バディファイト@サイバーダイバーズ   作:辻 逆月

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この話の最中、アンダーズの店内ではチビお帰りパーティーの真っ最中でした、とさ。


その後の話

響「ってな感じでデリータ・ロードに勝ったっす!」

 

蒼の病室で響は元気良くファイトの結果を報告している。

のだが、蒼は包帯で全身を覆われ喋ることができずプラグは不機嫌な表情でリンゴを剥きながら箱型の機械を持ったグレーに食べさせ、辰馬も険しい表情で梨を齧っている。

4人の雰囲気に何かを感じた響はプラグに質問する。

 

響「…何かあったんすか?」

 

プラグ「蒼の2ヶ月入院が決まった。」

 

響「へ?」

 

辰馬「コイツの体が予想以上に酷い状態だったらしい。特に左肩はバディファイトで斬られた時に酷く損傷したらしい。その上背骨や肋骨が折れていたそうだ。」

 

響「ええ、背骨と肋骨もって何で……。」

 

ハッと響の脳裏に辰馬とプラグ、そして夜剣の三人が蒼を蹴っていた時の姿が浮かぶ。

良く見れば蒼は恨めしげな視線を辰馬とプラグに向け、プラグと辰馬はうっすら汗をかきながら気づかないフリをしている。

 

響「あれ?蒼を蹴ってたもう一人の女の子ってどうしたんすか?」

 

プラグ「雇い主のことか?あの人なら確かめたいことがあるってジュールの奥に潜った。」

 

響「確かめたいことって?」

 

辰馬「俺達も知らん。」

 

辰馬は更に見舞いの品のグレープフルーツに手を伸ばし、皮ごと齧りつく。そして今までリンゴを頬張っていたグレーは響に目を向ける。

 

グレー「それで、ロードの奴はどうしたの?トドメ刺した?」

 

響「刺してないッスよ、あの後今回は退くって言って帰ったッス。…CBSNでも舌打ちとかしてたけどグレーってデリータ・ロードのこと嫌いなんすか?」

 

グレー「嫌いというより何でも暴力沙汰にしようとするのが腹立つ。」

 

響「え、けどバディファイトに了承して…。」

 

グレー「あそこでも言ったじゃん、負けたらアカウント消されるって。アレCBSNのシステムに守られてなかったらサンズサーバにアクセスしてたよ?殺し合いどころじゃない、虐殺のはずだよ。」

 

響「……。」

 

グレー「アイツは何でもかんでも命のやり取りにしようとする。だから嫌いなんだ、模擬試合でも僕を殺す気で攻撃してくるから本気で応戦してサイバーワールドの大部分を破壊する結果になったし。」

 

グレーは遠い目をして過去を振り返る。ヨタバイト・ドランザーという名の電脳騎士は、同胞たるデリータ・ロードにそれほど手を焼かされていたのだ。

 

辰馬「…ん?グレー、サンズサーバというのは何だ。」

 

グレー「僕たちサイバーワールドのモンスターが死んだ扱いになると強制アクセスさせられるサーバだよ。そこに行った者は最終的に戻れなくなって消えるけど場合によっては戻ってくるって話。」

 

辰馬「…そこは人間や他のモンスターも行ったりするのか?」

 

グレー「分かんない。そもそも戻ってくるケースがレアすぎるし、サーバなんて名前も僕たちが飛ばされるから多分サーバなんじゃないって言われてついた名前だし。…で、何でそんなこと聞くの?」

 

辰馬「少し気になってな、それに長年の謎の答えだった。」

 

グレー「ふーん?」

 

蒼「もご、もごごごおご、もぐご。」

 

グレーの持つ箱から『お前ら見舞いの品喰いにきただけなら帰れよ』と錆びた音声が流れる。

口のふさがった人の声を翻訳する機械のようだ。

 

グレー「了解。みんな帰る?」

 

プラグ「いや、蒼とグレーには質問がある。…って何だよその機械。」

 

辰馬「なら、俺は帰るか。」

 

響「俺もバンド仲間と練習があるっすからこれで。」

 

辰馬と響は病室から出ていき、グレーは椅子に座り、プラグはミカンを剥き始める。

 

グレー「じゃあ、どこから話そうか。」

 

プラグ「まずはその機械どこで手に入れた?」

 

グレー「電車で遠出した時に出会った友達が作ったメカだよ。」

 

プラグ「へー?じゃあソイツで翻訳頼む。…まずはお前、モンスターだったのか?」

 

蒼「もぐう。」

 

『違う』

 

グレー「補足説明するなら、僕の同胞の体を蒼が借りてる状態らしいよ?」

 

プラグ「ってことはモンスターの中に人間ってことか…じゃあ、次の質問だ。今回の黒幕に心当たりはあるか?」

 

蒼「ふぁい」

 

『無い』

 

グレー「ボクも無い、けど確実に狙いは蒼の正体を確かめることだった。多分アレの正体は蒼の記憶が戻らないと確かめにくいと思うよ。」

 

プラグ「…だろうな。次、何か思い出したことはないか?」

 

蒼「…まう」

 

『ある』

 

蒼が話したことは茶室での出来事だった。

顔にノイズが走っている二人の男。

初めてお茶を点てるアルファード。

片方の男がアルファードにお茶の点て方を教え、白衣を着た男がそれを見守っている。

点て方を教えている男の傍らには鞘に収まった大剣が置かれている。

 

それらの光景の詳細をプラグとグレーに話した。

 

プラグ「茶室ねぇ……。」

 

グレー「チャシツが何か分かんないけど、途中のチャガシの美味しさは伝わったよ。」

 

グレーの腹が少し鳴る。

 

プラグ「日本全国の茶室調べる訳にも行かないし、ヒントが曖昧で分かんないな。」

 

グレー「なら、一旦帰る?」

 

プラグ「あー、いや。グレーにも聞きたいことがあったんだ。」

 

グレー「ん、ボクに?」

 

プラグ「お前らが言ってたユグド・オメガ、それに電脳騎士って何なんだ?」

 

グレーはプラグを真顔で見つめ、目を瞬かせる。

 

グレー「えっと、なんでユグド・オメガ様と電脳騎士を分けて聞くの?」

 

プラグ「ん?ソイツも電脳騎士だったのか?」

 

思えばグレーとデリータ・ロードはユグド・オメガの事を電脳騎士などとは言っていない。

だからプラグの質問のしかたは当然のものだった。

しかし、この質問の仕方はグレーにとって重い内容となっていた。

 

グレー「……そういえば言ってなかったね。ユグド・オメガ様も電脳騎士だよ、モンスターとしての名前は電脳騎士皇《サイバーナイツ・デウス》 ユグド・オメガ。世界たる電脳騎士《サイバーナイツ》としてあの世界を守る最優の騎士で皇帝。」

 

プラグ「……凄いモンスターなんだな。」

 

グレー「うん、常に正しさとは何かを考え続け進化し続ける存在なんだ。」

 

プラグ「……ん?いや待て?皇帝なのにデウスっておかしくないか?まるで神みたいな…。」

 

グレー「おかしくないよ、だって神だもん。」

 

プラグ「はぁ?」

 

グレー「人間の世界では騎士ってさ。神に仕えてて、王に力を貸すって形を取ってるよね?」

 

プラグ「あれ、そうなのか?」

 

プラグは騎士が仕えるのが神だとは知らなかった。王に仕えるものだと思いこんでいた。

 

グレー「そうだよ。んで、神からの言葉は必ず従うのが騎士。王からの命令はある程度拒否できるんだ。電脳騎士もそうなんだ。」

 

プラグ「……ってことは。ユグド・オメガの命令を電脳騎士《サイバーナイツ》は拒否できるってことなのか?」

 

グレー「うん、神のままだと僕達は逆らうわけにはいかない。それだと万が一ユグド・オメガ様が間違った判断を下したとき進言すら許されない。だからユグド・オメガ様は皇帝に身を窶されているんだ。」

 

プラグ「窶すって…、その神はその体とは別に体があるのか…?」

 

蒼「……ふへー。」

 

『グレー』

 

今まで喋らなかった蒼に二人の注目が集まる。

 

グレー「ん?どしたの蒼。」

 

蒼「むむごふぁひーるふぁ?」

 

『ユグドラジールか?』

 

プラグ「……ユグドラジール?」

 

グレー「正解…。蒼、アホなのか頭良いのか分かんないね。」

 

蒼「うぉうほは」

 

『おいこら』

 

蒼の怒りを真摯に受け止め、ずにグレーは説明を続ける。

 

グレー「プラグの疑問の答えだよ。サイバーワールドを守る世界樹にして神、ユグド・ラジール。それこそがユグド・オメガ様の正体。ユグド・オメガ様の体は神が自ら行動するために作った器なんだよ。」

 

プラグ「…なるほどな。その世界樹が自分が間違った判断をした時の保険として皇になったと。」

 

グレー「うん。けど、あの方は今までに一度も間違いを犯されてないんだよね。本当にそんな形をとる必要があったのかって電脳騎士のほぼ全員が疑問に思ってるはずだよ。」

 

プラグ「へえ…。…ありがとな、おかげでサイバーワールドについて色々分かった。」

 

グレー「どういたしまして。」

 

プラグ「じゃあ、俺とグレーは一旦帰るわ。蒼は体、早く治せよ。」

 

蒼「ふぇーふぇー」

 

『へーへー』

 

 

 

 

 

 

 

プラグ「情報くれた例だ、帰りにラーメン奢ってやるよ。」

 

グレー「あ、じゃあボクしめり丸って店の豪華絢爛ラーメン食べたい。」

 

プラグ「しめり丸…八丁堀か、この時間だと遠いな…。」

 

グレー「じゃあ、横浜一族ラーメンは?」

 

プラグ「そこなら近いな。」

 

 

 

 

 

 

 

プラグとグレーはエルシニアスも含めた三人で並んでラーメンをすする。

 

グレー「うぇーはー。」

 

プラグ「ん?」

 

グレー「んぐんぐ、ぷはー。プラグがやたらサイバーワールドについて聞いてきたのは、サイバーワールドに黒幕がいるかもって思ったの?」

 

プラグ「…ずるずる、…当たりだ。ユグド・オメガ、サイバーワールドのモンスター……なのかは良くわからんが、ソイツが意識を他の体に入れられる。それにハッキ…、クラッキングで人の意識を消すなんて事態、人間の技術では多分無理だ。」

 

エルシニアス「ごくごく。ふぅ…、お前が研究所に送られていた時。唐沢という犯罪者が、CBSNに逃げ込み他人の身体を乗っ取ろうと、ハッカーを脅したことがあったのだ。」

 

グレー「えー。それ大丈夫だったの?」

 

プラグ「大丈夫だ。それに、そもそも他人の身体を乗っ取るなんてことはCBSNでは出来ないようにあらゆる対策が講じられているんだ。」

 

グレー「ずずー、へー。そのカラサワは人を乗っ取れないことを知らなかったんだ。」

 

プラグ「ああ。だからハッカー達とボコった後に教えてやった。」

 

グレー「わーお。」

 

エルシニアス「して、グレーよ。何か心当たりは無いか?他者の体を乗っ取り、意識の破壊が可能なモンスターに。」

 

グレーは箸を止め、眉根を寄せる。

そして口の中に僅かに残っていた麺を飲み込んでから話す。

 

グレー「あるわけないよ。体を乗り換えるなんて力はユグド・オメガ様以外にはアルファードしか持ってないし、そのアルファードだって意識は蒼の中っぽいし。そもそも人やモンスターの意識を破壊するだのって《ウイルス》にも相当難しい芸当だよ。」

 

プラグ「マジかー……。じゃあアレはどこから来たんだ…。」

 

グレー「こっちが聞きたいよ。」

 

プラグ「はぁ…じゃあ後の手がかりは蒼の記憶か……。」

 

グレー「けどソレこそ手がかりにならないじゃん。」

 

プラグ「いや、そうでもない。」

 

グレー「え?」

 

エルシニアス「ずごご……。話を聞けば、記憶の中に居た二人の男の内一人の傍らに大振りの剣があったそうだな。」 

 

グレー「確かにそう言ってたけど…。鞘のせいでどんな剣か分からなかったんでしょ?」

 

プラグ「はぐ…。いや、分かる必要は無い。当てずっぽうになるがその剣は恐らくその男のバディだ。」

 

グレー「え、その剣モンスターなの?」

 

プラグ「バディファイトの中にはバディにできるアイテムがある。お前も会ってるはずだぞ。」

 

グレー「んー……?あ、夜の持ってたお喋りソード!」

 

あの時見た剣の名前をグレーはまだ知らない。

 

プラグ「異様にデカい剣でバディって条件に該当するカードは、少なくとも俺が知る中ではソイツしかない。もしかしたら雇い主の親族かもしれないから今度聞いてみる。」

 

グレー「意外なところに手がかりがあったね。」

 

プラグ「だな。ズズズ…。」

 

グレー「ガツガツ。」

 

エルシニアス「フゥ、美味であった。」

 

全員がラーメンを食べ終わる頃、プラグは違和感に気がついた。

 

プラグ「……あれ?グレー、お前夜って言ったか?」

 

グレー「ん?言ったけど、どしたの?聞くんだよね。」

 

プラグ「夜……。……あ!」

 

プラグは気がついた。以前蒼とデートをしていた少女が夜剣と似ていることに。

そして頭を抱える。

 

プラグ「マジかー…。あの子雇い主だったのかー…。」

 

プラグは後悔した。

あの日の映像を『デート逃走中〜警察にしょっぴかれるまで〜』などとタイトルをつけ、大爆笑しながら見ていたことを。




今回はここまで。
流石に情報出しすぎましたかね、とりあえず感想&活動報告お待ちしてます。
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