!!

 

 この人、空で喋ってるのか!!

 うわぁ…ボコの声そっくりだな…。

 これ愛里寿にやってやったら、喜ぶんじゃないだろうか?

 

 そうだな…それ位なら後で、教え…『でもまだ、足りねぇんだ!!』

 

『最近な…こいつのおかげで、オイラの影が薄くなってきたんだ…』

 

「えぇ!?」

 

 …は? なんか言い出した。

 

 

「あぁ…そういえば、昨日も朝から、ベコの問い合わせが凄かったね」

「そういえば会長。Twitterの方でも、トレンドになってますね」

「…それ、隆史ちゃんの個人情報はどうなってるの? 危なくない?」

「ま、尾形書記の情報は、さすがに出ていませんでしたから、大丈夫だと思いますよ?」

 

 はぁ!?

 昨日の今日で!?

 

 確認したいけど、この格好だし!!

 ネットの情報拡散のスピードが怖い!!

 

『だから、今日! ここで! オイラはこいつと決着をつけたらぁ!!』

 

 おい、ボコ。

 なんのつもりだ。

 というか、自分を追い込んでないか?

 お前さん、勝っちゃダメなんだろ?

 

『おらぁ!』

 

 また殴りかかってきたボコ。

 今度は避けないで、そのまま組み合う形になった。

 そう、会話をする為。

 

( メグミさん! あんたどういうつもりだよ! )

( …… )

( あぁ! そうか! 着ぐるみ内にマイクあるから、俺と会話できねぇのか )

( …… )コクコクッ!

( ひょっとして… )

( …… )

( これ俺に対しての、ただの嫌がらせか!? )

( …… )

( あ…さっきの彼氏がいるいないの件!? )

( … )コクコクッ!

( お…大人気無ぇ… )

( …… )

( あっそ、分かった。せっかくアンタだけ、愛里寿に気に入られる方法、教えてやろうと思ったのに )

 

( !!?? )

 

( そこまで、ボコのモノマネ上手いんだから、言ったら一発のセリフあったのに… )

 

( !!!??? )

 

 

 

 そこまで会話すると、体を軽く突き飛ばした。

 追いすがる手は、やめてください。

 空を切った腕を、今度は悔しそうに曲げた。

 

 まったく。どうすんの? この劇の締めは!

 あ、またみほに腕を突き指した。

 

『だから、お嬢ちゃん! それとみんな! オイラに、元気を分けてくれ!!』

 

 その一言で、完全にみほを味方につけやがった。

 あ! これも嫌がらせか!?

 

「ボコー!! ボコ、ガンバレーー!!」

 

 劇中の流れもあるだろう。

 

 後、ボコは負けるもの。

 それも観客の皆も分かってる。

 その場のノリと勢いもあるだろう。

 

 ……

 

 うん。

 

 分かる。

 

 まぁそれほどじゃないな。

 

 いやぁ…皆の応援も熱が入ってきたね!

 

 …あら。

 沙織さんは、ボケーとこちらを見てるな。

 優花里は…何を必死になって、みほの横で応援してんだろう。

 

 

 

「がんばれぇ!! がんばれボコー!!」

 

 

 ……

 

 …………

 

 

 

 

 イラッ

 

 

 

 みほは、ボコが小さい頃から好きだからね。

 マニアといっても過言ではない程の、ガチ勢だし。

 

 うん、ダイジョウブ。

 

 キラッキラした目で、応援している。

 まぁそれも、俺が頼んでやってもらった劇だからね。

 

 うん。

 

 こうなるのは、ある程度分かっていたから、まぁいいのだけど…。

 

 すげぇ応援してますね。

 

 

『……』

 

 

 わかってたことだしね。

 

 うん。

 

 中はメグミさんだし。

 

 うん。ダイジョウブ。

 

 ボコはオスだけど、メグミサンハ、メスダシ。

 

 ウン。

 

 

 

「がんばれー!!」

 

 

『キタキタキター!! そこの前のお嬢ちゃんは、特にありがとよ!!』

 

「!!」

 

 ボコと会話する事が、嬉しいのだろう。

 

 すげぇテンションですね。

 

 すげぇ嬉しそうですね。

 

 

 ……。

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

『よっしゃー! んじゃ、今度こそやってやるぞ!!』

 

 

 殴りかかってきた。

 しかし、何もない所で蹴躓き…転ぶ。

 

 ハグする為…捕まえる様に、腕を振る。

 

 倒れるボコの顔が、通過するのを見計らい、当たらないように…。

 

 そのまま腕は空を切る。

 

 

 《 …… 》

 

 

『ちっくしょー! まだだ! もう一度だ!』

 

 腕で体を上げて、もう一度起き上がろうとしているボコ。

 うん、ちゃんと脚本に戻ったな。

 

 あれ? 会場が大人しい。

 

「……」

「…小山」

「…はい」

「今…隆史ちゃんが腕振ったらさ…ここまで風が来たんだけど…」

「……」

 

 まぁいいや。

 起き上がろうとしているボコを掴もうと、腕を伸ばす。

 

『  』

 

 《  》

 

 

【挿絵表示】

 

 

 あ、ボコが固まった。

 うん、俺はレイセイデスヨ?

 

 

「ボコー逃げてー!」

 

 

 なんか一年が騒ぎ出したな。

 

 

 

 

 

 

 …

 ………

 

 

 

 

 

『 やっ! やったらー!!! 』

 

 殴りかかってくるボコ。

 実際には、ここで勝手にまた転んで…俺が抱きしめて…それで終わり。

 

 転ぶ手前、俺がスッと前に出てやった。

 

 なんかもう…メグミさんの思い通りになるのが、すげぇ嫌だった。

 

 うん、別にみほに対してではない。

 

 空を切るはずの腕が、俺の胸に当たる。

 

 当たった瞬間、思いっきり地面を蹴り上げて、後ろに飛ぶ。

 そのまま壇上より、幕袖へと吹っ飛んでしまうように…消えていく。

 

『え…』

 

 

 壇上には、取り残されたボコと倒れた着ぐるみ達。

 

 どの様にしても、お約束という物があって、多分メグミさんも俺はそれに従うと思ったのだろう。

 予想外の結果に、呆然としている主人公。

 

 しかし劇は終わらせなくてはならない。

 俺はもう、壇上に上がる気がない。

 

 上がってやんね。

 

 早く戻って来いと、こちらを見ているボコを見ながら…ベコの頭部を外した。

 

『!?』

 

 これはもう自身で外せますからね。

 いやぁ~…なんだったんだ。最後のイラつきは。

 

 まぁいいや。

 ほらほら。アドリブで始めたのですから、アドリブで締めなさい。

 

 はっはー! マゴマゴしてるなぁ。

 暫くすると…仕方がないと、ボコは腕を上げた。

 

 

『かっ…勝ったぞー!!!』

 

 

 ここからでは見えないが、ボコの勝鬨を聞いて…。

 みほの、悲鳴に近い声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 -------

 -----

 ---

 

 

 

 

 

 何故かイラついてしまい、劇の結末を変更してしまった。

 まぁ? 先に変えてきたのは向こう側ですけどねぇ。

 

 胴体だけベコで帰って来た。

 もう沙織さんにバレてしまっているから、気にしなくてよくなったってものある。

 

 次が最後。

 生徒会3人組の出し物デスネ。

 着替えた所は、お姉さま方が着替えているので使用できない。

 よって席に戻る前に、外でこの胴体部分を脱ごうと、取り敢えず袖裏から出てきた。

 

 出てきた瞬間…。

 

「先輩!!」

 

「坂口さん?」

 

 目を発光させた状態で、坂口さんから声をかけられた。

 なんだろ…。

 

「私! 感動しました! さっきも今も!!」

 

「あ~…はい。ありがと…」

 

 パンツァーファイブとボコショウの事だろう。

 喜んで人質になりに来たもんね…。

 

「もっかい、抱っこして下さい!!」

 

 あぁ大洗の納涼祭で、やってやったやつか。

 

「ヒーローショウの最後は、客席で握手! もしくは抱っこ!!」

 

「お約束だな!」

 

「お約束です!!」

 

 やはり分かっている! と、ばかりに満面の笑みを浮かべた。

 この子は…すげぇな! ある意味で!!

 

「そういえば、桂利奈。先輩出てきてから、ボコの応援してなかったよね」

 

 あー…そういえば、坂口さんと澤さんは、黙って座ってたな。

 

「いや、あれは理不尽だよ」

 

「ボコ……桂利奈に真顔で言わせた」

 

「それに! 私は、どちらかといえば、ヒーローっぽいベコ派!」

 

 はい。抱っこしましょう抱っこ。

 たかい、たか~いと何往復かした後、降ろしてやった。

 相変わらず、キャッキャと喜ぶあたり、やる方もやる気がでるな!

 

「せっ!? 先輩!?」

 

 そのまま、澤さんも抱っこして、何往復かしてやる。

 あ、でも浴衣か。

 そろそろやめておこう。

 

 ポスッと、地面に降ろしてやった。

 呆然とする周りから、あんこうチームの会話が聞こえてきた。

 こちらに近づいてきているのだろう。

 

 

「…もう! 隆史君は! ボコが分かってない!」

「いやぁ…そういうモノなの?」

「また、一話から通して見せないと!!」

「…みぽりん」

「そういえば、沙織さんと麻子さん。あまり元気がありませんでしたね?」

「あぁ…私、桂利奈ちゃんと同じ理由かなぁ…。どちらかといえば、ベコ派」

「まぁ…私は…なんかもう、面倒くさかった…」

「沙織さんは…仕方がないとしても、麻子さんもベコさん派なんですね」

「ちっ、違う!!」

「五十鈴殿は、結構ノリノリでしたね!」

「みほさんに釣られてしまいました。たまには大きな声を出すのもいいですね」

 

 

 なんか…派閥が出来始めたな。

 

 ふ~ん。

 

 はい。

 そんな訳で、みぽりん到着。

 

「たっ! 隆史君!!」

 

「ハイ」

 

「ボコ勝っちゃったよ!?」

 

「ソウデスネ」

 

 はい。観客からのクレームが発生しました。

 腕を胸の前で握り締めて、恨みがましい目で見てきますね!

 

 ……。

 

 ですので、こちらも主催側として、大人の対応をさせて頂きます。

 

「……」

 

「……」

 

「…あ……あれ? た…隆史君?」

 

 シレッと、真顔で対応してみたら、何か焦りだしたみぽりん。

 

「何でしょう? 西住さん」

 

「」

 

 普段と違う対応をしたら、あんこうチームが固まった。

 ドウシタノデショウ?

 

「どうしたのですか? 隆史さん…みほさん固まっちゃいましたけど…」

 

「ソウデスネ、五十鈴さん」

 

「 !? 」

 

 目を見開きましたね。

 なぜでしょうか? 普通に対応しているだけですのに。

 

「あ…あの…なぜ…え?」

 

「なぜ? 何がでしょうか? 五十鈴さん」

 

「」

 

 

 …体の前に腕を出した状態で、動かなくナリマシタネ。

 完全に硬直した二人の横で、ツンツンと頬を啄いている沙織さん。

 

「は…華まで…。どうしたの隆史君? なんか怒ってるの?」

 

「何が? 別に怒ってないよ? さおりん」

 

「 !? 」

 

「はっはー。いつも通りだよ? さおりん」

 

「なっ…なっ!?」

 

 今度は、沙織さんが硬直した。

 顔色は何故か赤いけど。

 

「ど…どうしたのでしょう? 隆史殿がおかしい…」

 

「おかしい? どこも、おかしくないですよ? 秋山さん」

 

「」

 

「…書記。お前…」

 

「なに? マコニャン」

 

「……」

 

 何がなんだか分からない。

 そんな雰囲気になってしまいましたねぇ。

 別段、普通なのに。

 

「会長」

 

 マコニャンが、移動し始めた会長を呼び止めた。

 着替えでも入っているのだろう。

 バックを肩にかけているね。

 

「…さっき、会長達もボコの応援してたな」

 

「あぁー。うん、したねぇ。別の意味で面白くなってきちゃってね? なぁ小山」

 

「そうですね。あぁでも、桃ちゃんはジーっと見てただけだったよね」

 

「…あのノリについて行けなかった」

 

「ダメだよ~かーしま。空気読まないと」

 

 ……。

 

「ふむ。では、会長と小山先輩はボコ派。河嶋先輩はベコ派…か?」

 

「いや…まぁ、どちらでもいい! が、…まぁ。納涼祭の時を思えば…尾形書記とは別に」

 

「桃ちゃん、一緒に行動してたしね」

 

「まぁ、か~しまは、そうだよねぇ。私は別にどっちで…『 だ、そうだ。書記 』」

 

 ……。

 

 ン?

 

「え? 何が?」

 

「なんだ? いいのか?」

 

「…え? 何? なんの話? 隆史ちゃん」

 

「なんでもないですよ? 角谷生徒会長?」

 

「」

 

「隆史君!? な…なに!? 急に!」

 

「なにがですか? 小山副会長?」

 

「」

 

 うん、別に怒っちゃいないよ?

 正式名称で呼んでいるだけですよ?

 

「……」

 

 でもなんだろう…。

 

 

 …すげぇいらつく。

 

 

「…尾形書記、お前なんの…」

 

「なんすか? 桃ニャン」

 

「もーーーーー!!??」

 

 なんか、マコニャンとペアーっぽいなぁ。

 

「ろ…露骨だな」

 

 なんだろう。

 結局あんこうチームで動いているのが、マコニャンだけになったな。

 

「書記、お前。結構、ベコに愛着持ってたんだな…」

 

「愛着? 無いよ? 別に」

 

「……」

 

 マコニャンが後ろを振り向いた。

 他のチーム達が見てるね。

 

 うん。

 

 振り向いた瞬間、思いっきり顔を逸らした人がいるなぁ…。

 

「まったく…つまらない妬きモチなんぞ妬くな。でかい図体でみっともない」

 

「…」

 

 妬きモチ…?

 俺が?

 …この年で?

 

「……」

 

「…おい、本気で悩むな」

 

 

 ナイナイ。

 

 そりゃ勘違いだ。

 

 そんな大人気ない…

 

 

「じゃなきゃ、普通にいつも通りに接しろ。…何名か固まっちゃっただろ」

 

「……」

 

 

 

「ほら、まず会長から。隠し芸が始まらないだろ!」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 …ひどいものだったな。

 何名かは、普通の呼び方に戻したら、石化が解けて動き出したが…。

 まぁ約一名を除き、全員が復活したから、また元の空気に戻ったが。

 

 生徒会の出し物…隠し芸。

 

 バレエだった。

 しかし会長は、思いの他、力があるんだな。

 小山先輩を担ぎ上げていたしな。

 

 ……。

 

 ま…まぁ、河嶋先輩も回転が凄かった。

 よくテレビとかでやってはいるが…出来るものなのだな。

 片足でグルグル…と……。

 

「」

 

 ……。

 

「に…西住さん」

 

「」

 

 何故か、書記は頑なに西住さんだけ、呼び方を戻さなかった。

 まぁ、頃合を見て理由は言っていいと…最後には書記も認めたが…。

 何度か呼びかけたら、やっと反応があった…。

 

「あの…西住さん?」

 

「…なんでしょう?」

 

「書記の事なんだがな…今回の事…」

 

 ある程度、掻い摘んで説明した。

 まぁ決勝の事もあり、ダメ元で業者へ連絡を入れてみたら、思いの他あっさりと依頼ができた。

 …ボコショウのオファーが。

 西住さんが、喜ぶと思ったらしいのだけど…思いの他、喜びすぎて…。

 あのテンションだったから…分からんでもないが。

 

「……」

 

 あ。

 

 肩が段々と沈んでいったな。

 顔が徐々に赤くなっていったな。

 …流石に気がついたか。

 

「妬きモチ…」

 

「あら…随分とまぁ…隆史さんも可愛い所がありますねぇ」

「よりによって、ボコに妬きモチですかぁ…隆史殿」

「…まぁ、正直…みぽりんのボコへのテンション…横で見てたらなんか納得かも。その時の敵役が、隆史君だしね」

「書記は、変な空気にしてしまったから申し訳ないと…バラす事を許可した」

 

「妬きモチ…」

 

「あ、そろそろ順位発表だね」

「さて…どうなりま……」

 

「妬きモチ…」

 

 

 「「「「 …… 」」」」 

 

 

「…妬き…も……う…フフフフ…」

 

 

 何が嬉しいのか…下を向いて笑いだしたな…。

 先程までとは全然違う…。

 

 …なぜだろう。皆一瞬、眉毛が動いたな。

 

 ん。

 

 肩の間に顔を埋めた、真っ赤になっていた西住さんを眺めていると、視界が真っ暗になった。

 

 壇上に丸いスポットライトが当たった。

 マイクを持った…書記だった。

 

『えっと…では結果を……はぁ…みほ。ちゃんと前向け』

 

「えっ!? あ、うん!!」

 

 完全に復活したな…。

 …なぜか面白くない。

 まぁいい。

 今回書記が審査をしたという事で、書記が発表をするという事らしい。

 河嶋先輩が、若干不満顔だな。

 

『ん、では結果を発表する。審査内容は、ぶっちゃけ俺の独断だ』

 

 《 えー!! 》

 

 不満声が上がる。

 ま、もっともだが…。

 どうせ、生徒会が一位だろ?

 

『よって。生徒会は候補から外した』

 

「 なぁ!? 」

 

 あ、会長が絶句した。

 

『やる気を出させる為に、会長にあぁは、言ったが…主催者側がこういった事に、出しゃばっちゃダメでしょう? 間違いなく不正を疑われますよ』

 

「 そ…干し芋…買い物…… 」

 

『買い物? はいはい、買い物くらい付き合いますから、黙って座ってください』

 

「!!」

 

 《 !? 》

 

 すとんっと、大人しく席に座った…。

 随分と…また素直に…。

 

「あぁ…だから、隆史君もあっさり辞退したのかぁ」

 

「金額が金額ですしね」

 

「けど…あっさりと買い物付き合うとか言ったよね…」

 

「……本当に意味わかって言っているのでしょうか? タラシ殿は」

 

 

『ちょっと時間も押しているので、ちゃっちゃといきます』

 

『はい、ではまず3位から』

 

 スポットライトが、ドラム音と共にグルグルと会場中を駆け巡りだした。

 どうも、こういった騒がしいのは好きじゃない。

 

 最後。デンッと音が止んだ。

 

『3位は…ウサギチーム!』

 

 スポットライトが、ウサギチームを照らした。

 手を上げて、やったー! と各々が喜びだした。

 まぁ商品じゃないのだろう。…こういう遊びでも入賞したのが嬉しいのだろう。

 

『はい、んじゃ次は2位』

 

 喜んでいる1年の下から、再度スポットライトが動き始めた。

 また、ドラドラとドラム音が鳴り響く。

 

 デンッ

 

『2位は…あんこうチーム!』

 

 おぉ…私達か。

 私の横で、また歓声が上がったな。

 食券…。

 

 ふむ。少し意外だったな。

 書記の事だから、身内びいきはしていないとは、思うが…2位か。

 筋肉痛になるまで、練習したかいがあったな。

 ……あのポーズを。

 

『はい、ではラスト。第1位』

 

 私達の下から、再度スポットライトが動き始めた。

 

 デンッ…と。

 

 

『優勝は…アヒルさんチーム』

 

 おぉー…すごい歓喜の声が…。

 

 あれだろ…? モノマネ…。

 

「優勝!? 10万えーん!!」

「…よしっ!!」

 

 静かに喜んで、ガッツポーズとっている人が役一名。

 微妙な顔している人も役一名。

 

 が。すぐに4人一緒に喜び、歓喜を上げた。

 

 

『…他の人も納得できるように、1位の内訳を言っておくな』

 

 まぁ気になるのだろう。

 一気に静かになったな。

 

『1位にアヒルさんチームを選んだ理由は…』

 

 何故だろう。

 書記を、結構みんな真剣な目で見てるな…。

 

『ちゃんと、隠し芸をしてくれたから…』

 

 ……。

 

 …………は?

 

『身近な人物のモノマネ…普通に芸ですね。…特に約一名。実用可能だと考えました』

 

 じつ…なんの?

 同じことを思ったのか…西住さんが、頭を押さえてる…。

 

『2位のあんこうチーム。チーム外の人もいたので、それがマイナスになりました。ま、俺らな』

 

「あら~…」

 

「まぁ確かに、ちょっとアレですかね…」

 

『…レオポンさんチーム。ありゃ俺への修理完了報告…もとい、改造報告だよ…』

 

 あぁ…あのゴツイの…。

 

『はい、では以上です。特に優勝のアヒルさんチームは、賞品の説明するので、後日生徒会室に来てください』

 

 「「「「 は~い!! 」」」」

 

『無駄に返事はいいな…。では、これにて祝賀会が終了となります。杏会長』

 

『はいさ』

 

 書記の呼びかけで、生徒会役員3人が壇上に上がる。

 4人が横並びになり、こちらを向いた。

 締めの挨拶だろう。

 

『よ~し! んじゃみんな、いくぞ!』

 

『せーのっ!』

 

 

 《 ばんざーーい 》

 

 全員で、万歳。

 

 …はい、これにて終了。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 やっと…終わった…。

 まぁまだ、仕事は残っているが。

 仕事…そうそう。お仕事デス。

 会場を出た所で、業者の方とお会いしました。

 

 はい。

 

「…やってくれたわね、尾形君」

 

「何がでしょう?」

 

「最後! ボコが勝っちゃって、本当にどうしようかと思ったわよ!!」

 

「はぁ…いいですか? メグミさん」

 

「…なによ」

 

「俺。依頼主。お金出す人」

 

「…ぐっ」

 

「貴女が、独壇でアドリブなんて始めちゃうから、こんな事になったんでしょうよ」

 

「……ぐぐっ」

 

「…ま、今となっては楽しかったですから。もう言いませんよ」

 

「…分かったわ」

 

「で? 何の用ですか?」

 

「う…うん。あのねぇ?」

 

 急に猫撫で声になったな…。

 

 後ろでブツブツ呟いている人もいるけど…。

 アズミさん…ちょっと目がおかしくなってますわよ?

 

「ちょ~~とさっきの件でぇ…「あぁ。愛里寿の件は教えませんよ?」」 

 

「……」

 

「…所で、なんでそんな荷物あるんですか?」

 

「…私達もここに泊まるからよ…」

 

 教えないと言った以上、本当に俺は言わないを分かっているのか、あっさりと身を引いた。

 なんだかんだ、よく会うようになったからかなぁ…。

 決勝戦の時も、最終的には俺らと合流していたしな。

 

「いや…戻らなくていいんですか? ボコの着ぐるみ放置ですか?」

 

「家元と会いそうで…」

 

「……」

 

 うん、今貴女の後ろにいますけどね?

 

「そう! そうなのよ! どう思う? 隆史君!!」

 

「…アズミさん?」

 

 あれ……なんでいきなり名前呼び…いや、いいけど。

 なんで? あれ? 腕組んでくるの?

 場所柄、非常にまずいんですけど…。

 

「家元! ボコミュージアムに来るようになったの!!」

 

 うん、知っとる。

 

「で、会う度にお酒に誘われて! …連行されるわ」

 

「……」

 

 ズッと後ろを見てみる。

 フッと顔を逸らされた。

 

「…まぁ、いい大人なんですから…節度を持った飲み方なら…」

 

「……意識が一度飛んでからが、本番だって毎回言うの…」

 

「……」

 

 はい、逸らさない。

 はい、片付け作業開始しましたって急に行動しない。

 

「分かりました。んじゃ明日、千代さんに言っておきますから…取り敢えず、離れてください…死にます。俺の胃が…」

 

「……チッ」

 

 あぁそうか。

 女性として意識してないとか、言っちゃったからか。

 こうい事してるからですけどね。逆効果ですけどね!!

 

 なんか反応をしなかったら、次ね…と、呟いて離れた…。

 何を必死になり始めたのだろう…。

 

「簡単に、今度言っておくって…そのセリフが出るだけで…すごいけど…」

 

「明日って、そもそも家元と会うの?」

 

「あぁ…明日。戦車道チョコの撮影があるので…。今回選ばれたんですよ。LRの」

 

「そうなんだ…。私達が高校生の時も…あの会長のセイで、いい思い出がないわぁ…」

 

「でもさぁ。家元って普段服で撮るの? 結構、あの人多忙だから…すぐに終わりそうね。時間ですからって言って」

 

 多忙なのにボコミュージアムに入り浸ってんのか…。

 

「いやぁ…水着撮影だから…そう簡単に終わらないと思いますけど…」

 

 

 「「「 水着!!?? 」」」

 

 

「…すごいわね。あの年で…」

 

「よく、オファー受ける気になったわね…あの年で」

 

「確かにあの年の割に、プロポーションいいけど…」

 

「………………」

 

 さてと。

 

「じゃあ、俺。今からその撮影の為の業者さんと、会わないといけないので、もう行きますよ?」

 

「え? えぇ」

 

「ですからね、明日がありますので、今日は程々にしてあげてくださいね?」

 

「…はい? 何を言ってるの?」

 

 そのまま不思議がる彼女達を背にし、取り敢えずロビーに向おう。

 うん。撮影場所とか色々。

 昨日の夜は、その関係で遅くまでかかり…衣装選びの書類を選考するのが夜中になってしまった。

 その為…結局徹夜になってしまった。

 

 ですからね。

 

 …徹夜はやめておいた方がいいですよぉ? 千代さん。

 

 スッ

 

 

 

 パーーーン

 

 

 って音がした気がした。

 

 

 

 

 

 

 ---------

 ------

 ---

 

 

 

 

「あ、隆史君」

 

「…みほ?」

 

 祝賀会の会場前に、あんこうチームを発見した。

 まだいたのか…というか、手荷物が多いな。

 

「どうした?」

 

「……」

 

「?」

 

「すごい普通…」

 

「何を残念そうな顔をしてるんだ…」

 

「スコシクライ、アカクナッタリ、シテクレテモ…」

 

 本当に何言ってんだ?

 

「あの…隆史さん」

 

「華さん? なんですか?」

 

 なんだ? 一瞬顔が輝いたぞ?

 え? 何!?

 

「なんでもないですっ!」

 

「…はぁ」

 

 すげぇ笑顔になったけど…。

 

 あれ?

 

「沙織さん…だけ、いないな。どうした?」

 

 あんこうチーム。

 その通信手だけ、見当たらなかった。

 

「…沙織は…詩織の所に行っている」

 

 あぁ…なるほど。

 

「所で、隆史君だけ、個室なんだよね?」

 

「…あぁ。学校じゃなくて、戦車道連盟で用意された部屋だ」

 

「ふ~ん」

 

 な…なんだ?

 目が一瞬輝いたな…。

 

「あぁ、そうそう。ちょっと今から今日、最後の仕事をするんだけどさ」

 

「え…まだ残ってるの?」

 

「まぁ、すぐに終わるんだけどね…それで、ちょっと優花里に手伝ってもらいたくてな」

 

「優花里さん?」

 

「私ですか?」

 

 あ…でも、あれか。

 風呂にでも行くつもりだったのだろう。

 んで、沙織さんを今ここで待っている…そんな感じか。

 

「私は大丈夫ですよ? 皆さんは、先に行っていて下さい」

 

 何かに気がついたのか、優花里が気を使ってくれた。

 みほでは無く、優花里にお願い。

 

「う…うん」

 

「戦車道連盟ってのが、気になりますし!」

 

「……私は、それが心配…」

 

 ごもっとも!!

 

「なぁ書記。行くなら早くいけ。詩織が来ると面倒だぞ」

 

「そうなの?」

 

「…お前の部屋に泊まるとか、言い出しかねんぞ」

 

 

 「「「「「 …… 」」」」」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 この時、私は迂闊でした。

 

 まさか、あんな事になるなんて。

 西住殿のメールが来た時に、それを思い知らされました。

 

 武部殿を待っていたあの場所から、隆史殿に連れられてホテルの廊下を歩いていたました。

 始め、人と会うのでしたら、一度着替えましょうか? と聞いたところ。

 特に問題が《無くなる》からいいよと仰言いました。

 

 無くなる。

 

 私はそれを聞き逃してしまいました…。

 

 絨毯廊下を抜け、いつしか普通の廊下に変わっていました。

 鉄の扉を開け、更に進む。

 

 なんでしょう…客室ではなく…まるで普通の…。

 

「あ…あの、隆史殿」

 

「んぁ? なに?」

 

「ここら辺って、入って大丈夫なんでしょうか?」

 

「あぁ。大丈夫」

 

 その先…更に扉を開け…あれ?

 

 今、STAFF ONLYのプレート掛かっていませんでした?

 

 ……。

 

 一度待っていてくれと言われ、事務室の様な部屋に入って行きました。

 

 ただ、すぐに出てきました。

 ちょっと疲れた顔をしてますね。

 

「ごめん。ちょっと戻る事になるわ」

 

 そう言ってまた、ホテルロビーまで連れて行かれました。

 

 なんだったのでしょうか…?

 

「まったく…」

 

 たまに、何か呟いてますね。

 

 今度は普通に、エレベーターに乗り、上の階へと登って行きました。

 

 チーンッと機械音がしました。

 5のランプに光が点っていますね。

 5階…。

 扉が開くと…そこは…。

 

 はぁ…普通の客室が並んだ場所ですね。

 

 何を私は、怯えていたのでしょう?

 そうですよねぇ。

 大丈夫です。

 

 隆史殿ですから!

 

 ・・・。

 

 大丈夫ですよね?

 

 プレミアムルームとか、プレートが貼られているんですけど…。

 

 ここに入るんですか!?

 

 高い部屋ですよね!?

 

 じゃなくて!!

 

 なんでこんな部屋!?

 

 

 

「すまんな優花里、ここ俺の宿泊部屋」

 

 

 

「はっ、はいぃぃ!!??」

 

 

 

 なんで謝るんですか!? 

 

 なんで謝るんですか!? 

 

 なんで謝るんですかぁ!!??

 

 俺の宿泊部屋?

 

 戦車道関係じゃなかったんですか!?

 

 なんで、西住殿に嘘ついて!?

 

 私を自室に…

 

 

 じ……し……

 

 

 

「ちょっと、荷物取ってくる」

 

「…え!?」

 

「さすがに、部屋に連れ込む様な訳にもいかないからさ、ちょっと待ってて」

 

「あー……はい」

 

 そう言って、隆史殿は中に入って行きました。

 

 ……。

 

 …………。

 

 び…。

 

 

 びっくりしたぁ!!

 

 

 

 手荷物を持って、すぐに隆史殿は出てきました。

 その彼は、なぜかこんな部屋を用意されたと嘆いていました。

 自分だけこんな個室と、他の方を気にされていましたね。

 

「……」

 

 そうですよね!!

 

 そ~ですよ! そうです!!

 

 隆史殿ですからね!

 

 はぁー…本当にびっくりしました。

 

 ……。

 

 …………。

 

 あれ?

 

 そのまま、すぐ横のドアをノックしましたね。

 同じプレミアムルームですよ?

 

 え?

 

 その時に、携帯がなりました。

 西住殿からのメールです。

 先に確認しておこうと、画面を開いていると…。

 

 前の扉が開き、中から女性の方が出てきました。

 何か、色々な…仕事道具みたいなものを体に付けてますね。

 

「ごめんなさい。ココしか空き部屋なくて」

 

「まぁいいですけど…できれば、事前に連絡欲しかったですよ…。じゃあ、テストお願いします」

 

 テスト?

 

「じゃぁ優花里。お願いします」

 

「え?」

 

 背中を片手で、軽く押され一歩部屋に入りました。

 

 ……。

 

 すぐに携帯の画面を見ます。

 

 西住殿からのメール。

 

 

『 隆史君、まだ少し酔ってるかもしれないから、注意してね? (´・ω・`)ノ 』

 

 

「」

 

 

 西住殿ーーー!!!!

 

 それ一番、重要案件じゃないですかぁ!!!!

 

 酔ってる!? なんでですか!?

 

 あと、最近顔文字覚えたからってぇ!! これですか!? よりによって、これですか!!??

 

 

 

 はっ!?

 

 

 

 後ろから、隆史殿に両肩に手を置かれました…。

 

 ドアが締まる音がします…。

 

 部屋の中…なんか…撮影機材がいっぱい…。

 女性の方しかいませんが…ですけど…。

 

 その横…なんでしょう? 

 色取り取りの…水着!? あれ、水着ですか!?

 

 その横に…あ……あれ!?

 

 

 大洗学園の制服!?

 

 なんで!?

 

 

「優花里、明日の為に、機材チェックが必要でな…今日の内に試しに撮っておきたいって要望あってだな…」

 

 な…なんの事ですか!?

 

 キザイチェック!? え!?

 

 あれは…霧吹き!?

 

 な…なに…。

 

「あぁ、戦車道チョコの第9弾のLR撮影の事…なんだ」

 

 戦車道チョコ!?

 

 え……あ……。

 

 

 

 あああああぁぁぁぁ!!!

 

 

 

 振り向き、隆史殿の顔を確認すると…先程、祝賀会で見た…。

 

 とてつもなく悪い顔をしていた。

 

 

 

 

 

「  さぁ、約束を果たそうか?  」

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

はい、次回!! ……PINKです。

本史は…

撮影会がいいですか?
女子会がいいですか?

まぁちょっとPINKに専念…とうか、今話で、3,4話できそうや。
はい! ありがとうございました!!

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