では、本編です。
--西藤先生--
なぜか、寛の心にその名前が響き渡る。
「西藤…先生かあ...」
寛は、嬉しいのか嫌だったのか定かではないが明らかに響いていたことは間違いない。
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西藤先生とは、寛が入学する4年前にこの中学校に来た人だ。当時は新任だった。
西藤にも過去は色々あったそうで、西藤は寛と同じ中学校に入学していた。寛と同じように昔は頭が良くなかった。しかし、毎日10時間以上の勉強を積み重ね、滝沢高校よりも一流の桃陵高校という高校に受かった。
教師になってからは、色々苦労したそうだが西藤はその件については話してはいない。
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大半の生徒は、偏差値が良くなかったことは知っていた。寛や、佳菜子、浩介などの三年も知っている。この情報は寛達の先輩からの情報で、代々受け継がれているそうだ。
寛が興味を持っていた理由はこれだった。
その後、始業式は終わり西藤先生の誘導で4組の教室に戻り席に着いた。
寛は、窓の横の席で外には桜が満開しており、一面ピンク色の花が降っていた。
その時、寛は驚く。
寛が座っている横には、佳菜子が座っていたのだ。朝の時は喋っていたときは、立って喋っていたため特に気になっていなかったがもう一度確認してみると、自分の席の近くで喋っていた。
なぜ、気にならなかったのか解らない。
でも、寛の横に座っている。
「何で、そんなに喜んでいるの?」
と、問いかけてきたため寛は慌てて
「か、かなが隣でビックリしただけだよ。」
「そ、そうなんだね。確かに凄いよね...」
回答に戸惑っているように聞こえた。
寛は出席番号が書かれた紙を見てみたが、佳菜子は7番。寛は1番だった。寛の列の人の数は6人だったため、偶然そうなった。
寛が驚いているのも時間の問題で、寛達には苦痛の時間が迫ってくる。
そう、新年度になったら行う行為。名前を書く作業だ。
字が汚い人には屈辱的だが実質、すぐに終わる作業だ。
西藤先生は教科書類が入ったダンボールを何回かに分けて重たそうに運んでいたため時間がだいぶ過ぎていた。
見た感じ、5箱ありそうだ。
その箱の大きさからして、国語と英語、数学と理科の教科書は確実に入っていた。他には、ワークらしきものも等が3セット位あった。
寛はこの作業が好きではなく、いつもほったらかして無くすという騒動を起こしてしまうのだ。
寛は、今年は仕方なく書こうと思っていた。
西藤の指名により他の教科書を運んでいた生徒が返ってきた。その生徒が持っていた冊子は副教科らしきものだった。寛は副教科の成績が入試に関わることは知っており寛はなぜか、技術家庭がとても優れていた。
教科書の名前を書く作業が終わり、西藤先生の話が始まった。
「初めまして、三年四組の担任になりました。国語科の西藤千広です。よろしくお願いいたしま。」
拍手と歓喜の声が教室中に鳴り響いた。
今回の三年の担任の中で、一番ましな先生かもしれない。ましというのは、相談事や学校生活で絡みやすいということで寛などの三年は言っている。
西藤の話が終わり、次は自己紹介の時間が来た。
寛にとっては、とても嫌な時間である。
トップバッターというプレッシャーが寛を動揺させる。
毎年していたことなのだが、やはり緊張してしまうのだ。その時、横から
「頑張れ!!」
という声が聞こえた。その声の主は佳菜子だった。
寛は動揺していたため、
「う、うん。」
と返事をした際、西藤先生が寛を呼ぶ声が聞こえたので、教卓に恐る恐る近づく...
「阿、阿久澤寛です。
...よろしくお願いいたします。」
と二言だけで終わらせてしまった。何を言えばいいのか分からないし、年齢は皆おんなじだし、趣味はあまりないし...と、考えていたときテニスをやっていることを思いだし、
寛は、佳菜子に近づき
「かな!!久しぶり!!」
笑顔で呼んだら、
「寛?!久しぶり!!」
と返事をしてくれた。二人は会うのが半年振りだったりする。佳菜子の親は仕事が忙しくなり会える所が無かったから、二人は元気に会話をしていた。
「かなの親はいまどうしているの?」
「お父さんは長期の出張で不在だし、お母さんは一日中パートで働いているから実質私しか家にいないの。」
と言った。寛は、なかなか会えなかった理由がわかった気がする。そして、寛は
「今度、久しぶりに--」
寛が話そうとしたとき、放送が流れた。
その声は、教頭だった。
***8時20分になりましたら?体育館に集合してください。始業式を始めます。
「テニスをしています。」
と言って、拍手が起こり自分の席に戻った。
次々とクラスメイトが自己紹介をしていく。
皆はちゃんとした趣味や好きなことを言えることに、嫉妬をしていた。
寛が気がついた頃には、佳菜子や浩介も自己紹介をしていた。
「駒崎佳菜子です。バレー部でバレーをしています。よろしくお願いいたします。」
と、軽々言っていた。
寛は、
「どのようにしたら、緊張しなくなるの?」
と聞いたら、少し笑いながら
「いつもと違うと思うと駄目なんじゃない?いつも通りに行けばいいと思うよ。」
とアドバイスをしてくれた。
--いつも通り...か...--
アドバイスをしてもらった言葉を記憶しておこうと思い何度も何度も繰り返していた。その時、自己紹介をしていた一人の生徒に寛は視線を向けた。
「中野健です。テニス部です。よろしく!!」
と軽々話していた。