遊戯王Fool ~バーガー中毒者の黙示録~   作:レルクス

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第四話

 ボーダーの敷地内の広場の庭の手入れ度はすごい。

 丁寧に植えられているだけならともかく、季節を超越したような花が植えられていることもある。

 デュエルについて学ぶ学校ではあるが、それらについて何か感じるものも多いので、見ているものも多いのだ。

 

 次の日の放課後。

 広場があるスポット。

 恵遊は茜と話していた。

 

「そう言えば、恵遊君って美咲さんと兄妹なんだよね」

「ああ。そうだ」

「じゃあ、もともと神代恵遊(かみしろけいゆう)だったの?」

「勿論だ」

「いつから青芝恵遊になったの?」

「小学五年の夏ごろだ。学校も転校したな。良いデュエル相手がいたよ。全校生徒の人数が少なかったから、全学年一クラスずつしかなかったんだけどな。その分、そいつらとはいろいろやったなぁ」

「へぇ……」

 

 印象深いやつもいて、今でも思いだす。

 

「例えばどんな人がいるの?」

「そうだな……初期ライフが4000で始まらなさそうな奴だ。いやまあ、4000で始まるんだけど」

「……え?」

 

 茜は「はぁ?」と言う顔になった。

 まあ、その気持ちは分からなくもない。

 

「恵遊君!」

「うおっ!」

 

 凛子が急に湧いて出てきた(失礼)。

 

「どうした?」

「その良いデュエル相手って、男?女?」

「男」

「ならよし」

 

 なにが『ならよし』なのだろうか。

 その時、遠くから『何かが走ってくる音』が聞こえてくる。

 

「おい、恵遊!貴様この学校に来ていたのk――」

 

 その男は、恵遊の近くに来たので靴音を『ガガガガ!』と鳴らしながらとまろうとして……止まれなかった。

 そのまま何かに引っかかったのか盛大に転んで、プランターを吹き飛ばし、ベンチに激突。

 その奥にあるしげみに頭から突っ込んで行った。

 

 数秒間そのまま沈黙していたが、「うがああああ!」という雄叫びと共に復活する。

 血は流れていなかったが、制服はところどころ傷がついていた。

 いや、傷はもとからちょっとついていたが。

 

「相変わらずだな。銀二。大丈夫か?」

「この程度はいつも通りだ」

 

 やや赤い黒髪を短く切りそろえ、身長がそこそこ高い恵遊と同じ身長(178センチ)だ。

 小学校卒業以来の友人(恵遊は少なくともそう思っている)である。

 名前は、猪八重銀二(いのやえぎんじ)

 

 ちなみに、ワイルド系のイケメンの完成系と言えるほどの顔立ちで、モデルの仕事くらいスカウトされそうだ。

 

 ダメージジーンズならぬダメージブレザーのワイルド系イケメン。何も知らない人が見ればただの不良である。

 

「ん?どうしたんだ二人とも」

「……恵遊君。猪八重銀二と知り合いなの?」

「ああ。小学校のクラスメイトだ」

 

 凛子が聞いてきたのでそう答えると、凛子と茜は驚いた。

 

「え……エキセントリック・テンスと知り合いだったなんて……」

 

 茜が驚いている。

 

「あ。お前、エキセントリック・テンスなのか」

「そう言えばそんなことを言っていたような……」

 

 本人は覚えていないようだが。

 

「……お前って自分の客観的評価を気にしない性格だよな」

「待て、恵遊。それはお前だろう」

「え、俺が?」

 

 恵遊と銀二は、茜と凛子の方を見る。

 二人の顔は『どっちもどっちだろ』と語っていた。

 ので、バカ二人は気にしないことにした。

 

「そう言えば、変な会議に呼ばれたな。十人分の椅子があったぞ」

「確定だな」

「あと、真司も座ってたな」

「え、あのロリコンが?」

 

 恵遊は内心溜息を吐いた。

 というか……エキセントリック・テンスだが。

 昇平と言い、真司といい……ロリコン多くね?どうなってんの?

 

「ああ……む?どうした?」

 

 銀二が茜と凛子と見る。

 二人はまた驚いていた。

 

「え……じゃあ、神楽真司(かぐらしんじ)って……」

「小学校のころのクラスメイトだ」

「うむ。恵遊は『想定外の中毒者』、俺は『傷だらけの間抜け』、真司は『高性能のロリコン』と呼ばれていて、近所でも有名だったぞ」

 

 凛子と茜は『明らかに蔑称じゃねえか』と思ったが、何も言わなかった。

 というか、いずれにしても頭がおかしい。頭のネジが何本か外れているというより、頭がネジ以外の何かで止まっている。

 凛子は呟く。

 

「なんだろう。私、世間的に見れば過剰な思考を持ってるって言われるけど、なんか普通なんじゃないかって思えてきた」

「ヤンデレも比較対象によっては大したことない可能性があるね……」

 

 茜は何を言えばいいのかわからなかったが、とりあえず返答する。

 が、そんなことは二人は気にしない。

 

「恵遊。デュエルだ。あ、これが決闘駄賃(ハンバーガー)だ」

「おう」

 

 恵遊は笑顔でハンバーガーを受け取る。

 そして、離れてデュエルディスクを構える。

 

「え、デュエルコートは使わないの?エキセントリック・テンスなんだし、デュエルコートはいつでも使えるんじゃない?」

「知らん」

 

 凛子の言い分を一刀両断する銀二。

 というか、そういうサービスがあることをそもそも知っているかどうかと言う話である。

 

「行くぞ恵遊。今日こそ、貴様を圧倒してやる!」

「俺ら三人の中では一番戦績が悪かったもんな。銀二」

「うるさい。始めるぞ」

「おう」

 

 お互いにカードを五枚引く。

 

「「デュエル!」」

 

 恵遊 LP4000

 銀二 LP4000

 

 デュエルディスクが決めた先攻は恵遊。

 

「俺の先攻。手札から『マンジュ・ゴッド』を召喚!デッキから『ハンバーガーのレシピ』を手札に加える」

 

 マンジュ・ゴッド ATK1400 ☆4

 

 凛子が呆然とする。

 

「……恵遊君って、マンジュ・ゴッドいれてたんだ」

「何を言ってるんだ。儀式デッキなら必須だろ」

「まあ、そうなんだけどさ……」

 

 毎回毎回『儀式の下準備』一枚で必要パーツを持ってくるのだ。なんか納得いかないのも事実である。

 だが、気にしないとばかりに恵遊は続行する。

 

「俺はカードを二枚セットして、ターンエンドだ」

「先攻では儀式召喚をしない癖は変わっていないな。俺のターン。ドロー!魔法カード『予想GUY』を発動。デッキから『エルフの剣士』を特殊召喚!」

 

 エルフの剣士 ATL1400 ☆4

 

 現れたのは、ファンタジーの定番、エルフに属する剣士。

 

「やっぱり【エルフの剣士】か」

「当たり前だ。俺のフェイバリットだからな。手札から『エルフの聖剣士』を召喚!効果で手札から『翻弄するエルフの剣士』を特殊召喚する」

 

 エルフの聖剣士    ATK2100 ☆4

 翻弄するエルフの剣士 ATK1400 ☆4

 

「やっぱり並べてくるのか」

「当たり前だ。永続魔法『連合軍』を発動。俺のフィールドの戦士と魔法使いの数×200、戦士族モンスターは攻撃力がアップする」

 

 エルフの剣士     ATK1400→2000

 エルフの聖剣士    ATK2100→2700

 翻弄するエルフの剣士 ATK1400→2000

 

「お前のエルフの剣士も攻撃力が高くなって来るじゃないか」

「お前ほどじゃない」

 

 凛子と茜は銀二のツッコミに『確かに』と頷く。

 恵遊に味方はいない。

 まあ、合計攻撃力と言う意味では銀二の方が上だが、恵遊の方は意味不明だ。

 とはいえ恵遊も、手札に問題がなければ『サクリボー』の身がわり効果を使わないような性格なので、もともと理解されにくいのは間違いないだろう。

 

「カードを二枚セットして、手札ゼロだ。バトル!エルフの聖剣士で、マンジュ・ゴッドを攻撃!」

「『ガード・ブロック』を発動。ダメージは無効だ。一枚ドロー」

「なら、翻弄するエルフの剣士でダイレクトアタック!」

「『ピンポイント・ガード』だ。墓地のマンジュ・ゴッドを特殊召喚!」

 

 マンジュ・ゴッド DFE1000 ☆4

 

「チッ……伏せておいた『馬の骨の対価』を発動だ。エルフの剣士を墓地に送り、デッキからカードを二枚ドロー。これでターンエンドだ」

 

 エルフの聖剣士    ATK2700→2500

 翻弄するエルフの剣士 ATK2000→1800

 

「俺のターン。ドロー!」

 

 さて、並びやすいし、サルベージも普通にしてくるから面倒だ。

 だが、そろそろ行ける。

 

「俺はデッキトップを墓地に送り、『アームズ・ホール』を発動。デッキから『最強の盾』をサーチする」

「すでに準備は整っているのか?」

「ま、そんなもんだ。カードを一枚セットして、『手札抹殺』を発動。俺は三枚捨てて三枚ドロー」

「俺は二枚捨てて二枚ドローだ」

 

 さて、手札交換も終わったし。やるか。

 

「『儀式の準備』を発動。デッキの『ハングリーバーガー』と、墓地の『ハンバーガーのレシピ』を手札に加える。行くぞ!ハンバーガーのレシピを使って、フィールドのマンジュ・ゴッド、手札のサクリボー。墓地のディザーズを使って、『ハングリーバーガー』を儀式召喚!サクリボーの効果で一枚ドロー!」

 

 ハングリーバーガー ATK2000 ☆6

 

「お前のデッキのリリーサーはいつまで寝ているんだ?」

「知らんがな。俺は伏せておいた『最強の盾』を装備!」

 

 そして添えられる盾。

 

 ハングリーバーガー ATK2000→3850

 

「……アームズ・ホールと最強の盾をデッキに普通に積むタイプだからな、お前は。このイカれた攻撃力はあのころから変わらん」

「だろ。バトルだ!ハングリーバーガーで、エルフの聖剣士を攻撃!」

 

 翻弄するエルフの剣士は戦闘では破壊出来ない。

 いや、できないわけではないが、恵遊のデッキの攻撃力事情ではかなり困難だ。

 

「甘い!手札一枚をコストにして、罠カード『ライジング・エナジー』を発動!」

「しまった……」

 

 エルフの聖剣士 ATK2500→4000

 

 というか、コイツのエルフの剣士も人のこと言え無いんだよな。『団結の力』を入れているからすごいことになる時がざらにあるし。

 

「ハングリーバーガーを切り裂け!」

 

 しかし……。

 

『クリクリ~』

 

「な……サクリボーだと!?」

 

 聖剣士が切り刻んだのはサクリボーだった。

 

「墓地から除外して身がわりにしただけだ」

「ダメージは受けてもらうぞ」

「勿論だ」

 

 恵遊 LP4000→3850

 

「エルフの聖剣士が相手に戦闘ダメージを与えたことで、フィールドのエルフの剣士の数、よって二枚のカードをドローする」

 

 攻撃するときはハンドレスにする必要があるが、別に戦闘ダメージさせ与えたら問題はないのだ。

 

「むう……カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

 

 エルフの聖剣士 ATK4000→2500

 

「俺のターン。ドロー!」

 

 銀二の表情が変わった。

 

「行くぞ恵遊。俺がこの三年間で手に入れたエースを見せてやる!」

「な……エルフの剣士じゃないのか!?」

 

 小学校卒業時点までの話をすれば、銀二は、エルフの剣士を軸にしたビートダウンと言う構築だった。

 バトルフェイズ中は、フィールドにエルフの剣士モンスターしか存在しないことが普通である。

 そして、驚いているのは、茜と凛子もだった。

 

「猪八重銀二と言えば、『エルフの剣士』一択のデュエリストのはず……」

「エクストラデッキのモンスターも、ランク4のエクシーズモンスターが多いって聞くけど……」

 

 どうやら、ボーダーに来てからも見せていなかったようだ。

 

「それはフェイバリットだ。それに、もともと、エルフの剣士はレベル4を並べやすいからな。行くぞ!」

 

 エクストラデッキ……あそこまで言うのなら、エクシーズ召喚か。

 

「俺はレベル4のエルフの聖剣士と、翻弄するエルフの剣士でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

 出現したのは、黒き叛逆の竜。

 

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK2500 ★4

 

「だ……ダーク・リベリオンだと」

 

 確かに、出せるのは分かる。

 だが……戦士族のランク4を予測していた。

 エルフの剣士は打点を上げるにはサポートカードを使用するしかなく、それらを引かずとも突破できる手段を用意していると考えれば、確かに納得はできる。だが、それは39でも同じである。

 

「俺はダーク・リベリオンの効果発動。オーバーレイユニットの二つ使い、相手モンスター一体の攻撃力の半分を奪う!『トリーズン・ディスチャージ』!」

 

 ハングリーバーガー            ATK3850→1925

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK2500→4425

 

 あまり見ない数字になってしまった。

 だが、攻撃した時のダメージが決まっているのも事実である。

 

「バトル!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンで、ハングリーバーガーを攻撃!」

「墓地から『ネクロ・ガードナー』を除外して攻撃を無効にする!」

 

 ハングリーバーガーをネクロ・ガードナーが守った。

 カードガンナーといい、このモンスターと言い、つくづくクラゲ頭と縁のあるデュエリストである。

 

「俺はカードを一枚セット。ターンエンドだ!」

「俺のターン。ドロー!」

 

 さて、これで手札は三枚。

 やりますか。

 

「運命のコイントスだ。俺は『デビル・コメディアン』を発動!俺は裏を宣言!」

「なに……」

 

 デビル・コメディアン

 通常罠であり、発動時にコイントスの表か裏を宣言。

 当たって入れば、相手の墓地のカードをすべて除外。

 はずれたら、相手の墓地の数、デッキからカードを墓地に送る。

 どちらを狙っているかは一目瞭然。

 

(表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表表)←恵遊

(裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏)←銀二

 

 お互いの思考が、真反対に、一色に染まる。

 そして……コインは落ちる。

 

 次の瞬間、お互いに気が付いた。

 

(まずい。このままだと裏だ)

 

 恵遊は汗を流す。

 

(よし!除外からの帰還、回収ギミックはデッキにいれている。問題はない!)

 

 銀二はにやりと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、ここで動く者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――!』

 

 ハングリーバーガーに刺さっている日の丸の国旗。

 それが、急にコインの方に跳んでいったのだ。

 

「「何っ!?」」

 

 お互いに驚いた。

 まるでカードに意思があるかのように、ハングリーバーガーは、その旗を飛ばしたのだ。

 旗はコインに当たり、裏になると二人が確信した判定が覆る。

 

 そして、コインはまた落ちていく。

 

 その瞬間、恵遊と銀二は、言い表せない何かを感じた。

 

 そう、言葉に表現するなら……『お前が先に動いたんだから、俺も動いてもいいよな』とでもいうかのような……。

 

『――!』

 

 次に、なんと、ダーク・リベリオンが動いた。

 その眼は、表と裏を巡るましく変えるコインの動きが、完璧に分かっているかのように。

 

「「!?」」

 

 茜と凛子も意味不明と言いたそうな表情になる。

 そして、ダーク・リベリオンはその長いしっぽを振り上げる。

 コインの裏が上になった瞬間に、それを叩きつけようとするかのように。

 

「な……たたきつける気か!?」

 

 恵遊は絶句する。

 いやまあ、先に手(というより旗)を出したハングリーバーガーがある意味悪いのだが、それはお互いにとっても想定外な話。

 

 だが……。

 

『――!』

 

 『邪魔すんなゴルア!』とでもいうかのように、ハングリーバーガーは円盤の肉を射出。

 今まさに、コインに意識を完全に集約させていたダーク・リベリオンは、それに気が付かず、まさに『ジャスト・ミート』した。

 ダーク・リベリオンが吹っ飛んで、コインは無事。

 

 そしてコインは……

 

 チャリンと音を立てて……裏になった。

 

「「ん?」」

「「え?」」

 

 恵遊も銀二も茜も凛子も、何が起こったのかさっぱりわからないといった表情だ。

 

 だが、とにかく。決まったことがある。

 それは、このコイントスの結果は、恵遊の墓地肥しではなく、銀二の墓地のカード全除外になった。ということだ。

 

「チクショオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

「ッシャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 恵遊は拳を地面に叩きつけながら嘆きの絶叫を上げて。

 銀二は拳を突き上げて歓喜の咆哮を上げる。

 

 その間にも、シャコココ……というデュエルディスクの駆動音とともに、銀二のカードは除外されている。

 だが、何とも言え無い雰囲気がそこにはあった。

 

「……何なんだろうね。この勝負」

「凛子ちゃん。理解しようとしちゃいけない領域だと思うよ」

 

 女子勢もどんよりした雰囲気になる。

 

「はぁ……何がどうなっているのかよくわからんが、もういいや。『月の書』を使って、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンをセット状態に変更。カードガンナーを召喚して、デッキトップを三枚墓地に送って攻撃力を上昇させる。そして、『スキル・サクセサー』を墓地から除外してドーピングする」

 

 カードガンナー ATK400→1900→2700 ☆3

 

「チッ……ダーク・リベリオンが……」

「カードガンナーで、セットモンスターを攻撃」

 

 当然。ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンである。

 カードガンナーが撃ちぬいた。

 

「そして、ハングリーバーガーでダイレクトアタック」

「『リビングデッドの呼び声』を発動する。戻って来い!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK2500 ★4

 

 ダーク・リベリオンを蘇生させた……。

 いや、墓地のカードを全て除外したのだ。戦闘破壊したダーク・リベリオンしか蘇生はそもそも不可能である。

 あまり意味があるとは思えない。

 RUMでも握っているのか?

 

「『馬の骨の対価』を使う。ハングリーバーガーを墓地に送って二枚ドロー。一枚セットして、ターンエンドだ」

 

 カードガンナー ATK2700→400

 

「俺のターン。ドロー!まずは『大欲な壺』を使って、除外されているエルフの剣士モンスター三体をデッキに戻して一枚ドロー。行くぞ恵遊。『RUM-幻影騎士団ラウンチ』を発動!」

「な……銀二。お前は本当の意味で、ダーク・リベリオンを切り札にしているっていうのか……」

「そうだ。行くぞダーク・リベリオン!俺はこのカードとダーク・リベリオンを素材にして、ランクが一つ高いモンスターを、エクシーズ召喚する!」

 

 渦になど飛び込まない。

 漆黒の闇が、ダーク・リベリオンを覆い尽くした。

 

「煉獄の底より、いまだ鎮まらぬ魂に捧げる反逆の歌!永久に響かせ現れよ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!出でよ、ランク5!『ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

 ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ATK3000 ★5

 

「……変わったな。銀二」

「フン!この学園での最強の座など興味はない。俺が最初から、最後に超えたいと思っているのは、お前だけだからな」

「そうか……」

 

 そこまで期待されているのか。

 

「ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスターの攻撃力を奪う!『レクイエム・サルベーション』!」

 

 カードガンナー ATK400→0

 ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ATK3000→3400

 

 対した意味はないかもしれない。

 だが、妥協はしない。

 銀二は、そう言うデュエリストなのだ。

 頭の中でストッパーが外れているのは、あの日から変わっていない。

 

「『マジック・プランター』を使い、フィールドの『リビングデッドの呼び声』を墓地に送り二枚ドロー。バトルだ!ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンで、カードガンナーを攻撃!」

「罠カード『ダメージ・ダイエット』発動!ダメージを半分にする!」

「構わん!『鎮魂のディザスター・ディスオベイ』!」

 

 カードガンナーが破壊される。

 

 恵遊 LP3850→2350

 

「カードガンナーが破壊されたことで、一枚ドロー」

「俺はカードを一枚セット。これでターンエンドだ」

「俺のターン。ドロー!」

 

 ふむ……。

 ダーク・レクイエムはモンスター効果を無効にする効果があったな。

 

「俺は『儀式の下準備』を発動。デッキから『ハンバーガーのレシピ』と『ハングリーバーガー』を手札に加える」

「チッ……だが、お前の墓地に儀式魔人は……」

「いないが、俺が『ハングリーバーガーの儀式素材』を調達するギミックを少数しかいれていないわけないだろ」

「どういうことだ?」

「こういうことだ。墓地の『カーボネドン』を除外。デッキから『ラプラドライドラゴン』を特殊召喚!」

 

 ラプラドライドラゴン DFE2400 ☆6

 

「な……お前、レベル6のチューナーを使うようなシンクロモンスターなどいれていないだろ!」

「そもそも恵遊君って、シンクロモンスター入れてるのかな」

「凛子ちゃん。今はそれはいいと思うよ。まあでも、銀二君の言い分から察するに、入っているんじゃないかな」

 

 さて、それはそれとして。

 

「『ハンバーガーのレシピ』を使って、『ラプラドライドラゴン』をリリース。『ハングリーバーガー』を儀式召喚!」

 

 ハングリーバーガー ATK2000 ☆6

 

「何度でも出てくるんだね……あ、お肉がすごくきれい」

「……あれ?茜ちゃん。ラプラドライドラゴンが綺麗なのって鱗じゃなかった?」

 

 凛子の言う通り。

 だが……。

 

「俺のデッキのハンバーガーを作るあのイカツイおっさんは、そんな常識を突破するのさ」

「「いやムリがあるよ」」

 

 即答された。

 だが、スルーしておこう。

 

「そして、デッキトップを墓地に送って『アームズ・ホール』を発動。『最強の盾』をサーチ。そして装備!」

 

 ハングリーバーガー ATK2000→3850

 

「チッ……」

「あの日から変わらないし、お前もわかっていると思うが、銀二、俺のハングリーバーガーを前にして、攻撃力が3800以下のモンスターは、為す術もなく破壊されるのが普通だ。行くぞ!ハングリーバーガーで、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンを攻撃!『ラプラドライ・ミード・ディスク』!」

 

 すごくきれいな肉がダーク・レクイエムに向かって飛んでいく。

 

「罠カード『針虫の巣窟』を発動!……よし、墓地から『超電磁タートル』を除外!」

 

 回避してきたか。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「ふう……」

「どうするんだ?突破できるカードがもうデッキに入っていないのか?」

「そんなことを言うつもりはない。だが、ドローするつもりもない」

 

 その銀二の言葉に、茜と凛子は驚く。

 別に、『無謀な欲張り』を使っているわけでもない。

 だが、それでも、ドローしないというのは一体どういうことなのか。

 

「恵遊。俺はダーク・リベリオンを進化させ続けるといった。その場所は、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンが終着点ではない」

「どういう……まさか……」

「その通りだ」

 

 銀二は宣言する。

 

「俺は墓地の『RUM-アストラル・フォース』の効果を発動!」

 

 墓地から出てきたRUMが、銀二の手札に加わる。

 

「本当に……お前は、ダーク・リベリオンを……」

「【エルフの剣士】は、確かに俺のフェイバリットだ。だが、新たなエースとして、俺はこのカードを渡されたからな」

 

 銀二にダーク・リベリオンをエースとしそうな人間。

 ……そういうことか。

 

「俺は『RUM-アストラル・フォース』を発動!ランク5のダーク・レクイエムで、オーバーレイ!」

 

 ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンが、渦の中に飛び込む。

 そして、爆裂!

 

「二色の眼の龍よ!その黒き逆鱗を震わせ、刃向かう敵を殲滅せよ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!いでよ、ランク7!怒りの眼輝けし龍!『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』!」

 

 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ATK3000 ★7

 

「は……覇王黒竜……」

「モンスター効果発動!相手のレベル7以下のモンスターを全て破壊し、一体につき1000ポイントのダメージを与える。『オーバーロード・ハウリング』!」

 

 ダメージ・ダイエットは……いや、まだ我慢できる。

 ハングリーバーガーが消し飛んだ。

 

 恵遊 LP2350→1350

 

「そして、オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンは、このターン。一度のバトルフェイズで三回の攻撃ができる!バトルだ!オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンで、ダイレクトアタック!」

「墓地から『クリアクリボー』の効果発動。一枚ドローして、モンスターなら特殊召喚できる!ドロー!」

 

 恵遊が引いたのは……。

 

「『ハネクリボー』だ!」

「クリクリ~」

 

 ハネクリボー DFE200 ☆1

 

「なら、ハネクリボーを攻撃!」

 

 問答無用だが、らしいといえばらしい。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「燃えてきた!俺のターン。ドロー!」

 

 ……よし!昨日の夜。ハネクリボーと共にいれたネタカードが来てくれた!

 

「『賢者の石-サバティエル』を発動!ライフを半分払って、デッキから『融合』魔法か『フュージョン』魔法を手札に加える。俺が手札に加えるのは、『真紅眼融合』!」

「何!?」

 

 恵遊 LP1350→675

 

「『強欲で貪欲な壺』を使って、デッキトップを十枚除外して二枚ドロー。そして、『真紅眼融合』を発動!デッキの三枚目の『ハングリーバーガー』と、『真紅眼の黒竜』で、融合召喚!『真紅眼の黒刃竜』!」

 

 真紅眼の黒刃竜 ATK2800 ☆7

 

「れ……レッドアイズだと!?」

 

 銀二は愕然とする。

 凛子も驚いた。

 

「……というより、私としては、デッキにハングリーバーガーを三枚もいれているってことだけどね。普通に考えて事故率高いと思うんだけど……」

「凛子ちゃん。私もそう思っていたところだから言わないでほしかった」

 

 さて、行くとしましょうか。

 

「俺は手札から『一騎加勢』を発動だ」

 

 真紅眼の黒刃竜 ATK2800→4300

 

「バトル!そして、黒刃竜の効果発動。墓地の蘇生条件を満たしている『ハングリーバーガー』を装備!」

 

 そしてレッドアイズの背に乗っかるハングリーバーガー。

 いやまあ、効果で装備しているのでそうなるのもある意味納得ができないわけではないが、それはそれでどうなのかと思わなくもない。

 

 真紅眼の黒刃竜 ATK4300→4500

 

 ハングリーバーガーは黒刃竜の頭に移動する。

 そして、黒刃竜が口の中にため込んだエネルギーを吸収、円盤の肉に乗せて、射出。

 リベリオン・ドラゴンを貫いた。

 

「ぐ……」

 

 銀二 LP4000→2500

 

「あれ、メインはハングリーバーガーなんだ」

「かなり出しゃばってくるね」

 

 茜と凛子はげんなりしている。

 

「オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンは、ペンデュラムゾーンに置かれる」

「ふむ……俺はこれで、ターンエンドだ」

 

 真紅眼の黒刃竜 ATK4500→3000

 

「俺のターン。ドロー!『エルフの聖剣士』を召喚。そして、手札の『エルフの剣士』を特殊召喚して、『地獄の暴走召喚』でさらに特殊召喚。『連合軍』の効果でパワーアップ!」

 

 エルフの聖剣士 ATK2100→2900 ☆4

 エルフの剣士  ATK1400→2200 ☆4

 エルフの剣士  ATK1400→2200 ☆4

 エルフの剣士  ATK1400→2200 ☆4

 

「そして、墓地の『スキル・サクセサー』を除外して、聖剣士の攻撃力を上げる。バトルだ!エルフの聖剣士で、真紅眼の黒刃竜を攻撃」

 

 エルフの聖剣士 ATK2900→3700

 

「手札から『クリボール』の効果を発動。聖剣士を守備表示にする!」

 

 エルフの聖剣士 ATK2900→DFE700

 

「ぐ……ならば、聖剣士と剣士三体でオーバーレイ!『No.86 H-C ロンゴミアント』をエクシーズ召喚!」

「な……ロンゴミアントだって!?」

 

 No.86 H-C ロンゴミアント ATK1500→3000 ★4

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「俺のターン。ドロー!」

 

 ロンゴミアントの素材は四つ。

 戦闘では破壊されず、攻撃力は1500、効果を受けず、相手は召喚、特殊召喚できない。

 

 だが……それでも、諦めたような表情を、銀二はしていた。

 

「引いたんだな。融合モンスターの切り札を」

「ああ……決闘終了(メインディッシュ)だ。バトル。レッドアイズで攻撃時に墓地の二体目のハングリーバーガーを装備。そして、『決闘融合-バトル・フュージョン』を発動する。楽しかったぞ。銀二」

「そうだな」

 

 真紅眼の黒刃竜 ATK3000→3200→6200

 

 レッドアイズの手には、二つのバーガー。

 二体のハンバーガーは、レッドアイズの口の中のエネルギーを吸収。

 トマトと肉が射出され、ロンゴミアントを貫く。

 ロンゴミアントは戦闘では破壊されない。

 だが、デュエリストの方はダメだった。

 

 銀二 LP2500→0

 

「ねえ、茜ちゃん」

「どうしたの?」

「黒刃竜よりも、ハングリーバーガーって、階級が上なのかな」

「…………恵遊君のデッキの中ではそうなんじゃないかな」

 

 熟考したあと、茜はそう答えるしかなかった。

 

 ★

 

「またやるぞ。恵遊」

「おう。待ってるから、また来いよ」

 

 銀二は走り去っていった。

 ……どこかにぶつかる音がしているが、まあ、それはいつも通りである。

 

「恵遊君の小学校のころのクラスメイトってすごいんだね」

「まあ……そうだな」

 

 ちょっとしかデュエルしていないやつもいるが、それでも、強いと思えるものはいた。

 

「……またどこかでデュエル出来るといいな」

 

 恵遊は、そっと微笑んだ。

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