エキセントリック・テンスというのは称号であって、特権ではない。
学校側も、称号として与えはするが、それ以上のものを与える訳ではない。
だがしかし、認められるだけの実力を持っていると判断できる明確な指標であることも間違いではない。
神代美咲は鹿島朱里と言う使用人がいる。
久我昇平は近くに固定メンバーはいないが、飄々とした性格なので壁がないといえる。
猪八重銀二と神楽真司は、他との付き合いが薄い代わりに、同じ小学校のクラスメイトであったことを考えると、エキセントリック・テンス同士ではあるが、友好関係があるといえる。
正体不明のプライバシーブレイカーは、いろいろな意味で論外だ。
結果として、学校内における関係が狭い印象が強い。
とはいえ、そうではない者もいる。
高等部二年で、身長二メートルを超える大男。
鍛え上げられた肉体もあって、しかもスキンヘッド。
制服は袖が耐えられないので、改造してノースリープにしている(冬も)。
初見ではヤがつく職業についていそうだが、瞳は威厳や風格があり、落ち着いたものだ。
そんな剛毅は、エキセントリック・テンスとして与えられた部屋で、モニターを見て確認している。
そこには、恵遊のデュエルが映されていた。
「剛毅さん。あの編入生がどうかしたんですか?」
青いモヒカンと言う新世代と言うより『亜世代』なファッションをしている男子生徒が剛毅に聞いた。
その横では、ボサボサの茶髪の女子生徒があくびをしている。
青モヒカンは
「うむ……私は、この生徒はまだ本気を出していないように思う」
「そうっすかね?全てのデュエルで、かなりギリギリだと思うっすけど」
確かに、ハングリーバーガーを切り札としており、デッキパワーとしてはそこまで高くない印象を受けるのは仕方がないが、うまくカードを使って攻撃力は高い。ただし、デュエルそのものは単調である。
というより、エクストラデッキがネタのためにしか存在していない。と言う雰囲気だ。
「墓地を利用し、レベル3をうまく扱うというのなら『マスマティシャン』を投入できる。『カーボネドン』を投入しているのなら、実質、レベル1と2、そして6のチューナーモンスターを採用可能だ。そう考えれば、サーチのための『虹光の宣告者』を投入できるだろう」
「あ、確かにできますね」
来駕は頷く。
「現在フィールドに出したのは、ズババジェネラルを除いてすべて融合モンスターだ。意図的なのか、それとも、全力を出すことを避けようとしているのか……いずれにせよ、シンクロができる儀式デッキで『虹光の宣告者』が入っていないのは珍しいだろう」
「気になるっすね。来駕さん。ちょっと試してみるっすよ」
「え、俺と小百合さんでタッグで挑むんですか?」
「その通りっすよ。剛毅さん。いいっすよね」
「構わん」
そうと決まれば、と言った雰囲気で、小百合は来駕を引っ張っていく。
「ちょ、小百合さん痛いですよ!一体どこからこんな筋肉が……」
「それ以上女性に対して失礼なこと言うと首の骨折るっすよ」
「な、剛毅さん。助けてくださいああああああああああ!!!!!」
来駕の悲痛な叫びが響いた。
「まあ、頑張れ」
剛毅は自分のために常設されているデュエルコートの使用許可のために電話するのだった。
★
「と言うわけで、青芝恵遊。私たちとタッグデュエルっすよ」
「やだ」
いつも通りと言うか、このやり取りである。
「ていうか、誰?」
「エキセントリック・テンスの一人、西条剛毅の側近。俺は宝生来駕。こっちは厳島小百合です」
青いモヒカンと言う奇抜なセンスのわりに礼儀正しいな。
ていうか、側近とかいるのか。
美咲のそばにいる朱里みたいなものかね?
「西条剛毅と言えば、この学校の中でも影響力がある人で、身長二メートルを超えるムキムキのスキンヘッドだけど、面倒見がいいって聞くよ」
「西条グループはデュエルも強いけど、福祉関係でも有名だね」
意外な感じである。
「で、デュエルっすよ」
「やだ」
「小百合さん。青芝恵遊はハンバーガー渡さないとデュエルしてくれませんって。あ、これ、ハンバーガーです」
来駕がハンバーガーがたくさん入った袋を出した。
恵遊は笑顔で受け取る。
「いいだろう。デュエルしてやる」
周りは『前言撤回が早いのか……優先順位が固定されているのか……わからん』と言った雰囲気だった。
「あ、剛毅さんから、デュエルコートを使わせてもらえるように頼んでるので、そっちに移動しましょう」
「……そうか」
小百合は暴走役。来駕は制御役と言った感じなのだろう。
いいのやら悪いのやら。
「そう言えば、タッグデュエルなんだよね。それなら、私が恵遊君とチームを組むよ!」
凛子が名乗り出た。
恵遊はえーっと言う顔をした。
凛子はハンバーガーを出した。
恵遊は頷いた。
「……何なんすか?この人」
「小百合さん。こう言う人だって何度も言いましたよ。俺」
とまあ、そう言うわけなので。
★
「しかし、デュエルコートを使わせてもらえるとは太っ腹だな」
デュエルコートに四人が立って、それぞれデュエルディスクを構える。
タッグデュエルはあまり行われないのか、ギャラリーも若干嬉しそうだ。
『ええと……【機械仕掛けの殲滅者】厳島小百合と【ビッグテイマー】宝生来駕だな』
『二人とも西条剛毅の側近。興味を持つだけの戦績が青芝恵遊にはあるからな』
『ただ、あの二人はプラチナエリア。ゴールドエリアの聖野が足を引っ張る可能性があるが……』
『いや、前回のデュエルを考えると、うまいこと恵遊が使う可能性もある』
『というか、あのデッキでタッグデュエルをするとどうなるのか見てみたい』
『あ、俺も』
ふーむ……まあ、そんなものか。
あとは全員、カードで語ることにしたようだ。
全員がカードを五枚引く。
「「「「デュエル!」」」」
恵遊&凛子 LP4000
来駕&小百合 LP4000
「私の先攻」
先攻は凛子。
ターンの順番は、凛子→小百合→恵遊→来駕の順番。
タッグフォースルールなので、小百合からバトルフェイズが可能である。
「私は『レッド・リゾネーター』を召喚!効果で『聖鳥クレイン』を特殊召喚するよ。クレインの効果で一枚ドロー!」
レッド・リゾネーター ATK 600 ☆2
聖鳥クレイン ATK1600 ☆4
「レベル4の聖鳥クレインに、レベル2のレッド・リゾネーターをチューニング。シンクロ召喚!レベル6『レッド・ライジング・ドラゴン』!」
レッド・ライジング・ドラゴン ATK2100 ☆6
「レッド・ライジング・ドラゴンの効果で、レッド・リゾネーターを特殊召喚。ライジング・ドラゴンの攻撃力分のライフを回復する」
レッド・リゾネーター ATK600 ☆2
恵遊&凛子 LP4000→6100
「ほう、初手から飛ばすっすね」
「当たり前だよ。私はレベル6のレッド・ライジング・ドラゴンに、レベル2のレッド・リゾネーターをチューニング。シンクロ召喚!レベル8『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ATK3000 ☆8
「私はカードの二枚セット、ターンエンドだよ」
「初手からスカーライト……ワイバーンの可能性も考えてたんすけどね」
「このカードは恵遊君が使ったカード。私のお気に入りだああああ!」
突如咆哮を上げる凛子。
恵遊とスカーライトはげんなりした。
小百合も、何を言えばいいのかわからない。と言いたそうな表情でデッキトップのカードを一枚引く。
「まあ。いいっす。ドロー!私は『深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト』を妥協召喚っす!」
深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト ATK3000→0 ☆10
「な、列車だと!?」
「そのとおりっす。そして、自分フィールドに機械族・地属性モンスターが召喚・特殊召喚されたことで、このカードを手札から特殊召喚するっす。現れろ。『重機貨列車デリックレーン』!」
重機貨列車デリックレーン ATK2800→1400 ☆10
「そして、レベル10のナイト・エクスプレス・ナイトとデリックレーンでオーバーレイ!『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』をエクシーズ召喚っす!」
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ATK3000 ★10
来たか。ライフ4000だとちょっと勘弁してほしいモンスターが登場である。
「効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い、相手に2000ポイントのダメージを与えるっすよ!」
「うおおお!」
「きゃああ!」
恵遊&恵遊 LP6100→4100
「そして、取り除いたデリックレーンの効果!スカーライトを破壊するっす!」
「『レッド・ガードナー』を手札から墓地に送って効果発動。これで、私のモンスターは効果で破壊されない!」
「むう……仕方がないっすね。カードと一枚セットして、ターンエンドっす」
「俺のターン。ドロー!」
やっと恵遊のターンだ。
ふむ……この手札なら……。
「俺は『マンジュ・ゴッド』を召喚。効果で、デッキから『ハングリーバーガー』を手札に加える」
「ん?カゲトカゲがないのなら、ズババジェネラルは……」
「……あんまりやりたくないんだけどな。凛子」
「む?」
凛子に一枚のカードを見せる。
次の瞬間、凛子のテンションは最高潮に達した。
「よっしゃあああああ!行くよ恵遊君!」
「はぁ……俺は魔法カード『融合』を発動!」
「え……」
「ゆ……融合っすか!?」
発動したカードに驚いたようだが、来たんだから仕方がない。
「俺の手札のハングリーバーガーと」
「私のレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトで」
「「融合召喚!」」
手札からハングリーバーガーが出現して、スカーライトと共に渦に飛び込んだ。
「現れろ。レベル10『波動竜騎士 ドラゴエクィテス』!」
波動竜騎士 ドラゴエクィテス ATK3200 ☆10
スカーライトとハングリーバーガーによる融合召喚。
当然とばかりにハングリーバーガーは左肩に存在する。
「……な、なんか。すごい迫力があるモンスターっすね」
「オーラがみえるのは気のせいではないような気が……」
あまり知られてはいないことだ。
あふれんばかりのハンバーガーの愛が強い恵遊がもつハングリーバーガーは、精霊としてのカードの強さがある。
そして、その恵遊が使ったスカーライトにも、わずかながら精霊としての要素が付与され、凛子の愛に寄ってそれが完全に定着したのだ。
まあ、若干異なるものの、いずれにせよ愛の力である。
ただし、愛の力だけでカードを精霊化させるなどという暴挙に出るのは、古今東西探してもこいつらくらいのものだろう。
ドラゴエクィテスには精霊としての力が何にも宿っていないのに、なにかとオーラを感じるのはそのせいだ。
精霊の力がふんだんに宿ったハングリーバーガーとスカーライトのカード。
それらが融合して生まれたドラゴエクィテス。
よくわからないことになるのも、ある意味当然である。
「ドラゴエクィテスの効果発動。墓地のスカーライトを除外して効果を得る!そして、そのまま効果を発動!」
ドラゴエクィテスが持つ槍に爆炎が宿る。
そして、その槍を地面に突き刺すと、地面が割れた。
「永続罠『マーシャリング・フィールド』を発動。グスタフマックスの破壊の身代わりにするっす!」
むう……。
「そして、マーシャリング・フィールドが墓地に送られたことで、デッキから『RUM-アージェント・カオス・フォース』を手札に加えるっすよ」
「なら、バトルだ!ドラゴエクィテスで、グスタフマックスを攻撃!」
ドラゴエクィテスのランスがグスタフマックスを貫いた。
来駕&小百合 LP4000→3800
「カードを一枚セットして、ターンエンドだ」
「俺のターン。ドロー!」
来駕のターンだ。
一体どんなデッキを使って来る?
「俺は手札から『ヒゲアンコウ』を召喚」
ヒゲアンコウ ATK1500 ☆4
水属性専用のダブルコストモンスターか。
「『カード・アドバンス』を発動して、デッキトップを五枚確認してアドバンス召喚権を増やす。ヒゲアンコウをリリースして、『ビッグ・ホエール』をアドバンス召喚!」
「誰!?」
ビッグ・ホエール ATK1000 ☆9
「ビッグ・ホエールって……どんな効果だったっけ?」
「こう言う効果だ。アドバンス召喚成功時、ビッグ・ホエールをリリース。デッキから、レベル3の水属性モンスター三体を、効果を無効にして特殊召喚できる」
「えぇ……」
「デッキから『スターフィッシュ』二体。『水晶機巧-リオン』を特殊召喚」
スターフィッシュ ATK300 ☆3
スターフィッシュ ATK300 ☆3
水晶機巧-リオン ATK500 ☆3
「……効果が無効にされていなかったら結構マゾイモンスターだな」
最近で言うと何を出すんだろう。『雨天気ラズラ』かな。
ラズラを三体出せば、天気モンスター三体で『虹天気アルシエル』をリンク召喚できるわけだし。
そう思うと怖いな。
「レベル3のスターフィッシュ二体に、レベル3のリオンをチューニング。『浮鵺城』をシンクロ召喚。その効果で、墓地の『ビッグ・ホエール』を特殊召喚する」
浮鵺城 ATK 0 ☆9
ビッグ・ホエール ATK1000 ☆9
「レベル9が二体」
「その通り。レベル9の浮鵺城とビッグ・ホエールで、オーバーレイ!エクシーズ召喚『No.9 天蓋星ダイソン・スフィア』!」
「「でかーい!」」
No.9 天蓋星ダイソン・スフィア ATK2800 ★9
空を覆い尽くすレベルの巨大なモンスターが出現する。
うわ、なにあれ。
「ダイソン・スフィアの効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い、ダイレクトアタックを可能にする」
「チッ……」
「ダイソン・スフィアで、ダイレクトアタック!」
レーザーの雨が降ってきた。
「罠カード『針虫の巣窟』を発動。デッキから五枚を墓地に送る……よし。『ネクロ・ガードナー』で攻撃を無効にする!」
「良くもそうポンポンと出せるものだ」
「愛されてるんで」
「過労死寸前とも言う」
ネクロ・ガードナーをチラッと見る。
確かに、疲れているような印象がある。
「それは言わない約束だ」
「確かに。俺はカードを二枚セットしてターンエンド」
「私のターン。ドロー!」
凛子がカードを引く。
そして次の瞬間に思った。
場所的に、ドラゴエクィテスが邪魔だと。
「『闇次元の解放』を発動。除外されているスカーライトを特殊召喚!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ATK3000 ☆8
「ほう、攻撃力3200と3000のモンスター……でも、俺のダイソン・スフィアは、あらゆる攻撃を何度でも無効にする。並べても意味はないぞ」
「だからこうするんだよ。私はドラゴエクィテスとスカーライトをリンクマーカーにセット、『天球の聖刻印』をリンク召喚!」
天球の聖刻印 ATK0 LINK2
「て、天球の聖刻印……」
「そして私は、『マジック・プランター』を使って、闇次元の解放を墓地に送って二枚ドロー、そして『復活の福音』を使って、もう一度スカーライトを復活させる!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ATK3000 ☆8
「私は『痛み分け』を発動。天球の聖刻印をリリースして、ダイソン・スフィアをリリースするよ!」
「『デストラクト・ポーション』を発動。ダイソン・スフィアを破壊して、その攻撃力分のライフを得る!」
来駕&小百合 LP3800→6600
「むう……でも、リリースされた聖刻印の効果が発動するよ。デッキから『ガード・オブ・フレムベル』を特殊召喚!」
ガード・オブ・フレムベル ATK0 ☆1
「レベル8のスカーライトに、レベル1のガード・オブ・フレムベルをチューニング。シンクロ召喚!レベル9『琰魔竜 レッド・デーモン・アビス』!」
琰魔竜 レッド・デーモン・アビス ATK3200 ☆9
「アビスか……」
「バトル!レッド・デーモン・アビスで、ダイレクトアタック!」
伏せカードはある。
だが、アビスの効果でどのみち無効になるのだ。
シンクロ召喚が成功した時点で、対した意味はない。
来駕&小百合 LP6600→3400
「ちょ、本当にあんたってゴールドエリアなんすか?」
「そんなもの、私の恵遊君への愛があればいくらでも突破できるよ!」
迷惑……。
「アビスの効果を発動。もう一度ガード・オブ・フレムベルを特殊召喚。そして罠カード『緊急同調』を発動!」
「「何!?」」
「レベル9のレッド・デーモン・アビスに、レベル1のガード・オブ・フルムベルをチューニング。シンクロ召喚!レベル10『琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル』!」
琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル ATK3500 ☆10
「まだバトルフェイズ中だよ!ベリアルでダイレクトアタック!」
「罠カード『ドレインシールド』を発動。攻撃を無効にしてライフを回復する」
来駕&小百合 LP3400→6900
「マンジュ・ゴッドでダイレクトアタック!」
「あ、いたんすね」
そりゃね。
来駕&小百合 LP6900→5500
「むう……私はカードを一枚セットして、ターンエンドだよ」
マンジュ・ゴッドは、『え、俺をリリースしないの!?』と言う顔になっていたが、誰も気が付かなかった。
「私のターンっす。ドロー!」
次は小百合のターンだ。
「私は手札から、『ソウル・チャージ』を発動っす。墓地からナイト・エクスプレス・ナイト、デリック・レーンを特殊召喚するっすよ!」
深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト ATK3000 ☆10
重機貨列車デリックレーン ATK2800 ☆10
来駕&小百合 LP5500→3500
ソウル・チャージを普通に使って来るとは……。
「そして、ナイト・エクスプレス・ナイトとデリックレーンでオーバーレイ!『超巨大空中宮殿ガンガリディア』をエクシーズ召喚っす!」
超巨大空中宮殿ガンガリディア ATK3400 ★10
チッ。ソウル・チャージのせいでバトルフェイズが行えないとはいえ、もともとバーンダメージを稼ぐのが得意な列車だと面倒だな。
「ガンガリディアの効果発動。ベリアルを破壊して、1000ポイントのダメージを与えるっす!」
恵遊&凛子 LP4100→3100
「デリックレーンの効果で、セットカードを破壊!」
ダメだ。凛子がいろいろとおいついていない。
「そして、『RUM-アージェント・カオス・フォース』を発動。ランク10のガンガリディアで、オーバーレイ!」
ガンガリディアが渦に飛び込んで行く。
「カオス・エクシーズ・チェンジ!ランク11『CX 超巨大空中要塞バビロン』!」
CX 超巨大空中要塞バビロン ATK3800 ★11
「さあ、私はこれでターンエンドっす。さあ、青芝恵遊。お前の本気を見せてみるっすよ」
「俺の本気?」
「そうっすよ。まだ、全然本気なんて出してないっすよね」
小百合は特にふざけた印象はない。
本当に、恵遊が本気を出していないように感じているようだ。
「面白いことを言うじゃないか。俺のターン。ドロー!」
ドローしたカードを見る。
お前か。
「まずは『手札抹殺』を使って手札交換だ。で、『カードガンナー』を召喚。効果でデッキトップを三枚墓地に送って、攻撃力をアップ!」
カードガンナー ATK400→1900 ☆3
「な……やっぱりそれで来るんすか!?」
「『儀式の準備』を発動。デッキの『ハングリーバーガー』と、墓地の『ハンバーガーのレシピ』を手札に加える。そして、ハンバーガーのレシピを発動。墓地のリリーサーとデモリッシャーを除外。ハングリーバーガーを儀式召喚!」
ハングリーバーガー ATK2000 ☆6
「やっぱり単調なデュエルっすね」
「そうだな。俺もそう思う。でも、俺はやっぱ、ハングリーバーガーが好きなんでな。そして悪いが、攻撃力3800のモンスターなんて、俺の前には無力!墓地から『カーボネドン』を除外、デッキから『ガード・オブ・フレムベル』を特殊召喚!」
ガード・オブ・フレムベル DFE2000 ☆1
「そして、レベル3のカードガンナーに、レベル1のガード・オブ・フレムベルをチューニング、『アームズ・エイド』をシンクロ召喚!」
アームズ・エイド ATK1800 ☆4
「な……アームズ・エイドっすか!?」
「シンクロをまともに採用していたデータは今までになかったはず……」
来駕と小百合が驚愕している。
まあ、ほとんど出していなかったしな。
「俺は手札の『最強の盾』と、アームズ・エイドをハングリーバーガーに装備!」
出現する最強の盾。
いつも通りに添えられた。
そして、アームズ・エイドがそーっとハングリーバーガーのところに来る。
……イラストを確認してもらえばわかるが、ハングリーバーガーはちょっとキバのようなものがあるだけで、別に腕も何もない。本当にただのハンバーガーなのだ。
ここまで出しゃばっているのだが、いずれも、肉をぶっ飛ばしていればなんとかなっていた。
だが、腕はないのだ。
……どうやって装備すればいいんだろう。
ハングリーバーガーは口(?)がパカパカ動いて、アームズ・エイドは指芸をするというちょっと意味不明な会話が数秒間続く。
最終的に、アームズ・エイドは、ハングリーバーガーの動作に連動して動く、パントマイマーのような動きをすることで結論付けたようだ。
「ハングリーバーガー。最強の盾を忘れているぞ」
『――!』
ハッとした様子で、アームズ・エイドとの協議中にほったらかしていた最強の盾を見る。
いつもは添えられていて、攻撃時にぶっ飛ばしておけばよかったのだが……。
なんと、アームズエイドが掴んだ。
まあ、今はどちらもハングリーバーガーの装備カードだ。百歩譲れば納得できないわけではない。
できないわけではないが……。
どうすればいいのかわからず佇むハングリーバーガーと、最強の盾を持っているアームズ・エイド。
なかなかシュールなことになってしまった。
ハングリーバーガー ATK2000→3850→4850
でも攻撃力的にはイヤッホオオオオオオオオオオオオウ!な感じになっている。
「よし、デュエル続行!そして、
アームズ・エイドが器用に動いて、手裏剣を投げるように最強の盾を投げる。
特に意味はないが、ハングリーバーガーはそれに合わせてパントマイマーのように動く。
あ、動作逆……くっそ下手だ。
ちなみに、バビロンはものすごく上の方にいるのだ。空中宮殿だからな。
情けない速度で最強の盾が飛んでいき、若干距離が足りていないのではないか?という不安はあったものの、盾は命中。
どう考えても破壊出来るような勢いではなかったが、そんな物理的な整合性を無視するかのように、バビロンは砕け散った。
来駕&小百合 LP3500→1450
「くっ……」
「アームズ・エイドの効果だ。破壊したモンスターのダメージを与える!」
バビロンの破片が落ちてきた。
「「うわああああああああ」」
来駕&小百合 LP1450→0
勝利した。
なんかすごく無理矢理感があるのは気のせいだろう。
そして、アームズ・エイドはハングリーバーガーを見る。
アームズ・エイドは、ハングリーバーガーとの初めての競演なのだ。
握手をしたい気分になったのである。
『握手……どうしよう……』
そんな雰囲気が流れる。
なんとアームズ・エイドは、ハングリーバーガーをわしづかみにした。
ハングリーバーガーは『!?』と言った感じになった。当たり前である。
何とも締まらない感じになったが、まあ、恵遊のモンスターなのだ。これがデフォである。
「……」
マンジュ・ゴッドはそっといなくなった。
★
「本気を出させるつもりが、まさか、あんな結果で終わるとは想定外っすね」
「シンクロを使うデータはなかった。だが、使うのはある意味当然でしたね」
来駕と小百合は思うところはあったようだが、一応納得したようだ。
「私の恵遊君のタッグだからね。完全無敵だよ!」
「いや、二回目の私のターン。全く追いついてなかったっすよね」
まあ、まだカードパワーに頼っている雰囲気があるな。
それは恵遊も変わらないが。
「それにしても、デュエルしてみて思う。多少高い程度の攻撃力はあまり意味が無いのだな……」
そう、恵遊の戦術は一定だ。
まあ、様々なカードを取り入れている中で、うまく儀式魔人を墓地に叩きこんでくれるカードガンナーがいるからこその戦術とも言えるが。
本当に感謝である。
「とはいえ、その戦術を活かせるのなら、『カオス・ソルジャー』のままの方がいいと俺は思った」
来駕が言っていることはある意味正しい。
『儀式の下準備』をはじめとする儀式サーチのカードを使い、さらに、それらで儀式召喚を行った後、『最強の盾』で強化する。というのが恵遊の基本戦術と言っていい。
だがそう考えると、『カオスの儀式』と『カオス・ソルジャー』をサーチして儀式召喚、そして最強の盾を使えば、ほぼ同じ条件で、攻撃力は5500になる。
ある程度、攻撃力を確保できているとはいえ、ハングリーバーガーでは力が不足しているといっていい。
「そうっすね。普通に考えて、カオス・ソルジャーを使った方がいいっす」
まあ、よく言われる話だ。
「よく言われるけどな……ただ、俺はこれが好きだからな」
面白いと思った。
楽しいと思った。
だから、恵遊はデュエルを続けている。
「そうっすか。まあ、シンクロを引きずりだせたということで、今は納得して置くっすよ」
小百合が背を向けて歩いていく。
来駕は一礼して去っていった。
恵遊は溜息を吐いた。
「恵遊君。私とのタッグデュエルはどうだった?」
「悪くはないんじゃねえの?」
「お互いのエースを融合して出せるモンスターがいるもんね!」
ドラゴエクィテス。
優秀なのか……不憫なのか……。
恵遊にもいまいちよく分からないモンスターである。
修正したのだが、なぜかスカーライトが通常召喚したモンスターすら破壊出来ると思い込んでいる自分がいる。
どうしてだろうか……。