カズマとめぐみんをいちゃいちゃさせる小説   作:リルシュ

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短めのネタ。
以前プライベッターにあげたものです。
時系列が今までの投稿物よりかなり未来なので、外伝という扱いにしました。
カズマとめぐみんの娘という設定のキャラが登場しますので、オリジナルキャラ要素が苦手な方は注意。
Web版のネタバレも含んでいます。
前半謎の三人称視点ですが、後半からはいつも通り登場キャラ(カズマ)視点。


外伝
二人の子供


ここは始まりの街アクセル。穏やかな午後の昼下がりに、とあるお屋敷から今日も元気な話し声が溢れ出していました。

 

「…そして結局俺は1人で母さん達を守りながら、バッサバッサと魔王軍を斬り倒していったのさ…フッ」

 

ポカポカとした気持ち良さそうな日差しに照らされている中庭の中央で、口角を上げながらニヤニヤ胡散臭い笑顔を浮かべてそんな事を口走ってるのは、アクセルの有名人であり最強の最弱職の称号をもつ冒険者、サトウカズマさんです。

 

「わぁ〜!お父さんすごーい!」

 

そんな彼の周りをグルグルと元気に走り回りながら無邪気にはしゃぐ少女が1人。

歳の頃は恐らくまだ5か6といったところでしょう。

綺麗な黒髪を真っ直ぐ肩まで伸ばし、カズマさんを見上げるキラキラと輝く瞳は左目だけが鮮やかな紅色に光っていました。

オッドアイ…中々珍しい特徴です。

 

「そうだろうそうだろう。お父さんはすごいんだぞ。だからたまには『パパ大好き』て言ってみてくれ」

 

「じゃーお父さんも私の前でお母さんに大好きって言ってあげてよっ!」

 

「よし、この話は無かったことにしよう」

 

「…最近お母さんに冷たいよね。嫌いなの?」

 

綺麗に踵を返して歩き去ろうとする父親の手を引いて止めた娘の、無邪気で悲しそうな声がカズマさんの胸に突き刺さりました。

 

「そんなわけないだろ。お前と同じぐらい好きだし…愛してるよ。ただ子供の前でベタベタすんのは流石に恥ずかしいというかカッコつかないというか情けないというか…」

 

「ふーん…そうなんだって!良かったねお母さん!」

 

「えっ!なんだと!?」

 

少女の視線がいつの間にか自分の背後に向けられていた事に気がついたカズマさんがその言葉に慌てて振り返ると、そこには少女によく似た綺麗な女性が立っていました。

 

「ま、カズマの事ですからどうせそんなことだろうと思って、あんまり心配はしてませんでしたけどね」

 

ふわりと

彼女はその容姿の中でも一際目立つ見惚れるほどに長く美しい濡羽色の髪を手でかきあげながら、言葉とは裏腹に嬉しそうにはにかんでいました。

 

「め、めぐみん!いつからそこにいたんだ!?」

 

「今日はその子にいい話が聞けると誘われて、ずっと中庭の隅で待機していたのですが…この陽気に負けて眠らずに正解でした」

 

どうやら最初から少女の作戦通りだったようです。

末恐ろしい子ですね。

 

「お前今の話を引き出すためにわざわざ俺もここに誘い出したのか…我が娘ながら既に大物になる予感しかしない…ってあれ?という事はつまり、さっき俺の部屋に来た時言ってた『今日はパパと遊びたーい♥』って語尾にハートがつきそうなぐらい甘えた声で言ってきたのも、もしかして…さ、作戦のための演技…ですか?」

 

娘に甘えられたのが相当嬉しかったのでしょう。

その行動が本心からでは無かった可能性の示唆に、カズマさんの顔色がみるみるうちに青白くなっていきます。

 

「そうだよ」

 

残念ですが結果は彼の危惧していた通りでした。

 

「パパ泣きそう」

 

「流石私の娘です。賢い子ですね」

 

ガクリと膝から崩れ落ちる父親の前で、娘の頭を撫でながらめぐみんさんが笑います。

 

「めぐみんの家系の特徴である魔性の女属性の片鱗も既に見えていて、俺は少し不安だがな」

 

「まぁまぁ、いいじゃないですか。カズマだって嘘をついていたのですから」

 

ポンポンともう片方の手で、めぐみんさんが跪くカズマさんの頭を撫で始めました。

 

「はぁ?俺がいつ嘘ついたって言うんだ」

 

ゆっくりと復活して立ち上がった彼が、唇を尖らせながら不満げに言い放ちます。

 

「魔王軍を1人でバッサバッサと斬り倒していったなんて、娘にそんな嘘をついて面白いですか?」

 

「…チッ、そういえば最初からいたんだったな」

 

その話が嘘だと聞いても少女は両親が会話しているのを見るのが嬉しいのか、ニコニコと微笑んだ表情を崩しませんでした。

あるいは既に、嘘だという事を見抜いていたのかもしれないですね。

 

「ちゃーんと私が爆裂魔法できれいさっぱり魔王ごと一味を爆散させたという情報を伝えてくださいよ」

 

ここぞと言わんばかりに娘の前で大きく胸を逸らし、ニヤリとドヤ顔を決めるめぐみんさん。

 

「お前こそそれ嘘の塊情報じゃねぇか!」

 

「爆裂魔法で魔王にトドメをさしたのは嘘ではないでしょう?それに、私が一味を爆散させたというのも嘘ではありません」

 

「めぐみんは嘘の隙間を突いて話すのが本当に上手いな…確かにお前は一味を爆散させていたけど、魔王に爆裂魔法でトドメをさしたのはお父さんだからな?お前はお母さんみたいなずる賢い女の人になっちゃだめだぞ」

 

そう言って娘の手を引き母親から遠ざけるカズマさんを見て、めぐみんさんも激昂します。

 

「ちょっと待ってください!カズマにだけはずる賢いと言われたくありません!」

 

「俺だってめぐみんには言われたくないぞ!お前がゆんゆん相手にしてきた数々の勝負を思い出してみろ!」

 

二人が一見仲良くは見えないように話していても、少女は相変わらず嬉しそうにそんな両親を眺めていました。

 

「同じ魔法を使うなんて、仲良しだね!」

 

その悪意のない純粋な言葉に、カズマさんとめぐみんさんは途端に言い合っていた口を閉ざして視線を逸らしてしまいます。

 

「私もばくれつまほー…使えるようになりたいなぁ」

 

「もちろん使えるようになりますとも!なんといってもあなたの両親は爆裂魔法の使い手なのですから!ね、カズマ!」

 

しかし爆裂魔法と聞いた瞬間めぐみんさんの瞳がカッと紅く光り始め、凄い勢いで喋り始めました。

 

「そんなにキラキラした目でこっちを見るな二人とも。俺の魔力保有量じゃマナタイト無しじゃ使えないし、もう二度とあんなの使う気はないぞ」

 

「あんなの!?何を言ってるんですか!これからは日課の爆裂散歩に我が娘を同行させて、爆裂魔法の素晴らしさを少しずつ教えていき…!」

 

いくつになっても爆裂魔法への想いが衰えない彼女はもう止まりません。

その勢いにはちょっとした恐怖すら感じます。

 

「ダメだダメだ!いろんな意味で危険極まりない!俺は断固として反対する!お前の爆裂散歩には付き合ってやるから、娘は今まで通りその間アクアかダクネスか…誰かしら知り合いに面倒見てもらう!」

 

「お父さん!ほんとは私も行きたい!ばくれつさんぽ!」

 

ぴょんぴょん飛び跳ねながら元気に手を挙げる娘にカズマさんの顔が引きつるのに反し、めぐみんさんの顔色はどんどん輝いていきます。

 

「ほら見てください!この子も行く気満々ですよ!それにそろそろ我が娘もおしゃれに気を使ってもいい年頃です。帰りに色んなお店を一緒に回りましょう」

 

「…はぁ…俺は本当に勘弁して欲しいんだけどな…本人が行きたがってるならその要求には応えてあげたい。…が、おしゃれはまだちょっと早くないか?」

 

「そんなことはありませんよ。もっと腕に包帯巻くとかですね…」

 

「おい。なにどこぞの決闘者みたいなこと言ってやがる。お前の痛い中二ファッションを可愛い娘に押し付けるな」

 

「でゅ、でゅえr…な、なんですか!?カズマが言うことはいまだに時々訳が分かりませんよ!それと私のセンスを痛いと言ったな!それは取り消してもらおう!」

 

「いやでーす!俺は本当のことを言っただけでーす!」

 

「な、なにおう!」

 

あっかんべーをしながら逃げ回るカズマさんと瞳を輝かせながら腕を振り回し彼を追いかけるめぐみんさんは、自分達の娘の前だというのにまるで子供の様にじゃれあっています。

それを本物の子供特有の純真なキラキラした瞳で見つめながら、わーわーと叫んで母親の背中を追いかける少女…

 

どうやら今日もこの世界は平和みたいです。

 

 

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「はぁはぁ…なんで朝からこんな疲れなきゃならんのだ」

 

結局一緒にはしゃいでた娘が疲れて眠りこけるまで、俺達もじゃれあっていたのだが…

 

「ふん!カズマがくだらないこと言うからですよ!」

 

「だからお前にはいわれたくな…いや…もういい」

 

とにかく疲れた。

中庭の隅でズルズルと壁伝いに腰を下ろし、深くため息を吐く

 

「嫌ですねぇカズマ。言動がおっさんくさいです」

 

じゃーそう言いながら隣で同じように座り始めるお前はおばさんだな。

 

…なんて言葉は流石に口に出せないので、華麗にスルーを決めてやる。

 

何より実際俺たちはまだ若い!

 

「…で、何さり気なく肩に頭を乗せてきてるんだお前は」

 

「別にいいじゃないですか。こうしてこの子もぐっすり眠っている訳ですし」

 

たしかにめぐみんの腕の中で気持ちよさそうな寝息をたててはいるが…

…実は寝たフリじゃないだろうな?

この子の場合有り得るのが怖いところだ。

 

「今なら誰も見ていませんよ。カズマ」

 

「…だ、だから?」

 

「私の事、愛してるってさっき言ってくれましたよね?」

 

ニヤニヤと勝ち誇った顔でコチラを見上げるめぐみんに、ちょっと悔しくなってぷいっと視線を逸らす。

 

「娘が見てる前だから、ベタベタしてくれないってことm」

 

「わかったわかった俺の負けだよ!なんだよめぐみん。そんなに俺とイチャイチャしたいのかよ」

 

「はい!たまには私もカズマに思いっきり甘えたいです!最近とても寂しかったんですよ?」

 

子供を抱えながら器用にギューッと抱きついてくる彼女に、何度高鳴らせたか分からない心臓の鼓動が早くなる。

流石に結婚してからはめぐみんにくっつかれるのにも慣れてきたと思うのだが、自分からグイグイいくのはいまだにドキドキするものだ。

 

「分かったよ…これでいいか?」

 

「ん…はい…カズマ…大好きです」

 

肩に腕を回してそっとめぐみんの体を抱き寄せると、安心したような満足したような…ほぅと吐かれた息が胸に伝わり熱くなる。

俺の手が彼女の髪を撫で始めるまで、そう時間はかからなかった。

 

この世界に来て嫌になった事や帰りたくなったことは正直何回もある。

けれど今は…

 

「俺、この世界に来てめぐみんに会えて本当に良かった。こんな俺に今までついてきてくれてありがとうな」

 

ちょっと前までなら絶対こんな事は言わなかったのだが、この良い感じの雰囲気と今まで付き合ってきた慣れのせいだろうか。

視界の隅で驚き瞳をパチパチさせているめぐみんの事を恥ずかしすぎてまともに見ることが出来ず、抱き寄せる力を強めて火照る体を誤魔化した。

 

「ふふ…カズマ、『今まで』じゃないですよ。『これからも』です。…一生カズマの傍にいさせてくださいよ。ね?」

 

「…ったく。しょうがねぇなぁ!!!甘えんぼうのめぐみんは!」

 

腕に感じる体温と下げた視線に映る娘の寝顔を見ながら…

 

俺はこの素晴らしい世界で1番祝福を受けた人物に違いないと確信していた。

 

END

 


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