転生者は平穏を望む   作:白山葵

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閑話【 トチ狂イ編 】~夢のつづき~ その1★

 《 な…なにやってるんですか…先輩… 》

 《 なぁにがぁ? 》

 《 あの子! 還しちゃってどうするんですか!? 》

 《 だから、何がよ 》

 《 …尾形 エリナさんに、案内役を頼んだのではないのですか…? 》

 《 ……ぁ 》

 《 …… 》

 《 あはは~! …頼むこと自体、忘れてた…… 》

 《 …… 》

 《 だっ…だぁいじょうぶよぉ! あんだけ人数がいるんだから! 何とかなるわよぉ!! 》

 《 はぁ…そんないい加減な…。尾形さんに、また怒られますよぉ? 》

 《 …… 》

 

 …よし、後で覚えてろよ。

 

「さて…次だな」

 

「……」

 

「みほ…これは、こんな未来もあるという…可能性の話だ」

 

「…お姉ちゃん」

 

「……天文学的な数値でも、所詮は可能性だ。気にするな」

 

 

 …あの…隊長さん。

 結構エグイ事、言ってますよ?

 

 さてと…次は…誰が来る?

 また俺のHPが削られる結果になりそうで、もはや怖い…。

 というか、どの様に現れるんだろ…。

 

 

「麻子!?」

 

 

 沙織さんの声が聞こえた。

 全員が一斉に、その声の方向に顔を向けた…。

 

「な…なっ!?」

 

 いつの間に現れたのか…音もなく、何もなく…。

 

 振り向いた先…いた…。

 マコニャンが、見下ろす程の背丈…。

 そのマコニャンの手に…幼い手が握られていた。

 

 

 

 >  冷泉 麻子の場合  <

 

 

 それは、見た目で…四歳くらいの子供…。

 髪は短く真っ黒な髪。

 眠そうな目をした…男の子だった。

 というか、半分寝ているな。

 

「…」

 

 何か信じられない物を見る目で、見下ろしているマコニャン。

 

「なに!? なにぃ!? 可愛い!! 可愛いぃぃ!!」

 

 ぉぁぁあ…。

 

 沙織さんのテンションが爆上がりですね…。

 

 沙織さんは、しゃがみ込んで男の子の手を取った。

 頭を撫でたり…頬を撫でたり…すげぇ…なんかもう…慣れてる動きだ。

 

「さっ…沙織!?」

 

「この子が、麻子の子かぁぁ!!!」

 

 あぁ…一人なんか楽しそうですね?

 というか、なんでそんなに適応力があるんでしょお?

 

「…隆史君」

 

「はい…なんでしょう、みほさん」

 

「私……そろそろ、胃に穴が空きそう…」

 

 みほの口から、そんな言葉が聞けるとはな!!

 

「まだ、始まったばかりだぞ?」

 

「…隆史君の浮気者」

 

「」

 

 いや…もう…なんか……。

 他の世界線の俺達! まとめて来てくれよ!! ある意味押し付けられた気分だよ!!

 みぽりん! 恨みがましい目で、見ないで下さい!

 

「ボク! ボク!! お名前教えてぇぇ?」

 

「……?」

 

 沙織さんと、マコニャンの顔を見比べている…。

 手を離さないって事は、若いけど母親として認識しているという事だろうか?

 それとも…成長しないのか? 将来…マコニャンは…。

 成長…できないのか!!??

 

 何かを察したのか…俺を睨んできた。

 …ので、目を逸らしました!!

 

「…ぬ…」

 

「……」

 

 その男の子は、ジー…っと、無言でマコニャンの顔を見つめている。

 慣れないのだろう…子供と接する事は、彼女にはそうそうないだろうしなぁ…。

 無垢な目で見上げてきている子供…。

 それに対して、マコニャンは、引きつった笑顔で…

 

「な…名前は……?」

 

「…ふぐっ!」

 

 あ…泣きそう!! すげぇ涙ぐんだ!!

 

「ダメだよ麻子ぉ! ちゃんと優しく聞いてあげないとぉ!」

 

「……ぬ…子供は……苦手だ」

 

「自分の子供でしょぉ!?」

 

「…まさかこの歳で、それを言われるとは夢にも思わなかった……」

 

 なんとも言えない…そんな顔。

 邪険にも出来ないのだろうな…。

 しかし、泣きそうだが、母親だと本能で理解しているのか…。

 握った手を離さない。

 

「!?」

 

 沙織さんが、耳打ちでマコニャンへ何か囁いているな…。

 あやし方か、何かだろうか?

 俺もボケーとしていては、悪いので…その子供に近づいて行く…。

 

「ぐ…ぅぅ…」

 

 マコニャン…何を悩んでいるのだろう?

 頭をグルグルと、小さく回している。

 ぬぅ…と一言呟くと…諦めた顔になったね。

 

 あぁ…相変わらず、愛想笑いが下手だなぁ…。

 

 引きつった顔の、引きつった口を更に引き伸ばしながら…意を決したかの様に、腰を落とした。

 子供の目線と同じ高さになり…聞いた事のない…マコニャンの声が聞こえた来た…。

 

 

「ぼ…ボクゥ? お名前、なんていうのかなぁ? …お…教えてぇくれるかなぁ?」

 

 ……。

 

 …………。

 

 

「が…」

 

 ……カメラ……携帯……動画……ぁぁ……

 

 撮りたかった……撮っておきたかったぁ!!!

 

 なに!? 今の可愛いの!!!

 

 すげぇ、顔が引きつっていたけど!! 

 あの!! 口調のマコニャンをぉ…!!

 

「くっそ! 記録媒体がない!!」

 

「隆史君! 私も持ってない!! いつも携帯持ち歩いてんのにぃ!!」

 

 子供より、寧ろ俺と沙織さんが悶えていた。

 あぁぁぁ…そうだぁ!! 記憶消えるのか!?

 アレを思い出すことも出来なくなるのかぁ!!??

 

 この断末魔の様な声が、マコニャンに聞こえると、間違いなく怒るから…小声で沙織さんと悶え苦しむ。

 惜しい!! 本当に惜しい!!

 

「…おかぁさん」

 

「ぬぉ!?」

 

 !?

 

 しまった! 見てなかった!!

 なに!? どうした…んだ……ろ?

 

「な…なんだ!? なんだ!?」

 

 母と認識したのだろう。

 同じ目線になったマコニャンに…抱きついていた。

 そのまま軽く、尻餅をつくようにマコニャンは、後ろに腰を落としてしまった。

 

 少し倒れ込むように…お子様は覆いかぶさり…。

 

「スー…スー…」

 

 ね…寝息をたて始めた…。

 いや、子供だし、夢を見ている時みたいだし…まぁ…普通に眠いのだろう。

 遺伝…では無いよね?

 

 どうしたらいいのか分からないのか、その状態で動く事も出来ず…固まって目を見開いてるマコニャン。

 

 寝てしまった事に気がついた沙織さんも、後ろを振り向き…口元に人差し指を立てている。

 ま…結局、名前は分からなかったな。

 いやぁ…ま、いつまでも遠目で見ていても仕方ないしなぁ…。

 

「…ど…どうしたら!? どうしたら!?」

 

「取り敢えず…頭でも撫でてやれば?」

 

「しょっ!?…きぃぃ」

 

 起こさない様に、ゆっくりと静かに近づいたのだけど…驚かしてしまったのか、一瞬声を張り上げそうになっていた。

 が、目の前の子に気を使ったのか…我慢した様だ。

 

「 …… 」

 

「…ん?」

 

「…………」

 

 あの…麻子さん…。

 なんで口が、△の形から動かなくなってるんですかね?

 俺の顔を見た瞬間から…小刻みに振動し始めた…。

 

 あの…? 起きちゃうよ?

 

 

「…チッ」

 

 

 なんで、舌打ち!?

 

「うっふっふ~。麻子ね、照れてるのよ」

 

「…沙織」

 

 鬼の首を獲ったかのように…何故か、勝ち誇っている様な沙織さん。

 その一言の後は、何も言わないで、寝ている子供の横に座り、指で頬を突っつきながら…楽しそうにしている。

 

「起こしちゃうのも可愛そうだし…ま、名前は諦めるかぁ~」

 

 なんだろ…沙織さんの、この手馴れ感…。

 特に特別な事はしていないと思うのに…なんだ……この彼女に任せておけば、大丈夫! って言い切れそうな…。

 

 

 《 名前!? いいわ!! 教えたげるわ!! 》

 

 

「!!」

 

 この声…。

 突然、頭に響いたどこか焦ったような、駄女神の声…。

 それは全員に聞こえた様で、澤さんもキョロキョロと周りを見渡している。

 

「なんだよ、いきなり…どういう事だ?」

 

 

 《 ち…ちょっと、手違いがあってね…こっ! この私が!! 自ら貴方達を導いてあげる!! 》

 

 

「…導くって…しかも手違い? お前がただ、エリナに案内役を頼み忘れただけだろうが」

 

 

 《 こ…細かいこたぁーいいのよ!! で? その子の名前、知りたいんでしょ!? 》

 

 

「……」

 

 

 《 ついでに、話せないその子に変わって、その子の世界線も教えたげるわ!! どう!? これは、尾形 エリナ…さん。には、できないわよ!? 》

 

 

「……チッ」

 

 くそ…正直知りたい。

 が…このくっそ女神に頼むのは…。

 

「はい! 私知りたいです!!」

 

 沙織さん!?

 

「わ…私も……」

 

「知りたいですね」

 

「きょ…興味はあります…」

 

「……」

 

 マコニャン以外、全員が手をあげた…。

 

 《 ふっふ~ん! どーよ!! 》

 

「…チッ。まぁいい…んじゃ、教えて……下さい」

 

 こいつの性格上、絶対にこういった言い方をしろと、言ってくるだろうと踏んだ。

 だからさっさと、こちらから折れる。

 時間の無駄だ…。

 

 《 よしよし。最初からそういった、殊勝な態度で…「エリスさん」

 

 《 え? 私ですか? いいですけど… 》

 

 《 待って!! 待ってぇ!! なんでパ「 んなら、はよしろ 」

 

 《 …… 》

 

 はい、時間の無駄です。

 お前さんの性格が読めてきた。

 上げて……叩き落とすのが有効だな、うん。

 

「……はっ…」

 

 皆は声がするのは、上からだと思っているのか…暗い空を見上げている。

 真っ暗な空間なのだが、この緊張感が微塵もない会話に、不安や恐怖感は無いのだろう。

 ま、そうやって、見上げているから気がつかないのだろうな。

 

 今の麻子の姿を。

 

 無意識にだろうが…寝ている子供を、優しく撫で続けていた。

 

 ……

 

 目が合うと、睨んでくるのは変わらないですけどね…。

 

 

 《 その子の名前は「尾形 麻雄」くんって言うみたいね… 》

 

 地面に光が差して、その名前の文字を描いた。

 …麻子の字を取ったのか。

 あさお…ね。

 

 《 その世界線の貴方は…チッ 》

 

 俺の事か? なんで舌打ち…。

 

 《 主夫ね…。稼ぎは、その冷泉 麻子さんのようね。…なっさけない男ねぇ?  》

 

「…え? 麻子がぁ!? 朝起きれるの!?」

 

 そうですね、沙織さん

 嘘…だろ?

 マコニャンが、稼ぎ頭?

 あと、さりげなくディスってんじゃねぇ。

 

 

 《 朝? あぁ朝は、そこの失礼な男が… 》

 

 

 あ?

 

 《 …… 》

 

 なに? この間

 

 

 《 うっわ…エッグッ…… 》

 

 

 駄女神の本気で、引いた声が響く…。

 

 

 「「「「「「「 …… 」」」」」」」

 

 

 《 …貴方、女性に対して、なんて事してんの…? 》

 

 全員の顔がこちらを振り向いた…。

 

「なっ!? 」

 

 具体的な事を、敢えて言わない。

 それにより、皆の中の想像力が、掻き立てらたのだろう。

 

 まほちゃん! ため息やめて!!

 

「…書記……お前……寝てる私に何を…」

 

 青いのか赤いのか…良く分からない顔色で引かないで!

 身に覚えも何も、知る訳がねぇ!!

 

「まっ! 待て! 未来なんか知るわけがないだろ!? あいつが勝手に……あぁ!!」

 

 あぁぁ!! 身に覚えの無い事で、なんで睨まれ…ぁぁあ!!

 なんか納得した顔で、顔を伏せるな、みほ!!

 

「あぁもうっ!! この駄女神!!! お前、んな意味深な事言えば、どうなるか分かって…くっそッ! わざとだろ!!」

 

 《 何の事ぉ? 私は事実を申し上げてるだけですけっどぉ? 》

 

「お前がこの人間関係、知らねぇはずねぇだろーが!! 知っていてワザと、んな言い回ししやがったな!!」

 

 

 

 《 はいぃぃ? 私は知らないわよぉ? 知ってる事だけぇ 》

 

 

 

「 ブ ッ コ ロ ス ゾ 」

 

 

 …転生特典。

 因子なくてもいいから、今からでも…くれねぇかな…エリス様。

 

 …神殺しとか、あるだろ…。

 

 《 次いくわよぉ? 冷泉 麻子さん…持ち前の頭の良さ…適応能力の高さ…で、事業起こして成功してるわね…なに、この子…… 》

 

「麻子が、社長!!?? 女社長!!??」

 

 沙織さん…。

 ま…まぁ意外っちゃ意外か…。

 

 《 まぁ(記憶が消えるとしても)知らなくていい事…知らない方がいい事ってのもあるから、詳しくは言わないでおくわ! 》

 

 触りだけね! とか、絶対にドヤ顔で言っているのが何となく分かる…。

 …まぁ、答えを知っている人生ってのは、どうなのだろうかね?

 まぁ…普段は、こんな人柄だとか、そんなのは良いのだろうとは思うけど…。

 

 《 そして…この…………って…え~… 》

 

 なんだ? 今度は絶句した様な声。

 

 《 あっはっはっは!! そこの男も大概だけど、貴女も結構やるわねぇ!! 》

 

「!?」

 

 《 ね……ネコミミッ! ……ネコォ… 》

 

「なっ!?」

 

 駄女神の、声を殺した笑い声が響く…。

 殺しているのに響くって…どんだけ我慢してんだ…。

 

 《 貴女! 散々渋ってた割には、ノリッノリね!! 20代前半位までは、月一のやくそ……く……んな、約束してたのぉ!? 》

 

 …マコニャンが、マコニャンになりました。

 

 《 若い頃って無茶するものだけ…どぉ……あははははは!! いえね、私の手元に資料が色々あんのよぉ! 》

 

 …い…嫌な予感しかしねぇ…。

 ヒーヒー言いながら、何か捲ってる音がする。

 資料って紙かよ…。

 まぁ、顔真っ赤にして……ごめん、マコニャン。

 後で、あの駄女神はキチンとシメトクわ。

 

 《 いやぁ…若いっていいわぁ…。こっちが恥ずかしくなる位に、ベッタリになるのねぇ…うわぁぁ… 》

 

「なっ…なっ……」

 

 《 子供と父親、取り合うってどうよ! どうなのよ!! 日曜日はお母さんの番だっ! ってキメ顔で言ってるわ!! 》

 

「がががが…」

 

 《 キリッ!! キリッッ!!! って顔してるわぁ!! 》

 

「…ぎ……」

 

 あの…麻子さん……殺気が出てきてましてよ?

 怒鳴りもしないで、言い返さないなぁ…。

 

「…」スー…

 

 …そうか、子供気を使ってるのか…。

 

「あ…あの……麻子さん…お子様、お預かりしましょうか?」

 

 気を使って、怒鳴りやすく、暴れやすい状況をお作りしようかと思いました。

 というか、この子も結構図太いな…もう、結構騒いでるのに、ぜんっぜん起きねぇ…。

 口に指加えて、静かに寝息立ててますね…。

 

「し…しないぞ…」

 

「…はい?」

 

「私はそんな事、絶対にしない……」

 

 …空を睨んでますね…。

 あ、俺は睨まないで下さいね?

 悪いのはあの自称女神ですから。

 

「……あ」

 

 そういや、マコニャン。

 今回の…その、将来の相手が俺という可能性を、エリリンみたいに一切否定しなかったなぁ…。

 

「ふぐぃ!!??」

 

 嫌じゃないのかなぁ……あ、もしかして、気を使って……っ!!??

 

 ガチガチガチッ!

 

 あの…そんなに口を開けたり閉じたりして、疲れないのでしょうか?

 上下の歯が当たって、ガチガチ言ってますよ?

 あの…顔の色がもはや、赤なんてモノじゃない色してますよ?

 

 《 ヒー! ヒー!! 》

 

 駄女神の声が…。

 

「…書記」

 

「……はい」

 

「いい加減、思ったこと……まぁいい、先にアレだ」

 

「アレだな」

 

「あれ…お前なら何とかできるか?」

 

 

 《 なにこれ!! なにこれぇ!!! あっはっはっは!!》

 

 

「何とかとは?」

 

「自衛隊にでもなんでも頼んで…」

 

「……分かった。もっと頼りになる方に頼むわ」

 

「頼んだ」

 

 はい、目に殺気が戻ってきましたね。

 取り敢えず、こんな世界だ。念じてみましょう。

 

( エリス様~…聞こえますかぁ? )

(《 あ…はい。……スミマセン…ホントウニ、スミマセン… 》)

( あの馬鹿、なんとかして下さい )

(《 監視していた上司に掛け合ってみます… 》 )

 

 やればできるもんだな。

 はい、さすが本物の女神様。

 仕事が早い。

 

 《 …ァ…ハイ……スイマセン…… 》

 

 

 即、流れて来た、力ない声が、心地いい…。

 

 

 《 グスッ…私悪くないのにぃ… 》

 

 

 自覚がないのが、またタチが悪い…。

 

 

 

 

 

 

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 《 さて、そこの貴女。この無礼な男が、意識不明になって運ばれた時…物凄い取り乱したみたいね… 》

 

「!?」

 

 

 あからさまに真面目な声になったな。

 しかも内容が、無視できないモノ…この野郎…強制的にシリアスに持ってくつもりだな…。

 

 だからだろう。俺じゃなく、その声はマコニャンを指している。

 いきなりの神妙なトーンの声が、胡散臭いなぁ…。

 

 《 そこの男の子も、そんな母親を見て、子供ながらに気を使って…疲れきったのでしょうね。夢の中でも寝ちゃう程に… 》

 

「……」

 

 何かに気がついたのか…マコニ…いや、麻子の顔が青ざめた。

 どうした?

 

 急に…。

 

「ぅう…」

 

 麻子は、その胸の中の子供を抱きしめていた。

 

「……」

 

 あぁ…。

 

 そうか…分かった。

 

 俺は一度、見ている。

 

 取り乱した彼女を。

 

 だから知っている。

 

 ……。

 

 家族の死…。

 

 麻子が一番恐れている事…だな。

 未来の麻子が、どんな人物かは分からないが…うん。

 

 想像は容易い…。

 

 

 

 《 さぁ、お互いの手を取り、死という運命を覆し……そんな未来の貴女を、安心させてあげなさい 》

 

 

 ……。

 

 急にまとめに入ったな。

 

 なに? その大層な物言い…。

 

 まぁ…いいけど。

 

 そういう喋り方できるなら、終始それでいりゃいいのに…。

 

 怒られたから、真面目にやるって…。

 

「…書記」

 

「…はいよ」

 

 時間の概念は、この世界には無いのだろうが、目の前の寝ている子供を早く戻してやりたのだろう。

 急かすように、俺のズボンの裾を引っ張って来た。

 先程までいた、エリナも蕾もそうだけど…改めて見てみても、実感は余りないな…。

 まぁ、あっても困るけど…。

 

 自分の子供…。

 

 

 うん、この子は男の子だというのに麻子似だよね。

 

「…おい、女神」

 

 《 な…何かしら!? 》

 

 麻子の呼びかけに即反応したな。

 声が若干上ずっているねぇ…余程絞られたか?

 

「この際、私の事はいい。将来の書記はどうなんだ? 普段どんな感じなんだ?」

 

「俺!?」

 

 なんだ? ここに来て、俺!?

 

 《 あぁ…そういう…。まっ! そうね! 一言でいうなら… 》

 

 何かを察した様に、真面目な口調が解けた。

 どうやら、俺だけ一人焦っているみたいで、周りを見渡すと、みんなは結構真面目な顔をしてる…。

 

 なに? なんなの!?

 

 《 かっっわんないわねぇ。いえ? ちょっと違うか… 》

 

「違う?」

 

 《 今以上に、普段からヘラッヘラ、してるわね! …ま、そういう事。良かったわね! 》

 

「はっ…そうか。良いか悪いは知らんが……それでいい」

 

 そこまでだと、麻子は子供の手を握った。

 なんというか…麻子って結構、母性が強いのだろうか…?

 何でか、少し安心した様な顔をしている。

 

 そのまま、有無を言わさないと言った感じで、俺の手首を掴み…子供の手に引っ張る。

 促されるまま、その…子供…麻雄の手を握った。

 

 あ、そういえば…俺はこの子を、撫でてもないなぁ…。

 少しぐらい…。

 

「書記」

 

「えっ? はい?」

 

 子供の体が発光し始め…麻子の体も光り始めた。

 俺を呼んだその顔は、俺を一切見ないで…その腕の中の子供を見ていた。

 

「この際だ、相手がお前だとか色々な諸事情には、目を瞑る…」

 

 それは、俺に話しかけているというよりか…どこか自分に向けての言葉だった。

 

「しょ…いや、た……ぬぅぅ!!」

 

 な…なに? え? 今度は何か歯噛みし始めた!?

 

「たっ…隆史!」

 

「え? あ、え!?」

 

 な…名前呼び!?

 いきなり!? どしたの!?

 

「相手がお前だとしてもな!! わ…私は、どこかで…嬉しかったんだと思う」

 

「…嬉しい?」

 

 戻る時間が、迫っていると感じたのか…声に焦りが見える。

 視界に映る…麻子と子供を包む光が、強くなっていた。

 

「そうだ!! いいか!? 相手がお前だというのは及第点だ! 目を瞑るだけだぞ!!」

 

「いや…それはもう聞いた…」

 

「ぐっ…」

 

 俺にだけする、いつもの舌打ちをし…目を落とし、子供の頭に手を置いた。

 

「…う……嬉しかったんだ。…本当に嬉しかった」

 

「……」

 

 そんな彼女を見て、名残惜しそうに感じたのは、気のせいでは無いだろうな。

 …だが、もう時間がない。

 彼女達を包む光が、最大限へと到達したと感じた時…。

 

 麻子は、笑った。

 

 

「私にも…新しく、家族ができるんだと…実感でき…た……」

 

 

 最後の言葉を発して…子供と共に消えていった。

 

 

 

 

 

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 ---

 

 

 

 

 

 《 さっ! 次ね!!! 》

 

 ……

 

「隆史君!?」

 

「隆史!?」

 

 …

 

 ……みほとまほちゃんの声が聞こえた。

 その後次々に、華さん達からも俺を呼ぶ声が…。

 

 どうしたんだろ…何を驚いて…。

 

 《 あ~…あんた 》

 

 

 んだよ、駄女神

 

 

 《 なんで、泣いてんのよ 》

 

 …あ?

 

「……は……初めて見た…」

 

「……」

 

 言われて気がついた…。

 手で顔を隠すように、目を確認すると…うっわ…。

 ぬるっとした感触。

 

 号泣してるよ…。

 

 まだ、出てきてるよ…。

 

 いや…俺、こんなに涙脆かったか?

 麻子が消える直前の、最後の一言にやられた…というのは、何となく分かるけど…。

 人前で…泣くほど…。

 

 《 あぁ! そっかそっか!! 》

 

 後ろを向き、腕と手で、顔を乱暴に拭う。

 目の周りがあっつい…。

 

 《 アンタ、この世界…前回の夢でもそうだけど、結構感情が昂ぶりやすいでしょ? 》

 

 んぁ? そういや…変に怒りっぽくなってたな。

 普段なら、気にも止めない事に…妙にイラついたし…。

 

 《 この世界だと、自我が脆くなる様になってんの!! 素の状態が出やすくなってるみたいねぇ 》

 

「…隆史さんも泣くんですねぇ…」

 

「五十鈴殿…その物言いはちょっと…」

 

 《 全ての本音が、漏れやすい様に、なってんの!! 》

 

「……何の為に…」

 

 嫌がらせ以外に、思い当たらないがな…。

 

 

 《 私に優しくしないからよ!!! 》

 

 

 

「……」

 

 

 

 《 じょっ…冗談よぉ~。ただの冗談なんだから、本気で怒らないで!! 》

 

「……」

 

 《 はい。では尾形 隆史さん。真面目にお答えしましょう 》

 《 また、アンタ!? 出しゃばってこないでよ!! 》

 

「はい、お願いします。エリス様」

 

 

 はい、チェンジで。

 

 

 《 貴方、鈍感過ぎますし、変に気を使いすぎますし、これだけの女性に手を出してるんですから、少しは責任を感じてもらいたく思いまして 》

 

 

「………………」

 

 い…言い方ぁ……

 

 《 先程、冷泉 麻子さんが、未来の貴方の事を、気にしていた理由とか…急に貴方を、名前で呼んだ事とか……何でか分かります? 》

 

 あ、うん。

 驚いたけど…分かるかどうかって?

 

 そりゃあー

 

 

「な…なんとな……く?」

 

 

 《 …… 》

 

 

 「「「「「「 …… 」」」」」」

 

 

 《 …うっわ、アンタ…やっぱり一度、死んどけば? 》

 

 

 駄女神に引かれた…。

 あれ!? なんでかみんなに侮蔑の目で見られてる!?

 というか、わかるよ!? 流石に分かるけど、はっきり言えるかぁ!!

 

 《 はい、そんな訳で…女性の敵である貴方には、ここで少し、学んでもらおうかとも思いました 》

 

 

 …み。

 

 味方だと思っていたエリス様が…結構、キッツイ事を仰られました…。

 

 

 《 私も女神です。いいですか? 女の神です 》

 

「」

 

 《 ある意味、良かったです。貴方があの最後で、泣ける人間で。でなければ見捨てていた…かもしれませんねぇ 》

 

 なんだろうか…にこやかに喋っているって感じはするのだけど…。

 言葉に怒気を感じるのは、なんでだろう?

 

 《 こちらに落ち度があるとは言え、いたずらにこれ以上、仕事を増やされても堪りませんし…はい、では次です 》

 

「いや…あの……」

 

 《 次です♪ 》

 

 ……。

 

 あ、はい。

 

 《 では、その目の前の子を、次はお願いしますね 》

 

 その子?

 

 身長差があるので、軽く見下ろす。

 うん…その目の前に立ってた。

 

 

 

 なんかもう…目をキラッキラさせてんなぁ…。

 

「お…お……おぉ……」

 

 手を握り締め、俺の顔を見上げている…。

 

「すっげ! マジで来た!!」

 

 この非日常感を満喫するかの様に、興奮気味にはしゃいでいた。

 

「ぉぉお!! あんま変わってねぇけど、父ちゃん若っ!!」

 

 と…父ちゃん……。

 

 これはまた…。

 

「まだこの頃は、髪あったんだぁー!!」

 

「」

 

 

 ……な…んだ…と……。

 

 ちょっと個人的に、聞く事ができたな。うん。

 

 うん…この…パンチパーマの男の子に。

 

 

 

「すっげ!! あはは! なんにもねぇ! なんだここ!!」

 

「いや…ちょっと待て、詳しく聞こうじゃないか」

 

 

 今お前、最後なんつった?

 

 

「…みぽりん」

「西住先輩…」

「…うん」

「誰のお子様か、すぐに分かりますねぇ」

「え? 誰ですか?」

 

 

「まず、年齢と名前を教えてくれ…」

 

 一応…俺が親らしいから…坊主とか他人行儀な言い方は避けよう…。

 しっかし…。

 

「は? 何ってんの? 父ちゃん」

 

「いや…だから……」

 

「あ! そうか!! 昔だから知らねぇのか!!」

 

 話が早い…のか、遅いの分からん…。

 というか…顔が完全にガキの頃の俺だ。

 

 髪はパンチパーマだけどな。

 

「俺、隆成! 10歳!! おぉぉ! すげぇ! 地面に俺の名前出た!!」

 

 て…テンションたけぇ…。

 名乗った瞬間、麻雄と同じく、地面に名前が漢字で現れた。

 今度は、俺の名前の漢字を取ったのか…。

 

「よし、隆成」

 

「なに!?」

 

「…俺には将来、髪の毛が無いのか?」

 

 ここ! 重大!! 重要案件!!

 

「ねぇよ? ハゲだなハゲ。一本もねぇ」

 

「」

 

 …お…お子様……少し気を使え…。

 

「うん、なんかたまに、頭剃ってる」

 

 剃ってる?

 

「母ちゃんから、どっちかにしろって言われてるみたい」

 

「…は? どっちか?」

 

「うん! パンチパーマか、ハゲ」

 

「……」

 

 強制かよ!!

 

「どっちもカッケーから、俺は良いんだけどさぁ…お客さん、父ちゃんが店番すると、みんな逃げちゃうんだよなぁ」

 

「…客? いや待て…」

 

 目頭を押さえる…ダメだ…。

 ちょっと衝撃的すぎて…。

 

 将来の俺は…今の証言からすると…パンチパーマか、スキンヘッド…どちらか選べと、奥さんに選択をさせられたと…。

 それに客だと言ったな…。

 何やっての俺?

 

「よし、隆成」

 

「なに?」

 

「まず、俺の将来の風貌…要は、見た目を教えてくれ」

 

「だから、ハゲ…「違う! それはスキンヘッドだ! ハゲとは違う!!」」

 

「ん~…んじゃ、それで…鼻の下だけ、ヒゲ生やして…」

 

 ……。

 

「もっと、筋肉あった」

 

【挿絵表示】

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 よし! 俺の体は、まだ成長できる!!

 

 違う!!

 

 なんだそのイカツイ格好!! 奥さん、何考えてんの!?

 

「後、客と言ったな…何してんの? 隆成ん家」

 

「喫茶店」

 

「…喫茶店? 床屋じゃなくて?」

 

「そりゃ、じいちゃん家だよ。戦車どお? とかのグッズが、いっぱい飾ってある喫茶店やってるよ」

 

「……」

 

 ま…まさかの…

 

 戦車道喫茶、経営者…。

 

「よし…あの中に、母ちゃんがいる…わかるか?」

 

「へ?」

 

 隆成の頭を軽く掴んで、並んでいる女子校生達へ向けた。

 

「おぉぉぉ!! なんか、綺麗なお姉さんいっぱい!!」

 

「違う! そうじゃ……違わないが!!!」

 

「父ちゃん、なに言ってんの?」

 

「俺にも分からん!!」

 

 みほ達が、呆然としているな。

 そのまま、彼女達の前へ連れて行く…つもりだったけど、先行して走り出した。

 この頃の男の子って、本来こんなもんか…。

 とにかく落ち着きが無い。

 

「あー…すっげ。母ちゃん若っか!!」

 

 真っ先に正面に立ったな…。

 

「わっ…私ですかあぁ!?」

 

 

 はい、ゆかりん。

 他に誰がいる?

 

 

 

 >  秋山 優花里の場合  <

 

 

 

 

「うん…隆史君、聞こえてた…将来の優花里って、すごいね…」

 

「わ…私、そんな趣味はないですよ!? パンチパーマは兎も角…」

 

 そっちはあるんか!!

 早速、将来の俺の風貌について色々と、言われてますね…はい。

 …確かにその二択なら、迷わず俺は剃る!

 

「あ~…そういえば…父ちゃんの頭の事で、母ちゃんに聞いた事あったっけ…確か…」

 

「ほっ! ほら! 何かやっぱり理由があるんですよ!! 私も強制的に、そんな…」

 

「 浮気防止 」

 

 「「「「「「 …… 」」」」」」

 

「とか、なんとか言ってたなぁ…意味良くしらねぇけど!!」

 

 あ…うん…。

 まぁ…なんでだろう…なる程って呟きが、何名様から聞こえてきた…。

 

「あっ…後! 喫茶店? お店開いてるんだね!!」

 

 沙織さんに気を使われた…。

 

「しかも戦車道喫茶…個人経営っぽいね」

 

「…隆史さんと、優花里さんなら…まぁ趣味のお店ですかね? 一度見てみたいですねぇ」

 

 まぁ、みほの言う通りだな。

 その風貌のおっさんを、チェーン店なら普通、雇う訳が無い。

 

「母ちゃんが、戦車どおの人達が来るから、父ちゃんの頭変えたって言ってた」

 

 「「「「「「 …… 」」」」」」

 

 また聞こえた! なる程って!!!

 

「お……ぉぉぉお……」

 

「どうした隆成?」

 

「父ちゃん! 今気がついた! わっかい!! わっかい!!」

 

 何をはしゃいでる?

 取り敢えず、頭をワッシャワッシャしてみた。

 

「…なんかもう…普通に尾形先輩、お父さんしてません?」

「…私としては、少し複雑だが…男親とはこういったモノなのだろうか?」

 

 なんだろう…まほちゃんと、澤さんの友好度が上がってるな…。

 

「わっかい! って…何を……あぁ若いか?」

 

 

「この人達、華おばさんと、沙織おばさんだろ!?」

 

 

 「「 …… 」」オバ…

 

 

 うん…。

 

 まぁ…はい。

 

 

 未来でも交流が続いているのですね…。

 お二方…子供の言う事ですから…ね?

 

「…お前、二人共知ってるのか?」

 

「うん? 母ちゃんの友達だろ? 良く店に来るよ? 後、マコニャンおばちゃんって人」

 

「…」

 

「後…あ……」

 

「え?」

 

 みほを見たら、隆成が固まったな…。

 どうした?

 

「あの…」

 

 直立不動で動かなくなったな…。

 まぁ、華さんと沙織さんとも交流があるなら、みほも…

 

「みほさん…」

 

「……」

 

 どうした!?

 

 何があった未来!!??

 

 みほに対してだけ、さん付け!?

 

「す…すいません。ちょっとはしゃぎすぎました…」

 

 敬語!?

 

 カタカタカタ…

 

 震えてる!?

 

 

「…みほ、なにした?」

 

「知らない! 流石に知らないよぉ!!」

 

 まぁそうだろうけど…。

 この位の子供の顔を、青くさせるって…みぽりん…。

 

 

 

 

 -------

 -----

 ---

 

 

 

 

「隆史」

 

「ん? なに?」

 

 まほちゃんが、話しかけてきた。

 そういば、エリリンがいなくなってしまって、ある意味でアウェー感がすごいだろう。

 澤さんと、何故か親しげになっていたから、大丈夫だと思っていたけど…さみしいのだろうか?

 

「…正直、初めは色々と…その、どうかと思ったのだが…」

 

「……」

 

 優花里と隆成が、座り込んで話をしている。

 初めは、なんか俺と交互に見比べて、微振動を繰り返していた彼女も落ち着いたのか…今は隆成と笑っている。

 …うん、笑ってるよね?

 

「ヤークトティーガー!? あんなのただの、金くい虫じゃないかぁ!」

「何を言っているんですか! 全てはロマンで始まったんですよ!?」

「母ちゃん、昔からそれかよ! ロマン? ロマンで勝てるか!! あれ一輌のコスト考えろよ!!」

「なっ!?」

 

 ……。

 

 うん! 多分、笑ってる!

 なんの英才教育だよ! 10歳の子供がする会話じゃねぇ!! 

 

「……!?」

「母ちゃん?」

 

 あら…目があったら、俯いちゃった…。

 

 …うん、ゆかりん、何回かバグったしね。

 

 ココココドッ! ってのを繰り返してましたね…。

 

 まぁいいや…その二人を眺めている、まほちゃん。

 

「…なんだろうな…色々な可能性を見ている内に…今は、楽しみになった」

 

「な…何が?」

 

 楽しみって…。

 

「何って…お前との子供だ」

 

「」

 

 は…はっきり言った…。

 やめて…顔が熱くなるから! どうしたのまほちゃん!!

 

「…なる程。結構すんなりと言えるものだな…。普段なら口が裂けても言えないが……」

 

 …いやぁ…? 

 結構、はっきりと爆弾落としてきそうですよ? 貴女…。

 

「これが先程、女神とやらが言っていた、「本音が漏れやすくなる」という奴か」

 

 あの…。

 

 というか、今回は駄女神大人しいな!!

 こういう時こそしゃしゃり出てこいよ!! どうしたらいいの!?

 

「みほとの子も、興味がある」

 

「」

 

「…なる程な。これはある意味で楽だな。スラスラ言える……ちょうどいい……チョウドイイナ、コレハ…」

 

 な…な……っ!?

 

 い…いかん!!

 なんかしらんが、まほちゃんに何かのスイッチが入った!!

 

「…記憶が残る、残らないの問題では、なくてだな……」

 

「」

 

 

 ……。

 

 あ…

 

 …………。

 

 

「…おい、聞いているのか、隆史」

 

 白…。

 

 純白…。

 

 パールほわいとぉ…。

 

 やはり、まほちゃんは白だな、白。

 

 ……というか…。

 

「…お前は私のどこを見て話…を……」

 

 隆成…お前、優花里と話してたよな?

 

「……な…」

 

 まぁ10歳くらいの男の子なら、分からんでもないけどな…。

 やりそうな事…だけどな?

 

「なぁ!?」

 

 相手、選べよ…。

 

 視界に映る、10歳のお子様はまほちゃんの真後ろにいました。

 

 まほちゃんのスカートを捲っておりました。

 

 いや…左右をもって捲るとか…。

 

 はい、全っっ開で……御開帳。

 

 

「ぉぉおお!」

 

 おい、なんだ息子。

 

 なんだ、その満面の笑みは…。

 

 

 まほちゃんは、一瞬…思考が止まったのだろう…硬直して動かなかったね。

 こういった悪戯には免疫がないだろうし…。

 子供の頃からある意味で、恐れられていた彼女は、小学生の時にもこの手の被害にはあったことがなかったな。

 うん…みんな本能的に死を直感していたのだろうね。

 

 いやぁ…今更、スカート抑えても…遅いですよ?

 

 ガッツリ見ました。

 

 隆成の後方で…みほ達全員が、青くなってるな…うん。

 

 では、せ~の…

 

「なにやってんだぁ!!」

 

 しっかり見ていてなんだけど、即座に行動した!

 隆成の腕を引っ張り、こちらに思いっきり引いた!!

 

「バカ野郎!! 死にたいのか!!」

 

「いや…綺麗なお姉さんがいれば…こうするのが礼儀だよね?」

 

「俺に確認とんな!! やるにしても相手選べよ!!」

 

「……」

 

 ま…まほちゃ……ん?

 

「…ま、子供のする事だ。まぁいい」

 

 まほちゃん!!!

 大人だ! まほちゃん!!

 

「これが、公共の場なら……多少? オコッテイタカモナ」

 

 まほちゃん!?

 

「あ…そういえば、この人知らない」

 

「バカ野郎!! いいからまず謝っとけ! 俺も一緒に謝ってやるから!!」

 

「え~……」

 

「良いと言った。…隆史にだけ、見られる分なら…まぁ、許容範囲だ」

 

 や…やめて!!

 普通に怒ってよ!! みほがスゲェ顔して……優花里!?

 どうしたのゆかりん!! 表情が無いよ!? 真顔だよ!?

 

「え…なに? 父ちゃんの彼女? ふりんあいて?」

 

「どこで、そう言う言葉、覚えてくんだよ!!」

 

 何故か、まほちゃんが笑顔で…。

 

「…惜しいな」

 

「惜しくない!!」

 

 なに!? まほちゃんが壊れた!!??

 

「ねぇねぇ、父ちゃん。このお姉さん、本当に誰? ほんとに父ちゃんの彼女?」

 

「ち…ちがっ…!! この人は、みほのお姉ちゃんだ!!」

 

 

「         」

 

 

 な…なんだ?

 隆成の顔が…真っ青に…。

 みほとまほちゃん、交互に顔を見比べていた…。

 

「こ…怖い人?」

 

「みほより数段な!!」

 

「」

 

「…おい、隆史」

 

 まほちゃんは、黙ってて!!

 

「だから、先に謝っとけ…って!?」

 

 お…俺の後ろに隠れた…。

 これは完全に、避難態勢だな?

 

「こ…」

 

 少し顔を出し…泣きそうな顔をして…

 

「このたびは…たいへん、もうしわけございませんでした……」

 

「「 …… 」」

 

 意味は、良く分かっていないのだろう…が。

 物凄く丁寧に…謝意を述べた…。

 

「……」

 

「……隆史」

 

「…なに?」

 

「私はそんなに怖く見えるのか…?」

 

 ………。

 

 丁寧すぎる、子供の怯えに…珍しくまほちゃんがヘコんだ…。

 

「い…いや、そういう訳じゃ…。多分、こいつは、みほが怖いんだと…」

 

「」

 

 あ、今度は遠くで、みほがヘコんだ…。

 まぁ…この分だと、こいつが何か、したんだろうけど。

 子供がガッタガッタと、引きつけを起こしそうになる程だし…。

 一体みほは、何したんだ?

 

「お…おい、隆成。お前、一体みほに何した?」

 

「ま…」

 

「ま?」

 

「前に、父ちゃんの目の前で、スカート捲った…」

 

「…………」

 

「す……すっげぇ怒られた……笑いながら…すっげぇ笑いながらぁぁ…」

 

 

 も…もはや語るまい。

 

 

「…………そうか、怖かったな」

 

「怖かったぁ!!」

 

 

 まぁ…うん。

 優花里が、まほちゃんにすっげぇ謝ってる中。

 頭を撫でてやったら、本気で泣き出した…。

 

 

 

 《 そろそろ次に行きたいんだけど…もういい? 》

 

 

 あ、駄女神がやっと来た。

 

「あー!! はいはい!! この世界の私達が、何やってるか知りたいです!!」

 

 沙織さんが、勢いよく手をあげた。

 そういえば、麻子の時から妙にテンション高いなぁ…

 

 《 え? えっと、武部 沙織さん…は、普通に専業主婦ってのしてるわね! 》

 

「 結婚できたぁぁああ!!!! 」

 

 そら…貴女ならできるでしょうよ…。

 あぁ、そうだ。最近現れてなかったよね、ゼクシィ武部殿。

 いや…本当にどうしたんだろ、そのテンション。

 聞いたら聞いたで、また怒られそうだから黙ってよ。

 

 《 五十鈴 華さん…は、五十鈴流ってなんか華道って、言うのかしら? それの家元襲名してるわね…20代で…… 》

「…え」

 

 うっわ!! めっちゃ怪訝な顔!!

 

 《 異例の早さらしいけど…なに? 嬉しくないの? 》

 

「……いえ…私…結局、家に戻るのですね…」

 

 《 なんか、下克上とでもいのかしら…五十鈴流の乗っ取りがどうの…って書いてあるけど…… 》

 

 ……。

 

「!! …ふむ。ならまぁ…及第点でしょうか? あら? なんですか? 隆史さん」

 

 …やりそう。

 

 と、しか言えねぇ…。

 

 というか、それ聞いて、いい事思いつきましたぁって顔したのが、めっちゃ怖い。

 

「あの…私は……?」

 

 みぽりん!!

 

 《 大学で講師してるみたいよ? せんしゃどーとかいうのの 》

 

「先生!?」

 

 《 一時、すごいもてはやされた見たいよ? 若い頃は、海外遠征……国際強化選手がどうのって、書いてある… 》

 

「わ…私が…」

 

 《 あ、丁度、その男が結婚した時ね 》

 

 ぼくは、だまっていたほうがいいよね?

 

「……………」

 

「みぽりん…結構、ふっきる手段がすごいね…」

 

「先程は、自衛隊…でしたっけ?」

 

 《 んで、お姉さんの方は……まぁ、さっきの子と一緒ね 》

 

「……」

 

 あ、なんか寂しそうな目をした…。

 他の事とかしてみたいのだろうな…。

 

 《 んで、そっちの秋山 ゆか…… 》

 

「はい?」

 

 《 …… 》

 

 なんだ?

 優花里の場合は、息子から聞いて…

 

 《 ねぇ? 尾形 隆史 》

 

「お前、俺は呼び捨てかよ。というか、なんだよその猫撫で声は」

 

 《 あんた……いくら奥さん相手だからって… 》

 

「…は?」

 

 俺のクレームを無視して…またドン引きの声…。

 

 

 

 《  なに? あの紐  》

 

 

 

「「 ………… 」」

 

 

 《 しかも二種類あるし…あ、でも最後位には、奥さんもノリッノリで着ているから…いいのかしら? 》

 

 

「「 ………… 」」

 

 

 《 ここら辺の事は、私には分からいけど……ま、程々になさいね? 》

 

 

 

「紐? 紐とはなんの事でしょ? 優花里さ…」

「やめとこ、華…多分…聞くと後悔するから」

「そうですね。ほっときましょう」

 

 はい、華さん。

 貴女の声は、もはや届いてません。

 

「はい、優花里さん。子供の前でやめて下さい…」

 

「着ません! 流石にもう着ませんよ!!?? なんですか、二種類ってぇ!!!」

 

「あぁ……マイクロ…」

 

「またですか!? またですか!? またアレ持ち出すんですかぁ!!??」

 

「いやぁ…未来の事はなんともぉ…」

 

「なに、笑ってるんですか!!!」

 

「…優花里、多分な…未来の俺は…」

 

「っっんですかぁ!!!」

 

 

優花里の水着姿が見たいんだ

 

 

「その声、やめてください!!!」

 

 

 

 

 ------

 ----

 ---

 

 

 

 

「はい! では、タラシ殿!!」

 

「はい…」

 

「アレか! ついにアレか!!」

 

 なんの事か、分かっていないだろうに…変にはしゃいでいる隆成と、向かい合わせになる。

 

「な…なんかごめんな?」

 

「は? なにがですか!? は!!??」

 

 …ゆかりん、ご機嫌斜め…。

 

「……あの……」

 

 優花里の体が光りだした…って、はや!!

 

「お前…なにしてんの?」

 

「え? なにが? こうすりゃいいんだろ?」

 

「く…空気読めよ…」

 

「おぉぉ! マジで体光った!!」

 

 子供に空気読ませちゃダメだと思うけど…いきなりだな。

 

 すでに隆成の両手には、俺と優花里の手が握られている。

 

「では、優花里」

 

「なんですか? もう着ませんよ?」

 

「……」

 

「冗談です。なんですか?」

 

「…ま、うん。なんだろうな…こんな未来も…その、良いなと…思った」

 

「…そうですねぇ。私もそう思いました。うん、この子と話せて、楽しかったです」

 

「…だな」

 

 だから、時間が残されている内に、その子供と最後の話だ。

 この未来には、俺は行けないかもしれないから…な。

 

「ところで隆成。なんかお前、ずっと元気だったな…。話聞いて理由知ってるんだよな?」

 

「え? 父ちゃんが死んじゃうかもしれないって話?」

 

 光る中…あっけらかんとしていた。

 うん、だからだろうか。

 終始こんなんだったから、こちらもある意味で、楽だった気がする。

 

「だって、俺信じてなかったもん」

 

「…は?」

 

 その割には、この世界に順応してたな…。

 ただ当然だろ? って顔には流石にビックリしたけど…。

 

「車に跳ねられても、死なねぇ父ちゃんだしな!」

 

「「 …… 」」

 

 な…なにがあった未来。

 なんか、すっげぇ笑顔で返してくる隆成を見て…ま、もう余計な事をいうのはやめよう。

 

「ま、いいや。お前と話せて…楽しかったぞ?」

 

「そ? いつもの父ちゃんと話してるみたいで……あ、見た目は違うか」

 

 

 すでに体の光が、最大にまで達していた。

 そろそろだな。

 最後くらい、もうちょっと話して見たかったんだけどな…。

 

「母ちゃんとはどうだった?」

 

「若い母ちゃん面白かった!!!」

 

「はっ、面白いか…」

 

 空いた手で、ガシガシと頭を撫でてやる。

 最後に触れられて、よかった。

 

 

「…じゃあな」

 

 

 二人の気配が無くなった。

 

 




閲覧ありがとうございました

誰の未来かネタバレになりそうでしたので、タイトルに表記しませんでした、
あんこうチーム全員無理でした! はい、嘘つきました、すいません!!
というか、未来へ書いていて面白くて、文字数ばかり伸びてしまうので、もうちょっと続きます

あ、もう時期やっとこさ環境がもどるので…PINKの続きかけそうです

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