「ナーハッハッハッ!我が瞳に狂いはなく、これも天からの……」
「蘭子、うるさい、お座り」
「……はい」
前田雄大、それが自分の名前だ。幸か不幸か目の前で高笑いしてる神崎蘭子の幼馴染だ。家が隣というベタな関係柄である。ついでに言えば蘭子の通訳も担当してる。そのままだと買い物も難しいのに口調は直そうとしない頑固ものなのだ。意思が硬いともいう。
「それでなんだっけ?」
「アイドルの二次選考試験通ったんです!」
「へーすごいすごい、それじゃあ俺帰るわ」
「ま、待つのだ我が契約者よ!」
先に帰ろうとしたら蘭子が追いかけて来た。こう見ると小動物っぽくて可愛くはあるけど、アイドル出来るのか?この神崎語がわかる奴自分以外にいるのか?
「なあ蘭子、その言葉遣いで面接行ったのか?」
「召喚の儀はこれから、我が正体を晒しし時は既にそこまで来ている」
「ああ、まだその口調御披露目してないから通ったのか」
「むー!」
「叩くな叩くな、痛くないぞ」
怒った顔で叩かれても可愛いだけだぞ、それを言ったら顔真っ赤でショートして明日から面倒になるから言わないけど。というか。
「どこのプロダクション受けに行ったんだ」
「燦然と輝くシンデレラの城!」
「……美城プロダクションか、そう言えばこの前新しいプロジェクトが始まるってCMやってたっけ」
「左様!そして夜を越えた時、我が正体を明かす時が来る!」
「ほーん、明日面接か。質問とか受け答えとか大丈夫なのか?」
「……」
「じゃ、頑張れよ。落ちたらファミレスくらいは付き合ってやる」
顔面が青くなり始めた蘭子を放置しさっさと帰り支度を進める。後ろから蘭子が追いかけて来るが残念かな、自分に追いつける人間などいないのだ。
☆
「ただいま」
「お帰り、随分早いじゃない」
家に帰るとリビングで母さんがテレビを見てた。その近くにはテレビのリモコンと皿に乗ったフレンチトーストが
「母さん、家で魔法使って本番もつの?」
「何?私に魔法の心配なんて随分上から目線じゃない」
うちの母さんは何故か魔法が使える。そこら辺のインチキやパチモノではなく本物の魔法使いらしい。父さんと結婚する時も父さんだけに打ち明けたそうだ。しかし父さんと自分以外の人には魔法のことは言ってないらしく巷ではマジシャンとして名が通ってるらしい。
「そう言えば母さん、明日からまた出張するから」
「父さんのところ?」
「そうよ、また新しい遺跡を見つけたらしいから戻らなきゃならないのよ」
「もうマジシャンか考古学者かどっちかにしない?」
「いやよ。マジシャンは楽しいし、考古学者もこれはこれで楽しいのよ」
「いや無理にやめろって言ってるんじゃなくてさ」
「ああそれならさ、あんたがマジシャンやればいいのよ!」
「何言ってんの?」
「あんたも魔法使えるでしょ?私の子なんだからテレポートとか発火氷結くらいチャチャっとやりなさいよ」
「出来るけど、母さんさっきマジシャンやるの楽しいって言ってたじゃん」
「母さんが出張に行ってる間だけでいいから頼むよ。じゃあ母さん行って来るから」
そう言って母さんが消えてしまった。おそらく荷物を持って空港に行ったのだろう。
「……明日から学生兼マジシャンか」
発火とか氷結がそんな簡単にできたら苦労はしないのだが。そう言って手に力を込めると手の先に赤い炎と凍てつく氷が出てきた。なぜか、母さんの力は自分にも受け継がれていた。使い道もない為、今まで使うことはあまりなかったが(ガチャッ)……?
「そ、それって……」
「いやなんで蘭子がいるの?」
「えっ、お母様がうちで其方が寂しがってるって……」
はめやがったな母さん。
「それよりも、その手!燃えてる!」
「あー……これは、そのなぁ。まあ燃えてるけど熱くないから平気だ」
「凄くかっこいい!羨ましい、私もやりたい!」
「いや、蘭子は魔力ないから出来ないだろ。……そんな世界の終わりみたいな顔されても」
「な、なんとかならないですか!」
「いや無理だから、これ血筋の問題だし」
「…………(ボッ)」
「なんで顔真っ赤にしてんの」
「……私が、お、お嫁さんになったら」
「いや無理無理、そもそもそんな未来はないから安心しろ」
「ひ、否定するなぁ!」
「じゃあ肯定して欲しいのか?」
「急にそんなこと、言うなぁ……」
おー、なんかめんどくさくなってきたぞ、どうすりゃいいのさ。