転生者は平穏を望む   作:白山葵

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はい、お茶会書こうかと思ったんですけど。
愛してるゲーム、本編に絡ませようと思ったのでちゃんとした劇場版編になりました。
また嘘つきました! すいません!


劇場版編
第01話 新生活です!


無機質な廊下。

人によっては、ごく普通の病院廊下。

人によっては、ひどく暗い病院廊下。

 

警察病院。

 

面会時間が過ぎ、外で待っているであろう秘書の元へ向かう。

私の足音だけが、廊下を鳴らしている。

ちょっとこんな夜に面会だなんて、真面目にお仕事している方達には、ご迷惑でしたかね?

ですが、まぁ勘弁してください。

忙しいのですよ、私は。

 

ここの所、時間に追われる事が増えてきました。

 

しかしまぁ…面会時間が、5分…忙しないですね。

まぁ? 本来ならば、容疑者である彼への面会なんて、本来は不可能でしょうが…。

随分あっさりと許可が、でましたねぇ。

あの病室にも警察官同行でしたが、まぁ有益な5分でしたねぇ。

彼らも何かしら情報が欲しいのでしょうか?

そうですよねぇ? 下手したら殺人幇助に当たる訳ですからねぇ。

 

さて。

 

ロビーに到着し、玄関を出るとタクシーの様に、私を出迎えてくれる真っ黒な公用車。

見計らっていたかの様なタイミングですね。

 

いつまで経っても開かない車のドア。

 

「……」

 

あぁはいはい。

自分で開けますよぉ。

 

「…私、聞いてませんよ? 今回の事」

 

「今回? どの事でしょうか?」

 

車内へ入り、腰を落ち着け、車のドアを閉めた瞬間。

口を尖らせた秘書から恨み言を言われました。

いやぁ…そういった仕草も相まって…、成人女性に見えないですねぇ、相変わらず。

 

「こんな場所に用があるなんて…次の予定に間に合わなくなるじゃないですか!」

 

「相変わらず、囂しいというか、なんというか…」

 

そんな事ですから、結婚相手の一人も見つか…。

 

あぁはいはい。セクハラになりますね。

声に出していないのですから、良いではないですか。

 

「はぁ…なんでまた、あんな男を見に行ったんですか?」

 

見に行った。

会いに行ったと言わない辺り、この娘も相当あの狒爺がお嫌いですね。

 

「あの日の接待で、切れたんでしょう? 病状を心配する様な、間柄でもないでしょうし…」

 

「いやぁ…貴女、結構冷たい事を仰りますね。一応、心配しましたよぉ? ですからの面会ですしね」

 

えぇ…心配しました。

 

本当に意識が無いのか。

その確認。いやぁ…見事に意識がありませんでしたね。

流石にあそこで、意識が無いフリなんて、出来ませんでしょうし。

 

死んでいてくれたら、非常に助かったのですけどねぇ…。

私がしたのは、情報を与えていた、だけですからねぇ。

そんな事でも、あの爺の口から漏らされでもされたら、少々面倒臭い。

 

勝手に揉めて、両者共倒れ…それが、理想でしたのに。

 

誰か、親切な方が、あの男に繋がれた機材の一つでも、配線引っこ抜いてくれませんかねぇ?

 

……。

 

……………あぁ、いましたね。

 

あの病院にもう一人。

親切な方か、どうかは知りませんが、黙秘を貫いているようで…。

怪我したお陰で、まだあの場所にいられる様ですが…ただのチンピラですし…使えますかね?

いや、しかしここで変に動いて…こんな小さな事で…

 

「…あの局長」

 

「ん…んん? はい、なんでしょう?」

 

「今からの会議って、本来なら学園艦、廃艦の為の打ち合わせですよね? 大洗学園の大会優勝でこの話も無くなって…実質謝罪に向かうような…」

 

「何を言っているのですか?」

 

文科省上層部の連中は、「西住 みほ」に、目をつけた。

まぁ、そりゃそうでしょう。

未経験者が、まともに戦車戦ができるようになるまで…約半年程でしたか?それを、わずか一カ月程度で戦力として動かした。

しかもあの戦車、それでも素人集団の寄せ集めで、並居る強豪を牛蒡抜き。

最終的には、自身のお家。黒森峰…西住流すら撃破し…優勝。

その指揮能力、統率力から何でもそうですけど…まぁ、これからの事を考えれば、喉から手が出る程欲しいでしょうね。

 

「……」

 

何を浮かない顔を…あぁ~…なんですか?

この子も、あんな与太話をまともに受けていたのでしょうか?

 

「本来なら? いえいえ。 廃艦の為の打ち合わせ、そのモノですよ?」

 

「え?」

 

「貴女いい加減、私のやり方くらい覚えてほしいものですよ?」

 

何を意外な顔をしているのですか?

 

「たかが、女子高生達の口約束? 私が守るはず無いじゃないですか…あぁ、失礼。口約束は守りますよ?」

 

えぇ守ります、守ります。約束ですからねぇ。

 

…そう。シテイレバナ。

 

「え…あの…でも……」

 

「何です?」

 

「なら放っておけば良かったじゃないですか…なんでアソコまで…」

 

何を愕然と…。

教育局ですけど…貴女そんな子供思いの性格でしたか?

なんでしょうか? あの子達に、感化でもされましたか?

 

「何がです? あぁ…大洗の生徒達ですか? 最後になるんです…夏の思い出作りくらいは、させてあげたいじゃないですかぁ」

 

キラキラに光輝く、慈悲の笑顔…で、答えた所で…。

 

「これも教育デスヨ? それに教育長局長の私ですよ? それが全て、子供達の為です。彼女達の将来を思えばこそですよぉ」

 

あ~…その目は、信じてませんねぇ。

 

「で…では、尾形 隆史の事は…。あんな犯罪スレスレの事までして…一介の高校生にする事じゃありませんでしたよ!」

 

あぁ…あのガキ。

 

「犯罪? 人聞きの悪い事を言わないで下さいね? あの件については私達は、何も知らされていません」

 

「え…?」

 

車が静かに止まった。

 

「そうそう…あの男が意識不明だなんて、つい最近まで知りませんでしたよねぇ? ですから、ただあの男の指示に、私は従っていたってだけですよぉ?」

 

「……」

 

「それが結果的に、犯罪行為に加担させられていたっていう…むしろ私達も被害者なのですからぁ…気にする必要はありません」

 

「っ!?」

 

目的の場所…会合という名の接待会場。

今からの事を考えると、面倒臭いったらないですねぇ。

しかしまぁ、私に取ってはチャンス以外の何物でもなくなりました。

そう考えると少々、楽しみになってきました。

 

「私にとっても良い方向へ転がっていますし…。逆に欲しくなりました」

 

「なにがですか…?」

 

「これから、この戦車道界隈は、騒がしくなりますよぉ? ですから、私も欲しいのですよぉ…潤滑油って奴が」

 

「潤滑油…?」

 

初めは目障りでした。

えぇ、それこそ夏のヤブ蚊の様にブンブンと。

しかし…あのたかが、チンピラ風情の事だけで、西住、島田両家を動かし…。

 

「…いいですか? これは…これからは、ビジネスの話になっていきますよ?」

 

「ビジネス?」

 

次世代のスター選手との濃い繋がりをも、持っている。

それこそ、国内プロの初代選手となりうる娘達と。

 

…いいですねぇ。

 

おまけに…上から目を付けられた「西住 みほ」選手の恋人。

今はまだ、飛び級していたとしても、お子様ですが…島田流次期家元の天才少女すら、あの男の為に労を惜しまない。

 

行く行くの将来を考えれば…。

 

選択さえ間違はなければ……。

 

まぁ、それはおまけの様なモノですがねぇ。

 

なんにせよ、上からのお達しの第一目的は「西住 みほ」の将来の確保。

あの男も同時に確保できれば、安泰ですかねぇ。

その逆でも、スムーズにできそうですねぇ。

 

 

「いやぁ…楽しみですねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

うん…はい。

帰ってきました、我がNEW自宅。

 

和風家屋というだけあって、まぁ…引き戸の玄関。

開けた瞬間、昨日までとは別のお宅になっておりました。

 

うん…下駄箱の上がさ…やたらと豪華になってるの。

 

花で。

 

あと、ボコで。

 

一つ大きな花瓶に、綺麗に生けられた花。

それはいい。

その下に、小さなボコの置物が、ズラァ…っと並んでるんだぁ。

 

ふぁんしーですね。

 

これって、あれだ。

前にコンビニの前にあったガチャで、みほが無表情でひたすら回していた奴だ。

いやぁ…コンビニの前に、ガチャが設置されてるってあんまり見ないんだけどね。

何故か、大洗には有るんだよなぁ…駄菓子屋とかならよく見るけど…。

 

「あ、やっぱり隆史さん。お帰りになられましたか」

 

玄関真正面にある、二階に続く階段から華さんが下りてきた。

 

「はい、少し遅くなりましたけど…みんなは?」

 

「違います!」

 

「…え」

 

「まず初めに言う事が、あると思うのですけど?」

 

…え? え? なんだろう…。

 

「ここは、どなたのお宅ですか?」

 

あ~…あぁ。

そういう…結構こだわる方なんですかね? この人は。

 

「た…ただいま」

 

「はい! お帰りなさい♪」

 

笑顔で言われた…。

なんだろうか…久しぶりに、こういったやり取りが、妙に心地良い…。

 

「みほさんより、早く言えました…ウフフ…フ…フ…」

 

「……」

 

はい、すこぶる良い笑顔で、つぶやいてますね!

そのまま、華さんに促される様に、しほさんの説教していた広間へ。

はい、一番奥の一番広い和室。

そこにみんな集まっていた。

 

「あ、隆史君、お…おかぇ…」

 

みぽりん、顔赤いっすよ?

普通に言ってください。逆に恥ずかしい。

 

「はぁ…やっと帰ってきたな書記」

 

「あ~隆史君、お帰りぃ」

 

「隆史殿、ご帰還ですね」

 

はい、皆さんただいま。

なんだろうか…このハーレム状態。

 

……。

 

…………。

 

やめよう…考えるのは…意識できるだけしない様にしよう。

優花里も沙織さんも、今は普通に話しかけてくれるし…まぁみほの事もあるだろうから。

うん…普通に。

 

「で? どうでした?」

 

「ん? なにが?」

 

優花里がすっごい笑顔で、睨んでくる。

…器用な事するなぁ…。

 

 

「    紐    」

 

 

「……」

 

 

「まさぁか、私だけ、被害者って事は…アリエマセンヨネ?」

 

と…飛ばすなぁ…。

 

「ま…まぁ…はい。うん…何度か死を意識しましたけど…」

 

「……」

 

「…写真は?」

 

「……業者の方が持って行きました」

 

嘘です!!

 

「……」

 

「……」

 

「…なぁら、良いですけど」

 

な…なに!? え!? 優花里さん、そんな…顔……目っ!? え!?

今までの態度と、ちょっと違いませんか!?

 

「えっ…とっ!!! みんな、手伝いありがとな!? 飯食った!?」

 

よし! ごまかそう! 勢いで別話題に!!

一応、メールでは今の…15時位にはなりそうだと知らせておいたのだけど…。

結局、ホテル出たのが14時頃だったしな…。

 

「はい、皆さんで済ませました。大方、片付けも済みましたし…今は休憩中ですね」

 

「…隆史君、これから大変だよ? ……華の食事は」

 

「さっ! 沙織さん!!」

 

あ~らま。赤くなっちゃって。

まぁ、気にする事無いのにな。

軍資金はあるから…あのクソ親父から貰ったって言わない方がいいな。

 

「沢山食べるのは、健康な証拠ですよ。気にしませんよ? 食べてる華さん、見てるの好きですし」

 

「すっ!?」

 

「「「「……」」」」

 

あ…あれ?

 

「で…で。今、どんな状況? みほ?」

 

「…部屋割り決めてるよ」

 

「…タラシ殿は、一階の和室でよろしいって聞いてましたし…、西住殿と五十鈴殿の部屋割りだけです」

 

「ふっ…ふ~ん…」

 

な…なんだ?

 

えっと…2階の部屋は、全部で3つ。

2階は女子で固め、1階は俺と言う事で、ほぼ決定。玄関からすぐ近くの和室…。

おじいちゃん、おばあちゃん部屋っぽいなぁ…感覚的に…。

ちなみに1階は、この広間含め、3部屋。

全て和室だね。一番奥の大広間の横の和室は、客間扱いで良いだろう。

 

…多分、この3人他…絶対に何人か来そうだしね。

まぁ女性の場合は、二階の空き部屋を客間あつか……い…。

 

「あぁ、そうだ。言い忘れてた」

 

「なに? タラシ君」

 

……。

 

沙織さんにすげぇ自然に、笑顔で言われた。

ま…まぁいいや…。

 

「この家ってさ…空き部屋あるだろ?」

 

「あるね」

 

「他に住みたいって人いたら、住まわせる事って可能かなぁ? って思ってさ」

 

「「「「「 …… 」」」」」

 

「へ…変な意味じゃなく!! しほさんに、ここの家賃聞いたら4人だと綺麗に折半できそうだったから!!」

 

すげぇ、疑いの目で見られてますね!

 

「…まぁ…人に…よるかな」

 

「そ…そうですね……みほさんが、宜しければ…私は……」

 

あ…なんか、くらい顔…。

いやさ! ある程度人数いた方が、健全…

 

「タラシ殿は、おバカですねぇ…」

「書記は、本当に一度死んだほうが良いと思うな」

「はぁ…」

 

……。

 

「ちなみに…誰? どこの女の子?」

 

「お…限定かよ!」

 

「違うの?」

 

「違うわ!!」

 

すっごい、ハッキリ言われた…。

 

「いや…バランス取るために…そうだな…中村か林田あた「「 却下 」」」

 

…。

 

みほと華さんの声が、ハモった…。

 

「無いです。アリエマセン。はい、この話は終了です」

「無いですね。男性とか余計にアリエマセン。はい、この話は終了です」

 

「……」

 

めっちゃ目を見開いてる…。

女の子じゃダメで、男でもダメって…。

いや、男友達…俺、他に林田くらいしかいないけど…。

 

 

「あの…「「 終了です!!! 」」」

 

「いや…会長から、朝言われてさ。なんか余りにも不安だから、あと一人は、住まわせる様にって…」

 

「「 …… 」」

 

「3人じゃほぼ同棲だから、4人なら同居だって認めたげる! って、引きつった笑みで言われたのよ」

 

どういう違いかは、良くわかりませんがね。

 

「あぁ…あれじゃない? 昨日の華の…その…生徒会室での話…」

 

「……ぁ」

 

なんだ?

沙織さんの思い出したかの様な声に、華さんが…。

 

「まぁ、会長の事だからねぇ…みぽりんと華…と、隆史君かぁ…。そりゃ心配にもなるでしょうよ…」

 

「…………チッ」

 

……舌打ちをした。

 

みほは、その事は聞いてないのか、良くわからないって顔をしている。

俺も良くわからな……い……あっ。

 

あれか!? 宣戦布告したってのか!?

 

「はぁぁ~なっ! 余計な事したねっ!?♪」

 

「……」

 

なぜ沙織さんが嬉しそうなのだろう…。

そして、なぜ華さんは悔しそうなのだろう?

 

「じゃあ、4人目は、ほぼ決まりじゃない?」

 

「「「「「 え!? 」」」」」

 

なんだ? 流れるように、沙織さんが陣頭指揮を執り始めた。

決まり? え?

 

「 麻子 」

 

「っ!? 私か!?」

 

「そうそう。朝も起こしてくれるだろうし…3食ついてくるよぉ?」

 

「……」

 

え…ま…まぁ、飯くらいなら喜んで作るけど…。

 

「お…男っ!! しかも書記と住めというのか!? この、私に!!」

 

「大丈夫よぉ、みぽりんと華もいるし…ねぇ?」

 

「え…ま……まぁ、麻子さんなら…」

 

「そうですね…麻子さんなら…まぁ…」

 

あ…あれ?

俺には聞いてくれないの? え?

 

「ほらぁ! 今住んでる所の家賃も上がったって嘆いてたじゃない。仕送りがどうのって!」

 

「そ…それはそうだが…」

 

「ちなみに隆史君。ここの家賃っていくら?」

 

……。

い…言っていい物だろうか?

まぁ…嘘ついても仕方ないし…。

 

「…4万」

 

「「「「「 …… 」」」」」 

 

「え…え? あぁっ! びっくりした。一人、4万って事…だよね?」

 

まぁそりゃ疑うだろう。

一人4万なら、そりゃ納得するだろう、逆に高いくらいだ。

 

が。

 

「いや、総額4万」

 

「「「「「 …… 」」」」」

 

「ほ…ほらぁ! ヨカッタじゃない麻子! 家賃1万だよ? 十分やっすいよぉ?」

 

「じ…事故物件じゃないか!! お化け屋敷だろ!? そうだろ!?」

 

「…ち…違うよ…タブン。みぽりんのお母さんが用意したんだし…その為じゃない?」

 

「そ…そうかもしれないが…」

 

「掃除していた時も、御札とか貼ってなかったでしょ?」

 

「……貼ってあったら、私はすでにこの家にはいない」

 

うん。

 

ごめん、マコニャン。

 

ハッキリ言おう。

 

ここ事故物件。

 

正直に言うと…この部屋以外に、気配が1つ。

 

すっごい濃いのが居る。

 

主に1階をさっきから彷徨いている。

悪意は感じないから、大丈夫だと思うけど…。

 

あれだろうな。

俺って転生した関係もあって、そういうのが感じやすいのだろう。

 

魂がブレているっていうのか…だからだろうか? 

そういうのに敏感な動物の類に、頗る嫌われる。

 

犬…好きなのに…。

 

前みほに、慣れているって言ったのは、その事ですね。

 

…口には絶対に出さないけど。

俺ってば、霊感あるんだぜ!? って厨二病患者っぽいしね。

 

まぁ、これもどこかに原因あるから、それをなんとかすれば…庭先かなぁ。

 

「そ…それに…おばぁ! そうだ! おばぁが、なんて言うか!!」

 

「……」

 

あ、沙織さんが徐に携帯電話を取り出した。

もはや傍観するしかない、我々。

 

「な…何してる、沙織…まさか…おい!」

 

喋っているのは、もはや目の前の二人のみ。

 

「あ、こんにちは。沙織です。お元気ですかぁ?」

 

「!?」

 

あ~…。

 

喋ってますねぇ…。

 

あ~~……。

 

事情を包み隠さず言ってますねぇ…。

 

 

「 OKだってぇ!! 」

 

「なぁぁぁぁぁ!!??」

 

な…なに? え? どうしたの沙織さん!?

えっ!?

 

「大丈夫だよ…麻子」

 

「待てっ! 沙織、携帯を…おばぁ!? おばぁ!!」

 

沙織さんの携帯を奪い取って、電話先のあの婆さんに叫んでいるマコニャン。

顔が…赤い…。

 

「みぽりんに迷惑掛けないように……私も…起こしに、行ってアゲルカラァ…」

 

そのマコニャンの背中に手を置いて…囁くようにマコニャンに声を掛けた。

 

「「「「 !? 」」」」

 

なんだ…笑い掛けているのだろうが…怖い…なんか怖い!!

 

「いいよねッ!? 隆史君!!」

 

「えっ!? あ~…うん、そりゃ勿論…」

 

「ほらぁ!!」

 

すっごい輝く笑顔になりましたね…。

 

「…それが…狙いですか…沙織さん」

「武部殿…昨日の今日でなにが……」

 

なんか、お二方が若干おかしいですね。

 

「どうしたんだろ? 沙織さん…ちょっと変よね? 隆史君」

 

「だなぁ…何を必死になってんだろな?」

 

「ねぇ?」

 

「…余り言いたくはありませんが……西住殿も結構、鈍感ですよね」

「そうですねぇ…私はやりやすくは有りますが…ここまでだと、良心が少し痛みます…」

 

何故か、二人してこちらを見てくる。

え?

 

「おばぁ!? 何!? 負けるな!? なにがぁ!? ひまっ……ごっぉぉ!! 切ったぁあ!!」

 

「はい、けってーーい!」

 

……。

 

家主を置いて、話が進んでいく。

さて…。

 

俺は俺の、宛てがわれた部屋を整理しに……逃げよう。

 

 

 

 

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夕飯を振る舞い。

みんなが帰った後、俺は部屋で整理を続けていた。

まずはノートパソコンを使用可能状態にまでセッティング。

まぁ、配線を繋ぐだけだけどな。

ネットには、まだ契約していないので繋がれていない。

 

 

現在、夜の10時。

 

 

…さて、整理しよう。

 

 

マコニャンは結局、同居を渋々了承した。

何か華さんが、みんなに一言呟いた時点で、マコニャン以外の全員が同居を彼女に進め出したのが奇妙だったけど…まぁいいや。

彼女の引越しは、流石に後日。

 

それまでには…アレを何とかしてやるか。

 

はい、飯当番は基本的に週置きに変更。

俺とみほ。

華さんも作ると言ってくれたが…沙織さんの猛反対にあい断念。

うん…あれだ。皆まで聞くなと言われたから察しよう。

 

洗濯は、まとめてでも良いそうだけど、不可侵領域とやらが有るBOXができた。

はい、察しましょう。

炊事洗濯は、大体俺とみほは、出来るのだけど、華さんが苦手な様で…俺がなんか教えるって事で、俺の当番とセットになった。

若干、みほの頬が膨らんだけど、まぁいいだろ。

 

風呂は…俺が基本的に最後。

 

入った出たは、俺に報告が来るようになっている。

華さんが入る時は、大体みほがガードするから安心して! って、華さんに言っていたのが若干傷つく。

みほの時は…うん…覗かないよ?

というか、振りなのか? と、勘ぐる位に言われるので、なんかもう…どうでも良くなったから任せる…の一言で終了。

細かい取り決めは、追々だな。

 

…さて。

 

PCに熱が入った。

 

ファイルを開くと、画像がずらぁ…って並ぶ。

うん…まずは、優花里からだな。

 

さぁ…この撮影しゃ……

 

 

「隆史君!!!」

 

俺の部屋。

襖がスパーンと開かれた。

 

うん…目もくれないで…作業中ですよぉ…と、冷静に……操作……操作…。

もう少し、寝静まってからやるべきだったな。……うん。そうさぁぁ。

 

「 だ が じ ぐ ん゜ !!!」

 

パタンと。

泣きそうな声で、呼ぶ声に冷静に…極めて冷静にノートPCを畳む。

よし、あのSDカードにも暗証番号付けたし…これで大丈夫だ。

 

はい、では返事をしましょう。

 

 

「ノックぐらいしてくれ…みほぉぉ!?」

 

 

バスタオル一枚のみぽりんがいました。

 

あらまぁ…廊下がビッショリだね…。

はい、

 

「なんちゅー格好してんだよ!!」

 

「なんがぁ!! なんがぁいるぅぅ!!」

 

なんがぁ…泣くなよ。

俺の言うことも聞いてくれ…。

 

「こっち見てよ!!」

 

「取り敢えず、隠せ!! 体をなんか隠せ!!」

 

「っ!!」

 

少し冷静になったのか…ラッキースケベって奴だろうが…色んな意味で、そんな気になれないわ…。

心臓が…死ぬかと思った。

 

「お風呂場!! お風呂場にぃ!!??」

 

「どうしたんですかぁ…? あら、みほさん…大胆……」

 

「ちがっ!?」

 

先に風呂は済ませたのだろう。

みほの声で、寝巻き姿の華さんが、2階下りてきた。

 

……。

 

いやぁ…改めて思う。

 

一人暮らしじゃないんだなぁ…。

 

 

いいなぁ…寝巻き。

 

 

「わかった、わかった。んじゃ、俺が次に入るから…」

 

 

「ちゃんと聞いてよ!!」

 

「風呂場で、なんか見たんだろ?」

 

「そっ…そう!!」

 

「はいはい。取り敢えず、体拭いて…ちなみに華さんは、なんかおかしな事ありました?」

 

「お風呂場で…ですか?」

 

「なかった!? あったよねぇ!?」

 

あ~…歴女チーム宅での事から、どうにもみほもオカルト関係弱くなったなぁ…。

あんなの気のセイだって思ってりゃ楽なのに…。

 

「いえ…特に…隆史さんが覗きに来たくらいしか……」

 

「……」

 

「覗いてませんよ!! 確定ですか!?」

 

「…違う意味で、ビックリだよ隆史君」

 

怒りが恐怖を凌駕した瞬間って…奴ですかね…ハハッ!

 

「いやいや! みほ、お前なんかガードするとか言ってただろ!? いたんだろ!? 脱衣所に!!」

 

「…そうだけど。隆史君だし…」

 

「……」

 

「では、どちら様だったのでしょう? 脱衣所に誰かいたような…」

 

「……」

 

あ、みほの顔が青くなった。

はい、ではみぽりん。

 

「…ほら、体冷えるから脱衣所で体拭いてこい」

 

「!?」

 

「だってぇ? 俺、信用ないみたいだしねぇ? …ここに居るわ」

 

「ぅぅううう!?」

 

 

 

 

 

はい。

 

そんな訳で、一通りみぽりんをいぢめ抜いたので、風呂場にやってきました。

まぁ…ここに出るって事は、この外付近かなぁ?

 

驚きはするだろうけどねぇ。

 

頭を洗っている最中…特になんにも起こらねぇな。

はぁ…そんなモンだよな。

 

こちとら、ぶっちゃけた話…そんな事はどうでもいい。

今日、家に帰ってくる前に、一度学校へ寄った。

 

生徒会室だね。

休みだというのに、あのトリオからのお呼び出し。

今後の予定を聞いていた。

彼女達もほぼ寄っただけという事で、すぐに帰る手はずだったらしく、本当にすぐ終わった。

 

…頭が痛くなる内容だったけど。

 

取り敢えず、明日、明後日は何も無し。

普通におやすみ。

 

で…だ。

 

3日後が、問題だ。

 

どうすっかなぁ…。

 

つーか、スゲェ事考えるなぁ…会長。

 

 

各高校にオファーを出さねぇと…。

各学校…特に聖グロとプラウダの学園艦は、まだこの近海にいる。

というか、港に入れないって理由だけで。

 

…来るなぁ…。

 

カチューシャとノンナさん。

朝、絶対に来そうだなぁ…。

飯、一応用意しておくか…。

 

 

 

エキシビジョンマッチ

 

 

 

混合チームでの試合ねぇ…。

まぁ面白いとは思うけど、胃がキリキリ痛むのはなんでだろう?

 

電話で…知波単学園だっけ?

そこには、すでにオファーを取り付けたみたいだけど…。

残りの近海にいる連中には、3日後になるけど、また大洗に集合してもらう手はずになっている。

ダー様とカチューシャにも、了承は取れているみたいだけど…絶対になんかありそう…。

 

黒森峰は声を掛けられなかったみたいだね。

 

「……」

 

…一度、顔を出さないとな。

 

しほさんと、千代さんの元に、正式に。

今回の撮影会の時じゃ、余りにもついでっぽくって、失礼だったからなぁ。

 

決勝戦の時の事。

…ちゃんとお礼を言いに行こう。

また、しずかの所で、酒でも買ってくか。

 

…熊本行ったその時にでも、黒森峰に声をかけておこうかね。

エキシビジョンの参加の件を。

 

……。

 

まほちゃんに電話し辛い…からとかではない。

会場で会ったけど…プライベートで何言えば…。

 

あぁぁ…。

 

 

さて…後で考えよ…。

 

 

体を洗い、浴槽に入る為に風呂フタを開ける。

さっさと、入っちまおう。

 

「……」

 

いるな…。

 

なんか……。

 

う~ん…女かぁ…。

 

浴槽の中。

目には見えないけど、なんかいる。

なぜか、女だと感じた。

 

 

……。

 

 

いいや。知らん。

 

 

無視して片足突っ込む。

 

《!?》

 

なんか、驚いてるなぁ…。

なにがしたいか、わからんけど。

 

体全体を浸からせる…。

 

はぁ…染みる…。

まともに湯船って…浸かったの…久しぶりだ…。

というか…ほぼリフォームしてねぇか? 

しほさん…賃貸になんで金かけてんの?

 

…あ、ひょっとして、借り手がいないから、こういった所で…。

 

まぁいいや。深く考えないでおこう。

 

変な声がでそうだぁぁ…。

 

上がったら…どうしようか?

 

今日はあの画像ファイルの整理は…やめとこ…。

下手したら、また眠れんとか言って、みほが特攻かけてきそうだし。

 

《 !!?? 》

 

あ。

 

 

 

……気配が霧散したな。

 

ちょっと、胸元に違和感が有る。

…そうか、胸元の傷にでも触ったのか?

 

馬鹿だねぇ…。

 

あぁ…そうだ。

ちゃんと、アンツィオにもエキシビジョンの事、聞いておくか。

出店側での参加も可能ですよぉ…って。

 

あぁぁ…後、ミカ達だなぁ…。

アイツ等、探すだけで大変なのになぁ…。

 

 

あぁ…眠い…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あんた。なんて時間に電話、寄越すのよ。もう23時なんだけど…」

 

『すいません。メール苦手なモノで…』

 

「まっ…いいけど…」

 

『…ワンコールで出るとは、思いませんでしたけどね…』

 

「た…偶々よ!! で!? どうすんの!?」

 

『あぁ…うん、ちょっと熊本まで行く、用事ができたので…その時で良い?』

 

「はっ!? 来るの!? こっちまで!? 何の用………なに? また家元」

 

『そう』

 

 

 

「………………」ミシッ!

 

 

 

『ちょっと、今回の決勝戦の…あの事で、ちゃんとしたお礼をね? ……したく…って、なんで怒ってんの?』

 

「なんにも言ってないでしょ!?」

 

『いや…なんか、握り締めてなかった? 音が…』

 

「気のせいよ!!」

 

『…んん…まぁいいか…。で、どうだろうか?』

 

「…ちょっと不安ね…それだと…」

 

『不安って…なんで?』

 

「どこで、誰が見てるか分からないし…」

 

『……捜査網でもあるのでしょうか?』

 

「そうねぇ、その道中なら…大丈夫かしら…」

 

『道中って…どっかで合流するって事?』

 

「…いいわ、私も少し位は、行ってあげる」

 

『いや…金掛かるし…』

 

「行ってあげる!!」

 

『…あぁ…はい。アリガトウゴザイマス』

 

「そうそう、素直なのは美徳よ?」

 

『…何を怒っているのだろう…』

 

「というか、アンタ。今日は随分と暗いじゃない」

 

『いやぁ…ちょっと色々ありまして…そういや、エキシビジョンマッチの話って聞いてないの? 俺の会長から』

 

 

「……おれ…の?」ミシッ

 

 

『ごめん、ちょっと噛んだ。俺の学校の会長から』

 

「……」

 

『いや…本当に噛んだだけですけど…なんだろうか…電話越しに不穏な空気が…』

 

「…まっ。いいわ。隊長なら聞いているんじゃない? 私は知らないわ。というか、直接聞いてみればいいじゃない」

 

『いや…なんか電話し辛くて…』

 

「…私なら良いってこと? 甘く見られたものね」

 

『なにが? エリリンだと結構、気さくに声かけられて…』

 

「……舐めてんの?」

 

『違う違う。まぁ、なんつーか…エリちゃんとして話す事が、なかったからねぇ…』

 

「っ!?」

 

『まぁ? 少しづつでも埋めていこうかと…ん? エリちゃん? どした?』

 

「……」

 

『エリちゃんは…やめとくか?』

 

「……ゎよ…」

 

『んあ?』

 

「いいわよ! 別に!! というか、エリリンをやめなさいよ!! 最近、学校でその愛称が広まって迷惑してんのよ!!!」

 

『…あぁ……あ~。はい、んじゃエリちゃん』

 

「っ……」

 

『話戻すけど、どこで落ち合うの?』

「静岡!」

 

『…ぉ…ぉお…即答…』

 

「なによ…丁度中間でいいじゃない。新幹線走ってるし…」

 

『限定だなぁ…』

 

「で、どうなのよ…」

 

『いいけど…そうすると…早くて…明後日になりそう「それでいいわ!!」』

 

『……』

 

「なによ」

 

『…いえ』

 

「まぁ、カードの交換だけじゃ味気ないから? そ…その…」

 

『新幹線の切符取らんと……なに? あぁ、他県まで行ってそれだけじゃあな』

 

「……」

 

『……ん?』

 

「じゃ…じゃあ、その後……ちょっと付き合いなさいよ」

 

『なに? でーと?』

 

「なっ!?」

 

『別にいいけど?』

 

「なぅ!?」

 

『どうした?』

 

「…あ…あんた、みほと付き合ってんでしょ!? よくまぁ……そんな……で……でで」

 

『あの……いつもの軽口…なんですけど……』

 

「…そ…そうね。ああああんたは、そんな軽薄な男だったわよね」

 

『………………自重します』

 

「じゃ、明日…詳しい時間……調べて…メールで送る……わ…」

 

『明日? あぁ……もうこんな時間か…』

 

「そうよ…もう…き…切るわ…」

 

『分かった』

 

「……」

 

『……』

 

「……」

 

『……』

 

「…早く切りなさいよ」

 

『えっ!? あぁいや…こういったのは掛けた側が、相手が切るのを待つのがマナー…』

 

「いいから!!」

 

『…はい。では、ごきげんよう…………何怒ってるんだろ…?』

 

 

ブツッ

 

 

……。

 

で……

 

でー……

 

でーーー!!!!

 

なんで!? 何ニヤけんての!?

なんで、顔こんなにあっついのよ!!??

 

 

「……」

 

 

……。

 

軽口!!!

そうよ!! あの馬鹿も言ってた!! 軽口って!!

 

……。

 

…………。

 

 

 

な…何着てけば…。

 

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

次回はPINKになりそうです。

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