ダンジョンに白い兎がいるのは間違っているだろうか   作:さははさ

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久しぶりです。


EP.6

汚い路地裏。もう死ぬのかと考えながら空を見上げていた時のことだった。

 

知らない女性に声をかけられた。

 

その綺麗な瞳と差し出されたその手に僕は…。

 

「…帰る場所はありますか?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「一つ、手合わせしてくれませんか?」

 

朝起きて自分の仕事である芋の皮剥きが終えた時の事である。

 

いつも通り芋の皮剥きをしている時にリューさんの一人稽古を見ていた。

 

いつ見ても綺麗だなと思い手を動かし、終えた頃に言われた。

 

一人稽古を始めて数十分。白い肌に汗が滴っている。白いシャツは濡れてその中の肌に張り付いて薄く見えている。

 

「!?」

 

僕は近づいてそう言ったリューさんから視線を勢い良く外した。その際に首がグギィと、言ったが気にする暇がない。

 

「…? どうかしましたか?」

「い、いえ!何もありませんよ!」

「そうですか。それで、手合わせしてくれませんか?」

 

ど、どうして急に…。

 

「流石にいきなり過ぎませんか?」

「確かにそうですが、善は急げと言います」

 

…それとこれに何の関連性があるのだろうか。

 

しかし…。

 

「す、すいません!女性の方と手合わせする事は出来ません!」

「っ…」

 

本当ならリューさんと一度で良いから手合わせしたい。が、昔おじいちゃんに女性を傷つけるなと言われた。

 

おじいちゃん曰く、守る者である女性を自らの手で傷つける男は死に値すると。例えその女性がどんなに下劣な人でもだ。

 

しかしそれはリューさんにとってはきっと…。

 

「わかりました」

 

女性だから。これはある意味で差別の様なものだ。

 

…僕は何一つ、リューさんに恩を返せた事がない。それよりも今みたく仇で返すことばかりだ。

 

それでもリューさんは顔色変えずに店に入っていく。

 

「…はぁ」

 

やってしまったか…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…」

 

厨房の雰囲気は最悪とまではいかないが、いつもと違うのは此処に入り浸る者にはわかるぐらいに違う。

 

皿を洗っている途中に肩を叩かれる。

 

「リューと何かあったかにゃ?」

 

アーニャさんだった。いつも能天気なアーニャさんにまで気にかけられる。

 

「僕がリューさんに対して失礼な事をしてしまって…」

「だったら早く謝るにゃ」

「そうしたいんですが…謝ったところで解決はしないと思うんですよ」

 

と、何もわからないアーニャさんの為に今日の出来事を話す。話そうとしたところでクロエさんとルノアさんが参加し始めた。

 

話し終えると。

 

「ベルが悪いわけじゃないけど…ほんの少しだけベルが悪いかなって思うよ」

 

ルノアさんがそう言う。

 

「確かにベルが謝ったところで解決はしないね〜」

 

続けてクロエさんが口を開いて次にアーニャさんが口を開いた。

 

「時間が解決してくれるにゃ!」

 

やっぱり能天気な人でした。

 

しかし今は仕事中。こんな事をしているとミア母さんに怒られててててててっ!

 

「あんた達…堂々と仕事サボって何してるんだい…?」

 

頭をガシッと掴まれている。脳みそが飛び出そうだ。本当に痛過ぎて涙が出てくる。

 

「さっさと働きな!」

「「「は、はい(にゃ)!!」」」

 

と、三人は光の様にこの場から消えた。僕はまだ離してもらえない。

 

「あの…ミア母さん。離してもらえないと働けないのですが…」

「ベルはもう今日は上がりな」

「え?何で…ってそうですね」

 

僕とリューさんがいて店の雰囲気が悪くなるなら片方のどちらかが居なくなればいい。

 

リューさんは今、店内で注文を受けに行っている。なら出ていくのなら裏で働いている僕になるのは当然だ。

 

「わかりました。今日のところは上がります」

 

と、言うとやっとの事で手を離してもらえた。…頭は無事だった。

 

店を出る。何もやる事がない僕は何も考えずに街中を歩いていた。

 

やる事が何もない。ダンジョンに行こうかと思ったが気分が乗らない。

 

噴水近くのベンチに一人座っている。

 

リューさんと喧嘩をしたわけではないのにどうすれば仲直り出来るかを考える。

 

欲しいものをプレゼント…リューさんの欲しいものが考えられないし合ったら自分で買いたいと思う。

 

一体どうすれば…。そう悩んでいると…。

 

プーと、ラップの様な音が聞こえた。顔を上げ音が鳴った方を見ると初めて見る屋台があった。

 

子どもに人気でそうだな…と、見つめていると。

 

「………あ、これだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふっ!…はっ!」

 

リュー・リオンは今日も一人稽古に励んでいる。しかしその動きはいつもの稽古と比べてキレがなく、動きにムラがある。

 

「…」

 

昨日の事を思い出している。

 

リュー・リオンは自分の昨日の出来事を思い出しては罪悪感に駆られていた。

 

昨日はクラネルさんに迷惑をかけてしまった…反省しなければならない。

 

リュー・リオンはベル・クラネルの様に自分に非があると考えていた。

 

こちらから謝れば解決はする。

 

だからと言って昨日の発言を許したくはなかった。

 

女性だから。そんな理由で戦えない。それが嫌で仕方なかった。

 

神からの恩恵を貰っていないのにも関わらずミノタウロスを倒したと言う事実。クラネルさんの実力を知りたかった。

 

が、失敗した。

 

「…はぁ」

 

今日はもうやめよう。続けても意味がない。それにクラネルさんもいつもの仕事に来ていない様だ、きっと昨日の私のせいだろう。

 

と、店の中に入ろうとした時の事だ。

 

「ちょっと待ったー!」

 

聞き覚えのある声に反射的に振り向く。少し離れたところに背が低く銀髪でミノタウルスの仮面を被ったベル・クラネルがいた。

 

此方に近づいてくる。

 

「何をしているのですかクラネルさん?」

「ぼ…俺はクラネルじゃないですよ…あ違う、ゔっふ!…俺はクラネルじゃない!ネルクラだ!」

 

…一体何をしているのだろうか。

 

「仕事はいいのですかクラネルさん。ミア母さんに叱られますよ?」

「あ…それはやばいです…じゃない!おれは、クラネルじゃないから怒られないのだ!はっはっはっ!」

「…」

 

しかし身に纏った服はこの店の作業着だ。

 

「リュー・リオン!」

 

ビシッ!と、指を刺される。

 

「何でしょうか?」

「一つ、俺と手合わせしてくれないだろうか」

「…え?」

 

私は今、クラネルさんに手合わせをして欲しいと言われた。しかし、昨日は女性だからと言ってして貰えなかった…。

 

…そうですか。だから仮面なんか被っているのですね。

 

「わかりました。手合わせしましょう」

 

クラネルさん。ありがとうございます。私の為に自分の決めたルールを破らせてしまって。

 

「ダンジョンと違って危ないから魔法は禁止でお願いします」

 

と、素に戻るクラネルさん。

 

貴方は本当に優しい方ですね。

 




次回、等々戦闘シーンです。
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