「思い出した! 隆史君! 昨日、私の事ナンパしたよね!?」
帰り道。沙織さんが、とんでもない事を言い出した。
当然彼を見る。即座に目を逸らす。ダイジョウブダヨ。ワタシニランデナイヨ?
「それで先ほど、バツの悪そうな顔をされていたんですね。よりによって沙織さんをナンパするなんて…」
「華!?」
もう一度彼を睨…見てみる。
「それについては、言い訳をさせて頂けると非常に助かるのですが……」
と、両手を挙げる彼。よし。ちゃんと聞いてあげよう。何か理由があったんダヨネ。
「……聞きましょう」
…………
「……凄い事言い出す、お友達ですわね」
「……」バツゲーム…
「沙織さん! 元気だして♪」
「武部さん。ほんっっと、申し訳なかったです」
拝むような形で謝罪する彼。ちょっとカッコ悪いのがおかしかった。先程まで土下座してたのに。
「もぅ~沙織でいいよ……。せっかくモテたと思ったのにぃ……」
「でも隆史さんは、何故よりにもよって沙織さんを、ナンパ相手に選んだのでしょう?」
華さんがもっともな事を聞いていた。それは私もぜひ知りたい。
「ぇっと…まぁ俺も男ですので。一応、かわいい子をっと……」
「……フーン」「あらあら」「……ヤダモー///」
「……もう勘弁してください。みほも睨まないで怖いデス」ニランデナイヨ?
ここ至る経緯をあらかた聞いた。
沙織さん達には、私の実家が戦車道の家元だと言うことは伝えてあったので、特に聞かれても不都合はなかった。
彼はそれでも気を使ってか、大まかな言い方で説明してくれた。
それでもわかった。想像がつく。すごく大変だったって事が。
あのお母さんを説き伏せてしまうのだから……。まぁ、あの写真は菊代さん辺りだろう。
「あ。ごめん。俺の家ここだから」
見覚えのあるアパートで彼が足を止めた。
隆史君の家?…ここが!?
「そうですか。では、ここら辺で解散といたしましょうか」
「」
「どうした?」
私が絶句をしていると、彼が怪訝な顔で訪ねてきた。絶句したくもなる。
「私もこのアパートなんだけど……」
隆史君が、頭を抱えた。
理由は、お母さん。
「……ここって、しほさんが用意してくれたんだ。おかしいと思った……ここ以外無いとまで言い切るぐらいだったから……。あの人、娘の居場所を全部把握してるじゃないか……」
どこまで不器用なんだよって横で嘆いている。
お母さん……。
さすがにそれでも階は違った。彼は1階だった。
うれしい事はうれしい。が、同時にちょっと恥ずかしくもある。
そこで、お開き。
今日は、素直に私も自分の部屋に戻った。また後日、隆史君の所にお邪魔してみよう。
そして、部屋に帰ってきて今日一日を振り帰ってみる。
とても大変な一日だった。
友達が2人もできて、戦車道をやることになって……彼が来て……私の為に、怒ってくれた。
うれしかった。とても。楽しかった。これからどうなるかわからないが、彼等となら頑張っていけそうだ。
ただ最後の……。
《 彼。私にくれない? 》
生徒会長。どう言う意味で言ったんだろ……。
「隆史さんって。いろいろとすごい方でしたね」
「うん……」
「行動力がいろいろと……聞いてます? 沙織さん?」
「うん……」
先ほどから沙織さんが、いつにもましておかしい。
「……隆史さん。みほさんの為に、土下座までしていましたわね」
「うん……」
「たとえ私達の為でも、体を張って下さるとも言っていましたわね」
「うん……」
「その時生徒会室でボーッとしていられたのは、見惚れていたからですか?」
「うん……」
「それで先程のナンパされて、かわいいって言われた事で、彼が頭から離れないと」
「うんンン!!?? なっ何、言ってるのぉ!?」
あぁ。結構大変なことになってきましたわ……。
学園戦車倉庫
「こんなボロボロで、なんとかなんのぉ?」
「多分……」
「男と戦車は、新しい方がいいと思うよ?」
「ごめん……俺、結構ボロボロになる……」
みほ達の会話に、生徒会役員4人の1人。つまり俺が挨拶変わりに割り込んでみる。
「それを言うなら、女房と畳では?」
「ご、ごめんね~。そうだった、そうだった……」
沙織さんが、バツが悪そうだった。華さんは、なんぞ複雑そうな顔をしている。
何かあったんだろうか?
「で・・でもさ、一輌しかないじゃん?」
「この人数だったらー・・」
「全部で、5輌必要です」
「んじゃぁ、みんなで戦車探そっか?」
探して見つかるモンなのか? 戦車って。「エェー」とか言われてますよ会長。
「あ…あの。その前に……」
バレー部だろうか? 「3」数字がついた体操服を着た、栗毛色の…子……が……ぁ。ヤベェ
「そちらの方は…あっ!」
「どうも。その節は、大変ご迷惑をお掛け致しました……」
昨日、ナンパした1人目の子だった。一応お辞儀をしておいた。
「ん? 知り合いかい? それともナンパでもした子かねぇ」
……この感の鋭さが、この人怖いわ。冷や汗が止まらない。
「あーりゃま。図星かい」
あぁ…周囲の白い目が痛い。みほさんや。ハイライト様が、逃げ出しておりますよ。
「あぁいや。彼は、なんか罰ゲームとか受けていたみたいで……それで、声かけられまして……まぁ、びっくりしましたけど」
お嬢様から助け舟を出して頂きました。ありがとうございます。いやマジで。助かりました。
「あ~。まぁそんなとこだろうね。彼、堅物っぽいしねぇ~。だから、そんなんで怒っちゃダメだよ? 西住ちゃん」
「ふぇ!?」
「私以外にも声かけてたんだ……」
チッっと舌打ちされた。まだ俺が生徒会に入った事に納得していないのか、広報担当:河嶋 桃 センパイ
「まぁまぁ、ダメだよ、桃ちゃん」となだめてくれる 生徒会副会長:小山 柚子 先輩
河嶋先輩が、しぶしぶ紹介してくれる。
「不本意ながら、昨日付けで着任した。生徒会書記 尾形 隆史だ。挨拶しろ」
「昨日転校して、何故かその日に着任が決定しました。尾形 隆史です。よろしくお願いします」
ザワザワ
「昨日転校で、いきなり生徒会に? しかも役職!?」「会長の知り合いですか~?」「きな臭いぜよ」
おーおー。まぁそりゃそうだな。そうなるわな。
「彼は、そこの西住ちゃんと同郷なんだよ。んで戦車道にも詳しい。だからスカウトしたのさぁ。男手って、どうしても必要になる時もあるしねぇ」
会長が、もっともらしい事を説明。納得してくれた。でも俺、そんな戦車道詳しくないっすよ。会長。
みほが近づいてくる。……なんで、そんなに笑顔なんですか?
「沙織さんの時と同じで、かわいくてタイプの子に声かけたって事だよね? よかったね。戦車道で一緒になれて!」
「」
3番の子が、遠くで顔を真っ赤にしていた。はい、聞こえていたようですね。
みほさん。そろそろその笑顔が怖いです。
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特にやることも無く、報告待ちだった生徒会役員勢。ぼけーとしているのも悪いので、各班の見回り……というか手伝いに出かけた。
しかし結構、見つかるもので、比較的速やかに発見していった。
やる事がない……。
みほ達は、林の中。
なんかのコスプレ軍団は、池の中……なぜわかった。
1年生達は、うさぎ小屋をなぜ探す? そしてなぜある…。
林の奥を探すということで、報告の無かった、残りのバレー部の様子を見に行ってみた。
林を進むと少し開けた所にでた。しかしその先は崖だった。なぜ学園艦に、こんな場所があるのだろう。
周囲を見渡してみたら、崖の下を覗き込んでいる2人の女の子を見つけた。
「どうだ? 見つかったか?」
驚かせて、崖の下に落ちでもしたら大変だったので、一応ワザと大きめの足音を出して近づく。
「あ。先輩」っと3番の子。
「どうも」っと金髪の子。
2本のロープが木に巻き付けてあり、崖の下へと伸びている。まさか、降りてるのか?
繋がれたロープが、ギッギッギとリズミカルに音を鳴らしている。
「もう戦車も見つけたので、キャプテン達登って来てますよ? もう少しです」
……ロッククライマーなバレー部ってどうなんだよ。すげーなバレー部。
特に俺がいてもいなくても、さほど影響ないんだな。
さて、結局散歩しただけだったな。学校戻るか。
「んじゃ、俺戻るから。落ちるなよ? 死ぬぞ~」
「「は~い」」
「あ。先輩」
金髪の子が、訪ねてきた。
「んぁ? なに?」
「妙子ちゃん、ナンパしたんですよね?」
「「ぶっ!」」
直球すぎる質問に、2人して吹いてしまった。
「あの、3番の子。そういや、名前知らなかったな…。妙子さんね」
「あ、はい。近藤 妙子です……。って、あけびちゃん!」
「罰ゲームだったってのは、聞いたんですけど。何で妙子ちゃんに声かけたんですか?」
「」
すげー…躊躇無しに聞いてきたよ。
「あけびちゃん!!」
「……正直、罰ゲームとはいえですね? 人生初のナンパというモノを致しまして…正直タイプだったので、選びました。ハイ」
「ヒウ!///」
あ……しまった。普通に言ってしまった。何でだろうな。ある程度年を取ると、異性をかわいいと言うのに抵抗が無くなってしまう。
まぁ俺の場合、今は高校生だけどもね。
「……尾形くん。うちの後輩をたぶらかさないで欲しいんだけど……」
おかえり~。キャプテンが戻ってきた。
いつの間にか、崖を登りきっていたようで、開口一番そんな事を言われてしまった。
「……チッ。ナンパ野郎」
キツそうな子もおかえり~。でもその言い方はやめてネ。
「あんた……先輩さ。結構鍛えてるっぽいけどさ、どうせナンパ目的の見せ筋でしょ? そういうチャラいの嫌いなんだよね。どうせ生徒会に入ったのだって『なんつった、今!?』」ビクッ
こいつは…今、俺の逆鱗に触れた……。
「オイ。そこの5番」
「な…なによ……」
「俺の筋肉がナンパ目的だと!?ふざけんな!!いいか!筋肉は裏切らない。それは努力の結晶だからだ!!鍛えれば鍛えた分だけ答えてくれる!
絶ゆまぬ努力と不屈の根性!!実用性のある筋肉を作るのが、どれだけ大変か……それをナンパ目的の見せ筋ごとき紛い物と一緒にするとは…心外だ!
侮辱の極みだ!!よし、小娘。貴様に一つ一つ部分的に説明して、どれだけの反復トレーニングが必要か、一から叩き込んでやる!!!!」
ドン引きさせた。
「イエ……ダイジョウブッス。スンマセンデシタ」
なぜかバレー部と仲良くなった。
何とか人数分の車両は見つかった。
だが長い事、放置されていた為、酷く汚かった。
「これは、やりがいがありそうですねぇ……」
書記に、指示を飛ばす。
「書記。お前は38T、生徒会車両を掃除だ!」
「了解! 桃センパイこれ綺麗にしたら、他の手伝っていいっすか? この汚れ具合……たまらん」
「も……名前で呼ぶな!……なに? 貴様、すぐ終わると思って……」
いきなり名前で呼ばれた。馴れ馴れしい奴だ。すぐ終らせるつもりか?
手を抜く様な事があれば、厳しく……。
「多分いけますよ。腕が鳴るんですよ。掃除のやり甲斐がある物見ると。柚子先輩、手伝いますよって、なんつー格好してるんですか!?」
「ありがと~。会長の指示でこん「隆史ちゃん。うれしいっしょ」」ワー
……何なんだあいつは。会長の意図がわからない。あの方はいつも正しかった。だから今回も間違いは無いと思うのだが。
わからない。あのヘラヘラとした強面の何が気に入ったのだ。
今も、柚子ちゃんの水着にヘラヘラ対応している。
「よし! 柚子先輩これ15分程、何もしないで放っておいて下さい。洗剤で汚れを浮かしているので、後で一気にやっちゃいましょう!」
「うん、分かったよ。でもよく洗剤なんて見つけてきたね。……何で顔を逸らしてるの?」
「モ…物によっては、家庭用の中性洗剤とかで、作れるんですよ。車部の人に車用洗剤借りてきて代用できましたしね。後は、使いようって……近い近い近い!!!」
あの男は、当初思っていたよりも、かなり早く掃除を完了させた。昔バイトで似たような事をやっていたというが……。
「今回は、こんな所でいいでしょ。後は、後日塗装で処理すれば完了です。じゃ次行ってきます!」
掃除は、好きなようだ。汚れを清潔と言う名の暴力で、浄化するのに快感を覚えると言っていた。……変態だ。
あいつが手伝えば、他の車両も早く何とかなるか?
会長が、モゴモゴと干し芋食べながらやって来た。
「河嶋~。どうだい彼は~?」
「……掃除に快感を覚える変態でしたが、まぁ使えると思いますよ」
「おっけー。そっかー。んじゃ今晩、例の計画実行に移そうか」
……気乗りしない。
「本日は、解散!」
桃センパイの号令で、本日は解散となった。
みほに声を掛けておくか。
……ん?
「あれ? 君、同じクラスの?」
みほ達のグループに一人増えていた。教室にいた子。クラスメイトだった。
「あ…秋山 優花里です。ヨ…ヨロシクオネガイシマス」
段々と、声が小さくなってくよ。
「あの、君なんかさっき教室で、すっごい話しかけたそうだったけど、何で?」
先ほどの事を聞いてみたら、今度はアワアワしだした。
「いやっ! あの……盗み聞きしたみたいで、申し訳なかったのですが。私戦車が好きで……。尾形君のお母様が、戦車道の師範って聞こえてきたら…なんかこう……。それに戦車が好きな方って、周りにあまりいなかったもので……友達も少なくて……」
「あぁ、なる程ね。それでつい嬉しくなっちゃったと。んなら1人紹介しようか? すっげー詳しい奴いるけど。話合うんじゃない?」
「ほ…本当ですか!?」
「んーただ今の所、ネット上とかメールとかでのやり取りしか殆どしてないんだよ。俺がガキの頃、戦車道の大会会場で知り合ったんだけどな。それでも、その後もやり取りしていて、今でも関係が続いているんだ。みほにも昔、写真見せただろ? パンチパーマの男の子」
あぁと、みほも思い出したようだ。まぁ子供でパンチパーマなんて、まずいないから覚えているだろ。
ただ秋山さんは、「パンチパーマ…戦車道の大会会場……?」と、つぶやいているけど。
「だ、大丈夫! 男だけど、礼儀正しい奴だから、本名…なんだっけか…随分前に聞いただけだったからなぁ」
「隆史君……。いくらなんでもそれは……」
みほさんが、非難の目を向けてくる。
はい。俺でも薄情だと思います。
「いつもハンドルネームで、呼んでいたからなぁ……「オッドボール三等軍曹」っていう奴だけど」
「!!??」
なんか驚いた目をしているが、知っていたか? 結構マニア向けのネット界隈では、有名人らしいし。
「尾形書記!」
突然、桃センパイに呼ばれた。あら、三役人勢ぞろいで。
「やぁやぁ、西住ちゃん。ちょっと彼、借りるけどいい?」
「ダメです♪」
………………
「ダ・メ・です♪」
みほさんや。
えーと。え?
正直、会長以外みんな意外な反応だったので、固まっている。
「まぁまぁそう言わないで。生徒会はみんなが帰った後も、仕事があるんだョ」
「尾形君は、転校したてで、しかも生徒会に入ったばっかりですし……」
柚子先輩が、助け舟を出す。
「そーそー。イロイロ手続きもあるしねぇ…」
…………え?
なに? この空気。何で、みほと会長が睨み合ってんの?
「ま…いっか。…わかりました。沙織さん達。帰りましょう」ア・・ウン。
「ありがとね~。西住ちゃん」
ジロッと、こちらを目だけで見るみほ。こ…この みほは、初めて見るナァ。
「秋山さん、悪い。今度ちゃんと紹介するから。会話中ごめんな」
「ア…ハイ……」
あれ? なんか考え込んでるけど。男は嫌だったのかな。
みほから「今度はちゃんと一緒に帰ろうね」と言われて、4人は帰っていった。
それを見送った後、柚子先輩から謝罪されたけど…。
「ごめんね、尾形くん。会長が無茶言って」
「大丈夫ですよ柚子先輩。なんか仕事残ってました?」
柚子先輩の変わりに会長が答えた。
「いやぁー、西住ちゃん。意外に怒らせると怖いタイプだねぇ。さて……今から君の歓迎会だ~」
「小山ー。用意してくれた?」
「用意?」
桃ちゃんは、聞かされてなかったのか、事情を知らなかった。
「一応用意しましたけど。私詳しくないので、適当ですよぉ?」
毎回無茶な事を言ってくる会長だけど、今回は第三者が含まれているから、ちょっと心配だった。
「会長。奴の歓迎会の事ですか?」
「そだよ」
にたぁーっと笑みを浮かべた。
会長は悪巧みをすると、大体こんな悪い顔をする。
「小山はこういう時、私服着れば女子大生に見えるから助かるよ」
「何の事ですか? 何をしようとしてるのでしょうか?」
段々分かってきたのか、桃ちゃんも不安な顔になっていく。
「隆史ちゃんには、赤裸々に語ってもらおうかね~」
◆
って、事で連れてこられた会長室。
こたつが設置されて真ん中に鍋が置かれていた。
……寒! この鍋の為だけだろうな。クーラーをガンッガンに、かけてるよこの部屋!
「我々三人だけども、悪いねぇ」
「ごめんねぇ」
「……会長直々の手料理だ。しかと味わえ」
「いえ……色々と意外すぎて。歓迎して頂けるのは、素直にうれしいです」
柚子先輩が飲み物を進めてくれる。やけに飲みなれた味だけど。なんだっけこのジュース。
鍋か~……。青森を思い出すなぁ。良くバイト先で、みんなで食ったなぁ。
素直にご馳走になろうか。
「!!??……うめぇ。何これ!? メチャクチャうまいですよ!」
素直に感想を言った。うまい物食べるとテンションもあがる。そういうものである。
「当然だ。会長は料理が趣味だからな!」
桃タンが、胸を張った。でけーな、この人も。
「あんこう鍋だよ。コツがあってねぇ~、先にあん肝を「肝を使ってる……。ベースは、醤油か……」」
「おや正解」
会長が、ちょっと嬉しそうに正解だと言ってくれた。ウメェ……
「……ちゃんと肝を蒸して使っている。香りが段違いだ…。身はちゃんと氷でしめた歯ごたえ…料亭にも負けていない……!」
「♪~。いいねぇ隆史ちゃん。分かってもらえると、作りがいがあるよ♪ あ……飲み物が空にナッテルヨ?」
「あ、すんません。港町に入り浸ってバイトしてたんで、海鮮物にはちょっと詳しくなりまして……。いやしかし、会長。店出せますよ。この味は」
……
ぬ。ちょっとはしゃぎすぎたか? なんかテンションが上がりやす。鍋のせいだろうか? しかし、このジュース懐かしい味がするなぁ。うめぇ。
なんか会長達が、小声で話してる。なんだろ。
「小山。ちゃんと飲んでるよね?」
「そろそろビンの中、無くなっちゃいますよ」
「あまり強くないのでは無いか? よくわからないが……」
「ちょっと見せてみ。……小山。これ2ビン開けたの? このままで?」
「え? はい。普通に飲んでましたよ? あと1ビン有りますけど…空けますか?」
「……見てみろ」
○ャック・○ニエ○ 40℃
「「……」」
「どうかされましたか?」ワーマダノンデマスヨ!
何か黙っちゃたんで声をかけてみる。ウメェ
何かツイテ会長が、試すような目で見つめてきた。
「……隆史ちゃん。初恋の人って誰?」
「んぁ? しほさんっすけど」
何でこの人、そんな事聞いてくるんだろ? しかしウメェ。
「会長……これ完全に出来上がってますね」
「……見た目変わらない人いるって、聞いた事あるけど……」
桃たんと柚子ちゃんが赤くなってる。んふっふって、面白い顔で笑うロリ会長。
「隆史ちゃーん。しほさんって誰だろ~?」
「んぁ。この人ですけど」
見たいと言うのであればお見せしましょう。
携帯を取り出して、写真のファイルを開く。
「うわー! 綺麗な人。……何でお姫様だっこしてるの?」
「ご希望だったので」
「尾形書記。その方と付き合ってるのか?///」モモチャンテレテル~
「んな事はないですよ。だって、みほのお母さんですよ?」ウマー
「「「 」」」
「い…いきなり爆弾発言が来ましたね……」
「人妻か……」
「ほんっと、おもしろいな~隆史ちゃん。……西住ちゃんとは、どうやって出会ったの?」
「あ~~~。それは言えないです。無理っす。ハイ」
「「「!?」」」
「それは、西住姉妹と俺の話です。俺が言っちゃいけないと思うんっすわ。あるじゃないですか。そういう思い出。かなり大切な話なんで。すんません会長でも無理っす。ハイ」ウミャー
「…………」
何か、眼が鋭いな~ロリ会長。
「……どうし『無理っす。』」
「……」
「あぁでも、小学生の時からの付き合いっすね」
「よし、質問を変えよう。……隆史ちゃん。女の子と付き合ったことはある?」
「無いっすね。女の人が、俺なんぞを好きになるはずないでしょ」
「じゃあさぁ……私達の誰かが「付き合って~」とか言ったら付き合う?……その子が、ちゃんと本気だったら」
「「!!??」」
んぁ。モモユズおっぱいが、驚いてる。
「んー……どうかな。何か、みほとまほちゃん怒らせそうなんで、何とも言えないっすけど……
そういうの抜きにするなら、全然おっけーだと思いますよ?」
「「「!?」」」」
「あーなんていうか、俺そんなにモテるとは思えないんですよ。そんな俺好きになってくれる人がいれば……それこそ、こんな命ぐらい賭けるんじゃないですかね?」
「…………」
「??? かいちょー? 顔あっかいですヨ。俺変な事いいましたか?」
「!?」
「アーーーーー…………。嫌な事を一つ、思い出した」
「隆史君? どうしたの?」
「昔、知り合いの人から「お前女1人口説けなくてどうするんだ」って、口説き術を散々仕込まれた事を思い出しました。……地獄でした」
「ほう?」っとロリ会長が復活した。
「そもそもですね! 俺チャラいの嫌いなんですよ! なんか、その口説き術ってのが、もうイヤでイヤで……。なんか女ったらしって感じで」
なんだろ。ロリツインテの顔が今までに無いくらい輝いてる。
「んじゃあ、会長命令。貞操奪うつもりで、小山を口説いてみ」
「会長!!?」
「えーー。会長命令じゃしょうがないか。了解っす」
「」
口説けってイッテモナァ……。
「柚子先輩」
「ひゃい!?」
警戒してるなぁー……。こういうタイプはどうしたっけ?……そうだそうだ。
「どうやって、口説けばいいっすか?」
「わ…私に聞かれても~?」
まず、ワンクッション入れてジャブをする。
「あ、そういえば何かすいませんでした」
「え?」
「色々、フォローに回って頂いてた挙句、洗車の時ですら、うまくできなくて……」
落ち込む「振り」をする。
「いいよ、いいよ! 隆史君は、しっかりやっていたと思うよ! 会長達なんて見てるだけだったよ!」
会長達を指をさした。……結構この人、言うことは言うなぁ。
「でもまぁ…その時の事で思ったんですけど……。柚子先輩って。男なれしてませんよね? 特に目線とか……元女子高ってのもありますし……」
「まぁ……得意では無いかな? 正直隆史君の前での水着は、チョット恥ずかしかったし……。そんな見せれるモノでもないしね!」
会話に乗ってきた。
アトハセメルノミ。
「そんな事ないですよ! 洗車の時、手間取ったのだって目のやり場に困っていたからですし……柚子さんは素敵です」
「ふぇ!?」
「ちゃんと見たかったですし。正直ずっと見つめていたかったからです」
「」
驚いて怯んだ隙に、一気に距離を縮める。
真正面から、太もも間に足を入れ、相手の自由の幅を狭める。
そして左手で背中に腕を伸ばし、主導権を奪う。最後に目を見る、真正面から。
「柚子は素敵な方です。内面から外見まで。俺みたいのに、こんな事されては不快でしょうか?」
ゆずっパイは、「そんな事ないよっ!」とブンブン真っ赤になって顔を振っている。
「今だけなら、多少なら触れても大丈夫ですか? 構いませんか?」
「ま…まぁ多少なら……」チョロイ
「では……」「柚子を……」と、一言一言呟きながら空いた右手で、足をなぞりスカートの端まで指をもっていく。
後は、顔を耳元まで持って行って「もらっていいですか?」と耳元で息を吐きながら囁く。「ヒゥッ」っとか言ってますね。
そのまま、下着ギリギリまで指でなぞって「ありがとうございます」とか言ってみる。
「ちょちょ!! そういう事は、早すぎます! 場所を考えてください!!」
アワアワ言い出した。
「せ…せめて、やさしく……」とか言い出しちゃった。
柚子センパイ、マジカワユス。
ゴツン!
CR桃乳に酒瓶で殴られた。「やりすぎだ!」と怒られちゃった。やりすぎたか。
「隆史ちゃーん。そのまま、ゴー」
「御意」
「会長!?」
「桃先輩」
「よ・・寄るな!」
名前を呼び立ち上がる。ちょっと距離があった為、即座にその距離を縮めた。
ヒステリックに暴れそうだったのでさっさと、即座に座っている桃センパイを掬い上げ、お姫様抱っこの態勢に持っていった。
「降ろせー!」とか言ってるが、知ったことでは無い。
そうだな。確か、こういうタイプはストレートに……。
「桃先輩。一つ質問いいですか?」
「うっうるさい! ダメだ!!」
「桃ちゃんかわいい」
「」
「桃は何でそんな、かわいいんですか?」
「…か……かわいいとかいうな」
最初の勢いが無くなった。
「何で名前ですら、かわいいのに……何でそんなに嫌がるのですか?」
「イ、イヤ…ソノ、カワイイトカイウナ……」
もう名前の呼び捨てにも反応しない。……チョロすぎるだろ。大丈夫か? 生徒会。
「ヒャ! チョ……ちょっと、どこ触って・・」
足を持っている手で、くすぐるように太股の裏辺りをなぞる。
「桃が可愛いので、我慢できないんです。ですので、そちらが我慢してください」
「なぁ!!??」
「お姫様抱っこの体勢なので、比較的に触りやすいのです。……我慢できませんし、しませんけど」
「がっ! がまんしろ!」
「……」
「な、なんだ! 急に黙るな! 不安になる…」
「……」
無言で、目を見つめてみる。一直線に。
「ナ…ナンナンダ。ナンナンダ……」
あーらら。俯いちゃったよ。
「前に会長の言うことは、絶対と言ってましたね?」
「ト……トウゼンダ」
「……先ほど会長はいいました。貞操を奪えと」
「言ってない!!」
「では、よろしいですよね? まぁ今更、我慢も無理ですが」
「」
「返事が無いって事は、俺を受け入れてくれるんですね? よろしいですね?」
「…ワ……ワカッ「会長命令~。はいやめ~」」
イエスアイマム
大人しく彼女を下に降ろす。
「か~しま~。小山~。いくら何でもチョロすぎだよ」
「「 」」
二人共ぐったりしてる。何か悪い事したなー。
……グビグビク。ウィアー。
ふぅ。
……さてと。
「会長」
「な…何だろ。隆史ちゃん」
「あの正直に申し上げてよろしいでしょうか?」
「隆史ちゃん!? 目がおかしいよ!?」
「ぼかぁ…会長の事、結構好きですよ。料理うまかったし、いい奥さんになりそうですね」
「///」イ・・イカン……コレハイカン!
会長は逃げ出した! しかし回り込まれた!
俺に。
「うぉ! いつの間に後ろに!?」
後ろから抱きしめる格好で、顔を耳元に近づけて…囁くように。
「杏」
たしか、少しなら触れてもいいんだっけか? んじゃ、しょうがない。
「ピッ!」
耳たぶを甘噛みして、首元に口を這わせて見る。んで右手でお腹のわき腹あたり触ってみる。
「ヤ・・チョッ・・。!? ナンカカタイノガセナカニ!」
「」
「……ン」
「ハ!!! やめ! やめやめ! 会長命令! ちゅっ、中止! 終了!!」
あ。はい。
終わったのなら席に戻ろう。
ハーハー言っちゃって…3人とも瀕死状態みたいですね。
「た…隆史ちゃん。随分と手馴れてたけど……」
真っ赤な顔で、チョロイ頭目が聞いてくる。昔を思い出しながら、遠い目をする。
「……母さんの教え子が、昔頻繁に家に来ましてね……。当時、中学生の俺にこれを覚えろと……。父さんが趣味で買った、人型サイズのでっかいボコ人形相手に、これを覚えるまでやらされたんですよ…………」
また、クマの人形相手ってのが酷かったなぁ……。
「……口説いてみた感想いいっすか?」
「……どうぞ」
「かいちょーが、一番チョロかったです」
「あ…危なかった……」
隆史ちゃんを先に帰した。「片付けしないと」とか言っていたが、正直顔見るだけで恥ずかしい。
隆史ちゃんの歓迎会なのだから、主賓は帰りなさいと無理やり帰した。というか追い出した。
河嶋が、まだうなだれている。
「結局、聞きたい事の半分も聞けなかった……」
「もー! 会長一体、何がしたかったんですか~。すっごい恥ずかしかったですよ!」
「コノワタシガ……コノワタシガ……」
「三人揃って、えらい恥ずかしい姿見られちゃったねぇ~。まいったまいった」アハハ
「お嫁に行けなくなる所だったじゃないですかぁー!!」
「まぁ~まぁ~。さすがにあの量と度数だ。記憶も飛んじゃうと思うよ?」
「ナニカノマチガイダ……ソウダ……コレハユメダ……」
河嶋が壊れてる。まぁうちの子、男性に免疫ない子多いからねー。……ワタシモフクメテ。
まぁメインは、西住ちゃんとの関係の詳細だったんだけどね。教えてくれなかったし。
ただなぁ~……ちょっとまいった。
「隆史ちゃん。あの子、自分が女の子から好かれるわけがない。自分を好きになる子が好き…みたいな事、言ってたよねぇ」
「あの~…会長。私思ったんですけど……」
「あー私も」
ある意味一番危険かもねぇ……。なるほど西住ちゃんも大変だ。
「「隆史ちゃん(君)が、一番チョロイ」」
「……帰ってきた」
夜22時頃。
丁度、私の部屋の真下に彼の部屋がある。
さっき確認したら、部屋に電気がついている事に気がついた。
……30分置きに見に行ったとか、気になって仕方が無かった訳では無い。決して違う。
お母さんとの事。ちゃんとお礼が言えていなかった。お姉ちゃんとの事も。
今日、戦車専門店で見たテレビ中継されていたお姉ちゃん。
何だろう。どこかスッキリとした感じで、私はうれしかった。隆史君のおかげだと思う。
ちょっと、夜遅いけど声を掛けてみよう。お礼を言っておこうと、気がついたら部屋のインターホンを押していた。
『みほか? 空いてるから勝手に入ってきていいぞー』
ちょっと、男の人の部屋に入るのは緊張する。部屋に入ると彼は奥で、引越し用ダンボールの上に座ってた。
何か……酷くだるそうだけど大丈夫かな?
彼に近づいて気がついた
……臭! この臭い……まさか会長! よりによって彼に?
「あーみほタン。何か久しぶりにまともに話しをする気がスル・・。」
「みほたん……。ハッ! 違うよ! 全然まともじゃないよ!?」
彼は中学の時。地元のお祭りで、水と間違えて飲んでしまった事がある。その…お酒を。
……その後が酷かった。お姉ちゃんが特にヤバかった。
二度と近づけまいと、お姉ちゃんと協力して遠ざけていたのに……。
「ヒャ!」
気づいたら持ち上げられていた。お姫様抱っこ……。写真と同じ。
これで追いついたぞ、お姉ちゃんめ。
いや、違う。そうじゃ無い。
「あー……みほ」
「な…なに?」
「……良くがんばったな」
「……」
この不意打ちは卑怯だ。泣きそうになる。
あぁ。この人はちゃんと、私を見ていてくれた。考えていてくれた。
逃げ出した後、追いかけてきてくれた。お母さんを説得して…もしかしたら敵対したのかもしれない。
お姉ちゃんから、本家での出来事は聞いていたけれど……昔みたいに、体張って無茶して……。
ズダンッっと、そのままベットに倒れた。……ぅえ!? え? 押し倒された!?
「アーミホノニオイガスル……」耳元で囁かれた。
「ヒゥ!////」
え? え? どうなってるの!?
倒れたショックで、服装も乱れてしまった。傍から見れば、はだけて下着も見えちゃってるだろうし。
え? 何!? この状況!? まだチョット心の準備が! ヤッ!
「ちょ! まっ……隆史君?」
「ZZZzzzz……」
「……」
寝息が聞こえた。
「……昔見たなぁ……少女漫画とかで、この展開。フフッ」
何か笑えて来ちゃった。
彼に布団をかけて部屋を出よう。この状態ならもう大丈夫だろう。
会長にはアトデイウコトガデキチャッタナァ。
「……」
「…………」カシャ
このくらいはいいだろう。彼の寝顔を携帯に撮って、私は部屋を後にした。
プルルルル……
「もしもし会長? 西住です」
「こんばんは、西住ちゃん。電話が来たって事は、隆史ちゃん。家にちゃんと着いたみたいだねぇ」
「……飲ませましたね? 会長。よりによって彼に」
「ア……西住ちゃんは知ってたか……。あ~ひどい目にあった……」
「…………そんな会長に絶望をプレゼントします♪」
「……へぇ、面白い。なにかなぁ……」
「隆史君。どんだけ飲もうと、「しっかり記憶に残る」タイプですから♪」
「……え?」
はい。閲覧ありがとうございました。
恥ずかしい文章は自分で書いても恥ずかしデスネ。
覚醒とはなんぞや