いつか、すべてを燃やし尽くす日まで   作:炬燵猫鍋氏

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ヒーローの収入は基本出来高歩合制。

そう教えたときの親友の顔は今でも忘れない。




オールマイトってどうやって通勤してるんだろう。運転免許持ってるのかな。

文字通りの悪夢の時間は終わり、僕達は日常に帰った。

 

警察での証言の時に聞き出せた限りでは、あの男は個性を悪用した強盗犯(ヴィラン)で、個性は目を見た相手を悪夢で5分の金縛りに掛けること。

悪夢の内容は、掛けられた者の心が生み(生む=一般的)(産む=限定的)出すのだとか。

 

サンタさんに個性を貰う前の体験がフラッシュバックしたのは理解できた。

だが、それでは説明のつかないヴィジョン。

確かに僕の心を抉ったあのイメージはいったい何だったのか?

 

まあいい。

他人の心を窺う(伺う=聞く・尋ねる・訪ねるの謙譲語)術はそれなりに得たつもりだけど、自分の心こそ不可解。

そういうことにしておこう。

何より、あの日の事を考えていると、かっちゃん……爆豪勝己が笑いながら言いやがった言葉まで引きずることになる。

 

良かったことだけ考えよう。

 

後日、あらためて()()で麗日さんの家具を買いに行き、持ち帰って設置まで済ませた。

麗日さんの個性で重さを消して、かっちゃんと二人で運んだよ。

 

「これバレたらお巡りさんとかに叱られへんかなー。」

 

「なら重そうに持ちゃあいぃんだ。だろ、イズク。」

 

「あはは。微妙に難しいよね、それ。」

 

うん、麗日さんとかっちゃんはソコソコ親しく会話するようになった。

まさしくトラウマ(怪我)の功名。

 

 

麗日さんは凄いと思ったことを素直に称賛する子で、僕とかっちゃんの事を聞くたびに感心し、褒め称えた。

これがおべっかの類いだったなら、僕はもちろんの事かっちゃんも直ぐに見抜いていたろう。

裏表のない明るい有り様は、人付き合いが苦手なかっちゃんにしても満足のいくものだったらしい。

 

僕の事を麗日さんが褒め、かっちゃんがドヤ顔する姿は少しばかり眩しかったけど。

 

そして、ほんのさわりではあったけれど、麗日さんの個性を体感してのトレーニング。

最初は海浜公園で行うつもりだったが、9ヶ月かけて清掃したあの場所は、皆が利用する本来の姿に戻っていた。

うん、ちょっと個性のトレーニングは無理かな。

 

でも、ゴミを片付けるのはやはり気持ちいい。

たくさんの人が笑ってくれるのは嬉しいもの。

 

と、いうわけで有料のトレーニングルームを借りた。

雄英の新入生という身分で割り引いて貰えたのは少し驚いた。

 

結論。かっちゃんは天才。いや知ってるけど。

 

まさか半日とかけずに自身が無重量状態での爆破のコントロールを掴むとは思わなかった。

あとは、麗日さんの個性の把握と検証が進んだのは嬉しい。

 

彼女の個性はあくまでも重力影響を見かけ上の0にすることであり、質量その物に干渉する訳ではなく、結果として、慣性の法則の支配下に有り続けるということが暫定的に立証出来たといえる。

これはエグゼキューターを破壊したときの切島くんの貫通力からも仮定できていたことなのだけれど、切島くんの個性の検証を精査に行ったわけでもないので、僕の中でも今回の検証で……

 

おっといけない。

新しい個性について考え始めると思考が集中しすぎるのが僕の悪い癖だ。

ちなみに僕も三次元的機動の()()は体感できた。

麗日さんはニンジャだぁっ!て喜んでいた。

 

 

 

 

さて、その他の雑事も少なからず有ったけれど、僕達は入学の日をようやく迎えた。

 

「ハンカチも!?ハンカチは!?ケチーフ!」

 

緊張してるのかな?何故か母さんがハンカチの所持にこだわっていた。

玄関の扉を開ければ不敵に笑うかっちゃん。

僕ら二人の姿を見て、母さんが微笑む。

 

「超カッコイイよ。二人とも。」

 

「あざっス。」

 

 

うん、ところでかっちゃん。ノーネクタイでいくんだ。

いきなり着崩すのもキャラ的には有りか……。

今日からの日々の為に練習を重ねたネクタイに触れながら、なんとなく羨ましかった。

 

 

 

セキュリティの高さも自慢らしいけど、分厚い金属の隔壁を備えたゲートを通る時はちょっと緊張した。

雄英バリヤーっていったっけ?

誤作動とかしたら怖いよね。

 

広いなあ、ホントに。

 

敷地内に併設された各施設は当然として、校舎内部も実に贅沢な空間の使い方をしている。

これで1学年につきヒーロー科が2クラスしか無いんだものなぁ。

もちろん、普通・サポート・経営の9クラスを低く見るつもりは毛頭無いが、本当に少数精鋭主義なのだと実感する。

 

うん。つまり、ここでヒーローライセンスを得る事の意味は、他校の出身とは()()が異なるということだ。

さぁ、始めよう。僕のヒーローアカデミアの計画(物語)を。

 

 

教室の扉も大きいよ。

5メートルの身長の異形型ってそんなにいないよな。

そんな事を考えながら、1-Aの扉をくぐる。

かっちゃんとも同じクラスだ。助かる。

余裕を持って登校したおかげか、教室には3人しか来ていなかった。

 

「緑谷君!同じA組なのだな!あらためて宜しくお願いする。」

 

飯田君。礼儀正しいなぁ。ちょっと角ばった動きが笑えたけど。

 

「こちらこそ。いっしょのクラスで嬉しいよ。」

 

「俺もいるぜ緑谷ぁっ!」

 

うん?……切島君?イメチェンかな。

真っ赤に染めた髪をガチガチに固めて、角のようなヘアスタイルに仕上げている。

 

「切島君、カッコイイね。その髪。」

 

「へへ、気合い入れてきたぜ!」

 

うん。よく似合ってる。いいな、キャラが強くなってるじゃないか。

 

「あーっ!アレだよね!切島の言ってた、リーダー!」

 

お?切島くんの友達かな。

ピンクの髪、あ、ちょっと髪型が僕と似てる。

そこから生えた短い角。

紫っぽいピンクの肌。反転目。

可愛い異形型の子だなぁ。アイドル路線行けそうだ。

 

「緑谷出久です。切島君達には実技試験で助けてもらいました。」

 

「あたし、芦戸三奈。よろしくね!」

 

かっちゃん。僕が女の子と話すと不機嫌オーラ出すのやめようよ。

 

そこから続々と入ってくる少年少女。

 

麗日さんが手を振って、軽くかっちゃんが返しているのが印象的だ。

お、常闇君も来た。

 

「貴殿の言った通り、我ら再会する宿命であったな。」

 

常闇君、流石だ。

でも、チーム緑谷(仮)、全員A組か。偶然、かな?

そうでないとしたら、雄英サイドが僕に対しての観察を行うための材料というところか。

 

「あたしも同じ試験会場だったんだ。凄いね緑谷。」

「再会できたね、ムッシュ☆」

「おいおい、お前何もんよ?いきなり話題の人?」

 

囲まれたよ。

はは。掴みはオッケーかな……。

ん?寝袋?

 

ゼリー飲料を咥えた男性が、寝袋にくるまって現れた。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。」

 

ゼリー飲料を一瞬で飲み終えて、ゆらりと這い出てきたよ。

静かになるまで8秒だとか、合理性に欠くとか言われた。

常識的な言動を欠いてる人に言われたくないなあ。

 

相澤消太……担任、か。

体操服を着てグラウンドに出ろと言われたので、机の中に入っていたソレを持って、更衣室に向かうことに。

 

あ、一応聞いておこうかな。

 

「ヒーローネームを名乗らないのは、校内・校外で対応が変わってくるからですか? ()()()()()()()()。」

 

あ、睨まれた。

 

予定が変わってちょっとイラッとしただけですよ。

入学式の新入生代表挨拶、かっちゃんプロデュースの機会が無くなるってことでしょう?

 

さて、どれだけ理不尽で非合理的な初日になるのかな。

一周まわって楽しみだ。




個性把握テスト……イレイザーヘッドvsイズクのネゴシエーションが前哨戦かな。
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