そしてこのすば風のタイトルの付け方がめっちゃムズイことに今更気づきました。
時系列的には「この初々しい爆裂デートに応援を!」の後になります。
イライライライラ…
もうすでに住み慣れた屋敷の中。
火もついてない暖炉をじっと見ながらその前のソファーにどっかりと陣取り、俺は激しい貧乏ゆすりをしていた。
「どうしたのカズマさん?そんなに鼻の穴を膨らませたり縮ませたり荒い息遣いでせわしなく脚を動かして…ハッ!とうとうこのアクア様の魅力に充てられて我慢の限界が…!」
「それだけは絶対にないから安心してくれ」
なによー年中発情期のくせにとかとんでもないことを口走りながらソファーを揺らしてくる駄女神と俺を交互に見ながら、ダクネスが眉をひそめて言った。
「心配するなカズマ。めぐみんならちょっと他のパーティーのお手伝いに行っただけじゃないか。あの娘は一途だしカズマみたいにだらしなく他の異性にフラフラ流されたりなどしない」
「なぁお前俺を傷つけたいの?ドMで変態のくせに他人を傷つけるの?」
「っ!ぅくっ…違う。それに私は真実を言ったまでだ」
「ちょっと興奮してんじゃねぇ」
「していない」
だいたいなんでめぐみんなんだ。
他の優秀な魔法使い職などいくらでもいるだろうが。
「爆裂魔法が使える人がパーティーに欲しいなんて怪しさしかない言葉にホイホイついて行きやがって…だいたいこの街で『爆裂魔法使える人募集してます。一人で来てください。』なんて張り紙アイツ個人に声かけてるようなもんだろ。まぁウィズも使えるけどさ。それがまず気にくわねぇ。詳しいことは当日話しますなんて書いてあった備考欄も塗りつぶしてやりたくなるほど不愉快だ。そもそも一人でってなんだよ!俺らは邪魔だってかぁ!?あぁん!?めぐみんをパーティーに誘いたいなら堂々とこの屋敷に…」
「カズマは本当にめぐみんが好きなのだな」
「っ…」
徐々にヒートアップしていってた俺は、そうちょっと寂しそうにダクネスに言われズキリと胸が痛んだ。
だが、振った相手がむやみに優しい言葉をかけても余計に傷つけるだけだろう。
俺はその辺には理解があるつもりだ。…たぶん!
「しかしちょっと前までここまで嫉妬するようなお前を見たことなどなかったはずなのだが…もしやこの数日で何か進展でもあったのか?」
「何もないです」
「そ、そうか」
きっぱりと言い放った俺の言葉に嘘はないと信じたのか、ダクネスは苦笑いを浮かべながら引き下がっていった。
でも…だとしたらなんでだ?
なんでこんなにもモヤモヤとした悪魔が好みそうな嫌な気分になるんだ。
ついこの間までめぐみんがちょこっと留守にするぐらいなんでもなかったのに。
俺が彼女に寄せる好意がどんどん膨れ上がってとうとう独占欲を発現させてしまったのだろうか。
先日デートしましょうと言われ結局またそれらしいことは何もできずに終わったから欲求不満なのか俺は?
「やっぱりあるかも」
「どっちなんだ貴様は!」
座りかけた腰をビシっと立たせてダクネスが俺に指を突き付ける。
「それにしても、めぐみんはなーんでこんなに冴えないヒキニートのことなんて好きになっちゃったのかしら?あの子の男を見る目は最悪ね」
「女を見る目がある俺に言わせてもらうと、お前も人のこと言えない最底辺だぞ」
「なんですってぇ!?あんたの女を見る目っていうのはスケベな意味でってことでしょ!ちょっとエロい身体した女の人がいれば、めぐみんが隣にいようと食い入るように見つめるくせに!」
「それは男の本能だ。男という種族を作ったやつに文句を言え」
「開き直ったわねこのクソニート!めぐみんに言いつけてやる!」
「おぉー言ってみろや。お前らは気づいていないのかもしれんが俺はめぐみんの身体も舐めまわすようにジロジロ見てる。何も問題ない。そしてもうニートじゃないと何回言えば鳥頭のお前にも理解できるんだ?」
「最低!最低よこんな男!」
ずかずかと俺の目の前に回り込んできて腕をまくりはじめる鬱陶しいアクアからぷいと視線を逸らしダクネスを見ると、どうしたものかとオロオロするばかりで
「めぐみんもきっとあんたみたいな最低男にとうとう愛想つかして出て行っちゃったに違いないわ!」
その言葉にピクリと俺の貧乏ゆすりが止まりダクネスも時を止められたかのように停止した。
「ちょっと俺行ってくる」
ガバッと立ち上がり、
「大体あんたは…って、は?どこに?」
「めぐみんとこ」
今の俺には洒落になってないアクアの一言が何度も胸中で響いて、ズシンと身体が芯から重くなるような感覚を振り払い全速力で屋敷を飛び出した。
くそっ!一体俺はどうしちまったんだ?
めぐみんだってこの世界の基準で言えばもういい大人なんだ。
少しは信頼してやるべきだろう?
そうは思っても俺の足は勝手に動く。
くそっ!くそっ!
普段自分は浮気まがいなことばかりしてるくせに、気になる女の子がちょっと手元を離れたってだけでこれかよ!
最低だな俺!
カスマとかクズマとか言われてもしょうがねぇなぁぁぁぁ!!!!!
気が付くと俺はうぉぉぉぉぉぉ!!!と大声で叫んでいた。
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「…ど、どうするのだアクア。アイツ放っておいて大丈夫なのか?なにかやらかさないか?」
あっという間に屋敷を飛び出し、何やら大声で叫んでいるカズマの後ろ姿をポカンと眺める自称女神に私はチラリと視線を送る。
「どうって…わ、悪いのはカズマだし!」
「確かにさっきの言い合いでもお前以上に最低な発言をしていたが」
「ふんっ!少しはめぐみんがいつも味わってる嫌な気分をたっぷり堪能して反省すればいいのよ!」
そう言ってごろりと先ほどまでカズマが座っていたソファーに寝っ転がりながらぶつぶつと文句を言うアクアを見て、彼女は彼女なりに仲間のことをしっかり見ていたのだなと微笑ましくなった。
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「なにやってんだ俺…」
手がかりもあてもなく屋敷を飛び出した俺は、ぼけーっとこの前めぐみんからアイアンクローを食らった広場に突っ立っていた。
そろそろ日が沈むのではないかと思われる夕焼け時。
ゲームみたいな世界なのにゲームのように偶然ばったり街中で探し人に遭遇するなんてイベントは起こらず、無駄にそこそこ広いアクセルの街を走り回ってしまった。
というか…
「爆裂魔法使うのに街中にいるわけないじゃん」
がっくりとベンチに腰を落として深くため息をつき頭を垂れる。
あ、いやでもアイツならやりかねないかと自己完結し一人苦笑した。
日に日にめぐみんの存在が俺の中で大きくなっていることを自覚してはいたが、まさかこれほどまでとは。
会いたい。とてつもなく会いたい。
「…帰るか」
大丈夫。
めぐみんのことだ。
何事もなかったかのようにひょっこり帰ってきて、さぞや派手にぶちかましてきたであろう爆裂魔法の出来栄えを事細かに語ってくれるに違いない。
俺が心配しすぎなだけなのだ。
家に帰って堂々と待っていようじゃないか。
「こんなところで1人何やってるんですかカズマ?」
ビクリっ!
…え?うそん!こんなことってあるか!?
今一番聞きたかった声がすぐ目の前から聞こえてきて、伏せっていた顔をおそるおそる上げると…
「私は今から帰るつもりなのですが、一緒に行きますか?」
困惑と嬉しさを足して二で割ったような表情を浮かべ、こちらに手を差し伸べるめぐみんがそこにいた。
とんでもない素敵イベントを引き起こしてくれた自分の強運に俺は心の底から感謝した。
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「「……………」」
あれなんで?
なんでちょっと気まずい感じになりながら帰路についてるの俺たちは?
いつもならここでどちらかが声をかけ、とりとめもないけれどどこか自然体で心地よくそれでいてちょっとドキドキするような甘酸っぱい会話が繰り広げられるはずなのだが!
「じっー……」
めぐみんはじとーっと遠慮するでもなくコチラをガン見してるし。
てゆうか…ちょ、やめてくれ!一度見られてると意識すると緊張して変な汗が出てくる!
「何かあったのですかカズマ?今日のカズマはいつにも増して挙動不審ですよ」
いつにも増してとはどういうことだと小一時間ほど問い詰めたいが、俺が心配していたという本音を知られるのはなんか…恥ずかしく感じる。
ましてやめぐみんが他のパーティーと行動してたから嫉妬してましたなんて言えるはずがない。
「な、なんでもないぞ。そう。マジでなんでもない。なんだか突然夕日を浴びながら大声出してマラソンしたくなったからここまで走ってきた。それだけだ」
「そうですか。相変わらずのようで何よりです」
なんだろう。
コイツはホントに俺のこと好きなのだろうか。
「ところでお前、今日爆裂魔法撃ちに行ったんじゃないのか?なんでそんな元気なの?」
「いいえ。パーティーに誘ってきたのがくだらない理由だったので断って適当に街をブラブラしてました」
めぐみんのその一言に、何か胸の中のつっかえが取れたようなスッキリしたような気がした。
そうか…じゃー俺の代わりに誰かがコイツをおんぶしたりなんてこともしなかったわけだ。
よかったよかった。
「はぁぁぁぁ…ったく、俺はお前がよからぬ男にパーティーに誘われて何かされてないかと思ってだな…」
「ほほぅ…もしかしてカズマ、私のことが心配で嫉妬して屋敷を飛び出してきてくれたんですか?」
ぎくっ!
慌てて口を抑えるがもう手遅れだった。
クスクスと何度も俺を惑わせてきたあの微笑を浮かべながら、めぐみんがくるりと横から顔を覗き込んできて
「大丈夫ですよカズマ。カズマ以外の男に恋愛感情を抱くなんてありえません。それに、誘ってきた人達のパーティーには女性の魔法使い職しかいませんでしたし。安心しましたか?」
だからお前はそういう直球な好意をだな…!
いや嬉しいですよ?嬉しいけど、もうどうしたらいいか分からなくなるんだよ!
ついこの間めぐみんを異性として純粋に好きになったという事に気づいた俺としては!
はあぁ~ムズムズするぅ!!!
「わ、悪かったな!お前のこと信用しきれてなくて!あぁ安心したよ!めぐみんの気持ちがもう一回聞けてすげー嬉しいし安心したよ!」
でも、そんな感覚も悪くないどころか、めぐみんが無事だったと分かっただけで俺は本当に心の底から安堵していた。
「いいえ。私こそ、カズマに妬かせてしまってごめんなさい。これからは片時も離れず常に傍に寄り添っていますので!」
今までに見た笑顔の中でも1,2を争うぐらい嬉しそうな素敵な表情を浮かべながら、彼女はギューっと腕を絡ませてきた。
そりゃーもう俺の貧弱な腕なんて潰れちまうほどに。
「へっ!?ちょちょちょ!おまっ!常にって…!」
「さ!帰りましょう!今日の私はとっても気分がいいのです!」
「わ、わかった!わかったから腕を引っ張るなって!俺が自分より年下の小柄な女の子に引き摺られてるところを公衆の場でさらさないでくれぇ~!!!」
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「ところでさ、めぐみんがパーティーに誘われた理由って結局なんだったんだよ?」
その後、ひどく上機嫌なめぐみんに結局腕をホールドされたまま帰路についていたのだが…
「爆裂魔法で浮気した男の家を破壊してほしいとのことでした」
「は?」
え、なにそれこわい。
「そのぐらい自分の魔法で復讐してくださいと言ってやりましたよ。えぇ、浮気するような人は自分の魔法で痛い目に合わせてやれ…と」
そう言って歩く足が震えだしてきた俺に、にっこりと先ほどよりも何か意味深な笑顔を向けてきためぐみん。
俺は引きつった笑い顔でうんうんと賛同し…
その翌日、持っていた例のサキュバスさん達のお店の割引券を他言無用ということですべてダストに押し付けて、俺はどこかの駄女神がうらやむぐらいの神扱いをされていた。