転生者は平穏を望む   作:白山葵

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はい、ある意味、最初からクライマックス


第16話~家元撮影~ 中編

「はーい、分かった?」

 

「……」

 

 撮影の準備ができた為と、先程まで締め出されていた部屋に呼ばれた…。

 

 なんで…今度は呼ばれたんだろ?

 

 いや、呼ばれたのはいいよ…。

 

 なんで俺、カメラ操作の説明受けてんの?

 

 ハイテンションのカメラマンの女性に、部屋に入った早々にカメラを渡された。

 先程まで使っていたカメラとは別だけども、一眼フレームのごっつい奴。

 あ、これ昨日、優花里を撮影していたカメラだ。

 

 今のデジカメって、こんなのもあんのかよ…。

 これ絶対にいい値段するだろ。

 

 うん…。

 

 いや…それはまぁ…百歩譲って良いのだけど…。

 色々と思う所はあったのだけど、睨み合っている二人の家元と…。

 ハイテンションのカメラマンとは違い、もう一人のスタッフの方は、顔を青くして…。

 

「すいません! すいません! すいません! すいません!」

 

 ガウンを羽織った、家元達に腰から上が取れるんじゃねぇか? と思えるほどのお辞儀を繰り返していた。

 なにがあったんだろ…。

 そんな4人を眺めて、少し呆然としています。

 

「これは、カードにならない用のカメラだから、好きに撮ってね!」

 

 予備のカメラらしい。

 最後の水着撮影…なんでかソレを、俺が撮るという事で決まっているそうだ。

 

「家元達の着替えは、すでに完了しているからね! 私達は隣の君の部屋で待機させて?」

 

「…は?」

 

「今から、順番に撮影してもらいます! 制限時間は30分。んじゃ、よろしく~」

 

「はぁ!? まって! 待ってください! どういう事ですか!」

 

 言うだけ言って、部屋を出ていこうとするカメラマン。

 なにいきなり言ってんの!?

 俺が撮影する事に承諾はしていない。

 後、あんた、撮影には俺は、邪魔みたいな事言っていたよね!?

 

「つまり~…」

 

 …今回は、男目線が必要。

 先程の撮影と違い、この撮影の場合、第三者がいると逆に集中できないから、お邪魔虫の私達は退散しますぅ。

 家元達を恋人か何かだと思って、シャッターを切るのがコツね!

 それこそ脱がす位の勢いで~…って、素晴らしく楽しそうに説明をされました。

 

 …いや、恋人って…あんた。

 

「なに淡々と説明してんすか!! は!? どういう事!?」

 

「言った通りの意味だけど…家元達からの了承は得てるわよ?」

 

「俺は、承諾してねぇ!!」

 

 

 しほさんと…千代さん…さっきから一言も発しないと思ったら…。

 すげぇ笑顔で、睨み合いが継続中…。

 

 いつもの事だけど、一体何があったの!?

 

「んじゃ、まずは島田さんからだから! 健闘を祈る!!」

 

「なんの!?」

 

「もう全体的に時間がないからさぁ。さっさと取り掛かってね!!」

 

 もう、聞く耳は持たないと…テーブルに置いてあった、隣の部屋のカードキーを持って出て行ってしまった。

 終始、無言のしほさん…。

 流し目の様に、こちらを振り向き…そのまま一緒に出て行ってしまった。

 いや…いくら隣の部屋だからって…その姿で…。

 

 最後…手を合わせて、顔面の前に祈るように出している…もう一人のスタッフさん…。

 後ずさりしながら、そのまま…部屋を出て行ってしまった…。

 

 俺の前に出した腕が、虚しく宙に浮いている…。

 

 

 

 

 

 

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 パタン…。

 

 ドアが閉まった音がした…。

 

 まじか…。

 

 いきなりかよ!!

 呼ばれた早々に、ガウン姿の千代さんと二人きりにされた…。

 

「さ、隆史君?」

 

「ち…千代さん?」

 

 俺の後ろ…。

 真後ろからの声に、弱冠の恐怖を覚えた…。

 ゆっくりと振り向くと…。

 

「時間もありませんから…さっさと始めましょうか? どこで撮ればよろしいですか?」

 

「」

 

 ごく普通の声で…。

 

 なんで、そんなに冷静なんですか!?

 ちょっ!? ベ…ベットの前!?

 そのベットに視線を投げていた…。

 

 って、そこかよ!!

 

「そうですねぇ…。こんな恥ずかしい格好をさせたのですから、しっかりと責任を取ってくださいねぇ?」

 

「」

 

 えっと…本当に?

 ほんっっとに、アレを着たの!?

 

 二人共!?

 

 ガウンの下って…あの…。

 

「仕方がありませんねぇ…。少しリードしましょうか? これからガウンを脱ぎますので…」

 

 そ…そりゃ、水着撮影だから…ガウン姿を撮っても…。

 いや、そうじゃなくて! 

 

「そこから、隆史君のタイミングで撮り始めてくださいね?」

 

「…え」

 

 そう発言し、背中を見せた。

 先程と同じ様に、こちらに視線を向けて…見せつけるようにガウンを脱ぎ始めた…。

 少し肩を露出した辺り…ガウンを肘関節に掛けて動きが止まる。

 急かすように、目線をこちらに送り…。

 

「時間がありませんからねぇ。早くしてください」

 

「!?」

 

 くっ…仕方ない…。

 そうだよ…。

 あんなの着てくれたんだから、恥ずかしくない訳がない。

 急かされるまま、カメラを構えた。

 

 ファインダーを取り敢えず覗いてみると、その先には白い背中が見える。

 

「……」

 

 マジかよ…。

 本当に着たんですか!?

 あの水着を着ていると確信できる物が見えた…。

 

 背中には、紐しか見えない。

 

 白い背中に赤い線…。

 両肩からVの時になっている…紐…。

 

「……」

 

 ちょっと…すげぇ…見てしまう…。

 俺マジデ、ナニヤッテンダロ…。

 

 いや…でもなぁ…いくら大人とはいえ…こんな水着。

 ある程度の覚悟がなきゃ着れないだろうし…。

 いつまでも狼狽えていちゃ…それこそ、千代さんに失礼すぎるだろ…。

 

「さて…どうしますか?」

 

 少し頬を赤らめて、半身にこちらを振り向いて…。

 

 ぎゃ…逆三角形…。

 

 胸を起点として…それは見事な横乳…じゃない!!

 逆三角形を作り出していた!

 ガウンが邪魔!!

 

「千代さん…」

 

「…あら、なんでしょう?」

 

 えっと…先程の少し見た撮影と、昨日の優花里を撮影した時のカメラマンを思い出す。

 確か、会話をして…褒めながら…。

 

「背中…すげぇ綺麗ですね」

 

「っ!?」

 

 と…取り敢えず褒めてみた。

 

「肌も、すごい綺麗ですし…」

 

「…」

 

 何か、おかしかったのだろうか?

 余裕の表情が消えた。

 取り敢えず、一度シャッターを切ってみる。

 

 カシャッと機械音が響く…。

 

「う…嬉しい事を、言ってくれますね…」

 

「そう…ですか?」

 

 あぁ、これで正解だったのか…。

 くっそ! 顔が熱い!!

 女性を真面目に…それこそ露骨に褒めるのって…こんなに恥ずかしいのか!!

 

「普段なら、隆史君…そんな事言わないですからね。素直に嬉しいですよ? …少し、恥ずかしいですけどね」

 

「こっちも恥ずかしいのですけど…!?」

 

「あ、でも酔っている時に似たような事を言われましたかね?」

 

「ぐっ…」

 

 何か、少し怪しい笑みを浮かべている。

 狼狽えている俺が、何が可笑しいのだろうか?

 それとも、今の会話が、良かったのか…。

 

 その状態が少し続いた…。

 2、3度シャッターを切るのだけど…背中しか撮っていない気がする…。

 いかん…時間だけが過ぎて行く。

 

「…少しお話をしましょう」

 

「え…あぁ! はい!」

 

 気…気を使われてる…。

 無言を貫くのもどうかと思うし…まぁお互い気が楽になるのなら…。

 

「…決勝戦、お疲れ様でした」

 

 ガウンを肘関節に掛けながら…後ろをこちらに見せ、一昨日の事を話題に出した。

 まぁ、迷惑を一番かけてしまったのが、千代さんだと思う。

 

「いえ、大変ご迷惑を…」

 

 またシャッターを切る。

 先程から、上はほぼ裸。下はガウン…そんな千代さんしか撮っていないなぁ…。

 まぁ、これはこれで…すげぇエロいけど。

 

「それで、ですねぇ…今回の事で、改めて思いまして…」

 

「え? 何がですか?」

 

 手を、お腹の前で組み…こちらを向いた…ぁぁああ!!

 胸が凄い事になってる!!

 まっ白な肌に、赤い線がぁぁ!!

 

 ガウンが邪魔をしているが、それでも分かるスレンダーな体の線…。

 それに少しアンバランスかとも思える程の胸!!

 

 い…いかん…。

 

 昨日の優花里が着た、スリングショットよりも、布面積が弱冠広いが…そういうことじゃない!。

 つか…ガウンが、下半身……要は、全体を顕にしない為、チラリズムとも違うけど…これはこれで…すげぇ…事に…。

 

 無意識に顔を逸らし、カメラを少し下げてしまった。

 そりゃそうだろ!!

 直視出来なかった!!

 一瞬見た、大人の女性のスリングショット!!

 胸の形が完全に分かり、尚且つ最低限の場所しか隠さない水着!

 殆ど見なかったけど、一瞬で目に焼き付いた…。

 

「ふふ…」

 

 なに!?

 

 なんか近づいてきた!!

 

「隆史君」

 

「はっ! はい!?」

 

 密っ着!! 密着されたぁ!!

 真正面から、寄りかかるみたいに、上半身を押し付け…ぇ!?

 胸になんかすっげぇー! やわら……あぁぁ!! もう!!!

 

 顔が熱い…。

 ここまで、自分が赤面していると自覚できたのは、久しぶりだ!!

 密着し、下から上へ…上目使いで見上げてくる!!

 

 そんな彼女からの、言葉が。

 

 

 

「やはり、愛里寿と一緒になる気は、有りませんか?」

 

 

 

「はい!?」

 

 少し、頭の熱が下がった気がした…。

 な…なんで今! このタイミングで、そんな話!?

 

 愛里寿!? 

 

 え!? 少なくとも千代さんは、俺とみほが付き合ってるの知ってるよね!!

 意外な問いに、思わず下を向いてしまう。

 

 目に入る…。

 

 …押しつぶされた様に…丸みを更に強化された胸が…。

 

 谷間が…。

 

「…あぁ、将来のお話ですよ? 最終的には…って、事でぇ…」

 

 手っ!!

 

 下を無ていた顔を、両手で掴まれて、強制的に正面…つまりは、千代さんの目線に合わせられた。

 なに!? そのすっげぇエロい顔!! 

 そして、すっげぇエロい声!! 

 熱を帯びたような…なんで? 愛里寿の…えぇ!?

 

「今現在…そうですねぇ…。高校卒業までは、お好きにしてもらって、結構ですから…」

 

 か…顔が…近い!! 近づいてくる!!

 背中に硬い感触がした…。

 いつの間にか壁際に追いやられていた…。

 

 お好きにって…どういう…。

 

「愛里寿と一緒になる前…。それなら浮気じゃありませんし…そうでしょう?」

 

「ちょ!? え!?」

 

 彼女の親指が、俺の両顎に添えられている。

 顔を固定された!?

 

 その為に背伸びをしたのか、俺の胸に当たっている、千代さんの胸が…さらに丸みを帯びた。

 

 丸みを帯びた事によって、肩に掛かっている水着の紐が…少し浮く…。

 

 ぐ…ぁ……。

 

 絶対に擬音はムニッ! か、ムニュッ!! だ!!

 

「……」

 

 …何言ってんだ俺…。

 自己ツッコミに、ちょっと冷静になれた…。

 

「そうそう…しほさんに何か色々と、プレゼントをしてもらったみたいですね」

 

 なんでまたそれ!? なんか話題を戻された!?

 しほさんの名前が出ましたね!? 冷静になったと思った頭がまた混乱し始めた!

 

「では、私も何か…。隆史君は、何か今欲しい物とか…あります?」

 

「そりゃ、ありますけどね! なんで今、こんな時にそんな話をするんですか!!」

 

「…何故?」

 

「そうですよ!!」

 

 随分と不思議そうな顔をしている。

 というか! 完全に、壁際に追い詰められていた…。

 この言い方は、しほさんに対抗して何か俺に買うつもりだ!!

 

 いいよもう! 

 

「!?」

 

 ここまで露骨に近づいてくる千代さんは、初めてだ!!

 気がついたら…ガウンから伸びた…白い脚が、俺の脚の間に差し込まれていた…。

 

 おい…おいおいおい!!

 

 あんた今、すげぇ格好してんだよ!?

 つか、さっきからなんなの!?

 

 言動がまるで…

 

 

「言ったでしょう? 愛里寿と一緒になる前なら、浮気では無い…と」

 

「なっ!?」

 

「それまでなら…私も少しくらい……若い子囲っても、よろしいかと思いまして…」

 

「なぁ!!??」

 

 顔が…近づいて来る…。

 本気か!? え!?

 薄目で、何か熱を帯びた顔…。

 顎を上げて…口を…。

 

 こ…これは……。

 いくらなんでも分かる…。

 

 千代さん…え!?

 

「っ!!」

 

 流石にまずい…。

 

 本気かどうかなんて、この際置いておく…。

 女性に恥を…とかも、どうでもいい…。

 

 おかしい…。

 

 千代さんの熱を帯びた、本気の目もそうだけど…言っている事が、滅茶苦茶だ。

 

 そんな事を愛里寿が、認めるはずなんてないし…。

 

 何よりも、みほが…。

 

「…隆史君」

 

 熱を帯びた目が、近づいてくる…。

 

「……」

 

 千代さんの肩に手を置いた。

 

 …その手に、力を込める。

 

 その手を…。

 

 多少乱暴でも…引き剥がすように、本気の力で前に押し………

 

 

『 ピピピッ! ピピピッ! 』

 

 

 突然、テーブルの上。

 スタッフが置いていった、置時計のアラームが鳴った。

 なんだ…。

 

 あっ! 30分経ったのか!!

 

 …。

 

 電子音を皮切りに、俺の顔から千代さんの手が離れた。

 アラームに驚きでもしたのか、それこそ素早く…もう終わりとばかりに。

 

 いや…もう離れたとしても、先程までのは、流石にないだろう。

 冗談だとしても…愛里寿の名前まで出して…。

 

 一言言ってやろうと、視線をまた向けると、その目の前には…。

 すでにガウンを完全に着て、何か少し申し訳無い様な、そんな笑顔をした千代さんが目の前にいた…。

 違う…これは…。

 

「ご…ごめんなさいね? 隆史君」

 

 ……。

 

「ちょ…ちょっと、私も熱が入っちゃったけど…」

 

 手を先程のスタッフの方と同じように…目の前で合わせて…。

 

「30分経ったし…これで、私の撮影は終わりねっ♪」

 

 …じ…時間稼ぎ…。

 

 そういう事か…。

 

 ただ、からかってきたダケカ…。

 

「……」

 

 やはり千代さんも、こんな水着での、しかも写真を撮られる事には、抵抗があったのだろう…。

 そうだよな…なんか。背中ばかり見せてたものな…。

 そういえば……撮る時も…なんか…誘導…。

 

「いえ…なんか、隆史君の狼狽ぶり見てたら…ちょっと嬉しくなっちゃって、悪ノリしちゃいましたね!」

 

「……」

 

「わ…私も、まだまだ、いけそうですかねぇ?」

 

 冗談めいた言葉を発している…。

 女性として意識された事が、嬉しかったそうだ。

 

 うん…。

 

 なんだろう…。

 

 これは…。

 

 ちょっと…。

 

「あ…あらぁ…隆史君? 大丈夫?」

 

 

 いつもの千代さんに戻っていた…。

 

 

「……」

 

 

「どう!? もういいかしらっ!!」

 

 部屋を開けて…隣の部屋から、カメラマンの方々がお越しになりましたね…。

 

 弱冠不機嫌そうな、しほさんと一緒に…。

 

 部屋に入り、早速と…カメラマンの姉ちゃんが、近づいてきた。

 カメラマンは、俯いている俺の肩をバンバンと叩きながら…嬉しそうに…。

 

「どうだった!!??」

 

 非常に楽しそうに…まだ、顔が赤かったのか…。

 変に勘ぐって茶化してきている。

 

 ……ふ…ふふ…。

 

 アレだ…。

 

 亜美姉ちゃんを…思い出した…。

 

 叩かれる…まだ、肩を叩かれる…。

 

 それに反応して、顔を上げた。

 うん…比較的に笑顔を意識して。

 

「どう!? 本格的なさつ……え……」

 

 顔を上げた俺を見て、何か言い淀み始めたカメ姉。

 

 何、目を逸らしてる。

 

 こっち見ろ。

 

 ……。

 

「ダメですね」

 

「…………え」

 

 カメ姉の後ろにいた、しほさんと目が合った。

 何かあったと察したのか…一瞬目を見開き…。

 思いっきり…顔ごと目線を逸らしたネ。

 

「 カメラマンサン 」

 

「…な…なに?」

 

 

「   延長   」

 

 

「「 え!? 」」

 

 カメ姉と千代さんの声が、綺麗に被った。

 すでに終えたと思っていたのか…安心していたのか…。

 この状態からは見えないが、声から焦りを感じましたネ。

 

「…はい、操作間違えて何もしてないんですよ。先程、漸く開始できたと思ったら、終っちゃいましたネ」

 

 …はい。

 

 振り向きました。

 

 千代さんの顔が、段々と青ざめていきますね。

 カメ姉さんも、何故か青い顔してますね…。

 

 すぐに置き時計へと移動。

 無言で、もう一度置時計のアラームをセットする。

 はい、もう30分。

 

「え…あの……」

 

「はい。では、もう30分したら来てください」

 

 決定事項の様に言い切った。

 

 しほさんは、複雑な顔をしたまま…無言で部屋を出て行った…。

 今度は俺が、しほさんの後を追わせる様に…カメ姉の背中を押す…。

 

「え!? ちょっ!! 今日、そんなに時間無い…」

 

 

 

「カメラマンさん」

 

 

 その行動に、少し現実に戻ったのか…焦った様な声が聞こえる。

 部屋から出る直前、思い出したかの様にそんな事を言い出した。

 

 それに対し…自分でも分かるくらい…恐ろしく冷たい声で対応した。

 

「アンタ。俺の人間関係、かなり微妙なバランスなの…知っているだろ…」

 

「!?」

 

 どうせ、家元達が話したか…それともハゲから聞いたのか…何にせよ…。

 知っている事を前提に、話を切り出したら肩が跳ね上がった。

 

 …それを見逃さない。

 

「 それをおもしろがって、そんな俺に撮影なんて……サセマシタネ? 」

 

「 」

 

 図星なのか…今度は、体が硬直した。

 ぐっ…と今度は、手を両肩に乗せ…軽く…掴む。

 

「 ソウソウ、カードの特別枠でも増やしますかぁ? …俺が責任者らしので、どうとでもナルデショウ? 」

 

「え…」

 

 意外なのか…怯えた声がした。

 まぁ…うん、察しろ。

 

 だから言う。

 

 

 

「 マ イ ク ロ ビ キ ニ 」

 

 

 

「!!??」

 

「ね? ある意味、貴女も戦車道の関係者デショ?」

 

 振り向いたその顔は…蒼白になっていた。

 特別枠の事は、適当に言ったけど…ある程度の決定権は、本当に俺にあるのだろう。

 

 …マジでやりそう………そんな顔を頂きました。

 

 

「30分の撮影延長…対象は…貴女でも構いませんヨォ…?」

 

「わかったわ!! 了解!!! 承りました!! もう30分したらまた来るから!!!」

 

 はい…快く許可を頂きました。

 

 …その後、逃げるように部屋を出て行ったな。

 

 最後、延長の許可から問題を変えたのに、気がついていなかったな。

 

 ア ッ ハ ッ ハ ッ ハ

 

 閉められたドアから、振り向く。

 うん…後ろを振り向く。

 

 一人残された、千代さんに向かって。

 

 

「 千 代 さ ん 」

 

 

「な…なにかしら!?」

 

 

 俯いき、千代さんの名前を呼ぶ。

 名前を呼ばれて返事をした千代さんを無視し…おもむろに近づいていく。

 近づくに従い、一歩一歩後退する千代さん。

 

「」

 

 それでも逃がさない様に近づき…彼女の目の前に立つと…怯えた様な顔で見上げられた。

 

「た…隆史君…その延長って…え?」

 

「……」

 

 無表情で見下ろす…。

 

 その態度で、流石に察したのだろう…。

 

「お…怒ってる?」

 

 うん…目が泳ぎだした。

 まぁ、年下とは言え…俺みたいな男に迫られたら、怖いのだろう。

 部屋には、二人きりだしね。

 ですから、安心させる意味でも、言っておこう。

 ― 笑顔で。

 

「 激 怒 っ て 奴 で す ね 」

 

「」

 

 

 肩を掴む。

 ガウンの柔らかい手触りを感じた。

 そのガウンを掴み…。

 

「流れとはいえ、こんな水着を着せたんです。千代さんが嫌なら、それでやめました」

 

「…え」

 

「俺を囲むとか…度が過ぎた冗談も…まぁ、100歩譲って良しとしましょう…」

 

「そ…それならぁ…」

 

 

 そこまで言って、掴んだガウンを強引に肩からずり下げる。

 

「!?」

 

 腰に縛っていた、ガウンの紐を引き解き…。

 背後に周り、呆然とした千代さんの隙を突いて、ガウンを脱がした。

 

「!!??」

 

 脱がした際、水着がズレたのだろう…前かがみになって、胸元を隠す仕草をした。

 その事を計算し、態々背後に回った…。

 これならズレた時に、見えないだろうと。

 千代さんは、焦りながら…ズレた水着を直しながら、顔だけでこちらを振り向いた。

 

 大人の余裕も無く…何か言いたそうに、口を開いので…。

 

 

「からかうのと同時に…保身の為に、愛里寿の事を出しましたね?」

 

「」

 

 一番俺が、怒っている理由を口にした。

 

「いえ…あれは…その、リアリティを…」

 

「 は? 」

 

「」

 

 もっともらしいといえば、らしい言い訳。

 そうだな、リアリティとやらを出すのには、最適だろうな。

 最近妙に艶っぽいというか、艶かしかった千代さん。

 

 俺も本当の事かと思って、変に焦ってしまった。

 冷静になれば、冗談かと思うだろうが…冗談でも言っちゃダメだろ。

 

 …愛里寿の事は。

 

 はい、顔が青いですね。

 

 はい、手にあるガウンは、邪魔ですねぇ…後ろにほおり投げておこうかね。

 

 振り向いた時、彼女は前屈みのままだった。

 はい、腕を入れます…脚の下に。

 

「隆史君!? ちょ!? えぇ!!??」

 

 彼女を抱き抱え上げ、そのままベットの上にまで連れて行く。

 少し暴れたが、問題ない。

 

「…千代さん」

 

「なっ!? ベッ!?」

 

 ベットの上に、彼女を乗せて…なにを狼狽えているかしらねぇが……一言…。

 

 

 

 

「 正 座 」

 

 

 

 

 ベットの上に、スリングショットの水着を着た女性を正座させた。

 悪いとは思っているのか、素直に…綺麗に正座した千代さん。

 半裸とも言える…というか、ほぼ全裸の彼女を見下ろしている俺。

 正座の為、体が密着している。

 視界が、ほぼ肌色一色…。

 

「あ…あの……隆史君?」

 

 彼女の呼びかけを無視。

 

「本当なら説教の一つもくれてやるのですが、それよりも、撮影が恥ずかしくて嫌なご様子ですのでね?」

 

「あ…当たり前です! しほさんの手前、今更言いませんでしたが……さ…流石に、この格好は私も恥ずかしいですし…写真に残るという…の……は……」

 

 はい、言い訳を始めましたね。

 無駄にエロい体を、くねらせながら…そんな事を言い始めました。

 お仕置き…とも違うがまぁ…。

 

「…ですから、利害が一致しました」

 

「え…」

 

 利害。

 

「撮影が嫌なら撮影します。その為の…延長。千代さんは反省をする意味でも、少し痛い目にあった方がいい」

 

「……え…」

 

 一方的な利害。

 

 

「一つ思い出したのですが…俺はですね……」

 

 

 正座している千代さんの肩を押した。

 強めに押された彼女は、ベットの上に座ったまま横たわった。

 仰向けになった彼女を、立ったままベットの上に乗り…カメラを構えた。

 

 乱れた水着。

 

 少しずれただけで、色々と見えてしまう…。

 

 それが分かっているのか、狼狽しだし体を縮こませ様とする。

 

 ―が。

 

 

「女性のそういった赤面した顔が、好きでなんすよねぇ?」

 

 

 利…俺。

 

 害…千代さん

 

「ほら、一致した」

 

「い…意味が違います!」

 

 

「 ダ カ ラ ?」

 

 

 冷たく言い放つ。

 所詮言葉遊びだ。

 

 露出された骨盤を指でなぞると、こそばゆかったのか…悲鳴に近い声を上げて、肢体をくねらせた。

 

 連射。

 

 バシャバシャとした音が響く。

 

 変な体の動きと、ポーズもあり、撮られた!? みたいな顔をこちらに向けてきた。

 大きく体を動かした為、水着の乱れを手で確認しながら…目を見開いていますね。

 

「…本来なら、恩人とも言える千代さんに、辱める様な事はしたくないですけど…」

 

 流石に恥ずかしいのか…裸同然の格好で正座してモジモジしていた千代さん。

 

 

「ボクモ、ツライ」

 

「な…なら!」

 

 俺の言葉に少し顔を輝かせた。

 その輝きを無視。

 

「今回は騙し方が、最低でしたねぇ…。愛里寿の件を出して…更に俺を囲むとか…」

 

「」

 

 冷たく言い放った言葉に、顔を凍らせた。

 

「 モラルを無視した千代さんには、モラルを無視した痛い目に、あってもらいます 」

 

「」

 

 はい。逃がしませんし、やめません。

 あわあわし始め、今更遠くに投げ飛ばされたガウンを探し始めた。

 

「今回の事…愛里寿が知ったら…」

 

 ビクッと体を完全に硬直されましたね。

 卑怯な真似されたので、卑怯な真似で返します。

 千代さんの弱点…突かれたく無い所なんぞ知り尽くしてる。

 

「呼び方が、今度はどう変わるでショウカネ?」

 

「  」

 

 

 

 

 -------

 -----

 ---

 

 

 

 

 部屋にシャッターを切る音が響く。

 いつもなら、今の彼女を見て、本来ならエロいなぁ…とかしか思わず、狼狽えるだけだろう。

 

 ―が。

 

 現在は思っていても、表情にすらでない。

 

 はい。怒ってます。

 昨日、しほさんに正座させた並にキテます。

 

「そうそう…」

 

「な…なにかしら!?」

 

 愛里寿の名前を出したら、完全に諦めたのか…。

 大人しく写真を撮られている。

 よくある、グラビア写真のポーズとか…寝そべってるとか…。

 

 適当に指示を出すと、無言だけど大人しく従った。

 はい、胸を強調してぇ…脚組んでぇ…。

 

「…………」

 

 30代後半の体じゃねぇ…。

 ジムに通いだしたとか言っていたから、その効果もあるのだろう。

 しかし…適度に引き締まった体は、十分に20代でも通用する。

 

 ―が、言わない。

 

 千代さんも、そんな事を言えば、多少は喜んだり、照れたりしてくれるかもしれない。

 だが、今回は目的が違う…もう違う。

 

 しかし本来なら、リラックスさせたりして、撮影をするのだろう。

 無表情でカメラを構える俺を見て、弱冠顔を強ばらせている千代さん。

 それでも恥ずかしいのか、赤みが差したその顔。

 それはそれで、良いのだけど…。

 

 ―だが。

 

 これじゃあ、ダメダヨネェ。

 

「!?」

 

 撮影を中断し…背中を向ける。

 そのまま、部屋備え付けの冷蔵庫へ向かう。

 その時、彼女は俺の横顔をでも見たのだろう。

 

「た…隆史君!? な…っ! なんで急に、笑いだしたの!?」

 

 別に笑ったつもりは、ありせんよ?

 そのまま無言で移動する際、昨日使ったであろう、霧吹きをテーブルの上から取り上げる。

 

「」

 

 そのまま冷蔵庫を開けて…あぁ、あったあった。

 …水が入ったペットボトル。

 

 霧吹きは、よく100均とかにある奴だからさぁ…。

 ペットボトルの蓋を開け、霧吹きの頭を…あぁ、やっぱりサイズが合ったな。

 ミネラルウォーターが入ったペットボトルの口に、霧吹きの頭を取り付けた。

 はい、完成。

 ふむ…後、15分程しかないな。

 

「…さて、千代さん」

 

「え…な…なに? なんでそんな…」

 

 カメラを片手で構え、霧吹きを後ろへ隠して…千代さんの元に戻る。

 その乗っているベットへ、膝を掛ける。

 俺の重みで、少しベットが傾いた。

 …別に、気取った感じの写真じゃなくても…イイデスヨネェ?

 

「…え……え!!??」

 

 千代さんは、仰向けに寝ていた体の上半身を、肘で支えて少し起こした。

 いや…本当に、ほぼ裸だなぁ…。

 俺を見上げている顔が、すげぇ不安気に眉を潜めている。

 

 素早く、後ろ手に隠していた霧吹きを、至近距離から千代さんのおヘソへ噴いた。

 バシュッとした音と共に、冷蔵庫で冷やされた水が噴出された。

 

「ふっ!!??」

 

 敢えての冷水。

 

 不意打ちと驚きで、無駄な肉も付いていてない、白いお腹をくねらせた。

 はい、写真写真。

 

「たっ!? たかっ!!??」

 

 顔を赤くしていますね。

 いやぁ…。

 

 体を回し、うつ伏せになり逃げる。

 はい、背中の中心にまた冷水を…。

 

「ひゃぁ!!」

 

 今度は背を反らせた。

 

 その瞬間にまた、片手でカメラのシャッターを切る。

 カシャカシャと何度機械音が響く。

 

 今度は仰向けに体を回転させ…逃げようとしたので…。

 

 横腹…いや、アバラ横付近に冷水を…。

 

「んん!!」

 

 

 ……。

 

 体を動かす度に冷水を掛け続けると、千代さんは変な声を上げて体を曲げる。

 曲げる度に、いろんなポーズを取る事となるので、写真を取るこちらは非常に…タノシ……いや、助かる。

 

 ぬ…いかん。

 あまり掛け続けると、ベットがえらい事になりそうだ。

 さて…あぁこうしよう。

 

 霧吹きを、横のベットに放り投げた。

 まだ水が入っていた為に、重りがある様な物なので、綺麗にベットへ着地した。

 さて…。

 

 はぁはぁ息を切らしている千代さん。

 仰向けになってぐったりとしている。

 

 中途半端に水分を含んだ体が、妙に艶かしいが…。

 小さな水玉が、幾つも体の上に乗っていた。

 

 

 だが、そんな感想はアトマワシダ。

 

 

「ぐ…うぅ…さ…流石に私も、怒りますよ!」

 

 羞恥の為か、顔を真っ赤にした千代さんが、睨んでくる。

 まぁ、ほぼ裸の体を、勢い良くくねらせ…散々いろんなポーズ…。

 それこそ、変な格好の姿まで、全て撮られていた本人にすれば、分からないでもない。

 

「!?」

 

 そんな千代さんを、冷たい目で見下ろすと、今度は何かに怯えてた目をした。

 まぁ、この人に睨まれれば…大概の人は、萎縮して固まるだろう。

 ちょっと本気の目をしていたからな。

 

 ま、無視だ。

 

 アラームをセットした時計を見ると…残り5分。

 ラストスパートだな。

 

 うつ伏せから上半身だけを起こし、こちらをまた睨み直した。

 

「っ!?」

 

 カシャっともう一度シャッターを切る。

 重力に引かれた胸が、ベットの上に素晴らし谷間を作り出していました。

 いやね、その格好もひどくエロかったから、取り敢えず撮った。

 

 その淡々と行動した俺に、何を感じたのか…。

 

「あの…隆史君?」

 

 おもむろにまた、近づく…。

 

「わ…私が悪かったから…その…」

 

 何が怖いのか…先程とは違い、完全に怯えた顔と声になった。

 ま、知らんけど。

 今度は、手を使う為に…千代さんに近づく。

 

「ひゃぅ!!」

 

 突く。

 

 横腹を突く。

 

 また体をくねらせた為に、更にカメラのシャッターを切る。

 俺の体の正面に、人体急所や神経が集中した箇所が来た時…。

 

 躊躇なく…やさ~~しく、指先で撫でる。

 

 撫でる。

 

 シャッターを切る。

 

 撫でる。

 

 シャッターを切る。

 

 たまにツツク。

 

 シャッターを切る。

 

 撫でまくる。

 

 シャッターを切りまくる。

 

 最終的には連写だ、連写。

 

 

「やぁ! んっ!! はっ!!」

 

 

 ……たまに、何とも言えない声を上げるけど…。

 

 顔を真っ赤にし、涙目に…いや、もう泣いてるななぁ…。

 最後には体を、ベットの上で暴れさせていた。

 太股を上げ、上半身だけを回す…とか、非常にキワどい格好にもなったり…。

 

 要は…くすぐった。

 

 くすぐりまくった。

 

 人体急所もそうだけど、神経が集中している所には、軽い刺激は擽ったいだけ。

 

 この人も、この歳で…って言い方は失礼だけど、大人になってから、ここまで…それこそ逆撫でするかの様に、くすぐられた事なんてないだろうよ。

 思い出してもらいましょうか? その刺激を。

 

 

 ウ フ フ フ フ

 

 

「ひゃう!!」

 

 最後、グリッとまた横腹付近を突っついた。

 大きく胸を反らし、海老反りみたいな形になった姿に、シャッターを切った所で……電子音が鳴り響いた。

 

 はい、アラームが鳴りました。

 撮影が終了となります。

 

 短時間だけど、散々くすぐられた後だった為…全身の体の力が抜けたのか…。

 くすぐるのを止めたら、脱力し仰向けになって動かなくなりましたね。

 

 はい、胸で息を繰り返してますね…。

 

「……ぁ……は……」

 

 くたぁ…って、してますね。

 両手にも力が入らないのか…半開きにした手を、腕ごと投げ出している。

 

 …正直、溢れた時もあったけど、ほぼ無心でシャッターを切っていたので…その時は何も思わなかった…。

 まぁ、あんだけ体をくねらせて…ここまで際どい水着だからね…。

 

 ナニとは言わないが!!

 

 まっ! 全てファインダーに収めたがな!!

 

 

「……」

 

 冷静になってきた…。

 ……流石にそれは、後で消そう…。

 

 みほに…見つかったりしたら、洒落にならん…。

 

 あ、後。

 しほさんとまほちゃんと…華さんと……優花里と……沙織さんと……杏会長と……柚子せんぱ…………。

 

 

 ……。

 

 なんだ、これ。

 

 自分で自分を追い詰めてないか? コレ。

 

 ……ま、いいや…

 

 

 さてと。

 

 部屋の隅に、投げ捨てられたガウンを拾いに行く…。

 拾い上げたガウンを千代さんに掛けると、ゆっくりと…赤い顔をした千代さんがそれを羽織った。

 

「う…うぅ……」

 

「さて、千代さん」

 

「!?」

 

 こちらをバッと振り向き、完全に及び腰になっている。

 そんな千代さんに、ちゃんと笑顔で問いかける。

 

 

「 反 省 し ま し た か ? 」

 

 

 その問い掛けに、首が取れるんじゃないかと思うほど…何度も縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「どう…? 終わった?」

 

 先程とは違い、ちゃんとドアをノックした後に入室をしたカメラマンのスタッフ。

 …一体何があったか知りませんが…随分と変わりましたね。

 隣の部屋で待機している時も、何故かずっと青い顔をしていましたしね…。

 

「えぇ、今度はちゃんと終わりましたよ?」

 

 それに対して、笑顔で対応している隆史君。

 

 …先程…あれ絶対に、千代さんに対して怒っていましたよね?

 結構な怒り方と感じましたが…大丈夫でしたでしょうか?

 私にも飛び火なんて、冗談じゃありませんよ…。

 

 ……。

 

「ぅ…」

 

 き…昨日の事を思い出しました…。

 一回りも年下の子に…あぁも一方的に怒られるなんて…。

 隆史君の怒り方って、こちらの逃げ道、全て壊して来ますから…どうしようもなくなるのですよね。

 正論ですべて潰されます…。

 こちらは感情的になって言い返そうとすると…その前に、それも潰されますからね…。

『いい大人が! 感情的になって言い訳ですか!?』でしたっけ? こちらが、まだ冷静な内に言われてしまいました…。

 とにかく、終始こちらが感情的にならない様に牽制して怒るというか、何というか…。

 みほ位の年頃の娘には、通用しないでしょうが…何というか…大人に対しての怒り方とでも言うのでしょうか?

 

 ま…忘れましょう。胃が痛くなりますから。

 

 さて、今回怒られたと思われる、その千代さんですが…。

 

「……」

 

 カメラマンの方も、もう一人のスッタフの方も…呆然となって見つめていますね。

 

 …ベットの上の千代さんを。

 

 ガウンを着てはいるものの、自身の体を抱きしめる様にしていますね…。

 顔が完全に怯えてます…。

 近づいて、声を掛けようとしましたら…近づいてから気がついたとでも言う様に、縋ってきました。

 

 ……え。

 

 縋ってきた!?

 千代さんが!?

 

「しほさん!!」

 

「ど…どうしました?」

 

 私のガウンを掴みました。

 やめなさい。

 脱げてしまいます。

 

「怖い! 怒った隆史君、怖い!!」

 

「……」

 

 やっぱり怒られましたか…。

 

「も…もう…淡々とカメラを切るというか…感情が無いみたいで…」

 

「そうなのですか? 私の時とは全然違いますね」

 

「頭から言い訳すらさせない様に…逃げ道塞がれましたし…」

 

 それは一緒ですが…。

 人の話を聞かないで、取り乱した様に喋ってますね…。

 

「も…もう…撮影中なんて、一言も喋りませんし…すっごい悪い笑顔するし…」

 

 …。

 

 …チラッと視線を隆史君に向けると……普通にしか見えませんが…。

 

「この歳で、あんな……あんな……っ!」

 

 ……どんなですか。

 

 …ん?

 

 ベットが湿ってる?。

 

 指で軽く触ってみると、やはり少し湿っていました。

 

「…隆史君?」

 

 少し疑う様な目線を送ると…もう一つのベットを指差してます。

 …あれはペットボトル?

 飲み口に何か付いてますが…。

 

「……」

 

 いや…やはり隆史君が、いつもと違いましたね。

 ただ私は目線を送っただけですのに…妙に察し良く、あのペットボトルを指さしましたね。

 

「延々と、恥ずかしい写真を撮られ続け…」

 

「…自業自得でしょうよ」

 

「…しほさんなら兎も角………もう私、お嫁に行けません…」

 

「おい、子持ち」

 

 まったく…。

 この様子なら大丈夫でしょうよ。

 

 私もさっさと終わらせましょう。

 そもそも、この女に張り合ってしまい、水着撮影なんて許可……挙句…。

 

 

 こんな水着…。

 

 

 ……さ……流石に娘達には言えない…。

 

「さ、ラスト! 西住さんですね!!」

 

 カメラマンの方が…って、なんで声が裏返っていたのでしょうか?

 

 ま…今更…撮影を中止になんて…。

 正直、こんな恥ずかし水着姿…写真になんて撮られたくないですし…。

 

 あ! 

 

 でも隆史君なら、事情を言えば撮ったフリで済ませてくれるかもしれませんね!!

 これはカード用では、ありませんからね!

 そもそも、いつもの隆史君なら、ひょっとしたら上手く撮影進行が出来そうにありませんし!!

 先程の…まぁ……許容範囲ギリッギリの水着も、恥ずかしがって見てましたからね!!

 それを自分で撮るなんて……できるはず…。

 

「しほさん…」

 

「……なんですか」

 

 隆史君の方向へ顔を向けたら…目の前が千代さんでした。

 

 …邪魔。

 

「貴女の魂胆なんてぇ、見え見えなんですよぉ?」

 

「その喋り方はやめなさいと…散々…」

 

「隆史君なら、恥ずかしがって撮影が中々進まないとかぁ…言えば中止にしてくれるとかぁ…そんな事考えてるでしょぉ?」

 

「……」

 

 この…女……。

 

「…でも」

 

「な…なんですか…」

 

 貴女の魂胆もバレバレですよ。

 道連れにしようとしないで下さい。

 

 急に真顔になって、なにを企んで…

 

 

「今の隆史君…しほさんの撮影を中止にしないでしょう…」

 

「…」

 

「そして躊躇無く、しほさんの痴態を撮影するでしょね…」

 

「なっ!?」

 

「私は、ちゃんと撮影しましたよぉぉ!!??」

 

 こ…この女…ヤケになってる…。

 

「ご息女…次期後継者が言っていましたね……決勝戦の最後、言っていましたね?」

 

 な…なんですか! いきなり!!

 決勝戦…? 最後?

 

 

 

 

 

「西住流が、逃げるんでぇすかぁぁ???」

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました
PINKにならない様にガンバリマシタ。
ケンゼンデスヨ?


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