遊戯王Fool ~バーガー中毒者の黙示録~   作:レルクス

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第十八話

「ふああ……結構楽勝だったね」

「ドローカード連発して騎士たちでぼこぼこにしただけだろお前」

「まあ、私はそれでもいいと思うが……」

 

 とある空間。

 どんな場所なのか、と言われても説明が難しいので何があるかを説明しよう。

 

 ① 草原

 ② 青空

 ③ 大樹

 

 まあこんな感じの空間だ。

 そこに、四つの意思を持つ存在が話している。

 あくびをしているのは、言ってしまうと『合神竜ティマイオス』だろう。顔は某相棒ではなく恵遊だが。

 メッシュも紫色で、一瞬だけでてきたときの容姿である。

 

 白い光に包まれた存在は、形が整っているのに、大事なピースが欠けたような水晶。

 黒い光に包まれているのは、ピースはそろっているが、エネルギーが足りていないようだ。

 

「……」

 

 黙り込んでいるのは、フードをかぶった少年。

 まだ幼い容姿で、身長も低く、顔を隠している。

 ただ、その奥に、青いメッシュがちらりとみえている。

 

「で、黙り込んでいるけど、君はどう思うんだい?」

「……僕は、学園対抗戦が始まるまでに、僕ら四人が全員、とりあえず完成しておくべきだと思う」

 

 ティマイオスにこたえるのは、声変わりしていない高い声。

 

「フン!我は、我に匹敵する存在のカードがなければ憑代にはせんぞ!」

「私はすでに決めているが……まだエネルギーが足りないな……」

「……こんな事情だけど、大丈夫なのかな」

 

 ティマイオスは苦笑いになった。

 そしてそんなティマイオスを、フードの少年が見つめる。

 

「どうかしたのかい?」

「……ティマイオスって長いから、ティオスでいい?」

「構わないけど……長いかな」

「うん」

 

 少しの間沈黙が流れる。

 

「まあ、うん。わかった。僕のことはティオスを呼ぶといい。僕も、これからはそう名乗るとしよう」

 

 器が広いというより、これ以上話しても面倒だと思ったのだろうか。

 ティオスは、なんだかんだと受け入れるのだった。

 

 ★

 

 ボーダーとエクソダスを襲ったシークレット・アライアンス。

 作戦を考えていた隊長はボーダーで倒され、エクソダスに向かったアウトローたちは処刑人のもとで断罪された。

 二つのデュエルスクールにかかわる事件ではあったが、解決したかどうかはともかく、区切りがついたのは事実だろう。

 

「特に何もなかったみたいに元通りになったね」

「まあ、たぶんすぐにそうなるとは思っていたけどな」

 

 ボーダーのほうは、まだ予測は不可能。

 だが、エクソダスには、界人がいる。

 だからこそ、恵遊は心配などしなかった。

 

「もうそろそろ、学園対抗戦だな」

「そうだね。私も見るのは楽しみだよ」

「すごいデュエルばかりだからね」

 

 恵遊は、興奮した様子の凜子と茜をみて、それほど興奮するものなのだろうかと思った。

 恵遊が学園対抗戦に臨むのは、ただ一つ。界人に勝つため。

 青芝恵遊としてしかかなわない、『約束』の一つだ。

 

(……?)

 

 恵遊はふと、何か不思議なものを感じた。

 興奮している様子の二人。

 その興奮の質が、二人で異なるのだ。

 

(……まあいいか)

 

 ひとまず置いておくことにした。

 

「それにしても、何か不穏な空気が流れているよね。一段落ついたのに」

 

 茜が外を見てそうつぶやいた。

 

「……そうだな」

 

 恵遊も感じ取っていた。

 言葉では説明しにくいものだが、そういったものを感じる。

 その時、思い出したように凜子が言った。

 

「最近、エキセントリック・テンスに対して護衛をつけるって意見もあるね」

「……それ、PBはどうするんだ?」

 

 正体不明であるPBの護衛などどうやってつけるのだろうか……。

 

「アハハ……確かにそうだね」

 

 茜がうなずく。

 

「それにしても護衛か……」

 

 恵遊がどうにかする前に、神代家が動きそうだが。

 

「とにかく、気を付けないとね。この時期になると、いろんな人たちが動き出すから」

 

 茜の言うとおりだろう。

 表にしても裏にしても、動くものは多いはずだ。

 

(それにしても、シークレット・アライアンスか……)

 

 どうしたものかと恵遊は思っていた。

 ただ、考え事をしているときであってもハンバーガーを食べる手が止まらないところを見ると、優先順位に変わりはないらしい。

 

 ★

 

 いやな行動。というのはいろいろあるものだが、少なくとも隠れて動くのなら『夜』だ。

 ボーダーは監視カメラも多く、よく凜子(バカ)が連行されている。

 だが、運がいいのか悪いのか、大した準備もないのに計画を進めることができる人間はいるものだ。

 

「よし、あとはこれを使って恵遊から精霊力を回収すれば、グフフフフ」

 

 梶原樹。

 少し前までエキセントリック・テンスにいたデュエリスト。

 成績に関してはいいものではないといわれており、PBとのデュエルでエキセントリック・テンスの座を降りることになった。

 

 それからの彼はゆがんだ。

 もとより、実力というより親からもらったデッキで強くなっていたこともあり、モンスターの動かし方も親から言われた通りであり、『親の七光り』で生きていた人間。

 

 親から教えられたタクティクスが解析される前に戦績を積み上げてエキセントリック・テンスになったが、そこからはとにかく負けないためのデッキ構築を続けた結果、戦績は落ちていき、そしてあのPBとのデュエルでその権威はなくなった。

 あのデュエルを境に、梶原家の当主でありプロデュエリストでもある親からは見捨てられ、いないも同然の関係になってしまった。

 

 そんな彼に近づいたのは、シークレット・アライアンス。

 彼らは復讐心をたぎらせている樹の心にすべりこんだ。

 簡単に要点だけまとめると、

 

 ・恵遊はシークレット・アライアンスから精霊力を奪った。(視点を変えると一応間違っていない)

 ・シークレット・アライアンスの壮大な計画のためにはその精霊力が必要。

 ・恵遊のデュエルタクティクスは、精霊力に依存したもの。我々から奪ったもので強くなったに過ぎない。

 ・君が彼から奪い返すことで、彼の実力は盛大に落ちる。

 ・そして、我々から与えた報酬で、君はエキセントリック・テンスに返り咲く。

 

 とまあ、いまどき小学生でも信じないようなものだが、親の言うことだけを聞いて傲慢な態度だった彼には、納得できるだけの指示を出すことができるものがいれば簡単に乗っかるのだ。

 

 ちなみに、気持ちの悪い笑い声を出している樹だが、その鼻の下は伸びている。

 シークレット・アライアンスとどのような契約をしたのか、少なくとも頭のいい契約ではないだろう。

 報酬に関していえば、いい話があるようだ。

 

「これは回収。奪ったものを取り返す聖なる任務だ」

 

 だったら堂々と正面から行けばいいだろうに。

 

「この機械には、奴が持つ精霊力に共鳴し、眠らせる効果がある。今頃ぐっすり眠っているだろう。あとはこれを使って……」

 

 そういって樹が取り出したのは『掃除機』であった。

 ……シークレット・アライアンスにも技術者はいるのだが、回収装置を作ったときになぜかこんな形になったのだ。

 掃除機を構えて男の部屋に侵入するという図が何となく嫌だったので、簡単に引っかかりそうな樹に任せたというわけである。別に誰でもよかったけど。

 

「よし、鍵は空いているな」

 

 大丈夫かセキュリティ。

 ……と言いたいところだが、精霊力と言うよく分からんエネルギーを使った技術を用いて向かって来ている連中だ。いくら電子世界をファイアウォール・ドラゴンが泳いでいるとはいえ、無理なものは無理である。

 

 恵遊はぐっすり眠っているようだ。

 相変わらずの青いメッシュもへなへなになっている……いや、関係ないか。

 

「あとは合言葉を声量大で言えば機械が動きだすわけだ。ボタンを押さず、音声認証と言う、ドジを防ぐにはもってこいのシステム。完璧だ。実に良い作戦だ」

 

 さっさとやれ。

 

「ではいくぞ」

 

 掃除機を向ける。

 

「起動せよ!スピリット・エナジー・バキューーーーーーーーーーム!」

「……なんていうんだろう。言われたことを言われた通りにするって、実はすごいことなんだって思えてきた……」

「……え?」

 

 樹はポカンとした。

 その視界には、とてもかわいそうなものを見るようで、何かさとったような表情をした『紫色のメッシュの恵遊』がいた。

 

「……誰だお前は!」

「僕の名前はティオスだ。まあそうだね。その掃除機が気かない相手だということは確かだよ」

「なら逃げる!」

 

 言うが早いか、樹はすぐさま逃走した。

 

「あ。こら、待ちなさい!」

 

 ティオスはものすごく急いで寝間着から制服に着替えると、デュエルディスクを掴んで走りだした。

 

『おい、なにおいていかれてるんだ』

『まあ、私もあの頭の切り替え方には驚いたが……』

「いや、僕がみた限り、彼はマニュアル通りにするのが得意なタイプだ。ただ、そこに切り替わるのが早すぎる」

 

 自らの意思が全く介在しない。

 そう思えるほどに、樹の逃走までの時間は短かった。

 

「えーと、何処に行った?」

『Dホイールのエンジン音が聞こえる。多分、学園の外に向かっているね』

 

 幼い声が聞こえてくる。

 ……というか、どうやって聞いているのだろうか。

 

「よし分かった!……あれ、恵遊ってライセンス持ってるよね」

『持っているぞ。我はしっかり確認しておいた。暇だったからな!』

 

 そういうぶっちゃけは良くない。

 

 ティオスはDホイールにまたがって、エンジンをつける。

 

「精霊力は……向こう側だね」

 

 発進させた。

 はっきり言って速度制限ギリギリだが、精霊力をたどっていって追う。

 

 十数秒後、高速道路に差し掛かった時、樹が見えた。

 

「よし!」

 

 Dホイールの通信モニターを起動する。

 すると、走行中の樹のDホイールのモニターとつながった。

 

「追ってきたか」

「その通りだ。君が遭遇したシークレット・アライアンスの情報、それを聞かせてもらう!」

「フン!話す義務はない……が、もし逃げきれそうにない場合、デュエルで撃退することも指示された。受けてやる」

 

 そう言うと同時に、樹の体から『黒い精霊力』が溢れてくる。

 

『ブープが持っていた精霊力と似ているな』

『私が見る限り、サーガとも似ている』

『シークレット・アライアンスのベースになっているタイプなのかな。彼らほどの圧力はないし』

 

 三者三様。

 ただ決まっているのは、デュエルするのはティオスだということだ。

 

 高速道路に乗りこむ。

 お互いにデュエルディスクを展開。

 そして、カードを五枚引いた。

 

「「ライディングデュエル。アクセラレーション!」」

 

 ティオス LP4000

 樹    LP4000

 

「先攻は譲ってやろう」

 

 樹が減速して後ろに下がってきた。

 

『……何を仕掛けて来るのかわからないな』

『ああ。彼に関しては情報が少ない』

『PBとデュエルしてた時、宣告と強貪しかみなかったもんね』

 

 そういえばそうだった。

 

「僕は手札から、『クリティウスの牙』を発動。手札の『聖なるバリア -ミラーフォース-』を墓地に送り、『ミラーフォース・ドラゴン』を特殊召喚!」

 

 ミラーフォース・ドラゴン ATK2800 ☆8

 

「カードを一枚セット。ターンエンドだ」

「僕のターン。ドロー!」

 

 樹がカードをドローして頷いた。

 

「ミラーフォース・ドラゴン……確か、効果、攻撃の対象になった時、相手フィールドのカードを全て破壊する効果だったはず」

 

 『聖なるバリア -ミラーフォース-』と比べて格段に効果の範囲が広がっている。

 無論、この対象範囲故に隙もあるのだが、ピンポイントで攻めるのは本来は難しい。

 

「僕は手札から、『太陽風帆船』を特殊召喚」

 

 太陽風帆船 ATK800→400 ☆5

 

 少々意外なモンスターが飛んできた。

 

「手札を一枚捨てて、『クイック・シンクロン』を特殊召喚」

 

 クイック・シンクロン ATK700 ☆5

 

「そして、このコストで墓地に捨てた『素早いアンコウ』の効果に寄り、デッキのアンコウを二体、特殊召喚する」

 

 素早いアンコウ ATK600 ☆2

 素早いアンコウ ATK600 ☆2

 

『む?我の予想より堅実な手だな』

『レベル7シンクロならドリル・ウォリアーだと私は推測するが……』

『ノヴァインフィニティ……いや、違うね。これ』

 

 樹は天に手を伸ばす。

 

「僕は素早いアンコウ二体を、リンクマーカーにセット、『マスター・ボーイ』をリンク召喚!」

 

 マスター・ボーイ ATK1400→1900 LINK2

 

『マスター・ボーイか……他にも候補はいろいろあると私は思うのだが』

『む?我はハリファイバーあたりが飛んでくると思っていたぞ』

『高かったんじゃない?値段』

 

 そんなことを気にするタイプではないだろう。

 あと、ティオスはすごく、うるさいと思った。

 

「そして、レベル5のチューナーである『クイック・シンクロン』と、レベル5モンスターである『太陽風帆船』を墓地に送る!」

「そ……その召喚方法は……」

「現れろ。『アルティマヤ・ツィオルキン』!」

 

 アルティマヤ・ツィオルキン DFE0 ☆12

 

「え……」

『嘘だろ』

『な、なんで』

『この状況で、タクシーが……』

 

 少年、それはダメだ。

 ただ、あのモンスターは出せるカードが多すぎる。

 警戒して損することはないだろう。

 

「僕はカードを一枚セット、そして紅き竜の効果。『月華竜 ブラック・ローズ』を特殊召喚!」

 

 月華竜 ブラック・ローズ ATK2400 ☆7

 

「ぶ……ブラック・ローズ……」

 

 ピンポイントで狙ってきやがった。

 

「効果を発動。ミラーフォース・ドラゴンには、エクストラデッキに戻ってもらう」

 

 ミラーフォース・ドラゴンが消えて行く。

 

「そしてバトルフェイズ。ブラック・ローズでダイレクトアタック!」

「罠カード『ガード・ブロック』を発動。ダメージを0にして一枚ドロー!」

 

 ティオスはカードをドローして、短く唸り声を上げた。

 

「マスター・ボーイでダイレクトアタック!」

 

 ティオス LP4000→2100

 

「ターンエンドだ」

「僕のターン。ドロー!」

 

 ティオスのターン。

 手札は四枚。

 

「僕は『カードガンナー』を召喚!効果を使って墓地肥やしとパワーアップ!」

 

 カードガンナー ATK400→1900 ☆3

 

 カードガンナーが出現。

 リロードをすると同時に、『いやいや!Dホイール早すぎるって!』と言いたそうな雰囲気で、全力でキャタピラを動かし始めた。

 そもそも、キャタピラと言うのは不整地における安定走行のために開発された概念である。

 決して、舗装された高速道路で走り回るためには作っていない。

 というかそもそも、一番早い戦車でも時速百キロは越えないのだ。八十キロくらい出せるものも少数存在するので高速道路でもぎりぎり行けるけど。

 

「安心しろ。すぐに楽になる。もう少しの辛抱だ」

 

 カードガンナーは『心配はいいから早くやれ!……え、楽になるってどういうこと!?』と言いたそうにしている。

 

「……ごめん。『リミッター解除』を発動!」

 

 カードガンナー ATK1900→3800

 

 カードガンナーは『お前マジ後でぶっ飛ばすからな!』と言った感じでパワーを限界以上に引き出した。

 

「バトル!カードガンナーでブラック・ローズを攻撃!」

 

 樹の目には同情の色があった。

 

 樹 LP4000→2600

 

「そして、メインフェイズ2だ。『儀式の下準備』を発動。デッキからバーガーセットを手札に加える。そして、レシピを発動。墓地のプレサイダー。クリボール。手札のサクリボーを素材に儀式召喚!『ハングリーバーガー』!サクリボーの効果で一枚ドロー」

 

 ハングリーバーガー DFE1850 ☆6

 

 そして降臨するバーガー。

 ちなみに恵遊のバーガーは必要に応じて宙を舞うので、カードガンナーのように忙しいことにはならない。

 

「そして、『補給部隊』を発動して、ターンエン――」

「『砂塵の大竜巻』を発動!」

「くっ……」

「補給部隊を破壊し、手札のカードをセット、紅き竜の効果で、『妖精竜 エンシェント』を特殊召喚」

 

 妖精竜 エンシェント DFE3000 ☆7

 

『なんだか。普通に強いな』

『我も、あのように使いこなすとは想定外だった』

『ティオスがいいようにあしらわれてるね』

 

 反論できない。

 

「ターンエンドだ。カードを一枚ドローする」

 

 カードガンナーが爆散した。

 

「僕のターン。ドロー!」

 

 樹はドローしたカードを見て頷く。

 

「僕は『チキンレース』を発動」

「チッ……」

「エンシェントの効果で一枚ドロー。そして、チキンレースの効果で、1000ポイント払って一枚ドローだ」

 

 樹 LP2600→1600

 

「そして、リンク2のマスター・ボーイとエンシェントを、リンクマーカーにセット、『トラフィックゴースト』をリンク召喚!」

 

 トラフィックゴースト ATK1800 LINK3

 

「実力が絶対におかしいって……」

「カードをセットして、紅き竜の効果。『スクラップ・ドラゴン』を特殊召喚!」

 

 スクラップ・ドラゴン ATK2800 ☆8

 

「スクラップ・ドラゴンの効果。スクラップ・ドラゴンとハングリーバーガーを選択して破壊する!」

「む……」

 

 ハングリーバーガーが吹き飛んだ。

 恵遊とは違うデッキ構築のため、少々護りきるのが難しい。

 

「そして、スクラップ・ドラゴンが破壊されたことで『シャドー・インパルス』を発動!」

「バカな……」

「現れろ。『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』!」

 

 クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ATK3000 ☆8

 

『あ、あり得ないほどかみ合っているタクティクスだ』

『我もこれは想定以上だぞ』

『もともと実力はある方だね。ただ……あの紅き竜。あいつが運命力を増幅させているんだ』

 

 デッキにおいて、一枚のカードが他のどんなカードを組み合わせることが出来るのか。

 サーチやリクルート、サルベージなど、他のカードを動かせるカードと言うのは多数存在する。

 それらのカードを、デッキの中でうまく組み合わせていくことが重要だ。

 よく重要視される『シナジー』というのはそう言うものである。

 

「バトル。クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンで、ダイレクトアタック!」

「手札のバトルフェーダーの効果を発動だ!」

「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンの効果で無効にする」

「ならば、墓地の『超電磁タートル』を除外する!」

「……ターンエンドだ」

 

 やっと終わったか。

 ティオスのフィールドにカードはなく、墓地の防御カードもない。

 そして、紅き竜の力で運命力が上がっているとするならば……

 

「僕のターン。ドロー!」

 

 いいのか悪いのかわからないカードが来た。

 

「まずはチキンレースの効果で一枚ドローだ」

 

 ティオス LP2100→1100

 

「……カードをセットして、『命削りの宝札』を発動してさらに三枚ドロー。モンスターとバック二枚をセットして、ターンエンドだ」

「守ってばかりと言いたいところだが、油断はできないな。僕のターン。ドロー!」

 

 樹は引いたカードを見て表情を曇らせる。

 

「まずは、チキンレースを墓地に送って、新しいフィールド魔法をセット。これにより、紅き竜の効果を発動。『魔王龍 ベエルゼ』を特殊召喚!」

 

 魔王龍 ベエルゼ ATK3000 ☆8

 

「バトルフェイズ!クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンで、セットモンスターに攻撃!」

「罠カード『ブレイクスルー・スキル』を発動。クリスタルウィングの効果を無効にする!」

「構わない」

 

 クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンが攻撃したのは……。

 

「カードガンナーか」

「ああ。そうだ」

 

 破壊されたことで一枚ドロー。

 

「なら、ベエルゼでダイレクトアタック!」

「『パワー・ウォール』を発動。デッキから六枚。カードを墓地に送る!」

「むう……トラフィックゴーストでダイレクトアタック!」

「墓地肥しをさせた今。もう無駄だ。墓地から『ネクロ・ガードナー』を除外する!」

 

 かなりエンジンが乗ってきた。

 

「……ターンエンドだ」

「僕のターンだ」

 

 ティオスは考える。

 ブレイクスルー・スキルを墓地に送ったことで、クリスタルウィングでもベエルゼでも破壊が可能になった。

 

(ここは……)

 

 そう考えた時だった。

 

『ふむ、ティオス。やつを奪え』

「え?」

『紅き竜だ。あれほど運命力を左右出来る力、我にふさわしい。我が力の糧としよう』

『無茶苦茶な……』

『いや、ティオスのフィールドに残ったセットカードは『リビングデッドの呼び声』で、カードガンナーの効果でドローして手札も確保した。行けないことはないよ』

 

 言いたいことは分かった。

 幸い。まだ墓地の防御カードは余裕がある。

 

「僕のターン。ドロー!」

 

 ティオスはドローしたカードを見て微笑む。

 

「まずは『リビングデッドの呼び声』を使い、『ハングリーバーガー』を蘇生!」

 

 ハングリーバーガー ATK2000 ☆6

 

「このタイミングでハングリーバーガーだと。どういうことだ?」

「こういうことだ。僕は手札一枚をコストにして、速攻魔法『超融合』を発動!」

「超融合だと!?」

「僕のハングリーバーガーと、君のアルティマヤ・ツィオルキンを融合する!」

 

 超融合の力の前には、いかなる力も通用しない。

 さらに言えば、このようなパワーカード、普通なら引きこむことは困難。

 しかし、『恵遊の融合召喚の才能その物』であるティオスなら、それは可能。

 

「融合召喚。『波動竜騎士 ドラゴエクィテス』!」

 

 波動竜騎士 ドラゴエクィテス ATK3200 ☆10

 

「ドラゴエクィテス……む、な、なんだ!?」

 

 力が衰えたようにDホイールが減速する樹。

 

(アルティマヤ・ツィオルキンの力がかかわっていたのは間違いないか)

 

 そして、その奪った力は……。

 

『フフフ……フハハハハハハ!完成したぞ!』

『アルティマヤ・ツィオルキンっていうと長いから、アルテでいい?』

『水を差しすぎだよ……』

 

 まあ、賑やかなエネルギーになっていた。

 

「だ。だが、まだ私の方が優勢だ!」

「それはここまでだ。墓地からブレイクスルー・スキルの効果。クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンの効果を無効にする!」

 

 色あせた。

 

「そしてバトルフェイズ。ドラゴエクィテスで、クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴンを攻撃!」

 

 樹 LP1600→1400

 

「ぐ……」

「僕はターンエンドだ」

「僕のターン。ドロー!……くそっ」

 

 カードが悪かったようだ。

 

『アルティマヤ・ツィオルキンを前提としたコンボ。私も悪くはないと思うが、蘇生制限が……』

『そのあたりが分かっていなかったようだな。まあ、次からの教訓とするがいい』

『途中まで追いつめられていたのに……『パワー・ウォール』でずいぶんと変わったね』

 

 うるさいな。

 

「ベエルゼを守備表示に変更。トラフィックゴーストでセキュア・ガードナーをリンク召喚だ。ターンエンド」

 

 魔王龍 ベエルゼ   ATK3000→DFE3000

 セキュア・ガードナー ATK1000 LINK1

 

 一応次善策も投入されていたようだ。

 

「僕のターンだ。ドロー!」

 

 良いカードだ。

 

「『マジック・プランター』を使って、リビングデッドの呼び声をコストに二枚ドロー。『ハーピィの羽根箒』を発動!」

 

 全てを割り尽くした。

 

「そして、墓地の『ADチェンジャー』を除外することで、ベエルゼを攻撃表示に変更し、『一騎加勢』だ!」

 

 魔王龍 ベエルゼ   DFE3000→ATK3000

 波動竜騎士 ドラゴエクィテス ATK3200→3700

 

「バトルだ!ドラゴエクィテスで、ベエルゼを攻撃!」

 

 樹 LP1400→0

 

 消し飛ぶ樹のライフ。

 

「さて、話を……完全に気絶しているね」

 

 樹は気を失っていた。

 

「どうする。起こすか?」

『いや、もうそろそろ恵遊が起きる時間だ。私たちの存在を恵遊が認知することを、ハングリーバーガーが許可していないから、帰ることを優先する必要がある』

『我は満足しているからな。問題はない』

『僕も帰っていいと思うよ』

 

 そう言うわけで、ティオスは帰ることにした。

 

 ★

 

 次の日の朝。

 

「……なんか、しっかり寝たはずなのに、疲労感があるな。病院に行った方がいいかな」

 

 さすがにDホイールを操作しながら手加減することはティオスには不可能。

 しっかりと、疲労の方は恵遊の方に残るのだった。

 あと、病院に行くことに関しては周りも納得するだろうが、おそらく精神科に行くことを進められるだろう。いろいろな意味で。

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