《 これで、4人目ね!! 》
能天気な声が、うるさいくらいに脳内に響いた。
…こっちは、本気で胃が痛くなってきたのに…。
今生の別れとかでは無い。
…というのは、分かってはいるのだけど…去り方が、もう…。
みほは、みほで…顔色悪いなぁ…。
《 すごいわね…まだ半分も終わってない…。あんた、どんだけなのよ 》
「…………」
《 さって、次は誰にしようかなぁ~♪ 》
「おい、ちょっと待て。お前が選んでいたのか?」
《 そうよ? 》
「…まとめて複数呼べば、すぐに終わるんじゃないのか?」
《 あ、それは無理よ 》
「無理?」
《 そうそう。呼べるのは、対象になった人の世界線の人だけ。もう現在と別世界線を結んでいるから、これ以上混合させちゃうと…大変な事が起こるわ 》
「…大変な事?」
《 人間に言っても理解できないわよ。んじゃ、次行くわよ~ 》
…話はここまでだ。さっさとしろと、言わんばかりに急かしてきた。
まぁ、無理なものを強引に通しても仕方がない。
さっさと、終わらせ………………。
「お前が選んでいるって事は…さっきのエリナの時、別の…彼女が、俺に冷たくない世界線もあったんじゃねぇのか?」
《 あるわね 》
「 …… 」
あっさり言いやがった、この駄女神…。
そんな世界線が有るなら、優しいエリナを寄越してくれりゃあいいのに!
《 でも、呼べる世界線は、ランダムだからね…って、もういい? 本当に次に行きたいんだけど… 》
結構真面目に教えてくれる。
何か、変な事を言ってくるんじゃないか勘ぐっていたので、少々拍子抜けだなぁ…。
選ばれる世界線は、1つねぇ…。
「あぁ、すまん。続けてくれ」
《 …… 》
「どうした?」
《 随分と素直…。気持ち悪っ! 》
「……」コノアマ…
黙って、真面目に続けるなら、俺だって何も言わねぇよ!
《 ま、いいわ…んじゃ………………あっ 》
「…おい」
《 …… 》
「今、「あ」って言ったな。今度は何を失敗した!!」
《 し…失礼ね! 失敗なんてしてないわよ!! ただ… 》
「ただ…? なんだよ」
《 そのぉ… 》
煮え切らない態度だな…。
こりゃ、余程の失敗でもしたか?
「 隆史君!! 」
沙織さんが、少し焦った声で、呼びかけてきた。
…そうか。
次は彼女か…。
呼ばれたので、当然そちらを振り向く。
今度は男の子か…女の子か…。
そんなどうでもいい事を考えていたのだけども…。
「 」
振り向いた彼女は…。
「 赤ちゃん! 」
少し、興奮した様な顔をして…腕に赤子を抱いておりました…。
《 呼び出すには呼び出したけど…若すぎるわよね? 》
> 武部 沙織の場合 <
「……」
うん…まぁ。
いつもの学生服で、赤ちゃんを抱いてる沙織さん。
…ある意味で、すげぇ絵だな…。
しかもちゃんと、自分の子供…。
《 えっと…尾形 愛織ちゃん…女の子ねぇ……生後……三ヶ月よ… 》
「お前…」
《 これに関しては!! 素直に謝ります…ごめんなさい… 》
この位の歳の子を呼ぶとか…。
本当に素直に謝られたので、強く責められない…。
…俺も甘いなぁ。
地面に漢字が現れた。
うん…今度は、沙織さんから字を取っているな。
これで、アイリと読むんだ。知らなんだ。
しっかし、愛の字を付けるあたり、沙織さんらしいなぁ。
「………………」
なんだろう…。
麻子の子供の時のテンションを見ていたから、正直もっとはしゃぐかと思っていました。
しかし、あのテンションはなく…ただ、ただ…すっごい愛おしそうに、赤子を抱いております…。
口を半開きにして…目をすっごい、キラキラさせて…。
「 愛織……愛織ちゃん…… 」
…彼女は、娘の名前を繰り返しているね。
抱きながら…あやす様に、ゆっくりと体を動かしている。
その腕の中、赤子はスヤスヤとお寝んねですね。
髪もまだ生え揃っていない…なんか、どこかで見た、黄色いクマの赤ちゃん用の服…。
「……」
今までの子供…蕾、エリナ、麻雄、隆成…。
あの子達の様に、ある程度成長していると、信じていない訳では無いが、現実感が若干薄まるんだと思う。
話せるからね。
――が。今回!
な…生々しい…。
背徳感がどうの…ではない。
完全に…アレデスネ。
女子高生が、赤ん坊を抱いているだけだというのに…。
あ!!
みほは!!??
「…マバタキ……タノシィ……」
いかん! 完全に現実逃避してる!!
目をパチパチと瞬きを繰り返しながら、なんか良く分からん事を言ってる!!
お空を眺めてるね!
《 いやぁ…この世界線だと、もう少しおっきい子もいたんだけどねぇ… 》
「!?」
《 どうにも、若い子の方が因子が強いから…その若い子の方が、選択されるみたいなのよ 》
「いや…え? 他…? え? あの子は?」
《 そうね、あの子は四姉妹の末っ子よ!! 》
「そうなんですか!?」
沙織さんが食いついた…。
そら、兄弟がいても、おかしくはないけども…。
「随分と沙織さんの所は、子沢山ですねぇ」
じょ……女系家族…。
《 まぁ…あの子まだ喋れないから、ある意味で良かったんじゃない? 》
「なにが…」
《 アンタ、その姉妹の次女以外に…すっごい嫌われてるわよ? 》
「……」
《 どうにも未来のアンタって、娘に嫌われる傾向が強いのよ。息子の場合は、逆に好かれてるわね 》
エリナ見て…何となく分かるけど…。
あ! でも、蕾! あの子は、懐いてくれて…《 あれは、例外よ 》
「……」
《 さっきの隆成くんだって、お姉ちゃんいるのよ? 》
「隆成に!?」
《 まぁ…そのお姉ちゃんにもアンタ、すっごい嫌われるし… 》
「」
…なんだろうか…?
身に覚え何てある訳ないのだけど…なぜ嫌われてるんだろ…。
未来の俺…そんなんで、女系家族の中でやっていけるんだろうか?
見える…次女を甘やかす、未来の俺が…。
ガンバレ!!
超!! ガンバレ!!!
「隆史君?」
「……ぁ、はい?」
「あら、ひどい顔色ですねぇ? 隆史さんどうされました?」
みほも漸く自分を取り戻した様で、沙織さん達と一緒に俺の方へ来てくれた。
ちょっと憔悴した様な面でも、してしまっていたのか…心配させてしまったなぁ…。
「いえ…どうにも、未来の俺って…娘には嫌われるようで…」
はい、結構ショックでした。
それでまぁ…うん…思う所がございまして…。
「「「 …… 」」」アー…
三人共なんで今、納得した様な顔したの!?
「ま…まぁ…赤ちゃんなら、大丈夫だよ。隆史君も抱っこしてみる?」
「……え」
「首が座ってないから、こうやって…」
有無を言わさない様な、キラッキラな目をして…そんな提案をされた。
正直…やだ。
めっちゃくちゃ怖い!
落としたらどうしようとか、そんなマイナス思考しか生れない!!
「いっ…いや…遠慮しと…」
「ほらほらぁ!! お父さんでしょ!?」
「ぇ…えぁ!?」
俺の横に付き、抱き方をレクチャーしてくれる沙織さん。
彼女の手が、子供の頭などに添える、俺の手を誘導してくれた。
というか、なんで赤ちゃんの抱き方、知ってんの?
…あの…
この位の子供を抱っこするのって…本当に、すげぇ怖いんですど!?
「あっ! 沙織さん!! 私も抱っこしたいです!」
「私もしてみたい…かな?」
「武部先輩! 私もいいですか!?」
「私も是非、お願いしたい」
女性陣が集まってきましたね…。
その赤子を抱きたいと、はしゃぎ出しました。
まほちゃんまで、顔を赤くして…抱っこの順番に並んでるし…。
「 …ゥァ…… 」
小さな声が聞こえた。
あぁそうだ。
いつの間にか、沙織さんに導かれ…未来とはいえ、自身の赤子を抱き上げていた。
……。
目を閉じている…。
鼻が小さい…目が小さい……指が小さい…………。
「ゥ……ア…アァ……」
なに!? なに!? なんか呻きだした!!
怖い! 赤子なんて謎過ぎて、どうしたらいいか分からない!!
「ァ……ア…アア゜ア゜ア゜ア゜ァァァ!!!!」
「え!? ぁあっ!? あの!!」
突然泣き出した…すげぇ泣き出した!!
「ア゜ーーーー!!!」
「!!??」
「あらま」
いや! そんなキョトーンとした表情で見てないでくださいよ!!
「どうしたら!? どうしたらいいんですか!!??」
「はいはい…」
そう言いながら、優しくまた沙織さんはその、あか…いや、愛織を俺の腕から抱き上げた。
手つきが滅茶苦茶、慣れてる!!
「よしよ~し」
「ァ……」
……。
腕から出たら…ピタッと泣き止んだ…。
沙織さんに抱かれたからではない。
俺の腕から 出 た ら 泣き止んだのだ。
「……」
…ま…まさかな…。
「あら…どうしたんだろ? あっさり泣き止んだ」
「……」
スッと手を、試しに愛織の前に出して見た。
その手を見た…見たよな? 目なんて殆ど開いていないのに!
「……ア゜ア゜ア゜ア゜ァァァ!!!!」
「」
「えっ!? なに!? どうしたの!?」
スッ…と、出したてを下ろした。
「ァ…………」
…泣き止んだ。
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《 アンタ…なんで、体育座りなんてしてんのよ 》
「……」
思いの外…堪えた…。
そうかぁ…赤子にまで嫌われてんだぁ…俺。
「…むっ。これで…いいのか?」
「そうです、そうです…それで指を…」
「……」
「ぉぉ…」
《 向こうは、随分と楽しそうね… 》
「……」
大丈夫…うん…。
悔しくなんてない…。
俺の後…順番待ちをしていた、他の女性陣が愛織を抱っこし始めた。
うん…誰に抱っこされても、愛織は泣かなかった…。
澤さんが、抱っこした時なんかも思ったが…あの子は人懐っこい印象がする。
……俺以外に…だけどな。
《 ま…まぁ! ほら! アンタ、次女には好かれてんだからさぁ! 》
駄女神に気を使われた…。
《 んじゃ、恒例の将来のお話ね! …まず、武部 沙織さんは……あ~らま。タレントになってる 》
「タレントォ!?」
《 んで、アンタ…尾形 隆史は…飲食店開いてるわね…あぁなる程 》
「…沙織さん……ついに、芸人さんに…ダメですよ? 女を捨てては…」
「…華。芸人じゃない。タレント!!」
「違うんですか?」
「違うわよ!!」
「あはは…」
《 夫婦でレストラン経営……んで、武部さんは、料理研究科って名目でタレント活動もしている…っと、んな感じ 》
「あぁ~なるほどぉ。沙織さんお料理上手ですからね。……芸人さんでは、ないのですねぇ」
「何を残念がってるの!!」
…この世界線の…赤子にすら嫌われている俺は……髪はあるのだろうか?
《 そこの男と一緒にって事で……まぁ順風満帆って感じね…。あれ? なにアンタ…支店の申し出、断ってんの? 》
「…なんだ? そこまで売上あんの?」
それなりに成功してんのか?
《 …断った理由がまた、すごいわね… 》
「隆史君…」
未来の俺の選択…。
いや…まぁ、それは何となく分かるな。
「魚の目」のおやっさんと同じだ。
《 「分不相応。そんな事に時間を割く位なら、嫁さんとイチャコラしてたい」…って… 》
「「「「「 」」」」」
「あ~…俺なら、言いそうだな」
…欲は出さない。
普通の生活が、手に入ったのならば、それを長く、荒波小波…何もなく続けて行きたい…それだけ。
事業拡大をすれば、それだけ忙しくなる。
俺に成り上がるとか…儲けたいとか…そんな野望は、一切無いのだから…。
「タタタアぁl;あがおp!!??」
「…日本語でお願いします」
沙織さんが、壊れた…。
《 つまんない男ねぇ…向上心の欠片もないの? 》
「無いな。俺は仕事より、家族の時間を優先させたい」
「カゾっ!?」
《 はっ! そういう男に限って、年取ると外に刺激を求めて、簡単に浮気とかすんのよ! 》
見てきたかの様に言うなぁ…。
《 男なんてそんなもんよ! 変に保守的な奴程、外に女囲ってたりするもんなのよ!! 》
「お前…過去になんかあったんか?」
《 奥さんが同い年! 4、50にでもなってみなさい!? 絶対若い女に…「ちょっと待て」 》
変にヒートアップしてきたな…。
あぁ女神とか神様系列って、結構関係がエグいの多いしなぁ…。
ギリシャ神話なんて、なんでこのクズが祀られてんの? って思う奴の宝庫だしな。
ま、なんかあったんだろう…察してやるからさぁ…。
俺をソレに巻き込むなよ…。
また変な誤解を生みそうなので、ハッキリと言っておこうか。
「俺は4、50どころか、80超えても、嫁さんとイチャコラしていられるだろうと、自身はあるぞ? というかしたい。」
「「「「「 !? 」」」」」
あれ?
女性陣が固まった…。
「結婚なんてするんだ。当然だろ? それこそ死ぬまで一緒だな」
「「「「「 」」」」」
《 ア…アンタ。よくもまぁ……この娘達の前で、んな事ハッキリと言えるわね…… 》
「は? んじゃ、他の誰の前で、言えばいいんだよ」
《 …誰の前って 》
「嫁さんに、なるかも知れない女性がいるなら、その女性に自信を持って、こういう事は言ってやらなきゃならんだろ?」
「「「「「 」」」」」
…待て。
ちょっと待て!
今、俺は何を言った!?
何を口走った!?
《 …アンタ…ドヤ顔で…。意味分かって言ってんの? 》
「な…なにがよ?」
《 軽く言ってるけど「将来嫁さんに、なるかも知れない女性」相手に今、何て事言ったのよ…その相手全員に… 》
「……」
《 それって…ほぼ、状況的にプロポーズと一緒よ? 言い換えれば、…死ぬまで、貴女を愛しますって事よ? 》
「………………」
顔を抑えた…。
自分の手から、自分の顔の温度が伝わってくる…。
あっつい
忘れてた…本音が、出やすくなってるって事を…。
しかもこの世界って、思った事言っちゃう俺と、相性が滅茶苦茶悪いんじゃ…。
《 …なる程……これがタラシ殿。この場でまとめて、未来の最終フラグまで、回収しやがったわね 》
「いや、ちょっと待て…待ってください」
「jばやおだsdkf;あjkld」
沙織さん!?
ほぼ全員が、顔を両手で押さえてその場にしゃがみこんでしまっている。
あらま。耳まで真っ赤だよ…みぽりん。
澤さんまで…。
あ、華さんは、微笑を浮かべていつもの通り…………じゃないな。
微振動を繰り返してますね…。
あぁ!…まほちゃんまで!?
いつものクールビューティーは、どこ行きました!?
《 ……この、クソ女っタカシが 》
くっそ駄女神!!
その呼ばれ方は、初めてだ!!
《 はいは~い。では、次行きますね~ 》
…声が投げやりだ…。
《 五十鈴 華さん、西住 まほさん。ほぼ、前の世界と一緒ね~… 》
あっ! みんな聞いてない!!
いつの間にか、沙織さんを除く全員が、体育座りしてる!!!
沙織さんは、子供に向かって、すっごい笑いかけてる!!
《 あ、ちなみに……澤 梓さんは、どの世界線でも普通に専業主婦ね…ごめんね? 忘れてたわ! 》
うん! 多分大丈夫!
今度はなんか、全員がブツブツ言い出したから! 聞いてないと思うから!
《 あらあら、ウフフ…西住 みほさんは、お花屋さんかぁ… 》
あ…そういや昔、一度やってみたいって言ってたな…。
でも、なんでだろう? …ただ、普通に花屋になったと、思えないのは何でだろう!?
まっ。みんな、聞いてねぇけど…。
《 …… 》
「……」
《 どうすんのよ、アンタ。…この状況 》
「…………」
どうするって…どうしたら、いいんだろう?
下手に近づくと、今度は更におかしくなりそうだし…。
「 ア゜ア゜ア゜ァァァ!! 」
「!!」
突然、あの赤子の泣き声が響いた。
なに!? 今度は俺近づいてないよ!?
沙織さんが、その泣き出した赤ちゃんを、腕の中であやしている。
その泣き声で、みんなが正気に戻ったのか、立ち上がって沙織さんへと近づいていく。
泣きじゃくっている子供を前にしても、特に焦ることなく冷静に対処している沙織さん…。
すげぇ…。
俺なら絶対にパニックになってると、確信できる!! …情けないけどね。
「沙織さん、赤ちゃんの扱いが、随分と手慣れていますね」
「昔、近所の子とか…親戚の子とか預かったりした事あってさ。慣れちゃったんだぁ」
「へぇ~」
軽口をしながら、体をさすり…何かを確かめている。
「オシメ…じゃないか。なら…お腹空いたのかな?」
「あら」
そんな俺は、一定の距離を保って彼女達を見守っている。
うん! 赤子! 怖い!!
こんな対処ができない相手は、恐怖以外の何者でもない!!
「隆史君~!」
沙織さんが、俺を呼んだ。
その声と一緒に、全員がこちらを振り向く。
…すげぇ。
全員、さっきまでの顔じゃなくなってる…。
すでにその赤子の心配しかしていない様な顔…つか、怖い!
「えっ!? あ、はい!! なんでしょう!?」
「女神様に、赤ちゃんのご飯ってあるか聞いてくれる?」
「…え。赤ちゃんのご飯?」
「そうそう」
夢の中でもお腹って空くのか、赤子。
「えっと…駄女神」
《 …なによ。クソ女っ隆史 》
「……」
うん、我慢だ。
「赤ちゃんのご飯っての有る?」
《 ある訳ないでしょ… 》
「エリス様」
《 なんですか? 尾形 タラシさん? 》
「……」
…うん、我慢…だっ…。
「赤ちゃんのご飯ってあります?」
《 ありますよ? 》
「あ、流石女神様」
《 はぁ!? なんであんのよ!! 》
《 なんでって…赤ちゃんが召喚された時点で、用意しましたけど? あちらの世界の粉ミ… 》
《 パットからは、出ないわよ!? そんな事も知らないのかしらぁ? 》
《 なあっ!!! 》
《 上げ底した所で、出ないものは出ないんですぅ。残念だったわねぇ? 》
…あの駄女神は、エリス様の邪魔したいだけだな。
もはや、どうでもいいから、そのご飯を頂けないでしょうか?
「……」
まだ虚しく、赤子の泣き声が響いている。
流石に可哀想だし…早くしてくれねぇかなぁ。
《 まだ、現場にいるあの子達の方が、現実味あるわよ! 》
《 さっ! 流石に同性とはいえ、セクハラですよ!! 》
赤ちゃんのご飯…ねぇ…。
「すごい事言う、女神様ですね…」
「ご飯あるなら、早くしてくれないかなぁ」
現場に…ねぇ……。
………
………………。
「え…なに?」
沙織さんと目が合う。
……。
なるほど。
納 得 !!
「 隆 史 君 」
みほ!?
「なんで、沙織さんを見ているのかなぁ?♪」
なんで、そんなに笑顔なんでしょう!?
「違うぞ、みほ」
まほちゃん!?
「 あの娘の ど こ を見ている?」
「」
あの…何故みんさん、近寄ってくるんでしょう!?
澤さんまで!?
は……華……さ……。
詰め寄られる中、その空間にまだ言い争いする、女神達の声が響いている。
もういいから、さっさと持ってきて!!
それでこの状況が収まるんだから!!
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「いや…完成させて、哺乳瓶まで用意してくれているとは、思わなかった…」
《 当然よ! そのくらい…「さすがエリス様」 》
《 …… 》
なに、自分の手柄にしようとしてんだコイツは。
子供達の様に、気がついたら哺乳瓶が、地面に置かれていた。
大体こういうモノは、熱すぎたり温すぎたりで、一度失敗するのがお約束みたいなモノなのだが、普通に成功品を頂きました。
ま、そんなお約束はしないだろ…曲がりなりにも神様らしいし。
《 ねぇ…流石にそろそろ、次に行きたいんだけど? 》
「……」
ただ哺乳瓶は、まだあの子には早かったみたいで、沙織さんのハンカチに、ミルクを染みこませて吸わせていた。
またその姿を見て、可愛い可愛いを連呼している女性陣…。
円陣を組むように全員で、見守っているな…うん。
だから今回、俺…蚊帳の外…。
《 ねぇ! 聞いてるの!? 》
「聞いちゃいるけどな……」
あの円陣の中に割り込む勇気は、俺にはない!!
邪魔すると睨まれそうだし…。
《 なっさけない男ねぇ… 》
何かを察したのか…侮蔑の声が響く…。
うるせぇな! 俺だってそう思うよ!!
《 はぁ……貴女達。そろそろ時間よ 》
俺には無理だと、さっさと諦めたのか、駄女神自信で声をかけた。
…最初からそうすりゃいいのに…。
「あら…ちょっと残念ですねぇ」
なぜだろう…すっごい惜しんでいる華さん。
というか、みんな。
いくつかの不満声と、ため息が聞こえた。
「じゃあ、隆史君」
「あ、はい」
沙織さんが手招きで俺を呼んだ。
その手招きに従い、またその赤子の前に誘導される。
「元々夢の中だけど…今は更にその夢の中…だから、多分泣かれないよ?」
うん…腹一杯になったのか、完全に寝ている。
ぐ…。
……現実味が無いのか有るのか…すっごい居たたまれない…。
他の皆は、すでに割り切っているのか…素直にこの子を可愛がっていたな。
その娘の手を、すでに握っていた沙織さん。
まぁ…後は俺が、この子の手を握れば終わりか…。
そのまま…手を伸ばす。
「…隆史君って、子供苦手?」
「……」
その手が、沙織さんの呼びかけで止まった。
「苦手ではないけど…怖い……」
「怖いって…」
「ある程度、成長した後ならまぁ…大丈夫だけど、この位の赤ちゃんは、どうしたら良いのか分からないから…その……怖い」
何か意外だったのだろうか?
なんかクスクスと、笑いだした。
「まー…うん。こういうのはね、その内に慣れるよ?」
「そういうモノでしょうか?」
「……そういうモノだよ」
腰を下ろして、その赤ちゃんの手を握る。
小さすぎて、上から被せるような形になってしまったけどな。
握った瞬間に、また俺達の体が発光した。
眠る娘…愛織。
ぬぁ…なんか…今更、なんとも言い得ない感情が湧いてきた。
もう少し、見ておけば良かったかな…。
「みぽりんの手前…やっぱり、いい辛かったけどね?」
発光する沙織さん…。
気が付けば彼女の目は、愛織ではなく、俺を見ていた。
「こういった未来があるのは、嬉しかったの…」
何か照れくさそうに言い切った。
「すっごく!!」
真正面から見た彼女もまた、麻子と同じく笑っていた。
娘を抱いたまま…満面の笑みで…光と共に消えていった。
閲覧ありがとうございました
…本当は二人書くつもりが…文字数伸び伸び…まだ続きそう…。
というか、何? 今回の話…書いていてめちゃくちゃ恥ずかしかった…
ありがとうございました