転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第02話 日常? です!

 

どうだった?

 

それを涙目になりながら、繰り返し聞いてくるみほに対し、俺は一言。

気のせいだと、それを何度も繰り返した。

信じなければ見えていたとしても、いないと一緒だ。

な? だから何もないんだ。

 

昨日からの中途半端な睡眠時間の関係もあって、もう…寝たくてしかたなかった。

同居開始始めての夜…なんて、少し卑猥に聞こえるかもしれんが、俺には感傷に浸る余裕なんて、今回ありません。

それでも、なんとか落ち着かせ…今日は華さんと一緒に寝たらどうかと提案。

その言葉に渋々従う様に…2階へと階段を上がっていった。

 

ま、こうすりゃ今日は、俺の所には来ないだろうよ。

すまんな、みほ。

流石に今日くらいは熟睡させてくれ…。

4時間…4時間で良いから、本気で寝かせて…。

 

それでも23時頃、定例会議…? 戦車道チョコカードのトレードの話。

エリリンと、メールでのやり取りを何度かしている内に…なんかもう、リレーが面倒臭くなって電話を入れた。

なんか、すっごい怒っていたけど…ちょっと非常識な時間に電話してしまったからだろうなぁ…。

悪いことしたなぁ…。

 

ま、それはそれとして、決まったカード受け渡し日。

正確な時間は、明日連絡がくるらしい…が、まぁ多分明後日になるだろう。

 

……。

 

さっさと押入れから布団を引っ張り出し、寝る為にセッティングをする。

六畳間の部屋には、結構大きく感じてしまう布団。

もう何も考えたくないと、そのままダイブし寝転がると、すぐに電気を消して…。

 

……。

 

布団が少し、埃臭い。

アパートの時も、時間があまり無かった為に、放ったらかしだったからなぁ。

一度、しっかりと天気の良い日に干そうかね。

 

ボケーと、そんな事を思っていたが、横になったら、すぐに意識のブレーカーが落ちた。

 

 

 

……。

 

 

 

そして今は、朝の5時半…。

習慣というのは怖いもので、いつもの様に、自然に目が覚めた。

夏場という事もあり、窓から見える外は、すでに明るくなっていた。

2度寝をしても良かったが、朝食を作らなくてはならない。

いつもと違い、それなりの人数分。

 

ただ、それでも早く起きてしまった様で、まだ台所に立つのは早すぎる。

 

…さて、どうしたものかね。

 

あぁそうだ、マコニャンも来るし……アレをなんとかしておくか。

 

この家は、見た目は古い一軒家。

 

その新しい住居の庭周りは、まだ全てを見て回っていない。

ほっとんど、業者さんが荷物を運び入れている所を眺めていただけだったしなぁ…。

 

あぁ、そういえば。

それなりに広い庭先。

千代さんに言った、ほしい物がここに作れるかもしれない。

その確認も兼ねてぐるっと一周回ってみよう。

 

Tシャツとハーフパンツの寝巻きから着替える。

まぁ、寝起きのままボケーっとしていも仕方ない。

襖を開けて、見慣れない廊下を一瞥し、1階部屋の窓を開けて回る。

一通り済んだら、玄関から外へ…そこから庭先へ。

 

 

…俺の欲しい物。

 

畑。

 

普通に耕して、作ろうと思えばできるが、基本的に移動を繰り返している学園艦では、希望の物ができない可能性が高い。

日の当たり具合やら、湿度やら…。

しっかりした作物を作るのならば、ちゃんと腰を落ち着けた所の方がいい。

千代さん…まさか本当に、用意なんてしないだろうな?

…まぁ夢のまた夢だな。 無理だろう。

この庭先で作るとしたら、それはソレだな。

 

ふむ…。

 

庭の広さ的に、簡易的な畑を作るスペースは、申し分ないな。

やっぱりこの庭先に作ってみるか? 家庭菜園。

 

ピーマンとピーマンと……ぴーまん。

 

あ、後、トマトだな、うん。

 

……。

 

………ん。

 

ぶらぶら、家の周りを見て回っていると、簡単に見つけた。

 

うん、あった。

 

浴室の外側に続く、家の裏側。

外塀と家との間の、庭から続く奥…。

 

…地蔵。

 

小さな社の中の、小さな地蔵。

雑草に囲まれていた。

地蔵の前には、いつ備えられたかも分からない、土をかぶった皿。

供え物用だよな…これ。

 

はぁ…地蔵ねぇ。

一軒家の裏にねぇ…。

 

これだよなぁ。

 

黒く汚れ、表情すら分からない…いや、ちょっと悲しそうに感じた。

適当に雑草を抜き、その姿を露にすると……少し変な空気に変わったな。

あれだ…富士の樹海を彷徨っている時に感じた、どこか不穏な空気と同じ。

 

「…ちょっと待ってろ。綺麗にしてやるから」

 

ぼそっと呟くと、少しその空気が戸惑うように止まった気がした。

まったく…。

そりゃ、賃貸の一軒家の裏に、こんなのがありゃ、今まで住んだ人が偶然見つけたとして…ビビって何もしないだろうよ。

不自然すぎるし。

 

「…んじゃ、やるか」

 

あ、でも掃除道具ってどこにあったっけ?

まだ整理しきれていないので、探すだけで大変そうだ。

 

…買ってきた方が早いな。

アレの専用にした方が良さそうだし…。

 

そういや確か、近くにコンビニがあったな。

ここに来る途中に見かけた。

 

…たわしって、売ってるかな?

 

一度部屋へと戻り、サイフをズボンのポケットに入れる。

家の敷地を出ると、すぐその先にあるコンビニへと歩き出した。

 

「……」

 

コンビニマニアのみほに悪いが、コンビニってのは、俺は嫌いだ。

殆ど寄り付かない。

最後に入ったのは…戦車道チョコを買った時だけだな。

 

コンビニ…。

 

死ぬ前は、寄らない日はないくらいに通いつめていたっけな。

大のお得意様って奴だね。

 

…だから嫌いだ。

 

思い出すから。

 

朝起きて、会社へ向かう前に寄り、適当な朝食とタバコを購入。

会社が終わり、朝だか夜だか分からない様な時間に寄り、酒とつまみを購入。

これの繰り返しだったな。

 

毎日…毎日……何年も…。

 

あの店内の雰囲気、空気…やる気の感じられない店員。

 

 

っと。

 

黎い思い出に浸りすぎた。

 

危うく通り過ぎる所だったな。

 

…さて。

 

 

 

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「……」

 

いやぁ…売ってるんだな、タワシ。

結構、日用品が揃っていた。

なんかもう…田舎のコンビニって感じだったなぁ…。

 

はい、そんな訳で家に帰って来ました。

 

現在、その購入したタワシで、お地蔵さんと周りの木製の社をガリガリと洗っております。

水を入れたバケツ。

購入した雑巾を、そのバケツと地蔵へと、何往復かさせていると…バケツの中の水が、すぐに真っ黒になる。

タワシ、雑巾…タワシ…雑巾…。

新品の真っ白い雑巾も、すでに真っ黒だ…。

 

雑巾ぐらい、古着やバスタオルで拵えても良かったんだけど…まぁ?

流石に地蔵に使うなら、新品の方が良いだろう。

 

しかし…なんで地蔵が、こんな所に…。

 

…。

 

どのくらい作業をしていただろう。

結構な時間、集中してしてしまった…。

 

「よし!!」

 

気がついたら、新品の歯ブラシを買いにコンビニまで走ったり…その他道具まで揃えて…細かい部分まで完璧に掃除をしてしまった。

あぁ…あんだけ汚れていると、綺麗になっていく過程が非常に楽しい。

ゾクゾクしますね! 黒いのが白くなると!!

 

……。

 

ある意味で、悪い癖だな…俺の。

時間を忘れてしまった…やべ…飯作んないと…。

 

さて、もういいだろう。

 

地蔵は本来の石の色を取り戻し…社は、古ぼけた味のある社へと変貌を遂げた。

お供え…まぁした方がいいだろう。

後でなんか持ってきてやるか。

 

……。

 

あの変な空気が、いつの間にか無くなってるな。

やっぱりこれだったのだろうか?

あぁ…いかん。

まだ汚れが残っていた。

 

「隆史さん? そんな所で、何してるんですか?」

 

再度、掃除の仕上げだと、雑巾でまた地蔵を磨いていると、華さんの声がした。

作業中の為、声だけで返事をする。

 

「華さん? ちょっと待ってくださいね?」

 

「え? はい…」

 

なんでここが……あぁそうか。

ここ狭い入口に、使い終わった掃除道具を置きっ放しにしていたな。

庭から見れば、すぐに気がつくだろうし、その入口からこちらを覗いた所、俺がいた…って所か。

 

「ふむ。これで完璧…」

 

よし…汚れはもうない…。

次は華さんだな。

この地蔵の事は、一応言っておいた方がいいか。

 

「すいません、お待たせしま…し…あれ?」

 

体を起こし、後ろを振り向くと…誰もいない。

庭へと続く道だけだ。

 

あれ~?

 

確かに華さんの声がしたんだけどな。

 

返事もしたよな?

 

あれ?

 

 

「もう、よろしいですか?」

 

「!?」

 

……。

 

うん…いた。

 

さっきは、集中していた為に気がつかなかったけど、立ち上がったら分かった。

すぐ横…真横おりました。

 

家の壁を隔てて…正確には、窓から顔を覗かせていた…。

ただ…。

 

「…で? 何をされていたのでしょう?」

 

「そ…掃除を…」

 

「……」

 

「……」

 

忘れてた…ここ、浴室の真横だ…。

はい! その浴室から、顔だけを出していた華さんでした!

 

「あの……覗きは、犯罪です…よ?」

 

「違います!! 掃除!! 掃除をしていただけです!!」

 

「ご希望であれば、多少考えましたのに…。いや…しかし、これはこれで…」

 

「何、言ってんですか!!」

 

そうか…朝シャンとか、するのか華さん。

いやぁ…うん、髪を洗っていたのか、濡れた髪をオールバックにしていた。

 

いいね! 濡れた髪!!

 

オールバック華さんとか、すごい貴重だと思うの!!

 

……。

 

とか思わないと、死ぬ…。

 

「と…取り敢えず…窓閉めてください…」

 

「あら。少し私も、大胆でしたねぇ」

 

笑いながら言わないで下さい…。

満更でもない様な言い方、しないで下さい…。

 

「あら? それは…お地蔵様?」

 

「えぇ…これを洗ってたんです…」

 

社から取り出していた地蔵を見つけたのだろう。

まぁ、こんな所にある地蔵なんて、不自然すぎる…っ!?

 

「体引っ込めて!! 窓から乗り出さないで!!」

 

溢れる!! 溢れるから!!

何とは言わないけど!!

 

「あら…ごめんなさい。お見苦しいモノを…」

 

赤くなって、また窓の中へと戻…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タカーシャ。……なにしてんの」

「…隆史さん」

 

 

 

ギャー!!!!

 

 

 

「玄関で声かけても、誰も出てこないから…こっちに回って来てみたら…」

「……タカシサン」

 

 

カチューシャを肩車したノンナさん。

2名様が、もう…ご来店なされた…。

 

玄関で俺が対応できなかったから、庭へと回ったのだろう…。

というか、躊躇無しかよ!!

 

今日、ここへ来るのは、初めてだよね!?

しかも、俺がいる所、なんでわかったの!?

 

「そんなの、ここに何か、いっぱい物が散乱してんだから…想像つくわよ」

「気配で分かります」

 

「……」

 

いや…もう…この癖、本気で治そう…。

 

 

「タカーシャ…覗きは犯罪よ? 本気で女の敵になったの?」

「カチューシャ。隆史さんも年頃ですから…ねぇ?」

 

 

い…痛い…。

二人のジト目が、非常に…痛い…。

 

 

「ノンナ。110番って何番だったかしら?」

「いち、いち、なな、です」

 

 

サラッと嘘を教えないでやってください…。

 

「大丈夫ですよ? 私は訴えませんから?」

 

「華さん!! やめて! ややっこしくなる!! つか、覗いてないです!!」

 

「むしろ、うぇるかむです!」

 

やめて!! なんで嬉しそうに言ってるんですか!!

 

…って……え?

 

はにかんだ笑顔をしたと思ったら…。

 

「ですから……私は、大丈夫ですよぉ?」

 

華さんが顔を、ノンナさん達、二人へと向けた。

 

「……」

 

「……」

 

 

あ…。

 

分かる…。

 

場の空気が変わった…。

 

「…なる程…。そういう事ですか」

 

「うふふふ」

 

うん…なんでか、ノンナさんと華さんが、睨み合ってる。

笑顔で目だけは笑ってねぇ…。

このままだと、膠着状態が続いてしまいそうだ!!

 

「取り敢えず…隆史さん」

 

「…はい」

 

ノンナさんが、その鋭い眼光を、俺へと移動させて来た…。

 

「もう一度、確認します。覗きですか?」

 

「違います!!」

 

「なら…その彼女を真正面から見ていないで…」

 

あ…うん…。

 

カチューシャを肩から降ろして、一言。

 

 

「せめて、後ろを向いたらどうですか?」

 

 

…ごもっとも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝起きて、危うくパジャマのまま、1階へ降りそうになっちゃった。

初日から自分の部屋でなく、華さんのお部屋にお泊りとか…。

もっと緊張や…。

 

うん、アレは忘れよう。

 

その事で、寝れそうになかったのに、結構普通に熟睡してしまった自分が、ちょっと嫌だ…。

ま…まぁ、一昨日は…誰かさんのお陰で、あまり寝れなかったしね。

 

仕方ないね! 

 

……。

 

華さんも朝って結構起きるのが早いのか、私が起きた時には、いなかった。

私が自室で着替え終わって、1階へと下りようとしたとこで、会うことができた。

お風呂に行っていたらしいけど…そうだね、私も後で行こう。

 

そのまま二人でやってきた一番広い和室。

多分、これからはここで食事を取る事が増えそうなきがするなぁ。

 

うん、だってもう、いたからね。

 

あはは…やっぱり来たかぁ。

 

「…おはよう、みほ」

 

「あ、うん。隆史君、おはよう…って、なんで疲れた顔してるの?」

 

「…大丈夫…うん。気にするな」

 

「う…うん」

 

なんだろうか?

その様子を見て、なぜか笑顔になった華さんが気になる…。

 

後…。

 

 

「お…おはようございます。カチューシャさん、ノンナさん」

 

「おはよう! ミホーシャ! お邪魔してるわよ!!」

「Доброе утро」

 

なんだろうか…。

引っ越したばかりだというのに…二人がいる、この光景に慣れてしまった…。

 

そのまま滞りなく、机に並べられた朝食をみんなで食べて…あれ?

 

なんでみんな、無言なんだろう…。

華さんとノンナさんは、見つめ合ってるし。

 

あ…やった。

今日はピーマン無いよ!

 

普通のご飯! 

 

…じゃない…。

ご飯の中に、スライスされたピーマン入ってる…。

 

「うぅ…」

 

「あ、みほ」

 

「…なに?」

 

「俺…あ、明日…というか、今日の夜から…」

 

「…なに? またどこか行くの?」

 

「……はい」

 

 

…ふ~ん。

 

 

「隆史さん、先ほど携帯電話を見て、驚いていましたから…それでしょうか?」

 

先程って、ノンナさん達、…いつ頃来たんだろう…。

まぁ! いいや! そんなコトヨリ!!

 

「…また、お母さん?」

 

「」

 

隆史君の手が、お茶碗持ったまま、固まった。

 

「け…決勝戦の時の事で…ちょっとお礼に…」

 

「……」

 

「後、ついでに人と会ってくる」

 

「……ふーーーーーん。今度はどこの女の子?」

 

「」

 

うん。否定しないなぁ。

私の目を見て話そうよ?

 

「そうですか。隆史さん明日は、いらっしゃらないのですね?」

 

睨んでないよ? 睨んでないけど、固まった隆史君へ、ノンナさんが声を掛けた。

 

「は…はい。多分、明後日くらいまでは掛かると…」

 

「そうですか…では、みほさん」

 

「えっ!? あ、はい」

 

私!?

 

「明日も私達は、ここへ来てもよろしいでしょうか?」

 

「え…隆史君いませんよ?」

 

「えぇ。そうですね」

 

「わ…私は構いませんが…」

 

「ありがとうございます。では、明日の朝食は、私が作りましょう。お台所、お借りしても?」

 

「え!? あ、はい!」

 

びっくりした…。

ノンナさんは、隆史君がいるからこそだと思っていたのに…。

 

「タカーシャ。いいの?」

 

「ん? いいんじゃないか? 友達同士で飯作って食うのなんて、みほも良くやってるし」

 

…とも…だ…

 

「みほ…なにを驚いた顔してんだ? というか、みんな…どうした?」

 

隆史君の発言に、ノンナさん意外が驚いている。

確かに、カチューシャさん達との関係性は、よく分からないモノだったけど…。

 

「…そうですね。みほさん」

 

「ひゃい!?」

 

「カチューシャと私。みほさんと、もっと親交を深めたいと思ってます」

 

「…え」

 

 

「 隆史さんとの事とは別に 」

 

 

あ、はい。

隆史君、目が死んでるなぁ…。

 

 

「そうね! ミホーシャは、数少ない私が認めた奴の一人なんだから! 強豪校と深い交流を持っておく事は、私達に取ってもプラスになるわ!!」

 

「―と、何やらカチューシャは、打算的な事を言っていますが…ただ単に貴女ともっとお話をしてみたいという、照れ隠しですのでお気になさらず」

 

「ちょっ!? ノンナぁ!?」

 

あ…はは…。

 

「でも…強豪校だなんて…」

 

「黒森峰ぶっ倒して…初出場で、優勝した高校が何言ってんのよ」

 

「そうですよ。無論、その戦車道に関しても、お聞きした事もありますし…お嫌でしょうか?」

 

「えっ!? いえ! 嫌だなんて…」

 

友達…。

 

他校に…友達…。

 

隆史君関連の事を考えたらアレだけど…。

正直、お友達が増えるのは…うれしい…。

 

「では、よろしくお願い致します」

 

「ふぇ!? あ、はい!! こ…こちらこそ…」

 

いきなり深々と頭を下げられてしまった。

釣られて、私も…お辞儀…。

こ…これで、友達になれたのかな!?

分からないけど…そうかな!?

 

「あれ…俺、とっくに友達だと思ってたのに…」

 

「隆史さん? この関係性で、よくそういった事をさらっと言えますねぇ?」

 

「やめて…華さん…」

 

……。

 

何とも言えないなぁ…。

 

「戦車道とその事に関しては別よ! それはソレ、これはコレ! 減り張りはつけないと!」

 

仕事とプライベートは、別けるのよ! って、カチューシャさんが胸を張っている。

…顔にご飯粒ついてますよ?

 

「…ノンナさん」

 

「隆史さん? はい、なんでしょう?」

 

隆史君が、その横でノンナさんへと耳打ちしている。

なんだろう?

 

「朝食の中に、必ずピーマンをいれてくださいね」

 

「ピーマン?」

 

隆史君!!

 

 

最初の時とは違い、カチューシャさん達と、結構話す事ができた。

今日も初めはみんな無言だったけど、一度話し出せば後は大丈夫。

それなりに楽しく会話が続いた…。

 

どうもプラウダ高校は、暫くの間、大洗に学園艦ごと停泊する予定らしい。

エキシビジョンマッチの為だと言っていたけど…初耳だよ…。

 

会長が企画しているらしいのだけど、お呼びがかかり、それに参加する為との事。

確定するまでは、夏休みを満喫予定…らしいけど。

勿論、戦車道の練習も欠かさないわ! って、また胸を張ってるカチューシャさん。

 

…うん、なるほど。彼女達とゆっくりと話して気がついた。

隆史君が、カチューシャさんを気に入ったのも、何となく分かる…。

 

「どうせなら合同練習とかも、面白そうじゃない? プラウダと大洗、各車輌の混合したチームとか」

 

「そりゃ面白いな。高校同士とかの共闘とかじゃなくて…個人車輌での混合チームね。突発した事態への対応とかの練習にいいじゃない?」

 

「突発した事態への対応?」

 

ノンナさんが、隆史君へ聞き返している。

でも…そんな事より…。

 

「ほら、何かしらあって、知らない者同士で徒党を組まないといけなくなった時とか…」

 

「殆どありえませんよ? 戦車道の大会は、基本的には各学校のチーム戦ですので」

 

「そりゃそうなんですけどね。臨機応変さを特に求められますから、良い勉強になると思いますよ?」

 

「…ふむ」

 

た…隆史君?

 

「例えば、隊長車輌を交換するだけで、結構、面白い事になると思いますよ? プラウダと大洗なら特に」

 

「どういう事ですか?」

 

「みほとカチューシャの交換。他のチームの癖は分からない…そんな中での戦闘…」

 

「……」

 

「加えて…カチューシャVSノンナさんも実現可能…」

 

「なっ!?」

 

あ、ノンナさんが固まった…。

 

「た…隆史さんが、意地悪を言います…」

 

あ~隆史君…そのノンナさんを見て…わっるい顔になったなぁ…。

 

「ちょっと待ってよ、タカーシャ」

 

「なに?」

 

「…それはそれで、面白そうだけど…副隊長がフェアじゃないわよ」

 

「ふむ?」

 

「大洗の素人副隊長と、ノンナの交換じゃレートが異次元よ。違いすぎるわ」

 

あはは…ちょっと、ひどい…。

 

「その異次元で、みほはプラウダに勝ったよな? みほに出来る事は…なんだっけ? カチューシャ」

 

「ぐっ…」

 

「決勝戦会場で、なんか言ったらしいよな?」

 

「できるわよ!! ミホーシャに出来る事は、私にも出来るわ!!」

 

「はっはー。そうそう! それがカチューシャだぁ」

 

「ふっ…ふん! 当然ね!!」

 

隆史君は笑いながら、カチューシャさんの頭を撫でている。

というか…流れ的に、その組み合わせが実現したら、カチューシャさんが断れない土台を作ってしまった。

 

落として上げる…のではなくて、煽って上げる…。

 

…会話の流れが自然すぎて、びっくりしちゃった…。

今更の再確認だけど…これが昔の隆史君…。

 

華さんも同じ気持ちなのかな? うん…何より驚いたのが…。

 

「みほさん…」

 

「…はい」

 

「隆史さん…。練習の事とはいえ…戦車道に関して口を出してるの…初めて見ました…」

 

「……」

 

そう、隆史君が…戦車道に関して口を出した…。

今ままで、作戦や車輌の事に関しても、余計な事を言うつもりは無いって…一切何も言わなかったのに…。

 

ちょっと…なんだろう…この気持ち。

モヤモヤする…。

あれ…ノンナさんが、私を見てる…。

 

「所で、みほさん」

 

「はい?」

 

「話は変わりますが…」

 

「え?」

 

「みほさんは、隆史さんの浮気同然の行動を、黙認するのですか?」

 

「ふぶっ!!??」

 

「ちょッ!? 汚いわね! タカーシャ!!」

 

あ、隆史君がカチューシャさん頭に手を置いたまま、硬直した。

 

「先程、隆史さんは暫く出かけるみたいですが…西住流家元に会いに行くのは、まぁ…流石に違うでしょうけど…」

 

……。

 

いや。

 

そこが一番、心配です。

 

 

「えっと…」

 

 

と、まぁ言えるはずもなく…。

 

何故か、華さんが隆史君を微笑みながら見つめている…。

誰と会うというのもあるけど…正直に言ってしまうと…嫌。

それに…隆史君は、私と立場が変わったら、どう思うのだろうか?

 

ただ、隆史君の場合、何かしらで動いている場合があるから…なんとも言えないのもあるし…。

 

「う~ん…あのな? みほ」

 

「…なに?」

 

固まった状態から、腕を組んで何か言い倦ねている。

なんだろう…。

まぁいいか。…の一言で、話し始めた。

 

「ええと、小学生の頃…といっても、低学年の時の友達、覚えてるか?」

 

「小学生低学年の時?」

 

本当になんだろう…急に。

 

エミちゃん、瞳ちゃん、千紘ちゃん。

小学生の時の友達って事は、この三人。

でも、低学年の時って事は、彼女達の事じゃなさそうだね。

 

彼女達と会うまで…友達……いなかったから。

 

「……」

 

えっと…なんだろう? まっすぐ見られてる…。

 

「本気で忘れてんのか…。まほちゃんは、覚えていたけど…」

 

「お姉ちゃん?」

 

なんでお姉ちゃんが…。

隆史君も知っている…? 私だけが知らない?

お姉ちゃんと隆史君と私の…共通の友達?

 

大体いつも一緒だったし…

 

「はぁー…。こりゃ、仲直りさせんの大変だ…。本人からすれば、まぁ……怒るわな」

 

「え? えっ?」

 

溜息をつきながら、うなだれちゃった…。

 

「ま、その古い友人に会いに行ってくる」

 

「う…うん」

 

「誰かとは言わない。自分でちゃんと、思い出してやれ。流石に可愛そうだ」

 

「誰か? 可哀想? あれ? じゃあ、私の知っている人?」

 

その言い方だと、今現在で会っているって言い方だよね?

あれ?

隆史君が一瞬、口が滑った…みたいな顔をした。

 

「…そうだな。何度か会って話もしてる」

 

「……」

 

「だから、彼女と会う本来の目的は、そっちだ」

 

「本来?」

 

「…あ」

 

なんだろうねぇ? 

少し、バツが悪い顔したァ。

彼女…やっぱり女の子。

 

……。

 

女の子の知り合い…昔一緒に…。

 

「き…気にするな! しほさんの所にも、お礼を言いに行くだけじゃないから! ちゃんと理由もあるから!!」

 

ナンダロウ? 

急に慌て始めたなぁ…。

 

「…お母さんの事は、聞いてないけど?」

 

「っっっ!!!」

 

掘ってるなぁ…。

一生懸命、掘ってるなぁ…。

 

墓穴。

 

「そういった訳で、浮気じゃない!! いや、第三者目線で見てみると、極めて怪しいけど!! 違うから!!」

 

「……」

 

何も言ってないのになぁ…。

まぁ、こういう言い方してるなら、多分違うんだろうな。

隆史君の、悪い癖みたいな行動かな?

 

「ま、早々に破局して頂くと、非常に助かりますがね…」

 

……。

 

 

ノンナさんの呟きが、聞こえた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやぁ~…久しぶりに平和な一日だった。

うん、朝の事は知らない。忘れた。

 

一頻り、まず地蔵の事を説明。

みほに言えば怖がるから…とも思ったけど、解決された理由を知っておけば、安心するだろう。

なんで地蔵があるかは、考えるなとは、言っておいた。

うん。田舎とかには、たまにあるからね。

 

さて、まずは食料問題。

今日の朝食で、食料が尽きた。

冷蔵庫の中身が無い。

 

…ま、皆でお買い物って奴だね。

カチューシャとノンナさんは、休みだといっても、まだ戦車道関連で、用事があるとかで帰っていた。

比較的に…良好な関係を継続できているのではないだろうか?

 

その後、みほ達3人で出かけた訳である。

 

なんだろうか…いつもは一人だったから、三人でスーパーへ買出しとか…ちょっと新鮮だった。

その買い物自体が、楽しいのかなんなのか。

みほと華さんが、終始楽しそうだったのが、ちょっと嬉しい…。

 

車があれば、もっと楽だったのかもしれないが、まだ学校に置きっぱなしになっている。

…どうしよう、あの装甲車(仮)

 

 

さて…。

 

 

エリリン…いや、エリちゃんの事とは別に、しほさんへと合う理由のもう一つ。

しかし、ちゃん付けは、俺の方が少し恥ずかしいな…。

 

はっ。

 

…学ラン赤T。

 

その内容までは、みほには言わない。

 

…言えるものか。

 

もう、あの姉妹には一切関わらせない。

 

だから、俺だけでいい。

 

すでに、あいつのお仲間も逮捕されている。

そいつらがどうなったか…というのも、聞いておきたい。

電話ではなく、直接…。

 

もう一つ…そいつらの協力者。

 

電話で会話した愛里寿の話だと、どうにも俺達の個人情報を知っているとの事。

そう言われて気がついた。録音された内容を思い出すと、確かにそうだったな。

 

「聞いた」 「教えてもらった」

 

そんな事を、言っていたな…。

 

 

あの爺……島田 忠雄…。

 

そして…その近くにいた…あのクソ七三。

 

あのエロ爺は、学ラン赤Tの家で発見されたって事だから、間違いないだろう。

だけど、意識不明にまで、なんかされているのだから、その後、継続しての協力は無理だろう。

特に、決勝戦の時なんかは、何も出来ないだろうし…。

 

そうなると、残ったのは…。

 

「……」

 

他の協力者の可能性も否定できないが、その線は薄いだろう。

 

後、残る懸念は…。

 

大洗学園の廃校の可能性。

 

あのクソ七三…絶対に約束なんて、守るつもりなんて無いだろう。

所詮は口約束。

何を思って、その口約束は守るなんつー録音データを、俺によこしたのかは分からない。

 

「…全く」

 

自然に意味のない言葉が、こぼれる。

また、柚子先輩に怒られるかもしれないけど…いや、怒られるなぁ…。

一人で動いてみようとは、思っているのだけど、今回の事ばかりは迷う。

 

優勝ムードに水を差したくないってのが、大半だけど…どうすっかなぁ。

杏会長には、もう少ししたら言ってみても良いだろうか?

このまま対策も何もなしにしていたら、結局後で後悔しそうだしね。

 

特に当事者達は、知っておきたいと思う。

 

…うん、帰ってきたらもう言ってみるか。

 

一度、戦車道関係者を調べてみるか。

特に、現状のしほさん、千代さんの立場を。

 

…水着撮影で燥いでる場合じゃなかったな。

 

学ラン赤Tと、あの七三。

何かしら接点がありゃ…弱みを…。

 

……。

 

…………はっ。弱みね。

 

やっぱり根っこの部分。

俺もどこかで、汚い大人が染み付いているのかね。

 

昔は考える間もなく、与えられた…というか、押し付けられた仕事をこなすので一杯、一杯だった。

今の心に余裕がある状況になると…どうにもその時の経験から、考えてしまう。

 

…。

 

ま。

 

汚い真似はしたくないが…綺麗事を言っていられる状況でも無い。

 

武器は、多い方が良いに決まっている。

弱みが出てきたら、使う使わないは、後々考えよう。

捕らぬ狸の皮算用…ってね。

 

まずは、行動だ。

 

 

おっと、もう21時か。

そろそろ寝ないと。

明日は、4時には起きないとな。

 

昼頃、一通のメールが届いた。

エリちゃんから…約束の時間の確定のお知らせ。

初め、新幹線で移動…とか考えていたのだけど、長距離を運転したくなった…。

 

あのマイカーの装甲車(仮)じゃ、無理だしね。

レンタカーを借り、車での移動に決めた。

 

…勿論、カードのトレードも目的だけど…。

やはり、みほとの事だな。

エリちゃんが、何を考え、どう思っているか…聞いておきたい。

多分…電話だと逃げられるからな。

 

…これもタイミング見て聞かないと、怒るだろうなぁ。

 

 

さて…そろそろ、風呂も俺の番だろう。

 

とっと入って…とっと寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…何か、忘れている気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

はい、次回エリリン回、突入。
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