カズマとめぐみんをいちゃいちゃさせる小説   作:リルシュ

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カズめぐホワイトデーネタですっ!



白き誓いの日

き、きた…

とうとうこの日が…!

 

「初めてだ…こんなに緊張し、尚且つ女の子に用事があるホワイトデーなんて…」

 

お…おぉ…!

なんか全身ソワソワしてきたっ…!

 

「や、やばいやばい変な汗も出てきたぞ!渡すもんはもう決まってるって言うのに…おぉふぅぅ」

 

まだ日も登りきってない早朝の暗いうちから、俺は自室のベッドでぴょんぴょん飛び跳ね暴れていた。

まともな手段で家族以外の異性から初めてチョコを貰った先月のバレンタインデー。

本命の女の子から本命のチョコまで貰えて、その日の興奮もそりゃー物凄いものだったけど。

 

「あぁぁやばい楽しみすぎるぅぅ!!!」

 

今日のテンションも先月に負けず劣らずハイである。

あいつら3人の…

特にめぐみんの。

お・れ・の!めぐみんの!

驚き喜ぶ顔が目に浮かぶぜ…ぐふふ…。

 

「さてと…まずは誰にお返しを渡そうか」

 

いきなりめぐみんに渡すというのもありといえばありなのだが、それを実行すると俺の気力が最後まで持たないような気がする。

というか絶対持たない。

それに俺は、めぐみんにお返しを渡してから今日はその後ずっとイチャイチャしていたいのだ。

もしイヤだと言われても、土下座して頼み込むぐらいにはイチャイチャしてほしいのだ。

 

「アクアとダクネスの分を先に渡す…うん。そうしよう」

 

とりあえずは…

 

「そうだな…まずは、チョコの香りがするお湯を飲ませてくれるという、新しすぎるバレンタインデーを堪能させてくれたアクアにお返しをくれてやろうか…フフフ」

 

のそりと立ち上がり、俺はあの駄女神にくれてやるしかえ…お返しを用意するべく、台所に向かおうと、自室の扉を開け…

 

「うおっ!」

 

「ひっ!…あ…カカカカズマっ!?」

 

なんてことだ。

俺の幸運値の高さはこんな所でも発揮されてしまうのか。

 

「おいおいめぐみん。流石にこの時間の訪問はビックリするぞ。どうした?お前の中で迸る俺への愛を、我慢出来なくなったのか?」

 

廊下に出た瞬間。

目の前にパジャマ姿の恋人が現れた!

ひゃっほうと小躍りしたくなるのを必死に我慢して、出来る限りクールに返答するというコマンドを選択すると

 

「べ、別にそんなんじゃないですよ!…ただ、カズマの事が気になって…ちょ、ちょっと様子を見に来たのです!そ、それだけですよ!」

 

「ほほぅ…ほっほぅ…こんな早朝に?ただ様子を見に来ただけ?…そう言うのだね?めーぐみん」

 

実際のところはどうなのか知らないが、両手をぶんぶん振り回し真っ赤になりながら慌てる彼女を見ていると、からかいたくもなるってもんだ。

 

「ほれほれ。本当は何しに俺のとこへ来たんだ?ん~?教えてくれよ~」

 

頭をわしゃわしゃと撫でながら手に絡むめぐみんの髪の感触に酔いしれていると、だんだんと頬を膨らませていた彼女が

 

「むぅ…意地悪なカズマは嫌いですっ」

 

小声でぼそっと。

こちらを上目遣いで睨みながら、心を抉る強烈な一言を食らわせてきた。

 

「ごめんて。謝るから嫌いって言わないで。泣くぞ」

 

めぐみんからのその言葉は、今の俺には堪えすぎる。

これ以上メンタルダメージを負って回復不能になる前に、早めに謝っておこう。

 

「はい!許します!優しいカズマは大好きですよ!」

 

「…あれ?もしかして俺、いいように手の上で踊らされてない?」

 

「えー?気のせいじゃないですか?」

 

真剣に謝罪したその瞬間、ケロリとして笑顔を見せながら先ほどまでの不満さの名残を微塵も感じさせずに調子の良いことを言うめぐみんに、してやられた感が。

でも…

 

「うん。まぁいいや」

 

少し前までならなんとか反撃してやろうだとか、からかってやろうだとか思っていたはずなのに、最近はどうも自覚するレベルでめぐみんに甘くなっている気がする。

これが惚れた弱みというやつなのだろうか。

異性にまともに好意を抱いた経験が初めての身としては、推測するしかないのだけれど。

 

「ところで…カズマこそこんな時間に起きて、いったい何をするつもりだったのですか?私への迸る愛を抑えきれず、夜這いでもしようとしていたのですか?」

 

こ、こいつ!

俺が出会い頭言ったこと覚えてやがったな!

同じからかい方しやがって!

ニヤニヤとこちらの顔を覗き込んでくるめぐみんに、やれやれとため息を吐きながら

 

「それも悪くないけど、残念ながら違う。めぐみん。今日は何の日か分かるか?」

 

「今日…?何かイベントのような事は…あ」

 

俺の問いにハッと何かに気づいたように瞳をキラキラと輝かせると、ぐっと親指を立てて

 

「ホワイトデーですね!」

 

「今の今まで忘れてたろ」

 

「そそそそんなことないですよ!カズマの部屋に来た理由も、ホワイトデーにちゃーんとお返しをくれるかの確認なのですから!」

 

「あっ!それはずるいぞ!さっきと言ってること変わってるじゃねぇーか!」

 

「意地悪なカズマは」

 

「二度目は言わせない」

 

ギュムッ!

 

「いひゃい!いひゃいですっ!ほおを引っ張らないでくだひゃい!」

 

めぐみんめ!

やっぱり言葉のアメとムチで、俺がなんでも言うこと聞くと思っていやがるな!

 

「ごめんなさいは?嘘ついてごめんなさいって言ってみろ」

 

「うしょちゅいてごめんなひゃいぃ!でもホワイトデーのお返しは本当に楽しみにしてますからぁ!」

 

頬をむにむに引っ張りまわされ涙目になりながらごめんなさいごめんなさいと連呼する姿に、出会った当初の彼女を思い出して少し懐かしさを感じながら、俺は手を放してやった。

 

「はいよく言えました。俺も素直なめぐみんは好きだぞ」

 

「ううぅぅ…なら、早くホワイトデーのお返しください」

 

両手を差し出しズイズイと押し付けてくるめぐみんに、素直になりすぎだと思いながらも俺は首を横に振る。

 

「まぁ待て。めぐみんは最後だ。まずはアクアにくれてやろうと思って、その準備をするために起きだしてきたんだよ」

 

「えー。なんで私が最後なんですか?」

 

先ほどまでムニムニされていた頬をぷくぅと膨らませながら、俺の肩を掴んでゆっさゆっさと揺さぶるめぐみんに

 

「そりゃーお前、俺のテンションが持たなくなるからだよ。…その、めぐみんは彼女で好きな女の子だし…さ。なんというかほら…渡す時も1番緊張するって言うか、気力を使うというか…」

 

「っ!…そ、そうですか。そういうことなら…まぁ…待っていますが」

 

見開いた瞳をキラリと輝かせながら、その瞳と同じ色に頬も染めてモジモジと視線を泳がせるめぐみんを見てたら、なんだか俺も照れて恥ずかしくなってきた。

というわけで…

 

「じゃ、じゃー俺はこれで…」

 

「待ってください」

 

ガシッ!

と、袖どころか腕ごと掴まれてその場から一歩も動けなくなり、はたして現在めぐみんとの筋力差はどのぐらい開いてしまっているのかなと、今更ながら彼氏という立場もあって心配していると

 

「わ、私もその…一緒に行っていいですか?」

 

「え?」

 

これは予想外の言葉が飛び出してきたぞ?

 

「構わないけど…そんなに面白くはないと思うぞ?」

 

アクアへのお返しは既に決まっている。

それを作る作業を見ていても、めぐみんが楽しいと思えることは何も無いと思うのだが。

 

「それは…暇だからです」

 

彼女の方に振り返ると、視線を逸らされながらぽつりとそう言われた。

 

「まぁ駄目とは言わないけどさ。なんだ?そんなに俺と一緒にいたいの?」

 

手を離してくれたので台所へと向かいながら、はははと笑いそうからかう俺に

 

「当たり前じゃないですか。恋人と一緒にいたいと思うのは、普通のことでしょう?」

 

「っ!…そ、それはそうだな…う、うん」

 

とてとてと小走りで横に並ぶと、今度はギュッと手を握って嬉しそうにそう告げるめぐみんに、こちらの頬もかぁぁっと熱くなる。

そうだよ俺!

こいつはこういう時やたら素直になるから、反撃に注意って何回も自己忠告してたじゃないか!

こんなんじゃアクアに学習能力が無いとか言えねぇぞ!

 

しかも…

 

「はわぁ…これが噂に聞く【恋人繋ぎ】と言うやつですか…た、確かに幸せな気分になりますが、なんというか…その…」

 

手に力を込めたり緩めたりしながらソワソワするめぐみんが気にしてるのはそう。

手の繋ぎ方である。

 

うん!そうですね!

甘酸っぱい心地良さでなんか恥ずかしいですね!!!

なんで俺は、こんな朝早くから恋人と手を繋いでイチャイチャ恥ずかしいこと言い合ってドキドキしてんだ!

幸せすぎんだろありがとうございますっ!

うぉぉぉ…めぐみんと指を絡ませあってる左手が熱い!超熱い!

 

俺達は男女の一線をも超えた仲なのだが、それでも付き合ってまだそんなに長い時がたってないせいか、まだまだ手を繋ぐという行為だけでもお互い真っ赤になるほど緊張してしまって…

結局あれから一言も会話が無いまま台所まで来てしまった。

 

もちろん気まずい感じなどではなく、むしろ俺の胸中は心地よい暖かさに包まれているのでなんの問題も無いのだが。

 

「アクアへのお返しは食べ物という事ですか?」

 

隣にいためぐみんが今いる場所から推測して、繋いだままの手をぷらぷらと振りながら聞いてきた。

もうなんか仕草一つ一つがたまらなく可愛く感じるのだが、そこを一々詳細に語っていてはいつまで経っても話が進まないので、普通に返事をします。

 

「食べ物というか飲み物というか…まぁ見ていろ。なぁーに材料は事前に用意してある。5分もかからねぇから」

 

「カズマ。顔がとても邪悪な表情になってますよ」

 

ふふふと口角を釣り上げ顔を歪ませていたらそう突っ込まれたが、これからやろうとしている事を思えば仕方ない現象だ。

 

 

かくして宣言通りの5分後…

 

 

「さ、流石にこれはどうなのでしょうか…」

 

作業するのに手を繋ぎっぱなしというわけにはいかないので、仕方なく離れためぐみんが完成したモノを見て頬を引き攣らせながらドン引きしていた。

 

「いや。アイツにはこれぐらいのお仕置きが必要だ。大丈夫大丈夫。チョコレートの香りがするお湯という謎アイテムに比べたら、これは3倍どころか30倍ほどの価値はある」

 

俺がめぐみんの言うところの邪悪な表情でニタニタとしながら持ち上げた白いカップ。

その中には、湯気を放つ茶色のドロドロとした液体が並々と注がれていた。

そう、これは液状チョコレートというやつだ。

ただ溶かしたチョコレートにお湯を混ぜただけとも言う。

つまりはアクアがやった事と、お湯とチョコの比率が入れ替わってるだけだ。

 

「た、確かにチョコ濃度は30倍どころでも無さそうですけど、これを見て私は自分へのお返しが不安になってきましたよ」

 

相変わらずドン引きして1歩離れたところからこちらをジトッーと見てくるめぐみんの言葉も今はスルーだ。

実際に用意してあるお返しを見せたら、そんな不安なんて吹き飛ばしてやる自信があるからな!

 

「まぁちゃんとしたチョコレートを作っていたのに、味見と称してほとんど自分で食べてしまったアクアにも非はあるかもしれないですけど…」

 

そう言えば俺が先月台所に駆け込んだ時も、アクアは視界の隅でひたすらチョコを食っていたような気がする。

 

「でも、こんな早朝では渡す頃には固まってしまうのではないですか?」

 

そろそろとゆっくり歩み寄ってきためぐみんが、恐る恐るカップの中を覗き込んで眉をしかめながら呆れたようにそう言う。

 

「何言ってんだ?今から渡しに行くんだよ」

 

「え…?まさかアクアに夜這いするんですか?カズマが彼女の事をそういう目で見てないことは理解してますし信じてますが、流石にそれを見過ごすというわけには…」

 

「違うわ!お前は1回夜這いというワードから離れろ!アイツは酒が入ってない日は大体早起きだから、多分もうこの時間には起きてるはずなんだよ!」

 

少なくとも昨日の夕飯の時点では飲んでなかったし。

まぁアクアの事だから、自室に隠し待ってる秘蔵の酒とやらを寝る前にがぶ飲みしてる可能性が全くない訳では無いけど。

 

「む…アクアのこと、よく知ってるんですね」

 

少し面白くなさそうな顔をしながら、唇をとがらせるめぐみんにちょっと驚いた。

 

「お前まさか、アクアに対して嫉妬してるのか?よく考えろ?アクアだぞ?」

 

「…私のことも、もっと知ってほしいと思っただけです」

 

「ぶふっ!」

 

なにそれどんだけかわいいのこの娘!

可愛すぎて吹いちまったじゃねぇか!

あぁダメだぁ!ニヤニヤが止まらねぇ!

 

「そうかそうか。じゃー手始めに今日履いてるパァンツ!でも確認させてもらおうかなぁ~!」

 

「あ、そういう変態チックなことはやめてください」

 

…そ、そこで真顔になられると、このワキワキさせていた手の行き場に困るのだが…

 

「仕方ないですよ。カズマのパーティーは私が加入するまでアクアと二人でしたし、それなりにお互い知ってることも多いんでしょう?でも…」

 

そこで一旦言葉を切ると、すぅーと息をのみニヤリとドヤ顔を決めためぐみんが、

 

「いつか私が一番になってみせます」

 

これまた遠慮なくド恥ずかしい言葉をくれやがった。

 

「ぇ!?…あ…お、おう…」

 

一番になって見せるというが、いろんな意味でお前はすでに俺の中で一番だぞ。

…という恥ずかしいセリフを言う勇気はめぐみんと違って俺には無く、いつものように情けない返事になってしまった。

だ、だって仕方ないだろ!

それが俺なんだから!

 

「…まぁいいです。そのヘタレな返事がカズマらしくて。では、アクアに渡しに行きましょうか」

 

「いやなんでめぐみんが先陣切ってるんだよ。あとヘタレって言うな」

 

渡すのは俺だろというツッコミも無視されて、仕方なくカップを持ったまま彼女のあとについて行き台所を後にした。

 

 

 

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「アクアー!この前の仕返しにきたぞー!」

 

「今から喧嘩でもするつもりなんですか?」

 

最早隠さずに仕返しと言い切り部屋の扉をドンドン叩く俺に、めぐみんのため息交じりのツッコミが入る。

するつもりはないが、もしかしたらすることになるかもしれないね♪

 

「何!?朝から何よ!?敵襲!?このアクア様の屋敷に襲撃とは、とんだ命知らずがいたものね!天界まで殴り飛ばしてくれるわ!」

 

おっ、やっぱり起きてたなアイツ。

しかしなんだかアホなことを口走っていたような…

 

バァン!!!

 

と、扉を勢いよく開け放ったアクアが、突然の事にビクリと身体を震わせる俺とめぐみんの前で

 

「先手必勝っ!ゴォォォッドブr…ってあら?カズマとめぐみんじゃない」

 

「危ないわバカ!声で分かれ!」

 

自然とめぐみんをかばう形で前に出ていた俺の目前で勢いが止まった拳に、戦慄しながら怒鳴り返してやった。

幸運値と知力以外のステータスは飛び抜けて高いコイツのゴッドブローを、顔面で受け止める事態はなんとか避けたわけだが

 

「ねぇねぇ知ってるカズマ?声だけで誰なのか判断するのはとっても危険なの」

 

なんで仲間を殴り飛ばす寸前だったってのに、得意げに説教たれてるんだコイツは。

やはり1度きっついお灸を…

 

「まぁ確かに、ドッペルゲンガーなんて厄介な存在もいましたから、アクアの言うこともまるっきりデタラメというわけではありませんが…」

 

めぐみんが俺の背後から肩越しにちょこんと顔を覗かせてボソリと言った言葉に、ビクリと肩が震えた。

やめてやめて!

その件のことはあまり思い出したくない部類に入る事件だから!

ていうかこの屋敷にはアクアの結界張ってあるんだから、無傷であの手の敵は入ってこれないんだから!

 

「そうね…確かにあの時のカズマはとても気持ちわr」

 

「そーだアクア!今日はこれを渡しに来たんだよ!ほら!ホワイトデーだろ?」

 

これ以上傷付く過去を掘り返される前に、アクアの胸元にカップをグイッと押し付けてやる。

 

「ちょ!おっぱいが熱い!何すんのよこの変態!」

 

「うるせぇ!黙って受け取れ!そんで一気飲みして喉つまらせろ!」

 

「なんですってぇ!?ロリコンヒキニートの分際で、よくもこの私にそんな口が聞けたものね!」

 

「おい。カズマをロリコン呼ばわりする理由。そこの所を詳しく話してもらおうじゃないか」

 

ロリと言う言葉にピクリと眉を反応させためぐみんが、ズイズイと俺の背後から現れアクアと対峙した。

 

「カズマと付き合ってるめぐみんがロリっ娘だからだけど?」

 

まぁアクアはそんな事で怯むようなやつではないので、堂々と理由を述べやがる訳だが。

 

「なっ!なにおう!!!言いましたね!?ハッキリと言ってくれやがりましたね!いいでしょう!紅魔族は売られた喧嘩は買う種族。その発言を後悔させてやろうじゃないか!!」

 

「よし行くぞめぐみん!俺達のツインクロス爆裂拳を食らわせてやるぜ!」

 

「え!?その技はちょっと気になるんですけど!」

 

液状チョコの入ったカップをわちゃわちゃ押し付け合う俺とアクアの争いにめぐみんも参戦し、途中何度も辺り一面に中身をぶちまけそうになりながら廊下で暴れ回ること早数分

 

「ぜぇ…はぁ…く、くそ…無駄に疲れた…結局アクアのやつちゃっかり受け取ってるし」

 

「朝から物凄い汗をかいてしまいました…お風呂入りたいです」

 

肩で息をしながら汗をダラダラと流す俺とめぐみんと違って、アクアはムカつくほど優雅に髪をなびかせると、俺がプレゼントした液状チョコ入りカップを掲げながら

 

「まぁ、どうせカズマの事だから大したものじゃないんでしょうけど、これは戦利品として受け取っておくわ!」

 

「おい。それはお湯に比べたら、比較するのも憚られるほどのレアアイテムだぞ」

 

ゴクゴクゴク…

ってすごい勢いで飲んでるし聞いてないし。

 

「っ!!!こ、これは…!」

 

「あ、アクア…?どうしたのですか?」

 

ぷはぁ、とオヤジ臭い息を吐きながら、一瞬だけ口周りを茶色にしてすぐに透明な水に浄化したアクアが、

 

「美味い!これよこれ!私が作りたかったのはこういうチョコレートなのよっ!水のように滑らかでしっとりとしたのど越し…完璧!完璧だわっ!」

 

「「は?」」

 

何やら無駄に表情を輝かせながら、うっとりと瞳を細めるアクア。

その姿に唖然として口をあんぐり開ける俺とめぐみんを彼女は交互に見ながら

 

「正直カズマを見くびっていたわ!これほどのモノを作ってくるなんてね!ちょーっと冷めちゃってるけど、それを差し引いても女神の私に貢献する価値のあるものね!よくやったわカズマ!」

 

「そ、そうか…気に入ってくれたならよかったよ。じゃー俺はダクネスのところに行くからこれで」

 

「あっ!ま、待ってくださいよカズマ!」

 

「このチョコだったらまた作ってくることを許可してあげてもいいわよー!」

 

冷めたのはお前と取っ組み合っていたからだという反論すら起こす気にならず、俺は上機嫌なアクアの声を背後にその場からそそくさと逃げるように走り去った。

 

「クソっ!なんであんなもので喜ぶんだアイツは!?やっぱり理解できねぇ!」

 

仕返しして涙目にさせてやる大作戦のつもりが、喜ばしちまったじゃねぇか!

 

「プレゼントで相手を喜ばせておきながら、そこまで悔しそうな顔をするのはカズマぐらいだと思うのですが…」

 

アクアの部屋から十分距離を取ったところで、俺は向けどころのないモヤモヤを手の先でわしゃわしゃと表現していた。

 

「そういえばアクアは当初、自分でも水のようなチョコレートを作ろうとかなんとか言っていたような…」

 

「そうか。じゃー来年のお返しは固形物にしてやろう」

 

アイツは液体ならなんでも喜ぶのかよ。

液体フェチか!

 

「まったくカズマは…それで?ダクネスにあげるお返しというのはなんなのですか?」

 

「ん?あぁ。くくく…これだ」

 

「…なんですかそれ。また液体ですか」

 

ゴソゴソと俺が懐から取り出した、ドロリとしたえんじ色の液体が入ってる透明なビン状の物を瞳を細めて見ながら、めぐみんが胡散臭そうに聞いてきた。

 

「火傷クリームだ」

 

「は?火傷…?火傷治しではなくて、火傷ですか?」

 

「うん。火傷」

 

俺がニタニタと笑いながらチラチラさせる火傷クリームというアイテムを、眉を顰めためぐみんがジトっーと見つめてくるので、その効能を説明してやることにする。

 

「こいつはだな、塗られた所からヒリヒリとした痛みが広がり、しばらくの間肌が焼けるような感覚を味わうことが出来る…というアイテムらしい」

 

もちろんこんな変態御用達アイテムを自分で使って試す訳が無く、購入時に受けた説明をそのまま言っただけだが。

 

「えぇ…」

 

「ふっ…俺が無駄に値が張るこれを買う時、店員から送られた生暖かい視線による恥ずかしさが分かるか?」

 

この街のお店は早く配達サービスを実装するべきだと思う。

あの時心底そう感じた。

 

「知りませんよそんな事。しかし、ダクネスが喜びそうなものという点を否定は出来ませんね…」

 

はぁ、と頭を抱えながらため息を吐くめぐみんは、もしかしたらまた自分へのプレゼントを心配してるのかもしれない。

…うん。まだだ。まだ我慢だ。

冷たくあしらわれた事もなかったことにしよう。

 

「それじゃー早速行くか。アクアとのやりとりでだいぶ時間もたったし、ダクネスももう起きてるだろ」

 

「あっ、はい…えっと…じゃあその…」

 

ダクネスへの部屋へと歩き始めようとすると、モジモジと足をすり合わせためぐみんがチラチラと意味ありげにこちらに視線を送ってきた。

 

「なんだ?トイレなら行ってきていいぞ。ここまで着いてきてくれたんだ。待っててやるから」

 

はっはっはと笑いながら、ぽんぽんと頭を撫でてやると

 

「バっ…!ちっっっがいますよ!どうしてそう空気が読めないんですか!また手を繋いで欲しいんですよ!察してくださいよ!」

 

真っ赤になっためぐみんが、ペしりと手を払い除けて俺の胸ぐらを掴みながら怒鳴りつけてきた。

 

「へ?あ、そ、そうか。すまん。いやだって脚もじもじさせてたし、我慢してんのかなって」

 

「うっ…だ、だって…は、恥ずかしいから…」

 

「何を今更。手を繋ぐくらいで」

 

まぁこうして照れてるめぐみんも可愛いので、俺としては何も問題ないしむしろ眼福なのだが。

 

「そ、そういうカズマこそ、繋いでる時は真っ赤だったじゃないですか!」

 

「は、はぁ!?真っ赤になんてなってねぇよ!手繋ぐくらい余裕だっつーの!おまっ…おい!俺の顔ジロジロ見るのはやめろよ!恥ずかしいだろ!」

 

「何ですか今更!顔を見られたぐらいで!」

 

「いやなんか意識すると恥ずかしくなるから、俺が意識してない時だけガン見してくれ」

 

「そんなの寂しいじゃないですか!嫌ですよ!」

 

とにかく手は繋ぎますからねと、可愛いセリフに言動を重ねながら俺の理性の耐久値をゴリゴリと削ってきやがるめぐみんの手が、また左手に絡まった。

 

「お、おう…」

 

うぁぁぁ…!

やっぱりこれ何回やっても照れくせぇ!

 

「やっぱり赤くなってるじゃないですか」

 

「うるさい。お前も人のこと言えないぞ」

 

歩き始めたばかりだと言うのに、手に込める力をぎゅぅっと増しながら、めぐみんが立ち止まりながらそう言ってきたもんだから、俺も彼女の方に振り返り返事をして…

 

「「…………」」

 

あ、あれ…?なんだこれ。

なんか真っ赤になって上目遣いでじっとこちらを見つめるめぐみんを見てたら、すげードキドキして…

 

あ!

なんか顔が近づいてきてる!

近づいてらっしゃいますよめぐみんさん!

何瞳閉じてるんですかめぐみんさん!

それはキス待ち顔というやつでしょうか!!!

いっちゃっていいんでしょうかっ!?

 

「か、カズマ!?めぐみん!?こ、こんな朝から廊下で何を…!」

 

俺がもう辛抱たまらんとグッと彼女の肩に右手を置いて抱き寄せたところで、これから会おうとしていた人物の声が聞こえて

 

「そ、そんなに接近して絡み合って一体…!ハッ!そ、そうか!カズマがめぐみんを部屋から無理やり引きずり出し、嫌がる彼女をいつ私やアクアの目に触れるかも分からないこんな廊下で、朝早くから一日中ねっとり辱めるつもりだったのだな!おのれけしからん!私も混ぜろぉぉぉ!!!」

 

「うるせぇぇぇ!!!なに一人で興奮してバカな事口走ってんだこのド変態が!せっかくの良い雰囲気を邪魔しやがって!」

 

「んんんん!!!!くぅぅぅぅ!!!!!ど、ド変態だと!?いいぞ!もっと言ってくれ!」

 

ダメだコイツ早く何とかしないと。

 

「ちがいますよダクネス。カズマはあなたへホワイトデーのお返しを持ってきたんですよ」

 

自らの身体を抱きしめながらハァハァと荒い息を吐き頬を染めるダクネスにドン引きしていると、ちょびっとだけ寂しそうに、けれどクスッと笑いながらめぐみんが代わりに返事をしてくれた。

 

「ホワイトデー?…あ」

 

どいつもこいつも存在ごと忘れてやがるな。

まぁ、こっちの世界にはそんな習慣なかっただろうし無理もないが。

 

「そ、そういうことならそのお返しとやらを貰おうか…いったいカズマはどんなエロティックで鬼畜なプレゼントを渡してくれるのか…い、今から胸のドキドキが収まらないぞ…!」

 

もうなんかあげる気がどんどん失せていくんだけど、渡すために来たのだから仕方ない。

 

「そんなに期待してるとこ悪いが、別に大したものじゃないぞ」

 

と、先ほどちらりとめぐみんに見せたドロリとした液体が入った瓶を見せつけると、とたんに瞳の輝きを増して

 

「お…おぉ!!!そ、その液体はなんだ!?もしや先ほどもめぐみんとのプレイにそのいかがわしいアイテムを使って彼女を淫らにさせてかr」

 

「頼むから黙って受け取ってください」

 

投げつけてやりたくなるのを必死に我慢して、モジモジするのをやめない変態の手を取り無理やり握らせた。

 

「お、おいカズマ!いきなり渡されても使い方がわからないぞ!こ、これはどういう時に使えばいいのだ!飲めばいいのか!?グイっと!!!」

 

「流石のお前でもそれはやめた方がいいと思う!」

 

ハァハァしながら瓶の蓋をクイクイっと回して開けようとするダクネスに慌てて忠告した。

 

「それはな、身体に塗るものなんだ」

 

「ぬ、ぬる…!ぬりゅものだとぉ…!!!」

 

「うんもう試そうとしてますね」

 

パカリと、早くも蓋をあけ放ったダクネスが、その瓶からドバッとまだ鎧を着こんでいなかったため素手の掌に…って!

 

「あああああちゅぃぃぃぃ!!!はぁぁぁんんん!!!

 

「ちょ!ダクネス!?」

 

今の今まで一歩引いたところから傍観していためぐみんが、慌てて駆け寄ってきた。

 

「お、おい!それそんなにぶちまけたら…」

 

「はぁはぁ!こ、これはたまらんぞ…!肌が焼けるような、それでいてちょっとくすぐったいような痒いような…ぁぁああんっ!」

 

あ、全然平気そう。

 

俺とめぐみんがポカンとして見守る中、このド変態は自らの服の中に手を突っ込んで身体中をまさぐって全身に塗りたくって膝から崩れ落ちビクンビクンと震えていた。

…というか、非常に目のやり場に困るのですが!

 

「れ、礼を言うぞカズマ…このような極上の品をくれt」

 

「よ、喜んでくれたみたいでなによりだよ。それじゃー俺はこれで」

 

「あ、わ、私もダクネスの時間を邪魔しては悪いので、し、失礼します…!」

 

アクアの時とは別ベクトルの居づらさを感じ、俺は甘美の声をあげて廊下に肢体を擦り付けるダクネスから逃げるようにめぐみんとその場を去った。

 

 

 

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「まだ今日という日は始まったばかりなのに、すでに疲れ果てたんだが」

 

「私もカズマについて行くだけのはずが、色々と疲れてしまいましたよ」

 

俺の部屋まで戻ってきてベッドに並んで腰かけためぐみんと一緒に、はぁぁと深いため息を吐いて濃厚すぎる午前中の出来事を振り返る。

 

「う、うん。そうだよな。…えっと…こ、これからがメインイベントだっていうのになぁ?」

 

だがここで疲れている場合ではないのだ。

むしろこの後が俺にとっては一番大事なシーンとも言えるわけでありまして

 

「あ…は、はい…」

 

いきなり背筋をピンと伸ばしてゴホンと咳払い交じりにわざとらしくそういう俺に、めぐみんも慌てて最近伸ばし始めていた髪に指を絡ませ落ち着きなくクルクルと弄って整えていた。

 

…お…おぉふ…やっぱり好きな女の子相手だと、緊張の度合いが全然違う…!

 

「え、えーっと…ちょっと待っててくれ。お前へのお返しは、ここに大事に…」

 

緊張と彼女からの反応の期待が入り混じって震える脚をなんとか動かして、ベッド脇の何重にも鍵を掻けてある引き出しをカチャカチャっと開けて…

 

「え…えぇぇ!?か、カカカカズマ…!?も、もしかして…そ、それは…!」

 

俺が慎重に取り出した、掌にちょこんと乗るサイズの箱。

その中身を察したのか、めぐみんはみるみるうちに頬を赤くしてあわあわと慌てて座ったり立ったりを繰り返していた。

 

「お、落ちつけめぐみん!お前がそんなだと、俺の緊張も限界突破しちまうだろ!」

 

「そそそそんなもの見せられて、落ち着いてられるわけないでしょう!だ、だってそ、それって…そのサイズの箱に入ってるものって婚約ゆび」

 

「だぁぁぁ!!!なんでお前はそうやって先に言うの!?やめて!俺の覚悟が砕け散る!」

 

「ご、ごめんなさいっ!ででででもまさかそんな…びっくりして…嬉しすぎて…な、なんてい言えば…どう反応すればいいのか…わ、私…わた…し…」

 

あぁもう!

まだ箱を見せただけだって言うのに、今度は泣きそうになって瞳をうるうるさせてるし!

 

「…ったく。しょうがねぇなぁ」

 

照れくさいから彼女に開けてもらうつもりだったのがこうなっては仕方がない。

パカリと

箱を開けて、真っ赤な宝石…実は小さくカットされたマナタイトなのだが、それが中央に爛々と輝く銀の指輪を取り出して、

 

「えっと…だな…め、めぐみん!」

 

下唇を懸命に噛んで涙がこぼれないようにしてる彼女の手を取る。

そう。箱の中身はめぐみんの予想通り、婚約指輪ってやつで…

俺は一か月前から今日のためにこれを準備していたのだ。

ホワイトデーという機会。これほど渡しやすい日もないと思って。

 

「これを…あの…受け取ってくれ」

 

だからいざ渡すときの決め台詞も何通りも考えてシュミレートまでしてたのに。

ダメだなぁ俺。

本番になったら頭真っ白になっちまって、なんにも残ってねぇや。

ホントに決めるべき時に決まらない自分が情けない。

 

「はいっ…!」

 

それでも、そんなところも好きだと言ってくれるめぐみん。

俺のダメダメなところ全部ひっくるめて好きだと言ってくれた彼女にかける想いは本物だと自信を持って言える。

 

「カズマカズマ!」

 

「え?な、なに?」

 

だからその何よりの証である指輪を、彼女に手渡ししようとした矢先。

おもむろに突き出された左手を見て、身体が固まってしまった。

もちろんその行動が何を意味しているの分からないほど俺は鈍感じゃない。

 

「指輪。今ここで、カズマに付けてほしいです」

 

うん!

ですよね!

 

「わ、わかった。めぐみんがそう言うなら」

 

アクアやダクネスと絡んでいた時のおちゃらけた空気がウソのような、張りつめた…だけれど心地よい緊張感が漂う空間で、俺は指輪をそっと…

 

 

 

めぐみんの左手薬指にはめ込んだ。

 

 

 

いつかのような呪いの指輪なんかじゃなくて、今度こそ本物の、自前で用意した婚約指輪。

そのまましばらくめぐみんは、指輪をはめられた薬指を見たままじっとしていて…

 

「…こ、これがその…俺の気持ちだ!ど、どうだ?びっくりしたろ!俺のプレゼント見てびっくりしたろ!期待外れなんかじゃなかったろ!」

 

俺がシンとした空気に耐えられなくなって慌てて喚きだすと、ゴシゴシと目元を拭っためぐみんがクスクスと微笑んだ。

 

「びっくりなんてもんじゃないですよ。カズマのくせに、かっこつけすぎです」

 

「な、何言ってんだ!俺だってやるときはやるおとk」

 

ギュッ…

 

と、静かに強く抱きしめられた。

 

「めぐみん…?」

 

全身に暖かい彼女のぬくもりが広がって、ドキドキと心拍数が上がり始めてきた俺に、

 

「いっぱいいっぱいで今は何も考えられないんです。しばらくこうさせてください」

 

掠れた小さな声で、めぐみんはそうつぶやいた。

 

「…おう」

 

こんな時ぐらい彼氏らしく…

そっと、両手を彼女の身体に回して抱き返してやる。

ちょっと震えてしまってるのは今だけは大目に見てもらいたい。

 

 

すでに登り始めていた朝日の光が、窓越しに部屋に差し込む。

めぐみんの左手に収まった指輪がその光をキラリと反射して、俺の影を優しく照らしていた。

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